特許第6288101号(P6288101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288101
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】テトラヒドロミルセノールの合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/00 20060101AFI20180226BHJP
   C07C 31/125 20060101ALI20180226BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
   C07C29/00
   C07C31/125
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-543481(P2015-543481)
(86)(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公表番号】特表2015-535527(P2015-535527A)
(43)【公表日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】EP2013075003
(87)【国際公開番号】WO2014083121
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】12194596.8
(32)【優先日】2012年11月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ビューマー, ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】メドロック, ジョナサン アラン
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 西独国特許出願公開第01196177(DE,A)
【文献】 西独国特許出願公開第01118190(DE,A)
【文献】 英国特許出願公告第00859567(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0221083(US,A1)
【文献】 特開2002−145874(JP,A)
【文献】 HOULIHAN, W. J.,Journal of Organic Chemistry,1958年,Vol. 23,pp. 689-690
【文献】 HOULIHAN, W. J. et al.,Journal of the American Chemical Society,1959年,Vol. 81,pp. 4692-4694
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CASREACT(STN)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で表される化合物を、式(II)
【化2】

で表される化合物の還元的開環により製造する方法。
【請求項2】
還元剤がHガスである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1barの圧力下で行われる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
15〜100℃の温度で行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶媒を用いて、または溶媒を用いずに行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
媒の存在下に行われる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
酸の存在下に行われる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、テトラヒドロミルセノール(IUPAC名:2,6−ジメチル−2−オクタノール)の新規のかつ改良された合成に関する。
【0002】
以下の式(I)
【化1】

で表される化合物であるテトラヒドロミルセノール(CAS番号:18479−57−7)は、香味および香料工業界ではよく知られた化合物である。それは多くの用途で広く使用されている。それは、嗅覚的には、「テルペンをベースに、新鮮で、全体的に柑橘系の花のような甘い香り」と表現される。
【0003】
テトラヒドロミルセノールの重要性のために、その改良された製造方法に対する要求が常に存在する。
【0004】
本発明者らは、式(II)
【化2】

で表される化合物の還元的開環が、テトラヒドロミルセノールの優れた選択率および収率をもたらすことを見出した。還元的開環が、すなわち
【化3】

などの望ましくない副生物を生成しない(または、極めて僅かな量しか生成しない)ことは驚くべきことである。
【0005】
さらに、開環が「正しい」位置(2の位置;テトラヒドロミルセノールをもたらす)で選択的に起こり、6の位置でないことは驚くべきことである。そのような開環は、(例えば)式(VI)
【化4】

で表される化合物をもたらすであろう。
【0006】
式(VI)で表される化合物は、合成の終了時に反応混合物中に認められず、また、そのような開環で生じる他の可能な反応生成物も認められない。
【0007】
したがって、本発明は、式(I)
【化5】

で表される化合物を、式(II)
【化6】

で表される化合物の還元的開環により製造する方法に関する。
【0008】
式(II)で表される化合物は、例えば、タングステン、モリブデンまたはポリリン酸により触媒される閉環により、デヒドロリナロールから製造することができる(Strickler et al.,Helv.Chem.Acta 1966,49,2055;Erman et al.,Tetrahedron 1976,34,2981、およびベルギー特許第852918号明細書)。
【0009】
本発明の方法で使用する還元剤は、Hガスが好ましい。したがって、本発明の方法は、加圧下で行うことが好ましい。
【0010】
通常、圧力は少なくとも1bar、好ましくは少なくとも3barである。本発明の方法を実施する好ましい圧力範囲は、1〜20barであり、より好ましくは3〜15barである。本特許出願に関連して示される圧力はすべて、常に、絶対圧である。
【0011】
したがって、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(II)で表される化合物の還元的開環により製造する方法において、反応が1〜20bar、好ましくは3〜15barの圧力のHガス下で行われることを特徴とする方法に関する。
【0012】
本発明の方法は、通常、15〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で行われる。
【0013】
したがって、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(II)で表される化合物の還元的開環により製造する方法において、反応が15〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で行われることを特徴とする方法に関する。
【0014】
好ましくは、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(II)で表される化合物の還元的開環により製造する方法において、反応が1〜20bar、好ましくは3〜15barの圧力のHガス下で、かつ15〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で行われることを特徴とする方法に関する。
【0015】
本発明の方法は、溶媒を用いて、または溶媒を用いずに行うことができる。
【0016】
本発明の方法は、不活性溶媒(または、溶媒混合物)中で行うことが好ましい。不活性溶媒とは、溶媒が反応プロセスに加わらないことを意味する。
【0017】
溶媒は、本発明の方法で使用する反応条件で液体でなければならない。
【0018】
好適な溶媒は、すなわち、アルコール(そのようなメタノール、エタノール)、炭化水素(n−ヘキサン、n−ヘプタンなど)、エステル、エーテル(THFなど)、塩素化炭化水素(CHClなど)である。
【0019】
したがって、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(II)で表される化合物の還元的開環により製造する方法において、反応が、溶媒、または溶媒の混合物(好ましくは、アルコール、炭化水素、エステル、エーテルおよび塩素化炭化水素)中で行われることを特徴とする方法に関する。
【0020】
好ましくは、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(II)で表される化合物の還元的開環により製造する方法において、反応が、
1〜20bar、好ましくは3〜15barの圧力のHガス下、
15〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で、
かつ、溶媒、または溶媒の混合物(好ましくは、アルコール、炭化水素、エステル、エーテルおよび塩素化炭化水素)中で
行われることを特徴とする方法に関する。
【0021】
本発明の方法は、触媒の存在下に行うことが好ましい。
【0022】
触媒は支持材料上の遷移金属である。通常、支持材料は炭素または固体酸である。好ましい遷移金属は、Pt、RhおよびPdである。より好ましくは炭素上のパラジウム(Pd/C)である。そのような触媒(CAS番号7440−05−3)は、例えば、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から商業的に入手可能である。
【0023】
したがって、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(II)で表される化合物の還元的開環により製造する方法において、反応が、触媒(好ましくは、支持材料上の遷移金属、より好ましくはPd/C)の存在下に行われる行われることを特徴とする方法に関する。触媒は、好ましくは10重量%(式(II)で表される化合物の重量に対して)まで、より好ましくは5重量%までの量でプロセス中に存在する。好ましくは、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(II)で表される化合物の還元的開環により製造する方法において、反応が、
1〜20bar、好ましくは3〜15barの圧力のHガス下、
15〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で、
溶媒、または溶媒の混合物(好ましくは、アルコール、炭化水素、エステル、エーテルおよび塩素化炭化水素)中、かつ
10重量%(式(II)で表される化合物の全重量に対して)まで、好ましくは5重量%までの少なくとも1種の触媒(好ましくは、支持材料上の遷移金属、より好ましくはPd/C)の存在下に
行われることを特徴とする方法に関する。
【0024】
本発明の方法は、通常、酸の存在下に行うことが好ましい。酸は、有機物および無機物(ならびに混合物)とすることができる。好適な酸は、すなわちHCl、HSO、p−トルエンスルホン酸である。固体酸を使用することも可能である。
【0025】
酸は1〜20重量%(式(II)で表される化合物の全重量に対して)の量で存在することが好ましい。したがって、本発明は、式(II)で表される化合物の還元的開環による、式(I)で表される化合物の製造方法において、反応が有機酸および/または無機酸ならびにこれらの混合物(好ましくは、HCl、HSO、p−トルエンスルホン酸)の存在下に行われる行われることを特徴とする製造方法に関する。
【0026】
好ましくは、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(II)で表される化合物の還元的開環により製造する方法において、反応が、
3〜20bar、好ましくは3〜15barの圧力のHガス下、
15〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で、
溶媒、または溶媒の混合物(好ましくは、アルコール、炭化水素、エステル、エーテルおよび塩素化炭化水素)中、かつ
触媒(好ましくは、支持材料上の遷移金属、より好ましくはPd/C)の存在下、そして
有機酸および/または無機酸、ならびにこれらの混合物(好ましくは、HCl、HSO、p−トルエンスルホン酸)の存在下に
行われることを特徴とする方法に関する。
【0027】
以下の実施例により、本発明を説明する。実施例中の全ての部およびパーセントは重量基準(特に断らない限り)であり、温度は℃で示される(特に断らない限り)。
【0028】
[実施例]
[実施例1]
8mgの触媒(Pd/C)を8mlのガラス製反応器に入れ、2−エチニル−2,6,6−トリメチル−テトラヒドロピラン(210mg、95%)を加えた。ヘプタン(1.5g)と濃塩酸(10μl)を加え、反応器を密閉した。反応器をアルゴンで3回パージ(5barに加圧後、圧力を解放)し、水素で3回(5barまで加圧後、解放)行った。反応混合物を50℃に加熱し、10barの水素に加圧し、水素の消費が観察されなくなるまで撹拌し、その後、さらに30〜60分間撹拌した。撹拌を中止し、反応物を室温まで冷却した。
【0029】
圧力を解放し、反応器をアルゴンで2回パージした。濾過により触媒を除去した後、GCにより反応混合物を分析し、転化率と選択率を求めた。選択率と収率は90%を超えた。
【0030】
下表の実施例を、実施例1と同様に合成した。触媒の量、酸、酸の量、圧力および反応温度を変化させた。
【0031】
【表1】
【0032】
転化率が100%であることから、収率と選択率は全く同じである。