特許第6288362号(P6288362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6288362
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】鋼矢板の打設方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/04 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   E02D13/04
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-180601(P2017-180601)
(22)【出願日】2017年9月20日
【審査請求日】2017年10月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 直樹
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−207371(JP,A)
【文献】 特開2005−171596(JP,A)
【文献】 特開2002−227190(JP,A)
【文献】 特開昭51−086209(JP,A)
【文献】 特開2016−135987(JP,A)
【文献】 特開平04−080418(JP,A)
【文献】 実開昭54−112311(JP,U)
【文献】 中国特許出願公開第1869340(CN,A)
【文献】 特開平07−197464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−13/10
E02D 5/00−5/20
E02B 3/04−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の両方の端部に継手部を備えた鋼矢板を、前記継手部でお互いに連結させて一列状に複数打設する鋼矢板の打設方法であって、
一列状に複数打設する鋼矢板のうち、それらの両端部に位置する鋼矢板をそれぞれ含むとともに、それらの両端部から前記一列状の中央部に向かってそれぞれ所定の枚数の鋼矢板を含む2つの端部領域の鋼矢板を他の領域より先行して打設する先行打設工程と、
前記先行打設工程で先行して打設された前記鋼矢板の長さよりも長さが短く、かつ、幅方向の両方の端部に継手部を備えたガイド矢板を、前記2つの端部領域の間に位置する中央部領域に、前記ガイド矢板の前記継手部でお互いに連結させて地盤上に一列状に複数配置するとともに、一列状に複数配置する前記ガイド矢板のうち両端部に配置する前記ガイド矢板の前記継手部を、前記2つの端部領域に先行して打設された前記鋼矢板のうち前記一列状の中央部に向かう側の端部の鋼矢板の前記継手部にそれぞれ連結させて配置するガイド矢板配置工程と、
前記ガイド矢板配置工程で配置した前記複数のガイド矢板を、幅方向断面が前記ガイド矢板と略同一である本設の鋼矢板に順次置き換えて打設する置き換え打設工程と、
を有し、
前記先行打設工程では前記ガイド矢板は用いずに前記鋼矢板を打設し、
前記ガイド矢板配置工程で配置した前記ガイド矢板は地盤上に配置するだけで打設はしないことを特徴とする鋼矢板の打設方法。
【請求項2】
前記一列状に複数打設する鋼矢板の幅方向断面は、略同一であることを特徴とする請求項1に記載の鋼矢板の打設方法。
【請求項3】
前記置き換え打設工程においては、前記ガイド矢板配置工程で配置した前記複数のガイド矢板のうちの一部のガイド矢板であってお互いに隣り合っていないガイド矢板を選んで前記本設の鋼矢板に置き換えて打設する工程が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼矢板の打設方法。
【請求項4】
前記置き換え打設工程においては、前記ガイド矢板配置工程で配置した前記複数のガイド矢板のうちの一部のガイド矢板であって1つ飛ばしに配置されたガイド矢板を選んで前記本設の鋼矢板に置き換えて打設する工程が含まれていることを特徴とする請求項3に記載の鋼矢板の打設方法。
【請求項5】
前記置き換え打設工程においては、前記ガイド矢板配置工程で配置した前記複数のガイド矢板のうちの一部のガイド矢板であって2つ飛ばしに配置されたガイド矢板を選んで前記本設の鋼矢板に置き換えて打設する工程が含まれていることを特徴とする請求項3に記載の鋼矢板の打設方法。
【請求項6】
前記一列状に複数打設する鋼矢板の両端部の位置は、予め決められていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鋼矢板の打設方法。
【請求項7】
前記鋼矢板の幅方向断面は、略直線形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の鋼矢板の打設方法。
【請求項8】
前記一列状に複数打設する鋼矢板のうちの少なくとも一部の鋼矢板は、曲線状に列を形成していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の鋼矢板の打設方法。
【請求項9】
前記鋼矢板の前記継手部の遊びが8mm以上12mm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の鋼矢板の打設方法。
【請求項10】
前記ガイド矢板が前記ガイド矢板配置工程で地盤に配置された状態において、前記ガイド矢板の上端の高さ位置は、当該ガイド矢板に対して作業を行う作業者の足場面よりも1m以上2m以下だけ高い位置であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の鋼矢板の打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板の打設方法に関し、詳細には、本設の鋼矢板ではないガイド矢板を用いることにより打設精度と施工効率を向上させた鋼矢板の打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク矢板ジャケット工法は、図24に示されるように、ジャケット式桟橋300と土留め壁100を一体化した岸壁の構築工法であるが、土留め壁100を、直線形鋼矢板102を円弧(アーク)状に打設してなる鋼矢板セル式土留めのアーク矢板104と、サドルプレート106によって構成している(例えば、非特許文献1参照)。アーク矢板104とサドルプレート106で構成される土留め壁100の施工においては、アーク矢板104を確実に閉合することが必要であり、そのためには、個々の直線形鋼矢板102を高い精度で打設することが必要である(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
また、非特許文献2においては、「左右から最終根入れまで打ち下げて、残りの中央部の数枚を交互に屏風打設して打ち下げる方法」(具体的には、両端のサドルプレートから左右4枚ずつ中央に向けて打設した後、中央部で残り5枚の矢板を建て込み、両端の矢板から順に少しずつ打ち下げる作業を繰り返し、所定の深度まで打ち込む屏風打ちを行う方法。)を採用することで、アーク矢板104を円滑に閉合できた旨が報告されている。
【0004】
しかしながら、アーク矢板ジャケット工法において、アーク矢板をより高い打設精度で打設するとともに、より高い施工効率を実現することがさらに求められている。
【0005】
また、アーク矢板ジャケット工法に限らず、鋼矢板を打設する工事全般において、鋼矢板の打設精度と施工効率を向上させることが望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】高橋久雄、外5名、「アーク矢板ジャケット工法におけるアーク矢板打設の試験施工」、平成28年度土木学会全国大会 第71回年次学術講演会 講演概要集、平成28年9月、VI-628、p.1255 - 1266
【非特許文献2】高橋久雄、外5名、「アーク矢板ジャケット工法におけるアーク矢板土留めの本施工」、平成28年度土木学会全国大会 第71回年次学術講演会 講演概要集、平成28年9月、VI-627、p. 1253 - 1254
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、打設精度と施工効率を向上させた鋼矢板の打設方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の鋼矢板の打設方法により、前記課題を解決したものである。
【0009】
即ち、本発明に係る鋼矢板の打設方法は、幅方向の両方の端部に継手部を備えた鋼矢板を、前記継手部でお互いに連結させて一列状に複数打設する鋼矢板の打設方法であって、一列状に複数打設する鋼矢板のうち、それらの両端部に位置する鋼矢板をそれぞれ含むとともに、それらの両端部から前記一列状の中央部に向かってそれぞれ所定の枚数の鋼矢板を含む2つの端部領域の鋼矢板を他の領域より先行して打設する先行打設工程と、前記先行打設工程で先行して打設された前記鋼矢板の長さよりも長さが短く、かつ、幅方向の両方の端部に継手部を備えたガイド矢板を、前記2つの端部領域の間に位置する中央部領域に、前記ガイド矢板の前記継手部でお互いに連結させて地盤上に一列状に複数配置するとともに、一列状に複数配置する前記ガイド矢板のうち両端部に配置する前記ガイド矢板の前記継手部を、前記2つの端部領域に先行して打設された前記鋼矢板のうち前記一列状の中央部に向かう側の端部の鋼矢板の前記継手部にそれぞれ連結させて配置するガイド矢板配置工程と、前記ガイド矢板配置工程で配置した前記複数のガイド矢板を、幅方向断面が前記ガイド矢板と略同一である本設の鋼矢板に順次置き換えて打設する置き換え打設工程と、を有し、前記先行打設工程では前記ガイド矢板は用いずに前記鋼矢板を打設し、前記ガイド矢板配置工程で配置した前記ガイド矢板は地盤上に配置するだけで打設はしないことを特徴とする鋼矢板の打設方法である。
【0010】
ここで、鋼矢板の「幅方向」とは、鋼矢板として地盤に打設された状態において地盤面から立ち上がる方向と直交する方向で、かつ、当該鋼矢板の面内方向(当該鋼矢板が形成する壁面内の方向)のことである。
【0011】
また、ガイド矢板の「幅方向」とは、ガイド矢板として地盤に配置された状態において地盤面から立ち上がる方向と直交する方向で、かつ、当該ガイド矢板の面内方向(当該ガイド矢板が形成する壁面内の方向)のことである。
【0012】
また、鋼矢板の幅方向断面とは、鋼矢板として地盤に打設された状態において、当該鋼矢板が地盤面から立ち上がる方向と直交する平面で当該鋼矢板を切断して得られる断面のことであり、ガイド矢板の幅方向断面とは、ガイド矢板として地盤に配置された状態において、当該ガイド矢板が地盤面から立ち上がる方向と直交する平面で当該ガイド矢板を切断して得られる断面のことである。
【0013】
また、ガイド矢板と該ガイド矢板と置き換える本設の鋼矢板の幅方向断面が略同一であるとは、作製時等の誤差以外は同一ということであり、実質的に同一の幅方向断面とみなせるということである。
【0014】
前記一列状に複数打設する鋼矢板の幅方向断面は、略同一であってもよい。
【0015】
ここで、鋼矢板の幅方向断面が略同一であるとは、作製時等の誤差以外は同一ということであり、実質的に同一の幅方向断面とみなせるということである。
【0016】
前記置き換え打設工程においては、前記ガイド矢板配置工程で配置した前記複数のガイド矢板のうちの一部のガイド矢板であってお互いに隣り合っていないガイド矢板を選んで前記本設の鋼矢板に置き換えて打設する工程が含まれていてもよい。
【0017】
前記置き換え打設工程においては、前記ガイド矢板配置工程で配置した前記複数のガイド矢板のうちの一部のガイド矢板であって1つ飛ばしに配置されたガイド矢板を選んで前記本設の鋼矢板に置き換えて打設する工程が含まれていてもよい。
【0018】
前記置き換え打設工程においては、前記ガイド矢板配置工程で配置した前記複数のガイド矢板のうちの一部のガイド矢板であって2つ飛ばしに配置されたガイド矢板を選んで前記本設の鋼矢板に置き換えて打設する工程が含まれていてもよい。
【0019】
前記一列状に複数打設する鋼矢板の両端部の位置は、予め決められていてもよい。
【0020】
前記鋼矢板の幅方向断面は、略直線形状であってもよい。
【0021】
ここで、鋼矢板の幅方向断面が略直線形状であるとは、継手部等の細部の形状を除けば、全体として直線形状であると判断できるということである。
【0022】
前記一列状に複数打設する鋼矢板のうちの少なくとも一部の鋼矢板は、曲線状に列を形成していてもよい。
【0023】
前記鋼矢板の前記継手部の遊びが8mm以上12mm以下であってもよい。
【0024】
ここで、「前記鋼矢板の前記継手部の遊び」とは、連結される2つの前記鋼矢板の幅方向の嵌合余裕代のことであり、具体的には、前記継手部でお互いに連結された2つの前記鋼矢板に、幅方向に引張力を加えた場合と幅方向に圧縮力を加えた場合における、前記連結された2つの前記鋼矢板の幅方向の長さの差のことである。
【0025】
前記ガイド矢板が前記ガイド矢板配置工程で地盤に配置された状態において、前記ガイド矢板の上端の高さ位置は、当該ガイド矢板に対して作業を行う作業者の足場面よりも1m以上2m以下だけ高い位置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る鋼矢板の打設方法によれば、打設精度と施工効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態および第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法を用いて打設を行う直線形鋼矢板20の打設位置および配置状況を模式的に示す平面図
図2】直線形鋼矢板20の幅方向断面を示す拡大断面図
図3】直線形鋼矢板20についての弱軸回りの方向および強軸回りの方向を模式的に示した図
図4図2および図5のIV−IV線断面図であり、取り付け治具32の部位を拡大して示す拡大側断面図
図5図2および図4のV−V線断面図であり、取り付け治具32の部位を拡大して示す拡大正断面図
図6】4つの直線形鋼矢板20が、継手部20Aを介してお互いに連結している状況を示す幅方向断面図
図7】本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図8】本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図9】本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図10】本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図11】本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図12】本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図13】4つのガイド矢板24が、継手部24Aを介してお互いに連結している状況を示す幅方向断面図
図14】非特許文献2で報告されている工事における中央部領域(打設位置5〜9)への本設の直線形鋼矢板20の建て込み状況を模式的に示す図
図15】非特許文献2で報告されている工事において、中央部領域(打設位置5〜9)に建て込んだ本設の直線形鋼矢板20を干渉が生じない範囲内で少しずつ(300mmずつ)打ち下げる作業を行っている状況を模式的に示す図
図16】本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図17】本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図18】本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図19】本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図20】本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図21】本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図22】本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図23】本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階のうちの1つの段階を模式的に示す図
図24】アーク矢板ジャケット工法について模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態および第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法について詳細に説明する。
【0029】
(1)本発明の第1実施形態および第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法における共通事項
図1は、本発明の第1実施形態および第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法を用いて打設を行う直線形鋼矢板20の打設位置および配置状況を模式的に示す平面図である。図2は、直線形鋼矢板20の幅方向断面を示す拡大断面図である。図1において補助H鋼30の上方に付した数字は、直線形鋼矢板20を打設する各打設位置を示している。
【0030】
以下では、直線形鋼矢板20の打設を、隣り合うサドルプレート23の間の打設位置1〜13において行って、アーク矢板22の構築を行う場合を取り上げて、本発明の第1実施形態および第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法を説明する。アーク矢板22は、隣り合うサドルプレート23の間の打設位置1〜13に直線形鋼矢板20を打設することによって構築される。サドルプレート23は、打設位置1〜13に直線形鋼矢板20を打設する前に所定の位置に打設されている。したがって、打設位置1〜13に打設する直線形鋼矢板20の両端部の位置(打設位置1、13に打設する直線形鋼矢板20のサドルプレート23と嵌合する継手部20Aの位置)は、打設位置1〜13に直線形鋼矢板20を打設する前に予め決められている。
【0031】
直線形鋼矢板20は、図2に示すように、幅方向の両方の端部に継手部20Aを備えている。また、打設位置1〜13に打設される直線形鋼矢板20は、図2に示すように、その背面(埋立側の面)には、補助H鋼30が、取り付け治具32を介してそれぞれ取り付けられている。取り付け治具32は直線形鋼矢板20の背面(埋立側の面)に溶接で取り付けられている。直線形鋼矢板20の形状は、幅W=500mm、長さL=22m、厚さt=9.5mmであり、弱軸回りの曲げ剛性が小さく、そのため、直線形鋼矢板20は、打設時に弱軸回りに変形するおそれがある。図3は、直線形鋼矢板20についての弱軸回りの方向および強軸回りの方向を模式的に示した図である。弱軸回りの変形を防止するため、直線形鋼矢板20の曲げ剛性を補う補助H鋼30を介して鉛直方向下向きの力を直線形鋼矢板20に加えて打設するようにしている。ただし、地盤条件によっては、補助H鋼30を用いなくても直線形鋼矢板20を適切に打設できる場合もある。このような場合は、補助H鋼30を用いることは不要である。また、地盤条件によっては、補助H鋼30を用いるだけでなく、さらに、ウォータージェットを併用した方が適切な場合がある。このような場合にはウォータージェットを併用してもよい。
【0032】
図4は、図2および図5のIV−IV線断面図であり、取り付け治具32の部位を拡大して示す拡大側断面図である。図5は、図2および図4のV−V線断面図であり、取り付け治具32の部位を拡大して示す拡大正断面図である。
【0033】
図4図5に示すように、補助H鋼30のフランジ30Aには、取り付け治具32と係合する切り欠き30A1が設けられている。切り欠き30A1の上辺部が取り付け治具32と係合して、鉛直方向下向きの力が、補助H鋼30から取り付け治具32を介して直線形鋼矢板20に伝達できるようになっている。一方、補助H鋼30を上方に引き抜く際には、取り付け治具32は切り欠き30A1と係合しないので、直線形鋼矢板20の打設完了後に補助H鋼30を上方に引き抜いて撤去できるようになっている。なお、図4図5において、符号30Bは、補助H鋼30のウェブを示している。
【0034】
図4図5に示す取り付け治具32は、直線形鋼矢板20の長手方向の異なる複数の中間部(上端と下端以外の部位であり、例えば、直線形鋼矢板20の全長の3分の1の地点および3分の2の地点)に設けられている。直線形鋼矢板20の上端と下端に設けられている取り付け治具(図示せず)は、取り付け治具32と形状が異なる。直線形鋼矢板20の上端に設けられている取り付け治具は、上向きの力を補助H鋼30から直線形鋼矢板20に伝達できるようになっており、かつ、直線形鋼矢板20からの取り外しも容易に行えるようになっている。直線形鋼矢板20の下端に設けられている取り付け治具は、下向きの力のみを直線形鋼矢板20に伝達できるようになっている。
【0035】
図6は、4つの直線形鋼矢板20が、継手部20Aを介してお互いに連結している状況を示す幅方向断面図である。図6に示すように、直線形鋼矢板20同士は一列状に連結しており、土圧等の外力に対してフープテンション(嵌合している矢板列の面内周方向引張力)で抵抗することができるようになっている。したがって、直線形鋼矢板20の継手部20Aの遊びは、8mm以上12mm以下と小さく設定されている。ここで、直線形鋼矢板20の継手部20Aの遊びとは、連結される2つの直線形鋼矢板20の幅方向の嵌合余裕代のことであり、具体的には、継手部20Aでお互いに連結された2つの直線形鋼矢板20に、幅方向に引張力を加えた場合と幅方向に圧縮力を加えた場合における、連結された2つの直線形鋼矢板20の幅方向の長さの差のことである。
【0036】
なお、図6においては、補助H鋼30等の記載は省略している。
【0037】
(2)本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順
図7図12は本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階を模式的に示す図である。図7図12において、各直線形鋼矢板20または各ガイド矢板24の上方に記載した数字は、直線形鋼矢板20を打設する各打設位置(図1参照)を示している。本第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法を実施する地点の海底面の深さは、海面から6.5mである。また、本第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法を実施するに当たり、海面から1〜1.5mの高さ位置に、作業者が作業する足場面の高さが位置するように、足場を構築している。なお、図7図12においては、補助H鋼30等の記載は省略しており、また、以降に記載する図14図23についても同様である。
【0038】
図7は、先行打設工程を実施した後の状態を模式的に示す図である。
【0039】
先行打設工程では、打設位置1〜13のうち、両端部に位置する打設位置1、13をそれぞれ含むとともに、打設位置1、13から一列状に並んだ打設位置1〜13の中央部に向かってそれぞれ4つの打設位置を含む2つの端部領域(打設位置1〜4の端部領域と打設位置10〜13の端部領域)について本設の直線形鋼矢板20を先行して打設する。
【0040】
詳細には、この先行打設工程では、打設位置1〜4の端部領域について、打設位置1、2、3、4の順に片押しで、直線形鋼矢板20を所定の深さまで地盤80に打設するととともに、打設位置10〜13の端部領域について、打設位置13、12、11、10の順に片押しで、直線形鋼矢板20を所定の深さまで地盤80に打設する。両端部に位置する打設位置1、13に打設する直線形鋼矢板20は、継手部20Aをサドルプレート23に嵌合させて打設を行う。
【0041】
先行打設工程で本設の直線形鋼矢板20を所定の深さまで地盤80に打設する際には、例えば、バイブロハンマを用いて打設を行うことができる。
【0042】
この先行打設工程が終了した段階(図7に示す状態)では、2つの端部領域(打設位置1〜4および10〜13)については直線形鋼矢板20の打設が完了しているが、中央部領域(打設位置5〜9)については何も実施されていない状態である。
【0043】
図8は、ガイド矢板配置工程を実施した後の状態を模式的に示す図である。
【0044】
ガイド矢板配置工程では、先行打設工程の終了後(図7に示す状態の後)、中央部領域(打設位置5〜9)に、ガイド矢板24を継手部24Aでお互いに連結させて一列状に複数(5つ)配置するとともに、一列状に複数(5つ)配置するガイド矢板24のうち両端部(打設位置5、9)に配置するガイド矢板24の継手部24Aを、先行打設工程で2つの端部領域(打設位置1〜4および10〜13)に先行して打設された直線形鋼矢板20のうち一列状の中央部に向かう側の端部の直線形鋼矢板20(打設位置4、10に打設された直線形鋼矢板20)の継手部20Aにそれぞれ連結させて配置する。ガイド矢板24を所定の位置に配置する際には、例えば、クレーンに連結された吊下げ治具を用いて行うことができるが、本設の直線形鋼矢板20を打設する際に用いるバイブロハンマのチャック装置を振動させずに用いてもよい。
【0045】
ガイド矢板24の幅方向断面の形状は、直線形鋼矢板20の幅方向断面の形状と同一であり、ガイド矢板24の幅方向の両方の端部には、幅方向断面の形状が直線形鋼矢板20の継手部20Aと同一である継手部24Aが設けられている。ガイド矢板24は、その長さが直線形鋼矢板20の長さよりも短くなっている。具体的には、本第1実施形態で用いるガイド矢板24の長さは、海底から海面上2.5mに達する長さであり、9mである。なお、前述したように、本第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法を実施する地点の海底面の深さは、海面から6.5mである。
【0046】
図13は、4つのガイド矢板24が、継手部24Aを介してお互いに連結している状況を示す幅方向断面図である。前述したように、ガイド矢板24の幅方向断面の形状は、直線形鋼矢板20の幅方向断面の形状と同一であるので、連結した4つのガイド矢板24についての幅方向断面図(図13)における輪郭線は、連結した4つの直線形鋼矢板20についての幅方向断面図(図6)における輪郭線と同一である。
【0047】
ガイド矢板24は、本設の直線形鋼矢板20の打設位置を事前に正確に把握するために用いる部材であり、地盤80上に配置するだけで地盤80に打設しないので、その配置位置の調整を容易に行うことができる。また、ガイド矢板24は、海底面上に配置するだけで地盤80に打設しないので、補助H鋼30も不要である。また、本設の直線形鋼矢板20の長さは22mであるのに対し、ガイド矢板24の長さは9mと短いので、この点からもガイド矢板24は配置位置の調整を容易に行うことができる。
【0048】
したがって、位置を微調整しながらガイド矢板24を中央部領域(打設位置5〜9)に配置して、先行打設工程で打設位置1〜4および10〜13に打設した8つの本設の直線形鋼矢板20と連結して閉合させることを、確実かつ容易に行うことができる。
【0049】
また、前述したように、作業者が作業する足場面の高さ位置は、海面から1〜1.5mの高さ位置であるので、中央部領域(打設位置5〜9)に配置した長さ9mのガイド矢板24の上端の高さ位置は、作業者が作業する足場面の高さ位置よりも1〜1.5m上方の高さ位置である。したがって、すでに配置したガイド矢板24の隣の位置に別のガイド矢板24を配置する際、隣り合うガイド矢板24の継手部24A同士を嵌合させる作業を作業者が行いやすくなっている。
【0050】
図9図12は、置き換え打設工程を実施している各段階の状態を模式的に示す図である。
【0051】
置き換え打設工程では、ガイド矢板配置工程の終了後(図8に示す状態の後)、中央部領域(打設位置5〜9)に配置したガイド矢板24を本設の直線形鋼矢板20に順次置き換えて打設する。ガイド矢板配置工程で、ガイド矢板24が中央部領域(打設位置5〜9)に適切に配置されて、先行打設工程で打設位置1〜4および10〜13に打設した8つの本設の直線形鋼矢板20と適切に連結して閉合しているので、そのガイド矢板24と順次置き換えて本設の直線形鋼矢板20を打設すれば、打設位置5〜9の本設の直線形鋼矢板20も必然的に適切な位置に打設されて打設精度が向上し、先行打設工程で打設位置1〜4および10〜13に打設した8つの本設の直線形鋼矢板20と適切に連結して閉合して、アーク矢板22を確実に形成することができる。
【0052】
置き換え打設工程では、ガイド矢板配置工程の終了後(図8に示す状態の後)、まず図9に示すように、1つ飛ばしの位置である打設位置5、7、9に配置したガイド矢板24を本設の直線形鋼矢板20に置き換える。
【0053】
次に、図10に示すように、1つ飛ばしの位置である打設位置5、7、9に配置した本設の直線形鋼矢板20を地盤80に所定の深さまで順次打設する。
【0054】
次に、図11に示すように、1つ飛ばしの位置である残りの打設位置6、8に配置したガイド矢板24を本設の直線形鋼矢板20に置き換える。
【0055】
次に、図12に示すように、1つ飛ばしの位置である打設位置6、8に配置した本設の直線形鋼矢板20を地盤80に所定の深さまで順次打設する。
【0056】
置き換え打設工程で本設の直線形鋼矢板20を所定の深さまで地盤80に打設する際も、先行打設工程と同様に、例えば、バイブロハンマを用いて打設を行うことができる。
【0057】
本第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の置き換え打設工程で、1つ飛ばしの打設位置について、順次、本設の直線形鋼矢板20の打設を行っていくので、バイブロハンマ等の打設機具類と打設が完了していない本設の直線形鋼矢板20との干渉が生じないようにすることができ、本設の直線形鋼矢板20を一気に所定の深さまで打設することができる。
【0058】
打設位置5〜9のそれぞれについて、いちどきにガイド矢板24から直線形鋼矢板20に置き換えると、置き換えた直線形鋼矢板20の打設を行う際に、打設が完了していない隣の直線形鋼矢板20と打設機具類に干渉が生じてしまい、置き換えた直線形鋼矢板20を一気に所定の深さまで打設することができなくなる場合がある。このような場合には、打設位置5〜9のそれぞれの直線形鋼矢板20を、順次、干渉が生じない範囲内で少しずつ打設していく必要がある。
【0059】
非特許文献2で報告されている工事では、ガイド矢板24は用いておらず、図14に模式的に示すように、長さ22mの本設の直線形鋼矢板20を、打設位置5〜9において海底面に深さ8mだけ仮に打設して建て込んだが、打設位置5〜9の海底面は、海面からの深さが6.5mであり、建て込む際には、海面から7.5mの高さ位置である仮下げ天端で本設の直線形鋼矢板20の継手部20Aを相互に嵌合させる必要があった。この作業は高所作業であり、打設位置5〜9に本設の直線形鋼矢板20を建て込むだけでも困難を伴った。一方、打設位置5〜9に建て込んだ直線形鋼矢板20を打設する際には、打設が完了していない隣の直線形鋼矢板20と打設機具類に干渉が生じてしまうため、図15に模式的に示すように、両端の直線形鋼矢板20(打設位置5、9の直線形鋼矢板20)から順に干渉が生じない範囲内で少しずつ(300mmずつ)打ち下げる作業を繰り返し、所定の深度まで打ち込むことを実現しており、施工効率は良好であるとは言えない。
【0060】
これに対し、本第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の置き換え打設工程では、前述したように、1つ飛ばしの打設位置について、順次、本設の直線形鋼矢板20の打設を行っていくので、バイブロハンマ等の打設機具類と打設が完了していない本設の直線形鋼矢板20との干渉が生じないようにすることができ、打設位置5〜9の本設の直線形鋼矢板20を一気に所定の深さまで打設することができる。
【0061】
1つ飛ばしの打設位置について、順次、打設位置5〜9の本設の直線形鋼矢板20の打設を行っていく場合でも、直線形鋼矢板20を一気に所定の深さまで打設すると、打設が完了していない本設の直線形鋼矢板20と打設機具類に干渉が生じてしまう場合には、2つ飛ばしの打設位置について、順次、本設の直線形鋼矢板20の置き換えと打設を行っていくようにしてもよい。これについては、第2実施形態として次に説明する。
【0062】
(3)本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順
本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法は、置き換え打設工程で、2つ飛ばしの打設位置について、順次、本設の直線形鋼矢板20の置き換えと打設を行っていく点が、本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法と異なり、それ以外の点については本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法と同様であり、用いる直線形鋼矢板20およびガイド矢板24も同一である。本発明の第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法と同様の内容については、説明を省略するか、あるいは簡略化して説明する。
【0063】
図16図23は本発明の第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の特徴的な各段階を模式的に示す図である。
【0064】
図16は、先行打設工程を実施した後の状態を模式的に示す図であり、第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の説明に用いた図7と同一であり、本第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法における先行打設工程の内容は第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法と同様であるので、説明は省略する。
【0065】
図17は、ガイド矢板配置工程を実施した後の状態を模式的に示す図であり、第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法の説明に用いた図8と同一であり、本第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法におけるガイド矢板配置工程の内容は第1実施形態に係る鋼矢板の打設方法と同様であるので、説明は省略する。
【0066】
図18図23は、置き換え打設工程を実施している各段階の状態を模式的に示す図である。
【0067】
置き換え打設工程では、ガイド矢板配置工程の終了後(図17に示す状態の後)、中央部領域(打設位置5〜9)に配置したガイド矢板24を本設の直線形鋼矢板20に順次置き換えて打設する。ガイド矢板配置工程で、ガイド矢板24が中央部領域(打設位置5〜9)に適切に配置されて、先行打設工程で打設位置1〜4および10〜13に打設した8つの本設の直線形鋼矢板20と適切に連結して閉合しているので、そのガイド矢板24と順次置き換えて本設の直線形鋼矢板20を打設すれば、打設位置5〜9の本設の直線形鋼矢板20も必然的に適切な位置に打設されて打設精度が向上し、先行打設工程で打設位置1〜4および10〜13に打設した8つの本設の直線形鋼矢板20と適切に連結して閉合して、アーク矢板22を確実に形成することができる。
【0068】
置き換え打設工程では、ガイド矢板配置工程の終了後(図17に示す状態の後)、まず図18に示すように、2つ飛ばしの位置である打設位置5、8に配置したガイド矢板24を本設の直線形鋼矢板20に置き換える。
【0069】
次に、図19に示すように、2つ飛ばしの位置である打設位置5、8に配置した本設の直線形鋼矢板20を地盤80に所定の深さまで順次打設する。
【0070】
次に、図20に示すように、2つ飛ばしの位置である打設位置6、9に配置したガイド矢板24を本設の直線形鋼矢板20に置き換える。
【0071】
次に、図21に示すように、2つ飛ばしの位置である打設位置6、9に配置した本設の直線形鋼矢板20を地盤80に所定の深さまで打設する。
【0072】
次に、図22に示すように、残った打設位置7に配置したガイド矢板24を本設の直線形鋼矢板20に置き換える。
【0073】
次に、図23に示すように、残った打設位置7に配置した本設の直線形鋼矢板20を地盤80に所定の深さまで打設する。
【0074】
置き換え打設工程で本設の直線形鋼矢板20を所定の深さまで地盤80に打設する際も、先行打設工程と同様に、例えば、バイブロハンマを用いて打設を行うことができる。
【0075】
本第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法の置き換え打設工程では、2つ飛ばしの打設位置について、順次、本設の直線形鋼矢板20の打設を行っていくので、バイブロハンマ等の打設機具類と打設が完了していない本設の直線形鋼矢板20との干渉が生じないようにすることができ、本設の直線形鋼矢板20を一気に所定の深さまで打設することができる。
【0076】
(4)ガイド矢板の効果
前述したように、ガイド矢板24は、本設の直線形鋼矢板20の打設位置を事前に正確に把握するために用いる部材であり、海底面上に配置するだけで地盤80に打設しないので、その配置位置の調整を容易に行うことができる。また、本設の直線形鋼矢板20の長さは22mであるのに対し、ガイド矢板24の長さは9mと短いので、この点からもガイド矢板24は配置位置の調整を容易に行うことができる。
【0077】
したがって、位置を微調整しながらガイド矢板24を中央部領域(打設位置5〜9)に配置して、先行打設工程で打設位置1〜4および10〜13に打設した8つの本設の直線形鋼矢板20と連結して閉合させることを、確実かつ容易に行うことができる。このため、ガイド矢板24と置き換えて本設の直線形鋼矢板20を打設することにより打設精度が向上し、本設の直線形鋼矢板20の位置を打設後に調整する手戻りを少なくすることができ、施工効率が大幅に向上する。
【0078】
また、前述したように、作業者が作業する足場面の高さ位置は、海面から1〜1.5mの高さ位置であるので、中央部領域(打設位置5〜9)に配置した長さ9mのガイド矢板24の上端の高さ位置は、作業者が作業する足場面の高さ位置よりも1〜1.5m上方の高さ位置である。したがって、すでに配置したガイド矢板24の隣の位置に別のガイド矢板24を配置する際、隣り合うガイド矢板24の継手部24A同士を嵌合させる作業を作業者が行いやすくなっている。
【0079】
また、本発明の第1実施形態および第2実施形態に係る鋼矢板の打設方法における置き換え打設工程の図9図12および図18図23から明らかなように、打設位置5〜9においてガイド矢板24から置き換えた本設の直線形鋼矢板20は、両側をガイド矢板24または直線形鋼矢板20のいずれかによって保持された状態で打設される。このため、適切な位置を保持させたまま、置き換えた本設の直線形鋼矢板20の打設を行うことができる。このため、隣接する本設の直線形鋼矢板20との摩擦も減るので、共下がり量を減らすこともでき、この点でも施工効率が向上する。
【0080】
また、前述したように、アーク矢板22を形成する直線形鋼矢板20は、土圧等の外力に対してフープテンション(嵌合している矢板列の面内周方向引張力)で抵抗することができるようになっているため、直線形鋼矢板20の継手部20Aの遊びは、8mm以上12mm以下と小さく設定されている。しかしながら、ガイド矢板24を用いることにより、適切な打設位置を予め設定することができるので、直線形鋼矢板20の継手部20Aの遊びが前記したように小さくても、問題は生じにくい。
【0081】
また、本発明に係る鋼矢板の打設方法で用いるガイド矢板の効果が特に重要になる場合は、複数打設する鋼矢板の両端部の位置が予め決められている場合である。このような場合に鋼矢板の打設位置にずれが生じると、所定の枚数の鋼矢板を閉合するように打設することが困難になることがある。したがって、複数打設する鋼矢板の両端部の位置が予め決められている場合には、本設の鋼矢板の打設位置が閉合できる打設位置となるように予めガイド矢板を用いて定めておくという効果が特に重要になる。
【0082】
なお、本発明に係る鋼矢板の打設方法で用いるガイド矢板は、アーク状に複数の鋼矢板を打設する場合だけでなく、直線状に複数の鋼矢板を打設する場合にも用いることができ、本発明に係る鋼矢板の打設方法は、複数の鋼矢板を曲線状に打設する場合でも、直線状に打設する場合でも用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1〜13…打設位置
20、102…直線形鋼矢板
20A、24A…継手部
22、104…アーク矢板
23、106…サドルプレート
24…ガイド矢板
30…補助H鋼
30A…フランジ
30A1…切り欠き
30B…ウェブ
32…取り付け治具
80…地盤
100…土留め壁
200、300…ジャケット式桟橋
【要約】      (修正有)
【課題】打設精度と施工効率を向上させた鋼矢板の打設方法を提供する。
【解決手段】鋼矢板20を継手部でお互いに連結させて一列状に複数打設する鋼矢板の打設方法であって、2つの端部領域の鋼矢板20を先行して打設する先行打設工程と、ガイド矢板を、前記2つの端部領域の間に位置する中央部領域に、ガイド矢板の継手部でお互いに連結させて一列状に複数配置するとともに、一列状に複数配置するガイド矢板のうち両端部に配置するガイド矢板の継手部を、前記2つの端部領域に先行して打設された鋼矢板20のうち前記一列状の中央部に向かう側の端部の鋼矢板20の継手部にそれぞれ連結させて配置するガイド矢板配置工程と、前記ガイド矢板配置工程で配置した複数のガイド矢板を、幅方向断面がガイド矢板と略同一である本設の鋼矢板20に順次置き換えて打設する置き換え打設工程と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24