特許第6288267号(P6288267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288267
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】軸受構造、および、過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/14 20060101AFI20180226BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   F02B39/14 F
   F02B39/00 J
   F02B39/14 B
   F02B39/00 T
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-525763(P2016-525763)
(86)(22)【出願日】2015年5月20日
(86)【国際出願番号】JP2015064494
(87)【国際公開番号】WO2015186524
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-114155(P2014-114155)
(32)【優先日】2014年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村山 友一
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−270613(JP,A)
【文献】 特開2014−058936(JP,A)
【文献】 特開2006−125485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00 − 39/16
F16C 19/00 − 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを回転自在に支持する軸受構造であって、
ハウジングに形成された軸受孔に収容され、円筒形状の本体部を有するオイルフィルムダンパと、
前記オイルフィルムダンパの前記本体部内に保持され、前記シャフトの回転軸方向に離隔して対向配置される2つの軸受と
を備え、
前記オイルフィルムダンパは、
前記2つの軸受の、互いに対向する対向面間に位置し、
前記オイルフィルムダンパは、
前記本体部の内周面から径方向内側に突出して前記2つの軸受の対向面のそれぞれに隣接する2つの突出部と、
前記突出部から前記本体部の外周面まで貫通するとともに、前記本体部の外周から前記軸受まで潤滑油を導く導油路と、
前記突出部のうち前記軸受に隣接する隣接面とは反対側に設けられ、前記隣接面から前記シャフトの回転軸方向に離隔するにつれて内径が漸増する傾斜面と、
前記本体部のうち2つの前記突出部の間に設けられ、前記本体部内から外部に潤滑油を排出する排油孔と、を備え
前記突出部は、前記隣接面における径方向内側の端部に連続するとともに、前記隣接面を基準にして前記隣接面に隣接する前記軸受が位置する側とは反対側に曲率中心をもつ湾曲部、或いは、前記突出部において最も径方向内側に位置する内周面から前記隣接面に延在する面取り部を有し、
前記湾曲部或いは面取り部に前記導油路が開口していることを特徴とする軸受構造。
【請求項2】
前記導油路は、前記シャフトの回転軸方向に対し傾斜する方向に直線状に延在することを特徴とする請求項1に記載の軸受構造。
【請求項3】
前記導油路は、前記傾斜面に対して平行に延在していることを特徴とする請求項2に記載の軸受構造。
【請求項4】
過給機であって、
軸受孔が形成されたハウジングと、
一端側にタービンインペラが設けられ、他端側にコンプレッサインペラが設けられたシャフトと、
前記軸受孔に収容され、円筒形状の本体部を有するオイルフィルムダンパと、
前記オイルフィルムダンパの前記本体部内に保持され、前記シャフトの回転軸方向に離隔して対向配置され、前記シャフトを回転自在に支持する2つの軸受と
を備え、
前記オイルフィルムダンパは、
前記2つの軸受の、互いに対向する対向面間に位置し、
前記オイルフィルムダンパは、
前記本体部の内周面から径方向内側に突出して前記2つの軸受の対向面のそれぞれに隣接する2つの突出部と、
前記突出部から前記本体部の外周面まで貫通するとともに、前記本体部の外周から前記軸受まで潤滑油を導く導油路と、
前記突出部のうち前記軸受に隣接する隣接面とは反対側に設けられ、前記隣接面から前記シャフトの回転軸方向に離隔するにつれて内径が漸増する傾斜面と、
前記本体部のうち2つの前記突出部の間に設けられ、前記本体部内から外部に潤滑油を排出する排油孔と、
を備え、
前記突出部は、前記隣接面における径方向内側の端部に連続するとともに、前記隣接面を基準にして前記隣接面に隣接する前記軸受が位置する側とは反対側に曲率中心をもつ湾曲部、或いは、前記突出部において最も径方向内側に位置する内周面から前記隣接面に延在する面取り部を有し、
前記湾曲部或いは面取り部に前記導油路が開口していることを特徴とする過給機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの振動を抑えるオイルフィルムダンパを備える軸受構造、および、過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一端にタービンインペラが設けられ他端にコンプレッサインペラが設けられたシャフトが、ベアリングハウジングに回転自在に支持された過給機が知られている。こうした過給機をエンジンに接続し、エンジンから排出される排気ガスによってタービンインペラを回転させるとともに、このタービンインペラの回転によって、シャフトを介してコンプレッサインペラを回転させる。こうして、過給機は、コンプレッサインペラの回転に伴い空気を圧縮してエンジンに送出する。
【0003】
特許文献1には、シャフトを支持する転がり軸受が、オイルフィルムダンパの内側に支持された構成が記載されている。オイルフィルムダンパは、円筒形状であって、過給機のハウジングに形成された孔に嵌め込まれ、孔の内周面とオイルフィルムダンパの外周面との間には潤滑油の油膜が形成される。この油膜によってシャフトの振動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−020461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オイルフィルムダンパには、外周面から内周面まで貫通し、転がり軸受に潤滑油を導く導油路が形成されている。潤滑油は、転がり軸受を潤滑した後、導油路よりも鉛直下方に形成された排油孔を介して、オイルフィルムダンパの外部に排出される。このとき、潤滑油が速やかに排出されずにオイルフィルムダンパ内に留まると、シャフトの回転の抵抗となってメカロスが増したり、潤滑油の流量が低下して冷却性能に影響が出ることから、オイルフィルムダンパの排油性の向上が希求されている。
【0006】
本発明の目的は、排油性を向上することが可能となる軸受構造、および、過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様はシャフトを回転自在に支持する軸受構造であって、ハウジングに形成された軸受孔に収容され、円筒形状の本体部を有するオイルフィルムダンパと、オイルフィルムダンパの本体部内に保持され、前記シャフトの回転軸方向に離隔して対向配置される2つの軸受とを備える。オイルフィルムダンパは、2つの軸受の、互いに対向する対向面間に位置する。オイルフィルムダンパは、本体部の内周面から径方向内側に突出して2つの軸受の対向面のそれぞれに隣接する2つの突出部と、突出部から本体部の外周面まで貫通するとともに、本体部の外周から軸受まで潤滑油を導く導油路と、突出部のうち軸受に隣接する隣接面とは反対側に設けられ、隣接面からシャフトの回転軸方向に離隔するにつれて内径が漸増する傾斜面と、本体部のうち2つの突出部の間に設けられ、本体部内から外部に潤滑油を排出する排油孔と、を備え、前記突出部は、前記隣接面における径方向内側の端部に連続するとともに、前記隣接面を基準にして前記隣接面に隣接する前記軸受が位置する側とは反対側に曲率中心をもつ湾曲部、或いは、前記突出部において最も径方向内側に位置する内周面から前記隣接面に延在する面取り部を有し、前記湾曲部或いは面取り部に前記導油路が開口している。
【0008】
導油路は、シャフトの回転軸方向に対し傾斜する方向に直線状に延在してもよい。
【0009】
導油路は、傾斜面に対して平行に延在していてもよい。
【0010】
突出部は、隣接面における径方向内側の端部に連続するとともに、隣接面を基準にして隣接面に隣接する軸受が位置する側とは反対側に曲率中心をもつ湾曲部を有し、湾曲部に導油路が開口していてもよい。
【0011】
本発明の第2の態様は過給機であって、軸受孔が形成されたハウジングと、一端側にタービンインペラが設けられ、他端側にコンプレッサインペラが設けられたシャフトと、軸受孔に収容され、円筒形状の本体部を有するオイルフィルムダンパと、オイルフィルムダンパの本体部内に保持され、シャフトの回転軸方向に離隔して対向配置され、シャフトを回転自在に支持する2つの軸受とを備える。オイルフィルムダンパは、2つの軸受の、互いに対向する対向面間に位置する。オイルフィルムダンパは、本体部の内周面から径方向内側に突出して2つの軸受の対向面のそれぞれに隣接する2つの突出部と、突出部から本体部の外周面まで貫通するとともに、本体部の外周から軸受まで潤滑油を導く導油路と、突出部のうち軸受に隣接する隣接面とは反対側に設けられ、隣接面からシャフトの回転軸方向に離隔するにつれて内径が漸増する傾斜面と、本体部のうち2つの突出部の間に設けられ、本体部内から外部に潤滑油を排出する排油孔と、を備え、前記突出部は、前記隣接面における径方向内側の端部に連続するとともに、前記隣接面を基準にして前記隣接面に隣接する前記軸受が位置する側とは反対側に曲率中心をもつ湾曲部、或いは、前記突出部において最も径方向内側に位置する内周面から前記隣接面に延在する面取り部を有し、前記湾曲部或いは面取り部に前記導油路が開口している。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排油性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る過給機の概略断面図である。
図2図2(a)は図1における軸受構造を示す図であり、図2(b)は図2(a)の破線内を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るオイルフィルムダンパの斜視図である。
図4図4は、比較例を説明するための図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、本発明の実施形態の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、過給機Cの概略断面図である。以下では、図1に示す矢印Lを過給機Cの左側を示す方向とし、矢印Rを過給機Cの右側を示す方向として説明する。図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備える。この過給機本体1は、ベアリングハウジング2と、ベアリングハウジング2の左側に締結機構3によって連結されるタービンハウジング4と、ベアリングハウジング2の右側に締結ボルト5によって連結されるシールプレート6と、シールプレート6の右側に締結ボルト7によって連結されるコンプレッサハウジング8と、を有する。これらは一体化されている。
【0016】
ベアリングハウジング2のタービンハウジング4近傍の外周面には、突起2aが設けられている。突起2aは、ベアリングハウジング2の径方向に突出している。また、タービンハウジング4のベアリングハウジング2近傍の外周面には、突起4aが設けられている。突起4aは、タービンハウジング4の径方向に突出している。ベアリングハウジング2とタービンハウジング4は、突起2a、4aを締結機構3によってバンド締結して固定される。締結機構3は、突起2a、4aを挟持するカップリング(例えばGカップリング)で構成される。
【0017】
ベアリングハウジング2には、過給機Cの左右方向に貫通する軸受孔2bが形成されている。軸受孔2bには、軸受構造9が設けられている。軸受構造9は、シャフト10を回転自在に支持する。シャフト10の左端部(一端、一端側)にはタービンインペラ11が一体的に固定されている。タービンインペラ11は、タービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、シャフト10の右端部(他端、他端側)にはコンプレッサインペラ12が一体的に固定されている。コンプレッサインペラ12は、コンプレッサハウジング8内に回転自在に収容されている。
【0018】
コンプレッサハウジング8には吸気口13が形成されている。吸気口13は、過給機Cの右側に開口し、エアクリーナ(図示せず)に接続する。また、締結ボルト7によってシールプレート6とコンプレッサハウジング8が連結された状態では、シールプレート6とコンプレッサハウジング8の、互いに対向する対向面が、空気を昇圧するディフューザ流路14を形成する。ディフューザ流路14は、シャフト10の径方向内側から外側に向けて環状に形成されている。ディフューザ流路14は、径方向内側において、コンプレッサインペラ12を介して吸気口13に連通している。
【0019】
また、コンプレッサハウジング8にはコンプレッサスクロール流路15が設けられている。コンプレッサスクロール流路15は環状に形成され、ディフューザ流路14よりもシャフト10の径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路15は、エンジンの吸気口(図示せず)に連通している。また、コンプレッサスクロール流路15は、ディフューザ流路14にも連通している。したがって、コンプレッサインペラ12が回転すると、空気は、吸気口13からコンプレッサハウジング8内に吸引され、コンプレッサインペラ12の翼間を流通する過程において遠心力の作用により増速され、ディフューザ流路14およびコンプレッサスクロール流路15で昇圧されてエンジンの吸気口に導かれる。
【0020】
タービンハウジング4には吐出口16が形成されている。吐出口16は、過給機Cの左側に開口し、排気ガス浄化装置(図示せず)に接続する。また、タービンハウジング4には、流路17と、この流路17よりもタービンインペラ11の径方向外側に位置する環状のタービンスクロール流路18a、18bとが設けられている。タービンスクロール流路18a、18bは、エンジンの排気マニホールド(図示せず)から排出される排気ガスが導かれるガス流入口(図示せず)に連通している。また、タービンスクロール流路18a、18bは、流路17にも連通している。排気ガスは、したがって、ガス流入口からタービンスクロール流路18a、18bに導かれ、更に、流路17およびタービンインペラ11を介して吐出口16に導かれる。この流通過程において、排気ガスはタービンインペラ11を回転させる。
【0021】
本実施形態の過給機Cは、2つのタービンスクロール流路18a、18bを有する。低速域においては、2つのタービンスクロール流路18a、18bのうちの一方にのみ排気ガスが流入する。これにより、タービンインペラ11を回転させるために必要な排気ガスの圧力が確保される。
【0022】
上記のタービンインペラ11の回転力は、シャフト10を介してコンプレッサインペラ12に伝達され、これによりコンプレッサインペラ12は回転する。空気は、このコンプレッサインペラ12の回転力によって昇圧され、エンジンの吸気口に導かれる。
【0023】
図2(a)及び図2(b)は、軸受構造9を説明するための説明図である。図2(a)は、図1における軸受構造9を示し、図2(b)は、図2(a)の破線内を示す。また、図3は、オイルフィルムダンパ19の斜視図である。図2(a)に示すように、軸受構造9においては、上記のベアリングハウジング2に形成された軸受孔2bにオイルフィルムダンパ19が収容される。
【0024】
図3に示すように、オイルフィルムダンパ19は、円筒形状の本体部19aを有する。本体部19aの外周面19bには突起19c、19dが設けられている。突起19c、19dは、本体部19aの径方向外側に向かって突出し、環状に形成されている。突起19c、19dは、シャフト10の回転軸方向(以下、単に軸方向と称す)における当該シャフト10の両端側にそれぞれ設けられている。これら環状突起19c、19dが、軸受孔2bの内周面と対向する。その結果、環状突起19c、19dと軸受孔2bの内周面との間に油膜が形成され、この油膜によってシャフト10の振動が抑制される。
【0025】
図2(a)に示すように、2つの環状突起19c、19dの間には、テーパ面19eが形成されている。テーパ面19eは軸方向に対して傾斜している。本体部19aのテーパ面19eには導油路19fが形成されている。導油路19fはテーパ面19eに垂直に延伸し、本体部19aの内部に連通している。
【0026】
図2(a)に示すように、導油路19fは、本体部19aの内部に収容された転がり軸受(以下、説明の便宜上、軸受と称する)20に潤滑油を導く。軸受20は、本体部19aの内部におけるシャフト10の軸方向の両端側にそれぞれ1つずつ収容されている。2つの軸受20は、軸方向に離隔して設けられ、外輪20aの面(対向面)20eが、軸方向において互いに対向するように配置される。
【0027】
軸受20は、外輪20aと、外輪20aよりも小径の内輪20bと、を有し、外輪20aと内輪20bの間に挟まれた複数のボール20cと、複数のボール20cを保持する保持器20dとを有する。各ボール20cは、外輪20a(内輪20b)の周方向に設けられ、保持器20dによって保持されている。
【0028】
外輪20aは、オイルフィルムダンパ19に固定され、内輪20bはシャフト10と一体回転する。このとき、ボール20cが転がることで、外輪20aおよび内輪20bとの摩擦抵抗を抑え、外輪20aと内輪20bの相対回転が可能となっている。こうして、シャフト10は、転がり軸受20によって回転自在に支持されている。
【0029】
2つの内輪20bの間には、規制部21が配されている。規制部21は環状(管状)に形成された部材である。規制部21には、シャフト10が挿通される。また、規制部21における軸方向の両端は、それぞれ内輪20bに当接している。規制部21は、内輪20bと一体に回転しつつ、2つの内輪20bの近接方向の移動を規制する。
【0030】
オイルフィルムダンパ19の内周面19gには、2つの突出部19h、19hが形成されている。各突出部19hは、オイルフィルムダンパ19の径方向内側に突出し、環状に形成されている。2つの突出部19hは、2つの軸受20、20における外輪20a、20aの対向面20e、20e間に位置する。各突出部19hは、近接する軸受20の、外輪20aの対向面20eに隣接する。
【0031】
すなわち、2つの軸受20、20は、本体部19aの両端側のそれぞれから、本体部19aの内部に、突出部19hに突き当たるまで嵌め込まれている。また、導油路19fは、突出部19hにおける径方向内側の先端から、当該突出部19hを通じて、テーパ面19eまで貫通している。
【0032】
図2(a)に示すように、突出部19hは、軸受20と隣接する隣接面19iと反対側に形成された傾斜面19jを有する。傾斜面19jの内径は、隣接面19iから軸方向に離隔するにつれて漸増する。本実施形態では、傾斜面19jは、シャフト10の回転軸を含む断面において導油路19fの延在方向に平行である。
【0033】
図2(b)に示すように、突出部19hは、隣接面19iにおける径方向内側の端部(内径側端部)19kに連続するとともに、隣接面19iを基準にして隣接面19iに隣接する軸受20が位置する側とは反対側に曲率中心をもつ湾曲部19lを有する。導油路19fは、湾曲部19lに開口し、湾曲部19lの曲率中心を通る。導油路19fは、軸受20における内輪20bの外周面20fに向かって潤滑油を噴出する。
【0034】
図2(a)に示すように、2つの突出部19h、19hの間には排油孔19mが設けられている。図2(a)中、上側は鉛直上側、下側は鉛直下側に大凡一致しており、排油孔19mは導油路19fよりも鉛直下側に形成されている。潤滑油は、導油路19fから軸受20に給油され、その一部が、ボール20cなどに当たって跳ね返り、排油孔19mを介して、本体部19a内から外部に排出される。
【0035】
図4は、比較例を説明するための説明図であり、上述した実施形態における図2(a)に対応する部位の断面を示す。図4に示すように、比較例においては、突出部hが、一方の軸受20から他方の軸受20まで、軸方向に延在している。そのため、例えば、過給機の姿勢によっては、潤滑油が、導油路fから給油され、ボール20cなどに当たって跳ね返った後、排油孔kに向かって流れにくくなり、排油性が低下してしまうおそれがある。
【0036】
本実施形態では、図2(a)及び図2(b)に示すように、2つの突出部19h、19hの間が離隔しており、それぞれの突出部19hには傾斜面19jが設けられている。そのため、潤滑油は、導油路19fから給油され、ボール20cなどに当たって跳ね返った後、突出部19hの傾斜面19jに導かれて、速やかに排油孔19mから排出される。このように、軸受構造9においては排油性を向上することが可能となる。
【0037】
また、導油路19fは、軸方向に対し傾斜する方向に直線状に延在し、テーパ面19eに対し垂直である。従って、1回の孔開け加工によって、導油路19fを形成することが可能となり、加工コストを低減することができる。
【0038】
また、導油路19fは、傾斜面19jに対して平行に延在している。従って、傾斜面19jは、導油路19fに沿って、強度を維持できるぎりぎりの厚さまで突出部19hを削った形状とすることができる。即ち、軸方向における突出部19hの厚さを、強度の許す限り薄くできる。そのため、排油のための空間をより大きく確保して排油性を向上するとともに、軽量化を図ることができる。また、シャフト10の径方向外側に空間を極力大きく確保しているので、シャフト10の回転に伴う潤滑油との摩擦抵抗を緩和することができる。その結果、軸受のメカニカルロスを低減することができる。
【0039】
また、導油路19fは、湾曲部19lに開口していることから、拡散を抑えつつ、軸受20の所定位置(例えば、本実施形態では、内輪20bの外周面20f)に向けて集中的に潤滑油を噴出させることができる。
【0040】
図5(a)及び図5(b)は、本実施形態の変形例を説明するための説明図であり、上述した実施形態における図2(a)の破線内の部分に対応する断面を示す。図5(a)に示すように、第1変形例においては、上述した実施形態のような湾曲部19lが設けられていない。また、突出部19hは、最も径方向内側に位置する内周面としての最内径部19nを有する。第1変形例の導油路29fは、突出部19hにおいて、隣接面19iと最内径部19nのそれぞれにまたがって開口している。
【0041】
この場合も、上述した実施形態と同様に、拡散を抑えつつ、軸受20の所定位置に向けて潤滑油を集中的に噴出させることができる。
【0042】
図5(b)に示すように、第2変形例においては、湾曲部19lの代わりに面取り部39lが設けられている。面取り部39lは、シャフト10の回転軸を含む断面(例えば、図5(b)に示す断面)において、直線形状である。
【0043】
面取り部39lは、導油路39fに対して垂直になっていない。換言すれば、導油路39fは、面取り部39lに対して垂直に延在していない。つまり、導油路39fは、面取り部39lの垂直方向に対して傾斜していてもよい。
【0044】
上述した実施形態、第1変形例、第2変形例のいずれにおいても、テーパ面19eに対して垂直な導油路19f、29f、39fを形成することで、テーパ面19e側から孔開け加工を容易に遂行できる。また、軸受20側の開口面(湾曲部19l、面取り部39lなど)の傾斜を、軸受20への潤滑油の供給態様に応じて、微調整してもよい。
【0045】
上述した実施形態および変形例では、導油路19f、29f、39fは、傾斜面19jに対して平行に延在している場合について説明したが、傾斜面19jに対して傾斜していてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態においては、導油路19fは、湾曲部19lの曲率中心を通る場合について説明したが、湾曲部19lの曲率中心を通らずともよい。この場合、実施形態、第1変形例、第2変形例と同様、拡散を抑えつつ、軸受20の所定位置に向けて潤滑油を集中的に噴出させることができる。
【0047】
また、上述した第2変形例においては、導油路39fは、面取り部39lに対して垂直に延在していない場合について説明したが、面取り部39lに対して垂直に延在していてもよい。この場合、上述した実施形態と同様、拡散を抑えつつ、軸受20の所定位置に向けて潤滑油を集中的に噴出させることができる。
【0048】
また、上述した第1変形例では、湾曲部19lや面取り部39lを設けず、導油路29fは、突出部19hのうち、隣接面19iと最内径部19nの両方に開口する場合について説明した。しかし、導油路29fは、隣接面19iと最内径部19nのいずれか一方にのみ開口していてもよい。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、シャフトの振動を抑えるオイルフィルムダンパを備える軸受構造、および、過給機に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5