(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医療現場では、アテロームや石灰化した血管壁などによって血管が狭窄した患者に対して、インターベンション治療(IVR:Interventional Radiography)が行われる。インターベンション治療では、内部にガイドワイヤおよびデバイスを備えたカテーテルを被検体の血管内に挿入し、狭窄した血管の患部に対してデバイスによる処置を行う。
【0003】
血管内処置を行うデバイスとしては、血管壁を切削するローラブレ−ダの他に、血管狭窄部を拡張させるステントが挙げられる。ステントはステンレス鋼などの金属線材によって構成される格子状の筒状体であり、内部にはバルーンが設けられている。IVRにおいては、血管の細くなった部分にステントを配置する。そして配置されたステントをバルーンにより膨らませてステントを開大させる。開大したステントを血管内に留置することによって血管の狭窄部分を拡げ、血流を正常に保つことができる。
【0004】
ステントを用いてIVRの術式を行う場合、ステントの位置を確認するために、X線透視撮影装置を用いてX線画像を取得する。すなわち術者は被検体に低線量のX線を照射し、カテーテルやステントが映し出されるX線画像を連続で取得する。操作者は連続表示されるリアルタイムのX線画像Pを参照して、カテーテルやステントの血管内における位置を随時確認する。そして
図8(a)に示すように、血管101を介してカテーテル103を矢印の方向に通してステント105を患部である狭窄部107に到達させる。
【0005】
術者はX線画像Pを参照して狭窄部107とステント105との位置関係を随時確認しつつ、
図8(b)に示すようにバルーンを膨らませ、開大するステント105によって狭窄部107を拡張させる。血管101を辿ってカテーテル103を被検体の体内から抜き出すことによって、開大したステント105が血管内に留め置かれるので、患部の血流は正常に保たれる。
【0006】
近年ではより治療効果を向上させるために複数のステントを留置する場合が多い。この場合、ステント同士の間に隙間が生じると、その隙間において血管が狭窄する可能性がある。そのため、血管内におけるステントの位置を確認することがインターベンション治療において極めて重要である。
【0007】
従来では、被検体の体内に挿入されたステントの視認性を向上させるために、X線不透過性のマーカ109を備えるステント105を用いてX線画像を連続で撮影する。そして撮影された複数フレーム分のX線画像を重ね合わせる。重ね合わせる際に、各X線画像においてマーカ109の位置座標を検出し、検出されたマーカ109を基準として各X線画像に映るステント105の位置を合わせる。ステントの位置合わせとX線画像の重ね合わせを行うことにより、ステントが強調表示されたリアルタイムの画像データを取得できる(例えば、特許文献1、2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち従来例に係るX線透視撮影装置ではX線画像を重ね合わせる際に、ペースメーカーや、ガイドワイヤ同士が交差した点を例とする、X線不透過性の高い物体がマーカとして誤って認識される場合がある。この場合、ステントの位置合わせが正確に行われないので、ステントを正確に強調表示することが困難になる。
【0010】
このようなマーカ類似物の誤認識を防止する対策を検討した結果、操作者がX線画像を参照して、マーカの検出を行う範囲を画像上で設定する方法についての知見を得た。IVRにおいて、ステントは被検体の心拍によって、一定の軌跡を描くように周期的に移動する。すなわち
図9(a)に示すように、心拍1回の周期において生成されるX線画像PをX線画像Pa〜Peとする。そして各々のX線画像Pa〜Peに映るマーカ109をそれぞれ、マーカ109a〜109eとする。この場合、心拍の周期において、マーカ109はマーカ109a〜109eが描く軌跡Kに沿って移動する(
図9(b))。
【0011】
そこでステント105の映るX線画像に対して、軌跡Kを含む領域Lをカーソルで囲んで表示するなどの方法で、周期的なマーカ109の移動軌跡を含む所定の領域を設定する。そして、設定された領域Lの範囲内でのみマーカの検出を行わせる。この場合、領域Lの範囲外に位置するマーカ109の類似物Fがマーカ109として誤って検出されることを防止できる。マーカの移動軌跡の領域を設定する対象としては、静止画として得られたX線画像Pa〜Peのいずれか、またはX線画像Pa〜Peを連続表示する動画などが挙げられる。
【0012】
しかしこのような比較例に係る構成においてマーカの移動軌跡の範囲を設定する場合、操作者の負担が大きいという問題が懸念される。すなわち静止画であるX線画像Paを対象として領域Lを設定する場合、操作者はX線画像Pa〜Peの各々を参照しなければ軌跡Kを確認できない。この際に5枚のX線画像を全て画面上に映し出し、各々のX線画像に映るマーカの位置を視認する必要があるので、軌跡Kを確認する作業が煩雑となる。なお実際の操作では、心拍1回の周期について得られるX線画像は数十枚におよぶので、軌跡Kを確認する作業はより煩雑となる。
【0013】
さらに、X線画像Paに映るマーカの像はマーカ109aのみである。そのため操作者はX線画像Paに領域Lを設定する際に、他のX線画像Pb〜Peの各々に映るマーカの位置に基づいて、マーカの軌跡Kの位置を想像しながらカーソルを動かす必要がある。その結果、X線画像Paに表示される領域Lの範囲が、実際の軌跡Kの範囲と大きく異なる場合がある。すなわち実際には軌跡Kが領域Lからはみ出している場合や、領域Lが軌跡Kと比べて必要以上に広い範囲に設定される場合がある(
図9(c))。
【0014】
また、X線画像Pa〜Peによる動画を対象として領域Lを設定する場合、操作者は絶えず移動するマーカ109を参照して領域Lを設定する。この場合、移動するマーカ109の軌跡Kを正確にカーソルで囲む作業には高い集中力と技量とが要求されるので、操作者が受ける負担が増大する。その結果、動画に表示する領域Lの範囲が、実際の軌跡Kの範囲と大きく異なる場合がある。
【0015】
軌跡Kが設定した領域Lからはみ出している場合、領域Lの範囲外へ移動したマーカ109を検出できないので、マーカ109の位置合わせができなくなる。表示する領域Lが実際の軌跡Kより必要以上に広い範囲である場合、マーカの類似物Fが領域Lの範囲内に含まれるので、マーカの誤検出が発生する。このように比較例に係る装置では、軌跡Kを移動するマーカ109を正確かつ確実に検出できる領域Lを設定することが困難である。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、インターベンション治療においてステントのX線像を重ね合わせる際に、マーカの誤検出を好適に回避できるX線透視撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るX線透視撮影装置は、被検体にX線を照射するX線源と、前記被検体およびX線不透過性のマーカを透過したX線を検出して検出信号を出力するX線検出手段と、前記検出信号を用いて、所定のフレーム周期毎にX線画像を生成する画像生成手段と、前記複数のX線画像に基づいて、前記マーカの軌跡を生成する軌跡生成手段と、前記軌跡を含む領域を注目領域として設定する注目領域設定手段とを備え、
前記マーカの軌跡の生成に用いられた前記複数のX線画像の後に前記画像生成手段が生成した前記X線画像
におけるX線照射領域の一部である前記注目領域の範囲内を探索することによって当該X線画像中における前記マーカの位置を検出するマーカ検出手段を更に有することを特徴とするものである。
【0018】
[作用・効果]本発明に係るX線透視撮影装置によれば、軌跡生成手段と注目領域設定手段とを備えている。画像生成手段は所定のフレーム周期毎にX線画像を生成し、軌跡生成手段は複数のX線画像に基づいて、X線不透過性のマーカの軌跡を生成する。注目領域設定手段は、軌跡を含む領域を注目領域として設定する。操作者は軌跡生成手段が生成するマーカの軌跡を参照することによって容易に注目領域を設定できる。従って、注目領域を設定する際に操作者が受ける負担を軽減できる。
【0019】
マーカ検出手段は、
マーカの軌跡の生成に用いられた複数のX線画像の後に画像生成手段が生成したX線画像
におけるX線照射領域の一部である注目領域の範囲内を探索することによってX線画像からマーカの位置を検出する。注目領域はマーカが周期的に辿る軌跡を含んでいるので、マーカ検出手段はX線画像のうち注目領域の範囲内を探索することによって、確実にX線画像からマーカの位置を検出できる。
【0020】
さらに、X線画像にマーカの類似物が映っている場合であっても、類似物の位置を注目領域の範囲外とすることによって、マーカ検出手段が類似物をマーカと誤認識することを回避できる。その結果、より確実にマーカを検出できるので、操作者はより精密なインターベンション治療を実行することが可能となる。
なお、本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係るX線透視撮影装置は、被検体にX線を照射するX線源と、前記被検体およびX線不透過性のマーカを透過したX線を検出して検出信号を出力するX線検出手段と、前記検出信号を用いて、所定のフレーム周期毎にX線画像を生成する画像生成手段と、前記複数のX線画像に基づいて、前記マーカの軌跡を生成する軌跡生成手段と、前記軌跡生成手段が生成した前記マーカの軌跡を表示する表示手段と、術者によって操作され、前記軌跡を含む領域として前記術者が選択した範囲に関する情報を入力する入力手段と、前記入力手段によって入力された、前記軌跡を含む領域を注目領域として設定する注目領域設定手段とを備え、前記マーカの軌跡の生成に用いられた前記複数のX線画像の後に前記画像生成手段が生成した前記X線画像におけるX線照射領域の一部である前記注目領域の範囲内を探索することによって当該X線画像中における前記マーカの位置を検出するマーカ検出手段を更に有することを特徴とするものである。
本発明に係るX線透視撮影装置によれば、軌跡生成手段が生成するマーカの軌跡は表示手段によって表示される。操作者は表示手段によって表示されるマーカの軌跡を参照することによって容易かつ精密に軌跡を含む領域を選択できる。また選択された領域は入力手段に入力され、注目領域として設定される。従って、注目領域を設定する際に操作者が受ける負担を軽減できる。
【0021】
また、上述した発明において、前記軌跡生成手段は、前記複数のX線画像を加算処理することによって前記マーカが周期的に辿る軌跡を映す合成画像を生成することが好ましい。
【0022】
[作用・効果]本発明に係るX線透視撮影装置によれば、軌跡生成手段は複数のX線画像を加算処理することによって、マーカが周期的に辿る軌跡を映す合成画像を生成する。マーカはX線不透過性であるので、マーカの位置に相当する画素は他の画素と比べて画素値が大きく異なる。そのため複数枚のX線画像を加算処理して生成される合成画像では、マーカが辿る軌跡に相当する画素とそれ以外の画素とで画素値が異なる。従って、操作者は合成画像を参照してマーカが周期的に辿る軌跡を容易に確認できるので、マーカが周期的に辿る軌跡を含む注目領域を容易に設定することが可能となる。
【0023】
また、上述した発明において、前記軌跡生成手段が生成する前記合成画像はピークホールド画像であることが好ましい。
【0024】
[作用・効果]本発明に係るX線透視撮影装置によれば、軌跡生成手段は複数のX線画像に基づいてピークホールド画像を生成する。ピークホールド画像はX線画像の各々について、同じ位置にある画素ごとに画素値の最小値(または最大値)を選択することによって生成される画像である。マーカはX線不透過性であるので、マーカの位置に相当する画素は他の画素と比べて画素値が大きく異なる。すなわち、ピークホールド画像において、マーカが辿る軌跡に相当する画素にはマーカのX線像が映る。そのため、マーカが辿る軌跡に相当する画素とそれ以外の画素とで画素値が大きく異なる。従って、操作者は合成画像を参照してマーカが周期的に辿る軌跡をより容易に確認できるので、マーカが周期的に辿る軌跡を含む注目領域をより容易に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るX線透視撮影装置によれば、軌跡生成手段と注目領域設定手段とを備えている。画像生成手段は所定のフレーム周期毎にX線画像を生成し、軌跡生成手段は複数のX線画像に基づいて、X線不透過性のマーカの軌跡を生成する。注目領域設定手段は、軌跡を含む領域を注目領域として設定する。操作者は軌跡生成手段が生成するマーカの軌跡を参照することによって容易に注目領域を設定できる。従って、注目領域を設定する際に操作者が受ける負担を軽減できる。
【0026】
マーカ検出手段は、注目領域の範囲内を探索することによってX線画像からマーカの位置を検出する。注目領域はマーカが周期的に辿る軌跡を含んでいるので、マーカ検出手段はX線画像のうち注目領域の範囲内を探索することによって、確実にX線画像からマーカの位置を検出できる。
【0027】
さらに、X線画像にマーカの類似物が映っている場合であっても、類似物の位置を注目領域の範囲外とすることによって、マーカ検出手段が類似物をマーカと誤認識することを回避できる。その結果、より確実にマーカを検出できるので、操作者はより精密なインターベンション治療を実行することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は実施例に係るX線透視撮影装置の構成を説明する正面図であり、
図2は実施例に係るX線透視撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【0030】
<全体構成の説明>
実施例に係るX線透視撮影装置1は、水平姿勢をとる被検体Mを載置させる天板3と、被検体Mに対してX線を照射するX線管5と、X線管5から照射されたX線を検出して電荷信号に変換するX線検出器7とを備えている。X線管5とX線検出器7は、天板3を挟んで対向配置されている。
【0031】
X線検出器7はX線を検出する検出面を備えており、検出面にはX線検出素子が二次元的に配列されている。実施例では、X線検出器7としてフラットパネル型検出器(FPD)を用いることとする。X線管5は本発明におけるX線源に相当し、X線検出器7は本発明におけるX線検出手段に相当する。
【0032】
X線管5とX線検出器7は、C形アーム9の一端と他端にそれぞれ設けられている。C形アーム9はアーム保持部材11に保持されており、符号RAで示されるC型アーム9の円弧経路に沿ってスライド移動するように構成される。アーム保持部材11は支柱13の側面部に配設されており、x方向(天板3の長手方向、および被検体Mの体軸方向)に平行な水平軸RBの軸周りに回転可能となるように構成される。アーム保持部材11に保持されているC形アーム9は、アーム保持部材11に従ってx方向の軸周りに回動する。
【0033】
支柱13は床面に配設された支持基台15に支持されており、y方向(天板3の短手方向)に水平移動が可能となるように構成される。支柱13に支持されているアーム支持部材11およびC形アーム9は、支柱13の水平移動に従ってy方向へ移動する。コリメータ17はX線管5に設けられており、X線管5から照射されるX線を角錐となっているコーン状に制限する。
【0034】
ここでX線撮影装置1の構成をさらに詳細に説明する。X線撮影装置1は
図2に示すように、X線照射制御部19と、検出器制御部21と、アーム駆動制御部23と、画像処理部25とを備えている。X線照射制御部19はX線管5に高電圧を出力するように構成されている。X線照射制御部19が与えた高電圧出力に基づいて、X線管5が照射するX線量、およびX線を照射するタイミングが制御される。検出器制御部21は、X線検出器7において変換された電荷信号、すなわちX線検出信号を読み出す動作を制御する。
【0035】
アーム駆動制御部23はC型アーム9のスライド移動を制御する。符号RAで示す方向にC型アーム9がスライド移動することにより、X線管5およびX線検出器7は対向配置状態を維持したまま、各々の空間的位置が変化する。また、アーム駆動制御部23は、C型アーム9のスライド移動に加えて、アーム支持部材11の回転移動を統括制御する。X線管5およびX線検出器7はC型アーム9に設けられているので、アーム支持部材11の回転移動に従って、対向配置状態を維持したまま各々の空間的位置が変化する。
【0036】
画像処理部25は、X線画像生成部27と、X線画像検出部29と、ピークホールド画像生成部31と、注目領域表示部33と、特徴点検出部35と、積算部37とを備えている。画像生成部27はX線検出器7の後段に設けられており、X線検出器7から出力されたX線検出信号に基づいて、X線画像を断続的に生成する。X線画像検出部29は画像生成部27の後段に設けられており、生成された一連のX線画像のうち、直近に生成された所定の複数枚のX線画像を検出する。X線画像生成部27は本発明における画像生成手段に相当する。
【0037】
ピークホールド画像生成部31はX線画像検出部29の後段に設けられており、X線画像検出部29が検出した複数枚のX線画像を用いてピークホールド画像を生成する。ピークホールド画像は複数枚のX線画像の各々について、同じ位置にある画素ごとに画素値の最小値(または最大値)を選択することによって生成される画像である。ピークホールド画像は本発明における合成画像に相当し、ピークホールド画像生成部31は本発明における軌跡生成手段に相当する。
【0038】
注目領域表示部33はピークホールド画像生成部31の後段に設けられており、後述する入力部39に入力される指示内容に従って、ピークホールド画像に注目領域を重畳表示させる。特徴点検出部35は注目領域表示部33およびX線画像生成部27の後段に設けられている。特徴点検出部35はX線画像生成部27が生成するX線画像の各々について、ピークホールド画像に設定された注目領域の範囲内を探索して特徴点を検出する。
【0039】
積算部37は特徴点検出部35の後段に設けられている。積算部37は特徴点検出部35が検出した特徴点を基準として、画像生成部27が生成するX線画像を重ね合わせて積算画像を生成する。特徴点検出部35は本発明におけるマーカ検出手段に相当する。
【0040】
X線撮影装置1はさらに入力部39と、モニタ41と、記憶部43と、主制御部45とを備えている。入力部39は操作者の指示を入力するものであり、その一例としてキーボード入力式、マウス入力式、またはタッチ入力式のパネルなどが挙げられる。また操作者は入力部39を操作することにより、ピークホールド画像に対して注目領域を設定する。入力部39は本発明における注目領域設定手段に相当する。
【0041】
モニタ41は、画像生成部29が生成するX線画像を例とする各種画像を表示する。記憶部43は、画像生成部29やピークホールド画像生成部31などが生成する各種画像を記憶する。主制御部45は、X線照射制御部19、検出器制御部21、アーム駆動制御部23、画像処理部25、モニタ41、および記憶部43の各々を統括制御する。
【0042】
図3はインターベンション治療に使用するカテーテルシステム46の構成を示す概略図である。カテーテルシステム46は、カテーテル47と、ガイドワイヤ49と、ステント51とを備えている。ガイドワイヤ49は管状のカテーテル47の内部に挿通されている。ステント51はカテーテル47の内部に設けられており、ガイドワイヤ49に沿って矢印で示す方向へ移動を可能とする構成を有している。ステント51は、本発明におけるデバイスに相当する。
【0043】
ステント51はステンレス鋼などの金属線材によって網目の筒状に構成されるものであり、内部には図示しないバルーンが設けられている。また、ステント51は複数のマーカ53を備えている。実施例においてマーカ53の数は2つであるが、マーカ53の数は適宜変更してもよい。2つのマーカ53のうち、一方のマーカ53Aはステント51の先端側に設けられており、他方のマーカ53Bはステント51の基端側に設けられている。
【0044】
インターベンション治療においては、血管が狭窄した部分にステント51を配置する。そして配置されたステント51をバルーンにより膨らませ、膨らんだステント51を血管内に留置することによって狭窄していた血管を拡げて血流を正常に保つことができる。また、マーカ53の各々はX線不透過性の材料によって構成されており、X線画像におけるステント51の位置を明示する。マーカ53を構成する材料の一例としては、金、プラチナ、タンタルなどの金属が挙げられる。ステント51は本発明におけるデバイスに相当する。マーカ53は本発明における特徴点に相当する。
【0045】
<動作の説明>
次に実施例に係るX線透視撮影装置1の動作について説明する。説明を行うにあたり、X線透視撮影装置1を用いてインターベンション治療を行う工程を例として用いることとする。
図4は実施例に係るX線透視撮影装置1の動作の工程を説明するフローチャートである。
【0046】
ステップS1(X線画像の生成)
インターベンション治療を行うにあたり、まず被検体Mの太ももの付け根などに小さな穴を開け、カテーテルシステム46を血管内に挿入する。そしてカテーテルシステム46を挿入した後、X線透視によってX線画像を連続して生成する。すなわち、X線管5から被検体Mに対して低線量のX線が断続的に照射される。被検体Mを透過したX線はX線検出器7によって検出される。検出されたX線は電気信号であるX線検出信号に変換され、変換されたX線検出信号はX線画像生成部27へと出力される。
【0047】
X線画像生成部27は出力されたX線検出信号に基づいて、カテーテル47やステント51などが映し出されたX線画像Pを断続的に生成する。実施例において、X線画像Pは一例として15〜30FPS程度のフレームレートで生成される。X線画像生成部27において生成されたX線画像Pの各々はX線画像検出部29へ送信される。またモニタ41は、断続的に生成されるX線画像Pの各々をリアルタイムで表示する。操作者はモニタ41に表示されるリアルタイムのX線画像Pを参照し、ステント51を血管の狭窄部へ到達させる。
【0048】
ステップS2(ピークホールド画像の生成)
新たにステント留置を行う場合、既に留置されているステントとの間に隙間があると血管が再狭窄する可能性がある。そのため、特に狭窄部へステント51を到達させた後においては、ステント51の精密な位置を確認すべく、ステント51の視認性がより高いX線画像を取得する必要がある。実施例に特徴的な構成として、ステント51の視認性が高いX線画像を取得するために、ピークホールド画像の生成を行う。
【0049】
ピークホールド画像の生成を行うため、まず操作者は入力部39を操作してX線の照射を停止させ、ステントビューモードをオンの状態とする。ステントビューモードがオンの状態の場合、主制御部45はX線画像検出部29、ピークホールド画像生成部31、注目領域表示部33、特徴点検出部35、および積算部37の各々をオンの状態とする。
【0050】
X線画像検出部29はX線画像生成部27が生成するX線画像Pのうち、直近の所定時間Tの間に生成された一連のX線画像Pを検出する。所定時間Tは、少なくとも被検体Mの心拍1回の周期に相当する時間であることが好ましい。一例として所定時間Tが2秒、X線画像Pのフレームレートが15FPSである場合、X線画像検出部29は直近に生成された30枚のX線画像Pを検出する。
【0051】
ここで説明の便宜上、実施例において所定時間Tは心拍1回に相当する時間であるものとする。また実施例では心拍1回において4フレームのX線画像Pが生成されているものとする。この場合、X線画像検出部29は直近に生成される一連のX線画像Pとして、X線画像Pa〜Peを検出する。検出されたX線画像Pa〜Peの各々は、ピークホールド画像生成部31へ送信される。
【0052】
なお、各々のX線画像Pa〜Peに映るマーカ53Aをそれぞれ、マーカ53Aa〜53Aeとする。また、各々のX線画像Pa〜Peに映るマーカ53Bをそれぞれ、マーカ53Ba〜53Beとする(
図5上図参照)。この場合、心拍1回の周期において生成されるX線画像Pは4フレームであるので、X線画像PaとX線画像Peとは同じ位相である。すなわち、X線画像Paに映るX線像の位置と、X線画像Peに映るX線像の位置とは略同じである。
【0053】
ピークホールド画像生成部31は、X線画像検出部29が検出したX線画像Pa〜Peについて、同じ位置にある画素ごとに画素値の最小値を選択することによってピークホールド画像Qを生成する。マーカ53はX線不透過性の材料で構成されるので、マーカ53が位置する画素は、他の画素と比べて画素値が非常に小さい。そのためピークホールド画像Qでは、X線画像Pa〜Peのいずれかにおいてマーカ53が映る画素の各々には、最小画素値としてマーカ53のX線像が選択されて映り込む。
【0054】
従って、ピークホールド画像Qにおいて、マーカ53Aa〜53Ae、およびマーカ53Ba〜53BeのX線像が全て映り込む(
図5下図参照)。説明の便宜上、ピークホールド画像Qにおいて、マーカ53を除く構成のX線像を省略している。ピークホールド画像Qの画像データは、注目領域表示部33へ送信されるとともにモニタ41に表示される。
【0055】
ステップS3(注目領域の設定)
操作者はモニタ41に表示されるピークホールド画像Qを参照して、注目領域の設定を行う。注目領域とは後述するステップS4において、特徴点であるマーカ53の検出を行う領域である。操作者は入力部39を操作して、一例としてピークホールド画像Qに映るマーカ53の全てが領域の範囲内となるように注目領域Lを設定する(
図6(a))。注目領域表示部33は入力部39に入力された指示内容に従って、モニタ41に表示されているピークホールド画像Qに対して、注目領域Lの範囲を重畳表示する。なお注目領域Lを設定する際に、マーカの類似物Fが領域の範囲外となるように注目領域Lを設定する。
【0056】
IVRにおいて、ステント51およびマーカ53の各々は、被検体の心拍などによって一定の軌跡を描くように周期的に移動する。すなわちマーカ53Aa〜53Aeは軌跡KAに沿って移動し、マーカ53Ba〜53Beは軌跡KBに沿って移動する。(
図6(a))。X線画像検出部29が検出するX線画像の枚数が多い場合、ピークホールド画像Qには軌跡KAに沿って位置する多数のマーカ53Aと、軌跡KBに沿って位置する多数のマーカ53Bとが映り込む。従って、X線画像検出部29が検出するX線画像の枚数が多いほど、操作者はマーカ53が辿る正確な軌跡を容易に確認できる。
【0057】
注目領域Lを設定する構成としては、マウス操作やジョイスティック操作によって注目領域Lに相当する範囲をカーソル表示する方法や、タッチペンを用いて注目領域Lに相当する範囲をモニタ41に直接書き込む方法が挙げられる。特に後者の場合、操作者はマーカ53が辿る軌跡の形状に応じて、マーカ53の全てを含む最低限の範囲について、注目領域Lを容易に設定できる。ピークホールド画像Qに設定された注目領域Lの位置および範囲に関する情報は、特徴点検出部35へ送信される。
【0058】
ステップS4(X線画像の撮影および特徴点の検出)
ステップS3の終了後、ステント51の強調されたX線画像の生成を行う。すなわち操作者は入力部39を操作して再度X線の照射を行う。実施例ではステップS4において、X線透視と比べて照射X線量の多いX線撮影によってX線画像Rを複数枚生成する。実施例において生成されるX線画像Rの枚数は4枚とし、各々の画像をX線画像Ra〜Rdとする。なお、X線画像Rの枚数は適宜変更してよいし、X線透視によってX線画像Rの各々を生成してもよい。X線画像Ra〜Rdの各々は、特徴点検出部35へ送信される。
【0059】
特徴点検出部35は注目領域Lの情報を参照して、再度のX線照射によって生成されたX線画像Ra〜Rdの各々からマーカ53を検出する。すなわち特徴点検出部35は注目領域Lの情報に基づいてX線画像Rの各々に注目領域Lを設定し、設定された注目領域Lの範囲内でのみマーカ53の探索を行う(
図7上段)。心拍などに従ってマーカ53が周期的に辿る軌跡は、すべて注目領域Lの範囲内に含まれている。そのため注目領域Lの範囲内を探索することにより、特徴点検出部35はX線画像Ra〜Rdの各々からマーカ53を確実に検出できる。マーカ53が検出されたX線画像Ra〜Rdの各々は、積算部37へ送信される。
【0060】
ステップS5(積算画像の生成)
積算部37は、ステント51のX線像を強調表示するため、X線画像Ra〜Rdの各々を重ね合わせる。すなわち積算部37はマーカ53の各々を基準としてX線画像Ra〜Rdを重ね合わせ、積算画像Sを生成する(
図7下段左)。積算画像Sは必要に応じて適宜切り出し処理、および拡大回転処理が施されてモニタ41に表示される(
図7下段右)。マーカ53の探索はX線画像R全体のうち、注目領域Lの範囲内に対して行われる、そのため、注目領域Lの外部にマーカの類似物Fが存在していた場合、類似物Fがマーカ53として誤認識されることがない。
【0061】
このような構成により、積算部37はX線画像Ra〜Rdの各々に映るステント51の位置合わせを正確に行うことができる。その結果、積算画像Sにおいてステント51はより確実に強調表示され、視認性の高いX線像として映ることとなる。操作者は積算画像Sにおいて強調表示されるステント51を確認し、血管の狭窄部においてより好適な位置にステント51を留め置くことができる。
【0062】
<実施例の構成による効果>
このように、実施例に係るX線透視撮影装置はピークホールド画像生成部を備えている。ピークホールド画像生成部31は少なくとも心拍1回の周期の間に生成される一連のX線画像に基づいてピークホールド画像Qを生成する。操作者は入力部39を操作し、ピークホールド画像Qに映るマーカ53の位置に基づいて注目領域Lを設定する。特徴点検出部35は注目領域Lの範囲内に対してマーカ53の探索を行い、X線画像の各々からマーカ53を検出する。
【0063】
マーカ53およびステント51は一般的に、被検体の心拍に応じて周期的に移動する。ピークホールド画像Qは、心拍1回の周期の間に生成される一連のX線画像Pについて、同じ位置にある画素ごとに画素値の最小値を選択することによって生成される。一連のX線画像Pの各々には、周期的な軌跡を辿るマーカ53のいずれかが映る。また、マーカ53はX線不透過性の材料で構成されるので、マーカ53が位置する画素は他の画素と比べて画素値が非常に小さい。従ってピークホールド画像Qには、マーカ53の各々が周期的に辿る軌跡の全体像が映り込む。
【0064】
操作者はピークホールド画像Qに映るマーカ53の移動軌跡全体を参照し、マーカ53が周期的に辿る軌跡全体を含む最小範囲の注目領域Lを設定する。ピークホールド画像Qは静止画であるので、操作者は絶えず動くマーカ53の像を確認する必要がない。そのため注目領域Lの設定が容易となる。また、ピークホールド画像Qにはマーカ53が周期的に辿る軌跡全体が映っているので、注目領域Lを設定する際にピークホールド画像以外のX線画像を参照する必要がない。従って、注目領域Lを設定する際に受ける操作者の負担を大幅に低減できる。
【0065】
特徴点検出部35は設定された注目領域Lの情報に基づいて、X線画像Rの各々に対して注目領域Lの範囲内を探索する。注目領域Lはマーカ53が周期的に辿る軌跡全体を含むので、注目領域の範囲内を探索することにより、特徴点検出部35は確実にマーカ53を検出できる。
【0066】
また、特徴点検出部がマーカ53を探索する範囲は注目領域Lの範囲内に限られる。そのためX線画像Rにマーカの類似物Fが映っている場合であっても、類似物Fの位置が注目領域Lの範囲外となるように注目領域Lを設定することにより、マーカ類似物がマーカ53として誤認識されることを回避できる。さらにマーカ53の探索範囲を注目領域内に限定することにより、マーカ53の検出に要する時間および手順を短縮できる。
【0067】
積算部37は、特徴点検出部35が検出したマーカ53の各々の位置を基準としてX線画像Rの各々を重ね合わせる。注目領域Lの設定により、マーカ53の誤認識は好適に回避されるので、積算部37はX線画像Rの各々に映るステント51の位置を好適に合わせることができる。従って、X線画像Rを重ね合わせて生成される積算画像Sにおいて、ステント51のX線像は好適に強調される。このように、実施例に係るX線透視撮影装置1を用いることによって、操作者はより視認性の高いステントが映る積算画像を取得できる。その結果、インターベンション治療の術式において、より好適な位置にステントを留め置くことが可能となる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0069】
(1)上述した各実施例では、心拍1回の周期の間に生成される一連のX線画像Pに基づいてピークホールド画像Qを生成し、ピークホールド画像Qに対して注目領域Lを設定するが、注目領域Lを設定する対象はピークホールド画像に限られない。すなわち注目領域Lを設定する対象としては、周期的にマーカ53が移動する軌跡全体を映す画像であればよい。ピークホールド画像以外の具体例としては、心拍1回の周期の間に生成される一連のX線画像Pを加算処理して生成される加算処理画像Vなどが挙げられる。
【0070】
また、心拍1回の周期の間に生成される一連のX線画像Pに基づく点にも限定されない。例えば、ある時点以降のX線画像Pの全てに基づいてピークホールド画像Qを生成してもよい。ただし、直近1周期分のX線画像Pを用いることで、被検体やX線透視撮影装置1が動いたような場合でも、軌跡の範囲を適切に追随することができる点で有効である。
【0071】
X線画像Pの各々において、マーカ53の位置に相当する画素では画素値が非常に小さい。そのためX線画像Pの各々を加算処理した場合、加算処理画像Vにおいて、マーカ53が周期的に辿る軌跡に相当する画素は他の画素と比べて画素値が小さくなる。従って、加算処理画像Vには画素値の小さい領域として、マーカ53が辿る軌跡が映り込む。このような変形例において、操作者は静止画である加算処理画像Vに映るマーカ53の軌跡全体を視認し、入力部39を操作して注目領域Lを好適に設定できる。
【0072】
(2)上述した各実施例において、X線画像検出部29は直近の所定時間Tの間に生成されるX線画像Pを全て検出するが、X線画像を検出する基準は時間に限られない。すなわちX線画像検出部29は直近に生成される所定枚数(例えば20枚)のX線画像Pを検出し、ピークホールド画像生成部31へ送信してもよい。
【0073】
(3)上述した実施例では、ステップS3において、ピークホールド画像Qに映る全てのマーカ53を囲むように1つの注目領域Lを設定したがこれに限られない。すなわち積算画像Rの生成に用いるX線画像Pの枚数などの条件に応じて、設定する注目領域Lの数や範囲を適宜変更してよい。すなわちマーカ53Aの各々が辿る軌跡KAと、マーカ53Bの各々が辿る軌跡KBのそれぞれを囲むように2との注目領域Lを設定してもよい(
図6(b))。この場合、注目領域Lは軌跡KAおよびKBの全体を含み、かつより限定された範囲となるので、マーカの類似物Fがマーカ53として誤認識されることをより好適に回避できる。
【0074】
(4)上述した実施例において、ピークホールド画像生成部31は同じ位置にある画素ごとに画素値の最小値を選択することによってピークホールド画像Qを生成する。しかし実施例と逆にX線画像において、X線不透過性の物体に相当する画素の画素値が高くなるように構成されている場合(ネガ画像の場合)、ピークホールド画像生成部31は同じ位置にある画素ごとに画素値の最大値を選択することによってピークホールド画像Qを生成すればよい。
【0075】
(5)上記した実施例において、ステップS2では、ピークホールド画像Qを生成することとしたが、画像を生成することに限定されない。例えば、ステップS2において、各フレーム周期におけるマーカの軌跡のみを座標データの形式で保持し、ステップS3において、その保持された座標データ群を含む座標領域を、注目領域Lとして設定してもよい。
【0076】
(6)上記した実施例では、心拍、呼吸等の被検体の周期性体動きによるマーカの移動範囲を軌跡として設定したが、被検体の動作に限られるものではない。例えば、撮像装置が、被検体の周囲を回転したり、往復運動するような場合においても、X線画像中のマーカの軌跡を記録して、その軌跡を含む範囲を探索領域として設定することとしてもよい。
【0077】
その他、複数のX線画像中におけるマーカ位置を含む領域を注目領域として設定する限りにおいて、種々の実施形態を変更することができる。