(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の紡糸装置では均一性に優れた複合糸を得ることができるが、紡糸口金の紡糸孔の数が少ないため生産性は高いとは言えない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い生産性で紡糸することのできる紡糸口金、紡糸装置、鞘芯型複合紡糸装置、およびサイドバイサイド型複合紡糸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る紡糸口金は、複数の紡糸孔が形成されている紡糸口金であって、前記紡糸孔の数は3500個以上、10000個以下であり、前記紡糸孔は放射状に並列に形成されていることを特徴とする。該構成により、高い生産性で紡糸することのできる紡糸口金を提供することができる。
【0008】
本発明に係る紡糸口金は、前記紡糸孔が、前記紡糸口金内の所定の点を中心とする径の異なる8以上、25以下の同心円の円周上に位置することが好ましい。
【0009】
本発明に係る紡糸口金は、隣接する前記円周における前記紡糸孔の数が同じであることが好ましい。
【0010】
本発明に係る紡糸口金は、隣接する前記円周における前記紡糸孔が、それぞれ同一の直線上に位置することが好ましい。
【0011】
本発明に係る紡糸口金は、隣接する前記直線のなす角度が0.5°以上、2°以下であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る紡糸口金は、隣接する前記円周の放射方向の間隔が1mm以上、10mm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る紡糸口金は、前記紡糸孔が、前記所定の点から放射方向に80mm以上、250mm以下離れた領域に位置することが好ましい。
【0014】
本発明に係る紡糸口金は、前記紡糸孔一つ当りの開口面積が、0.015mm
2以上、0.8mm
2以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る紡糸口金は、樹脂が吐出される吐出面の外形が、円形または円環形であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る紡糸口金は、前記円環形の内径が、前記円環形の外径の1/10以上、6/10以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る紡糸口金は、内側壁に溝を有する貫通孔と、溝を有さない貫通孔を有しており、前記貫通孔一つ当りの開口面積は、前記紡糸孔一つ当りの開口面積よりも大きいことが好ましい。
【0018】
本発明に係る紡糸口金は、樹脂が吐出される吐出面とは反対側の面には、凹部が形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る紡糸口金は、樹脂が吐出される吐出面とは反対側の面には、凹部が形成されており、前記紡糸口金内の所定の点から前記凹部までの最短距離は、前記所定の点から前記貫通孔までの最長距離よりも長いことが好ましい。
【0020】
本発明には、前記紡糸口金を備える紡糸装置も含まれる。
【0021】
本発明には、前記紡糸口金を備える鞘芯型複合紡糸装置も含まれる。
【0022】
本発明には、前記紡糸口金を備えるサイドバイサイド型複合紡糸装置も含まれる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記構成により高い生産性で紡糸することのできる紡糸口金、紡糸装置、鞘芯型複合紡糸装置、およびサイドバイサイド型複合紡糸装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、高い生産性で紡糸することのできる紡糸口金を提供するために鋭意検討した。その結果、複数の紡糸孔が形成されている紡糸口金であって、前記紡糸孔の数は3500個以上、10000個以下であり、前記紡糸孔は放射状に並列に形成された紡糸口金であれば、所期の目的が達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0026】
以下、例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0027】
図1は、紡糸口金の平面図を示す。
図2は、
図1の一部の拡大図を示す。
図3は、
図1のA−A断面図の拡大図を示す。
図4は、
図3の一部の拡大図を示す。
図1中、円状の破線は、紡糸孔が形成されているおおよその位置を示す想像線であり、円状の点線は、紡糸原液導入面に形成されている凹部の位置を示す想像線である。
図2中、直線状の破線は、
図1の紡糸口金の所定の点Pから放射方向に伸びる想像線である。
図3中、紡糸孔の記載は省略している。
【0028】
図1、2、4に示す通り、本発明の紡糸口金1には、複数の紡糸孔2が形成されている。紡糸孔2の数は3500個以上、10000個以下である。更に
図2に示す通り、紡糸孔2は放射状に並列に形成されている。
【0029】
紡糸孔2の数が3500個以上であれば高い生産性で紡糸し易くなる。紡糸孔2の数は好ましくは3800個以上、より好ましくは4000個以上、更に好ましくは4300個以上である。一方、紡糸孔2の数が10000個以下であれば、紡糸口金1の強度を向上し易くなる。紡糸孔2の数は好ましくは8000個以下、より好ましくは6000個以下である。
【0030】
紡糸孔2が放射状に並列に形成されていることにより、紡糸口金1より紡出された紡出糸の束に対して外部から内部に向けて冷却風を吹き付けて冷却する場合に、冷却風を内部まで送風し易くすることができる。
図2は紡糸孔2が放射状に並列に形成される一例を示すものであり、
図2では、紡糸孔2は、紡糸口金1の所定の点Pから放射方向に伸びる直線上に位置しているが、所定の点Pとは異なる点から放射方向に伸びる直線上に位置する紡糸孔が含まれていても良い。
【0031】
所定の点Pが紡糸口金1の中心点に近い程、紡糸口金1のサイズを低減し易くすることができる。そのために所定の点Pは、紡糸口金1の中心点から4cm以内の範囲に位置することが好ましく、中心点から2cm以内の範囲に位置することがより好ましく、中心点に位置することが最も好ましい。
【0032】
図1に示す通り、紡糸孔2は、紡糸口金1内の所定の点Pを中心とする径の異なる8以上、25以下の同心円の円周上に位置することが好ましい。紡糸孔2が8以上の径の異なる同心円の円周上に位置することにより、所望の数の紡糸孔2を確保し易くすることができ、高い生産性で紡糸し易くすることができる。同心円の数は、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、更により好ましくは13以上である。一方、紡糸孔2が25以下の径の異なる同心円の円周上に位置することにより、紡糸口金1の強度を向上し易くすることができる。同心円の数は、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更により好ましくは16以下である。
【0033】
隣接する円周における紡糸孔2の数は同じであることが好ましい。これにより、2種以上の紡糸原液を紡糸孔2に均等に分配し易くすることができる。各円周における紡糸孔2の数は、それぞれ好ましくは200個以上、500個以下である。各円周における紡糸孔2の数が200個以上であることにより、所望の数の紡糸孔2を確保し易くすることができ、高い生産性で紡糸し易くすることができる。より好ましくは300個以上、更に好ましくは340個以上である。一方、各円周における紡糸孔2の数が500個以下であることにより、紡糸口金1の強度を向上し易くすることができる。より好ましくは400個以下、更に好ましくは380個以下である。また各円周における紡糸孔2の間隔は等間隔であることが好ましい。これにより、2種以上の紡糸原液を紡糸孔2に均等に分配し易くすることができる。
【0034】
隣接する円周における紡糸孔2は、それぞれ同一の直線上に位置することが好ましい。これにより冷却風を内部まで送風し易くすることができる。紡糸孔2が、それぞれ同一の直線上に位置する一例として、
図2に示すように紡糸孔2が所定の点Pから放射方向に伸びる直線上に位置する例が挙げられる。
【0035】
隣接する直線のなす角度は0.5°以上、2°以下であることが好ましい。隣接する直線のなす角度が0.5°以上であることにより、紡糸孔2間の距離を確保することができ、紡出糸の切断や破損を防止し易くすることができる。隣接する直線のなす角度は、より好ましくは0.7°以上、更に好ましくは0.9°以上である。一方、隣接する直線のなす角度が2°以下であることにより、高い生産性で紡糸し易くすることができる。隣接する直線のなす角度は、より好ましくは1.5°以下、更に好ましくは1.2°以下である。
【0036】
隣接する円周の放射方向の間隔は1mm以上、10mm以下であることが好ましい。放射方向の間隔が1mm以上であることにより、紡糸孔2間の距離を確保し易くすることができる。隣接する円周の放射方向の間隔は、より好ましくは2mm以上、更に好ましくは4mm以上である。一方、放射方向の間隔が10mm以下であることにより、高い生産性で紡糸し易くすることができる。隣接する円周の放射方向の間隔は、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは6mm以下である。
【0037】
隣接する円周の放射方向の間隔は等間隔であることが好ましい。隣接する円周の放射方向の間隔が等間隔であることにより、2種以上の紡糸原液を紡糸孔2に均等に分配し易くすることができる。
【0038】
紡糸孔2は、所定の点Pから放射方向に80mm以上、250mm以下離れた領域に位置することが好ましい。紡糸孔2が所定の点Pから放射方向に80mm以上離れていることにより、所定の点P近傍に後述する空洞4を形成し易くすることができる。より好ましくは100mm以上、更に好ましくは120mm以上である。一方、紡糸孔2が所定の点Pから放射方向に250mm以下離れていることにより、紡糸口金1のサイズを低減し易くすることができる。より好ましくは220mm以下、更に好ましくは200mm以下である。
【0039】
樹脂が吐出される吐出面5における紡糸孔2一つ当りの開口面積は、特に限定されないが、好ましくは0.015mm
2以上、0.8mm
2以下、より好ましくは0.025mm
2以上、0.7mm
2以下、更に好ましくは0.05mm
2以上、0.5mm
2以下、更により好ましくは0.08mm
2以上、0.3mm
2以下である。
【0040】
吐出面5とは反対側の面であって、紡糸原液が導入される紡糸原液導入面6における紡糸孔2一つ当りの開口面積は、好ましくは、吐出面5における紡糸孔2一つ当りの開口面積の2倍以上、150倍以下、より好ましくは4倍以上、100倍以下、更に好ましくは10倍以上、70倍以下、更により好ましくは20倍以上、50倍以下である。
【0041】
吐出面5における紡糸孔2の開口面の形状は、特に限定されないが、好ましくは円形、多角形、U字形、W字形、矢印形、または扁平形である。
【0042】
紡糸孔2は、
図4に示すように紡糸孔2の軸方向の中心から紡糸原液導入面6に向かって太くなる拡径部7を有することが好ましい。これにより2種以上の紡糸原液を紡糸孔2に導入し易くすることができる。また紡糸孔2は、
図4に示すように紡糸孔2の軸方向の中心から吐出面5に向かって細くなる縮径部8を有することが好ましい。これにより紡出糸を所望の径に制御し易くすることができる。
【0043】
吐出面5の外形は、円形または円環形であることが好ましく、円環形であることがより好ましい。
図1では吐出面5の外形は円環形になっている。また
図1に示す通り、所定の点P近傍に空洞4を形成することにより、紡糸口金1より紡出された紡出糸の束の内部に向けて冷却風を吹き付けて冷却する場合に、冷却風を空洞4から吹き抜けさせることができるため効率的に冷却し易くすることができる。更に、紡糸口金1を軽量化することができる。
【0044】
円環形の内径は、円環形の外径の1/10以上、6/10以下であることが好ましい。円環形の内径が、円環形の外径の1/10以上であることより、冷却風が吹き抜け易くなる。より好ましくは2/10以上、更に好ましくは3/10以上である。一方、円環形の内径が、円環形の外径の6/10以下であることより、紡糸口金1の強度を向上し易くすることができる。より好ましくは5/10以下、更に好ましくは4/10以下である。
【0045】
円環形の外径は、200mm以上、600mm以下であることが好ましい。円環形の外径が200mm以上であることにより、所望の数の紡糸孔2を確保し易くすることができる。より好ましくは300mm以上、更に好ましくは350mm以上である。一方、円環形の外径が600mm以下であることにより、紡糸口金1を軽量化し易くすることができる。より好ましくは500mm以下、更に好ましくは450mm以下である。
【0046】
紡糸原液導入面6における空洞4の形状は、特に限定されないが、好ましくは円形または多角形であり、より好ましくは円形である。紡糸原液導入面6における空洞4の径は、円環形の外径の1/20以上、5/10以下であることが好ましい。空洞4の径が、円環形の外径の1/20以上であることより、冷却風が吹き抜け易くなる。より好ましくは1/10以上、更に好ましくは2/10以上である。一方、空洞4の径が、円環形の外径の5/10以下であることより、紡糸口金1の強度を向上し易くすることができる。より好ましくは4/10以下、更に好ましくは3/10以下である。
【0047】
紡糸口金1は、内側壁に溝を有する貫通孔3a(以下、溝貫通孔3aと呼ぶ)と、溝を有さない貫通孔3b(以下、非溝貫通孔3bと呼ぶ)を有していることが好ましい。溝貫通孔3a、非溝貫通孔3bは、紡糸原液導入面6における一つ当りの開口面積が、前記紡糸孔一つ当りの開口面積よりも大きいものである。
【0048】
溝貫通孔3aは内側壁に溝を有するものであり、内側壁に溝が形成されていることにより、溝貫通孔3aにネジ、ボルト等の固定部材を挿入して紡糸装置に固定し易くすることができる。溝は螺旋状であることが好ましい。
【0049】
溝貫通孔3aは、
図1に示す通り、同一円周上に等間隔に形成されていることが好ましい。これにより、ネジ、ボルト等を用いて紡糸口金1を固定する場合に、押し圧を均一にし易くすることができる。
【0050】
溝貫通孔3aの数は、好ましくは2個以上、30個以下、より好ましくは4個以上、20個以下、更に好ましくは6個以上、10個以下である。
【0051】
非溝貫通孔3bは溝を有さない貫通孔であり、内側壁に溝が形成されていないことにより金属棒等の棒状体を挿入し易くすることができる。紡糸終了後には、紡糸原液導入面6に樹脂が固着して紡糸口金1を紡糸装置から取り外し難い場合があるが、棒状体を挿入し易くすることにより固着した樹脂を取り除き易くなって、その結果、紡糸口金1を取り外し易くすることができる。非溝貫通孔3bの内側壁は平滑であることが好ましい。
【0052】
非溝貫通孔3bの数は、好ましくは2個以上、30個以下、より好ましくは4個以上、20個以下、更に好ましくは6個以上、10個以下である。
【0053】
紡糸原液導入面6における溝貫通孔3a、非溝貫通孔3bの一つ当りの開口面積は、好ましくは50mm
2以上、500mm
2以下、より好ましくは100mm
2以上、400mm
2以下、更に好ましくは150mm
2以上、300mm
2以下である。
【0054】
紡糸原液導入面6における溝貫通孔3a、非溝貫通孔3bの開口面の形状は、特に限定されないが、好ましくは円形または多角形であり、より好ましくは円形である。
【0055】
溝貫通孔3a、非溝貫通孔3bは、所定の点Pから放射方向におおよそ50mm以上、120mm以下離れた領域に形成されることが好ましく、70mm以上、110mm以下離れた領域に形成されることがより好ましく、90mm以上、100mm以下離れた領域に形成されることが更に好ましい。
【0056】
紡糸原液導入面6には、凹部9が形成されていることが好ましい。凹部9に位置決めピンを挿入すること等により、紡糸孔2と分配板の分配孔との位置を合わせ易くすることができる。
【0057】
所定の点Pから凹部9までの最短距離は、所定の点Pから貫通孔(溝貫通孔3a、非溝貫通孔3b)までの最長距離よりも長いことが好ましい。このように凹部9が所定の点Pから見て溝貫通孔3a、非溝貫通孔3bよりも遠い位置に形成されていることにより、凹部9や位置決めピンを外部から見易くすることができるため、紡糸口金1を取り付け易くすることができる。一方、所定の点Pから凹部9までの最長距離は、所定の点Pから紡糸孔2までの最短距離より短いことが好ましい。このように凹部9が所定の点Pから見て紡糸孔2よりも近い位置に形成されていることにより、紡糸孔2を等間隔に形成し易くすることができる。
【0058】
凹部9の数は、好ましくは2個以上、20個以下、より好ましくは4個以上、15個以下、更に好ましくは6個以上、10個以下である。
【0059】
凹部9が2以上形成されている場合、所定の点Pを中心として、凹部9はそれぞれ点対称の位置に形成されていても良いし、点対称の位置に形成されていなくても良い。
図1に示す通り、所定の点Pを中心として、点対称の位置に形成されている凹部9と、点対称の位置に形成されていない凹部9を含んでいることが好ましい。これにより、例えば点対称の位置の凹部9を用いれば紡糸孔2と分配板の分配孔との位置を正確に合わせることができる一方で、点対称ではない位置の凹部9を用いれば紡糸孔2と分配板の分配孔との位置を僅かにずらすことができる等、用途に応じた使い分けが可能となり、紡糸口金1を種々の用途に用い易くすることができる。
【0060】
紡糸原液導入面6における凹部9の形状は、特に限定されないが、好ましくは円形または多角形であり、より好ましくは円形である。凹部9の立体形状は、特に限定されないが、円柱状、多角柱状等が挙げられる。好ましくは円柱状である。
【0061】
凹部9の紡糸原液導入面6における凹部9一つ当りの開口面積は、好ましくは10mm
2以上、130mm
2以下、より好ましくは30mm
2以上、100mm
2以下、更に好ましくは40mm
2以上、80mm
2以下である。
【0062】
凹部9の深さは、特に限定されないが、好ましくは5mm以上、80mm以下、より好ましくは20mm以上、60mm以下、更に好ましくは30mm以上、50mm以下である。
【0063】
紡糸口金1の厚さは、特に限定されないが、好ましくは10mm以上、100mm以下、より好ましくは20mm以上、80mm以下、更に好ましくは30mm以上、60mm以下である。
【0064】
紡糸口金1の素材は、例えばステンレス鋼、超硬合金等が挙げられる。ステンレス鋼として、SUS316、SUS630等が挙げられる。超硬合金として、炭化タングステン基超硬合金が挙げられる。炭化タングステン基超硬合金は、鉄、コバルト、ニッケル、チタン、及びクロムよりなる群より選択される少なくとも1種の金属を用いて炭化タングステンを焼結した合金である。
【0065】
紡糸口金1の表面には、耐腐食性を向上したり、樹脂の離型性を向上するために蒸着膜が形成されていても良い。蒸着膜の素材として、ダイヤモンドライクカーボン等のカーボン系化合物;窒化チタンホウ素、窒化クロムホウ素、窒化ケイ素ホウ素等のホウ素系化合物;窒化クロム等のクロム系化合物;炭窒化チタン、窒化チタン、窒化チタンアルミ等のチタン系化合物等が挙げられる。
【0066】
蒸着は、PVD法(Phisical Vapor Deposition Process:物理的気相蒸着)、CVD法(Chemical Vapor Deposision Process:化学的気相蒸着)等の方法により行うことができる。PVD法は蒸着時の処理温度が低いため好ましい。
【0067】
本発明には、紡糸口金1を備える紡糸装置も含まれる。紡糸口金1の数は、好ましくは10個以上、20個以下である。紡糸口金1を10個以上備えることにより高い生産性で紡糸し易くすることができる。紡糸口金1の数は、より好ましくは12個以上、更に好ましくは14個以上である。一方、紡糸口金1の数を20個以下とすることにより、紡糸装置のサイズを低減し易くすることができる。紡糸口金1の数は、より好ましくは18個以下、更に好ましくは16個以下である。
【0068】
紡糸装置として、乾式紡糸装置、湿式紡糸装置、溶融紡糸装置が挙げられる。このうち溶融紡糸装置が好ましい。溶融紡糸装置として、単成分紡糸装置、鞘芯型複合紡糸装置、サイドバイサイド型複合紡糸装置が挙げられる。
【0069】
鞘芯型複合紡糸装置は2種以上の紡糸原液を用いて鞘芯型の紡糸を行う装置である。鞘芯型複合紡糸装置を用いて芯成分を鞘成分で被覆することにより、単独繊維よりも優れた風合い、嵩高性、強度、弾性率、耐摩耗性等の特性が得られ易くなる。鞘芯型複合紡糸装置は、紡糸口金1を備える他、2種以上の紡糸原液を紡糸口金1の紡糸孔2に均等に分配することができる分配板を備えることが好ましい。
【0070】
サイドバイサイド型複合紡糸装置は2種以上の紡糸原液を用いてサイドバイサイド型の紡糸を行う装置である。サイドバイサイド型複合紡糸装置を用いてサイドバイサイド型の紡糸を行うことにより、単独繊維よりも優れた捲縮性やストレッチ性等の特性が得られ易くなる。サイドバイサイド型複合紡糸装置は、紡糸口金1を備える他、2種以上の紡糸原液を紡糸口金1の紡糸孔2に均等に分配することができる分配板を備えることが好ましい。
【解決手段】複数の紡糸孔が形成されている紡糸口金であって、前記紡糸孔の数は3500個以上、10000個以下であり、前記紡糸孔は放射状に並列に形成されていることを特徴とする紡糸口金。