特許第6287812号(P6287812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6287812
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】端末集中スプライス用の保護キャップ
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/56 20060101AFI20180226BHJP
   H02G 15/04 20060101ALI20180226BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20180226BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20180226BHJP
   H01B 7/282 20060101ALI20180226BHJP
   H01R 4/22 20060101ALI20180226BHJP
   H01R 4/70 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   H01B17/56 F
   H02G15/04 030
   H02G1/14
   H01B17/56 J
   H01B7/00 306
   H01B7/282
   H01R4/22
   H01R4/70 K
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-257965(P2014-257965)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-119209(P2016-119209A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】福田 隆夫
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−149844(JP,A)
【文献】 特開平08−130045(JP,A)
【文献】 特開平10−083845(JP,A)
【文献】 特開平05−003054(JP,A)
【文献】 特開2013−017286(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/129477(WO,A1)
【文献】 特開2010−172163(JP,A)
【文献】 実開平07−009039(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/56
H01B 7/00
H01B 7/282
H01R 4/22
H01R 4/70
H02G 1/14
H02G 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディップ成形される透明な筒体からなり、該筒体の長さ方向の一端に底部を設けていると共に、他端の挿入用の開口から止水剤を充填すると共にワイヤハーネスの端末の集中スプライス部を挿入する保護キャップであって、
前記底部の内面から開口側へ所要寸法離れた周壁の内周面に、前記ディップ成形時に用いる雄金型によりリブからなる罫書き線を周方向に設けていると共に、該罫書き線に沿って不透明な有色ラインを周壁の外周面に設け、該ラインを前記集中スプライス部の下端位置の管理ラインとしていることを特徴とする端末集中スプライス用の保護キャップ。
【請求項2】
前記保護キャップに充填する止水剤は無色透明である請求項1に記載の端末集中スプライス用の保護キャップ。
【請求項3】
前記周壁の外周面に設ける不透明な有色の管理ラインは底部内面から2.5mm〜3.5mmの位置に、レーザーマーカーあるいはインクによるマーキングで行い、周壁の外周面の全周あるいは部分的にラインを付している請求項1または請求項2に記載の端末集中スプライス用の保護キャップ。
【請求項4】
樹脂成形され筒体からなり、該筒体の長さ方向の一端に底部を設けていると共に、他端の挿入用の開口から止水剤を充填すると共にワイヤハーネスの端末の集中スプライス部を挿入する保護キャップであって、
前記底部から前記開口近傍まで周壁を長さ方向に直線状に延在させると共に、前記開口近傍では周壁を開口に向けて3〜6度の範囲で傾斜させて広げた拡径部を設け、該拡径部の内面と前記ワイヤハーネスの絶縁被覆部の外周面との間に隙間をあけ、前記止水剤が毛細管現象で前記開口に達するのを防止する構成としている端末集中スプライス用の保護キャップ。
【請求項5】
前記保護キャップの開口近傍に設ける拡径部は、前記開口から保護キャップ全長の5%〜15%の範囲に設けている請求項4に記載の端末集中スプライス用の保護キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は端末集中スプライス用の保護キャップに関し、詳しくは、ワイヤハーネスの複数の電線端末で電線の芯線同士を溶接若しくは圧着して形成した端末集中スプライス部に絶縁保護および防水のために被せる保護キャップにおいて、該保護キャップに充填する止水剤の充填量のチェックが簡単に出来るようにすると共に、止水剤の溢出防止を確実に図るものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスを構成する多数の電線のうち回路接続する必要がある複数の電線は、それらの電線端末で被覆部を皮剥ぎして露出させた芯線同士を抵抗溶接、超音波溶接若しくは圧着して端末集中スプライス部(以下、スプライス部と略称する)を形成している。該スプライス部は他の導電材と接触すると短絡が発生するため絶縁保護する必要があると共に、水が付着すると腐食が生じるため、特に、浸水領域に配置する場合には止水処理する必要がある。該保護キャップは、図6に示すように、有底筒状の樹脂製の保護キャップ100内に予め溶融状態の止水剤110をノズル120で充填し、その後、ワイヤハーネス200の端末集中スプライス部210を保護キャップ100の挿入口101から挿入し、止水剤110を硬化している。(特開2000−324671号公報、特開2008−313846号公報等参照)
【0003】
前記止水剤を充填する保護キャップにおいて、スプライス部210および該スプライス部210に連続する皮剥部200aおよび該皮剥部に連続する被覆部200bの所要範囲を止水剤110で確実に埋設する必要がある。そのため、保護キャップ100の大きさ(断面積、長さ)とスプライス部210、皮剥部200a、被覆部200bの容積との関係から止水剤110の充填量を設定している。
具体的な基準として、図7に示すように、スプライス部210の先端面210sが保護キャップ100の閉鎖底100aの内面100iから3mm以内に位置し、被覆部200bが1mm以上は止水剤110で埋設することが必要とされている。
【0004】
前記止水剤110を予め充填している保護キャップ100内にスプライス部210を挿入すると、スプライス部210が止水剤110により浮き上がりやすくなる。よって、スプライス部210が保護キャップ100の閉鎖底100aから離れ、被覆部200bの所要範囲が止水剤で埋設されなくなる場合がある。かつ、保護キャップ100内に挿入するスプライス部210、該スプライス部に連続する電線群の皮剥部200aおよび被覆部200bの容積が若干でも変わると、保護キャップ100内に充填している止水剤110の水位が変化し、保護キャップ100の挿入口101から止水剤が溢れて液漏れが生じる恐れもある。
【0005】
よって、保護キャップ100内に設定量の止水剤110を充填しても、スプライス部210を保護キャップ100内に挿入し止水剤を硬化した後、前記した範囲でスプライス部210等が止水剤110で埋設されているかを製品検査する必要がある。そのため、従来、作業員が外部から定規をあてがって検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−324671号公報
【特許文献2】特開2008−131327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、定規を用いて測定検査すると作業手数がかかると共に、作業員によりバラツキが生じる。また、外部から目視検査することが好ましいが、従来、保護キャップ100を透明樹脂で成形し、止水剤110を透明な2液反応硬化型のエポキシ樹脂を用いている場合が多い。特に、保護キャップ100と止水剤110の両方が透明であると、保護キャップ100の閉鎖底100aの内面(上面)100iの位置、止水剤110の液面を外部から視認しにくい問題がある。
【0008】
さらに、保護キャップ100は、製造コストを低減できる等の利点があるため、近時、図8(A)に示すようにディップ成形されている場合がある。即ち、塩化ビニール等の溶融樹脂の貯槽300内に雄金型310を浸漬した後に引き上げ、加熱→冷却→離型して保護キャップ100を成形している。このディップ成形した図8(B)(C)に示す保護キャップ100では先端の閉鎖底100aの厚さ(t)を制御することが困難であるため、該厚さ(t)にバラツキが発生する。
【0009】
前記のように、閉鎖底の内面(上面)100iの位置を外部から視認しにくいため、閉鎖底100aの外面(下面)からスプライス部210の先端面210sまでの寸法を外部から測定することになるが、該測定値に基づいて、閉鎖底の内面100iからスプライス部の先端面210sまでの寸法を正確に取得できない。
【0010】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、閉鎖底の厚さにバラツキが発生しやすいディップ成形される保護キャップにおいて、検査位置を外部から簡単且つ正確に確認できるようにすることを第1の課題としている。
また、保護キャップに充填している止水剤がスプライス部を挿入した状態で溢れて液漏れが発生しないようにすることを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1の発明として、ディップ成形される透明な筒体からなり、該筒体の長さ方向の一端に底部を設けていると共に、他端の挿入用の開口から止水剤を充填すると共にワイヤハーネスの端末の集中スプライス部を挿入する保護キャップであって、
前記底部の内面から開口側へ所要寸法離れた周壁の内周面に、前記ディップ成形時に用いる雄金型によりリブからなる罫書き線を周方向に設けていると共に、該罫書き線に沿って不透明な有色ラインを周壁の外周面に設け、該ラインを前記集中スプライス部の下端位置の管理ラインとしていることを特徴とする端末集中スプライス用の保護キャップを提供している。
【0012】
前記ディップ成形される保護キャップでは底部の厚さ(t)および底部外面の精度を上げることが出来ないが、底部の内面は雄金型の下端面の型面として成形され、該金型で設ける罫書きラインの位置は前記底部内面から設定寸法離れた周壁の内周面に正確に設けられる。この周壁の内周面に形成される罫書きラインは透明リブであるため外部から視認できないため、該罫書きラインと対応位置の外周面に不透明な有色で管理ラインを設け、外部から確実に目視できるようにしている。
【0013】
前記のように、外部から目視できる管理ラインを付した保護キャップを用いると、集中スプライス部の下端位置が管理ライン以下の底部側に位置すれば、集中スプライス部および該集中スプライス部に連続する電線の皮剥部、さらに皮剥部電線に連続する所要範囲の絶縁被覆部が止水剤中に埋設されていることが、外部から目視検査できる。言い換えると、集中スプライス部の下端位置が管理ラインより浮き上がって開口側に位置すると、所要部分が止水剤中に埋設されていない不良品と判断できる。このように、外部からの目視検査でNG品の判断を簡単かつ正確に行うことができる。
【0014】
前記保護キャップ内に充填される止水剤は透明である場合に、本発明は好適に用いられる。即ち、透明な保護キャップ内に充填されている止水剤が透明であると、保護キャップの底部内面と止水剤の下面の境界が外部から視認困難であるため、前記不透明な有色で管理ラインを設けておくと、該管理ラインを基準として一目で良品と不良品の判断を行うことができる。
【0015】
前記周壁の外周面に設ける不透明な有色の管理ラインは底部内面から2.5mm〜3.5mmの位置に、レーザーマーカーあるいはインクによるマーキングで行い、周壁の外周面の全周あるいは部分的にラインを付していることが好ましい。
【0016】
前記管理ラインは、具体的には、底部内面から3mmの位置の周壁に設けている。底部内面から3mm以下の位置に集中スプライス部の下端が位置すると、該集中スプライス部および皮剥部の全体および絶縁被覆部の1mm以上が止水剤中に埋設されていることが保証される。
保護キャップの大きさは挿入する集中スプライス部、皮剥部および絶縁被覆部の外形に対応して断面積および長さを相違させている。例えば、長さ40mm、直径8mmとし、前記のように、管理ラインは底部内面から3mmの位置に設けている。
【0017】
なお、前記した外部から目視できる管理ラインは、ディップ成形で成形される場合に限らず、透明な保護キャップに止水剤を充填する保護キャップに設けてもよいことは言うまでもない。
【0018】
また、第2の発明として、樹脂成形され筒体からなり、該筒体の長さ方向の一端に底部を設けていると共に、他端の挿入用の開口から止水剤を充填すると共にワイヤハーネスの端末の集中スプライス部を挿入する保護キャップであって、
前記底部から前記開口近傍まで周壁を長さ方向に直線状に延在させると共に、前記開口近傍では周壁を開口に向けて3〜6度の範囲で傾斜させて広げた拡径部を設け、該拡径部の内面と前記ワイヤハーネスの絶縁被覆部の外周面との間に隙間をあけ、前記止水剤が毛細管現象で前記開口に達するのを防止する構成としている端末集中スプライス用の保護キャップを提供している。
【0019】
該保護キャップの開口近傍に設ける拡径部は、前記開口から保護キャップ全長の5%〜15%の範囲に設けることが好ましい。具体的は、例えば、長さ40mmの保護キャップでは拡径部を4mmとし、全長の10%の長さとし、かつ、拡径部の傾斜角度は5度としていることが好ましい。
【0020】
第2の発明の保護キャップはディップ成形する保護キャップに限定されず、射出成形する保護キャップにも好適に適用できる。
【0021】
前記止水剤としては2液硬化型エポキシ樹脂を用い、ディップ成形する保護キャップは塩化ビニール、ポリエチレン、ナイロン、シリコーン樹脂等からなる。
【0022】
前記第1の発明のディップ成形する保護キャップにおいて、止水剤の管理ラインを有すると共に、前記第2の発明の挿入用開口側に毛細管現象による止水剤漏れを防止するための拡径部を設けた保護キャップとすることが、製造コストおよび性能の点から好ましい。
【発明の効果】
【0023】
ディップ成形される無色透明な保護キャップ内に止水剤を充填しているため、止水剤の充填部分を外部から目視しにくく、かつ、保護キャップの底部肉厚にバラツキが発生しやすいため、該底部内面からのスプライス部の下端位置を確認しにくい。しかしながら、第1の発明の保護キャップでは底部内面から所要位置に管理ラインを有色で付しているため、作業者が外部より目視で、前記管理ラインを基準としてスプライス部の下端位置を比較して、良品と不良品とを一目で判断することができる。
【0024】
また、第2の発明の保護キャップでは、開口側の周壁に拡径部を設け、挿入するワイヤハーネスの外周との間の隙間を広げているため、毛細管現象で止水剤が移動して開口から溢れるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の保護キャップの実施形態を示し、(A)は正面図、(B)は断面図、(C)および(D)は要部拡大断面図である。
図2】前記保護キャップに止水剤およびスプライス部を挿入している状態を示す断面図である。
図3】ディップ成形で用いる雄金型を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の要部拡大図である。
図4】(A)(B)(C)は保護キャップにスプライス部を挿入し、目視検査している状態を示す工程図である。
図5】(A)(B)は変形例を示す図面である。
図6】従来の工程を示す図面である。
図7】保護キャップ内での止水剤の必要レベルの説明図である。
図8】(A)は保護キャップをディップ成形する状態を示す概略図、(B)(C)はディップ成形された保護キャップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の保護キャップの実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第1実施形態の保護キャップを示す。
保護キャップ1はディップ成形される無色透明な筒体からなり、該筒体の周壁2の長さ方向の一端に底部3を設けると共に他端に挿入用の開口4を設けている。周壁2は断面円環形状であり、底部3から開口4近傍までの領域Z1は同一断面形状のストレート管とし、領域Z1の図中上端から開口4までの領域Z2を開口に向けて広がる拡径部5としている。
【0027】
図2に示すように、保護キャップ1内に無色透明な止水剤10を充填すると共にワイヤハーネス20の端末に設けた端末集中スプライス部25(以下、スプライス部25と略称する)を挿入し、硬化する止水剤10内に、スプライス部25、該スプライス部25に連続する複数の電線の皮剥部26、該皮剥部26に連続する電線の絶縁被覆部27を埋設するようにしている。
【0028】
保護キャップ1をディップ成形すると、前記図8に示すように、底部の厚さ(t)にバラツキが発生しやすく、底部3の外面(下面)3aから周壁2の所要位置の高さを測定しても、底部3の内面(上面)3bからの高さを正確に測定していることにならない。
よって、図3に示すように、ディップ成形時に用いる雄金型30の下端30aから所定寸法(本実施形態では3mm)の位置に罫書き線形成用の浅い溝30vを周方向に線状に設け、成形する保護キャップ1の周壁2の内面に周方向に線状にリブを突設して罫書き線6を設けている。該罫書き線6は透明な線であるため、作業員が外部から一目で目視することは出来ない。
【0029】
周壁2の内周側の罫書き線6と対向する位置の外周面の半周にレーザーマーカで不透明な有色ラインからなる管理ライン7を設けている。該レーザーマーカで設ける管理ライン7は内周側の罫書き線6を対象として線引きで形成するため簡単かつ正確に形成することができる。該管理ライン7は底部3の底部内面3bから正確に3mm上方の周壁2に引かれることになる。
【0030】
前記管理ライン7を底部内面3bから3mmの位置の周壁2に設け、該管理ライン7以下にスプライス部25の下端が位置すると、該スプライス部25および皮剥部26の全体および絶縁被覆部27の1mm以上が止水剤10中に埋設されていることが保証されるものとしている。即ち、保護キャップ1内に先に定量の止水剤10を溶融状態で充填している。保護キャップ1内の止水剤10中に浸すように、ワイヤハーネスのスプライス部25、皮剥部26および絶縁被覆部27を保護キャップ1の開口4から挿入すると、充填している止水剤10が絶縁被覆部27を1mm以上浸す位置まで上昇する設定としている。
【0031】
よって、スプライス部25の下端が管理ライン7以下に位置すると、所要領域が止水剤10中に埋設されている良品であると管理している。一方、スプライス部25の下端25sが管理ライン7より上方に位置すると、電線の絶縁被覆部27の1mm以上が止水剤10中に埋設されていないNG製品であると管理している。
【0032】
また、ディップ成形時に用いる雄金型30の上部外周に上向きに傾斜させた拡径部30cを設けている。これにより、保護キャップ1の開口4側の領域Z2は開口4がある上端に向けて広がる拡径部5としている。該拡径部5の広がり角度は3〜6度とし、本実施形態では5度としている。該拡径部5を設けることで挿入するワイヤハーネスの外周との間に隙間Cを設け、該隙間Cにより下方から溶融した止水剤10が毛細管現象で上昇し、開口4から溢れ出すのを防止している。
【0033】
保護キャップ1の長さや直径は、挿入するワイヤハーネスのスプライス部の大きさによって相違するが、本実施形態の保護キャップ1は底部内面3bから開口4までの長さを40mm、内径を8mm、周壁2の肉厚は1mmとしている。
また、保護キャップ1の成形材料となる樹脂も限定されないが、本実施形態では塩化ビニルを用いてディップ成形している。止水剤10も限定されないが、本実施形態では2液反応硬化型エポキシ樹脂を用いており、硬化速度が早い利点があるが、無色透明であるため、無色透明な保護キャップ1内では充填位置が外部から視認し難い。
【0034】
前記構成とした保護キャップ1を用いる場合、まず、図4(A)に示すように、保護キャップ1を立設保持し、上端の開口4から定量の溶融した止水剤10を注入する。止水剤10の注入量はワイヤハーネスのスプライス部25、皮剥部26および絶縁被覆部27を挿入した状態で、保護キャップ1の開口4から所要寸法離れた位置までしか上昇しない量に設定している。
【0035】
ついで、図4(B)に示すように、保護キャップ1の開口4からワイヤハーネスのスプライス部25の先端を下面として該スプライス部25、皮剥部26および絶縁被覆部27を挿入する。この挿入で予め充填している溶融した止水剤10はスプライス部25の外周と周壁2の内面、複数の電線の皮剥部26および絶縁被覆部27の隙間および周壁2の内面の間に充填され、止水剤10の液面が上昇する。特に、スプライス部25、皮剥部26および絶縁被覆部27の外周面と周壁2の内周面の間の隙間が微小になると、毛細管現象で止水剤10が周壁2の内面に沿って上昇してくるが、拡径部5で隙間Cが広がるため、毛細管現象による止水剤10の上昇は遮断され、開口4からの溢出を防止できる。
【0036】
図4(C)に示すように、保護キャップ1内にワイヤハーネスのスプライス部25、皮剥部26および絶縁被覆部27が硬化した止水剤10内に埋設した状態になった後に、作業員が外部から目視検査を行い、NG製品があれば排除している。
この外部からの目視検査は、前記のように、管理ライン7を境界ラインとしてスプライス部25の下端を検査し、管理ライン7以下に位置するとOK、管理ライン7より上方であればNGとして、製品管理を行っている。
この目視検査時、無色透明な保護キャップ1と止水剤10に対して管理ライン7が有色ラインであり、かつ、スプライス部25も有色であるため、外部からの目視で簡単かつ正確に判断することができる。
かつ、保護キャップ1の開口4側に拡径部5を設けているため、毛細管現象による止水剤10の液漏れを防止することができる。
【0037】
本発明は前記実施形態に限定されず、図5(A)に示す保護キャップ1ー2では、管理ライン7を設けているが、開口4まで底部3からストレートな円筒形状とし、開口側に拡径部を設けていない。
また、図5(B)に示す保護キャップ1−3は射出成形品であり、底部3の肉厚は一定であるため、管理ライン7を設けていなが、開口4側に拡径部5を設けている。
さらに、保護キャップ内に充填する止水剤が、不透明あるいは有色透明な樹脂である場合も、管理ラインを設けておくと、一目で良品と不良品の判断ができるため有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 保護キャップ
2 周壁
3 底部
3a 底部外面
3b 底部内面
4 開口
5 拡径部
6 罫書き線
7 管理ライン
10 止水剤
20 ワイヤハーネス
25 端末集中スプライス部
26 皮剥部
27 絶縁被覆部
30 雄金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8