特許第6288429号(P6288429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288429
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/78 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   A01D34/78 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-28757(P2014-28757)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-149965(P2015-149965A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】飯村 良雄
(72)【発明者】
【氏名】西河 智雅
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴士
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋也
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−214260(JP,A)
【文献】 特開2010−076051(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/157066(WO,A1)
【文献】 特開2013−255962(JP,A)
【文献】 特開2014−023542(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0228041(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00−34/90
B25F 5/00−5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータにより駆動される作業部と、
前記ブラシレスモータを駆動制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、複数のスイッチング素子及び前記スイッチング素子の制御回路を設けた制御基板と、前記制御基板を収容し、樹脂材が充填されるトレー状容器と、前記制御基板に接続される複数のモータ送電線と、前記スイッチング素子を冷却する冷却フィンとを有し、
前記スイッチング素子は、前記制御基板における前記トレー状容器の開口側の第1基板面に設けられ、前記トレー状容器は、前記スイッチング素子ごと前記制御基板を収容する深さとされ、前記冷却フィンは、前記第1基板面側の前記スイッチング素子より開口側に設けられ、前記トレー状容器内に充填される樹脂材に埋設され前記樹脂材より突出するとともに、前記モータ送電線は、前記制御基板における前記トレー状容器の閉口側の第2基板面に接続され、かつ前記トレー状容器の開口側に回り込んでから前記樹脂材より引き出されて前記ブラシレスモータに駆動電流を供給することを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機において、前記複数のスイッチング素子は、ハイサイド素子とローサイド素子とからなり、前記モータ送電線は前記第2基板面の前記ハイサイド素子と前記ローサイド素子の間に接続されることを特徴とする電動作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動作業機において、前記モータ送電線は、前記第2基板面に対し鋭角を成すように接続されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項4】
請求項3に記載の電動作業機において、前記複数のモータ送電線がそれぞれ挿入される前記制御基板の複数の送電線接続穴は長穴であることを特徴とする電動作業機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動作業機において、前記長穴の長手方向が互いに非平行であることを特徴とする電動作業機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電動作業機において、前記冷却フィンは、固定部材を介し、前記トレー状容器に固定されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電動作業機において、前記制御回路によって複数の動作モードが切り替え可能であり、前記動作モードの切り替えの指示及び動作モードを表示する操作基板を前記コントローラが有し、前記操作基板は前記トレー状容器の外面部に設けられていることを特徴とする電動作業機。
【請求項8】
請求項7に記載の電動作業機において、前記操作基板は前記トレー状容器にネジにより固定され、前記操作基板と前記制御基板は前記トレー状容器の開口側を介して複数のリードワイヤで接続されることを特徴とする電動作業機。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の電動作業機において、前記トレー状容器の内側底面に凹部が形成され、前記モータ送電線は前記凹部を通過することを特徴とする電動作業機。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の電動作業機において、前記制御基板の縁に切欠が設けられており、前記モータ送電線は前記切欠を通過して前記トレー状容器の開口側から引き出されていることを特徴とする電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータを使用する電動作業機に関し、特に、モータを駆動制御するコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
操作者が手動操作する電動作業機として、下記特許文献1に示すような電動芝刈機がある。この電動芝刈機は電池電源により電動モータを作動させ、これでカッタブレードを回転駆動して芝刈りを行うものである。
【0003】
ところで、電動作業機は操作者が手動操作するため、小型化の要求が高い。これに応じて近年では小型のモータで高い出力を達成できるブラシレスモータを搭載した電動作業機(電動工具)が提案されている(下記特許文献2)。
【0004】
ブラシレスモータを搭載した電動作業機は、スイッチング素子を搭載した制御基板を含むコントローラが必要であり、モータは小型化可能であるものの、モータを駆動制御する制御基板の小型化が課題である。特許文献2では制御基板が、複数のスイッチング素子を搭載した基板部分とスイッチング素子の制御回路を搭載した基板部分とに分割されており、複数の基板を有しているために配線が複雑になり、コントローラの価格が高くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−70168号公報
【特許文献2】特許第4947490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、ブラシレスモータを搭載した電動作業機が広まりつつあるが、ブラシレスモータを搭載した電動作業機は、モータは小型化可能であるものの、モータを駆動制御する制御基板の小型化、及びこれを内蔵したコントローラの小型化が課題であった。
【0007】
また、コントローラの小型化とともに低価格化は大きな課題である。低価格を実現するためには、基板構成特に配線及び防水方法の簡素化が有効であると考えられるが、これまでは基板構成が複雑であるとともに、防水処理に手間を要していたため、低価格化を実現できなかった。
【0008】
そこで本発明の目的は、コントローラにおける基板構成を簡素化し、制御基板の防水処理を容易に実施できるようにし、ひいてはコントローラの低価格化を図ることのできる電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は電動作業機である。この電動作業機は、ブラシレスモータと、前記ブラシレスモータにより駆動される作業部と、前記ブラシレスモータを駆動制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、複数のスイッチング素子及び前記スイッチング素子の制御回路を設けた制御基板と、前記制御基板を収容し、樹脂材が充填されるトレー状容器と、前記制御基板に接続される複数のモータ送電線と、前記スイッチング素子を冷却する冷却フィンとを有し、
前記スイッチング素子は、前記制御基板における前記トレー状容器の開口側の第1基板面に設けられ、前記トレー状容器は、前記スイッチング素子ごと前記制御基板を収容する深さとされ、前記冷却フィンは、前記第1基板面側の前記スイッチング素子より開口側に設けられ、前記トレー状容器内に充填される樹脂材に埋設され前記樹脂材より突出するとともに、前記モータ送電線は、前記制御基板における前記トレー状容器の閉口側の第2基板面に接続され、かつ前記トレー状容器の開口側に回り込んでから前記樹脂材より引き出されて前記ブラシレスモータに駆動電流を供給することを特徴とする。
【0010】
前記態様において、前記複数のスイッチング素子は、ハイサイド素子とローサイド素子とからなり、前記モータ送電線は前記第2基板面の前記ハイサイド素子と前記ローサイド素子の間に接続されるとよい。
【0011】
前記態様において、前記モータ送電線は、前記第2基板面に対し鋭角を成すように接続されているとよい。
【0012】
前記態様において、前記複数のモータ送電線がそれぞれ挿入される前記制御基板の複数の送電線接続穴は長穴であるとよい。また、前記態様において、前記長穴の長手方向が互いに非平行であるとよい。
【0014】
前記態様において、前記冷却フィンは、固定部材を介し、前記トレー状容器に固定されているとよい。
【0015】
前記態様において、前記制御回路によって複数の動作モードが切り替え可能であり、前記動作モードの切り替えの指示及び動作モードを表示する操作基板を前記コントローラが有し、前記操作基板は前記トレー状容器の外面部に設けられている構成であるとよい。
【0016】
前記態様において、前記操作基板は前記トレー状容器にネジにより固定され、前記操作基板と前記制御基板は前記トレー状容器の開口側を介して複数のリードワイヤで接続されるとよい。
【0017】
前記態様において、前記トレー状容器の内側底面に凹部が形成され、前記モータ送電線は前記凹部を通過する構成であるとよい。
【0018】
前記態様において、前記制御基板の縁に切欠が設けられており、前記モータ送電線は前記切欠を通過して前記トレー状容器の開口側から引き出されているとよい。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電動作業機によれば、コントローラが具備する制御基板の基板構成を簡素化し、防水処理を容易に実施できるようにして、コントローラの低価格化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る電動作業機の第1の実施の形態であるコードレスタイプの芝刈機の側面図。
図2】前記芝刈機の主要部の分解斜視図。
図3】前記芝刈機が具備するコントローラ全体の斜視図。
図4】前記コントローラの樹脂材充填前の側断面図。
図5】前記コントローラの樹脂材充填後の側断面図。
図6】前記コントローラが有する制御基板をトレー状容器の閉口側から見た部分底面図。
図7】スイッチング素子やモータ送電線を省略して前記制御基板を表示した部分底面図。
図8】前記芝刈機の回路図。
図9】前記コントローラのトレイ状容器を示す斜視図。
図10】本発明の第2の実施の形態におけるコントローラの制御基板をトレー状容器の閉口側から見た部分底面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
図1は本発明に係る電動作業機の第1の実施の形態であるコードレスタイプの芝刈機の全体構成を示す側面図であり、図2は主要部の分解斜視図である。これらの図において、芝刈機1は、本体ハウジング2と、この内側に取り付けられるブラシレスモータ3及び電池受けケース4と、本体ハウジング2の上側に固定されるハウジングカバー5と、電池受けケース4の内側に電池パック(バッテリパック)6を収納後に電池受けケース4の上部開口を塞ぐ電池カバー7とを有している。本体ハウジング2の前側及び後側にはそれぞれ一対の車輪8が回転自在に取り付けられており、本体ハウジング2の上部には斜め後方に延びるようにハンドル9が連結されている。また、ハンドル9には操作レバー10が取り付けられ、操作レバー10によって図8のスイッチトリガ53を作動させ、後述する制御回路50を介してブラシレスモータ3の動作/停止を切り替え可能となっている。本体ハウジング2の後部には集草ケース11が着脱自在に装着されている。図2のブラシレスモータ3は上下方向の出力軸を有し、この出力軸の下端に、芝刈り作業部を構成する刈刃12が固着されている。ブラシレスモータ3を制御するためのコントローラ20は電池受けケース4の側面に取り付けられ、電池受けケース4と共に本体ハウジング2の内側に収納、固定されている。
【0024】
芝刈機1においては、電池パック6による電源でブラシレスモータ3を駆動し、刈刃12を回転させ芝刈作業を行う。図示せぬ作業者はハンドル9を把持しレバー10を操作することで、ブラシレスモータ3の動作/停止を切り替えることができ、作業者はブラシレスモータ3を動作させながら草刈作業時に芝刈機1を押し引きすることで、芝刈機1は車輪8により地面Gの上を移動させられ、地面G上の図示せぬ芝が刈り込まれる。また、刈り取った芝は集草ケース11へ収納されるようになっている。
【0025】
図3乃至図5は芝刈機1が具備するコントローラ20の全体構成を示し、図6はコントローラ20が有する制御基板30をトレー状容器31の閉口側から見た部分底面を示し、図7はスイッチング素子37やモータ送電線36を省略した制御基板30を表示している。また、図8は電池パック6を電源としてブラシレスモータ3を作動させるコントローラ20を含む回路構成を示す。コントローラ20はブラシレスモータ3を駆動制御するものであり、図1の操作レバー10による信号によりブラシレスモータ3の動作/停止制御や、後述する操作基板40の信号に応じてブラシレスモータ3の動作回転数設定の制御を行う。
【0026】
図3乃至図8に示すように、コントローラ20は、複数のスイッチング素子37及びスイッチング素子37の制御回路50を設けた制御基板30と、制御基板30を収容するトレー状容器31と、操作基板40とを有している。
【0027】
制御基板30に搭載された制御回路50は演算部51(マイクロプロセッサ)を含むものであり、また制御基板30には、電池パック6より制御基板30に給電する給電線35と、ブラシレスモータ3に駆動電流を供給するモータ送電線36とが接続されている。また、各スイッチング素子37を冷却するために冷却フィン32が設けられている。操作基板40にはモード切替スイッチ41及び電池残量表示スイッチ42が設けられるとともに、モード表示部(LED)43及び電池残量表示部(LED)44が設けられている。また、制御基板30と操作基板40は複数の信号線(リードワイヤ)45で接続されている。なお、操作基板40は、動作モードの切り替えの指示及び動作モードを表示するものであり、操作基板40上の各スイッチや表示部は図2のハウジングカバー5から操作及び表示可能に露出している。
【0028】
図8に示すように、直流電源としての電池パック6の直流電力は、3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子37(37a,37b)からなるインバータ回路、ブラシレスモータ3、電流検出抵抗R1及び動作/停止の切替のためのスイッチング素子61の経路で、ブラシレスモータ3に供給されるようになっている。また、電池パック6とスイッチング素子61の直列回路と並列に、キャパシタ63(電気二重層キャパシタ等の大容量キャパシタ)とスイッチング素子62の直列回路が接続され、スイッチング素子62がオンのときにキャパシタ63を充電しておきブラシレスモータ3に大電力を供給可能とする。ブラシレスモータ3は例えば3相のブラシレスDCモータであり、ブラシレスモータ3のロータの回転位置を検出するために、回転位置検出素子(ホール素子など)65が設けられている。
【0029】
前記3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子37のうち、高圧側の3個はハイサイド素子37aで、低圧側の3個はローサイド素子37bであり、各モータ送電線36は直列接続されたハイサイド素子37aとローサイド素子37bの接続点と、ブラシレスモータ3のステータ巻線とを接続している。
【0030】
制御回路50は、演算部51、スイッチング素子37をオン、オフする制御信号を出力する制御信号回路52、電流検出抵抗R1の電圧降下からモータ電流を検出する電流検出回路54、スイッチトリガ53により作動されるスイッチ操作検出回路55、モード切替スイッチ41で作動されるスイッチ操作検出回路56、電池残量表示スイッチ42で作動されるスイッチ操作検出回路57、電池パック6の供給電圧を検出する電圧検出回路58、回転位置検出素子65の出力信号を受けてロータの回転位置を検出する回転位置検出回路59、及びブラシレスモータ3の回転数を検出する回転数検出回路60を有している。
【0031】
演算部51は、図示していないが、処理プログラムとデータに基づいて制御信号回路52への駆動信号を出力するための中央処理装置(CPU)と、処理プログラムや制御データを記憶するためのROMと、データを一時記憶するためのRAMと、タイマとを含んで構成される。そして、演算部51は、回転位置検出回路59や回転数検出回路60の出力信号に基づいて所定のハイサイド素子37aとローサイド素子37bを適切にスイッチングするための駆動信号を形成し、その駆動信号を制御信号回路52に出力し、制御信号回路52の制御信号で各スイッチング素子37を所定タイミング、所定パルス幅でスイッチングしてステータ巻線に通電し、ロータを設定された回転方向に所定速度で回転させる。
【0032】
なお、モード切替スイッチ41の操作に従って、高速回転モード/低速回転モードを切り替え可能であり、そのモード状態がモード表示部43で表示される。また、電池残量表示スイッチ42の操作に従って、電池残量を電池残量表示部44に表示可能である。
【0033】
図4及び図5はコントローラ20の側断面図であり、制御基板30はトレー状容器31内に収容されており、トレー状容器31の内側底面から立ち上がったネジボス部31aの周囲に併設された図9のリブ31cにより所定高さで支持されている。スイッチング素子37は、制御基板30におけるトレー状容器31の開口側の第1基板面に設けられ、第1基板面側にスイッチング素子37を冷却する冷却フィン32が絶縁シート32bを介してスイッチング素子37のパッケージに当接するように取り付けられている。すなわち、冷却フィン32は、これを上から押さえる固定部材33を、トレー状容器31の内側底面から立ち上がったネジボス部31aにネジ止めにて固定することで、スイッチング素子37のパッケージ側に押された状態で固定される。また、制御基板30には、図2及び図8のブラシレスモータ3へ駆動電流を供給するモータ送電線36が接続されている。モータ送電線36は制御基板30におけるトレー状容器31の閉口側の第2基板面(第1基板面の反対側(裏側))に取り付けられると共に、トレー状容器31の開口側より引き出され、ブラシレスモータ3に駆動電流を供給している。これにより、制御基板30及びスイッチング素子37、冷却フィン32、モータ送電線36等全てをトレー状容器31内に開口側からのみ設置、若しくは引き出すことが可能であり、容易に組立作業を行うことが可能で、従って、低価格化を実現することが可能となる。
【0034】
図6は制御基板30をトレー状容器31の閉口側から見た部分底面図で、図7はスイッチング素子やモータ送電線を省略して制御基板30のみを表示した部分底面図ある。これらの図に示すように、スイッチング素子37はハイサイド素子37aとローサイド素子37bからなり、モータ送電線36は、スイッチング素子37のハイサイド素子37aとローサイド素子37bの間の第2基準面(トレー状容器31の閉口側)に取り付けられている。これにより、図8で示した回路図にならったハイサイド素子37aとローサイド素子37bとモータ送電線36の配置とすることが可能となり、制御基板30の小型化を実現することが可能となる。
【0035】
また、図4に示すように、制御基板30に接続されるモータ送電線36は、接続部(図7の送電接続穴30aへの挿入部)において、制御基板30の基板面に対し直角とならないよう取付角α(鋭角)で取り付けられている。これにより、制御基板30のトレー状容器31の閉口側となる第2基板面に取り付けられるモータ送電線36を容易にトレー状容器31内に設置することが可能となり、さらに、容易に組立作業を行うことが可能となり、従って、低価格化を実現することが可能となる。
【0036】
また、図7に示すように、モータ送電線36を挿入するための制御基板30側の送電接続穴(スルーホール)30aは長穴となっている。これにより、制御基板30に接続されるモータ送電線36は、図4のように接続部において、制御基板30の基板面に対し直角とならないよう取付角αで取り付ける際に、容易に取付角αを設定することが可能となる。従って、モータ送電線36の制御基板30への取り付け作業を容易にすることが可能となり、低価格化を実現することが可能となる。
【0037】
さらに、長穴の送電接続穴30aは、長穴の長手方向が互いに平行とならないようにしている。これにより、図6に示すように、モータ送電線36の制御基板30への接続方向を互いに左右にずらすことが可能となり、モータ送電線36を制御基板30に沿って容易に並べることが可能となる。従って、図4及び図5に示すように、制御基板30のトレー状容器31の閉口側の第2基板面に取り付けられるモータ送電線36をトレー状容器31内に容易に効率よく設置することが可能となり、さらに、容易に組立作業を行うことが可能となる。従って、低価格化を実現することが可能となる。
【0038】
また、図5のように、冷却フィン32は、トレー状容器31の開口より突出するとともに、トレー状容器31内底部には樹脂材38が開口を上にした状態にて充填されている。トレー状容器31には一面の開口以外に貫通する箇所はなく、また、トレー状容器31には電気的な接続端子も設けられていない。これにより、充填される樹脂材38が硬化剤等による硬化性の樹脂材の場合、樹脂漏れ等の問題もなく、安定して充填作業が可能となる。従って、容易に防水処理、組立作業を行うことが可能となり、低価格化を実現することが可能となる。また、冷却フィン32は、トレー状容器31の開口側に設けられることから、冷却フィン32の一部を樹脂材38の外部及びトレー状容器31の外部に設定することが可能となり、送風や対流による冷却効果を発揮することが可能となる。これにより、防水処理を行っても安定した冷却効果を実現することが可能となる。
【0039】
芝刈機1は、前述したように演算部51によって複数の動作モードを有し、前記動作モードが切り替え可能である。図3に示すように、動作モードの切り替えの指示及び動作モードを表示する操作基板40は、トレー状容器31の側面部に設けられている(トレー状容器31にネジ止めにより固定されている)。そして、操作基板40と制御基板30はトレー状容器31の開口側を介して複数の信号線45で接続されている。
【0040】
図9は本実施の形態の制御基板30が取り付けられていない状態におけるトレイ状容器31を示す。トレー状容器31の内側底面及び側面に連続する凹部31bが形成されており、制御基板の第2基板面(トレー状容器31の閉口側)に接続されたモータ送電線は凹部31bを通過してトレー状容器31の開口側に引き出されるようにする。すなわち、本実施の形態の制御基板30においては、駆動信号を出力する演算部51が設けられる領域と、駆動信号により動作してステータ巻線への通電を行う駆動回路(スイッチング素子37を含むインバータ回路)が設けられる領域とをトレー状容器31に収容された一枚の制御基板30上に隣接して設けており、駆動回路が設けられる領域においては径の大きなモータ送電線36の配線のためその収容部の底部を演算部51に対向する底部より深く形成している。凹部31bはトレー状容器31の内側側面に連続形成されているが、トレー状容器の内側底面のみ凹部を設けてもよい。
【0041】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0042】
(1) コントローラ20は、制御基板30と、制御基板30を収容するトレー状容器31と、制御基板30に接続されるモータ送電線36とを有し、スイッチング素子37は、制御基板30におけるトレー状容器31の開口側の第1基板面に設けられ、モータ送電線36は、制御基板30におけるトレー状容器31の閉口側の第2基板面に接続され、かつトレー状容器31の開口側より引き出される構成であり、トレー状容器31に配線用引出穴等が不要であり、防水処理が容易となり、容易に組立作業を行うことが可能で、低価格化を実現することが可能となる。
【0043】
(2) トレー状容器31内底部に樹脂材38を充填して制御基板30を樹脂注形で固定する構成であるが、トレー状容器31には開口以外に貫通部がなく、電気的な接続端子も設けられていないので、樹脂漏れ等の問題もなく、安定して充填作業が可能となる。従って、容易に防水処理、組立作業を行うことが可能となり、低価格化を実現することが可能となる。
【0044】
(3) スイッチング素子37を冷却するための冷却フィン32は、制御基板30の第1基板面側に設けられており、固定部材33をトレー状容器31のネジボス部31aにネジ止めすることで、固定されている。これにより、冷却フィン31に固定用の穴等を設けることなく、安価に冷却フィン31を製作することが可能となる。従って、低価格化を実現することが可能となる。また、冷却フィン31がトレー状容器31の開口より突出することで、充分な冷却効率を確保できる。
【0045】
(4) 操作基板40を、トレー状容器31の外面部の一つである側面部に設け、操作基板40と制御基板30とをトレー状容器31の開口側を介して複数の信号線45で接続する構成としており、トレー状容器31の一部を操作基板40の設置場所として併用することが可能となり、コントローラ20をコンパクトにすることが可能となる。また、トレー状容器31の開口以外に操作基板40と電気的に接続するために、貫通部や端子を設ける必要がなく、樹脂材38による制御基板30の防水処理を安定的に実施することが可能となり、低価格化を実現することが可能となる。
【0046】
(5) インバータ回路を構成するスイッチング素子37はハイサイド素子37aとローサイド素子37bとからなり、モータ送電線36は、制御基板30におけるハイサイド素子37aとローサイド素子37b間の第2基板面(トレー状容器31の閉口側)に接続される構成であり、図8で示した回路図にならったハイサイド素子37aとローサイド素子37bとモータ送電線36の配置とすることが可能となり、制御基板30の小型化を実現することが可能となる。
【0047】
(6) モータ送電線36は、制御基板30の第2基板面に対し直角とならないよう取付角α(鋭角)で取り付けられているので、モータ送電線36を容易にトレー状容器31内側底面に設置することが可能となり、さらに、容易に組立作業を行うことが可能となり、従って、低価格化を実現することが可能となる。このとき、モータ送電線36を挿入するための制御基板30側の送電接続穴(スルーホール)30aを長穴とすることで、制御基板30の基板面に対し直角とならないよう取付角αで取り付けることが容易となる。
【0048】
(7) さらに、長穴の送電接続穴30aは、図7のように長穴の長手方向が互いに平行とならないようにしている。これにより、図6に示すように、モータ送電線36の制御基板30への接続方向を互いにずらすことが可能となり、モータ送電線36を制御基板30の第2基板面に沿って容易に並べてトレー状容器31内に容易に効率よく設置することが可能となり、さらに、容易に組立作業を行うことが可能となる。
【0049】
(8) さらに、トレー状容器31の内側底面に凹部31bが形成され、モータ送電線36が凹部31bを通過するようにしたことで、制御基板30の第2基板面に接続するモータ送電線36を凹部31bを利用してトレー状容器31の開口側に引き出すことができ、トレー状容器31の深さを小さくして小型化を図ることができる。また、防水処理のために充填される樹脂材の量も節約することができる。
【0050】
図10は本発明の第2の実施の形態におけるコントローラの制御基板及びこれに付随する部分を示す。この場合、制御基板30には、切欠30bが形成されており、制御基板30の第2基板面(トレー状容器31の閉口側)に接続されたモータ送電線36は切欠30bを通過してトレー状容器31の開口側に引き出されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0051】
これにより、トレー状容器31と制御基板30の縁との間の隙間を小さくして、トレー状容器31の開口面積を小さくできる。つまり、トレー状容器31の小型化を図ることができる。また、防水処理のために充填される樹脂材の量も節約することができる。
【0052】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0053】
本発明では、各実施の形態として芝刈機を例示したが、ブラシレスモータとこれを制御するコントローラとを備える他の電動作業機、例えば刈払機等にも適用可能である。
【0054】
本発明の各実施の形態では、トレー状容器外側の側面部に操作基板を設けたが、トレー状容器のその他の外面部に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 芝刈機
2 本体ハウジング
3 ブラシレスモータ
6 電池パック
8 車輪
9 ハンドル
10 操作レバー
11 集草ケース
12 刈刃
20 コントローラ
30 制御基板
30a 送電接続穴
31 トレー状容器
32 冷却フィン
32b 絶縁シート
33 固定部材
35 給電線
36 モータ送電線
37 スイッチング素子
37a ハイサイド素子
37b ローサイド素子
38 樹脂材
40 操作基板
41 モード切替スイッチ
42 電池残量表示スイッチ
43 モード表示部
44 電池残量表示部
50 制御回路
51 演算部
52 制御信号回路
G 地面
α 取付角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10