(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6287975
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】回転摘みの回転構造
(51)【国際特許分類】
G05G 5/03 20080401AFI20180226BHJP
G05G 1/08 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
G05G5/03 B
G05G1/08 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-130610(P2015-130610)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-16284(P2017-16284A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 慎二
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−062386(JP,A)
【文献】
特開平09−034575(JP,A)
【文献】
特表2010−537279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に回転可能に設けられた回転軸に取り付けられた回転摘みに回転抵抗を付与する回転摘みの回転構造であって、
前記装置本体と前記回転摘みとの間に介装され、周方向に沿って連続する環状シートと、
前記環状シートの固定部を前記装置本体との間で挟み込んで前記装置本体に取り付ける取付部材と、
前記固定部よりも前記環状シートの半径方向における外側で前記環状シートと当接して前記回転摘み側へ反らせるように、前記装置本体に設けられ周方向に沿って連続する環状リブである本体側突起部と、
を備え、
前記回転摘みは、前記環状シートの半径方向における前記本体側突起部の更に外側で前記環状シートと当接し、前記環状シートの反りによって前記装置本体から離れる方向へ周方向に沿って一様に付勢され、この付勢状態で前記環状シートと摺動可能に形成され回転抵抗が付与されていることを特徴とする、
回転摘みの回転構造。
【請求項2】
装置本体に回転可能に設けられた回転軸に取り付けられた回転摘みに回転抵抗を付与する回転摘みの回転構造であって、
前記装置本体と前記回転摘みとの間に介装され、周方向に沿って連続する環状シートと、
前記装置本体の突出部との間で前記環状シートの固定部を挟み込んで前記装置本体に取り付ける取付部材と、
前記固定部よりも前記環状シートの半径方向における外側で前記環状シートと当接して前記装置本体側へ反らせるように、前記回転摘みに設けられ周方向に沿って連続する環状リブである摺動部と、
を備え、
前記回転摘みは、前記環状シートが前記摺動部に当接することにより、前記装置本体から離れる方向へ周方向に沿って一様に付勢され、この付勢状態で前記摺動部が前記環状シートと摺動して前記回転摘みに回転抵抗が付与されていることを特徴とする、
回転摘みの回転構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に設けられた回転摘みの構造、特に、回転摘みに回転抵抗を付与する回転構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オーディオ装置等の装置本体には、各種の操作を行うために回転摘みが取り付けられている。このような回転摘みの中には、摘みを回転させるときに回転抵抗を付与することにより、重厚感のある操作フィーリングが得られるようにしているものもある。
【0003】
例えば、特許文献1には、装置本体と回転摘みとの隙間に弾性部材および摺動性部材を積層させてなる環状スペーサを挟み込み、この環状スペーサを回転摘みと摺動させることによって回転抵抗を回転摘みに与えるとともに、回転摘みのガタつきを抑制するようにした回転摘みの回転構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-257711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された回転摘みの回転構造では、装置本体と回転摘みとの隙間に環状スペーサを隙間なく挟み込むため、当該隙間の大きさが回転摘みの寸法のバラツキ等の影響によって変化すると回転抵抗の大きさも変化してしまうため適切な大きさの回転抵抗を回転摘みに与え難いという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、回転摘みの寸法のバラツキの影響を受け難くしつつ、回転摘みのガタつきを抑制するとともに、回転摘みに適度な回転抵抗を付与することができる回転摘みの回転構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る回転摘みの回転構造は、装置本体に回転可能に設けられた回転軸に取り付けられた回転摘みに回転抵抗を付与する回転摘みの回転構造であって、装置本体と回転摘みとの間に介装され
、周方向に沿って連続する環状シートと、環状シートの固定部を装置本体との間で挟み込んで装置本体に取り付ける取付部材と、固定部よりも環状シートの半径方向における外側で環状シートと当接して回転摘み側へ反らせるように、装置本体に設けられ
周方向に沿って連続する環状リブである本体側突起部と、を備え、回転摘みは、環状シートの半径方向における本体側突起部の更に外側で環状シートと当接し、環状シートの反りによって装置本体から離れる方向へ
周方向に沿って一様に付勢され、この付勢状態で環状シートと摺動可能に形成され回転抵抗が付与されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の別の態様に係る回転摘みの回転構造は、装置本体に回転可能に設けられた回転軸に取り付けられた回転摘みに回転抵抗を付与する回転摘みの回転構造であって、装置本体と回転摘みとの間に介装され
、周方向に沿って連続する環状シートと、装置本体の突出部との間で環状シートの固定部を挟み込んで装置本体に取り付ける取付部材と、固定部よりも環状シートの半径方向における外側で環状シートと当接して装置本体側へ反らせるように、回転摘みに設けられ
周方向に沿って連続する環状リブである摺動部とを備え、回転摘みは、環状シートが摺動部に当接することにより、装置本体から離れる方向に
周方向に沿って一様に付勢され、この付勢状態で摺動部が環状シートと摺動して回転摘みに回転抵抗が付与されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る回転摘みの回転構造によれば、装置本体と取付部材との間に介装された環状シートを本体側突起部に当接させて回転摘み側へ反らせることによって回転摘みを装置本体と離れる方向へ付勢させ、この付勢状態で回転摘みを環状シートと摺動させて回転抵抗を付与する。このため、環状シートの付勢力によって回転摘みのガタつきを抑制しつつ回転摘みに適度な回転抵抗を付与することができる。また、環状シートが反った状態で回転摘みを装置本体と離れる方向へ付勢するため、環状シートの反り具合によって回転摘みの寸法のバラツキを吸収できる。このため、回転摘みの寸法のバラツキの影響も受け難くできる。
【0010】
本発明の別の態様に係る回転摘みの回転構造によれば、装置本体と取付部材との間に介装された環状シートを装置本体の方へ反らせ、この環状シートによって回転摘みを装置本体と離れる方向へ付勢させることができる。また、この付勢状態で回転摘みの摺動部が環状シートと摺動して回転摘みに回転抵抗を付与することもできる。このため、環状シートの付勢力によって回転摘みのガタつきを抑制しつつ回転摘みに適度な回転抵抗を付与することができる。また、環状シートが反った状態で回転摘みを装置本体と離れる方向へ付勢するため、環状シートの反り具合によって回転摘みの寸法のバラツキを吸収できる。このため、回転摘みの寸法のバラツキの影響も受け難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態である回転摘みの回転構造を示すオーディオ装置の分解斜視図とともに回転摘みの背面側の斜視図を併せて示す図である。
【
図2】
図1に含まれる取付部材および環状シートを回転軸に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に含まれる回転摘みの回転構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態である回転摘みの回転構造を
図3と同様に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態である回転摘みの回転構造を示すオーディオ装置の分解斜視図であり、一部に回転摘みの背面側の構成も示している。
【0014】
オーディオ装置等の装置本体は、
図1に示すように、前面パネル12に固定され、前面パネル12から突出する回転軸18に回転摘み14が回転可能に取り付けられ、回転摘み14はその回転変位量によって、例えば、音量を調節する役割を有している。
【0015】
装置本体には、回転軸18の周囲に形成された環状膨出部13が設けられ、環状膨出部13と取付部材24との間に環状シート22が挟み込まれ、環状シート22が装置本体に固定される。
【0016】
環状シート22は、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド等の肉厚の薄い可撓性を有する樹脂によって、平板状または皿状に形成されている。環状シート22は後述するように回転摘み14に回転抵抗を付与する。
【0017】
取付部材24は、
図1に示すように、軸方向の一端に底を有するカップ状の樹脂部材であり、底の中心部に回転軸18を挿通する挿通孔24aが形成されている。取付部材24は、他端側にフランジ部24bが設けられており、このフランジ部24bが環状シート22を介して装置本体の環状膨出部13に当接されている。
【0018】
図2は、上述した取付部材24および環状シート22を装置本体に取り付けた状態を示す斜視図である。取付部材24は、環状膨出部13との間に環状シート22を挟み込んだ状態で回転軸18に挿通され、前面側から筒状カバー19の雄ネジ19aにナット28をねじ込んで固定されている。取付部材24は、フランジ部24bと環状膨出部13との間において
図1に示す環状シート22の半径方向における内側の固定部22aを挟み込んで固定している。回転軸18は、筒状カバー19の中で回転摘み14によって自由に回転可能であるが、所定の回転抵抗が回転摘み14および環状シート22によって付与されている。
【0019】
図3は回転摘みの回転構造の断面構成図である。同図を用いて回転構造の構造及び作用について説明する。
前面パネル12の裏面側には、本実施形態におけるオーディオ装置である装置本体のケース50が固定されている。ケース50の環状膨出部13は、前面パネル12の開口12aから表側に露出し、またこの開口12aは回転摘み14を前面パネル12に埋め込む収納室を形成している。回転摘み14の内端は、前面パネル12の開口12aから更にケース50の環状凹部50aに延在している。
ケース50から突出する回転軸18の周囲には、ケース50のカップ状受け52が設けられ、取付部材24を受け入れることができる。
回転軸18の外周に配置された筒状カバー19の雄ネジ19aには、ナット28がねじこまれて固定され、取付部材24をカップ状受け52内にしっかりと固定するとともに、前述したように、環状シート22の固定部22aをケース50の環状膨出部13と取付部材24のフランジ部24bとの間に挟み込み固定する。
【0020】
回転摘み14は、
図1に示すように、アルミニウム等の金属からなる外側筒状部15と、外側筒状部15の内側に嵌め込まれた、例えばABS樹脂からなる内側筒状部16とから形成されている。内側筒状部16の中心には回転軸18に回転摘み14を固定する円柱状の支柱部16aが形成されている。この支柱部16aは、軸方向に沿って2つに分割されており、中心部に回転軸18を挿通固定するために略D字状の固定孔16b(
図1参照)が設けられている。内側筒状部16の背面側端面には、環状リブである摺動部16cが形成されている。
【0021】
以下に環状シート22によって回転摘み14に回転抵抗を付与する機構について説明する。環状膨出部13の端面には、本体側突起部26が形成されている。この本体側突起部26は、環状シート22が取付部材24のフランジ部24bとケース50の環状膨出部13との間に挟み込み固定されるときに環状シート22と当接して環状シート22を回転摘み14の方へ反らせる機能を有している。本体側突起部26は、
図1に示すように環状膨出部13の前面に形成された環状リブである。本体側突起部26は、環状シート22の半径方向における内側の固定部22aよりも外側で環状シート22と当接するように形成されている。
【0022】
図3に示すように、環状シート22は半径方向における内側の固定部22aを環状膨出部13と取付部材24との間に挟み込まれた状態で装置本体に取り付けられている。そして、環状シート22は、固定部22aよりも径方向外側で本体側突起部26に当接して回転摘み14の方へ反らされ、半径方向における本体側突起部26の更に外側で内側筒状部16の摺動部16cに当接する。これにより、回転摘み14は、環状シート22によって装置本体と離れる方向へ付勢されている。また、摺動部16cは、この付勢状態で環状シート22と摺動可能に形成されており、環状シート22と摺動して回転摘み14に回転抵抗を付与している。
【0023】
第1実施形態に係る回転構造によれば、環状シート22の付勢力によって回転摘み14のガタつきを抑制しつつ回転摘み14に適度な回転抵抗を付与することができる。また、環状シート22が反った状態で回転摘み14を装置本体と離れる方向へ付勢するため、環状シート22の反り具合によって回転摘み14の寸法のバラツキを吸収できる。このため、回転摘み14の寸法のバラツキの影響も受け難くできる。
【0024】
次に、第2実施形態である回転摘みの回転構造について
図4を用いて説明する。
図4は、回転摘みの回転構造の構成を示す断面図である。以下では、特に上記第1実施形態と構成の異なる部分について詳細に説明するものとし、構成の共通する部分については同一の符号を付して示すとともに適宜説明を省略する。
【0025】
回転構造は、
図4に示すように、装置本体の方へ環状シート22を反らせた状態で回転摘み14に回転抵抗を付与しつつガタつきを抑制する点で第1実施形態における回転構造と相違し、環状シート22と、取付部材32とを備えている。
【0026】
取付部材32は、取付部材24とほぼ同一の構成を備え、環状膨出部13に設けられた突出部36との間で環状シート22の内側の固定部22aを挟み込んで装置本体に取り付ける役割を有している。突出部36は、環状膨出部13の半径方向の内側端部に環状に設けられている。
【0027】
回転構造は、回転摘み14の内側筒状部16の背面側端面に形成された環状リブである摺動部34を備えている。この摺動部34は、第1実施形態における摺動部16cよりも突出幅が長くなるように形成されている。摺動部34は、環状シート22の固定部22aよりも半径方向における外側で環状シート22と当接して装置本体の方へ環状シート22を反らせる役割を有している。
【0028】
第2実施形態に係る回転摘みの回転構造によれば、装置本体と取付部材32との間に介装された環状シート22を装置本体の方へ反らせ、この環状シート22によって回転摘み14を装置本体と離れる方向へ付勢させることができる。また、この付勢状態で回転摘み14の摺動部34が環状シート22と摺動して回転摘み14に回転抵抗を付与することもできる。このため、環状シート22の付勢力によって回転摘み14のガタつきを抑制しつつ回転摘み14に適度な回転抵抗を付与することができる。また、環状シート22が反った状態で回転摘み14を装置本体と離れる方向へ付勢するため、環状シート22の反り具合によって回転摘み14の寸法のバラツキを吸収できる。このため、回転摘み14の寸法のバラツキの影響も受け難くできる。
【0029】
なお、本発明に係る回転摘みの回転構造によれば、上述した実施形態およびその変形例の構成に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等の範囲内で種々の改良や変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0030】
16 内側筒状部、16c,34 摺動部、22 環状シート、22a 固定部、24,32 取付部材、26 本体側突起部。