特許第6288146号(P6288146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288146
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   F25B1/00 311C
   F25B1/00 304P
   F25B1/00 304Q
   F25B1/00 304S
   F25B1/00 304L
   F25B1/00 361D
   F25B1/00 396Z
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-74497(P2016-74497)
(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公開番号】特開2017-187189(P2017-187189A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】配川 知之
(72)【発明者】
【氏名】南田 知厚
(72)【発明者】
【氏名】平良 繁治
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−034276(JP,A)
【文献】 特開2001−174075(JP,A)
【文献】 特開2013−113212(JP,A)
【文献】 特開昭63−286664(JP,A)
【文献】 特開昭49−046243(JP,A)
【文献】 特開平05−010626(JP,A)
【文献】 特許第3440910(JP,B2)
【文献】 特開2006−002732(JP,A)
【文献】 特開2001−174091(JP,A)
【文献】 特開平02−287062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ制御によって回転が制御されるモータ(31a)を内蔵し、冷媒回路(20)で循環する冷媒を圧縮する圧縮機(31)と、
前記圧縮機の運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にある少なくとも1つの値のときに前記インバータ制御により前記モータのトルクを制御するインバータ制御部(51)と、
少なくとも、前記運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、前記モータのトルクが制御されており、且つ所定条件を満たしていると判断されたときに、前記圧縮機に吸入される冷媒が湿り状態になるように前記冷媒回路に設置されている機器を制御する機器制御部(52)と、を備え、
前記所定条件は、前記冷媒回路の凝縮温度が45℃以上になるという凝縮温度条件、前記冷媒回路の高圧側の圧力が所定圧力以上になるという高圧条件、前記冷媒回路の高圧側の圧力と低圧側の圧力の差圧が所定差圧以上になるという差圧条件、及び前記冷媒回路を流れる冷媒と熱交換される外気の温度が所定温度以上となるという外気温度条件の中から選択された1つの条件である、冷凍装置。
【請求項2】
インバータ制御によって回転が制御されるモータ(31a)を内蔵し、冷媒回路(20)で循環する冷媒を圧縮する圧縮機(31)と、
前記圧縮機の運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にある少なくとも1つの値のときに前記インバータ制御により前記モータのトルクを制御するインバータ制御部(51)と、
少なくとも、前記運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、前記モータのトルクが制御されており、且つ所定条件を満たしていると判断されたときに、前記圧縮機における圧縮途中の冷媒に前記冷媒回路中の中間圧冷媒がインジェクションされるように前記冷媒回路に設置されている機器を制御する機器制御部(52)と、を備え、
前記所定条件は、前記冷媒回路の凝縮温度が45℃以上になるという凝縮温度条件、前記冷媒回路の高圧側の圧力が所定圧力以上になるという高圧条件、前記冷媒回路の高圧側の圧力と低圧側の圧力の差圧が所定差圧以上になるという差圧条件、及び前記冷媒回路を流れる冷媒と熱交換される外気の温度が所定温度以上となるという外気温度条件の中から選択された1つの条件である、冷凍装置。
【請求項3】
前記圧縮機は、ロータリ圧縮機である、
請求項1または請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記冷媒回路を流れる冷媒の圧力を減圧するために前記機器として前記冷媒回路に設置されている減圧機構(34)と、
前記冷媒回路を流れる冷媒と熱交換される外気を供給するために前記機器として前記冷媒回路に設置され、送風量を変更可能に構成されている室外ファン(37)と、
をさらに備え、
前記機器制御部は、少なくとも、前記運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、前記モータのトルクが制御されており、且つ前記所定条件下において、前記減圧機構の減圧度合いの変更及び/又は前記室外ファンの送風量を制御することにより、前記圧縮機に吸入される冷媒を湿り状態にする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記機器制御部は、少なくとも、前記運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、前記モータのトルクが制御されており、且つ前記所定条件下において、前記圧縮機から吐出される冷媒の温度を目標吐出温度に一致させるように前記機器を制御することにより、前記圧縮機に吸入される冷媒を湿り状態にする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記冷媒回路を循環する冷媒は、R32を50重量%よりも多く含む冷媒である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インバータ制御される圧縮機モータを備える冷凍装置においては、特許文献1(特開平6−75154号公報)に記載されているように、トルク制御により圧縮機の低速運転領域における振動を抑制できることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1などに記載されているトルク制御を行うと圧縮機モータを流れる電流が増加し、モータの効率が悪化して圧縮機モータで発生する熱エネルギーが増加する。その結果、特に圧縮機内部に圧縮機モータを収納している場合には、圧縮機モータで発生した熱によって圧縮機で圧縮される冷媒が加熱される。さらに、外気温度が高いために凝縮温度が高くなっているときほど圧縮時のトルク変動が増大し、トルク制御が必要となるが、このときにトルク制御を行うと、トルク制御で発生する熱も加わって圧縮機から吐出される冷媒の温度が過度に高温になる不具合が発生する場合がある。
【0004】
本発明の課題は、冷凍装置の圧縮機に内蔵されたモータに対してトルクを制御することにより圧縮機から吐出される冷媒の温度が過度に高温になるのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る冷凍装置は、インバータ制御によって回転が制御されるモータを内蔵し、冷媒回路で循環する冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機の運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にある少なくとも1つの値のときにインバータ制御によりモータのトルクを制御するインバータ制御部と、少なくとも、運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、モータのトルクが制御されており、且つ所定条件を満たしていると判断されたときに、圧縮機に吸入される冷媒が湿り状態になるように冷媒回路に設置されている機器を制御する機器制御部と、を備える。
【0006】
第1観点に係る冷凍装置では、圧縮機から吐出される冷媒の温度が過度の高温となり易いときにトルクの制御によるモータの発熱が加わっても、機器制御部により冷媒回路を構成する機器を制御することによって圧縮機に吸入される冷媒を湿り状態にすることができることから、圧縮機から吐出する冷媒の温度を下げることができる。
【0007】
また、本発明の第観点に係る冷凍装置は、所定条件は、冷媒回路の凝縮温度が45℃以上になるという凝縮温度条件、冷媒回路の高圧側の圧力が所定圧力以上になるという高圧条件、冷媒回路の高圧側の圧力と低圧側の圧力の差圧が所定差圧以上になるという差圧条件、及び冷媒回路を流れる冷媒と熱交換される外気の温度が所定温度以上となるという外気温度条件の中から選択された1つの条件である、ものである。
【0008】
観点に係る冷凍装置では、所定条件が凝縮温度条件、高圧条件、差圧条件、外気温度条件の中から選択された1つの条件であることから、所定条件になっているか否かの判断が行い易くなる。
【0009】
本発明の第2観点に係る冷凍装置は、インバータ制御によって回転が制御されるモータを内蔵し、冷媒回路で循環する冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機の運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にある少なくとも1つの値のときにインバータ制御によりモータのトルクを制御するインバータ制御部と、少なくとも、運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、モータのトルクが制御されており、且つ所定条件を満たしていると判断されたときに、圧縮機における圧縮途中の冷媒に冷媒回路中の中間圧冷媒がインジェクションされるように冷媒回路に設置されている機器を制御する機器制御部と、を備える。
【0010】
第2観点に係る冷凍装置では、圧縮機から吐出される冷媒の温度が過度の高温となり易いときにトルクの制御によるモータの発熱が加わっても、圧縮機における圧縮途中の冷媒に冷媒回路中の中間圧冷媒をインジェクションすることができることから、圧縮機から吐出する冷媒の温度を下げることができる。
【0011】
また、本発明の第2観点に係る冷凍装置は、所定条件は、冷媒回路の凝縮温度が45℃以上になるという凝縮温度条件、冷媒回路の高圧側の圧力が所定圧力以上になるという高圧条件、冷媒回路の高圧側の圧力と低圧側の圧力の差圧が所定差圧以上になるという差圧条件、及び冷媒回路を流れる冷媒と熱交換される外気の温度が所定温度以上となるという外気温度条件の中から選択された1つの条件である、ものである。
【0012】
第2観点に係る冷凍装置では、所定条件が凝縮温度条件、高圧条件、差圧条件、外気温度条件の中から選択された1つの条件であることから、所定条件になっているか否かの判断が行い易くなる。
【0013】
本発明の第3観点に係る冷凍装置は、第1観点又は第2観点に係る冷凍装置であって、圧縮機は、ロータリ圧縮機である、ものである。
【0014】
本発明の第観点に係る冷凍装置は、第1観点から第3観点のいずれかに係る冷凍装置であって、冷媒回路を流れる冷媒の圧力を減圧するために冷媒回路の機器として冷媒回路に設置されている減圧機構と、冷媒回路を流れる冷媒と熱交換される外気を供給するために冷媒回路の機器として冷媒回路に設置され、送風量を変更可能に構成されている室外ファンと、をさらに備え、機器制御部は、少なくとも、運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、モータのトルクが制御されており、且つ所定条件下において、減圧機構の減圧度合いの変更及び/又は室外ファンの送風量を制御することにより、圧縮機に吸入される冷媒を湿り状態にする、ものである。
【0015】
観点に係る冷凍装置では、減圧機構の減圧度合いの変更及び/又は室外ファンの送風量を制御することにより、圧縮機に吸入される冷媒を湿り状態にすることから、運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、モータのトルクが制御されており、且つ所定条件下において、冷媒回路で汎用される機器である減圧機構及び/又は室外ファンを用いて、圧縮機から吐出する冷媒の温度を下げることができる。そのため、圧縮機のトルク制御を行なう際に冷媒温度が過度の高温になるのを防ぐために新たな機器を冷媒回路に設置する必要がなくなる。
【0016】
本発明の第観点に係る冷凍装置は、第1観点から第観点のいずれかに係る冷凍装置であって、機器制御部は、少なくとも、運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、モータのトルクが制御されており、且つ所定条件下において、圧縮機から吐出される冷媒の温度を目標吐出温度に一致させるように機器を制御することにより、圧縮機に吸入される冷媒を湿り状態にする、ものである。
【0017】
観点に係る冷凍装置では、圧縮機から吐出される冷媒の温度を目標吐出温度に一致させれば圧縮機に吸入される冷媒を湿り状態にできることから、圧縮機から吐出される冷媒の温度を監視しながら機器を制御すればよくなる。
【0018】
本発明の第観点に係る冷凍装置は、第1観点から第観点のいずれかに係る冷凍装置であって、冷媒回路を循環する冷媒は、R32を50重量%よりも多く含む冷媒である、ものである。
【0019】
観点に係る冷凍装置では、R32を50重量%よりも多く含む冷媒が冷媒回路を循環するときには冷媒温度が比較的高く設定される傾向があることからトルク制御を掛け難かったが、トルクの制御によるモータの発熱が加わっても冷媒温度が過度に高温になるのを防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1観点、第2観点または第3観点に係る冷凍装置によれば、モータを内蔵する圧縮機のトルク制御を行っても、冷媒温度が過度の高温になるのを防止することができる。また、機器制御部による機器の制御が容易になる。
【0021】
本発明の第観点に係る冷凍装置によれば、圧縮機のトルク制御を行う際に冷媒温度が過度の高温になるのを防止するために掛かるコストの増加を抑制できる。
【0022】
本発明の第観点に係る冷凍装置によれば、機器制御部によってトルク制御時に行なわれる、圧縮機に吸入される冷媒を湿り状態にする制御が容易になる。
【0023】
本発明の第観点に係る冷凍装置によれば、R32を50重量%よりも多く含む冷媒が循環する冷媒回路においても圧縮機のモータのトルクを制御し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る冷凍装置の構成の概要を示す回路図。
図2図1の冷凍装置の動作を説明するためのモリエル線図。
図3】トルク制御をしないときに圧縮機のモータに供給される電流波形の一例を示す波形図。
図4】トルク制御をしているときに圧縮機のモータに供給される電流波形の一例を示す波形図。
図5】トルク制御をしているときに圧縮機のモータに供給される電流波形の他の例を示す波形図。
図6】トルク制御量と圧縮機に入力される電力との関係を示すグラフ。
図7】トルク制御量と圧縮機の振動との関係を示すグラフ。
図8】トルク制御量と圧縮機が吐出する冷媒の温度との関係を示すグラフ。
図9】変形例Aに係る冷凍装置の構成の概要を示す回路図。
図10】変形例Cに係る冷凍装置の構成の概要を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)空気調和装置の構成
本発明の一実施形態に係る冷凍装置としての空気調和装置を例に挙げて図1を用いて説明する。図1には、冷凍装置の全体構成の概略が示されている。
【0026】
図1に示されている冷凍装置10は、蒸気圧縮冷凍サイクルを行なう冷媒回路20と冷媒回路を制御するための制御装置50とを備えている空気調和装置である。冷媒回路20は、室外ユニット30と室内ユニット40とが連絡配管21と連絡配管22とによって環状に接続されることによって構成されている。連絡配管21には、主に液状の冷媒が流れ、連絡配管22には、主にガス状の冷媒が流れる。冷媒回路20は、室外ユニット30内に圧縮機31と四路切換弁32と室外熱交換器33と減圧機構34とを有し、室内ユニット40内に室内熱交換器41を有している。この冷媒回路20を循環する冷媒はR32である。
【0027】
(2)詳細構成
(2−1)室外ユニット
室外ユニット30に収納されている圧縮機31は、吸入側を吸入管35の一端に接続され、吐出側を吐出管36の一端に接続されている。吐出管36の他端すなわち圧縮機31の吐出側が四路切換弁32の第1ポートPo1に接続され、吸入管35の他端すなわち圧縮機31の吸入側が四路切換弁32の第3ポートPo3に接続されている。この圧縮機31は、内蔵しているモータ31aが制御装置50からの指示に応じて運転周波数すなわち回転数を変更できるように構成されている。制御装置50のインバータ制御部51は、圧縮機31のモータ31aをインバータ制御により制御している。つまり、モータ31aは、インバータ制御により回転が制御される。圧縮機31は、モータ31aの回転数の変化によって運転容量を変更できるように構成されている。圧縮機31の回転数の変化は、冷媒回路20の冷媒循環量の変化をもたらす。
【0028】
室外ユニット30に収納されている室外熱交換器33は、一方の出入口を四路切換弁32の第4ポートPo4に接続され、他方の出入口を減圧機構34に接続されている。また、室外ユニット30には、室外熱交換器33に室外空気を送風するための室外ファン37が収納されている。室外熱交換器33では、室外ファン37によって送風される室外空気と冷媒回路20を循環する冷媒との間で熱交換が行われる。室外ファン37は、回転数が制御装置50の機器制御部52によって制御されており、回転数を変えることにより送風量を変更できるように構成されている。
【0029】
室外ユニット30に収納されている減圧機構34は、一端を室外熱交換器33の他方の出入口に接続され、他端を連絡配管21に接続されている。減圧機構34は、絞り膨張によって冷媒回路20を循環する冷媒を減圧する。この減圧機構34は、制御装置50の機器制御部52から送信される指令に応じて開度を調整できるように構成されている。従って、制御装置50は、減圧機構34の開度を調整することによって、冷媒回路20の低圧側の冷媒圧力及び/又は冷媒循環量を調節する。このような減圧機構34は、例えば電動膨張弁で構成することができる。
【0030】
室外ユニット30に収納されている四路切換弁32においては、第1ポートPo1に吐出管36の他端が接続され、第2ポートPo2に連絡配管22を介して室内熱交換器41の一方の出入口が接続され、第3ポートPo3に吸入管35の他端が接続され、第4ポートPo4に室外熱交換器33の一方の出入口が接続されている。四路切換弁32は、制御装置50によって冷房のための接続と暖房のための接続とを切り換えられるように構成されている。暖房時には、図1に実線で示されているように、第1ポートPo1と第2ポートPo2の間が開通するとともに、第3ポートPo3と第4ポートPo4との間が開通する。一方、冷房時には、図1に破線で示されているように、第1ポートPo1と第4ポートPo4との間が開通し、第2ポートPo2と第3ポートPo3の間が開通する。
【0031】
吸入管35には管内の冷媒の圧力を測定する吸入圧力センサ61が取り付けられている。吸入圧力センサ61で測定される圧縮機31の吸入圧力の値は、制御装置50に送信される。また、吸入管35には管内の冷媒の温度を測定する吸入温度センサ63が取り付けられ、吐出管36には管内の冷媒の温度を測定する吐出温度センサ64が取り付けられている。吸入温度センサ63及び吐出温度センサ64で測定される圧縮機31の吸入温度及び吐出温度の値は、制御装置50に送信される。
【0032】
室外熱交換器33には、室外熱交換器33の伝熱管内で相変化しつつある冷媒の温度を測定する室外熱交換器温度センサ65が取り付けられるとともに、室外熱交換器33に送風される室外空気の温度を測定する室外温度センサ66が取り付けられている。室外熱交換器温度センサ65及び室外温度センサ66で測定される温度の値は、制御装置50に送信される。室外熱交換器温度センサ65で測定される冷媒の温度は、冷房運転時には凝縮温度であり、暖房運転時には蒸発温度である。さらに、室外熱交換器33の他方の出入口には室外熱交換器33の他方の出入口を通る液冷媒の温度を測定する室外液側温度センサ67が取り付けられている。室外液側温度センサ67で測定される温度の値は、制御装置50に送信される。
【0033】
(2−2)室内ユニット
室内ユニット40に収納されている室内熱交換器41は、一方の出入口が連絡配管22を介して四路切換弁32の第2ポートPo2に接続され、他方の出入口が連絡配管21に接続されている。室内ユニット40には、室内熱交換器41に室内空気を送風するための室内ファン42が収納されている。室内熱交換器41では、室内ファン42によって送風される室内空気と冷媒回路20を循環する冷媒との間で熱交換が行われる。この室内ファン42は、回転数が制御装置50の機器制御部52によって制御されており、回転数を変えることにより送風量を変更できるように構成されている。
【0034】
また、室内熱交換器41の他方の出入口には室内熱交換器41の他方の出入口を通る液冷媒の温度を測定する室内液側温度センサ74が取り付けられている。室内液側温度センサ74で測定される温度の値は、制御装置50に送信される。
【0035】
室内熱交換器41には、室内熱交換器41の伝熱管内で相変化しつつある冷媒の温度を測定する室内熱交換器温度センサ75が取り付けられるとともに、室内熱交換器41に送風される室内空気の温度を測定する室内温度センサ76が取り付けられている。室内熱交換器温度センサ75及び室内温度センサ76で測定される温度の値は、制御装置50に送信される。室内熱交換器温度センサ75で測定される冷媒の温度は、暖房運転時には凝縮温度であり、冷房運転時には蒸発温度である。
【0036】
(3)冷凍装置10の動作
(3−1)動作の概要
冷凍装置10において、冷媒は、圧縮機31と室外熱交換器33と減圧機構34と室内熱交換器41とを含む冷媒回路20を循環する。そして、冷媒回路20では、蒸気圧縮冷凍サイクルが行なわれる。すなわち、冷房運転時には、圧縮機31で圧縮して吐出されたガス冷媒が四路切換弁32を経由して室外熱交換器33に送られる。室外ユニット30の室外熱交換器33では、高温高圧の冷媒が室外空気と熱交換され、高圧のガス冷媒から凝縮熱が放出されて冷媒の液化が起きる。室外へ熱を放出して冷えた冷媒は、減圧機構34によって低温でも蒸発しやすい状態になるまで圧力が下げられる。低圧になった冷媒は、室内ユニット40の室内熱交換器41に流れ、室内熱交換器41で冷媒は室内空気と熱交換され、低圧の液冷媒が蒸発熱を取り込むことによって室内空気から熱を奪う。室内熱交換器41で熱を奪って気化(若しくは相変化)した冷媒は、四路切換弁32を経由して圧縮機31に吸入される。
【0037】
暖房運転時には、冷房運転時とは逆に、圧縮機31で圧縮して吐出されたガス冷媒が四路切換弁32を経由して室内熱交換器41に送られる。室内熱交換器41では、高温高圧のガス冷媒が室内空気と熱交換され、高圧のガス冷媒から凝縮熱が放出されて冷媒の液化が起きる。室内へ熱を放出して冷えた冷媒は、減圧機構34によって低温でも蒸発しやすい状態になるまで圧力が下げられる。そして、低圧になった冷媒は、室外熱交換器33で室外空気と熱交換されて低圧の液冷媒から蒸発熱を取り込む。室外熱交換器33で熱を奪って気化(若しくは相変化)した冷媒は、四路切換弁32を経由して圧縮機31に吸入される。
【0038】
この蒸気圧縮冷凍サイクルが、図2に示されている。図2の曲線L1は飽和液線であり、曲線L2は乾き飽和蒸気線である。図2において、点C1及び点C11の状態が圧縮機31の吐出側すなわち吐出管36内の冷媒の状態に対応する。言い換えると、点C1及び点C11の状態は凝縮器すなわち暖房運転時の室内熱交換器41又は冷房運転時の室外熱交換器33の入口の冷媒の状態に対応する。次の点C2の状態は、凝縮器の出口の状態に対応しており、減圧機構34の入口の状態に対応している。凝縮器の出口の冷媒には過冷却度SCがついている。次の点C3の状態は、減圧機構34の出口の状態に対応している。言い換えると、点C3の状態は、蒸発器すなわち冷房運転時の室内熱交換器41又は暖房運転時の室外熱交換器33の入口の状態に対応する。点C4及び点C41の状態は、圧縮機31の吸入側すなわち吸入管35の状態に対応する。
【0039】
(3−2)圧縮機31の吐出温度の制御
冷凍装置10では、圧縮機31の吐出温度に基づいた制御が行われる。制御装置50は、圧縮機31の吐出側の冷媒の温度を吐出温度センサ64から取得し、室外熱交換器33の内部の冷媒の温度を室外熱交換器温度センサ65から取得し、室内熱交換器41の内部の冷媒の温度を室内熱交換器温度センサ75から取得する。冷房運転時には、室外熱交換器温度センサ65で計測される温度を凝縮温度TCとして用い、室内熱交換器温度センサ75で計測される温度を蒸発温度TEとして用いる。暖房運転時には、室外熱交換器温度センサ65で計測される温度を蒸発温度TEとして用い、室内熱交換器温度センサ75で計測される温度を凝縮温度TCとして用いる。
【0040】
制御装置50は、内部に記憶しているデータを用いて、目標吐出温度TTdを決定する。そして、制御装置50は、吐出温度センサ64で計測される圧縮機31の吐出側の冷媒の温度が上述の目標吐出温度TTdになるように減圧機構34の開度を調節する。そのために、制御装置50は、圧縮機31の吐出温度と目標吐出温度TTdとを比較する。制御装置50は、吐出温度センサ64の計測値が目標吐出温度TTdよりも小さいときには、減圧機構34の開度を小さくする。逆に、吐出温度センサ64の計測値が目標吐出温度TTdよりも大きいときに制御装置50は、減圧機構34の開度を大きくして圧縮機31の吐出側の冷媒の温度を下げる方向に制御する。
【0041】
(3−3)圧縮機31のトルク制御
圧縮機31がロータリ圧縮機で、圧縮機31のシリンダが1つの場合には、特に、圧縮機31の振動が大きくなり易い傾向がある。そこで、以下の説明では、圧縮機31が1シリンダ型のロータリ圧縮機であり、偏心して回転するローラが1個だけの場合を例に挙げて説明する。圧縮機31では運転周波数が低い場合、例えば運転周波数が10Hzから40Hzまでの範囲で特に振動が発生しやすい傾向がある。このような傾向は、1シリンダ型の圧縮機31で顕著である。室外ユニット30には、圧縮機31に接続された吸入管35及び吐出管36があり、圧縮機31の振動が吸入管35及び吐出管36などを伝わって室外ユニット30の外に伝播し、騒音の原因となる。
【0042】
そこで、圧縮機31の振動を抑えるために、制御装置50のインバータ制御部51は、10Hzから40Hzまでの運転周波数を含む所定の範囲で圧縮機31のトルクを制御する。図3図4及び図5にインバータ制御されたモータ31aに供給される電流波形が示されている。モータ31aに供給される電流は三相交流である。図3には、トルク制御が行われていない場合の電流波形が示されている。図4には、トルク制御量が約60%の場合の電流波形が示されている。図5には、トルク制御が100%の場合の電流波形が示されている。トルク制御が100%とは、この圧縮機31で許容されている最大のトルク制御を掛けることである。図3の電流波形と図4及び図5の電流波形とを比較すると、トルク制御量が多くなるほど電流波形の歪が大きくなっていることが分かる。
【0043】
このことを別の観点から見るために、図6にトルク制御量と圧縮機31の入力電力との関係を示し、図7にトルク制御量と圧縮機31の振動幅の関係を示し、図8にトルク制御量と圧縮機31の吐出温度の関係を示している。なお、図6乃至図8において、トルク制御量以外のパラメータは変化させていない。図6に示されているように、トルク制御を全く掛けないときに、圧縮機31の入力電力が150ワットであったものが、トルク制御量を100%にすると、圧縮機の31の入力電力が160ワットに上昇する。このことは、上述の電流波形からも容易に分かることで、トルク制御量が大きくなるほど電流波形の歪が大きくなり、言い換えるとロスが大きくなっているということである。
【0044】
トルク制御量を増やすとロスが大きくなるものの、図7に示されているように、圧縮機31の振動は抑制される。しかし、図8に示されているように、トルク制御量が大きくなるに従って、ロスが大きくなることによってモータ31aで熱が生じる。圧縮機31がモータ31aを内蔵しているために、圧縮機31内部のモータ31aで発生した熱が圧縮機31から吐出される冷媒に伝わることによって、圧縮機31から吐出される冷媒の温度が上昇する。この冷凍装置10では、例えば、トルク制御で効率が数%低下すると、圧縮機31から吐出される冷媒の温度が約1〜5℃上昇する。
【0045】
そこで、運転周波数が10Hzから40Hzの間の1つの値、例えば40Hzでトルク制御を掛けた場合について説明する。上述のようにトルク制御のロスにより熱が発生しても、圧縮機31から吐出される冷媒の温度が過度の高温にならない場合には、従来と同様に冷凍装置10の運転を続ける。
【0046】
しかし、トルク制御の熱が加わることで圧縮機31の吐出冷媒が過度の高温となる場合には、圧縮機31に吸入される冷媒が湿り状態になるように、制御装置50の機器制御部52が冷媒回路20に設定されている機器を制御する。冷媒回路20で、図2に示されているような冷凍サイクルが構成されているとすると、目標吐出温度TTdが例えば点C1の状態にある場合には圧縮機31が吸入する冷媒は点C4の状態にあって乾いていて湿っていない。つまり、圧縮機31が吐出する冷媒には過熱度SHがついている。もし、目標吐出温度TTdが点C11の状態にあるとすると圧縮機31が吸入する冷媒は、点C41の状態にあって湿っている。このように、点C41から点C11に変化するような冷凍サイクルが構成されるようにするために、具体的には、減圧機構34の減圧度合いを変更することにより、圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態(点C41の状態)にする。圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にするために目標吐出温度TTdをどのように設定するかは、例えば、実機による実験及び/又はシミュレーションによって予め検討され、検討の結果によっては制御装置50が目標吐出温度TTdを変更するように制御するように設定される場合もあれば変更せずに維持するように設定される場合もあり得る。
【0047】
圧縮機31から吐出される冷媒の温度が過度の高温になり易い条件としては、例えば、室外ユニット30が置かれている場所の外気温度が高外気温度である場合である。ここでは35℃以上を高外気温度と呼ぶ。高外気温度で運転されている冷凍装置10では、冷媒回路20の凝縮温度が高くなる傾向があるので、圧縮機31から吐出される冷媒の温度が過度の高温になり易い。この冷凍装置10の制御装置50では、凝縮温度が例えば45℃以上になるという凝縮温度条件を満たすか否かで、圧縮機31から吐出される冷媒の温度が過度の高温になり易い条件下にあると判断する。
【0048】
言い換えると、制御装置50の機器制御部52は、運転周波数が10Hzから40Hzの間の1つの値であり、モータ31aのトルクがインバータ制御によって制御されており、凝縮温度が45℃以上になるという凝縮温度条件を満たすときに、例えば圧縮機31に吸入される冷媒が図2の点C41の状態になって湿り状態となるように、減圧機構34の減圧度合いを変更する。このような条件が満たされる場合において減圧機構34の開度を大きくするタイミングは、例えばトルク制御が開始されるときである。
【0049】
(4)変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の具体的構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で変更可能である。以下、本発明の実施形態に適用可能な変形例について説明する。
【0050】
(4−1)変形例A
上記実施形態では、冷凍装置10が、冷房及び暖房の両方に対応した空気調和装置である場合について説明したが、冷凍装置10は、図9に示されているような冷房専用機器であってもよい。図9に示されている冷凍装置10は、図1に示されている冷凍装置10の四路切換弁32を取り外して、吐出管36の他端を室外熱交換器33の一方の出入口に接続し、吸入管35の他端に連絡配管22が接続したものである。
【0051】
(4−2)変形例B
上記実施形態では、電動膨張弁を用いて減圧機構34の減圧度合いを変更することにより圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にしたが、減圧機構34は、電動膨張弁以外の減圧機構を用いることもでき、例えばダイアフラムを使った機械式膨張弁又はキャピラリチューブを用いることもできる。例えば、減圧度合いを変更するために、機械式膨張弁又はキャピラリチューブと電磁弁とを用いて湿り状態にするときに減圧度合いを変更するように構成することもできる。
【0052】
また、制御装置50の機器制御部52を、減圧機構34の減圧度合いに代えて、室外ファン37の送風量を変更することにより圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にする制御を行なうように構成してもよい。例えば、冷房運転時に、室外ファン37の送風量を増やすと、送風量が少ない場合に比べて室外熱交換器33における過冷却度SCが大きくなり易くなり、圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にし易くなる。また、機器制御部52を、減圧機構34の減圧度合いと室外ファン37の送風量の両方を変更することにより圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にする制御を行なうように構成してもよい。
【0053】
(4−3)変形例C
上記実施形態又は変形例Bでは、圧縮機31から吐出される冷媒の温度を下げるために、減圧機構34及び/又は室外ファン37を冷媒回路20の機器として制御する場合について説明したが、他の機器を用いて、圧縮機31に吸入される冷媒が湿り状態になるように又は圧縮機31における圧縮途中の冷媒に冷媒回路20中の中間圧冷媒がインジェクションされるように構成してもよい。
【0054】
図10には、インジェクションによって圧縮機31から吐出される冷媒の温度を下げる構成を備える冷凍装置10の一例が示されている。図10に示されている冷凍装置10は、ブリッジ回路90と、高圧レシーバ100と、インジェクション用電動弁83と、インジェクション用熱交換器84と、中間インジェクション開閉弁86と、吸入インジェクション開閉弁88とを有している。圧縮機31は、圧縮機付属容器38を介して吸入管35からガス冷媒を吸入する。減圧機構34は、その他端がブリッジ回路90に接続されている。
【0055】
ブリッジ回路90は、4つの逆止弁91,92,93,94を有している。入口逆止弁91は、室外熱交換器33から高圧レシーバ100へ向かう冷媒の流れのみを許容する逆止弁である。出口逆止弁92は、高圧レシーバ100から室内熱交換器41へ向かう冷媒の流れのみを許容する逆止弁である。入口逆止弁93は、室内熱交換器41から高圧レシーバ100へ向かう冷媒の流れのみを許容する逆止弁である。出口逆止弁94は、高圧レシーバ100から減圧機構34を経て室外熱交換器33へ向かう冷媒の流れのみを許容する逆止弁である。すなわち、入口逆止弁91,93は、室外熱交換器33及び室内熱交換器41の一方から高圧レシーバ100に冷媒を流す機能を果たし、出口逆止弁92,94は、高圧レシーバ100から室外熱交換器33及び室内熱交換器41の他方に冷媒を流す機能を果たす。高圧レシーバ100は、冷媒貯留タンクとして機能する容器であり、減圧機構34と室内ユニット40との間に設けられている。
【0056】
高圧レシーバ100の出口とブリッジ回路90の出口逆止弁92,94との間には、インジェクション用熱交換器84が設けられている。また、高圧レシーバ100の出口とインジェクション用熱交換器84とを結ぶメイン冷媒流路21aの一部分からは、分岐管82が分岐している。メイン冷媒流路21aは、室外熱交換器33と室内熱交換器41とを結ぶ液冷媒の主流路である。
【0057】
分岐管82には、開度調整可能なインジェクション用電動弁83が設けられている。また、分岐管82は、インジェクション用熱交換器84の第2流路84bに接続されている。すなわち、インジェクション用電動弁83が開いているとき、メイン冷媒流路21aから分岐管82へと分岐した冷媒は、インジェクション用電動弁83で減圧され、インジェクション用熱交換器84の第2流路84bに流れる。なお、インジェクション用熱交換器84の第2流路84bは、分岐管82の一部を構成している。
【0058】
インジェクション用電動弁83で減圧されてインジェクション用熱交換器84の第2流路84bに流れた冷媒は、インジェクション用熱交換器84の第1流路84aを流れる冷媒と熱交換する。インジェクション用熱交換器84の第1流路84aは、メイン冷媒流路21aの一部を構成している。このインジェクション用熱交換器84での熱交換の後、分岐管82を流れていく冷媒は、後述する中間インジェクション流路85あるいは吸入インジェクション流路87に流れ込むことになる。また、分岐管82のインジェクション用熱交換器84の下流側には、インジェクション用熱交換器84での熱交換後の冷媒の温度を検出するインジェクション用温度センサ96が取り付けられている。
【0059】
インジェクション用熱交換器84は、例えば二重管構造を採る内部熱交換器であり、上述のように、主流路であるメイン冷媒流路21aを流れる冷媒と、インジェクションのためのメイン冷媒流路21aから分岐した分岐管82を流れるインジェクションのための冷媒との間で熱交換を行わせる。インジェクション用熱交換器84の第1流路84aの一端は高圧レシーバ100の出口に接続されており、他端はブリッジ回路90の出口逆止弁92,94に接続されている。
【0060】
圧縮機付属容器38は、四路切換弁32と圧縮機31との間の吸入管35に配置されており、過渡的に液成分を多く含む冷媒が流れ込んできたときに、圧縮機31に多くの液冷媒が吸入されることを防止する役割を果たす。ここでは圧縮機付属容器38を設けているが、これに加えて圧縮機31への液バックを防止するためのアキュムレータを吸入管35に配しても良い。
【0061】
吸入管35のうち、圧縮機付属容器38と圧縮機31とを結ぶ配管には、吸入インジェクション流路87が接続されている。吸入インジェクション流路87は、上述の分岐管82のインジェクション用熱交換器84の下流側の部分と、吸入管35とを結ぶ配管である。この吸入インジェクション流路87には、吸入インジェクション開閉弁88が設けられている。吸入インジェクション開閉弁88は、開状態と閉状態とが切り替わる電磁弁である。
【0062】
上述のように、圧縮機31には、中間インジェクションポート39が設けられている。中間インジェクションポート39は、圧縮機31における圧縮途中の中間圧の冷媒に対して外部から冷媒を流し込むための冷媒導入用ポートである。この中間インジェクションポート39には、中間インジェクション流路85が接続されている。中間インジェクション流路85は、上述の分岐管82のインジェクション用熱交換器84の下流側の部分と、中間インジェクションポート39とを結ぶ配管である。この中間インジェクション流路85には、中間インジェクション開閉弁86が設けられている。中間インジェクション開閉弁86は、開状態と閉状態とが切り替わる電磁弁である。なお、圧縮機31を、2台の圧縮機が直列に配されたものに代えて、低段圧縮機の吐出ポートと高段圧縮機の吸入ポートとを結ぶ冷媒配管に中間インジェクション流路85を接続する構成とすることも可能である。
【0063】
図10に示されているように、インジェクション用熱交換器84を通って圧縮機31へと延びる分岐管82の先端は、二股管を介して、中間インジェクション流路85と吸入インジェクション流路87とにつながっている。中間インジェクション開閉弁86が開状態のときには、インジェクション用熱交換器84を通って分岐管82を流れてくる冷媒が中間インジェクション流路85から中間インジェクションポート39に注入され、吸入インジェクション開閉弁88が開状態のときには、分岐管82を流れてくる冷媒が吸入インジェクション流路87から吸入管35に注入されて圧縮機31に吸入される。なお、図10においては制御装置50と冷媒回路20の各機器との接続関係を示す破線の記載は省略している。
【0064】
次に、この変形例に係る冷凍装置10の動作について説明する。なお、以下に説明する各種運転における制御は、機能する制御装置50によって行われる。制御装置50は、運転能力の向上や圧縮機31の吐出温度の低下を目的としている。制御装置50の機器制御部52は、運転周波数が10Hzから40Hzの間の1つの値を取っており、モータ31aのトルクがインバータ制御によって制御されており、凝縮温度が45℃以上になるという凝縮温度条件を満たすときに、中間インジェクションあるいは吸入インジェクションを行う。中間インジェクションとは、凝縮器から蒸発器に向かってメイン冷媒流路21aを流れる冷媒の一部を分岐させ、冷媒ガスを中間インジェクション流路85によって圧縮機31の中間インジェクションポート39に注入することである。吸入インジェクションとは、凝縮器から蒸発器に向かってメイン冷媒流路21aを流れる冷媒の一部を分岐させ、冷媒ガスを吸入インジェクション流路87によって吸入管35に注入して圧縮機31に吸入させることである。中間インジェクションも、吸入インジェクションも、圧縮機31の吐出温度を下げる効果を有する。
【0065】
中間インジェクション制御では、中間インジェクション開閉弁86を開状態にし、吸入インジェクション開閉弁88を閉状態にする。そして、圧縮機31の吐出冷媒の吐出温度に基づいて、インジェクション用電動弁83の開度が制御され、中間インジェクションさせるガス冷媒を湿らせる湿り制御が行われる。すなわち、制御装置50は、中間インジェクションの冷却効果を高めるため、中間インジェクションされるガス冷媒が気液二相のフラッシュガスになるようにインジェクション用電動弁83の開度を制御する。
【0066】
中間インジェクションも吸入インジェクションも行わせないときには、中間インジェクション開閉弁86も吸入インジェクション開閉弁88も閉状態にする。
【0067】
吸入インジェクション制御では、中間インジェクション開閉弁86を閉状態にし、吸入インジェクション開閉弁88を開状態にする。そして、インジェクション用電動弁83の開度が制御され、吸入インジェクションさせるガス冷媒を湿らせる湿り制御が行われる。すなわち、制御装置50は、吸入インジェクションの冷却効果を高めるため、吸入インジェクションされるガス冷媒が気液二相のフラッシュガスになるようにインジェクション用電動弁83の開度を制御する。
【0068】
(4−4)変形例D
上記実施形態及び上記変形例A〜Cでは、冷媒回路20の凝縮温度が45℃以上になるという凝縮温度条件を、機器制御部52が、圧縮機31に吸入される冷媒が湿り状態になるように又は圧縮機31における圧縮途中の冷媒に冷媒回路20中の中間圧冷媒がインジェクションされるように冷媒回路20に設置されている機器を制御するか否かを判断するための所定条件としている。しかし、この所定条件は、凝縮温度条件に代えて、冷媒回路20の高圧側の圧力が所定圧力以上になるという高圧条件、冷媒回路20の高圧側の圧力と低圧側の圧力の差圧が所定差圧以上になるという差圧条件、及び冷媒回路20を流れる冷媒と熱交換される外気の温度が所定温度以上となるという外気温度条件のうちのいずれかを用いてもよい。高圧条件を満たしているか否かは、制御装置50において、例えば吐出管36に圧力センサを設けて圧力センサが検知した冷媒の圧力が所定圧力以上となっているか否かで判断される。差圧条件を満たしているか否かは、制御装置50において、例えば吐出管36に圧力センサを設けて圧力センサが検知した冷媒の圧力と吸入圧力センサ61との圧力の差から冷媒回路20の高圧側の圧力と低圧側の圧力の差圧を算出し、算出された差圧が所定差圧以上となっているか否かで判断される。また、外気温度条件を満たしているか否かは、制御装置50において、室外温度センサ66によって検知される外気の温度が所定温度以上となっているか否かで判断される。
【0069】
(4−5)変形例E
上記実施形態及び上記変形例A〜Dでは、分子式CHで表されるR32単体からなるHFC冷媒が冷媒回路20を循環している場合について説明したが、冷媒回路20を循環する冷媒は、R32単体からなるHFC冷媒には限られない。しかし、冷媒回路20を循環する冷媒は、R32を50重量%よりも多く含む冷媒であることが好ましい。R32を50重量%よりも多く含む冷媒としては、例えば、R32とHFO−1234yfとの混合物、及びR32とHFO−1123との混合物等がある。R32を50重量%よりも多く含む冷媒であって塩素を含まないものは、クロロフルオロカーボンおよびハイドロクロロフルオロカーボン等の他のフッ素系冷媒と比べて、地球温暖化に与える影響が小さく、オゾン層を破壊する効果が小さく、且つ冷凍装置10において比較的高い効率を得やすい。他の冷媒としては、例えばCO、HFO−1234yf、及びHFO−1123がある。
【0070】
(5)特徴
(5−1)
以上説明したように、上述の冷凍装置10では、圧縮機31から吐出される冷媒の温度が過度の高温となり易いときにトルクの制御によるモータの発熱が加わっても、機器制御部52により減圧機構34、室外ファン37、インジェクション用電動弁83、中間インジェクション開閉弁86及び/又は吸入インジェクション用開閉弁88(冷媒回路20を構成する機器の例)を制御することによって圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にするか又は圧縮機31における圧縮途中の冷媒に冷媒回路20中の中間圧冷媒をインジェクションすることができる。圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にするか又は圧縮機31における圧縮途中の冷媒に冷媒回路20中の中間圧冷媒をインジェクションすることによって、圧縮機31から吐出する冷媒の温度を下げることができ、モータ31aを内蔵する圧縮機31のトルク制御を行っても、冷媒温度が過度の高温になるのを防止することができる。
【0071】
(5−2)
上述のように、冷凍装置10の制御装置50において判断する所定条件が凝縮温度条件、高圧条件、差圧条件、外気温度条件の中から選択された1つの条件であれば、所定条件になっているか否かの制御装置50での判断が行い易く、制御装置50の機器制御部52による機器の制御が容易になる。
【0072】
(5−3)
減圧機構34の減圧度合いの変更及び/又は室外ファン37の送風量を制御することにより、圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にしている。つまり、冷媒回路20で汎用される機器である減圧機構34及び/又は室外ファン37を用いることで、運転周波数が10Hz以上40Hz以下の範囲にあり、モータ31aのトルクが制御されており、且つ例えば凝縮温度が45℃以上の条件(所定条件の例)の下において、圧縮機31から吐出する冷媒の温度を下げることができている。このように、圧縮機31のトルク制御を行なう際に冷媒温度が過度の高温になるのを防ぐために新たな機器を冷媒回路20に設置する必要がなくなり、圧縮機31のトルク制御を行う際に冷媒温度が過度の高温になるのを防止するために掛かるコストの増加を抑制できている。
【0073】
(5−4)
上述の冷凍装置10では、圧縮機31から吐出される冷媒の温度を目標吐出温度TTdに一致させれば圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にできるようになっており、圧縮機31から吐出される冷媒の温度を監視しながら機器を制御すればよく、機器制御部52によってトルク制御時に行なわれる、圧縮機31に吸入される冷媒を湿り状態にする制御が容易になっている。
【0074】
(5−5)
R32を50重量%よりも多く含む冷媒が循環する冷媒回路20においては、冷媒がR32を50重量%よりも多く含むために高温高圧になり易いが、トルクの制御によるモータ31aの発熱が加わっても上述の冷凍装置10では、冷媒温度が過度に高温になるのを防止することができ、圧縮機31のモータ31aのトルクを制御し易くなる。R32を50重量%よりも多く含むHFC系冷媒を冷媒回路20で用いることにより、他のフッ素系冷媒と比べて、地球温暖化に与える影響が小さく、オゾン層を破壊する効果が小さく、且つ冷凍装置10において比較的高い効率を得やすくなる。
【符号の説明】
【0075】
10 冷凍装置
20 冷媒回路
31 圧縮機
31a モータ
34 減圧機構
37 室外ファン
50 制御装置
51 インバータ制御部
52 機器制御部
83 インジェクション用電動弁
86 中間インジェクション開閉弁
88 吸入インジェクション用開閉弁
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開平6−75154号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10