特許第6288026号(P6288026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6288026-校正装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288026
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】校正装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/01 20060101AFI20180226BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G01G23/01 Z
   F17C13/02 301A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-189387(P2015-189387)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-67470(P2017-67470A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年2月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年6月24日の3▲rd▼ International Workshop on Hydrogen Infrastructure and Transportation(第3回水素インフラ及び水素輸送の国際研修会)の発表用パワーポイント資料における「Gravimetric Test(重力計試験)」の欄に掲載した。そして平成27年8月31日の平成27年度NEDO新エネルギー成果報告会 燃料電池・水素分野の予稿集に掲載した。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素利用技術研究開発事業/燃料電池自動車及び水素ステーション用低コスト機器・システム等に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大 滝 勉
(72)【発明者】
【氏名】大 沢 紀 和
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−094617(JP,A)
【文献】 特開2005−134138(JP,A)
【文献】 特開昭59−202030(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034612(WO,A1)
【文献】 米国特許第04502318(US,A)
【文献】 特開平07−024295(JP,A)
【文献】 特開平09−053797(JP,A)
【文献】 実開平04−069735(JP,U)
【文献】 特開2015−087190(JP,A)
【文献】 実開平05−087532(JP,U)
【文献】 特開平11−230818(JP,A)
【文献】 特開2007−321775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 23/01
F17C 13/02
G01F 25/00
G01G 21/28 − 21/30
G01G 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から高圧の燃料ガスが供給される充填容器(2)を収容する計測ハウジング(1)と、当該充填容器(2)に供給された燃料ガスの重量を計測する秤(3)と、前記計測ハウジング(1)と秤(3)とを収容する本体ハウジング(10)とを有する燃料ガス充填装置の校正装置において、前記本体ハウジング(10)には水素充填装置(20)に連結されるレセプタクル(6)が設けられ、当該レセプタクル(6)と充填容器(2)とは充填ガス供給管路(7)で接続され、前記計測ハウジング(1)に設けられた充填ガス放出口(11)は充填ガス放出管路(12)により前記充填容器(2)と接続され、前記計測ハウジング(1)内に収容される充填容器(2)と充填ガス供給管路(7)と充填ガス放出管路(12)は断熱性を有する支持部材(8、14、15)を介して配設され、前記計測ハウジング(1)の上部には計測場所、計測温度が変化したときに秤(3)のスパン調整を行うための分銅(16)を載置する分銅載置部(1A)が設けられ、前記計測ハウジング(1)には計測ハウジング(1)内に乾燥ガスを供給する乾燥ガス管路(17)が設けられ、そして前記計測ハウジング(1)は乾燥ガスの供給により計測ハウジング(1)の露点温度が−20℃以下に設定され且つ僅かに加圧された状態で水分を含んだエアが侵入することがない半密閉構造であることを特徴とする校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素の様なガス充填装置の校正装置に関し、より詳細には、高圧充填された水素等のガスの充填量を正確に計測することができる校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給油所に設置されているガソリン計量機は、公正な商取引を保つために7年毎の流量検定が義務付けられており、流量計の器差が±0.5%以内であることが要求されている。その様な要求に対して出願人は、流量計の検査機能を有するガソリン計量機を提案している(特許文献1)。
近年では環境問題への対策として、水素を燃料とする燃料電池自動車が開発され、それに伴って水素充填装置及び水素充填装置の校正装置が検討されている。
【0003】
ここで校正装置を秤で構成し、秤により充填容器、充填配管等の機器の重量を屋外で計測する場合に、例えば、風雨の影響で秤による重量計測の結果が変動する恐れがある。また気温(温度)が変動すると秤による計測結果が変動してしまう。そのため、屋外の計測では風雨や気温変動により計測精度が悪化してしまい、高精度計測が難しいという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−33197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、水素ガス等の燃料ガスの充填装置の校正装置であって、周囲環境の影響を受けることなく燃料ガス(水素ガス等)の充填量を高精度に計測することができる校正装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、外部から高圧の燃料ガスが供給される充填容器(2)を収容する計測ハウジング(1)と、当該充填容器(2)に供給された燃料ガスの重量を計測する秤(3)と、前記計測ハウジング(1)と秤(3)とを収容する本体ハウジング(10)とを有する燃料ガス充填装置の校正装置において、前記本体ハウジング(10)には水素充填装置(20)に連結されるレセプタクル(6)が設けられ、当該レセプタクル(6)と充填容器(2)とは充填ガス供給管路(7)で接続され、前記計測ハウジング(1)に設けられた充填ガス放出口(11)は充填ガス放出管路(12)により前記充填容器(2)と接続され、前記計測ハウジング(1)内に収容される充填容器(2)と充填ガス供給管路(7)と充填ガス放出管路(12)は断熱性を有する支持部材(8、14、15)を介して配設され、前記計測ハウジング(1)の上部には計測場所、計測温度が変化したときに秤(3)のスパン調整を行うための分銅(16)を載置する分銅載置部(1A)が設けられ、前記計測ハウジング(1)には計測ハウジング(1)内に乾燥ガスを供給する乾燥ガス管路(17)が設けられ、そして前記計測ハウジング(1)は乾燥ガスの供給により計測ハウジング(1)の露点温度が−20℃以下に設定され且つ僅かに加圧された状態で水分を含んだエアが侵入することがない半密閉構造となっている。
【0009】
本発明の実施に際しては、校正装置(100)の設置後に、秤の足場は固定されていない状態(いわゆる「フリー」の状態)にすることが好ましい。
そして充填前後に校正装置(100)の重量を計測する際に、充填ノズル(21)、各種管路(17等)、各種センサーを取り外すことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上述の構成を具備する本発明によれば、充填容器(2)を収容する計測ハウジング(1)と秤(3)が本体ハウジング(10)内に存在するので、重量計測の際に、計測ハウジング(1)と秤(3)を風雨や、直射日光から遮断することができる。風雨、直射日光を遮断することで、計測ハウジング(1)と秤(3)における急激な温度変化も防止でき、秤(3)の計測精度が保たれる。
そのため、風雨、直射日光、温度変化の影響を受けることなく、精度の良い計測を行うことが可能となる。ここで、充填容器(2)に水素等を充填し校正するのに要する時間は数分程度であり、その間に風雨や直射日光の影響を避けることで十分精度の良い計測が可能となる。従って、本体ハウジング(10)により風雨、直射日光を遮断することにより、計測制度を向上する効果は大きい。
【0011】
校正に際して、充填時間を短縮するため、例えば−40℃に冷却された水素を充填容器(2)に充填すると、計測ハウジング(1)内に収容される充填容器(2)、充填ガス供給管路(7)、充填ガス放出管路(12)等、直接水素ガスに接触する機器は、周囲の温度よりも低温になり結露が発生し、計測精度を低くする可能性がある。しかし本発明において、計測ハウジング(1)内に収容される機器(例えば、充填容器2、充填ガス供給管路7、充填ガス放出管路12)が断熱性を有する部材(熱伝導性の低い部材:例えばゴムや樹脂等を一部に使用したもの)を介して計測ハウジング(1)に配設されるのであれば、充填された低温の燃料ガス(水素ガス)の影響やそれによる結露が例えば充填容器(2)、充填ガス供給管路(7)、充填ガス放出管路(12)の周辺まで到達することか防止できるので、精度の良い重量計測が可能となる。
特に低温の燃料ガス(例えば−40℃の水素ガス)の影響で秤(3)まで低温になると精度の良い計測が阻害されてしまうが、低温の燃料ガス(例えば−40℃の水素ガス)の影響や結露は断熱性を有する部材(熱伝導性の低い部材:例えばゴムや樹脂等を一部に使用したもの)を介在することで秤(3)に伝達されないので、秤(3)の計測精度が確保される。
【0012】
また本発明において、計測ハウジング(1)の上部に分銅(16)の分銅載置部(1A)を設ければ充填ガスの重量計測の度毎に(或いは計測場所が変わる度毎に)分銅載置部(1A)に計量のトレーサビリティーを満たす分銅(16)を載置して、秤(3)のスパン調整(変動範囲調整)を行うことが出来る。
その様なスパン調整を行えば、校正装置(100)を設置する場所が変動しても、計測箇所の場所、主に高度や緯度が変化したり、温度、気圧が変動して、秤(3)の温度特性や、計測ハウジング(1)内の気体の重量変化、熱膨張、収縮による応力の変化等の影響が存在したとしても、当該影響は前記スパン調整により排除され、秤(3)により高精度の重量計側が可能になる。
【0013】
ここで、充填ガスの重量計測に際して、各種機器を収容した計測ハウジング(1)の重量(例えば約400kg)に比較して、充填された燃料ガス(例えば水素ガス)の重量(例えば約5kg)は遙かに少ない。
そのため、計測ハウジング(1:充填容器2、充填ガス供給管路7等が収容された状態)を秤(3)に載置し、ゼロ点調整を行ない、その際に、上述した計量のトレーサビリティーを満たす分銅(16)を載置して秤(3)のスパン調整(変動範囲調整)を行えば、必要にして十分な精度を確保することができる。
【0014】
さらに本発明を実施するに際して、計測ハウジング(1)内に乾燥ガスを供給する乾燥ガス管路(17)を(計測ハウジング1に対して)着脱自在に設ければ、乾燥ガス管路(17)を介して計測ハウジング(1)内に乾燥ガスを充填することができる。そして、計測ハウジング(1)内に乾燥ガスを充填すれば、エア、その他の水分を包含する気体は排出される。
その結果、燃料ガスとして、例えば−40℃に冷却されている水素ガスを校正装置(100)内の充填容器(2)に供給しても、計測ハウジング(1)内の機器に結露が発生することが防止され、結露に起因する計測精度の低下を抑制することができる。
また計測ハウジング(1)内の機器に結露が生じることが防止できれば、結露した配管が乾燥するまで重量の計測を待機する必要がなくなるので、連続して校正を行うことが可能である。
【0015】
ここで乾燥ガス管路(17)が計測ハウジング(1)に対して着脱自在に設けられていれば、秤(3)による重量計測の際に乾燥ガス管路(17)を計測ハウジング(1)から分離し、乾燥ガス管路(17)に生じる応力が秤(3)に影響して、重量計測の結果が変動してしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
図2】実施形態を用いた校正の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図2を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、本発明の実施形態に係る校正装置は全体が符号100で示されており、校正装置100は、計測ハウジング1、計測ハウジング1内に配置され外部から高圧の燃料ガス(例えば水素ガス)が供給される充填容器2、充填容器2に供給された燃料ガスの重量を計測する秤3、計測ハウジング1と秤3とを収容する本体ハウジング10を備えている。
なお充填容器2は、支持部材8を介して計測ハウジング1の底面上に固定されている。
【0018】
以下、燃料ガスとして水素ガスを例示して説明する。
充填容器2に供給、充填された水素ガスの重量は、秤3により、水素ガス充填前の計測ハウジング1の重量と、水素ガス充填後の計測ハウジング1の重量を計測し、両者の差異から演算して決定される。そして図2を参照して後述する態様で秤3のゼロ点調整及びスパン調整(変動範囲調整)を実施した上で、水素ガス充填前後の重量が計測される。
図1において、充填容器2等を収容する計測ハウジング1及び秤3は本体ハウジング10内に収容され、本体ハウジング10は底面に移動手段10A(車輪等)を備えており、校正に際し水素充填装置20の設置個所近傍まで移動することができる。
【0019】
計測ハウジング1の側面にはレセプタクル6(水素受入口)が設けられ、校正すべき水素充填装置20から計測ハウジング1内の充填容器2に水素ガスを供給、充填する際に、レセプタクル6は計測ハウジング1側の水素受入口となる。
校正のため充填容器2に水素ガスを充填する際に、水素充填装置20と計測ハウジング1は、充填ノズル21とレセプタクル6の結合により連結され、水素充填装置20から計測ハウジング1内の充填容器2に水素ガスが供給される。
【0020】
計測ハウジング1において、レセプタクル6と充填容器2は充填ガス供給管路7で接続される。水素充填装置20から供給された水素ガスは、レセプタクル6から充填ガス供給管路7を介して充填装置2に充填される。
図1において、符号2Aは充填装置2における充填ガス取入部を示し、符号9は充填ガス供給管路7に介装されて水素ガスの逆流を防止する逆止弁である。
【0021】
計測ハウジング1の上面には充填ガス放出口11が設けられ、充電ガス放出口11は充填ガス放出管路12により充填容器2と接続されている。ここで、図示はされていないが、本体ハウジング10にも気体放出機構が設けられている。
充填容器2から水素ガスを放出する場合、充填容器2から放出された水素ガスは充填ガス放出管路12を通過して、充填ガス放出口11から計測ハウジング1の外部に放出され、図示しない本体ハウジング10の気体放出機構を介して本体ハウジング10外に放出される。
計測ハウジング1の上面には気体排出口13が設けられ、計測ハウジング1内に乾燥ガス或いは不活性ガスを充填したときに、計測ハウジング1内のエアやその他の水分を包含する気体は気体排出口13を介して計測ハウジング1の外部に排出される。
【0022】
図1において、充填ガス供給管路7は、支持部材14(14A、14B、14C)により計測ハウジング1の底面部に固定される。また充填ガス放出管路12は、支持部材15により計測ハウジング1の上面部に固定される。
支持部材14、支持部材15、支持部材8により、充填ガス供給管路7、充填ガス放出管路12、充填容器2のそれぞれを計測ハウジング1に固定する態様としては、従来公知の技術を適用することができる。
【0023】
ここで、支持部材14、15、8は、断熱性を有する部材(熱伝導率の低い材料:例えばゴムや樹脂等を一部に使用したもの)により構成されている。
校正に際して、例えば−40℃に冷却された水素を充填容器2に充填すると、充填容器2、充填ガス供給管路7、充填ガス放出管路12等、直接水素ガスに接触する機器は、周囲の温度よりも低温になり結露が発生する。
しかし充填容器2、充填ガス供給管路7及び充填ガス放出管路12は、断熱性を有する部材(例えばゴムや樹脂等を一部に使用したもの)により構成された支持部材14、15、8を介して計測ハウジング1に固定(配置)されているので、水素ガスの影響による低温は、支持部材14、15、8で遮断され、他の機器(計測ハウジング1、秤3等)が低温になったり、結露が発生することは防止される。換言すれば、断熱性を有する部材(例えばゴムや樹脂等を一部に使用したもの)で構成された支持部材14、15、8を設けることにより、例えば−40℃の水素の低温の影響が秤3に及んでしまうことが防止され、計測ハウジング1や秤3の外表面に結露が生じることが防止される。
【0024】
図1において、計測ハウジング1の上面であって秤3の中心部上方近傍には、スパン調整を行うための分銅16を載置する分銅載置部1Aが設けられる。
図示の実施形態における秤3による重量計測は温度変動や気圧変動等の影響を受け易く、また、計測場所の高度や緯度が変化することによる重力加速度の違いの影響を受けてしまう。しかし、図示の実施形態に係る校正装置100では、充填ガスの重量計測の度毎に(或いは、計測場所が変わる度毎に)、分銅載置部1Aに計量のトレーサビリティーが取れている分銅16を設置して秤3のスパン調整(変動範囲調整)を行っている。これにより、温度変動、気圧変動、計測場所の高度や緯度の変化が存在しても、その影響を排除して、秤3による高精度の重量計測を実施することができる。
【0025】
校正における充填ガスの重量計測に際し、充填ガスを充填容器2に充填する前に、充填容器2、充填ガス供給管路7等を収容した状態の計測ハウジング1を秤3に載置し、秤3のゼロ点調整を行い、その後、計測ハウジング1の分銅載置部1Aに分銅16を設置し、秤3のスパン調整(変動範囲調整)を行う。
ここで、充填ガスを充填する前の計測ハウジング(1:充填容器2、充填ガス供給管路7等を収容した)の重量は例えば約400kgであるのに対し、充填容器2に充填される水素ガスの重量(すなわち水素充填による計測ハウジング1の重量変化)は例えば約5kgであり、計測ハウジング1の重量に比較して遙かに小さい。そのため、約400kgの計測ハウジング1を秤3に載置した状態でゼロ点調整を行った後に、トレーサビリティーの取れた分銅(例えば5kg)を秤3に載置してスパン調整(変動範囲調整)を行えば、充填ガスの重量測定に必要十分な計測精度を確保することができる。
【0026】
図1において、計測ハウジング1の側面には、計測ハウジング1内に乾燥ガスを供給する乾燥ガス管路17が着脱自在に設けられている。乾燥ガスは、図示しない供給源から乾燥ガス管路17により計測ハウジング1内に供給され、充填される。乾燥ガスが計測ハウジング1内に充填されれば、低温(例えば−40℃)の水素ガスを充填容器2に供給しても、計測ハウジング1内の各種機器表面に発生する結露量は少なく、当該結露量が重量測定に及ぼす影響は十分に小さい。
ここで乾燥ガスとしては、乾燥したエアに加えて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスや、炭酸ガス、乾燥エアを用いることができる。そして乾燥ガスとしては、調達コストが安く、計測ハウジング1内への充填や排出を短時間で完了することができて、しかも安全性の高い気体であれば、適用可能である。
【0027】
さらに、計測ハウジング1の側面には、露点計18が設けられている。露点計18の計測結果に基づいて、計測ハウジング1内で適正な湿度管理を行うためである。
ここで、例えば−40℃以下まで露点を下げれば結露量はゼロになると予測されるが、露点−40℃以下の結露量と露点−20℃における結露量の差は小さい。そのため、必要十分乾燥していると判断出来る基準となる露点温度として、−20℃〜−25℃程度を設定することが現実的であり且つ経済的である。
図示の実施形態では露点計18は計測ハウジング1の外側に設けられているが、計測ハウジング1の内部に設けることも可能である。
【0028】
明確には図示されていないが、計測ハウジング1内は半密閉構造となっている。ここで「半密閉構造」とは、完全に密閉するのではないが、略々密閉に近い状態にすることができる構造を意味している。
計測ハウジング1を半密閉構造にした場合には、計測ハウジング1内に乾燥ガスを供給して計測ハウジング1内が僅かに加圧された状態に保持すれば、水分を含んだエアが計測ハウジング1内に侵入することを防止できる。
【0029】
図1で、秤3は設置部材4により本体ハウジング10の底面上に設置される。設置部材4は、秤3の秤台座部3Aを支持する足部4A、足部4Aを本体ハウジング10の底部10Aに固定するロック機構4Bから構成される。
足部4Aは平板状の秤台座部3Aを支持するため秤台座部3Aの各隅に4箇所設けられている。足部4Aを構成する垂直部材4A1が秤台座部3Aを貫通して上方に延設され、秤台座部3Aは垂直部材4A1に従来公知の態様で固定される。
ロック機構4Bは例えばボルト等の締結部材により構成され、足部4Aの底部4A2に設けられている。ロック機構4Bは、足部4Aを本体ハウジング10の底部10Aに固定し、足部4Aの底部10Aへの固定を解除する機能を有している。
【0030】
校正装置100の移動時には、秤3が動いて本体ハウジング10に衝突することを防止するため、ロック機構4Bで足部4Aを底部10Aに固定し、以って、計測ハウジング1を載置した秤3を本体ハウジング10に確実に固定する。校正装置100の保管時においても、秤3が動いて他の部材に衝突することを防止するべく、ロック機構4Bでロックする。
一方、充填ガスの重量計測時に、設置部材4を本体ハウジング10に固定して秤3を本体ハウジング10に固定すると、本体ハウジング10の歪みや撓み、温度変化による熱膨張、収縮が設置部4を介して秤3に伝達され、重量計測の結果に誤差を生じる恐れがある。そのため、重量計測時にはロック機構4Bを固定解除状態にせしめて、設置部材4を本体ハウジング10に固定されていない状態(いわゆる「フリー」の状態)にして、秤3を本体ハウジング10からフリーにする。
【0031】
校正における重量計測(秤量)の際に、充填ノズル21、乾燥ガス管路17、各種センサー(図示せず)を計測ハウジング1に接続されていると、充填ノズル21や乾燥ガス管路17や図示しないセンサーに生じた応力が秤3に伝達されてしまい、秤3の計測結果に影響を及ぼしてしまう可能性が存在する。
その様な可能性を除去するため、校正における重量計測(秤量)に際しては、計測ハウジング1に接続される充填ノズル21、乾燥ガス管路17、各種センサー(図示せず)を計測ハウジング1から分離する。
なお、計測ハウジング1の重量計測に際して、露点計18を分離することも可能である。
【0032】
ただし、校正における重量計測(秤量)の際に、充填ノズル21、乾燥ガス管路17、センサー(図示せず)に生じた応力が秤3に伝達されない様に計測ハウジング1に接続し、秤3による計測に悪影響が及ばない態様であれば、充填ノズル21、乾燥ガス管路17、各種センサー(図示せず)を計測ハウジング1に接続した状態で、秤3で計測することも可能である。その際は、乾燥ガス管路17、各種センサー(図示せず)を計測ハウジング1への接続部近傍で強固に固定し、計測ハウジング1へ変形や応力が伝わらないような構造とする。
充填ノズル21、乾燥ガス管路17、各種センサー(図示せず)を計測ハウジング1に接続した状態で、秤3で計測すれば、配管、ノズルの取り付け及び取り外しという煩雑な作業を省略することが出来る。そして、各種センサーが重量計測時も接続していれば常時監視計測が可能となり、安全でより詳細な計測が可能となる。
【0033】
次に、図1の校正装置100を用いた校正の手順を、図2に示す校正のフローチャートを参照して説明する。
図2において、ステップS1では秤リセットを行う。
図2には明示されないが、計測ハウジング1、秤3等を収容した本体ハウジング10を校正実施場所に移動させたら、載置部材4のロック機構4Bを解除して、秤3を本体ハウジング10からフリーの状態にする。
【0034】
秤リセットでは、まず充填前のゼロ点調整、分銅16によるスパン調整((変動範囲調整))を実施し、その後、乾燥ガス管路17、充填ノズル21を接続し(機器接続作業)、計測ハウジング1内のエア、その他の水分を包含する気体を排出する(掃気作業)。
さらに水素充填装置20(校正対象)から充填容器2に水素ガスを充填し(充填作業)、そして乾燥ガス管路17、充填ノズル21を接続解除する(接続解除作業)。
【0035】
そして、ステップS1における充填前のゼロ点調整では、充填前であり乾燥ガス管路17、充填ノズル21等が接続されていない状態の計測ハウジング1(充填容器2等を収容している)を秤3に載置し、重量計測を行うと共にゼロ点調整を行う。
次に分銅16によるスパン調整を行い、計測のトレーサビリティーが取れた分銅16を計測ハウジング1の分銅載置部1Aに設置して、スパン調整(変動範囲調整)を行う。
【0036】
ステップS1の機器接続作業では、計測ハウジング1の側面に乾燥ガス管路17を接続する。そして計測ハウジング1の側面に設けられたレセプタクル6に、水素充填装置20の充填ノズル21を接続する。
ステップS1の掃気作業では、乾燥ガス管路17を介して、図示しない乾燥ガス供給源から計測ハウジング1内に乾燥ガスを供給、充填する。計測ハウジング1内に乾燥ガスを充填すれば、計測ハウジング1内に存在していた水分を包含する気体(例えばエア)を、気体排出口13から計測ハウジング1の外部に排出し、さらに図示しない気体放出機構から本体ハウジング10の外部に排出する。
【0037】
ステップS1の掃気作業に際しては、随時露点計18の計測値を監視しながら行う。掃気が進行するに連れて露点温度は徐々に低下し、計測ハウジング1内の湿度が低下する。そして露点温度が所定温度(例えば−20℃)に達した時に、低温(例えば−40℃)の水素ガスが供給されても計測ハウジング1内の機器表面に結露が生じない程度に乾燥していると判断する。
換言すれば、露点温度が所定温度(例えば−20℃)に達すると計測ハウジング1内は十分に乾燥しており、例えば−40℃に冷却されている水素ガスを計測ハウジング1内の充填容器2に充填しても、充填容器2、レセプタクル6、充填ガス供給管路7、その他の機器の表面に発生する結露量は少なく、当該結露量が重量測定に及ぼす影響は十分に小さい。そのような状態において、ステップS1の充填作業が行われる。
水素ガスの充填は、水素充填装置20の圧力計(図示せず)により、所定量の水素ガスが供給されたと判断されるまで行う。
【0038】
充填作業の終了した後、ステップS1の接続解除作業を行なう。
接続解除作業では、乾燥ガス管路17、充填ノズル21の接続を解除する。乾燥ガス管路17を計測ハウジング1から接続解除して分離することにより、ステップS2の重量計測に際して、乾燥ガス管路17に生じた応力の影響を秤3による計測から除去し、当該応力による重量計測結果の変動を防止する。
ただし上述した通り、秤3による重量計測の際に、充填ノズル21、乾燥ガス管路17、各種センサー(図示せず)を計測ハウジング1に接続した状態で実施することも可能である。その場合には、ステップS1の接続解除作業は省略され、後述のステップS2においても接続解除作業は行われない。
ステップS1が終了したら、ステップS2に進む。
【0039】
ステップS2では、水素充填装置20から計測ハウジング1内の充填容器2に水素ガスが充填された場合の重量(水素ガス充填後の計測ハウジング1の重量)を秤3により計測する。
図示の実施形態では、水素ガス充填後に計測ハウジング1内の機器表面の結露が防止されるので、結露による誤差を排除した正確な重量が計測できる。
また、計測ハウジング1を秤3に載置してゼロ点調整を行い、且つ、トレーサビリティーの取れた分銅16を秤3に載置してスパン調整(変動範囲調整)を行なっているので、秤3の重力測定では必要且つ十分な精度が確保される。
そして水素ガス充填前後の重量の差から、公知の態様により水素ガスの充填量が演算される。そして、演算された充填量と校正すべき水素充填装置20で計測された充填量とを比較することにより、水素充填装置20の校正が行われる。
【0040】
次のステップS3では、ステップS2の計測結果である水素ガスの重量や、水素ガスの充填量、校正の結果を、図示しない表示装置(ディスプレイ等)に表示する。
さらに、水素ガスの充填量を、校正対象である水素充填装置20の識別番号(製品番号)、校正日時等と共に、情報処理機器(例えば図示しないパソコン等)の表示装置で表示し、記憶装置に保存する。そして校正を終了する。
【0041】
図2には明確には示されてはいないが、校正装置100で複数の水素充填装置20の校正を行う場合は、ステップS3の後、充填容器2に充填された水素ガスを充填ガス放出管路12、充填ガス放出口11により計測ハウジング1及び本体ハウジング10の外部に放出する。そして図2の「スタート」に戻り、ステップS1〜S3の作業を実行する。
水素ガスの放出は、次の水素充填装置20の校正の手順において、ステップS1の「秤リセット」の工程中で行うこともできる。
【0042】
図示の実施形態によれば、充填容器2を収容する計測ハウジング1と秤3が本体ハウジング10内に存在するので、重量計測の際に風雨、直射日光を遮断することができる。また、風雨、直射日光を遮断することで急激な温度変化も防止でき、秤3の計測精度を保持することが出来る。
そのため、風雨、直射日光、温度変化の影響を受けることなく、高精度の計測を行うことが可能となる。
【0043】
また図示の実施形態によれば、充填容器2、充填ガス供給管路7、充填ガス放出管路12は、断熱性を有する部材で構成された支持部材14、15、8を介して計測ハウジング1に配置されているので、例えば−40℃に冷却された水素を充填容器2に充填して、充填容器2、充填ガス供給管路7、充填ガス放出管路12が低温になっても、低温の影響や結露は断熱性を有する部材で構成された支持部材14、15、8で遮断され、秤3等の周辺の機器には及ばず結露することもない。
【0044】
また、図示の実施形態によれば、校正における充填ガスの重量計測の度毎に(或いは、計測場所が変わる度毎に)、計量のトレーサビリティーを満たす分銅16を載置して、秤3のスパン調整(変動範囲調整)を行うことができるので、計測場所における重力加速度、温度、気圧が変動しても、当該変動はスパン調整(変動範囲調整)で除去され、秤3の計測精度に悪影響を及ぼすことはない。
係るスパン調整に加えて、充填容器2、充填ガス供給管路7等を収容した状態の計測ハウジング1を秤3に載置してゼロ点調整を行なうことにより、充填された水素ガス重量の計測に必要且つ十分な精度を確保することができる。
【0045】
そして図示の実施形態によれば、校正装置100の移動時や保管時には、設置部材4のロック機構4Bを作用させ、計測ハウジング1を載置した秤3を本体ハウジング10に確実に固定して、秤3が他の機器に衝突することによる不都合を防止することが出来る。
一方、重量計測時にはロック機構4Bを解除し、設置部材4を本体ハウジング10からフリーにすることにより、本体ハウジング10の歪みや撓み、温度変化による熱膨張、収縮に起因する応力が秤3の計測に影響することを防止している。
【0046】
さらに、図示の実施形態によれば、校正における重量計測(秤量)に際して、計測ハウジング1に接続される充填ノズル21、乾燥ガス管路17、各種センサー(図示せず)を計測ハウジング1から分離することが出来るので、充填ノズル21や乾燥ガス管路17(或いは、これ等を構成する部材)に生じた応力が秤3に作用して重量計測結果が変動してしまうことを防止している。
【0047】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では水素充填装置の校正装置として説明しているが、本発明はCNG充填装置の校正装置についても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・計測ハウジング
1A・・・分銅載置部
2・・・充填容器
3・・・秤
3A・・・秤台座部
4・・・設置部材
4A・・・足部
4B・・・ロック機構
6・・・レセプタクル(水素受入口)
7・・・充填ガス供給管路
8・・・支持部材
9・・・逆止弁
10・・・本体ハウジング
10A・・・移動手段(車輪等)
11・・・充填ガス放出口
12・・・充填ガス放出管路
13・・・気体排出口
14、15・・・支持部材
16・・・分銅
17・・・乾燥ガス管路
18・・・露点計
20・・・水素充填装置
21・・・充填ノズル
100・・・校正装置
R1、R2、R3・・・剛性部材
図1
図2