【文献】
E. Maani, et al.,SAO Type Coding Simplification,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 9th Meeting: Geneva, CH, 27 April - 7 May 2012,2012年 4月28日,JCTVC-I0246,URL,http://phenix.it-sudparis.eu/jct/doc_end_user/documents/9_Geneva/wg11/JCTVC-I0246-v3.zip
【文献】
Benjamin Bross, et al.,High efficiency video coding (HEVC) text specification draft 7,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 9th Meeting: Geneva, CH, 27 April - 7 May 2012,2012年 5月16日,JCTVC-I1003,p.45
【文献】
Vadim Seregin, et al.,Binarisation modification for last position coding,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 6th Meeting: Torino, IT, 14-22 July, 2011,2011年 7月16日,JCTVC-F375
【文献】
Hisao Sasai, et al.,Modified MVD coding for CABAC,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 6th Meeting: Torino, IT, 14-22 July, 2011,2011年 7月16日,JCTVC-F423
【文献】
Toru Matsunobu, et al.,AHG5/AHG6: Bypass coding for SAO syntax elements,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 10th Meeting: Stockholm, Sweden, 11-20 July 2012,2012年 7月11日,JCTVC-J0148r1.doc,URL,http://phenix.it-sudparis.eu/jct/doc_end_user/documents/10_Stockholm/wg11/JCTVC-J0148-v3.zip
【文献】
C. Rosewarne, et al.,AHG5: On SAO syntax elements coding,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 10th Meeting: Stockholm, SE, 11-20 July 2012,2012年 7月13日,JCTVC-J0178,URL,http://phenix.it-sudparis.eu/jct/doc_end_user/documents/10_Stockholm/wg11/JCTVC-J0178-v3.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
SAO処理では、再構成画像に含まれる複数の画素は、複数のカテゴリに分類される。そして、カテゴリ毎に、当該カテゴリに属する画素値に対して、当該カテゴリに対応するオフセット値が加算される。なお、画素の分類方法としては複数の分類方法が用意されている。したがって、実際に符号化に利用された分類方法を示すパラメータ(つまり、サンプルオフセット処理の種別を識別するパラメータ(sao_type_idx))が算術符号化され、ビットストリームに付加される。
【0012】
また、HEVC規格では、符号化対象信号を多値信号から2値信号(0と1からなる信号)に変換(2値化)し、その2値信号を算術符号化する。
【0013】
2値信号とは、2つのシンボル(「0」および「1」)のどちらかを示すビットを少なくとも1つ含む信号である。本明細書では、1つのビットをbinとも呼ぶ。このとき、2値信号は、binストリングとも呼ばれる。
【0014】
ところで、HEVC規格では、2種類の算術符号化(コンテキスト適応算術符号化およびバイパス算術符号化)が定義されている。コンテキスト適応算術符号化では、コンテキストに基づいて適応的に選択されたシンボル発生確率を用いて2値信号を算術符号化する。また、バイパス算術符号化では、固定されたシンボル発生確率(例えば50%)を用いて2値信号を算術符号化する。
【0015】
具体的には、コンテキスト適応算術符号化では、例えば、符号化対象の2値信号に含まれるbin毎にコンテキストを選択する。そして、選択されたコンテキストの確率情報をロードし、その確率情報によって特定されるシンボル発生確率を用いてbinを算術符号化する。さらに、算術符号化されたbinの値(シンボル)に応じて、選択されたコンテキストの確率情報(シンボル発生確率)を更新する。
【0016】
一方、バイパス算術符号化では、コンテキストを用いずに、シンボル発生確率を50%に固定してbinを算術符号化する。そのため、バイパス算術符号化では、コンテキストの確率情報のロードや更新は行われない。
【0017】
従来、sao_type_idxに対応する2値信号に含まれる各binは、シンボル発生確率に偏りがあると考えられていたため、コンテキスト適応算術符号化されていた。そのため、従来のsao_type_idxの符号化では、コンテキストの確率情報のロードや更新等の処理負荷が高くなる。また、同じコンテキストを使って2つのビットを算術符号化する場合、1つ目のビットに対するコンテキスト更新処理が完了するまで2つ目のビットの算術符号化を開始することができない。したがって、sao_type_idxの算術符号化処理が順次的になり、スループットが低下する。
【0018】
そこで、本発明の一態様に係る動画像符号化方法は、入力画像を符号化する動画像符号化方法であって、前記入力画像に対応する再構成画像に適用されるサンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータの値を第1の2値信号に変換し、固定確率が用いられるバイパス算術符号化により、前記第1の2値信号の少なくとも一部を符号化する。
【0019】
これによれば、サンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータの値に対応する2値信号の少なくとも一部をバイパス算術符号化により符号化することができる。したがって、2値信号のすべてをコンテキスト適応算術符号化により符号化する場合よりも、コンテキストに対応する確率情報のロードおよび更新の回数を低減できる。さらに、バイパス算術符号化では、確率情報の更新が不要なため、2値信号に含まれる複数のビットを並列的に算術符号化することもできる。
【0020】
また、従来、第1パラメータの値に対応する2値信号は、シンボル発生確率に偏りを有すると考えられていたため、バイパス算術符号化により符号化された場合に符号化効率が大きく低下すると考えられていた。しかしながら、本開示において、第1パラメータの値に対応する2値信号の少なくとも一部をバイパス算術符号化により符号化しても符号化効率は大きく低下しないことが発見された。
【0021】
つまり、サンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータの値に対応する2値信号の少なくとも一部をバイパス算術符号化により符号化することにより、符号化効率の低下を抑制しつつ、処理の高速化あるいは処理負荷の低減を図ることができる。
【0022】
また例えば、前記第1の2値信号の第1部分は、コンテキスト適応算術符号化により符号化され、前記第1の2値信号が前記第1部分の後に第2部分を含む場合に、前記第1の2値信号の第2部分は、バイパス算術符号化により符号化されてもよい。
【0023】
これによれば、コンテキスト適応算術符号化により2値信号の第1部分を符号化し、バイパス算術符号化により2値信号の第2部分を符号化することがきる。したがって、シンボル発生確率の偏りが大きい第1部分と、シンボル発生確率の偏りが小さい第2部分とで算術符号化を切り替えることができ、符号化効率の低下をさらに抑制することができる。
【0024】
また例えば、前記第1パラメータの値が所定値と一致する場合、前記サンプルオフセット処理は、前記再構成画像に適用されず、前記第1の2値信号の第1部分は、前記第1パラメータの値が前記所定値と一致するか否かを示してもよい。
【0025】
これによれば、第1パラメータの値が所定値と一致するか否かを示す第1部分をコンテキスト適応算術符号化により符号化することができる。つまり、再構成画像にサンプルオフセット処理が適用されるか否かを示す第1部分をコンテキスト適応算術符号化することができる。この再構成画像にサンプルオフセット処理が適用されるか否かを示す部分は、シンボル発生確率の偏りが大きいので、符号化効率の低下をさらに抑制することができる。
【0026】
また例えば、前記第1の2値信号の第1部分は、前記第1の2値信号の先頭のビットからなり、前記第1の2値信号の第2部分は、前記第1の2値信号の残りのビットからなってもよい。
【0027】
これによれば、2値信号の先頭のビットをコンテキスト適応算術符号化により符号化し、2値信号の残りのビットをバイパス算術符号化により符号化することができる。
【0028】
また例えば、前記動画像符号化方法は、さらに、画面内予測モードを識別する第2パラメータの値と、動きベクトルを含む候補のリストからインター予測に用いる候補を識別する第3パラメータの値との少なくとも一方を第2の2値信号に変換し、コンテキスト適応算術符号化により、前記第2の2値信号の第1部分を符号化し、前記第2の2値信号が前記第1部分の後に第2部分を含む場合に、バイパス算術符号化により前記第2の2値信号の第2部分を符号化し、前記第1の2値信号の第1部分のビット長と、前記第2の2値信号の第1部分のビット長とは、一致してもよい。
【0029】
これによれば、サンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータと、他のパラメータ(第2パラメータあるいは第3パラメータ)とで算術符号化の切り替えを共通化することができ、符号化装置の簡略化を実現することができる。
【0030】
また例えば、前記第1の2値信号は、前記第1パラメータの値が0より大きい場合に、第1シンボルを有する1以上の第1ビットであって前記第1パラメータの値と一致する数の第1ビットを含み、前記第1の2値信号は、(a)前記第1パラメータの値が最大値より小さい場合に、さらに、第2シンボルを有する1つの第2ビットを含み、(b)前記第1パラメータの値が前記最大値と一致する場合に、前記第2ビットを含まなくてもよい。
【0031】
これによれば、第1パラメータの値が最大値と一致する場合に、第2シンボルを有する1つの第2ビット(例えば、「0」)を省略することができる。したがって、符号化効率を向上させることができる。
【0032】
また、本発明の一態様に係る動画像復号方法は、符号化画像を復号する動画像復号方法であって、前記符号化画像から得られる再構成画像に適用されるサンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータの値に対応する第1の2値信号の符号化された少なくとも一部を、固定確率が用いられるバイパス算術復号により復号し、復号された前記第1の2値信号を前記第1パラメータの値に変換する。
【0033】
これによれば、サンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータの値に対応する2値信号の復号された少なくとも一部をバイパス算術復号により復号することができる。したがって、2値信号のすべてをコンテキスト適応算術復号により復号する場合よりも、コンテキストに対応する確率情報のロードおよび更新の回数を低減できる。さらに、バイパス算術復号では、確率情報の更新が不要なため、2値信号に含まれる符号化された複数のビットを並列的に算術復号することもできる。
【0034】
また、従来、第1パラメータの値に対応する2値信号は、シンボル発生確率に偏りを有すると考えられていたため、バイパス算術符号化により符号化された場合に符号化効率が大きく低下すると考えられていた。しかしながら、本開示において、第1パラメータの値に対応する2値信号の少なくとも一部をバイパス算術符号化により符号化しても符号化効率は大きく低下しないことが発見された。
【0035】
つまり、サンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータの値に対応する2値信号の符号化された少なくとも一部をバイパス算術復号により復号することにより、符号化効率の低下を抑制しつつ、処理の高速化あるいは処理負荷の低減を図ることができる。
【0036】
また例えば、前記第1の2値信号の符号化された第1部分は、コンテキスト適応算術復号により復号され、前記第1の2値信号が前記第1部分の後に第2部分を含む場合に、前記第1の2値信号の符号化された第2部分は、バイパス算術復号により復号されてもよい。
【0037】
これによれば、コンテキスト適応算術復号により2値信号の符号化された第1部分を復号し、バイパス算術復号により2値信号の符号化された第2部分を復号することがきる。したがって、シンボル発生確率の偏りが大きい第1部分と、シンボル発生確率の偏りが小さい第2部分とで算術符号化を切り替えて符号化された2値信号を復号することができ、符号化効率の低下をさらに抑制することができる。
【0038】
また例えば、前記第1パラメータの値が所定値と一致する場合、前記サンプルオフセット処理は、前記再構成画像に適用されず、前記第1の2値信号の第1部分は、前記第1パラメータの値が前記所定値と一致するか否かを示してもよい。
【0039】
これによれば、第1パラメータの値が所定値と一致するか否かを示す第1部分であって符号化された第1部分をコンテキスト適応算術復号により復号することができる。つまり、再構成画像にサンプルオフセット処理が適用されるか否かを示す第1部分であって符号化された第1部分をコンテキスト適応算術復号することができる。この再構成画像にサンプルオフセット処理が適用されるか否かを示す部分は、シンボル発生確率の偏りが大きいので、符号化効率の低下をさらに抑制することができる。
【0040】
また例えば、前記第1の2値信号の第1部分は、前記第1の2値信号の先頭のビットからなり、前記第1の2値信号の第2部分は、前記第1の2値信号の残りのビットからなってもよい。
【0041】
これによれば、2値信号の先頭の符号化されたビットをコンテキスト適応算術復号により復号し、2値信号の残りの符号化されたビットをバイパス算術復号により復号することができる。
【0042】
また例えば、前記動画像復号方法は、さらに、画面内予測モードを識別する第2パラメータの値と、動きベクトルを含む候補のリストからインター予測に用いる候補を識別する第3パラメータの値との少なくとも一方に対応する第2の2値信号の符号化された第1部分を、コンテキスト適応算術復号により復号し、前記第2の2値信号が前記第1部分の後に第2部分を含む場合に、バイパス算術復号により前記第2の2値信号の符号化された第2部分を復号し、前記第1の2値信号の第1部分のビット長と、前記第2の2値信号の第1部分のビット長とは、一致してもよい。
【0043】
これによれば、サンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータと、他のパラメータ(第2パラメータあるいは第3パラメータ)とで、2値信号のビット位置による算術復号の切り替えを共通化することができ、復号装置の簡略化を実現することができる。
【0044】
また例えば、前記第1の2値信号は、前記第1パラメータの値が0より大きい場合に、第1シンボルを有する1以上の第1ビットであって前記第1パラメータの値と一致する数の第1ビットを含み、前記第1の2値信号は、(a)前記第1パラメータの値が最大値より小さい場合に、さらに、第2シンボルを有する1つの第2ビットを含み、(b)前記第1パラメータの値が前記最大値と一致する場合に、前記第2ビットを含まなくてもよい。
【0045】
これによれば、第1パラメータの値が最大値と一致する場合に、第2シンボルを有する1つの第2ビット(例えば、「0」)を省略することができる。したがって、符号化効率を向上させることができる。
【0046】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0047】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0048】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0049】
(実施の形態1)
<全体構成>
図1は、実施の形態1における動画像符号化装置100の構成を示す。この動画像符号化装置100は、入力ピクチャをブロック毎に符号化する。
【0050】
図1に示すように、動画像符号化装置100は、ブロック分割部101と、予測部102と、減算部103と、変換部104と、逆変換部105と、加算部106と、SAO処理部107と、SAOパラメータ可変長符号化部108と、係数可変長符号化部109と、フレームメモリ110とを備える。
【0051】
<動作(全体)>
次に、以上のように構成された動画像符号化装置100の動作について説明する。
図2は、実施の形態1における動画像符号化装置100の処理動作を示す。
【0052】
(ステップS101)
ブロック分割部101は、入力ピクチャを複数のブロック(例えば符号化ユニット)に分割する。そして、複数のブロックは、順次、符号化対象ブロック(入力画像)として、減算部103と予測部102とに出力される。この時、ブロックのサイズは可変である。ブロック分割部101は、画像の特徴を用いて、入力ピクチャを複数のブロックに分割する。例えば、ブロックの最小サイズは、横4画素×縦4画素であり、ブロックの最大サイズは横32画素×縦32画素である。
【0053】
(ステップS102)
予測部102は、符号化対象ブロックと、フレームメモリ110に格納されている、既に符号化されたピクチャに対応する再構成ピクチャとに基づいて、予測ブロックを生成する。
【0054】
(ステップS103)
減算部103は、符号化対象ブロックと予測ブロックとから残差ブロックを生成する。
【0055】
(ステップS104)
変換部104は、残差ブロックを周波数係数に変換する。そして、変換部104は、周波数係数を量子化する。
【0056】
(ステップS105)
逆変換部105は、量子化された周波数係数を逆量子化する。そして、逆変換部105は、逆量子化された周波数係数を逆変換することにより、残差ブロックを復元する。
【0057】
(ステップS106)
加算部106は、復元された残差ブロックと予測ブロックとを加算することにより再構成ブロック(再構成画像)を生成する。再構成ブロック(再構成画像)は、ローカルデコードブロック(ローカルデコード画像)と呼ばれる場合もある。
【0058】
(ステップS107)
SAO処理部107は、SAOパラメータを決定する。また、SAO処理部107は、再構成ブロックに含まれる少なくとも1つの画素値(サンプル値)にオフセット値を加算し、加算結果をフレームメモリ110に格納する。つまり、SAO処理部107は、SAO処理後の再構成ブロックをフレームメモリ110に格納する。
【0059】
具体的には、SAO処理部107は、再構成ブロックに含まれる複数の画素を複数のカテゴリに分類する。そして、SAO処理部107は、カテゴリ毎に、当該カテゴリに属する画素値に対して、当該カテゴリに対応するオフセット値を加算する。なお、画素の分類方法としては複数の分類方法が用意されている。つまり、画素の分類方法が異なる複数種別のSAO処理のいずれかが適応的に利用される。したがって、SAOパラメータは、SAO処理の種別を識別するパラメータ(sao_type_idx)を含む。また、SAOパラメータは、オフセット値を示すパラメータ(sao_offset)も含む。
【0060】
なお、このSAO処理は実行されない場合があってもよい。
【0061】
(ステップS108)
SAOパラメータ可変長符号化部108は、SAOパラメータを可変長符号化(エントロピー符号化)し、符号列を出力する。
【0062】
(ステップS109)
係数可変長符号化部109は、周波数係数を可変長符号化し、符号列を出力する。
【0063】
(ステップS110)
入力ピクチャ内の全ブロックの符号化が完了するまで、ステップS102からステップS109を繰り返す。
【0064】
以降、SAOパラメータ可変長符号化部108およびその動作(ステップS108)について詳細を説明する。
【0065】
<SAOパラメータ可変長符号化部の構成>
図3は、実施の形態1におけるSAOパラメータ可変長符号化部108の内部構成を示す。
図3に示すように、SAOパラメータ可変長符号化部108は、sao_type_idx符号化部121と、sao_offset符号化部122とを備える。
【0066】
<動作(SAOパラメータ可変長符号化)>
次に、以上のように構成されたSAOパラメータ可変長符号化部108の動作について説明する。
図4は、実施の形態1におけるSAOパラメータ可変長符号化部108の処理動作を示す。
【0067】
(ステップS121)
sao_type_idx符号化部121は、SAO処理の種別を識別するsao_type_idxを符号化する。
【0068】
(ステップS122)
sao_offset符号化部122は、SAO処理におけるオフセット値を示すsao_offsetを符号化する。
【0069】
以降、sao_type_idx符号化部121およびその動作(ステップS121)について詳細を説明する。
【0070】
<sao_type_idx符号化部の構成>
図5は、実施の形態1におけるsao_type_idx符号化部121の内部構成を示す。
図5に示すように、sao_type_idx符号化部121は、sao_type_idx2値化部140と、sao_type_idx算術符号化部150とを備える。
【0071】
sao_type_idx2値化部140は、sao_type_idxの値を2値信号に変換する。
図5に示すように、sao_type_idx2値化部140は、bin設定部141と、最終bin判定部142とを備える。
【0072】
sao_type_idx算術符号化部150は、固定確率が用いられるバイパス算術符号化により、2値信号の少なくとも一部を符号化する。
図5に示すように、sao_type_idx算術符号化部150は、算術符号化切替部151と、第1コンテキスト適応算術符号化部152と、第2コンテキスト適応算術符号化部153と、バイパス算術符号化部154とを備える。
【0073】
<動作(sao_type_idx符号化)>
次に、以上のように構成されたsao_type_idx符号化部121の動作について詳細を説明する。
図6は、実施の形態1におけるsao_type_idx符号化部121の処理動作を示す。
【0074】
(ステップS141〜S144)
bin設定部141は、sao_type_idxの値を2値信号(binストリング)に変換する。具体的には、bin設定部141は、2値信号内におけるbinの位置を識別するインデックス(binIdx)とsao_type_idxの値とを用いて、2値信号を構成する各binに「0」もしくは「1」を設定する。ここでは、sao_type_idxの値の範囲は、0以上5以下である。
【0075】
図7は、多値信号(sao_type_idxの値)と2値信号との対応関係を示す表である。
図7を見ればわかるように、2値信号の先頭からの「1」の出現回数が、多値信号が示す値と一致する。
【0076】
つまり、sao_type_idxの値が0より大きい場合に、2値信号は、第1シンボル「1」を有する1以上の第1ビットであってsao_type_idxの値と一致する数の第1ビットを含む。また、2値信号は、(a)sao_type_idxの値が最大値「5」より小さい場合に、さらに、第2シンボル「0」を有する1つの第2ビットを含み、(b)sao_type_idxの値が最大値と一致する場合に、第2シンボル「0」を有する第2ビットを含まない。
【0077】
また、binIdxは、先頭が「0」で以降は1ずつインクリメントした値となっている。binとbinIdxは、sao_type_idx算術符号化部150へ出力される。
【0078】
(ステップS145〜S149)
算術符号化切替部151は、binIdxの値に基づいて、binの算術符号化を行う処理部(構成要素)を切り替える。
【0079】
図8は、binIdxとコンテキストとの対応関係を示す表である。本実施の形態では、
図8の表の実施の形態1の欄に示すように、2種類のコンテキスト(コンテキスト0およびコンテキスト1)を用いて2値信号が算術符号化される。
【0080】
具体的には、算術符号化切替部151は、binIdxの値が「0」と一致する場合は、第1コンテキスト適応算術符号化部152に切り替える。また、算術符号化切替部151は、binIdxの値が「1」と一致する場合は、第2コンテキスト適応算術符号化部153に切り替える。また、算術符号化切替部151は、binIdxの値が「0」とも「1」とも一致しない場合は、バイパス算術符号化部154に切り替える。
【0081】
つまり、第1コンテキスト適応算術符号化部152は、コンテキスト0を用いて、「0」の値を有するbinIdxのbinを算術符号化する。また、第2コンテキスト適応算術符号化部153は、コンテキスト1を用いて、「1」の値を有するbinIdxのbinを算術符号化する。また、バイパス算術符号化部154は、コンテキストを用いずに、固定確率「50%」を用いて、2以上の値を有するbinIdxのbinを算術符号化する。
【0082】
ここで、コンテキスト適応算術符号化により符号化されるbin(本実施の形態では、「0」および「1」の値を有するbinIdxで識別されるbin)のセットを、2値信号の第1部分と呼ぶ。また、バイパス算術符号化により符号化されるbin(本実施の形態では、2以上の値を有するbinIdxで識別されるbin)のセットを、2値信号の第2部分と呼ぶ。
【0083】
つまり、本実施の形態では、2値信号の第1部分は、コンテキスト適応算術符号化により符号化される。また、2値信号が第1部分の後に第2部分を含む場合に、2値信号の第2部分は、バイパス算術符号化により符号化される。
【0084】
(ステップS150〜S151)
最終bin判定部142は、binが「0」の値を有するかどうか(第1条件)、および、binIdxが「4」の値を有するかどうか(第2条件)を判定する。ここで、第1条件および第2条件のうちの少なくとも一方が満たされる場合は、sao_type_idxの符号化は完了する。
【0085】
一方、第1条件および第2条件の両方が満たされない場合は、最終bin判定部142は、binIdxの値に「1」を加算した値でbinIdxを更新する。そして、ステップS142に戻り、次のbinの符号化が行われる。
【0086】
本実施の形態では、このステップS150およびS151によって、
図7のようにsao_type_idxが最大値「5」を有する場合に、2値信号の最後に「0」が付かないようにすることができる。
【0087】
<効果>
以上、本実施の形態によれば、sao_type_idxが最大値を有する場合は、2値信号の最後に0を付与しないことにより、符号量を削減することができる。非特許文献1に記載のHEVC規格では、sao_type_idxの値「5」を2値信号「111110」に変換している。しかし、sao_type_idxは0から5までの値しか取らないので、復号装置側では2値信号内の「1」の連続個数が5個(「11111」)となった時点でsao_type_idxの値は「5」であると明確になる。したがって、sao_type_idxの値が最大値「5」と一致する場合は、2値信号の最後に「0」を含まないように2値化することにより、符号量を削減することができる。
【0088】
また、sao_type_idxの2値信号に含まれるbinの最大数(最大ビット長)を「5」と決定することによって、復号側でのエラー耐性を向上させることができる。具体的には、異常な符号列(例えば無限に「1」が連続する2値信号)を復号する場合、従来では「0」が出現しないために復号処理が終らなかったが、binの最大数を「5」と決定することによって、2値信号内に「0」が出現しなくとも復号処理を完了することができる。
【0089】
また、sao_type_idxの値から得られた2値信号の後半部分(第2部分)のbinに対し、バイパス算術符号化を行うことにより、算術符号化処理を高速化あるいは算術符号化処理の負荷軽減を図ることが可能となる。本実施の形態では、2以上の値を有するbinIdexのbinは、コンテキスト適応算術符号化ではなく、バイパス算術符号化により符号化される。上述したように、バイパス算術符号化では、コンテキストのロードや更新が不要であり、尚且つ、前段の処理のコンテキスト更新完了を待たずして処理を始めることができるため、コンテキスト適応算術符号化に比べて処理を高速化することあるいは処理負荷を低減することが可能である。
【0090】
また、非特許文献1に記載のHEVC規格では、1以上の値を有するbinIdxのbinは、同じコンテキストを用いてコンテキスト適応算術符号化されている。それは、binIdxの値が「1」以上のbinにおけるシンボル発生確率(binの値が「1」になる確率)は、同じくらいであり、50%ではないなんらかの偏りがあると考えられているからである。つまり、binIdxの値が「1」以上のbinが2値信号に含まれる場合(sao_type_idxの値が「1」以上の場合)は、(a)binIdxの値が「1」のbinは「0」の値を有し、かつ、binIdxの値が「2」以上のbinは2値信号に含まれないケース(sao_type_idxの値が「1」)、または、(b)大きい値を有するbinIdxのbinまで値が「0」のbinが出現しないケース(sao_type_idxの値が「4」あるいは「5」等)が多く発生すると考えられていた。
【0091】
しかし、binIdxの値が「2」以上のbinにおけるシンボル発生確率を「50%」に固定して算術符号化する実験を行った結果、ほとんど符号化効率が劣化しないことを発見した。つまり、sao_type_idxの値が中間(「2」あるいは「3」等)になるケースも多く発生し、かつ、binIdxの値が「2」以上のbinのシンボル発生確率は50%に近いことがわかった。よって、binIdxの値が「2」以上のbinを、コンテキスト適応算術符号化ではなく、バイパス算術符号化を用いて符号化することによって、符号化効率の低下を抑制しつつ、処理を高速化あるいは処理負荷を低減することが可能となる。
【0092】
なお、本実施の形態によれば、binIdxの値が「2」以上のbinをバイパス算術符号化しているが、それに限られない。例えば、binIdxの値が「1」以上のbinがバイパス算術符号化により符号化されてもよい(変形例1)。また例えば、2値信号内の全てのbinがバイパス算術符号化により符号化されてもよい(変形例2)。
【0093】
図8に示すように、変形例1では、binIdxの値が「1」以上のbinがバイパス算術符号化により符号化される。つまり、コンテキスト適応算術符号化により符号化される、2値信号の第1部分は、2値信号の先頭のbinからなる。また、バイパス算術符号化により符号化される、2値信号の第2部分は、2値信号の残りのbinからなる。また、変形例2では、全てのbinがバイパス算術符号化により符号化される。
【0094】
ここで、これらの実施の形態1、変形例1、および変形例2における実験結果について説明する。この実験では、binIdxの値が「2」以上のbinをバイパス算術符号化する方法(実施の形態1)、binIdxの値が「1」以上のbinをバイパス算術符号化する方法(変形例1)、および、全てのbinをバイパス算術符号化する方法(変形例2)を実装したHEVC規格のテスト用ソフトウェアを用いた。
【0095】
図9は、従来と実施の形態1、変形例1、および変形例2との符号化効率を比較した実験結果を示す。実験条件は、HEVC規格化団体の共通実験条件に従っている。
図9の数値は、テスト用画像の先頭49フレームに対する結果である。値が大きいほど符号化効率が低下していることを示す。負の値は、従来(非特許文献1)と比べて符号化効率が向上していることを示す。
【0096】
図9に示す通り、実施の形態1と変形例1とでは、全ての条件において、値が−0.1〜0.1%の範囲内であった。つまり、実施の形態1および変形例1では、バイパス算術符号化によって処理を高速化したにも関わらず、符号化効率はほとんど変わらなかった。
【0097】
また、変形例2では、実施の形態1および変形例1に比べると符号化効率は低下したが、それでも全て1%以内であった。また、全てのフレームを画面内符号化する条件AIでは、ほとんど符号化効率は低下しなかった。
【0098】
したがって、多少符号化効率が低下しても処理高速化を優先するケースや画面内符号化を多用するケースでは、変形例2の符号化方法を用い、それ以外のケースでは実施の形態1や変形例1の符号化方法を用いて動画像を符号化してもよい。
【0099】
なお、binIdxが「2」以下のbinを、コンテキスト適応算術符号化を用いて符号化し、binIdxが「3」以上のbinを、バイパス算術符号化を用いて符号化する構成としてもよいことは言うまでもない。
【0100】
なお、本実施の形態では、SAOパラメータとして、SAO処理の種別を識別するsao_type_idxと、SAOのオフセット値を示すsao_offsetとが用いられているが、その限りではない。例えば、SAOパラメータは、画素を分類するための補助情報を示すパラメータを含んでもよい。また、SAOパラメータは、sao_offsetの符号ビット(正負)を表すsao_offset_signを含んでもよい。
【0101】
また、sao_type_idxは、SAO処理を実施しないことを示す情報を含んでもよい。例えば、sao_type_idxの値が「0」と一致する場合は、再構成ブロックにSAO処理を実施しないようにしてもよい。
【0102】
また、本実施の形態では、ブロック毎にSAOパラメータを符号化しているが、その限りではなく、ブロックよりも小さい単位でSAOパラメータを符号化してもよい。また、逆にブロックを複数連結した単位でSAOパラメータを符号化してもよい。また、対象ブロックではSAOパラメータを符号化せず、別のブロックの値をコピーして使うというような構成にしてもよい。
【0103】
また、本実施の形態では、sao_type_idxの値は0〜5であるが、その限りではない。sao_type_idxの最大値は、6以上であってもよいし、4以下であってもよい。
【0104】
例えば、sao_type_idxの最大値が「2」である場合について説明する。つまり、SAO処理の種別数が3つである場合について説明する。
【0105】
図10は、変形例3における多値信号(sao_type_idx)と2値信号との対応関係を示す。また、
図11は、変形例3におけるbinIdxとコンテキストとの対応関係を示す。
【0106】
この変形例3では、sao_type_idxの値が「0」と一致する場合は、再構成ブロックにSAO処理が適用されない。また、sao_type_idxの値が「1」と一致する場合は、再構成ブロックに第1SAO処理が適用される。また、sao_type_idxの値が「2」と一致する場合は、再構成ブロックに第2SAO処理が適用される。
【0107】
第1SAO処理は、例えば、バンドオフセット処理である。また、第2SAO処理は、例えば、エッジオフセット処理である。エッジオフセット処理では、複数の画素の各々について、当該画素の画素値と、当該画素に隣接する画素の画素値との差分に基づいて、当該画素が属するカテゴリを決定する。また、バンドオフセット処理では、画素値が取り得る値の範囲を複数の区分(バンド)に分割し、複数の画素の各々について、当該画素の画素値が属する区分に基づいて、当該画素が属するカテゴリを決定する。なお、エッジオフセット処理およびバンドオフセット処理の詳細については、非特許文献1等に開示されているので、ここでは省略する。
【0108】
図10および
図11に示すように、変形例3では、2値信号の先頭のbin(binIdx=0、第1部分)は、コンテキスト適応算術符号化により符号化される。また、2値信号の残りのbin(binIdx=1、第2部分)は、バイパス算術符号化により符号化される。
【0109】
ここでは、先頭のbinは、sao_type_idxの値が「0」と一致する場合にのみ「0」の値を有し、他の場合には「1」の値を有する。つまり、2値信号の第1部分は、sao_type_idxの値が所定値「0」と一致するか否かを示す。言い換えると、2値信号の第1部分は、再構成ブロックにSAO処理が適用されるか否かを示す。このように、再構成ブロックにSAO処理が適用されるか否かを示す部分をコンテキスト適応算術符号化で符号化し、他の部分をバイパス算術符号化で符号化することにより、さらに、符号化効率の低下を抑制しつつ、処理の高速化あるいは処理負荷の低減を図ることが可能となる。
【0110】
なお、sao_type_idxに限らず、符号列に付与する他のsyntaxに対し、本実施の形態あるいは変形例1〜3の符号化方法を適用してもよい。これにより、可変長符号化部の処理を共通化することができる。
【0111】
例えば、SAOオフセット値を示すsao_offset、参照画像のインデックスを示すref_idx、動きベクトル等を含む候補のリストからインター予測に用いる候補を識別するmerge_idx、または、画面内予測モードを識別するmpm_idxやintra_chroma_pred_modeに対して、2値信号の第2部分をバイパス算術符号化してもよい。なお、sao_offset、ref_idx、merge_idx、mpm_idx、およびintra_chroma_pred_modeについては、非特許文献1に開示されているので、詳細な説明を省略する。
【0112】
つまり、第1の2値信号の第1部分のビット長と、第2の2値信号の第1部分のビット長とは、一致してもよい。ここで、第1の2値信号は、サンプルオフセット処理の種別を識別するパラメータ(sao_type_idx)の値を2値化して得られる2値信号である。また、第2の2値信号は、画面内予測モードを識別するパラメータ(例えば、intra_chroma_pred_mode)の値と、動きベクトルを含む候補のリストからインター予測に用いる候補を識別するパラメータ(例えば、merge_idx)の値との少なくとも一方を2値化して得られる2値信号である。
【0113】
このように、sao_type_idxと他のsyntaxとでバイパス算術符号化する部分を統一にすることによって処理高速化だけでなく、共通の可変長符号化部を使うことによる装置の簡略化を実現することもできる。
【0114】
また、本実施の形態において、ブロックのサイズは、最大32×32、最小4×4であったが、これに限らない。また、ブロックのサイズは、可変ではなく、固定でもよい。
【0115】
また、サンプルオフセット処理は、非特許文献1に記載されるSAO処理に限定されない。つまり、サンプルオフセット処理は、再構成画像のサンプル値(画素値)をオフセットする処理であればよい。
【0116】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1の動画像符号化方法によって符号化された画像を復号する。特に、実施の形態1において符号化された、サンプルオフセット処理の種別を識別するパラメータを算術復号する。
【0117】
<全体構成>
図12は、実施の形態2における動画像復号装置200の構成を示す。この動画像復号装置200は、符号化ピクチャをブロック毎に復号する。
【0118】
図12に示すように、動画像復号装置200は、SAOパラメータ可変長復号部201と、係数可変長復号部202と、逆変換部203と、予測部204と、加算部205と、SAO処理部206と、ブロック結合部207と、フレームメモリ208とを備える。
【0119】
<動作(全体)>
次に、以上のように構成された動画像復号装置200の動作について説明する。
図13は、実施の形態2における動画像復号装置200の処理動作を示す。
【0120】
(ステップS201)
SAOパラメータ可変長復号部201は、符号列(ビットストリーム)に含まれる符号化されたSAOパラメータを可変長復号(エントロピー復号)する。
【0121】
(ステップS202)
係数可変長復号部202は、符号列に含まれる符号化された周波数係数を可変長復号し、逆変換部203へ出力する。
【0122】
(ステップS203)
逆変換部203は、周波数係数を画素データに逆変換し、残差ブロックを生成する。
【0123】
(ステップS204)
予測部204は、フレームメモリ208に格納されている、既に復号されたピクチャに基づいて、予測ブロックを生成する。
【0124】
(ステップS205)
加算部205は、予測ブロックと残差ブロックとを加算して再構成ブロックを生成する。
【0125】
(ステップS206)
SAO処理部206は、SAOパラメータに従って、再構成ブロックに含まれる複数の画素を複数のカテゴリに分類する。そして、カテゴリ毎に対応したオフセット値を加算する。つまり、SAO処理部206は、SAOパラメータを用いて、再構成ブロックにSAO処理を適用する。ここでは、SAOパラメータは、SAO処理の種別を識別するパラメータ(sao_type_idx)とオフセット値を示すパラメータ(sao_offset)とを含む。
【0126】
なお、このSAO処理は、実行されなくてもよい。例えば、sao_type_idxの値が所定値と一致する場合には、SAO処理が実行されなくてもよい。
【0127】
(ステップS207)
復号対象ピクチャ内の全ブロックの復号が完了するまでステップS201〜ステップS206を繰り返す。
【0128】
(ステップS208)
ブロック結合部207は、複数のブロックを結合することによって復号ピクチャを生成する。また、ブロック結合部207は、復号ピクチャをフレームメモリ208に格納する。
【0129】
以降、SAOパラメータ可変長復号部201およびその動作(ステップS201)について詳細を説明する。
【0130】
<SAOパラメータ可変長復号部の構成>
図14は、実施の形態2におけるSAOパラメータ可変長復号部201の内部構成を示す。
図14に示すように、SAOパラメータ可変長復号部201は、sao_type_idx復号部221と、sao_offset復号部222とを備える。
【0131】
<動作(SAOパラメータ可変長復号)>
次に、以上のように構成されたSAOパラメータ可変長復号部201の動作について説明する。
図15は、実施の形態2におけるSAOパラメータ可変長復号部201の処理動作を示す。
【0132】
(ステップS221)
sao_type_idx復号部221は、符号化されたsao_type_idxを復号する。
【0133】
(ステップS222)
sao_offset復号部222は、符号化されたsao_offsetを復号する。
【0134】
以降、sao_type_idx復号部221およびその動作(ステップS221)について詳細を説明する。
【0135】
<sao_type_idx復号部の構成>
図16は、実施の形態2におけるsao_type_idx復号部221の内部構成を示す。
図16に示すように、sao_type_idx復号部221は、sao_type_idx算術復号部240と、sao_type_idx多値化部250とを備える。
【0136】
sao_type_idx算術復号部240は、再構成ブロックに適用されるSAO処理の種別を識別するsao_type_idxの値に対応する2値信号の符号化された少なくとも一部をバイパス算術復号により復号する。
図16に示すように、sao_type_idx算術復号部240は、算術復号切替部241と、第1コンテキスト適応算術復号部242と、第2コンテキスト適応算術復号部243と、バイパス算術復号部244とを備える。
【0137】
sao_type_idx多値化部250は、復号された2値信号をsao_type_idxの値に変換する。
図16に示すように、sao_type_idx多値化部250は、最終bin判定部251と、sao_type_idx設定部252とを備える。
【0138】
<動作(sao_type_idx復号)>
次に、以上のように構成されたsao_type_idx復号部221の動作について詳細を説明する。
図17は、実施の形態2におけるsao_type_idx復号部221の処理動作を示す。
【0139】
(ステップS241〜S246)
算術復号切替部241は、処理対象binのbinIdxの値を判定する。そして、算術復号切替部241は、判定されたbinIdxの値に基づいて、符号化されたbinの算術復号を行う処理部(構成要素)を切り替える。具体的には、binIdxの値が「0」と一致する場合は、算術復号切替部241は、第1コンテキスト適応算術復号部242に切り替える。また、binIdxの値が「1」と一致する場合は、算術復号切替部241は、第2コンテキスト適応算術復号部243に切り替える。また、binIdxの値が「0」とも「1」とも一致しない場合は、算術復号切替部241は、バイパス算術復号部244に切り替える。
【0140】
つまり、第1コンテキスト適応算術復号部242は、コンテキスト0を用いて、「0」の値を有するbinIdxの符号化されたbinを算術復号する。また、第2コンテキスト適応算術復号部243は、コンテキスト1を用いて、「1」の値を有するbinIdxの符号化されたbinを算術復号する。また、バイパス算術復号部244は、コンテキストを用いずに、固定確率「50%」を用いて、2以上の値を有するbinIdxの符号化されたbinを算術復号する。
【0141】
ここで、コンテキスト適応算術符号化により符号化されるbin(本実施の形態では、「0」および「1」の値を有するbinIdxで識別されるbin)のセットを、2値信号の第1部分と呼ぶ。また、バイパス算術符号化により符号化されるbin(本実施の形態では、2以上の値を有するbinIdxで識別されるbin)のセットを、2値信号の第2部分と呼ぶ。
【0142】
つまり、本実施の形態では、2値信号の符号化された第1部分は、コンテキスト適応算術復号により復号される。また、2値信号が第1部分の後に第2部分を含む場合に、2値信号の符号化された第2部分は、バイパス算術復号により復号される。
【0143】
(ステップS247〜S248)
最終bin判定部251は、算術復号結果であるbinの値が「0」と一致する場合、もしくは、binIdxの値が「4」と一致する場合は、符号化されたbinの算術復号を完了し、ステップS249へ進む。一方、binの値が「1」と一致し、かつ、binIdxの値が3以下である場合は、最終bin判定部251は、binIdxの値に「1」を加算し、ステップS242へ進む。
【0144】
(ステップS249〜S251)
sao_type_idx設定部252は、binIdxの値をsao_type_idxに設定する。また、binIdxの値が「4」と一致し、かつ、binの値が「1」と一致する場合は、sao_type_idxに「5」を設定する。これらのステップS249〜S251によって、2値信号の最後に「0」が無くても、2値信号からsao_type_idxの値「5」に変換することができる。2値信号と多値信号の対応関係は、実施の形態1の
図7と同様である。
【0145】
<効果>
以上、本実施の形態によれば、実施の形態1において符号化されたsao_type_idxを復号することができる。つまり、sao_type_idxの値に対応する2値信号の符号化された少なくとも一部をバイパス算術復号により復号することができる。したがって、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。例えば、符号化効率の低下を抑制しつつ、処理の高速化あるいは処理負荷の低減を図ることができる。
【0146】
なお、本実施の形態に対して、実施の形態1と同様の変形例を適用することもできる。つまり、
図8、
図10および
図11に示す変形例1〜3において符号化されたsao_type_idxを復号してもよい。
【0147】
また、本実施の形態においても、例えば、SAOオフセット値を示すsao_offset、参照画像のインデックスを示すref_idx、動きベクトル等を含む候補のリストからインター予測に用いる候補を識別するmerge_idx、または、画面内予測モードを識別するmpm_idxやintra_chroma_pred_modeに対して、2値信号の符号化された第2部分をバイパス算術復号してもよい。つまり、第1の2値信号の第1部分のビット長と、第2の2値信号の第1部分のビット長とは、一致してもよい。
【0148】
以上、1つまたは複数の態様に係る動画像符号化装置および動画像復号装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0149】
例えば、動画像符号化装置は、
図1に示す構成要素の一部を備えなくてもよく、
図2に示すステップの一部を実行しなくてもよい。また、動画像復号装置は、
図12に示す構成要素の一部を備えなくてもよく、
図13に示すステップの一部を実行しなくてもよい。以下にそのような動画像符号化装置および動画像復号装置の一例を説明する。
【0150】
図18Aは、他の実施の形態に係る動画像符号化装置300の構成を示す。また、
図18Bは、他の実施の形態に係る動画像符号化装置300の処理動作を示す。
【0151】
動画像符号化装置300は、2値化部(2値化器)301と、算術符号化部(算術符号化器)302とを備える。
【0152】
2値化部301は、実施の形態1におけるsao_type_idx2値化部140に相当する。2値化部301は、サンプルオフセット処理の種別を識別するパラメータの値を2値信号に変換する(S301)。
【0153】
算術符号化部302は、実施の形態1におけるsao_type_idx算術符号化部150に相当する。算術符号化部302は、固定確率が用いられるバイパス算術符号化により、2値信号の少なくとも一部を符号化する(S302)。
【0154】
このような動画像符号化装置300であっても、サンプルオフセット処理の種別を識別するパラメータの値に対応する2値信号の少なくとも一部をバイパス算術符号化により符号化することができるので、符号化効率の低下を抑制しつつ、処理の高速化あるいは処理負荷の低減を図ることができる。
【0155】
図19Aは、他の実施の形態に係る動画像復号装置400の構成を示す。また、
図19Bは、他の実施の形態に係る動画像復号装置400の処理動作を示す。
【0156】
動画像復号装置400は、算術復号部(算術復号器)401と、多値化部(多値化器)402とを備える。
【0157】
算術復号部401は、実施の形態2におけるsao_type_idx算術復号部240に対応する。算術復号部401は、符号化画像から得られる再構成画像に適用されるサンプルオフセット処理の種別を識別するパラメータの値に対応する2値信号の符号化された少なくとも一部を、固定確率が用いられるバイパス算術復号により復号する(S401)。
【0158】
多値化部402は、実施の形態2におけるsao_type_idx多値化部250に対応する。多値化部402は、復号された2値信号を、サンプルオフセット処理の種別を識別するパラメータの値に変換する(S402)。
【0159】
このような動画像復号装置400であっても、サンプルオフセット処理の種別を識別するパラメータの値に対応する2値信号の符号化された少なくとも一部をバイパス算術復号により復号することができるので、符号化効率の低下を抑制しつつ、処理の高速化あるいは処理負荷の低減を図ることができる。
【0160】
なお、上記各実施の形態において、機能ブロックの各々は、通常、MPUやメモリ等によって実現可能である。また、機能ブロックの各々による処理は、通常、ソフトウェア(プログラム)によって実現することができ、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。そして、このようなソフトウェアをダウンロード等により配布してもよいし、CD−ROMなどの記録媒体に記録して配布してもよい。なお、各機能ブロックをハードウェア(専用回路)によって実現することも、当然、可能である。
【0161】
また、各実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、あるいは、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0162】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0163】
言い換えると、動画像符号化装置および動画像復号装置は、制御回路(control circuitry)と、当該制御回路に電気的に接続された(当該制御回路からアクセス可能な)記憶装置(storage)とを備えてもよい。制御回路は、専用のハードウェアおよびプログラム実行部の少なくとも一方を含んでもよい。また、記憶装置は、制御回路がプログラム実行部を含む場合には、当該プログラム実行部により実行されるソフトウェアプログラムを記憶してもよい。
【0164】
ここで、上記各実施の形態の動画像符号化装置および動画像復号装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0165】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、入力画像を符号化する動画像符号化方法であって、前記入力画像に対応する再構成画像に適用されるサンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータの値を第1の2値信号に変換し、固定確率が用いられるバイパス算術符号化により、前記第1の2値信号の少なくとも一部を符号化する動画像符号化方法を実行させる。
【0166】
また、このプログラムは、コンピュータに、符号化画像を復号する動画像復号方法であって、前記符号化画像から得られる再構成画像に適用されるサンプルオフセット処理の種別を識別する第1パラメータの値に対応する第1の2値信号の符号化された少なくとも一部を、固定確率が用いられるバイパス算術復号により復号し、復号された前記第1の2値信号を前記第1パラメータの値に変換する動画像復号方法を実行させる。
【0167】
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)または動画像復号化方法(画像復号方法)の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
【0168】
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)や動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例とそれを用いたシステムを説明する。当該システムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、及び画像復号方法を用いた画像復号装置からなる画像符号化復号装置を有することを特徴とする。システムにおける他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
【0169】
図20は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
【0170】
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
【0171】
しかし、コンテンツ供給システムex100は
図20のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
【0172】
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
【0173】
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号化処理して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
【0174】
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号化処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
【0175】
また、これら符号化・復号化処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号化処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
【0176】
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
【0177】
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号化し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
【0178】
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、
図21に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)または動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した動画像符号化方法により符号化されたデータである(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置によって符号化されたデータである)。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号化して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
【0179】
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号化する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した動画像復号化装置または動画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に動画像復号化装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に動画像復号化装置を組み込んでもよい。
【0180】
図22は、上記各実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
【0181】
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号化する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305(本発明の一態様に係る画像符号化装置または画像復号装置として機能する)を有する信号処理部ex306と、復号化した音声信号を出力するスピーカex307、復号化した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
【0182】
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号化し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号化し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号化方法を用いて復号化する。復号化した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
【0183】
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号化処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
【0184】
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号化処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
【0185】
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を
図23に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
【0186】
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
【0187】
図24に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
【0188】
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
【0189】
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば
図22に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
【0190】
図25Aは、上記実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号化されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号化されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
【0191】
さらに、携帯電話ex114の構成例について、
図25Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
【0192】
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
【0193】
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
【0194】
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
【0195】
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
【0196】
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
【0197】
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号化するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって復号化することにより映像信号を復号し(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
【0198】
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号化器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
【0199】
このように、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法あるいは動画像復号化方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
【0200】
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0201】
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置と、MPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
【0202】
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
【0203】
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG−2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
【0204】
図26は、多重化データの構成を示す図である。
図26に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC−3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS−HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
【0205】
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
【0206】
図27は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
【0207】
図28は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。
図28における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。
図28の矢印yy1,yy2,yy3,yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time−Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time−Stamp)が格納される。
【0208】
図29は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD−ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには
図29下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
【0209】
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
【0210】
図30はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
【0211】
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
【0212】
多重化データ情報ファイルは、
図31に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
【0213】
多重化データ情報は
図31に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
【0214】
ストリーム属性情報は
図32に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
【0215】
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
【0216】
また、本実施の形態における動画像復号化方法のステップを
図33に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した動画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
【0217】
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号化方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、または、動画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
【0218】
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法および装置、動画像復号化方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、
図34に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
【0219】
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
【0220】
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
【0221】
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
【0222】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0223】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。このようなプログラマブル・ロジック・デバイスは、典型的には、ソフトウェア又はファームウェアを構成するプログラムを、ロードする又はメモリ等から読み込むことで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法、又は動画像復号化方法を実行することができる。
【0224】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【0225】
(実施の形態6)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
【0226】
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号化装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。
図35は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
【0227】
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、
図34のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、
図34の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態4で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態4で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、
図37のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
【0228】
図36は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
【0229】
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
【0230】
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4−AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
【0231】
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
【0232】
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
【0233】
(実施の形態7)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
【0234】
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した動画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を
図38Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した動画像復号方法と、MPEG4−AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4−AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4−AVC規格に対応しない、本発明の一態様に特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。特に、本発明の一態様は、エントロピー復号に特徴を有していることから、例えば、エントロピー復号については専用の復号処理部ex901を用い、それ以外の逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償のいずれか、または、全ての処理については、復号処理部を共有することが考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4−AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
【0235】
また、処理を一部共有化する他の例を
図38Bのex1000に示す。この例では、本発明の一態様に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の一態様に係る動画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明の一態様、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
【0236】
このように、本発明の一態様に係る動画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。