特許第6288013号(P6288013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6288013-光ファイバ特性測定装置 図000002
  • 特許6288013-光ファイバ特性測定装置 図000003
  • 特許6288013-光ファイバ特性測定装置 図000004
  • 特許6288013-光ファイバ特性測定装置 図000005
  • 特許6288013-光ファイバ特性測定装置 図000006
  • 特許6288013-光ファイバ特性測定装置 図000007
  • 特許6288013-光ファイバ特性測定装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288013
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】光ファイバ特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20180226BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G01D5/353 B
   G01M11/00 U
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-175901(P2015-175901)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-53645(P2017-53645A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年10月4日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人科学技術振興機構研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】松浦 聡
(72)【発明者】
【氏名】古川 靖
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5105302(JP,B2)
【文献】 特開2012−63146(JP,A)
【文献】 米国特許第6201608(US,B1)
【文献】 国際公開第2007/034721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/353
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調された連続光を出力する光源部と、
前記連続光を、ポンプ光と、参照光とに分岐させる光分岐部と、
前記ポンプ光を被測定光ファイバの一端から入射させる導光部と、
前記被測定光ファイバ内の前記ポンプ光のブリルアン散乱により発生した後方散乱光を、互いに直交する直線偏光である第1散乱光と第2散乱光とに分離する第1分離部と、
前記参照光を、前記第1散乱光と同じ偏光である第1参照光と、前記第2散乱光と同じ偏光である第2参照光とに分離する第2分離部と、
前記第1散乱光と、前記第1参照光とを干渉させ、第1ビート成分を得る第1干渉部と、
前記第2散乱光と、前記第2参照光とを干渉させ、第2ビート成分を得る第2干渉部と、
前記第1ビート成分と、前記第2ビート成分とに基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する演算部と、
を備える光ファイバ特性測定装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記被測定光ファイバ内における第1位置で発生したブリルアン散乱光に基づく前記第1ビート成分の第1スペクトルを測定する第1分析部と、
前記第1位置で発生したブリルアン散乱光に基づく前記第2ビート成分の第2スペクトルを測定する第2分析部と、
前記第1スペクトルと、前記第2スペクトルとを合成して合成スペクトルを生成する合成部と、
前記合成スペクトルに基づいて、前記第1位置における前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部と、
を備える、請求項1記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項3】
前記合成部は、前記第1スペクトルの周波数成分を二乗して得られる第1成分強度と、前記第2スペクトルの同一周波数成分を二乗して得られる第2成分強度とを加算する処理を、周波数を変えながら行うことで前記合成スペクトルを生成する、請求項2記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記第1分析部および第2分析部の実行と停止とを制御する制御部をさらに備え、
前記後方散乱光と前記参照光との周波数差が時間的に変動しない相関ピーク点が被測定光ファイバ内に複数存在する場合、前記制御部は、複数の前記相関ピークの中で、必要とする一つの相関ピーク点である第1位置で発生したブリルアン散乱光に基づく相関ピークに関連する前記第1ビート成分の第1スペクトルを測定するように前記第1分析部の実行と停止を制御し、前記第1位置で発生したブリルアン散乱に基づく前記相関ピークに関連する前記第2ビート成分の第2スペクトルを測定するように前記第2分析部の実行と停止を制御する、請求項2記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項5】
前記演算部は、
所定の周波数信号を出力する発振部と、
前記所定の周波数信号を用いて前記第1ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げる第1調整部と、
前記所定の周波数信号を用いて前記第2ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げる第2調整部と、
前記第1調整部から入力された前記第1ビート成分を、第1パワースペクトルに変換する第1変換部と、
前記第2調整部から入力された前記第2ビート成分を、第2パワースペクトルに変換する第2変換部と、
前記第1パワースペクトルおよび前記第2パワースペクトルに基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部と、
を備える、請求項1記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項6】
前記ポンプ光および前記参照光のいずれか一方の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げる第3調整部をさらに備える、請求項1記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項7】
前記演算部は、
前記第1ビート成分を、第1パワースペクトルに変換する第1変換部と、
前記第2ビート成分を、第2パワースペクトルに変換する第2変換部と、
前記第1パワースペクトルおよび前記第2パワースペクトルに基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部と、
を備える、請求項6記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項8】
前記第1変換部は、前記第1ビート成分を高速フーリエ変換して、前記第1パワースペクトルを求め、
前記第2変換部は、前記第2ビート成分を高速フーリエ変換して、前記第2パワースペクトルを求める、請求項5または7記載の光ファイバ特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ特性測定装置に係り、特に、被測定対象である光ファイバ内におけるブリルアン散乱により生じた後方散乱光に基づいて光ファイバの特性を測定する光ファイバ特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送媒体の1つである光ファイバ中に光を入射することによって発生するブリルアン散乱は、その光ファイバに加わる歪みや光ファイバの温度によって変化する。このブリルアン散乱に起因した光の周波数シフト量を測定することで、光ファイバの長さ方向の歪み分布や温度分布を測定する方法が知られている。例えば、橋、ビルなどの構造物に光ファイバを張り巡らせ、上記の方法に基づいてこの光ファイバの歪み箇所を特定することで、これらの構造物に生じた歪みを検知することができる。このような測定方法として、いわゆるBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)方式およびBOCDR(Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry)方式などが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されているように、BOTDR方式の測定方法は、被測定光ファイバの一端から光パルスを入射することによって得られるブリルアン散乱光を検出して、ブリルアン散乱光の入射光に対する周波数シフト量(以下、ブリルアン周波数シフト量と称する)およびブリルアン散乱光が戻ってくるまでの時間を測定する。このブリルアン散乱光は、被測定光ファイバの歪みや温度に依存して速度が変化する音響波によって散乱された後方散乱光である。上記のブリルアン周波数シフト量を測定することで、被測定光ファイバの歪みの大きさや温度を測定することができ、さらに、ブリルアン散乱光が戻ってくるまでの時間を測定することで、被測定光ファイバの長さ方向における位置を特定することができる。
上記のBOTDR方式の測定方法において空間分解能を向上させるためには、被測定光ファイバの一端から入射する光パルスのパルス幅を狭くする必要がある。しかしながら、光パルスのパルス幅を狭くした場合、被測定光ファイバ内で生じる後方散乱光の信号強度が低下し、信号対雑音比(以下、SNRという)が劣化する場合がある。劣化したSNRを改善するためには後方散乱光の積分処理を増すことが必要で、測定に時間を要する場合がある。
【0004】
一方、BOCDR方式の測定方法は、被測定光ファイバの一端から周波数変調された連続光であるポンプ光を入射することによって得られるブリルアン散乱光を検出してブリルアン周波数シフト量を測定する。特許文献2および非特許文献1に記載されているように、このBOCDR方式の測定方法においては、ブリルアン散乱光と参照光とを干渉させることにより、被測定光ファイバ中の相関ピークと呼ばれる特定の位置におけるブリルアン散乱光を選択的に抽出する。例えば、正弦波周波数変調が与えられた連続光を被測定光ファイバ内に入射する場合、被測定光ファイバ内における相関ピークの間隔は、正弦波周波数変調の変調周波数に反比例する。このため、被測定光ファイバ内に、一つの相関ピークだけが残るように連続光の変調周波数を調整することで、そのピークに対応した位置で発生した散乱光のみを抽出することができ、さらに、連続光の変調周波数を掃引することで、被測定光ファイバの長さ方向に沿って相関ピークを移動することができる。相関ピークを移動しつつ各相関ピーク点におけるブリルアン周波数シフト量を求めることにより、被測定光ファイバの長さ方向における歪み分布や温度分布を測定することができる。
上記のBOCDR方式の測定方法は、被測定光ファイバ中の数cm程度の狭い領域でのブリルアン散乱光を、被測定光ファイバの長さ方向における特定の位置に対応した干渉出力として選択的に出力することができるため、上記のBOTDR方式の測定方法よりも2桁ほど高い空間分解能を実現できる。また、光パルスではなく連続光を被測定光ファイバに入射させるため、被測定光ファイバ内で生じる後方散乱光の信号強度が高く、測定が容易である。また、BOTDR方式の測定方法におけるような後方散乱光の積分処理が不要であるため、測定時間を短縮することができる。
【0005】
BOCDR方式の測定方法では、被測定ファイバ内で生じた後方散乱光と光源部が出力した参照光とを干渉させるため、干渉後の信号強度は両光の偏波状態に依存する。従来技術では、安定した干渉信号を得るために、参照光の光路、後方散乱光の光路、およびポンプ光の光路の少なくとも1つの光路に、偏波面を高速に回転させる偏波スクランブラ(PSCR: Polarization Scrambler)を設けて、偏波依存性を軽減していた。
【0006】
偏波スクランブラは、偏波状態を高速(MHz程度の周波数で)変化させ、偏波状態の影響を平均化させるデバイスである。例えば、この偏波スクランブラを参照光の光路に設けることで、観測されるブリルアンゲインスペクトル(BGS: Brillouin Gain Spectrum)が、参照光と後方散乱光との相対的な偏波状態に依存しなくなる。偏波スクランブラの動作速度を、後方散乱光のサンプリング速度よりも数十倍速くすることで、偏波状態の平均化を図ることができる。しかしながら、偏波スクランブラの動作速度には限界があるため、後方散乱光のサンプリング速度が速くなってくると、平均化の効果が薄まり、測定データには偏波状態に依存した不要な変動が現れる。
【0007】
偏波依存性を軽減するための他の方法として、任意の偏波面での測定と、この偏波面に対して90°回転させた偏波面での測定とをそれぞれ行い、それらの測定値の二乗和の平方根をとる、つまりベクトル和をとることにより偏波の影響を除去する方法が知られている。この方法を用いることで、偏波スクランブラと同様な効果を得ることができる。しかしながら、偏波面を切り替えて2度の測定を行う必要があるため、1度のみの測定を行う場合と比較して測定時間が2倍となる。偏波面の変化が遅く、後方散乱光のサンプリング速度が遅い場合には、偏波面を切り替えながら2度の測定を行っても偏波状態はほぼ同じであるため、2つの測定値の二乗和の平方根を求めることで偏波の影響を除去することができる。しかしながら、光ファイバが高速振動するなどして偏波面が速く回転するような場合は二回の測定の間に偏波状態が変わってしまうため、2つの測定値の二乗和の平方根を求めても偏波の影響を除去することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3095694号公報
【特許文献2】特許第5105302号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】水野洋輔、何祖源、保立和夫、“偏波スクランブリングを用いたブリルアン光相関領域リフレクトメトリによる歪分布全長測定の安定化”、電子情報通信学会 2009年総合大会、C−3−88、愛媛大学、2009年3月17日〜20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一態様は、BOCDR方式の測定方法において、測定時間を短縮することができる光ファイバ特性測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の光ファイバ特性測定装置は、周波数変調された連続光を出力する光源部と、前記連続光を、ポンプ光と、参照光とに分岐させる光分岐部と、前記ポンプ光を被測定光ファイバの一端から入射させる導光部と、前記被測定光ファイバ内の前記ポンプ光のブリルアン散乱により発生した後方散乱光を、ある直線偏光(以下p偏光という)である第1散乱光と、前記偏光と直交する直線偏光(以下s偏光という)である第2散乱光とに分離する第1分離部と、前記参照光を、p偏光である第1参照光と、s偏光である第2参照光とに分離する第2分離部と、前記第1散乱光と、前記第1参照光とを干渉させ、第1ビート成分を得る第1干渉部と、前記第2散乱光と、前記第2参照光とを干渉させ、第2ビート成分を得る第2干渉部と、前記第1ビート成分と、前記第2ビート成分とに基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する演算部とを備えてよい。
上記の一態様の光ファイバ特性測定装置において、前記演算部は、前記被測定光ファイバ内における第1位置で発生したブリルアン散乱光に基づく前記第1ビート成分の第1スペクトルを測定する第1分析部と、前記第1位置で発生したブリルアン散乱光に基づく前記第2ビート成分の第2スペクトルを測定する第2分析部と、前記第1スペクトルと、前記第2スペクトルとを合成して合成スペクトルを生成する合成部と、前記合成スペクトルに基づいて、前記第1位置における前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部とを備えてよい。
上記の一態様の光ファイバ特性測定装置において、前記合成部は、前記第1スペクトルの周波数成分を二乗して得られる第1成分強度と、前記第2スペクトルの同一周波数成分を二乗して得られる第2成分強度とを加算する処理を、周波数を変えながら行うことで前記合成スペクトルを生成してよい。
上記の一態様の光ファイバ特性測定装置において、前記演算部は、前記第1分析部および第2分析部の実行と停止とを制御する制御部をさらに備えてよい。前記被測定光ファイバ内に、後方散乱光と前記参照光との周波数差が時間的に変動しない点(相関ピーク点)が複数存在する場合、前記制御部は、前記複数の相関ピークのうち観測対象とする位置(第1位置)で発生したブリルアン散乱光に基づく前記相関ピークに関連する前記第1ビート成分の第1スペクトルを測定するように前記第1分析部の実行と停止を制御し、前記第1位置で発生したブリルアン散乱光に基づく前記相関ピークに関連する前記第2ビート成分の第2スペクトルを測定するように前記第2分析部の実行と停止を制御してよい。
上記の一態様の光ファイバ特性測定装置において、前記演算部は、所定の周波数信号を出力する発振部と、前記所定の周波数信号を用いて前記第1ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げる第1調整部と、前記所定の周波数信号を用いて前記第2ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げる第2調整部と、前記第1調整部から入力された前記第1ビート成分を、第1パワースペクトルに変換する第1変換部と、前記第2調整部から入力された前記第2ビート成分を、第2パワースペクトルに変換する第2変換部と、前記第1パワースペクトルおよび前記第2パワースペクトルに基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部とを備えてよい。
上記の一態様の光ファイバ特性測定装置は、前記ポンプ光および前記参照光のいずれか一方の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げる第3調整部をさらに備えてよい。
上記の一態様の光ファイバ特性測定装置において、前記演算部は、前記第1ビート成分を、第1パワースペクトルに変換する第1変換部と、前記第2ビート成分を、第2パワースペクトルに変換する第2変換部と、前記第1パワースペクトルおよび前記第2パワースペクトルに基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部と、を備えてよい。
上記の一態様の光ファイバ特性測定装置において、前記第1変換部は、前記第1ビート成分を高速フーリエ変換して、前記第1パワースペクトルを求めてよい。前記第2変換部は、前記第2ビート成分を高速フーリエ変換して、前記第2パワースペクトルを求めてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様の光ファイバ特性測定装置は、BOCDR方式の測定方法において、光源部が出力した1つの連続光からp偏波に関する第1ビート成分と、s偏波に関する第2ビート成分と取得して合成し、この合成スペクトルに基づいて被測定光ファイバの特性を測定しているため、偏波状態に依存しない測定結果を短い測定時間で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態における光ファイバ特性測定装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態における光ファイバ特性測定装置が備える演算部の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態における、光ファイバ特性測定装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態における光ファイバ特性測定装置が備える演算部の概略構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第3実施形態における光ファイバ特性測定装置が備える演算部の概略構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第4実施形態における光ファイバ特性測定装置の概略構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第4実施形態における光ファイバ特性測定装置が備える演算部の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る測定装置の一実施形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における光ファイバ特性測定装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本第1実施形態の光ファイバ特性測定装置1は、例えば、光源部10と、光分岐部20と、導光部30と、光方向性結合部40と、光コネクタ50と、第1光分離部60と、光遅延部70と、第2光分離部80と、第1干渉部90と、第2干渉部100と、第1光電変換部110と、第2光電変換部120と、第3光電変換部130と、第4光電変換部140と、第1増幅部150と、第2増幅部160と、演算部170と、表示部180とを備える。
【0016】
光源部10は、周波数変調された連続光を出力する。光源部10は、例えば、半導体レーザ(図示しない)と、信号発生器(図示しない)とを備える。半導体レーザは、例えば、分布帰還型レーザダイオードを用いる。信号発生器は、半導体レーザから出力されるレーザ連続光を、例えば、正弦波状に周波数変調された連続光にする変調信号を半導体レーザに注入する。変調信号としては、例えば、直流電流に交流電流を重畳させた信号が用いられる。
【0017】
光分岐部20は、光源部10から入力された連続光を、適当な強度比(例えば1対1)の2つの光に分岐させる。2つの光の内、一方の光は、被測定光ファイバFに入射されるポンプ光である。このポンプ光は、導光部30と、光方向性結合部40とを通過し、被測定光ファイバFの一端に入射される。2つの光の内、他方の光は、光ヘテロダイン検波を行う場合における参照光である。この参照光は、光遅延部70に入射される。
【0018】
導光部30は、光分岐部20によって分岐されたポンプ光を、光方向性結合部40を介して被測定光ファイバFに入射させる。この導光部30は、例えば、ポンプ光を増幅するための光増幅器等を備えていてもよい。
【0019】
光方向性結合部40は、入射ポートに入射したポンプ光を出射/入射ポートから出射するとともに、光コネクタ50を介して出射/入射ポートに入射される被測定光ファイバFからの戻り光(後方散乱光)を出射ポートから出射する。光方向性結合部40は、例えば、光サーキュレータ等が用いられる。
【0020】
第1光分離部60は、ポンプ光を被測定光ファイバFに入射することにより得られた後方散乱光を、p偏光である第1散乱光と、s偏光である第2散乱光とに分離させる。第1光分離部60は、例えば、偏光ビームスプリッタ等が用いられる。後方散乱光の偏光状態は被測定光ファイバFの、そのときどきの状態により不定であるため、第1光分離部60への入射角度もまた不定である。
【0021】
光遅延部70は、所定の長さの光ファイバを含む。光遅延部70は、ポンプ光と参照光との間に所定の遅延時間を設定する。光ファイバの長さを変更することで、遅延時間を任意に調整することができる。
【0022】
第2光分離部80は、光遅延部70を通過した参照光を、p偏光である第1参照光と、s偏光である第2参照光とに分離させる。第2光分離部80は、例えば、偏光ビームスプリッタが用いられる。第2光分離部80が2つの直角プリズムを貼り合せたプリズム型の偏光ビームスプリッタである場合、第2光分離部80は、参照光の偏波面が2つの直角プリズムの接合面に対して45°の入射角で入射するように配置される。
【0023】
第1干渉部90は、第1光分離部60から入力されたp偏光である第1散乱光と、第2光分離部80から入力されたp偏光である第1参照光とを互いに干渉させる。詳細には、第1干渉部90は、第1散乱光と、第1参照光とを合波して、p偏光成分に関するビート成分を取得し、所定の割合(例えば、1対1)で2つの成分に分離させる。第1干渉部90は、例えば、非偏光ビームスプリッタが用いられる。
【0024】
第2干渉部100は、第1光分離部60から入力されたs偏光である第2散乱光と、第2光分離部80から入力されたs偏光である第2参照光とを互いに干渉させる。詳細には、第2干渉部100は、第2散乱光と、第2参照光とを合波して、s偏光成分に関するビート成分を取得し、所定の割合(例えば、1対1)で2つの成分に分離させる。第2干渉部100は、例えば、非偏光ビームスプリッタが用いられる。
【0025】
第1光電変換部110および第2光電変換部120は、第1干渉部90で生成されたp偏光に関する2つのビート成分の各々を電気信号に変換する。また、第3光電変換部130および第4光電変換部140は、第2干渉部100で生成されたs偏光に関する2つのビート成分の各々を電気信号に変換する。
【0026】
第1増幅部150は、第1光電変換部110および第2光電変換部120から入力された電気信号を増幅して、演算部170に出力する。また、第2増幅部160は、第3光電変換部130および第4光電変換部140から入力された電気信号を増幅して、演算部170に出力する。
【0027】
演算部170は、第1増幅部150および第2増幅部160から入力された電気信号を演算して、被測定光ファイバFの特性を測定する。例えば、演算部170は、被測定光ファイバFの長さ方向における歪み分布、温度分布等を測定する。演算部170については後述する。
【0028】
表示部180は、演算部170によって測定された被測定光ファイバFの特性を可視化して表示するものである。表示部180は、例えば、ディスプレイが用いられる。
【0029】
図2は、第1実施形態における光ファイバ特性測定装置1が備える演算部170の概略構成を示すブロック図である。演算部170は、例えば、第1分析部171−1と、第2分析部171−2と、局部発振部172と、合成部173と、測定部174とを備える。
【0030】
第1分析部171−1は、第1増幅部150から入力された電気信号を用いて、被測定光ファイバF内の特定の位置(第1位置)で発生したブリルアン散乱光に基づくp偏光成分に関するビート成分(第1ビート成分)の第1スペクトルを生成する。第2分析部171−2は、第2増幅部160から入力された電気信号を用いて、被測定光ファイバF内のある特定の位置(第1位置)で発生したブリルアン散乱光に基づくs偏光成分に関するビート成分(第2ビート成分)の第2スペクトルを生成する。
【0031】
局部発振部172は、所定の周波数の信号を第1分析部171−1および第2分析部171−2に供給する。第1分析部171−1は、局部発振部172から供給される信号を用いて、第1ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げ、そのスペクトルを求める。例えば、第1分析部171−1は、第1ビート成分の周波数を、10.8GHz程度から30MHz程度にまで下げ、そのスペクトル(第1スペクトル)を求める処理を行う。同様に、第2分析部171−2は、局部発振部172から供給される信号を用いて、第2ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げ、そのスペクトルを求める。例えば、第2分析部171−2は、第2ビート成分の周波数を、10.8GHz程度から30MHz程度にまで下げ、そのスペクトル(第2スペクトル)を求める処理を行う。なお、ここでは簡単のため周波数を変換する処理を第1分析部171−1および第2171−2と局部発振部172とで行うような説明をしているが、スプリアス特性の改善等のために、分析部と局部発振部を数段用いた構成を用いてもよい。第1分析部171−1および第2分析部171−2、局部発振部172は、例えば、同期させた二台のスペクトルアナライザ(ESA: Electrical Spectrum Analyzer)が用いられる。
【0032】
合成部173は、第1分析部171−1から入力された第1スペクトルと、第2分析部171−2から入力された第2スペクトルとを合成して合成スペクトルを生成する。測定部174は、合成部173から入力された合成スペクトルに基づいて、被測定光ファイバF内の特定の位置(第1位置)の被測定光ファイバの特性を測定し、測定結果を表示部180に出力する。
【0033】
次に、第1実施形態の光ファイバ特性測定装置1の動作について説明する。図3は、第1実施形態における、光ファイバ特性測定装置1の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0034】
光源部10は、周波数変調された連続光を光分岐部20に出力する(ステップS101)。光源部10は、例えば、正弦波状に周波数変調された連続光を光分岐部20に出力する。
【0035】
次に、光分岐部20は、光源部10から入力された連続光を、ポンプ光と参照光とに分岐させる(ステップS102)。光分岐部20は、ポンプ光を導光部30に出力し、参照光を光遅延部70に出力する。
【0036】
次に、導光部30は、ポンプ光を、光方向性結合部40を介して被測定光ファイバFに入射させる(ステップS103)。周波数変調されたポンプ光が被測定光ファイバFに入射されると、被測定光ファイバF内においてブリルアン散乱が生じる。ここで、ブリルアン散乱により発生する後方散乱光は、被測定光ファイバFの歪みや温度に依存して速度が変化する音響波の影響を受け、その周波数がシフトしている。光源部10の波長が約1.55μmでありかつ被測定光ファイバFとして汎用の通信用シングルモードファイバを用いた場合、被測定光ファイバFからの後方散乱光は、被測定光ファイバFに入射された連続光の周波数に対して10.8GHz程度周波数がシフトしている。このブリルアン周波数シフト量は、被測定光ファイバFに加わる歪みや温度によって変動する。
【0037】
次に、光方向性結合部40は、被測定光ファイバFから後方散乱光を受け取って、第1光分離部60に出力する(ステップS104)。次に、第1光分離部60は、光方向性結合部40から入力された後方散乱光を、p偏光である第1散乱光と、s偏光である第2散乱光とに分離する(ステップS105)。
【0038】
上記のステップS103からS105と並行して、またはステップS103からS105の前若しくは後において、光遅延部70を通過した参照光が第2光分離部80に出力される(ステップS106)。次に、第2光分離部80は、参照光を、p偏光である第1参照光と、s偏光である第2参照光とに分離する(ステップS107)。第2光分離部80が2つの直角プリズムを貼り合せたプリズム型の偏光ビームスプリッタである場合、第2光分離部80は、参照光の偏波面が2つの直角プリズムの接合面に対して45°の入射角で入射するように配置される。
【0039】
次に、第1干渉部90は、第1光分離部60から入力されたp偏光である第1散乱光と、第2光分離部80から入力されたp偏光である第1参照光とを互いに干渉させる(ステップS108)。詳細には、第1干渉部90は、第1散乱光と、第1参照光とを合波して、p偏光成分に関するビート成分を生成し、所定の割合で2つの成分に分離させる。
【0040】
次に、第1光電変換部110および第2光電変換部120は、第1干渉部90で生成されたp偏光に関する2つのビート成分の各々を電気信号に変換する(ステップS109)。次に、第1増幅部150は、第1光電変換部110および第2光電変換部120から入力された電気信号を増幅して、演算部170に出力する(ステップS110)。
【0041】
上記のステップS108からS110と並行して、またはステップS108からS110の前若しくは後において、第2干渉部100は、第1光分離部60から入力されたs偏光である第2散乱光と、第2光分離部80から入力されたs偏光である第2参照光とを互いに干渉させる(ステップS111)。詳細には、第2干渉部100は、第2散乱光と、第2参照光とを合波して、s偏光成分に関するビート成分を生成し、所定の割合で2つの成分に分離させる。次に、第3光電変換部130および第4光電変換部140は、第2干渉部100で生成されたs偏光に関する2つのビート成分の各々を電気信号に変換する(ステップS112)。次に、第2増幅部160は、第3光電変換部130および第4光電変換部140から入力された電気信号を増幅して、演算部170に出力する(ステップS113)。
【0042】
次に、演算部170は、第1増幅部150および第2増幅部160から入力された電気信号を演算して、被測定光ファイバFの特性を測定する(ステップS114)。詳細には、演算部170に設けられた第1分析部171−1は、第1増幅部150から入力された電気信号を用いて、被測定光ファイバF内の特定の位置(第1位置)で発生したブリルアン散乱光に基づくp偏光成分に関するビート成分(第1ビート成分)の第1スペクトルを測定する。また、演算部170に設けられた第2分析部171−2は、第2増幅部160から入力された電気信号を用いて、被測定光ファイバF内のある位置(第1位置)で発生したブリルアン散乱光に基づくs偏光成分に関するビート成分(第2ビート成分)の第2スペクトルを測定する。ここで、局部発振部172は、所定の周波数の信号を第1分析部171−1および第2分析部171−2に供給する。第1分析部171−1は、この局部発振部172から供給される信号を用いて、第1ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げ、そのスペクトル(第1スペクトル)を求める。また、第2分析部171−2は、この局部発振部172から供給される信号を用いて、第2ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げ、そのスペクトル(第2スペクトル)を求める。次に、合成部173は、第1分析部171−1から入力された第1スペクトルと、第2分析部171−2から入力された第2スペクトルとを合成して合成スペクトルを生成する。
【0043】
以下において、合成部173の処理について説明する。合成部173は、第1スペクトルの成分(周波数fx)を二乗して得られる第1成分強度(パワー相当)と、第2スペクトルの成分(周波数fx)を二乗して得られる第2成分強度(パワー相当)とを加算する処理を、周波数fxを変えながら行うことで合成スペクトルを生成する。さらに、光源部10が出力する連続光の周波数を調節することにより、被測定光ファイバFの長さ方向における測定対象となる位置を移動させることができる。このため、連続光の周波数を掃引させることで、被測定光ファイバFの長さ方向における特性、例えば、歪み分布等を測定することができる。
【0044】
以上説明した第1実施形態の光ファイバ特性測定装置1によれば、光源部10から出力された1つの連続光からp偏波に関する第1スペクトルの成分と、s偏波に関する第2スペクトルの成分と取得し、さらに、第1スペクトルの成分(周波数fx)を二乗して得られる第1成分強度(パワー相当)と、第2スペクトルの成分(周波数fx)を二乗して得られる第2成分強度(パワー相当)とを加算する処理を、周波数fxを変えながら行うことで合成スペクトルを生成し、この合成スペクトルに基づいて被測定光ファイバの特性を測定している。このため、偏波状態に依存しない測定結果を短い測定時間で得ることができる。また、局部発振部172が、第1分析部171−1と第2分析部171−2とで共用されているため、ハードウェアの規模を小さくすることができ、また、第1分析部171−1と第2分析部171−2との間における周波数誤差を無くすことができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と比較して、第2実施形態における光ファイバ特性測定装置は、演算部170の構成が異なる、このため、第2実施形態の説明において、上記の第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図4は、本発明の第2実施形態における光ファイバ特性測定装置が備える演算部の概略構成を示すブロック図である。
【0046】
被測定光ファイバF内のある特定の1つの位置の特性を観測するには、被測定光ファイバF内に相関ピークが一つだけあるような状態にしなければならない。そのためには、光源部10が出力する連続光の変調周波数を下げて、相関ピークの間隔を被測定光ファイバ長よりも広めて測定範囲を広げる必要がある。しかしながら、測定範囲を広げることは、空間分解能の低下を招く。空間分解能の低下を防ぐためには連続光の変調振幅を大きくする必要があるが、この変調振幅の大きさには限度があるため、被測定光ファイバがある程度の長さを有する場合には高い空間分解能による特性の測定が困難となる。そこで、従来技術の測定装置では、被測定光ファイバの特性を測定するスペクトルアナライザに電気スイッチ(時間ゲート手段)を接続し、この電気スイッチを用いて、スペクトルアナライザに測定データを出力するタイミングを制御していた。
これに対して、本発明の第2実施形態における光ファイバ特性測定装置においては、第1分析部171−1および第2分析部171−2の実行と停止を制御する制御部175を演算部170に設けることで、被測定光ファイバFがある程度の長さを有する場合にも特性の測定を可能としている。
【0047】
制御部175は、第1分析部171−1および第2分析部171−2の実行と停止を制御する。被測定光ファイバF内に複数の相関ピークが存在する場合、制御部175は、第1分析部171−1および第2分析部171−2が、複数の相関ピークの中で、被測定光ファイバFの測定対象となる位置で発生したブリルアン散乱に基づく相関ピークのみに関連するスペクトルを生成するように、第1分析部171−1および第2分析部171−2の実行と停止を制御する。
【0048】
以上説明した第2実施形態の光ファイバ特性測定装置によれば、制御部175を設けることで、従来技術における電気スイッチ(時間ゲート手段)が不要となり、コストダウンや挿入損失を改善することができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と比較して、第3実施形態における光ファイバ特性測定装置は、演算部170の構成が異なる、このため、第3実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図5は、本発明の第3実施形態における光ファイバ特性測定装置が備える演算部の概略構成を示すブロック図である。第1実施形態における第1分析部171−1、第2分析部171−2、および合成部173に代えて、第3実施形態における演算部170は、第1調整部176−1、第2調整部176−2、第1変換部177−1、および第2変換部177−2を備えている。
【0050】
第1調整部176−1は、局部発振部172から入力された所定の周波数信号を用いて第1ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げる。第2調整部176−2は、局部発振部172から入力された所定の周波数信号を用いて第2ビート成分の周波数帯域を、予め規定された周波数帯域に下げる。後方散乱光および参照光は、10GHzを超える高周波であるため、第1変換部177−1および第2変換部177−2において変換処理を行う前に、扱いやすい周波数へ周波数変換する必要がある。第1調整部176−1および第2調整部176−2は、例えば、電気ミキサを用いる。
【0051】
第1変換部177−1は、第1調整部176−1から入力された第1ビート成分を第1パワースペクトルに変換する。第2変換部177−2は、第2調整部176−2から入力された第2ビート成分を第2パワースペクトルに変換する。第1変換部177−1および第2変換部177−2は、例えば、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)を行う。測定部174は、第1変換部177−1から入力された第1パワースペクトルと、第2変換部177−2から入力された第2パワースペクトルとを用いて、被測定光ファイバFの長さ方向における特性、例えば、歪み分布等を測定する。
【0052】
以上説明した第3実施形態の光ファイバ特性測定装置によれば、第1調整部176−1、第2調整部176−2、第1変換部177−1および第2変換部177−2を用いて、後方散乱光および参照光の偏波状態に依存しない測定結果(被測定光ファイバFの長さ方向における特性データ)を短い測定時間で得ることができる。
【0053】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態と比較して、第4実施形態における光ファイバ特性測定装置は、光分岐部20と、導光部30との間に、第3調整部190を設ける点および演算部170の構成が異なる、このため、第4実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図6は、本発明の第4実施形態における光ファイバ特性測定装置の概略構成を示すブロック図である。図7は、本発明の第4実施形態における光ファイバ特性測定装置が備える演算部の概略構成を示すブロック図である。
【0054】
第3調整部190は、光分岐部20から入力されたポンプ光の周波数を、予め規定された周波数に上げ、あるいは下げる。第3調整部190は、例えば、周波数シフタを用いる。また、第3調整部190は、参照光の周波数を上げ、あるいは下げるように、光分岐部20と、第2光分離部80との間に設けられてもよい。
【0055】
第4実施形態における光ファイバ特性測定装置の演算部は、例えば、第1変換部177−1と、第2変換部177−2と、測定部174とを備えている。第1変換部177−1は、周波数変換されたポンプ光を被測定光ファイバFに入射させることにより得られる後方散乱光および参照光のp偏波に関する第1ビート成分を第1パワースペクトルに変換する。第2変換部177−2は、周波数変換されたポンプ光を被測定光ファイバFに入射させることにより得られる後方散乱光および参照光のs偏波に関する第2ビート成分を第2パワースペクトルに変換する。第1変換部177−1および第2変換部177−2は、例えば、高速フーリエ変換を行う。測定部174は、第1変換部177−1から入力された第1パワースペクトルと、第2変換部177−2から入力された第2パワースペクトルとを用いて、被測定光ファイバFの長さ方向における特性、例えば、歪み分布等を測定する。
【0056】
以上説明した第4実施形態の光ファイバ特性測定装置によれば、第3調整部190、第1変換部177−1、および第2変換部177−2を用いて、後方散乱光および参照光の偏波状態に依存しない測定結果(被測定光ファイバFの長さ方向における特性データ)を短い測定時間で得ることができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。例えば、光遅延部70は光分岐部20と第2光分離部80の間にあるものとして説明しているが、光分岐部20と導光部30の間に置くこともできる。
【符号の説明】
【0058】
1……光ファイバ特性測定装置、10……光源部、20……光分岐部、30……導光部、40……光方向性結合部、50……光コネクタ、60……第1光分離部、70……光遅延部、80……第2光分離部、90……第1干渉部、100……第2干渉部、110……第1光電変換部、120……第2光電変換部、130……第3光電変換部、140……第4光電変換部、150……第1増幅部、160……第2増幅部、170……演算部、171−1……第1分析部、171−2……第2分析部、172……局部発振部、173……合成部、174……測定部、175……制御部、176−1……第1調整部、176−2……第2調整部、177−1……第1変換部、177−2……第2変換部、180……表示部、190……第3調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7