特許第6287813号(P6287813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6287813
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】放射線位相差撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   A61B6/00 330Z
   A61B6/00 300J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-258714(P2014-258714)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-116736(P2016-116736A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】田邊 晃一
(72)【発明者】
【氏名】古井 真悟
(72)【発明者】
【氏名】岸原 弘之
(72)【発明者】
【氏名】木村 健士
(72)【発明者】
【氏名】白井 太郎
(72)【発明者】
【氏名】土岐 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲
(72)【発明者】
【氏名】堀場 日明
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−203074(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0183560(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギーの放射線と低エネルギーの放射線とを照射する放射線源と、
放射線を吸収する1方向に伸びる吸収体が1方向と直交する方向に配列されているとともに、放射線が透過することによりタルボ干渉を生じさせる格子と、
高エネルギーの放射線に係る前記格子の自己像を検出する高エネルギー放射線検出面と、低エネルギーの放射線に係る前記格子の自己像を検出する低エネルギー放射線検出面とを備えた検出部とを備え、
前記放射線源、前記格子、および前記検出部の位置関係が保たれたまま前記検出面上で被写体の投影が移動するように前記放射線源、前記格子、および前記検出部で構成される撮像系と前記被写体との相対位置を変更させる位置変更部と
前記検出部が前記高エネルギー放射線検出面で放射線を検出した結果から第1の自己像をイメージングするとともに、前記検出部が前記低エネルギー放射線検出面で放射線を検出した結果から第2の自己像をイメージングする自己像生成部と、
前記自己像生成部がイメージングした高エネルギーの放射線に係る前記第1の自己像から被写体の第1の透視画像または第1の小角散乱画像を生成するとともに、前記自己像生成部がイメージングした低エネルギーの放射線に係る前記第2の自己像から被写体の第2の透視画像または第2の小角散乱画像を生成する透視画像生成部とを備えることを特徴とする放射線位相差撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線位相差撮影装置において、
前記格子は、高エネルギーの放射線が透過する部分と、低エネルギーの放射線が透過する部分とを有する1つの格子であり、
前記検出部が有する前記高エネルギー放射線検出面から前記格子までの距離と、前記低エネルギー放射線検出面から前記格子までの距離とは互いに異なり、前記検出部が有する前記高エネルギー放射線検出面から前記格子までの距離は高エネルギーの放射線に対応するタルボ距離に基づいて設定され、前記低エネルギー放射線検出面から前記格子までの距離は低エネルギーの放射線に対応するタルボ距離に基づいて設定されていることを特徴とする放射線位相差撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線位相差撮影装置において、
前記位置変更部が前記高エネルギー放射線検出面と前記低エネルギー放射線検出面との位置関係を保った状態で前記検出部を移動させることを特徴とする放射線位相差撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線位相差撮影装置において、
前記自己像生成部が、前記撮像系と前記被写体との相対位置を変更する際の移動方向に幅狭の画像を時系列順に前記移動方向に並べてつなぎあわせることにより、前記第1の自己像および前記第2の自己像をイメージングすることを特徴とする放射線位相差撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線位相差撮影装置において、
前記位置変更部は、前記放射線源、前記格子、および前記検出部の位置関係が保たれたまま前記検出面上で被写体の投影が平行移動するように前記放射線源、前記格子、および前記検出部で構成される撮像系と前記被写体との相対位置を変更させることを特徴とする放射線位相差撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を透過した放射線の位相差を利用して物体の内部構造をイメージングすることができる放射線位相差撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体に放射線を透過させて物体の内部構造をイメージングする放射線撮影装置として様々なものが考え出されている。このような放射線撮影装置の一般的なものとしては、物体に放射線を当て、物体を通過させることにより放射線の投影像を撮影するものである。このような投影像には、放射線を通しやすさに応じて濃淡が現れており、これが物体の内部構造を表している。
【0003】
このような放射線撮影装置では、ある程度放射線を吸収する性質を有する物体しか撮影することができない。例えば生体軟部組織などは、放射線をほとんど吸収しない。一般的な装置でこのような組織を撮影したとしても、投影像にはほとんど何も写らない。このように放射線を吸収しない物体の内部構造をイメージングしようとするときは、一般的な放射線撮影装置では原理上の限界がある。
【0004】
そこで、透過放射線の位相差を利用して物体の内部構造をイメージングする放射線位相差撮影装置が考え出されてきている。このような装置は、タルボ干渉を利用して物体の内部構造をイメージングする。
【0005】
タルボ干渉について説明する。図11の放射線源53からは、位相のそろった放射線が照射されている。この放射線がスダレ状となっている位相格子55を通過させると、位相格子55から所定の距離(タルボ距離)離れた投影面上に位相格子55の像が現れる。この像を自己像と呼ぶ。自己像は、投影面が位相格子55からタルボ距離だけ離れた位置でしか生じないものであり、単なる位相格子55の投影像ではない。自己像は、光の干渉によって生じた干渉縞から構成される。タルボ距離において位相格子55の自己像が現れる理由は放射線源53から生じる放射線の位相がそろっているからである。放射線の位相が乱れると、タルボ距離に表れる自己像も乱れる。
【0006】
放射線位相差撮影装置は自己像の乱れを利用して物体の内部構造をイメージングする。放射線源と位相格子55との間に物体を置いたものとする。この物体は、放射線をほとんど吸収しないので、物体に入射した放射線のほとんどは位相格子55側に出射する。
【0007】
放射線は物体を完全に素通りであったかいうとそうではない。放射線の位相が物体を通過する間に変わるのである。物体を出射した放射線は位相が変化したまま位相格子55を通過する。この放射線をタルボ距離に置いた投影面で観察すると、位相格子55の自己像に乱れが生じている。この位相格子55の乱れの程度は放射線の位相変化を表している。
【0008】
物体を透過した放射線の位相が具体的にどの程度変更するかは、放射線が物体のどこを通過したかによって変わる。仮に物体が均質な構成であれば、放射線の位相の変化は物体のどこを通っても同じである。しかし、一般的に物体は何らかの内部構造を有している。このような物体に放射線を透過させると位相の変化が同じとならないのである。
【0009】
したがって、位相の変化が分かれば物体の内部構造を知ることができる。位相の変化はタルボ距離における位相格子55の自己像を観察することで知ることができる。自己像の観察はタルボ距離に置かれた放射線検出器で実行される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許公開第2009104560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の放射線位相差撮影装置には次のような問題点がある。
すなわち、従来の放射線位相差撮影装置は、鮮明な透視像を得るのが難しい。撮影に用いる放射線のエネルギーを最適化することができないからである。
【0012】
放射線位相差撮影装置の放射線源から発する放射線のエネルギーは、何であってもいいというわけはない。例えば、放射線源が発する放射線のエネルギーが低すぎると、放射線が物体の中で吸収されてしまい透過しにくくなる。このような低いエネルギーの放射線は撮影に不向きである。物体の内部構造を知るには、放射線が物体を透過することで生じる自己像の乱れを観察する必要があるからである。
【0013】
かといって、放射線源が発する放射線のエネルギーが高すぎると、放射線の位相は物体の影響を受けにくくなり、放射線は物体と相互作用せずにそのまま素通りしてしまう。このような高いエネルギーの放射線は撮影に不向きである。物体の内部構造を知るには、放射線が物体を透過することで生じる自己像の乱れを観察する必要があるからである。このように放射線位相差撮影をするときには撮影に適した放射線のエネルギーというものがある。撮影に最適のエネルギーは被写体によって異なる。鮮明な透視像を得ようとすれば、放射線のエネルギーを変えて撮影をやり直したほうがよい場合が出てくる。
【0014】
そもそも、従来装置は、放射線のエネルギーを1つに定め、それに合わせて位相格子の構成や検出素子との離間距離などを設定したものとなっている。したがって、従来装置はもとより放射線のエネルギーを変えて撮影を繰り返すような構成とはなっていない。
【0015】
とはいえ、タルボ干渉の原理からすると、従来装置であっても放射線のエネルギーの異なる撮影を繰り返すことは不可能というわけではない。しかし、従来装置においてこのような撮影をするのは極めて煩雑な作業となる。放射線のエネルギーによってタルボ距離は変化する。したがって、位相格子55から自己像が現れる位置までの距離は放射線のエネルギーによって変わることになる。放射線のエネルギーの異なる撮影を繰り返すには、放射線のエネルギーを変える度に位相格子55と放射線検出器の離間距離を調整し直さなければならない。
【0016】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数のエネルギーの放射線を用いた物体の撮影を簡便に行うことができる放射線位相差撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線位相差撮影装置は、高エネルギーの放射線と低エネルギーの放射線とを照射する放射線源と、放射線を吸収する1方向に伸びる吸収体が1方向と直交する方向に配列されているとともに、放射線が透過することによりタルボ干渉を生じさせる格子と、高エネルギーの放射線に係る格子の自己像を検出する高エネルギー放射線検出面と、低エネルギーの放射線に係る格子の自己像を検出する低エネルギー放射線検出面とを備えた検出部とを備え、放射線源、格子、および検出部の位置関係が保たれたまま検出面上で被写体の投影が移動するように放射線源、格子、および検出部で構成される撮像系と被写体との相対位置を変更させる位置変更部と、検出部が高エネルギー放射線検出面で放射線を検出した結果から第1の自己像をイメージングするとともに、検出部が低エネルギー放射線検出面で放射線を検出した結果から第2の自己像をイメージングする自己像生成部と、自己像生成部がイメージングした高エネルギーの放射線に係る第1の自己像から被写体の第1の透視画像または第1の小角散乱画像を生成するとともに、自己像生成部がイメージングした低エネルギーの放射線に係る第2の自己像から被写体の第2の透視画像または第2の小角散乱画像を生成する透視画像生成部とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
[作用・効果]本発明によれば、複数のエネルギーの放射線を用いた物体の撮影を簡便に行うことができる放射線位相差撮影装置が提供できる。すなわち、本発明の構成は、デュアルエナジー出力タイプの放射線源と高エネルギー放射線検出面および低エネルギー放射線検出面を備えた検出部とを備え、高エネルギーの放射線による撮影と低エネルギーの放射線による撮影との二種類の撮影を行えるようにしている。そして、撮像系と被写体との相対位置を変更させながら被写体をスキャンするように撮影すれば、二種類の撮影を一度に完了することができる。
また、自己像生成部が高エネルギーの放射線についての自己像と低エネルギーの放射線についての自己像とを個別にイメージングすれば、異なる放射線の条件のそれぞれについて確実に自己像を生成することができる。
また、透視画像生成部が高エネルギーの放射線についての透視画像と低エネルギーの放射線についての透視画像とを個別に生成すれば、異なる放射線の条件のそれぞれについて確実に透視画像を生成することができる。
【0019】
また、上述の放射線位相差撮影装置において、格子は、高エネルギーの放射線が透過する部分と、低エネルギーの放射線が透過する部分とを有する1つの格子であり、検出部が有する高エネルギー放射線検出面から格子までの距離と、低エネルギー放射線検出面から格子までの距離とは互いに異なり、検出部が有する高エネルギー放射線検出面から格子までの距離は高エネルギーの放射線に対応するタルボ距離に基づいて設定され、低エネルギー放射線検出面から格子までの距離は低エネルギーの放射線に対応するタルボ距離に基づいて設定されていればより望ましい
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的に示している。格子を起点として自己像が現れる位置までの距離を示すタルボ距離は、放射線のエネルギーによって変化する。高エネルギー放射線検出面から格子までの距離と、低エネルギー放射線検出面から格子までの距離とを独立に設定するようにすれば、検出面から格子までの距離を異なるエネルギーの放射線について確実にタルボ距離に設定することができる。
【0021】
また、上述の放射線位相差撮影装置において、位置変更部が高エネルギー放射線検出面と低エネルギー放射線検出面との位置関係を保った状態で検出部を移動させればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的に示している。高エネルギー放射線検出面と低エネルギー放射線検出面との位置関係を保った状態で検出部が移動されれば、検出面から格子までの距離が確実にタルボ距離に保たれた状態で被写体のスキャンを行うことができる。
【0023】
また、上述の放射線位相差撮影装置において、自己像生成部が、撮像系と被写体との相対位置を変更する際の移動方向に幅狭の画像を時系列順に移動方向に並べてつなぎあわせることにより、第1の自己像および第2の自己像をイメージングすればより望ましい。
【0024】
また、上述の放射線位相差撮影装置において、位置変更部は、放射線源、格子、および検出部の位置関係が保たれたまま検出面上で被写体の投影が平行移動するように放射線源、格子、および検出部で構成される撮像系と被写体との相対位置を変更させればより望ましい。
【0025】
(削除)
【0026】
(削除)
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数のエネルギーの放射線を用いた物体の撮影を簡便に行うことができる放射線位相差撮影装置が提供できる。すなわち、本発明の構成は、デュアルエナジー出力タイプの放射線源と高エネルギー放射線検出面および低エネルギー放射線検出面を備えた検出部とを備え、高エネルギーの放射線による撮影と低エネルギーの放射線による撮影との二種類の撮影を行えるようにしている。そして、撮像系と被写体との相対位置を変更させながら被写体をスキャンするように撮影すれば、二種類の撮影を一度に完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1に係る装置の全体構成を説明する機能ブロック図である。
図2】実施例1に係る撮像系の移動を説明する模式図である。
図3】実施例1に係る位相格子の構成を説明する平面図である。
図4】実施例1に係る検出面の構成を説明する平面図である。
図5】実施例1に係るFPDが有する2つの検出面を説明する模式図である。
図6】実施例1に係る自己像生成部を説明する模式図である。
図7】実施例1に係る自己像生成部を説明する模式図である。
図8】実施例1に係る自己像生成部を説明する模式図である。
図9】実施例1に係る透視画像を説明する模式図である。
図10】実施例1に係る透視画像を説明する模式図である。
図11】従来構成に係る装置を説明する模式図である。
【実施例1】
【0029】
続いて、発明を実施するための形態について実施例を参照しながら説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。なお、実施例におけるFPDはフラットパネルディテクタの略である。本発明の放射線位相差撮影装置は、放射線吸収が少ない被写体Mに対しても撮影ができるので、工業用途としては基板の透視、医療用途としては乳房の透視などに向いている。
【0030】
本発明に係る放射線位相差撮影装置について説明する。図1は、本発明に係る撮影装置1の全体構成を示している。撮影装置1は、図1に示すように被写体Mを載置する載置台2と、載置台2の上側に設けられるとともに角錐形状に広がるX線ビームを照射するX線源3と、X線源3から生じ、載置台2上の被写体Mを透過してきたX線を検出するFPD4を備えている。FPD4と載置台2との挟まれる位置にはタルボ干渉を生じさせる位相格子5が設けられている。X線源3は本発明の放射線源に相当し、FPD4は本発明の検出部に相当する。位相格子5は本発明の格子に相当する。
【0031】
撮影装置1は、タルボ干渉を利用した放射線撮影装置である。したがって、X線源3は位相のそろった放射状に広がるX線ビームを出力する構成となっている。また、位相格子5とFPD4との間の距離は、タルボ距離に設定されている。この設定により位相格子5の自己像がFPD4のX線を検出する検出面上に現れることになる。本発明における検出面は2つあり、それぞれの機能は異なっている。この点についての詳細は後述のものとする。
【0032】
自己像生成部11は、FPD4の出力に基づいて位相格子5の自己像を写し込んだ自己像画像P0a,P0bを生成する。すなわち、自己像生成部11は、FPD4の有する2つの検出面で検出された検出データをそれぞれ独立したものとして扱い、2種類の自己像画像P0a,P0bを生成する構成となっている。生成された自己像画像P0a,P0bは透視画像生成部12に出力される。透視画像生成部12は、位相格子5の自己像画像P0a,P0bの各々に基づいて被写体Mで生じたX線の位相差がイメージングされた透視画像P1a,P1bを生成する。
【0033】
撮像系移動機構13は、図2に示すようにX線源3,FPD4,位相格子5を互いの位置関係を保った状態で載置台2に対して移動させる構成である。撮像系移動機構13により、X線源3,FPD4,位相格子5は、載置台2に平行な方向に移動することができる。撮像系移動機構13は、X線源3,位相格子5,およびFPD4の位置関係が保たれたままFPD4の検出面で被写体Mの投影が直線的に移動するように撮像系3,4,5および被写体Mの相対位置を変更させる。撮像系3,4,5は、X線を照射するX線源3と、放射線を吸収する1方向に伸びる吸収線5aが1方向と直交する方向に配列されている位相格子5と、放射線を検出する検出素子が縦横に配列された検出面でタルボ干渉によって生じる位相格子5の自己像を検出するFPD4とから構成される。撮像系移動機構13は、後述の高エネルギーX線検出面4bと低エネルギーX線検出面4aとの位置関係を保った状態でFPD4を移動させる。吸収線5aは本発明の吸収体に相当し、撮像系移動機構13は本発明の位置変更部に相当する。
【0034】
実施例1の場合、撮像系3,4,5に対する被写体Mの相対位置の変更は被写体Mを動かさずに撮像系3,4,5を移動させることで実行される。なお、撮像系移動制御部14は、撮像系移動機構13を制御する目的で設けられている。
【0035】
X線源制御部6は、X線源3を制御する目的で設けられている。撮影中、X線源制御部6は、パルス状にX線ビームを繰り返し出力するようにX線源3を制御する。X線源3がX線ビームを出力する度に、FPD4は載置台2上の被写体Mおよび位相格子5を透過してきたX線を検出し検出データを自己像生成部11に送出する。このように本発明の装置は、X線撮影を連写することにより自己像を生成する構成となっている。
【0036】
X線撮影の連写は、X線源制御部6と撮像系移動制御部14とが互いに協働して実現される。すなわち、両者が協働することにより、高エネルギーX線検出面4a上において高エネルギーX線検出面4aの短手方向の幅(後述の図4の縦方向、すなわち移動方向についての幅)分に相当する移動量だけ撮像系3,4,5を移動させる動作と、X線ビームが照射される動作とが互いに繰り返される。したがって、連写を続けていくとFPD4上の被写体Mの写り込む位置が高エネルギーX線検出面4aの短手方向の幅分だけ移動していく。このように実施例1に係るX線源制御部6は、撮像系移動機構13が検出面上で被写体Mの投影が高エネルギーX線検出面4aの短手方向の幅だけ移動させるごとにX線源3に放射線の照射を実行させる。なお、高エネルギーX線検出面4aの短手方向の幅は、低エネルギーX線検出面4bの短手方向の幅に一致している。
【0037】
図3は、位相格子5について説明している。位相格子5は、FPD4の検出面の全域にX線ビームの投影が写り込むような形状をしている。したがって、位相格子5は、FPD4の検出面と同じように撮像系3,4,5の移動方向を縦方向とし、移動方向と直交する方向を横方向とする矩形の形状をしている。
【0038】
位相格子5は、X線を吸収する線状に伸びる複数の吸収線5aを有している。吸収線5aは、延びる方向に直交する方向に所定のピッチで配列している。この吸収線5aは、撮像系3,4,5の移動方向に伸びている。
【0039】
図1に示す主制御部21は、各部6,11,12,14を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部21は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各部を実現している。また、これら各部は、これらを担当する演算装置に分割して実行されてもよい。各部は必要に応じて記憶部27にアクセスすることができる。操作卓25は、操作者の指示を入力する目的で設けられている。また、表示部26は、透視像を表示する目的で設けられている。
【0040】
<本発明の特徴的な構成>
続いて、本発明の特徴的な構成について説明する。本発明は、X線源3,FPD4,自己像生成部11,透視画像生成部12に特徴がある。
【0041】
<本発明の特徴的な構成:デュアルエナジー出力タイプのX線源>
本発明の特徴的な構成の一つとして、X線源3が異なるエネルギーのX線を同時に出力することにある。すなわち、X線源3は、例えば8.5kevのエネルギーを有する低エネルギーのX線(長波長X線)と、例えば22kevのエネルギーを有する高エネルギーのX線(短波長X線)とを出力する。低エネルギーのX線と高エネルギーのX線とは互いに異なる方向に出射されるので、X線源3は、エネルギーの異なるX線が重なり合ったものを出力するわけではない。このようにX線源3から出力されるX線にエネルギーに違いが見られるのは、出力されるX線の波長が異なることに由来する。本発明のX線源3は、高エネルギーのX線と低エネルギーのX線とを同時に照射する。
【0042】
位相格子5には、低エネルギーのX線が通過する部分と高エネルギーのX線が通過する部分とが存在する。この2つの部分はオーバーラップしていない。また、この2つの部分の間で位相格子5の吸収線のピッチを同じにすることにできるし、違えるようにすることもできる。
【0043】
<本発明の特徴的な構成:2つの検出面を有するFPD>
FPD4の検出面は、図1に示すように、低エネルギーのX線検出用の低エネルギーX線検出面4aと、高エネルギーのX線検出用の高エネルギーX線検出面4bとを備えている。 図4は、FPD4の低エネルギーX線検出面4aについて説明している。FPD4の低エネルギーX線検出面4aには縦20μm×横20μmの矩形をしている検出素子が縦横に配列されている。検出素子の縦方向は撮像系移動機構13が実現する撮像系3,4,5の移動方向に一致している。FPD4の低エネルギーX線検出面4aは、撮像系3,4,5の移動方向を縦方向とし、移動方向と直交する方向を横方向とする矩形の形状をしている。低エネルギーX線検出面4aは、縦方向に20cmの幅があり、横方向に2cmの幅がある。これら検出素子および検出面の大きさは適宜変更が可能である。
【0044】
なお、高エネルギーX線検出面4bも、図4で説明した低エネルギーX線検出面4aと同様な構成となっている。次に、2つの検出面4a,4bの位置関係について説明する。2つの検出面4a,4bは、横方向が撮像系3,4,5の移動方向に一致する向きに配列されている。このように本発明のFPD4は、高エネルギーのX線に係る位相格子5の自己像を検出する高エネルギーX線検出面4bと、低エネルギーのX線に係る位相格子5の自己像を検出する低エネルギーX線検出面4aとを備えている。
【0045】
図5に示すように、X線源3が照射するX線のエネルギーは低エネルギーX線検出面4aに入射するものと高エネルギーX線検出面4bに入射するものとでは互いに異なっている。すなわち、X線源3は、低エネルギーX線検出面4aに図5の斜線で示す低エネルギーのX線が入射し、高エネルギーX線検出面4bに図5の網掛けで示す高エネルギーのX線が入射するように動作する。互いの検出面4a,4bにX線が入射することにより検出面4a,4bにはタルボ干渉による位相格子5の自己像が写り込むことになる。
【0046】
検出面4a,4bに位相格子5の自己像が現れるのには条件がある。すなわち、検出面4a,4bとX線源3との距離がタルボ距離となっていなければならない。このタルボ距離は、X線の波長によって変化する。すなわち、タルボ距離は、X線の波長が長くなるのに応じて短くなる性質がある。そこで、本発明の構成によれば、図1に示すように低エネルギーX線検出面4aの方が高エネルギーX線検出面4bよりも位相格子5に近い側に位置させるようにしている。つまり、2つの検出面4a,4bはいずれも位相格子5からタルボ距離だけ離れている。しかし、2つの検出面4a,4bの間で対象とするX線の波長が違うので、2つの検出面4a,4bは、図1に示すような配置となったのである。
【0047】
したがって、FPD4が有する高エネルギーX線検出面4bから位相格子5までの距離と、低エネルギーX線検出面4aから位相格子5までの距離とは互いに異なる。すなわち、位相格子5と低エネルギーX線検出面4aとの距離は、低エネルギーのX線に最適化されており、位相格子5と高エネルギーX線検出面4bとの距離は、高エネルギーのX線に最適化されている。したがってX線源3で生じた低エネルギーのX線は位相格子5を通過し、低エネルギーX線検出面4a上に位相格子5の自己像を写し出す。同様に、X線源3で生じた高エネルギーのX線は位相格子5を通過し、高エネルギーX線検出面4b上に位相格子5の自己像を写し出す。
【0048】
このように、実施例1のFPD4は、低エネルギーX線検出面4aを有する検出器ユニットと高エネルギーX線検出面4bを有する検出器ユニットとの2つの検出器ユニットから構成される。これら検出器ユニットの相対位置は、撮影中に変化することがない。また、これら検出器ユニットの出力は互いに独立している。
【0049】
<本発明の特徴的な構成:2つの自己像画像を生成する自己像生成部>
低エネルギーX線検出面4aに係るFPD4の出力と高エネルギーX線検出面4bに係るFPD4の出力とは自己像生成部11に出力される。自己像生成部11は、低エネルギーX線検出面4aに係るFPD4の出力に基づいて自己像画像P0aを生成する一方で、高エネルギーX線検出面4bに係るFPD4の出力に基づいて自己像画像P0bを生成する。互いの自己像画像P0a,P0bは、同じ位相格子5の自己像が写り込んでいる。
【0050】
ここで、図5のような載置台2に被写体Mを置いた撮影を考える。この場合、図5の斜線で示す低エネルギーのX線と図5の網掛けで示す高エネルギーのX線は、それぞれ被写体Mの異なる部分を通って検出面4a,4bに入射する。従って、図5の様な状態では、低エネルギーのX線についての撮影は低エネルギーのX線が通過する被写体Mの1部分Maについてしか行えず、高エネルギーのX線についての撮影は高エネルギーのX線が通過する被写体Mの1部分Mbについてしか行えないということになる。
【0051】
そこで、本発明の構成では、低エネルギーのX線についての撮影と高エネルギーのX線についての撮影とを被写体全域について実行できるように工夫がされている。すなわち、本発明における自己像の撮影は、被写体Mに対して撮像系3,4,5が移動されながらX線を連射することで実行されるのである。図6は、撮像系3,4,5が撮影中に移動している様子を示している。撮像系3,4,5を移動していくと、低エネルギーX線検出面4a,高エネルギーX線検出面4bがこの順に被写体Mに近づいて、この順に被写体Mから遠ざかる。図7は、低エネルギーX線検出面4a,高エネルギーX線検出面4bが被写体Mの一端部を通過していく様子を示している。図7の左側では、被写体Mの一端部が低エネルギーX線検出面4aで撮影されている。図7の右側では、被写体Mの一端部が高エネルギーX線検出面4bで撮影されている。このように被写体Mの一端部は、検出面4a,4bのそれぞれで撮影されることになる。
【0052】
自己像生成部11は、撮像系3,4,5が移動されながら連射されたX線の検出結果に基づいて2枚の自己像画像P0a,P0bを生成する。自己像生成部11は、X線が照射される度に照射された低エネルギーのX線の検出結果をFPD4から受信し、撮像系3,4,5の移動方向に幅狭の短冊状の画像を生成する。そして、自己像生成部11は、図8に示すように複数生成した短冊状の画像を撮影の時系列順に撮像系3,4,5の移動方向に並べてつなぎ合わせることにより被写体Mの全域が写り込んだ自己像画像P0aを生成する。とはいえ、実際に自己像画像P0aに写り込んでいるのは、被写体Mそのものではなく、被写体Mにより乱れた位相格子5の自己像である。
【0053】
同様に、自己像生成部11は、X線が照射される度に照射された高エネルギーのX線の検出結果をFPD4から受信し、撮像系3,4,5の移動方向に幅狭の短冊状の画像を生成する。そして、自己像生成部11は、複数生成した短冊状の画像を撮影の時系列順に撮像系3,4,5の移動方向に並べてつなぎ合わせることにより被写体Mの全域が写り込んだ自己像画像P0bを生成する。このとき自己像画像P0bが生成される様子は図8と同様である。とはいえ、実際に自己像画像P0bに写り込んでいるのは、被写体Mそのものではなく、被写体Mにより乱れた位相格子5の自己像である。
【0054】
このように、自己像生成部11は、低エネルギーX線検出面4aの検出結果に基づき被写体全域についての自己像画像P0aを生成するとともに、高エネルギーX線検出面4bの検出結果に基づき被写体全域についての自己像画像P0bを生成する。自己像画像P0aは、被写体Mに低エネルギーのX線を当てたときに観察される位相格子の自己像の乱れを表しており、自己像画像P0bは、被写体Mに高エネルギーのX線を当てたときに観察される位相格子の自己像の乱れを表している。このように、自己像生成部11は、FPD4が高エネルギーX線検出面4bでX線を検出した結果から自己像をイメージングするとともに、FPD4が低エネルギーX線検出面4aでX線を検出した結果から自己像をイメージングする。
【0055】
<本発明の特徴的な構成:2つの透視画像を生成する透視画像生成部>
自己像生成部11は、自己像画像P0a,P0bを透視画像生成部12に送出する。透視画像生成部12は、自己像画像P0aに基づいて被写体Mの透視像が写り込んだ透視画像P1aを生成するとともに、自己像画像P0bに基づいて被写体Mの透視像が写り込んだ透視画像P1bを生成する。このように、透視画像生成部12は、自己像生成部11がイメージングした高エネルギーのX線に係る自己像から被写体Mの透視画像を生成するとともに、自己像生成部11がイメージングした低エネルギーのX線に係る自己像から被写体Mの透視画像を生成する。生成された透視画像P1a,P1bの各々は表示部26に並べて表示される。
【0056】
図9図10は、球形の被写体Mを撮影したときに得られる透視画像P1a,P1bを模式的に表している。このような被写体Mは、周縁部はX線を通過しやすく、中心部はX線を吸収しやすいという性質がある。
【0057】
図9は透視画像P1aが生成される様子を示している。透視画像P1aは、低エネルギーのX線で被写体Mをイメージングした結果となっている。透視画像P1aには、被写体Mの周縁部は被写体Mの内部の様子が鮮明に写り込んでいる。低エネルギーのX線は、被検体のX線を通過しやすい部分の撮影に向いている。しかし、透視画像P1aに写り込む被写体Mの中心部は必ずしも鮮明であるとは言えない。低エネルギーのX線は、被写体Mの中心部を透過できない場合があるからである。本発明の装置は、被写体Mを通り抜けたX線の位相がどの程度変化したかを可視化するものである。したがって、被写体MをX線が十分に通り抜けなければ被写体内部の鮮明なイメージングはできない。
【0058】
図10は透視画像P1bが生成される様子を示している。透視画像P1bは、高エネルギーのX線で被写体Mをイメージングした結果となっている。透視画像P1bには、被写体Mの中心部に被写体Mの内部の様子が鮮明に写り込んでいる。高エネルギーのX線は、被検体のX線を通過しにくい部分の撮影に向いている。しかし、透視画像P1bに写り込む被写体Mの周縁部は必ずしも鮮明であるとは言えない。高エネルギーのX線は、被写体Mの周縁部を素通りしてしまったからである。本発明の装置は、被写体Mを通り抜けたX線の位相がどの程度変化したかを可視化するものである。したがって、被写体Mを通り抜けたX線の位相が十分に変化していないと被写体内部の鮮明なイメージングはできない。
【0059】
本発明の装置によれば、撮影条件の異なる2つの透視画像P1a,P1bを見比べることで被写体Mの内部の様子を正確に知ることができる。すなわち、被写体Mの周縁部についての内部構造を知りたければ透視画像P1aを参照すればよいし、被写体Mの中心部についての内部構造を知りたければ透視画像P1bを参照すればよい。
【0060】
以上のように、本発明によれば、複数のエネルギーのX線を用いた物体の撮影を簡便に行うことができるX線位相差撮影装置が提供できる。すなわち、本発明の構成は、デュアルエナジー出力タイプのX線源3と高エネルギーX線検出面4bおよび低エネルギーX線検出面4aを備えたFPD4とを備え、高エネルギーのX線による撮影と低エネルギーのX線による撮影との二種類の撮影を行えるようにしている。そして、撮像系と被写体Mとの相対位置を変更させながら被写体Mをスキャンするように撮影すれば、二種類の撮影を一度に完了することができる。
【0061】
また、本発明は小角散乱を利用した透視画像にも応用することができるので、まずは小角散乱について簡単に説明する。物体にX線を当てると、物体の中で一部のX線の進行方向が変えられる現象が起こる。このような現象をX線の散乱という。X線の散乱のうち、進行方向がほとんど変化しない散乱を小角散乱と呼ぶ。このような小角散乱に係るX線は、FPD4に検出され自己像生成部11が生成する自己像画像P0a,P0bに写り込む。透視画像生成部12は、自己像画像P0a,P0bのそれぞれから小角散乱に係る成分を抽出して小角散乱画像を生成することができる。このとき生成される小角散乱画像は、自己像画像P0aに基づいて生成されたものと自己像画像P0bに基づいて生成されたものとの2つがある。
【0062】
小角散乱という現象を考えるときに被写体内部を構成する構造物を粒子として捉えると分かりやすい。この粒子にX線が当たると小角散乱が生じると考えるのである。低エネルギーのX線を被写体に当てて生じた小角散乱X線は、被写体内部を構成する粒子のうち比較的径の大きなものに由来している。一方、高エネルギーのX線を被写体に当てて生じた小角散乱X線は、被写体内部を構成する粒子のうち比較的径の小さなものに由来している。このように、小角散乱画像の撮影時に用いるX線の波長を変えると、小角散乱画像に写り込む像が変わってくる。低エネルギーのX線を被写体に当てて撮影した小角散乱画像は、被写体内部を構成する径の大きな粒子を写し込んだものとなっており、高エネルギーのX線を被写体に当てて撮影した小角散乱画像は、被写体内部を構成する径の小さな粒子を写し込んだものとなっている。
【0063】
本発明の構成によれば、一度のスキャンで低エネルギーのX線を用いた撮影と高エネルギーのX線を用いた撮影とを同時に行うことができるので、撮影の対象が異なる2枚の小角散乱画像を同時に取得することができる。すなわち、低エネルギーのX線に係る自己像画像P0aからは、被写体内部を構成する径の大きな粒子を写し込んだ小角散乱画像が生成でき、高エネルギーのX線に係る自己像画像P0aからは、被写体内部を構成する径の小さな粒子を写し込んだ小角散乱画像が生成できる。
【0064】
本発明は上述の構成に限られず、下記のように変形実施することもできる。
【0065】
(1)上述の実施例によれば、撮像系移動機構13は、FPD4,位相格子5とともにX線源3を移動させる構成としていたが、本発明はこれに限られない。X線源3,FPD4,位相格子5の位置関係を変えないようにFPD4,位相格子5を円弧の軌跡をたどって移動させるように撮像系移動機構13を構成することで被写体Mと撮像系との相対位置を変化させるようにしてもよい。また、撮像系3,4,5を移動させずに載置台2を移動させることにより被写体Mと撮像系との相対位置を変化させるようにしてもよい。
【0066】
(2)上述の構成によれば、被写体MをX線源3と位相格子5との間に載置するようにしていたが、本発明はこの構成に限られない。載置台2および被写体Mを位相格子5とFPD4との間に載置するようにしてもよい。
【0067】
(3)上述の実施例によれば、X線源3は、低エネルギーのX線と高エネルギーのX線を同時に照射していたが、本発明はこの構成に限られない。X線源3が低エネルギーのX線と高エネルギーのX線を交互に照射するように構成してもよい。
【0068】
(4)上述の実施例によれば低エネルギーX線検出面4aと高エネルギーX線検出面4bとは同じピッチで検出素子が配列されていたが、本発明はこの構成に限られない。検出面4a,4bの間で検出素子のピッチを変えるように構成してもよい。
【0069】
(5)上述の実施例によれば、低エネルギーのX線と高エネルギーのX線とは同じ位相格子5を通過するような構成となっていたが、本発明はこの構成に限られない。低エネルギーのX線が通過する低エネルギーX線位相格子5と、高エネルギーのX線が通過する高エネルギーX線位相格子5とを備え、低エネルギーX線位相格子5を構成する吸収線のピッチと高エネルギーX線位相格子5を構成する吸収線のピッチとを互いに変更するようにしてもよい。
【0070】
(6)上述の吸収線のピッチが異なる位相格子5を設ける構成において、低エネルギーのX線に係るタルボ距離と高エネルギーのX線におけるタルボ距離とを一致させる様に設定することもできる。この場合、低エネルギーX線検出面4aから位相格子5までの距離と高エネルギー放射線検出面4bから位相格子5までの距離とは一致する。
【0071】
(7)上述の実施例によれば、FPD4が自己像を直接に観察するような構成となっていたが、本発明はこの構成に限られない。検出面4a,4bを覆うように吸収格子を配置し、自己像と吸収格子との間で発生したモアレを検出面4a,4bで観察するような構成としてもよい。
【0072】
(8)上述のX線源3は、デュアルエナジー出力タイプとなっていたが、本発明はこの構成に限られない。これに代えて本発明のX線源3を広帯域のX線を出力するタイプの構成とすることもできる。このようなX線源3は様々な波長のX線を出力することになるから、低エネルギー放射線検出面4aおよび高エネルギー放射線検出面4bには、単色光のX線が入射するわけではない。ところが自己像の生成に関与できるX線の波長は、位相格子5から検出面4a,4bまでの距離に応じて決まる。したがって、本発明によっても低エネルギー放射線検出面4aに自己像を写し込むのはある特定の波長を有する低エネルギーのX線であり、高エネルギー放射線検出面4bに自己像を写し込むのはある特定の波長を有する高エネルギーのX線である。
このように、デュアルエナジー出力タイプのX線源3を用いなくても図9図10で説明した透視画像P1a、P1bを取得することができる。なお、検出面4a,4b上でどの波長のX線の自己像が現れるかは、位相格子5と検出面4a,4bとの距離だけではなく、位相格子5に配列される吸収線5aのピッチによっても決まる。したがって、自己像を発生させるX線の波長は、位相格子5と検出面4a,4bとの距離と、位相格子5の吸収線5aのピッチを適宜変更して選択することができる。
【符号の説明】
【0073】
3 X線源(放射線源)
4 FPD(検出部)
4a 低エネルギー放射線検出面
4b 高エネルギー放射線検出面
5 位相格子(格子)
11 自己像生成部(自己像生成部)
12 透視画像生成部(透視画像生成部)
13 撮像系移動機構(位置変更部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11