(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出力軸を有するエンジンと、当該エンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物と還元剤とを反応させる排ガス浄化装置と、前記エンジンの作動を制御するエンジンコントローラであって前記排ガス浄化装置の状態に応じて前記エンジンの出力に制限を与えるものと、前記排ガスに含まれる微粒子を捕集する微粒子捕集フィルタと、を備えた作業機械に設けられる油圧駆動装置であって、
前記エンジンの出力軸に連結され、当該エンジンにより駆動されることにより作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、
当該油圧ポンプが吐出する作動油の供給を受けて前記作業機械に含まれる駆動対象要素を動かす油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプのポンプ容量を制御するポンプ容量制御部であって、前記エンジンコントローラにより前記エンジンの出力が制限されるのに伴って前記油圧ポンプのポンプ容量を制限するものと、
前記油圧ポンプの負荷を増加させて前記エンジンの負荷を増大させる負荷掛け部と、
前記微粒子捕集フィルタの再生の要求があった場合に前記負荷掛け部を作動させて当該再生を行わせ、かつ、前記エンジンコントローラにより前記エンジンの出力が制限されるのに伴って前記負荷掛け部の作動による前記再生を制限する再生制御部と、を備える、作業機械の油圧駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記SCRシステムのように還元剤を用いて排ガスの浄化を行う装置では、これに用いられる還元剤の量や品質が低下し、あるいは当該システムに含まれるセンサやポンプ、ノズル等が故障すると、正常に作動することができなくなる。しかし、このように排ガス浄化装置が異常な状態にあってもエンジン自体は通常通り作動することが可能である。
【0006】
そこで、前記のように排ガス浄化装置の異常が生じたままエンジンの運転が続行されることを規制すべく、当該異常の発生に伴って前記エンジンの出力トルクを制限し最終的には作業機械の運転を不能にするようなエンジン出力制限機能が前記エンジンコントローラに与えられることがある。当該エンジン出力制限機能は、前記排ガス浄化装置の異常を使用者に確実に知らせることを可能にし、さらには、最終的に作業機械の運転を不能にすることで、排ガス浄化装置に作動不良が生じた状態のまま作業機械の運転が継続して行われるのを防ぐことを可能にする。
【0007】
しかし、前記のようなエンジン出力の制限期間中に通常運転時と同じくエンジン負荷の高い運転が行われると、急にエンジンが停止してしまうおそれがある。このような突然のエンジン停止は、運転効率を著しく低下させ、また作業機械の安全性に影響を与えるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、エンジン、エンジンコントローラ、及び還元剤を用いた排ガス浄化装置を備えた作業機械に設けられる油圧駆動装置であって、前記排ガス浄化装置の状態に応じてエンジンの出力を制限する前記エンジンコントローラの機能を確保しながら当該エンジン出力の制限による突然のエンジン停止を防ぐことが可能なもの、及び当該油圧駆動装置を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、出力軸を有するエンジンと、当該エンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物と還元剤とを反応させる排ガス浄化装置と、前記エンジンの作動を制御するエンジンコントローラであって前記排ガス浄化装置の状態に応じて前記エンジンの出力に制限を与えるものと、を備えた作業機械に設けられる油圧駆動装置を提供する。この油圧駆動装置は、前記エンジンの出力軸に連結され、当該エンジンにより駆動されることにより作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、当該油圧ポンプが吐出する作動油の供給を受けて前記作業機械に含まれる駆動対象要素を動かす油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプのポンプ容量を制御するポンプ容量制御部であって、前記エンジンコントローラにより前記エンジンの出力が制限されるのに伴って前記油圧ポンプのポンプ容量を制限するものと、を備える。
【0010】
また本発明は、前記エンジンと、前記排ガス処理装置と、前記エンジンコントローラと、前記油圧駆動装置と、を備えた作業機械を提供する。
【0011】
前記の油圧駆動装置及び当該装置を備えた作業機械によれば、前記排ガス浄化装置の異常に対応して前記エンジンコントローラがエンジンの出力を制限しても、そのエンジン出力の制限に伴って前記ポンプ容量制御部が前記油圧ポンプのポンプ容量を制限して当該油圧ポンプを駆動するためのエンジンの負荷を軽減することにより、当該エンジンの過負荷に起因する突然のエンジン停止が防がれる。
【0012】
例えば、前記エンジンコントローラが前記エンジンの出力の制限レベルである出力制限レベルを段階的に高くするものである場合、前記ポンプ容量制御部は、当該出力制限レベルが高いほど前記ポンプ容量の制限の度合いを高めるように当該出力制限レベルに応じたポンプ容量の制限を行うことが、好ましい。このようなポンプ容量制御は、前記出力制限レベルが低い場合にはポンプ容量の制限を抑えて実行可能な作業の範囲を確保する一方、前記出力制限レベルが高い場合にはポンプ容量の制限を重くしてエンジン停止の防止をより確実にすることが可能である。
【0013】
前記ポンプ容量の制限の具体的な態様としては、前記油圧ポンプのもつ最大ポンプ容量よりも小さいポンプ容量上限値を設定し、作業に要求される要求ポンプ容量が前記ポンプ容量上限値以下の場合にはその要求ポンプ容量に実際のポンプ容量を調節し、前記要求ポンプ容量が前記ポンプ容量上限値を上回る場合には実際のポンプ容量を前記ポンプ容量上限値に設定するものが、好適である。このようなポンプ容量の制限は、前記ポンプ容量上限値を超えない範囲で、つまり突然のエンジン停止を回避することが可能な範囲で、要求されるポンプ容量を満たすことを可能にする。
【0014】
本発明に係る油圧駆動装置は、前記の(還元式の)排ガス浄化装置に加え、排ガスに含まれる微粒子を捕集する微粒子捕集フィルタをさらに備えた作業機械
に適用
される。この微粒子捕集フィルタは、放置しておくと目詰まりを起こして機能が低下するため、必要に応じて当該微粒子捕集フィルタの再生、具体的には当該微粒子捕集フィルタに捕捉された微粒子の燃焼、を行うことが好ましい。この再生は、前記油圧駆動装置においては、前記油圧ポンプの負荷を上昇させる負荷掛け操作を行って当該油圧ポンプの負荷の上昇によりエンジンの負荷を高めて排ガスの温度を上昇させることにより行うことが可能である。しかし、前記のように排ガス処理装置の異常によってエンジンの出力が制限されている状態で前記微粒子捕集フィルタの再生を無制限に行うことは、突然のエンジン停止、あるいは無駄なエンジン負荷の上昇による燃料の消費を招くおそれがある。
【0015】
そこで、本発明に係る油圧駆動装置は、前記微粒子捕集フィルタをさらに備えた作業機械におい
て、前記油圧ポンプの負荷を増加させて前記エンジンの負荷を増大させる負荷掛け部と、前記微粒子捕集フィルタの再生の要求があった場合に前記負荷掛け部を作動させて当該再生を行わせ、かつ、前記エンジンコントローラにより前記エンジンの出力が制限されるのに伴って前記負荷掛け部の作動による前記再生を制限する再生制御部と、を備え
る。この制御は、前記エンジン出力の制限にもかかわらず前記再生のためにエンジンの負荷を増加する運転が行われることによるエンジン停止の未然回避を可能にする。また、当該エンジン出力の制限により前記再生のための排ガス温度の上昇が見込めない状態において無駄にエンジンの燃料が消費されることも防がれる。
【0016】
当該再生制御部も、前記エンジンコントローラが前記エンジンの出力の制限レベルである出力制限レベルを段階的に高くするものである場合、当該出力制限レベルが高いほど前記微粒子捕集フィルタの再生の制限の度合いを高めるように当該出力制限レベルに応じた当該再生の制限を行うことが、好ましい。
【0017】
具体的に、前記再生制御部は、少なくとも前記出力制限レベルが最高レベルにある場合には前記負荷掛け部の作動による前記再生を無条件で禁止することにより、急なエンジン停止の発生をより確実に防ぐことができる。さらに、前記出力制限レベルが最高レベルよりも低いレベルであって予め設定された範囲内にあるレベルである場合には、前記油圧アクチュエータを動かすために行われる操作の量が一定以下の場合(例えば、当該油圧アクチュエータを動かすための操作が与えられる操作部材と、この操作部材に与えられる操作に応じて前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるコントロールバルブと、を備える場合には当該操作部材の操作量が一定以下の場合)にのみ前記負荷掛け部の作動による前記微粒子捕集フィルタの再生を許容するものが、好適である。この制御では、前記出力制限レベルが前記範囲内にある場合において、前記油圧アクチュエータを動かすための一定以上の操作が行われている場合、つまり当該油圧アクチュエータの駆動によるエンジンの負荷が大きい場合には、前記再生を禁止してエンジン停止を回避する一方、前記操作が行われておらず前記油圧アクチュエータの駆動によるエンジンの負荷の増加がない場合には前記再生を許容することにより、必要以上の過度の再生の制限を回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、作業機械に設けられる油圧駆動装置であって、当該作業機械の排ガス浄化装置の異常に伴ってエンジンの出力を制限するエンジンコントローラの機能を確保しながら当該エンジン出力の制限による突然のエンジン停止を防ぐことが可能なもの、及び当該油圧駆動装置を備えた作業機械が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図8は、油圧駆動装置が搭載される作業機械の一例である移動式クレーンを示す。このクレーンは、下部走行体1と、当該下部走行体1の上に旋回可能に搭載される旋回フレーム2a及びその上に設置される運転室2bを含む上部旋回体2と、前記旋回フレーム2aの上に搭載されてクレーン作業を行う作業装置と、を備える。前記作業装置は、起伏可能なブーム3と、ブーム起伏ロープ4の巻取り及び巻出しを行うことにより前記ブーム3を起伏させるブーム起伏ウィンチ5と、吊り荷が掛けられる主巻フック6と、主巻ロープ7の巻取り及び巻出しを行うことにより前記主巻フック6及び前記吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う主巻ウィンチ8と、図略の補巻ロープの巻取り及び巻出しを行うことにより図略の補巻フック及びこれに掛けられる吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う補巻ウィンチ9と、を有する。
【0022】
本発明に係る作業機械は、このような移動式クレーンに限定されない。本発明は、油圧によって駆動される要素を含む作業機械に広く適用されることが可能である。
【0023】
図1に示すように、この実施の形態に係る作業機械は、動力を生成して排ガスを排出するエンジン10と、このエンジン10の排気系に設けられる微粒子捕集フィルタであるDPF12と、さらにその下流側に設けられる排ガス処理装置であるSCR(選択式還元触媒)システム20と、前記エンジン10の作動を制御するエンジンコントローラ30と、前記エンジンコントローラ30との間で信号の送受信を行って作業機械の作動を制御するメインコントローラ40と、前記エンジン10からパワーデバイダ14を介して分配される動力を用いて各駆動対象要素を油圧により駆動する油圧回路と、を備える。
【0024】
前記DPF12は、前記排ガス中に含まれる微粒子を捕集するフィルタである。当該DPF12を継続して使用するためには、当該DPF12が捕捉した微粒子を消滅させる再生が必要であり、当該再生は当該微粒子を燃焼させることにより行われる。
【0025】
前記SCRシステム20は、例えば尿素水を還元剤として用いてこれを前記排ガス中のNOx(窒素酸化物)と触媒反応させることにより当該NOxを無害化するシステムであり、
図1に示すようなSCR触媒22と、還元剤タンク23と、還元剤ノズル24と、還元剤検出部25と、排ガス検出部26と、SCRコントローラ28と、を含む。
【0026】
前記SCR触媒22は、前記DPF12の下流側に配置されるマフラ16内に酸化触媒とともに配置され、前記還元剤とNOxとの酸化還元反応を促進する。前記還元剤タンク23は、前記還元剤を貯留し、前記還元剤ノズル24は前記還元剤タンク23から図略の還元剤ポンプを通じて供給される還元剤を排ガス管内に適宜噴射する。還元剤が尿素水の場合、当該尿素水は排ガス管内の高温によりアンモニアとなり、前記排ガス中のNOxと反応してこれを窒素ガス、水等に分解する。
【0027】
前記還元剤検出部25は、前記還元剤タンク23内の還元剤の液面レベルの検出(すなわち当該還元剤の貯留量の検出)や、還元剤の劣化状態(例えば沈殿物の発生の有無や尿素の濃度)の検出を行い、前記排ガスセンサ26は、前記マフラ16内の排ガスの濃度やNOxの濃度の検出を行う。前記SCRコントローラ28は、前記各検出部25,26が生成する検出信号を取り込んでSCRシステム20全体の制御を行う。また、SCRコントローラ28は、SCRシステム20にその正常な作動を阻害するような重要な異常が存在する場合、例えば、前記還元剤の貯留量の減少や劣化、検出されるNOx濃度の増加、前記還元剤ポンプや還元剤ノズル24あるいは各種センサの故障、がある場合に、その情報を伝達するための異常検出信号をエンジンコントローラ30に入力する。
【0028】
エンジンコントローラ30は、エンジン10の回転数(エンジン回転数)及び出力トルクの制御を行う。さらに、エンジンコントローラ30は、前記SCRコントローラ28から前記異常検出信号の入力を受けた場合に、その異常のレベルに応じて前記エンジン10の出力トルクを制限し、最終的に作業機械の運転を不能にするようなエンジン出力制限機能を有する。この実施の形態に係るエンジンコントローラ30は、後にも述べるように、前記異常の進行や異常発生からの経過時間に応じて前記出力トルクの制限のレベルである出力制限レベルをレベル1からレベル4まで4段階にわたって上昇させる。
【0029】
前記メインコントローラ40は、前記油圧回路の作動を制御することにより、作業機械の作業装置や走行装置の駆動制御を行う。さらに、この実施の形態に係るメインコントローラ40は、後述のように、前記出力制限レベル(レベル1〜4)に応じて運転やDPF再生の制限を行う機能を有する。
【0030】
前記油圧回路は、少なくとも一つの油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータと、を含む。前記少なくとも一つの油圧ポンプは、前記エンジン10により駆動されて作動油を吐出する。前記複数の油圧アクチュエータは、前記油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動し、対応する駆動対象要素を動かす。
図8に示される移動式クレーンの場合、前記各ウィンチ5,8,9のドラムをそれぞれ回転させる油圧モータである複数のウィンチモータや、前記下部走行体1を走行させる油圧モータである走行モータ等が含まれる。
【0031】
図2は、前記油圧回路に含まれる回路であって、ウィンチを駆動するための駆動回路50と、これに付設されるパイロット回路60と、を代表的に例示する。
【0032】
前記駆動回路50は、油圧ポンプ52と、前記複数の油圧アクチュエータのうちの一つである油圧モータ54と、当該油圧モータ54について与えられたコントロールバルブ56と、負荷掛け用の圧力制御弁である負荷掛け弁58と、を含む。
【0033】
前記油圧ポンプ52は、前記エンジン10の出力軸に前記パワーデバイダ14を介して連結され、当該エンジン10の生成する動力により駆動されて作動油を吐出する。当該油圧ポンプ52は、そのポンプ容量(押しのけ容積)が調節可能である可変容量型の油圧ポンプである。当該油圧ポンプ52にはレギュレータ51が設けられ、このレギュレータ51は前記メインコントローラ40から容量制御信号の入力を受けることにより作動して前記油圧ポンプ52のポンプ容量を変化させる。
【0034】
前記油圧モータ54は、一対のポート54a,54bと、ウィンチドラムに連結される出力軸と、を有する。当該油圧モータ54は、前記一対のポート54a,54bのうちの一方のポートへの作動油の供給を受けることによりその一方のポートに対応した方向に回転して前記ウィンチドラムを回し、他方のポートから作動油を排出する。
図2では、一つの油圧ポンプ52に対して一つの油圧モータ54が接続されているが、一つの油圧ポンプに複数の油圧アクチュエータが接続されてもよい。
【0035】
前記コントロールバルブ56は、前記油圧ポンプ52と前記油圧モータ54との間に介在し、当該油圧ポンプ52から当該油圧モータ54に供給される作動油の流量を変化させるように開弁動作する。当該コントロールバルブ56は、一対のパイロットポート56a,56bを有するパイロット式の3位置切換弁からなり、両パイロットポート56a,56bは前記パイロット回路60からパイロット圧の供給を受ける。コントロールバルブ56は、両パイロットポート56a,56bに入力されるパイロット圧がいずれも微小範囲内であるときは中立位置を保って前記油圧ポンプ52から前記油圧モータ54への作動油の供給を遮断して当該油圧モータ54を非駆動状態にする一方、前記パイロットポート56a,56bのいずれかに前記微小範囲を超えるパイロット圧が入力されるとそのパイロット圧が入力されたパイロットポートに対応する向きにそのパイロット圧の大きさに応じたストロークで開弁動作し、前記油圧ポンプ52から前記油圧モータ54への作動油の供給を許容するとともに前記油圧モータ54から排出される作動油をタンクに導く油路を形成する。
【0036】
前記負荷掛け弁58は、前記DPF12の再生のための負荷掛け動作、具体的には、前記油圧ポンプ52の吐出圧を上昇させて当該油圧ポンプ52の駆動負荷を増大させることにより前記エンジン10の負荷を増やして排ガス温度を高める動作、を行うもので、当該負荷掛け弁58に付設される負荷掛け切換弁57とともに負荷掛け部を構成する。当該負荷掛け弁58は、前記油圧ポンプ52と前記コントロールバルブ56とを接続するポンプラインに設けられるパイロット操作型の圧力制御弁である。すなわち、当該負荷掛け弁58はパイロットポートを有し、当該負荷掛け弁58の一次圧を前記パイロットポートに入力されるパイロット圧に対応した設定圧以上に保つように開閉動作する。
【0037】
前記負荷掛け切換弁57は、前記負荷掛け弁58の設定圧を切換えるように前記負荷掛け弁58の開閉により行われる。当該負荷掛け切換弁57は、負荷掛けソレノイド57aを有する電磁切換弁からなり、前記負荷掛けソレノイド57aが励磁されないときは開通位置を保って前記負荷掛け弁58のパイロットポートをタンクに連通することにより当該負荷掛け弁58をオフの状態(負荷をかけない状態)に保つ一方、前記メインコントローラ40から入力される励磁電流(負荷掛け指令信号)によって前記負荷掛けソレノイド57aが励磁されると前記パイロットポートとタンクとの間を遮断して前記負荷掛け弁58をオンの状態(油圧ポンプ52の吐出圧を高くしてエンジン10に負荷を掛ける状態)に切換える。
【0038】
前記パイロット回路60は、パイロットポンプ62と、リモコン弁64と、パイロット圧遮断弁66と、を含む。
【0039】
前記パイロットポンプ62は、前記エンジン10の出力軸に前記パワーデバイダ14を介して連結され、当該エンジン10の生成する動力により駆動されて前記リモコン弁64にパイロット圧の供給を行うパイロット油圧源である。当該パイロットポンプ62は、複数の油圧アクチュエータの操作に兼用されてもよい。
【0040】
前記リモコン弁64は、前記油圧モータ54について設けられる操作器であり、操作レバー64aと、これに連結される弁本体64bとを有する。前記操作レバー64aは前記油圧モータ54ひいてはこれに連結される前記ウィンチを動かすための操作を受ける操作部材であり、その操作に対応した方向に回動する。前記弁本体64bは、前記パイロットポンプ62と前記コントロールバルブ56の両パイロットポート56a,56bとの間に介在し、当該パイロットポート56a,56bのうち前記操作レバー64aに与えられる操作の向きに対応したパイロットポートに対して当該操作の量に対応した大きさのパイロット圧を導くように開弁動作する。
【0041】
前記パイロット回路60はさらにパイロット圧センサ68A,68Bを含む。当該パイロット圧センサ68A,68Bは前記リモコン弁64と前記両パイロットポート56a,56bとを結ぶパイロットラインにそれぞれ設けられて前記パイロットポート56a,56bに入力されるパイロット圧を検出する。具体的には、当該パイロット圧に対応した電気信号である操作検出信号を生成して前記メインコントローラ40に入力する。
【0042】
前記パイロット圧遮断弁66は、前記パイロットポンプ62と前記リモコン弁64とを結ぶパイロット圧一次ラインに設けられ、前記パイロットポンプ62から各パイロットポート56a,56bへのパイロット圧の供給を許容する状態と遮断する状態とに切換えられる。この実施の形態に係るパイロット圧遮断弁66は、パイロット圧遮断解除ソレノイド66aを有する電磁切換弁であり、前記パイロット圧遮断ソレノイド66aが励磁されないときは前記パイロット圧一次ラインを遮断する位置すなわち前記パイロットポート54a,54bへのパイロット圧の供給を遮断する遮断位置を保ち、前記パイロット圧遮断解除ソレノイド66aに励磁電流であるパイロット圧遮断解除信号が入力されて当該ソレノイド66aが励磁されると前記パイロット圧一次ラインを開通して前記パイロットポート54a,54bへのパイロット圧の供給を許容する位置すなわち前記パイロット圧の遮断を解除する遮断解除位置に切換えられる。
【0043】
前記パイロット圧遮断弁66の切換は、
図2に示されるパイロット圧遮断切換回路70によって行われる。当該パイロット圧遮断切換回路70は、前記運転室2b内に設けられる乗降操作レバーの操作と、前記メインコントローラ40による指令と、に対応して前記パイロット圧遮断弁66の切換を行う。
【0044】
前記乗降操作レバーは、運転者の乗降路を開通する開通位置と遮断する遮断位置との間で操作され、運転作業の際には前記遮断位置に切換えられる。前記パイロット圧遮断切換回路70は、前記乗降操作レバーが前記遮断位置に切換えられかつ前記メインコントローラ40がパイロット圧の遮断の解除を許容した場合にのみ、前記パイロット圧遮断弁66のパイロット圧遮断解除ソレノイド66aを通電してパイロット圧の遮断を解除する。
【0045】
具体的に、前記パイロット圧遮断切換回路70は、遮断切換用電源72と、リミットスイッチ74と、コイル励磁用電源76と、リレーコイル78a及びリレー接点78bを有するリレー回路78と、を含む。前記リミットスイッチ74及び前記リレー接点78bは、前記遮断切換用電源72と前記パイロット圧遮断解除ソレノイド66aとを結ぶ遮断解除回路に直列で配置される。前記リミットスイッチ74は常開スイッチであり、前記乗降操作レバーが前記遮断位置に切換えられた場合にのみ閉じる。前記リレー接点78bは常閉接点であり、前記リレーコイル78aが通電された場合にのみ開く。前記メインコントローラ40は、後述のように作業機械が所定の状態にあるときにのみ前記パイロット圧の強制遮断を行うべく前記コイル励磁用電源76による前記リレーコイル78aの通電を可能にして前記リレー接点78bを開く。
【0046】
なお、本発明において前記パイロット圧遮断弁66及び前記パイロット圧遮断切換回路70は必須のものではなく、適宜省略されることが可能である。また、コントロールバルブ56を操作するための回路の構成も
図2に示すパイロット回路60の構成に限定されない。例えば、前記コントロールバルブ56の操作は、運転者による操作を受けてその操作に対応する電気信号をメインコントローラ40に入力する電気レバー装置と、前記両パイロットラインにそれぞれ設けられて前記メインコントローラ40から入力された信号に対応する圧力までパイロット圧を減圧する電磁比例減圧弁と、の組み合わせによっても行われることが可能である。
【0047】
前記メインコントローラ40は、前記SCRシステム20の異常によるエンジン出力の制限及び前記DPF12の再生に関連する制御機能として、
図3に示すようなポンプ容量制御部42、DPF再生制御部44及びパイロット圧遮断制御部46を有する。
【0048】
前記ポンプ容量制御部42は、前記油圧ポンプ52のポンプ容量を制御する。具体的には、現在の運転状態において要求されるポンプ容量である要求ポンプ容量を算定し、このポンプ容量が得られるように前記レギュレータ51に制御信号を入力する。
【0049】
さらに、このポンプ容量制御部42は、その特徴として、前記エンジンコントローラ30により前記エンジン10の出力が制限されるのに伴って前記ポンプ容量を制限する機能を有する。具体的には、前記油圧ポンプ52のもつ最大ポンプ容量よりも小さいポンプ容量上限値を設定し、前記のように算定した要求ポンプ容量が前記ポンプ容量上限値以下の場合にはその要求ポンプ容量に実際のポンプ容量を調節し、前記要求ポンプ容量が前記ポンプ容量上限値を上回る場合には実際のポンプ容量を前記ポンプ容量上限値に設定する。
【0050】
前記エンジンコントローラ30は、上述のように、前記SCRシステム20の異常の進行や異常発生からの経過時間に応じて前記出力制限レベルを複数段階(この実施の形態ではレベル1からレベル4までの4段階)にわたって上昇させるが、これに対応して前記ポンプ容量制御部42は、当該出力制限レベルが高いほど前記ポンプ容量の制限の度合いを高めるように(具体的には前記ポンプ容量上限値を低くするように)当該出力制限レベルに応じたポンプ容量の制限を行う。その内容については後に詳述する。
【0051】
前記DPF再生制御部44は、前記負荷掛け切換弁57の負荷掛けソレノイド57aの通電/非通電を切換えることにより、前記負荷掛け弁58の作動をオンオフさせて、DPF12の再生のための負荷掛け操作(エンジン負荷の増大)の制御を行う。当該DPF再生制御部44は、原則として、前記エンジンコントローラ30から前記DPF12の再生の要求があった場合に前記負荷掛け切換弁57を閉じる、つまり負荷掛けソレノイド57aを通電する、ことにより前記負荷掛け弁58を作動させて油圧ポンプ52の駆動のためのエンジン10の負荷を上昇させ、これにより排ガス温度を上昇させて前記DPF12の再生を行わせる一方、前記エンジンコントローラ30により前記エンジンの出力が制限されるのに伴って前記再生を制限する機能を有する。
【0052】
このDPF再生制御部44も、前記ポンプ容量制御部42によるポンプ容量の制限と同様、前記エンジンコントローラ30が前記出力制限レベルを段階的に高くするのに伴って前記DPF12の再生の制限のレベルである再生制限レベルを高めるように当該出力制限レベルに応じた当該再生の制限を行う。具体的に、当該再生制御部44は、後にも述べるように、前記出力制限レベルが最高レベル(この実施の形態ではレベル4)に達した場合には前記負荷掛け弁57の作動による前記再生を無条件で禁止する一方、前記出力制限レベルが最高レベルよりも低いレベルであって予め設定された範囲内にあるレベル(この実施の形態では出力制限レベル2及び出力制限レベル3)である場合には、前記油圧ポンプ52に接続された油圧アクチュエータである前記油圧モータ54を動かすための操作が行われていない場合(この実施の形態ではリモコン弁64の操作レバー64aが中立位置にある場合)に限定して前記負荷掛け弁58の作動による前記DPF12の再生を許容する。
【0053】
前記ポンプ容量制御部42及び前記DPF再生制御部44は、その制御の内容を適宜表示装置80に送信する。表示装置80は、表示画面を有し、前記制御部42,44から入力される制御の内容を当該表示画面上に表示させる。また、当該表示装置80は、当該表示画面上にスイッチを表示し、このスイッチに対して指等の接触による操作が行われたときにその操作信号を前記メインコントローラ40に入力する操作装置としても機能する。
【0054】
前記パイロット圧遮断制御部46は、前記パイロット圧遮断回路70によるパイロット圧の遮断の切換の制御を行う。具体的に、当該パイロット圧遮断制御部46は、原則として、前記エンジンコントローラ30による出力制限レベルが最高レベル(レベル4)に達した場合に前記パイロット圧遮断回路70のリレーコイル78aを通電させて前記パイロット圧遮断解除ソレノイド66aを非励磁にすることにより前記パイロット圧の強制遮断を行わせる一方、前記表示装置80に回復スイッチの表示を行わせて当該回復スイッチが操作された場合にのみ例外的に前記パイロット圧の強制遮断を解除する。
【0055】
このパイロット圧遮断制御部46も、前記パイロット圧遮断弁66及び前記パイロット圧遮断切換回路70と同様に本発明において必須のものではなく、適宜省略されることが可能である。
【0056】
次に、前記メインコントローラ40により実際に行われる制御動作を、
図4〜
図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0057】
図4は、前記エンジン出力の制限に関連する制御のメインルーチンを示す。メインコントローラ40は、まず、エンジンコントローラ30から入力されるエンジン出力制限信号を取込み(ステップS1)、これに基づき、SCRシステム20に関連する異常が発生しかつこれに基づき実際にエンジン10の出力トルクが制限されているか否かを判定する(ステップS2)。当該異常及びこれに基づく出力トルクの制限がある場合(ステップS2でYES)、前記メインコントローラ40のポンプ容量制御部42は、当該出力トルクの制限に対応して油圧ポンプ52のポンプ容量を制限する制御を行う(ステップS3)。
【0058】
図5は、そのポンプ容量の制限のための制御の内容を示す。前記のように、この実施の形態に係るエンジンコントローラ30はエンジン10の出力トルクの制限のレベルである出力制限レベルをレベル1〜レベル4の4段階にわたって徐々に高めることから、前記ポンプ容量制御部42は、まず、前記エンジン出力制限信号に基いて、現在の出力制限レベルがどのレベルにあるかを判定する(ステップS301〜S303)。ここで、前記レベル1は、出力制限の最も軽いレベルであって、作業機械の通常運転にはほとんど支障のないレベルである。これに対して前記レベル4は、出力制限が最も重いレベルであってエンジン10のアイドリング運転またはこれに近い運転のみが許容されるレベルであり、実質上作業機械による作業を不能にするレベルである。
【0059】
前記出力制限レベルがレベル1である場合(ステップS301でYES)は、特にその出力制限に起因するエンジン停止のおそれがないため、前記ポンプ容量制御部42は、前記ポンプ容量の制限は行わず、操作者に注意を促すべく現在の出力制限レベルがレベル1であることのアナウンスの表示を表示装置80に行わせる(ステップS304)。さらに、前記メインコントローラ40のDPF再生制御部44は、当該レベル1に対応して再生制限レベルを0(制限なし)に設定する(ステップS305)。
【0060】
前記出力制限レベルがレベル2である場合(ステップS301でNOかつステップS302でYES)、前記ポンプ容量制御部42は、前記ポンプ容量の上限値を前記油圧ポンプ52がもつ最大容量の75%に制限してその旨のアナウンスの表示を表示装置80に行わせる(ステップS306)。同様に、前記出力制限レベルがレベル3である場合(ステップS301,S302でNOかつステップS303でYES)、前記ポンプ容量制御部42は、前記ポンプ容量の上限値を最大容量の50%に制限してその旨のアナウンスの表示を表示装置80に行わせる(ステップS307)。前記DPF再生制御部44は、前記出力制限レベルがレベル2、レベル3のいずれの場合においても、これに対応して再生制限レベルを1(中間制限)に設定する(ステップS308)。
【0061】
前記出力制限レベルがレベル4(最高レベル)である場合(ステップS301〜S303のいずれにおいてもNO)、前記ポンプ容量制御部42は、前記ポンプ容量を最小容量(実質上エンジン10に油圧ポンプ52の駆動のための負荷がかからない容量)に制限し、その旨のアナウンスの表示を表示装置80に行わせる(ステップS309)。前記DPF再生制御部44は、前記レベル4に対応して再生制限レベルを2(再生禁止)に設定する(ステップS310)。
【0062】
このように、エンジン出力トルクについての出力制限レベル(レベル1〜4)に応じたポンプ容量の制限が行われることにより、当該エンジン出力の制限に起因する突然のエンジン停止を防ぎながら、当該エンジン停止を回避できる範囲内でのポンプ容量を確保することが可能である。具体的に、この実施の形態では、前記出力制限レベルが高いほど低くなるような前記ポンプ容量の上限値が設定されてそれ以下の範囲内でポンプ容量が操作されることにより、突然のエンジン停止が未然に防がれる一方、その上限値以下の範囲内でポンプ容量に対する要求を可及的に満たすことが可能である。
【0063】
一方、前記SCRシステム20に関連する異常がない場合、あるいは当該異常によるエンジン出力トルクの制限がない場合(
図4のステップS2でNO)、前記ポンプ容量制御部42はポンプ容量の制限を解除する(ステップS4)とともに前記各アナウンスを消去する(ステップS5)。また、DPF再生制御部44は、再生制限レベルを0(制限なし)に設定する(ステップS6)とともに、DPF12が再生中であるか否かを判定するための再生中判定フラグを0に設定する(ステップS7)。
【0064】
前記ポンプ容量制御部42による前記のポンプ容量制御に加え、前記DPF再生制御部44は、DPF再生制御を実行する(
図4のステップS8)。その具体的内容を
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0065】
前記エンジンコントローラ30は、エンジンの運転状態に基づき、DPF自動再生の要否を判断する。当該エンジンコントローラ30からDPF自動再生の要求があると(ステップS800でYES)、DPF再生制御部44はまず前記
図4のステップS3またはステップS6においてエンジン出力レベルに応じて設定された再生制限レベルを確認する(ステップS801,S802)。
【0066】
前記再生制限レベルが0の場合(ステップS801でYES)、すなわちDPF12の再生に制限がない場合、DPF再生制御部44は操作レバー64aが中立位置に戻されることを確認してから(ステップS803でYES)負荷掛けソレノイド57aを励磁することにより(ステップS804)負荷掛け弁58を作動させ、これにより油圧ポンプ52を駆動するためのエンジン10の負荷を上昇させて排ガス温度を上昇させることにより、前記DPF12の再生を行う。負荷掛け状態をオフからオンに切換えるタイミングを前記操作レバー64aの中立位置への復帰まで遅らせているのは、当該操作レバー64aが操作されて油圧モータ54が駆動されている状態で負荷掛けが開始されることによる急激なエンジン負荷の上昇でショックが生じるのを回避するためである。
【0067】
前記排ガス温度を上昇させるため、前記油圧ポンプ52の負荷の上昇に加えてエンジン回転数も増加される。前記DPF再生制御部44はそのエンジン回転数の上昇のアナウンスも表示装置80に表示させる(ステップS805)とともに、前記再生中判定フラグを1に設定する(ステップS806)。
【0068】
前記再生制限レベルが1の場合(ステップS801でNOかつステップS802でYES)、DPF再生制御部44は、前記操作レバー64aが中立位置にある場合にのみ(ステップS807でYES)、つまり油圧モータ54についての操作が行われておらず当該油圧モータ54の駆動のためのエンジン10の負荷が実質上ないとみなせる場合にのみ、前記再生制限レベルが0の場合と同様にDPF12の自動再生制御を行う(ステップS804〜806)。ただし、この場合は。前記再生制限レベルが0の場合(つまり前記出力制限レベルがレベル1であるかあるいはエンジン出力トルクの制限が全くない場合)と異なり、前記油圧ポンプ52のポンプ容量が当該油圧ポンプ52の最大容量の75%または50%に制限されているので(
図5のステップS306またはS307)、前記ポンプ容量制御部42は前記DPF12の再生が可能となる程度まで前記ポンプ容量の制限を緩和する(ステップS808)。
【0069】
一方、前記操作レバー64aが中立位置にない場合(ステップS807でNO)、つまり前記油圧モータ54についての操作が行われていてその分エンジン10に負荷がかかっている場合、エンジン停止の回避を優先すべく、前記DPF再生制御部44はDPF12の再生を禁止する。具体的には、
図2に示されるリレーコイル58aを通電して前記負荷掛けソレノイド57aを非励磁にし(ステップS810)、エンジン回転数の増加のアナウンスを消去して(ステップS811)、再生中判定フラグを0にする(ステップS812)。前記ポンプ容量制御部42も、エンジン停止の回避を優先すべく、前記ポンプ容量の制限を完全復帰させる(ステップS809)。
【0070】
前記再生制限レベルが2の場合(ステップS801,S802でNO)、前記DPF再生制御部44は、前記操作レバー64aが中立位置にあるか否かを問わず、無条件でDPF12の再生を禁止する(ステップS810〜S812)。同様に、前記ポンプ容量制御部42も前記ポンプ容量の制限を完全復帰させる(ステップS809)。
【0071】
前記エンジンコントローラ30からDPF12の自動再生の要求がない場合(ステップS800でNO)、前記DPF再生制御部44は前記回転数増加のアナウンスを消去する(ステップS813)。ここで、再生中判定フラグが1の場合は(ステップS814でYES)前記と同様にポンプ容量制限の復帰及びDPF再生禁止動作が行われ(ステップS809〜S812)、再生中判定フラグが0の場合は(ステップS814でNO)現状が維持される。
【0072】
以上のような出力制限レベルに応じたDPF12の再生の制限は、当該再生のためのエンジンの負荷の上昇に起因するエンジン停止を回避し、また、エンジン出力制限のために排ガス温度の上昇が見込めない状態であるにもかかわらず燃料が消費されることを防ぐ一方、DPF12の可能な限りの再生を許容する。
【0073】
さらに、この実施の形態に係る前記メインコントローラ40のパイロット圧遮断制御部46は、
図7に示すようなパイロット圧遮断制御を行う。当該パイロット圧遮断制御部46は、前記出力制限レベルが最高レベルであるレベル4の場合にのみ(ステップS11でYES)、前記乗降操作レバーに連動するリミットスイッチ74の開閉にかかわらずリレー接点78bを開くことによりパイロット圧遮断弁66のパイロット圧遮断解除ソレノイド66aを非励磁にしてパイロットポンプ62からリモコン弁64へのパイロット圧の供給を強制遮断する(ステップS12)。これにより、オペレータによる油圧モータ54の操作は不能になる。このとき、高い安全性を確保するために、前記パイロット圧の供給の遮断とともに油圧モータ54の作動をロックする手段が装備されることが好ましい。具体的には、コントロールバルブ56が中立位置において前記油圧モータ54をタンクから遮断するように当該コントロールバルブ56が構成されてもよいし、前記パイロット圧の供給の遮断とともに駆動対象要素(例えばウインチドラムや吊りロープ)に制動をかけるネガブレーキが設けられてもよい。
【0074】
さらに、前記パイロット圧遮断制御部46は、表示装置80に回復スイッチを表示させ(ステップS13)、この回復スイッチが操作された場合にのみ(ステップS14)例外的に前記パイロット圧の遮断を解除する(ステップS15)。つまり前記リレー接点78bを閉じる。これにより、作業機械の緊急避難に最低限必要な動作(例えば吊り状態のまま停止してしまった吊り荷を地上まで降ろす作業や最低速度での走行)が許容される。その後、エンジン始動スイッチがオフにされた時点で(ステップS16でYES)前記パイロット圧遮断制御部46は前記回復スイッチをオフにする。つまり、パイロット圧遮断解除をリセットする(ステップS17)。
【0075】
なお、このパイロット圧遮断制御部46による制御動作が本発明において必須のものでないことは既に述べたとおりである。
【0076】
また、本発明は以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態を含む。
【0077】
(1)エンジン出力トルクの制限について
エンジンコントローラ30によるエンジン出力トルクの制限は、前記実施形態のように複数段階にわたって高められるものに限られない。例えば、単一段階のみで制限がかけられるものでもよいし、終始連続的に制限レベルが高められるものでもよい。後者の場合も当該制限レベルが高くなるにつれてポンプ容量の制限を大きくする制御が行われることが、好ましい。
【0078】
(2)ポンプ容量の制限について
ポンプ容量を制限するための具体的な態様は、前記のようにポンプ容量の上限値を規定するものに限られない。例えば、ポンプ容量の頭打ちによる操作者への違和感の付与を回避するために、要求ポンプ容量に1未満の適当な制限係数を乗じたポンプ容量に実際のポンプ容量を調節するような制御が行われてもよい。
【0079】
(3)フィルタ再生について
本発明は、前記DPF12等の微粒子捕集フィルタを具備しない作業機械にも適用することが可能である。すなわち、このような作業機械においても、エンジン出力トルクの制限に応じてポンプ容量を制限することにより、前記のようなエンジン停止の回避という効果を得ることが可能である。
【0080】
また、前記微粒子捕集フィルタを備えた作業機械において前記エンジン出力トルクの制限に伴ってフィルタ再生の制限を行う場合、その制限の具体的態様も前記実施形態に限定されない。例えば、前記実施形態に係る「再生制限レベル」が1である場合の中間制限では、操作レバー64aが中立位置にある場合のみならず、当該操作レバー64aの操作量が予め設定された一定値以下である場合に前記再生が許容されてもよい。あるいは、油圧モータ54に例示される油圧アクチュエータの駆動のためのエンジンの負荷が一定以下であるとみなせる場合、例えば前記油圧ポンプ52の吐出圧が一定未満の場合、にのみ当該再生が許容されてもよい。