特許第6288104号(P6288104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6288104トレースデータ収集システム、操作端末、及びトレースデータ収集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288104
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】トレースデータ収集システム、操作端末、及びトレースデータ収集方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 31/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   H02P31/00
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-546183(P2015-546183)
(86)(22)【出願日】2013年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2013079947
(87)【国際公開番号】WO2015068214
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 直樹
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−173141(JP,A)
【文献】 特開2007−114862(JP,A)
【文献】 特開2001−005504(JP,A)
【文献】 特開2007−328562(JP,A)
【文献】 特開2006−115587(JP,A)
【文献】 特開2007−318899(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/008235(WO,A1)
【文献】 特開2006−004195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを制御するモータ制御装置と、前記モータ制御装置を制御するコントローラとを備えるトレースデータ収集システムであって、
前記コントローラは、
トレース開始信号を送出する条件を判定するトレース開始信号送出判定部と、
前記トレース開始信号を送出するトレース開始信号送出部と、
を有し、
前記モータ制御装置は、
前記トレース開始信号を受信するトレース開始信号受信部と、
少なくとも前記トレース開始信号の受信をトレースの開始条件とすることができるトレース開始判定部と、
前記開始条件を満たすと、前記モータに関する第1のトレースデータを収集する第1のトレースデータ収集部と、
を有するトレースデータ収集システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記モータに関する第2のトレースデータを収集する第2のトレースデータ収集部をさらに有する請求項1に記載のトレースデータ収集システム。
【請求項3】
前記トレース開始信号送出判定部は、前記トレース開始信号を送出する条件として、前記第2のトレースデータに対する前記第1のトレースデータの時間的な相対関係を使用する請求項2に記載のトレースデータ収集システム。
【請求項4】
前記トレース開始信号送出判定部は、少なくとも、前記第2のトレースデータの収集の開始、及び、収集された前記第2のトレースデータのいずれかに基いて、前記トレース開始信号を送出する条件を判定することができる請求項2又は3に記載のトレースデータ収集システム。
【請求項5】
前記第2のトレースデータ収集部は、少なくとも、前記第1のトレースデータ収集部による前記第1のトレースデータの収集中に、前記第2のトレースデータを収集する請求項2〜4のいずれかに記載のトレースデータ収集システム。
【請求項6】
少なくとも前記第2のトレースデータをグラフ表示するグラフ表示部と、
前記第2のトレースデータのグラフ上で、前記トレース開始信号を送出する条件を設定するトレース開始信号送出条件設定部と、
を有する操作端末を備えた請求項2〜5のいずれかに記載のトレースデータ収集システム。
【請求項7】
前記グラフ表示部は、前記第1のトレースデータと前記第2のトレースデータを同一の時間軸上にグラフ表示する請求項6に記載のトレースデータ収集システム。
【請求項8】
前記トレース開始信号送出部は、複数の前記モータ制御装置に対して前記トレース開始信号を送出する請求項1〜7のいずれかに記載のトレースデータ収集システム。
【請求項9】
前記操作端末は、複数の前記第1のトレースデータ及び複数の前記第2のトレースデータの少なくともいずれかを複数の交差する軸に割り当て、軌跡を表示する軌跡表示部を有する請求項6又は7に記載のトレースデータ収集システム。
【請求項10】
少なくとも、モータを制御するモータ制御装置を制御するコントローラにより収集される第2のトレースデータをグラフ表示するグラフ表示部と、
前記第2のトレースデータのグラフ上で、前記モータ制御装置により収集される第1のトレースデータの収集を開始する条件を設定するトレース開始条件設定部と、
を有する操作端末。
【請求項11】
モータを制御するモータ制御装置を制御するコントローラがトレース開始信号を送出する条件を判定するステップと、
前記コントローラが前記トレース開始信号を送出するステップと、
前記モータ制御装置が前記トレース開始信号を受信するステップと、
前記モータ制御装置が前記トレース開始信号の受信をトレースの開始条件としてトレース開始を判定するステップと、
前記開始条件を満たすと、前記モータ制御装置がモータに関する第1のトレースデータを収集するステップと、
を有するトレースデータ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレースデータ収集システム、操作端末、及びトレースデータ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設定表示器のキースイッチを押すことにより、サーボ制御装置のモータ電流値を位置決め装置のメモリにライトしていき、メモリに記憶されたモータ電流値から、モータピーク電流を計算する負荷状態表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−117387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、モータ制御装置によるトレースデータの収集タイミングを正確に制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムは、モータを制御するモータ制御装置と、前記モータ制御装置を制御するコントローラとを備えるトレースデータ収集システムであって、前記コントローラは、トレース開始信号を送出する条件を判定するトレース開始信号送出判定部と、前記トレース開始信号を送出するトレース開始信号送出部と、を有し、前記モータ制御装置は、前記トレース開始信号を受信するトレース開始信号受信部と、少なくとも前記トレース開始信号の受信をトレースの開始条件とすることができるトレース開始判定部と、前記開始条件を満たすと、前記モータに関する第1のトレースデータを収集する第1のトレースデータ収集部と、を有する。
【0006】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムはさらに、前記コントローラは、前記モータに関する第2のトレースデータを収集する第2のトレースデータ収集部をさらに有してよい。
【0007】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムはさらに、前記トレース開始信号送出判定部は、前記トレース開始信号を送出する条件として、前記第2のトレースデータに対する前記第1のトレースデータの時間的な相対関係を使用してよい。
【0008】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムはさらに、前記トレース開始信号送出判定部は、少なくとも、前記第2のトレースデータの収集の開始、及び、収集された前記第2のトレースデータのいずれかに基いて、前記トレース開始信号を送出する条件を判定することができてよい。
【0009】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムはさらに、前記第2のトレースデータ収集部は、少なくとも、前記第1のトレースデータ収集部による前記第1のトレースデータの収集中に、前記第2のトレースデータを収集してよい。
【0010】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムはさらに、少なくとも前記第2のトレースデータをグラフ表示するグラフ表示部と、前記第2のトレースデータのグラフ上で、前記トレース開始信号を送出する条件を設定するトレース開始信号送出条件設定部と、を有する操作端末を備えてよい。
【0011】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムはさらに、前記グラフ表示部は、前記第1のトレースデータと前記第2のトレースデータを同一の時間軸上にグラフ表示してよい。
【0012】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムはさらに、前記トレース開始信号送出部は、複数の前記モータ制御装置に対して前記トレース開始信号を送出してよい。
【0013】
本発明の一側面に係るトレースデータ収集システムはさらに、前記操作端末は、複数の前記第1のトレースデータ及び複数の前記第2のトレースデータの少なくともいずれかを複数の交差する軸に割り当て、軌跡を表示する軌跡表示部を有してよい。
【0016】
また、本発明の一側面に係る操作端末は、少なくとも、モータを制御するモータ制御装置を制御するコントローラにより収集される第2のトレースデータをグラフ表示するグラフ表示部と、前記第2のトレースデータのグラフ上で、モータ制御装置により収集される第1のトレースデータの収集を開始する条件を設定するトレース開始条件設定部と、を有する。
【0017】
また、本発明の一側面に係るトレースデータ収集方法は、モータを制御するモータ制御装置を制御するコントローラがトレース開始信号を送出する条件を判定するステップと、前記コントローラが前記トレース開始信号を送出するステップと、モータ制御装置が前記トレース開始信号を受信するステップと、前記モータ制御装置が前記トレース開始信号の受信をトレースの開始条件としてトレース開始を判定するステップと、前記開始条件を満たすと、前記モータ制御装置がモータに関する第1のトレースデータを収集するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0018】
上記発明によれば、モータ制御装置によるトレースデータの収集タイミングを正確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るコントローラを含むトレースデータ収集システムの例を示す概略図である。
図2】操作端末の物理的な構成を示すブロック図である。
図3】トレースデータ収集システムの機能ブロック図である。
図4】トレースデータ収集のフロー図である。
図5】グラフ表示部により第2のトレースデータが表示されている様子を示す図である。
図6】トレース開始信号送出条件設定部により、グラフ上で図5とは別のトレース開始信号送出条件を設定した例を示す図である。
図7】グラフ表示部により第1のトレースデータ及び第2のトレースデータが同時に表示されている様子を示す図である。
図8図7の区間を拡大表示した例である。
図9】軌跡表示部により軌跡が表示されている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の発明者の見地によれば、モータを用いた機械システムの一連の動作において、特定のタイミングでモータのトレースデータを収集することが求められる場合がある。このとき、モータ制御装置によりトレースデータを収集すると、モータ制御装置の制御周期は短い(通常、数十〜数百μs程度である)ため、測定間隔の短い詳細なデータが得られる。一方で、モータ制御装置に搭載されるメモリの容量はあまり大きくないため、トレースデータが得られる期間は短くなる。そのため、求めるタイミングにおけるトレースデータを正確に収集することは難しい。
【0021】
そこで、モータ制御装置に動作指令を与えるコントローラでトレースデータを収集することも可能である。コントローラに搭載されるメモリの容量には比較的余裕があるため、この場合にはトレースデータが得られる期間は長くなり、求めるタイミングにおけるトレースデータを収集することは比較的容易である。しかしながら、コントローラの制御周期は長い(通常、数百μs〜数ms程度である)ため、その測定間隔は長く、詳細なデータを得ることができない。
【0022】
さらに、複数のモータについてそれぞれトレースデータを収集した場合に、トレースデータ間の時間に関する相対的位置が不明であるため、これらのトレースデータを同時に比較検討することが困難であった。
【0023】
そこで本発明の発明者は、詳細なトレースデータを所望のタイミングで収集すること、及び、複数のトレースデータを同時に比較検討可能とすることについて鋭意研究開発を行った結果、新規かつ独創的なトレースデータ収集システムを想到するに至った。以下、かかるトレースデータ収集システム等をその実施形態を通じ詳細に説明する。
<実施形態に係るトレースデータ収集システム>
【0024】
図1は本発明の実施形態に係るトレースデータ収集システム1の例を示す概略図である。同図には、コントローラ2、モータ制御装置3a及び3b、モータ4a及び4b(同図では、リニアスライダの駆動源として示されている)、及び操作端末5が示されている。
【0025】
コントローラ2はモータ制御装置3a及び3bを含む各種の機械要素を制御する機器である。コントローラ2は、任意の機械制御プログラム、例えばラダープログラムやタイムチャートを実行することにより、接続された各種の機械要素に所定の動作を実行させるものであり、一般に、PLC(Programmable Logic Controller)やシーケンサ、モーションコントローラとして知られている機器であってよい。
【0026】
モータ制御装置3a,3bは、モータ4a,4bを作動させるための電力を供給するアンプや、その制御回路が一体となった機器である。ここで、モータ4a,4bの形式に特に限定はないが、本実施形態ではモータ4a,4bはサーボモータであり、モータ制御装置3a,3bは一般にサーボコントローラ或いはサーボアンプとして知られている機器である。
【0027】
操作端末5は、ユーザからの入力を受け付けコントローラ2へと送信し、また、コントローラ2から情報を取得してユーザに表示する情報処理装置である。操作端末5は、一般的なパーソナルコンピュータに適宜必要なアプリケーションをインストールしたものとしてよい。
【0028】
トレースデータ収集システム1を構成する各機器は、図1に示されたように相互に接続される。なお、操作端末5とコントローラ2間の接続は必要なときのみなされればよく、必ずしも常時接続されている必要はない、また、操作端末5とコントローラ2間、及び、コントローラ2とモータ制御装置3a,3b間の接続は必ずしも直接の接続である必要はなく、適宜のネットワークを介した接続であってもよく、又その有線無線の別は問わない。
【0029】
図2は、操作端末5の物理的な構成を示すブロック図である。操作端末5は一般的なコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)5a、RAM(Random Access Memory)5b、外部記憶装置5c、GC(Graphics Controller)5d、入力デバイス5e及びI/O(Inpur/Output)5fがデータバス5gにより相互に電気信号のやり取りができるよう接続されている。ここで、外部記憶装置5cはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の静的に情報を記録できる装置である。またGC5dからの信号はCRT(Cathode Ray Tube)やいわゆるフラットパネルディスプレイ等の、使用者が視覚的に画像を認識するモニタ5hに出力され、画像として表示される。入力デバイス5eはキーボードやマウス、タッチパネル等の、ユーザが情報を入力するための機器であり、I/O5fは操作端末5が外部の機器、ここでは、コントローラ2と情報をやり取りするためのインタフェースである。操作端末5で実行されるアプリケーションは外部記憶装置5cにインストールされ、必要に応じてRAM5bに読みだされてCPU5aにより実行される。
【0030】
なお、以上の説明、図1及び2では、本実施形態の説明に不要な他の詳細な構成や配線、例えば、電源線や接地線の接続については説明及び図示を簡略化するため省略している。また、接続態様やコネクタの種類、制御対象の機器の種類や個数等は、特に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0031】
図3は、トレースデータ収集システム1の機能ブロック図である。
【0032】
コントローラ2には、機械制御プログラムを実行する機械制御プログラム実行部20、トレース開始信号送出条件記憶部21、トレース開始信号送出判定部22、トレース開始信号送出部23、第2のトレースデータ収集部24、トレースデータ記憶部25及びインタフェース26が含まれる。
【0033】
また、モータ制御装置3a,3bには、それぞれ、制御指令実行部30、モータ制御部31、トレース開始信号受信部32、トレース開始条件記憶部33、トレース開始判定部34、第1のトレースデータ収集部35、トレースデータ記憶部36及びインタフェース37が含まれる。
【0034】
さらに、操作端末5には、トレース開始信号送出条件設定部50、グラフ表示部51、軌跡表示部52及びインタフェース53が含まれる。
【0035】
図3に示された各機能ブロックは、主として、同図に示された各機器に搭載されたプロセッサ等の情報処理装置上で所定のプログラムを実行したり、各機器に搭載されたメモリに所定の情報を記憶する領域を割り当てたりすることにより仮想的に実現されており、同図に示された各機器をその保有する機能に着目して個別に示したものである。
【0036】
機械制御プログラム実行部20は、ラダープログラムやタイムチャート等の機械制御プログラムを実行し、当該機械制御プログラムの記述に従って制御指令を各機器に送出する。各機器が制御指令に従い動作することにより、トレースデータ収集システム1は、全体として、意図した通りの動作を行うことになる。
【0037】
トレース開始信号送出条件記憶部21は、モータ制御装置3a,3bにトレース開始を指示する信号を送出する条件であるトレース開始信号送出条件を記憶する部分である。トレース開始信号送出条件は、後述する操作端末5のトレース開始信号送出条件設定部により設定される。
【0038】
トレース開始信号送出判定部22は、トレース開始信号送出条件記憶部に記憶されたトレース開始信号送出条件が満足されたか否かを判定し、満足されたと判定された場合に、トレース開始信号送出部23に、トレース開始信号を送出するよう指令する部分である。
【0039】
トレース開始信号送出部23は、トレース開始信号送出判定部22の指令に応じて、トレースを開始すべきモータ制御装置3a,3bにトレース開始信号を送出する。モータ制御装置3a,3bにおけるトレースは、このトレース開始信号を契機として開始されることになる。
【0040】
ここで、トレースとは、トレースデータを収集する動作を意味しており、トレースデータとは、モータに関する情報であって、時間的に変化する情報を所定の期間にわたって収集したものである。例えば、トレースデータは、モータの位置、速度、指令値との差分、電流値等に関するものであってよい。ここで、モータの位置及び速度は、モータ軸の回転角についてのものであってもよく、モータ軸に連結されたスライダの位置及び速度であってもよい。モータがリニアモータである場合には、モータの位置及び速度はそのままスライダの位置及び速度となる。なお、トレースデータには、後述するように、モータ制御装置3a,3bにおいて収集される第1のトレースデータと、コントローラ2において収集される第2のトレースデータが含まれる。
【0041】
第2のトレースデータ収集部24は、指定されたモータに関するトレースデータを収集し、第2のトレースデータとしてトレースデータ記憶部25に記憶する部分である。第2のトレースデータ収集部24は、第2のトレースデータを単独で収集してもよいし、複数を同時に収集するようにしてもよい。
【0042】
トレースデータ記憶部25は、第2のトレースデータ収集部24により収集された第2のトレースデータを記憶する。
【0043】
制御指令実行部30は、機械制御プログラム実行部20により送出された制御指令に基いて、モータ制御部31に適宜の指令を行い、モータを動作させる部分である。
【0044】
モータ制御部31は、モータを駆動するためのアンプその他必要な電気回路を含んでおり、制御指令実行部30からの指令に基いてモータに入力する電力を制御し、モータを意図したとおりに駆動させる。
【0045】
トレース開始信号受信部32は、トレース開始信号送出部23により送出されたトレース開始信号を受信し、トレース開始判定部34に伝達する部分である。
【0046】
トレース開始条件記憶部33には、モータ制御装置3a,3bがトレースを開始するための条件であるトレース開始条件が記憶されている。トレース開始条件記憶部33には、少なくとも、コントローラからのトレース開始信号を受信することが条件として記憶される。
【0047】
トレース開始判定部34は、トレース開始条件記憶部33に記憶されたトレース開始条件が満足されたか否かを判定し、満足されたと判定された場合に、第1のトレースデータ収集部にトレースを開始させる部分である。トレース開始条件記憶部33に複数のトレース開始条件が記憶されている場合には、そのうちのいずれかの条件又はその複数を用いるよう選択するようにしてよい。かかる選択は、操作端末5を通じてユーザによる指定によりなされてよい。
【0048】
第1のトレースデータ収集部35は、モータ制御部31から指定されたトレースデータを収集し、第1のトレースデータとしてトレースデータ記憶部36に記憶する部分である。第1のトレースデータ収集部35もまた、単独で第1のトレースデータを収集してもよいし、複数を同時に収集してもよい。
【0049】
トレースデータ記憶部36は、第1のトレースデータ収集部35により収集された第1のトレースデータを記憶する。
【0050】
ここで、トレースデータは一般に、一定の周期毎に測定された特定の検出値の集合であり、その周期は、トレースデータを収集しようとする機器の動作周期に依存する。ここで、第1のトレースデータは、制御周期が短いモータ制御装置3a,3bにより収集されるため、測定間隔の短い詳細なデータとなる一方、単位時間当たりのデータ量が多く、またトレースデータ記憶部36の容量も大きくないため、その測定期間は短いものとなる。これに対し、第2のトレースデータは、制御周期が長いコントローラ2により収集されるため、第1のトレースデータに比して測定間隔が長く、その詳細を知ることはできないものの、測定期間は長いものとなる。
【0051】
トレース開始信号送出条件設定部50は、トレース開始信号送出条件記憶部21に記憶されるトレース開始信号送出条件を設定する部分である。具体的には、操作端末5のモニタ5hに適宜のGUI(Graphical User Interface)を表示し、ユーザに入力デバイス5eから適宜の入力をさせるようにするとよい。
【0052】
グラフ表示部51は、トレースデータを時間軸に対してプロットすることによりグラフとしてモニタ5hに表示する部分である。ここで用いるトレースデータは、記憶部36に記憶された第1のトレースデータ及び、トレースデータ記憶部25に記憶された第2のトレースデータのいずれであってもその両方であってもよいが、本実施形態ではその両方である。
【0053】
軌跡表示部52は、複数のトレースデータをそれぞれ複数の交差する軸に割り当ててプロットすることにより、トレースデータの軌跡をモニタ5hに表示する部分である。どのトレースデータをどの軸に割り当てるかはユーザが適宜選択できるようにするとよい。なお、表示の都合上、使用できる軸数は2又は3であり、前者は二次元表示、後者は三次元表示となるが、三次元表示の場合、モニタ5hに表示された軌跡を適宜の操作により任意に回転して表示できるようにするとよい。
<トレースデータ収集システムによるトレースデータ収集フロー>
【0054】
つづいて、本実施形態に係るトレースデータ収集システム1によるトレースデータを収集する流れを、図4図9を用いて説明する。なお、以降の説明においては適宜図3を参照するものとする。
【0055】
図4は、トレースデータ収集のフロー図である。まず、コントローラ2の機械制御プログラム実行部20により機械制御プログラムを実行する(ステップST1)。この機械制御プログラムの実行は、コントローラ2に外部より適宜の信号を入力することにより行ってもよいし、操作端末5を操作することにより指示してもよい。これにより、モータ制御装置3a,3bは決められた動作を行い、モータが駆動される(ステップST2)。
【0056】
さらに、モータの駆動中にコントローラ2の第2のトレースデータ収集部24は、第2のトレースデータを収集し、トレースデータ記憶部25に記憶する(ステップST3)。第2のトレースデータの開始タイミングは任意に設定してよく、例えば、機械制御プログラムの実行と同時に開始してもよいし、かかる開始タイミングから所定時間経過後に開始するようにしたり、任意の信号やパラメータの変化、ユーザの指示により開始するようにしてもよい。ただし、第2のトレースデータを繰り返し収集した場合にも実質的に同一のデータが得られることが望ましく、そのためには、第2のトレースデータの開始タイミングは自動的に決定されることが望ましい。
【0057】
第2のトレースデータが収集されると、トレースデータ記憶部25に記憶された第2のトレースデータは操作端末5に送信され、グラフ表示部51により表示され(ステップST4)、トレース開始信号送出条件設定部50によりトレース開始信号送出条件が設定される。設定されたトレース開始信号送出条件は、コントローラ2のトレース開始信号送出条件記憶部21に記憶される(ステップST5)。
【0058】
図5は、グラフ表示部51により第2のトレースデータが表示されている様子を示す図である。同図中示したグラフ表示領域100には、収集された第2のトレースデータ101がプロットされている。ここで、横軸は時間であり、縦軸は例として速度であるものとする。
【0059】
このとき、トレース開始信号送出条件設定部50は、このグラフ上でトレース開始信号送出条件を設定するものとなっている。図示の例では、第2のトレースデータ101の区間102においてモータの速度に振動が生じているので、この部分のより詳細なトレースデータを得たいものと仮定すると、適宜の入力装置を用いて、第1のトレースデータの収集を開始するタイミング(図中A)を指定することにより、第1のトレースデータが収集される期間103がグラフ上に示される。このときの条件は、第2のトレースデータ101の収集開始に基いて、すなわち、収集開始時点からの時間によって表されることになる。
【0060】
なお、トレース開始信号送出条件設定部50により設定し得る条件は時間に限定されず、他の条件であってもよい。そのため、図5に示すように、条件を指定する条件指定欄104が設けられている。条件指定欄104はここでいわゆるプルダウンメニューとなっており、用意された条件の中から適したものを選択できるようになっている。また、期間103の幅は、第1のトレースデータが収集できる期間に等しいが、これを可変できるようにしてもよい。さらに、この期間の最大値は、第1のトレースデータのサンプリング周期とモータ制御装置3a,3bが有するメモリの容量により決定され、データのサンプリング周期がモータ制御装置3a,3bの制御周期と一致する場合に最も詳細な第1のトレースデータが得られることとなるが、必要に応じてサンプリング周期を可変できるようにしてもよい。例えば、データのサンプリング周期を制御周期の整数倍とすることにより第1のトレースデータの精細性は低下するが、その収集期間を延長することができる。図5では、サンプリング周期の制御周期に対する倍率を指定する倍率指定欄105を設け、サンプリング周期を可変できるようにしている。
【0061】
図6は、トレース開始信号送出条件設定部50により、グラフ上で図5とは別のトレース開始信号送出条件を設定した例を示す図である。この例では、条件指定欄104において「上限」が指定されているが、これは、第1のトレースデータが指定した閾値を超えたときに第1のトレースデータを収集する条件を意味している。この閾値は、グラフ中の任意の位置、例えばB点を指定することにより決定され、その閾値は破線106のようにグラフ中に示される。同様に、「下限」を指定することにより、第1のトレースデータが指定した閾値を下回ったときに第1のトレースデータを収集する条件を設定するようにしてもよい。これらの場合には、条件は、収集された第2のトレースデータ101に基いて、その値の大小により表されることになる。
【0062】
なお、トレース開始信号送出条件としては、図5に示したタイミング(収集開始時点からの時間)及び図6に示したトレース対象の上限や下限等の閾値に限られず、様々な条件を使用することができ、例えば、モータ位置も使用可能である。ただし、条件としてタイミングを使用する場合には、例えば、開始条件を一義に決定できるため、意図しない期間のトレースデータが収集されることを防ぎ、かつ、複数のモータ制御装置それぞれにおける複数の第1のトレースデータを同期させることができる。
【0063】
再び図4に戻り、再度機械制御プログラムを実行すると(ステップST7)、モータが駆動され(ST8)、再び第2のトレースデータが収集される(ステップST9)。そして、第2のトレースデータの収集中にトレース開始信号送出条件が満足されることをトレース開始信号送出判定部22が判定し、トレース開始信号送出部23によりトレース開始信号が送出される結果、モータ制御装置3a,3bのトレース開始判定部34がトレース開始信号受信部32により受信され、トレース開始条件が満足されたと判定し、第1のトレースデータ収集部35による第1のトレースデータの収集が行われ(ST10)、トレースデータ記憶部36に記憶される。
【0064】
このとき、第1のトレースデータの収集期間と第2のトレースデータの収集期間は重複している。そのため、少なくとも、第2のトレースデータは第1のトレースデータの収集中に収集されることになる。
【0065】
収集された、第1のトレースデータ及び第2のトレースデータは操作端末5に送信され、グラフ表示部51により表示される(ステップST11)。このとき、第1のトレースデータと第2のトレースデータは同一の時間軸上にグラフ表示される。
【0066】
図7は、グラフ表示部51により第1のトレースデータ及び第2のトレースデータが同時に表示されている様子を示す図である。第2のトレースデータが実線101により、また、区間102において収集された第1のトレースデータが破線107により、同一の時間軸上にプロットされる。
【0067】
ここで、第1のトレースデータと第2のトレースデータを同一の時間軸上に表示するためには、第1のトレースデータと第2のトレースデータ間の時間に関する相対的位置が決定可能でなければならない。この相対位置の決定はどのような方法によってもよいが、例えば、第1のトレースデータの開始時点の、第2のトレースデータの開始時点からの時間を記録しておく等の方法により容易に実現可能である。
【0068】
さらに、グラフ表示部51は、プロットされたグラフの適宜の区間を拡大表示できることが望ましい。
【0069】
図8は、図7の区間102を拡大表示した例である。このように第2のトレースデータのプロット101と第1のトレースデータのプロット107を同一の時間軸上に表示することにより、第2のトレースデータのみでは不明であった詳細なトレースデータの波形を観察することができる。
【0070】
ところで、以上の説明において、ステップST10で第1のトレースデータを収集する際にステップST9に示すように第2のトレースデータを再度収集しているが、これは、第1のトレースデータの収集を開始する条件を検出する目的のほか、第2のトレースデータを繰り返し収集した際に、トレースデータ収集システム1に作用する外乱等の影響により、必ずしも同一の第2のトレースデータが得られるとは限らないためである。第1のトレースデータ収集時に同時に第2のトレースデータを収集することにより、両者が正しく対応したトレースデータを収集することができる。
【0071】
したがって、トレースデータを使用するユーザの利便性は飛躍的に向上する。つまり、本実施形態のトレースデータ収集システム1によれば、ユーザは、第2のトレースデータにより、モータが使用される実際の機器の動作が反映された測定時間の間のモータの状況を、比較的粗い測定間隔において把握することができる。その後、ユーザは、上記の測定時間中で、特にモータの状況をより詳細に把握する必要がある動作期間を容易に特定することができる。更に、ユーザは、その特定した動作期間におけるモータの詳細な状況を、第1のトレースデータで把握することができる。これらの一連のユーザにおける状況の把握は、通常であれば、1つ1つの処理がリンクしないために反復処理や推測により行われていたが、本実施形態のトレースデータ収集システム1によれば、シームレスかつ確実に実行することができるのである。
【0072】
ここまでの説明では、説明を簡単にするため第1のトレースデータ、第2のトレースデータはそれぞれ単独のものとして説明したが、複数の第1のトレースデータ、複数の第2のトレースデータを収集するようにしてもよい。そのようにして得られた複数のトレースデータは、グラフ表示部51により時間軸上にプロットしてもよいし、軌跡表示部52により軌跡として表示してもよい。時間軸上にプロットした場合はもちろん、軌跡として表示した場合も、上記同様、複数の第1のトレースデータと複数の第2のトレースデータとを正しく対応させてトレースできる等の同様の効果を得る事ができる。更に、以下において、軌跡として表示した場合の利点等について説明する。
【0073】
図9は、軌跡表示部52により軌跡が表示されている様子を示す図である。同図中示した軌跡表示領域108には、複数の交差する軸、ここでは直交するX軸とY軸が示されている。そして、表示データ選択欄109により、それぞれの軸に割り当てるトレースデータが選択できるようになっている。ここでは、表示データ選択欄109はいわゆるプルダウンメニューとなっており、これまで収集されたトレースデータが一覧から選択可能である。
【0074】
同図に示した例では、X軸にはモータ4aの位置が、Y軸にはモータ4bの位置が選択されているものとする。また、モータ4a及びモータ4bは、互いに直交していわゆるXYステージを作動させるように配置され、その動作は円運動をすることを意図したものとする。
【0075】
このとき、互いに交差する軸に異なるトレースデータを割り当て、かかるトレースデータにより決定される軌跡表示部52上の座標を時間に即してプロットしていくことにより、図9に示すような軌跡110が描かれる。この軌跡110により、モータ4a,4bの実動作が意図したものに対しどの程度正確に追従出来ているかを容易に確認することができる。同図に示した例では、軌跡110がX軸及びY軸と交差する位置において位置ずれが生じていることが確認できる。
【0076】
なお、同図中点線111で示すように、制御目標値の軌跡を併せて示すようにすると、モータ4a,4bの実動作の正確性をより明確に確認することができる。
【0077】
ここで、軌跡表示部52により表示される軌跡は二軸についてのものとして二次元で示したが、さらにもう一軸を追加し、三次元表示をしてもよい。このとき、軌跡は三次元空間上にプロットされるが、操作端末5に対する適宜の操作により、この軌跡を画面上で任意に回転させて観察できるようにすることが好ましい。
【0078】
以上説明した実施形態は具体例として示したものであり、本明細書にて開示される発明をこれら具体例の構成に限定するものではない。当業者はこれら開示された実施形態に種々の変形、例えば、物理的構成の形状や数、配置等を変更してもよい。本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9