(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の検出部と前記第2の検出部の位置関係は、前記第1の位置における前記回転磁界の方向と前記第2の位置における前記回転磁界の方向が互いに異なるように、前記第1の位置と前記第2の位置が互いに異なる関係であることを特徴とする請求項1記載の角度センサ。
前記第1の検出部と前記第2の検出部の位置関係は、前記第1の位置における前記回転磁界の方向と前記第2の位置における前記回転磁界の方向が同じであるが、前記第1の方向と前記第2の方向が互いに異なる関係であることを特徴とする請求項1記載の角度センサ。
前記第1および第2の検出信号の理想成分の位相差と、前記第3および第4の検出信号の理想成分の位相差は、いずれも90°であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の角度センサ。
前記第1の検出部と前記第2の検出部の位置関係は、前記第1の位置における前記回転磁界の方向と前記第2の位置における前記回転磁界の方向が互いに異なるように、前記第1の位置と前記第2の位置が互いに異なる関係であることを特徴とする請求項9記載の角度センサシステム。
前記第1の検出部と前記第2の検出部の位置関係は、前記第1の位置における前記回転磁界の方向と前記第2の位置における前記回転磁界の方向が同じであるが、前記第1の方向と前記第2の方向が互いに異なる関係であることを特徴とする請求項9記載の角度センサシステム。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1および
図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る角度センサシステムの概略の構成について説明する。本実施の形態に係る角度センサシステム1は、本実施の形態に係る角度センサ2を備えている。本実施の形態に係る角度センサ2は、特に、磁気式の角度センサである。
図1および
図2に示したように、角度センサシステム1は、更に、方向が回転する回転磁界MFを発生する磁界発生部5を備えている。角度センサ2は、基準位置における回転磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する角度検出値を生成するものである。以下、基準位置における回転磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度を回転磁界角度と言い、記号θMで表す。
【0045】
本実施の形態における磁界発生部5は、回転位置を検出する対象物である回転軸6に取り付けられたリング状の磁石である。磁界発生部5は、回転軸6に連動し、中心軸Cを中心として回転方向Dに回転する。
【0046】
磁界発生部5は、磁化の方向が互いに異なる第1および第2の部分5A,5Bを含んでいる。第1および第2の部分5A,5Bは、中心軸Cを含む第1の仮想の平面を中心として対称に配置されている。
図1および
図2において、符号5AMを付した記号は第1の部分5Aの磁化の方向を表し、符号5BMを付した記号は第2の部分5Bの磁化の方向を表している。第1の部分5Aの磁化の方向5AMは、中心軸Cに平行な方向である。
図1では、方向5AMを、
図1における下から上に向かう方向としている。第2の部分5Bの磁化の方向5BMは、方向5AMとは反対の方向である。
【0047】
基準位置は、磁界発生部5の一方の端面に平行で且つ中心軸Cに垂直な第2の仮想の平面(以下、基準平面Pと言う。)内に位置する。この基準平面P内において、磁界発生部5が発生する回転磁界MFの方向は、基準位置を中心として回転する。基準方向は、基準平面P内に位置して、基準位置と交差する。以下の説明において、基準位置における回転磁界MFの方向とは、基準平面P内に位置する方向を指す。
【0048】
角度センサ2は、第1の検出部10と第2の検出部20と第3の検出部30と第4の検出部40とを備えている。第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、基準平面Pと接するか交差する位置に配置される。第1ないし第4の検出部10,20,30,40に対する磁界発生部5の相対的な位置は、中心軸Cを中心として回転方向Dに変化する。
【0049】
以下、
図1ないし
図3を参照して、本実施の形態における第1ないし第4の検出部10,20,30,40の配置と、方向と角度の定義について説明する。まず、
図1に示した中心軸Cに平行で、
図1における下から上に向かう方向をZ方向とする。
図2および
図3において、Z方向は奥から手前に向かう方向である。次に、Z方向に垂直な2つの方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向とする。
図1では、X方向は右に向かう方向であり、Y方向は手前から奥に向かう方向である。
図2および
図3では、X方向は右に向かう方向であり、Y方向は上に向かう方向である。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とする。
【0050】
第1の検出部10は、第1の位置P1における回転磁界MFを検出する。第2の検出部20は、第2の位置P2における回転磁界MFを検出する。第3の検出部30は、第3の位置P3における回転磁界MFを検出する。第4の検出部40は、第4の位置P4における回転磁界MFを検出する。第1ないし第4の位置P1〜P4は、それぞれ第1ないし第4の検出部10,20,30,40内に存在する。本実施の形態では、第1ないし第4の位置P1〜P4のそれぞれにおける回転磁界MFの方向が互いに異なるように、第1ないし第4の位置P1〜P4は、回転方向Dについて互いに異なっている。
【0051】
図3に示したように、第1ないし第4の位置P1〜P4は、基準平面P上にあり、且つ中心軸Cからの距離が互いに等しい。従って、第1ないし第4の位置P1〜P4は、基準平面P上にある、中心軸Cを中心とした1つの円の円周上にある。基準平面Pは、第1ないし第4の位置P1〜P4を含むXY平面でもある。
図1ないし
図3では、中心軸Cから第1の位置P1に向かう方向を、X方向としている。
【0052】
第2の位置P2は、第1の位置P1から、上記円周上を反時計回り方向に角度θ1だけ移動した位置である。第3の位置P3は、第1の位置P1から、上記円周上を反時計回り方向に角度θ3だけ移動した位置である。第4の位置P4は、第3の位置P3から、上記円周上を反時計回り方向に角度θ2だけ移動した位置である。角度θ1〜θ3の具体的な値については、後で説明する。
【0053】
第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、第1ないし第4の位置P1〜P4が上記の関係になるように、互いに異なる位置に配置されている。第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係については、後で更に詳しく説明する。
【0054】
ここで、
図3に示したように、基準位置を記号PRで表し、基準方向を記号DRで表し、回転磁界MFの方向を記号DMで表す。本実施の形態では、第1の位置P1を基準位置PRとし、X方向を基準方向DRとする。回転磁界MFの方向DMは、
図3において時計回り方向に回転するものとする。回転磁界角度θMは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
【0055】
また、
図3に示したように、第1の方向D11、第2の方向D21、第3の方向D31、第4の方向D41、第5の方向D12、第6の方向D22、第7の方向D32および第8の方向D42を定義する。第1ないし第8の方向D11,D21,D31,D41,D12,D22,D32,D42は、いずれも、基準平面Pに対して平行な方向である。第1の方向D11は、中心軸Cから第1の位置P1に向かう方向である。第1の方向D11は、X方向および基準方向DRと同じ方向である。第2の方向D21は、中心軸Cから第2の位置P2に向かう方向である。第3の方向D31は、中心軸Cから第3の位置P3に向かう方向である。第4の方向D41は、中心軸Cから第4の位置P4に向かう方向である。
【0056】
第5ないし第8の方向D12,D22,D32,D42は、それぞれ、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41から、所定の角度だけ回転した方向である。本実施の形態では、第5ないし第8の方向D12,D22,D32,D42は、それぞれ、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41から、時計回り方向に90°だけ回転した方向である。
【0057】
次に、
図4を参照して、角度センサ2の構成について詳しく説明する。
図4は、角度センサ2の構成を示す回路図である。第1の検出部10は、第1の検出信号生成部11および第2の検出信号生成部12を有している。第2の検出部20は、第3の検出信号生成部21および第4の検出信号生成部22を有している。第3の検出部30は、第5の検出信号生成部31および第6の検出信号生成部32を有している。第4の検出部40は、第7の検出信号生成部41および第8の検出信号生成部42を有している。第1ないし第8の検出信号生成部11,12,21,22,31,32,41,42の各々は、回転磁界MFを検出する少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。少なくとも1つの磁気検出素子は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいてもよい。磁気抵抗効果素子は、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよいし、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子でもよい。また、少なくとも1つの磁気検出素子は、ホール素子等、磁気抵抗効果素子以外の磁界を検出する素子を、少なくとも1つ含んでいてもよい。
【0058】
第1の検出信号生成部11は、第1の検出信号S1を生成する。第2の検出信号生成部12は、第2の検出信号S2を生成する。第1および第2の検出信号S1,S2は、それぞれ、第1の位置P1における回転磁界MFの方向DMが第1の方向D11に対してなす角度と対応関係を有している。
【0059】
第3の検出信号生成部21は、第3の検出信号S3を生成する。第4の検出信号生成部22は、第4の検出信号S4を生成する。第3および第4の検出信号S3,S4は、それぞれ、第2の位置P2における回転磁界MFの方向DMが第2の方向D21に対してなす角度と対応関係を有している。
【0060】
第5の検出信号生成部31は、第5の検出信号S5を生成する。第6の検出信号生成部32は、第6の検出信号S6を生成する。第5および第6の検出信号S5,S6は、それぞれ、第3の位置P3における回転磁界MFの方向DMが第3の方向D31に対してなす角度と対応関係を有している。
【0061】
第7の検出信号生成部41は、第7の検出信号S7を生成する。第8の検出信号生成部42は、第8の検出信号S8を生成する。第7および第8の検出信号S7,S8は、それぞれ、第4の位置P4における回転磁界MFの方向DMが第4の方向D41に対してなす角度と対応関係を有している。
【0062】
回転磁界MFの方向DMが所定の周期で回転すると、第1ないし第8の検出信号S1〜S8は、いずれも、上記所定の周期と等しい信号周期で周期的に変化する。第2、第4、第6および第8の検出信号S2,S4,S6,S8の位相は、それぞれ、第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7の位相と異なっている。本実施の形態では、検出信号S2,S4,S6,S8の位相は、それぞれ、検出信号S1,S3,S5,S7の位相に対して、信号周期の1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、2つの信号の位相差は、信号周期の1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。以下の説明では、これらの信号の位相の関係が上記の好ましい関係になっているものとする。
【0063】
図4は、第1ないし第8の検出信号生成部11,12,21,22,31,32,41,42の具体的な構成の一例を示している。以下、この例について詳しく説明する。
【0064】
第1の検出信号生成部11は、ホイートストンブリッジ回路14と、差分検出器15とを有している。第2の検出信号生成部12は、ホイートストンブリッジ回路16と、差分検出器17とを有している。第3の検出信号生成部21は、ホイートストンブリッジ回路24と、差分検出器25とを有している。第4の検出信号生成部22は、ホイートストンブリッジ回路26と、差分検出器27とを有している。第5の検出信号生成部31は、ホイートストンブリッジ回路34と、差分検出器35とを有している。第6の検出信号生成部32は、ホイートストンブリッジ回路36と、差分検出器37とを有している。第7の検出信号生成部41は、ホイートストンブリッジ回路44と、差分検出器45とを有している。第8の検出信号生成部42は、ホイートストンブリッジ回路46と、差分検出器47とを有している。
【0065】
ホイートストンブリッジ回路14,16,24,26,34,36,44,46の各々は、電源ポートVと、グランドポートGと、2つの出力ポートE1,E2と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R1,R2と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R3,R4とを含んでいる。磁気検出素子R1,R3の各一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R1の他端は、磁気検出素子R2の一端と出力ポートE1に接続されている。磁気検出素子R3の他端は、磁気検出素子R4の一端と出力ポートE2に接続されている。磁気検出素子R2,R4の各他端は、グランドポートGに接続されている。電源ポートVには、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートGはグランドに接続される。
【0066】
磁気検出素子R1〜R4の各々は、直列に接続された複数の磁気抵抗効果素子(以下、MR素子と記す。)を含んでいる。複数のMR素子の各々は、例えばスピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、回転磁界MFの方向DMに応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、TMR素子でもよいし、GMR素子でもよい。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。
図4において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
【0067】
第1の検出信号生成部11では、磁気検出素子R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D11であり、磁気検出素子R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D11とは反対の方向である。この場合、第1の位置P1における回転磁界MFの第1の方向D11の成分の強度に応じて、ホイートストンブリッジ回路14の出力ポートE1,E2の電位差が変化する。差分検出器15は、ホイートストンブリッジ回路14の出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を第1の検出信号S1として出力する。従って、第1の検出信号生成部11は、第1の位置P1における回転磁界MFの第1の方向D11の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の検出信号S1を生成する。この強度および第1の検出信号S1は、第1の位置P1における回転磁界MFの方向DMが第1の方向D11に対してなす角度と対応関係を有する。
【0068】
第2の検出信号生成部12では、磁気検出素子R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第5の方向D12であり、磁気検出素子R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第5の方向D12とは反対の方向である。この場合、第1の位置P1における回転磁界MFの第5の方向D12の成分の強度に応じて、ホイートストンブリッジ回路16の出力ポートE1,E2の電位差が変化する。差分検出器17は、ホイートストンブリッジ回路16の出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を第2の検出信号S2として出力する。従って、第2の検出信号生成部12は、第1の位置P1における回転磁界MFの第5の方向D12の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の検出信号S2を生成する。この強度および第2の検出信号S2は、第1の位置P1における回転磁界MFの方向DMが第1の方向D11に対してなす角度と対応関係を有する。
【0069】
第3の検出信号生成部21では、磁気検出素子R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D21であり、磁気検出素子R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D21とは反対の方向である。この場合、第2の位置P2における回転磁界MFの第2の方向D21の成分の強度に応じて、ホイートストンブリッジ回路24の出力ポートE1,E2の電位差が変化する。差分検出器25は、ホイートストンブリッジ回路24の出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を第3の検出信号S3として出力する。従って、第3の検出信号生成部21は、第2の位置P2における回転磁界MFの第2の方向D21の成分の強度を検出して、その強度を表す第3の検出信号S3を生成する。この強度および第3の検出信号S3は、第2の位置P2における回転磁界MFの方向DMが第2の方向D21に対してなす角度と対応関係を有する。
【0070】
第4の検出信号生成部22では、磁気検出素子R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第6の方向D22であり、磁気検出素子R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第6の方向D22とは反対の方向である。この場合、第2の位置P2における回転磁界MFの第6の方向D22の成分の強度に応じて、ホイートストンブリッジ回路26の出力ポートE1,E2の電位差が変化する。差分検出器27は、ホイートストンブリッジ回路26の出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を第4の検出信号S4として出力する。従って、第4の検出信号生成部22は、第2の位置P2における回転磁界MFの第6の方向D22の成分の強度を検出して、その強度を表す第4の検出信号S4を生成する。この強度および第4の検出信号S4は、第2の位置P2における回転磁界MFの方向DMが第2の方向D21に対してなす角度と対応関係を有する。
【0071】
第5の検出信号生成部31では、磁気検出素子R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第3の方向D31であり、磁気検出素子R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第3の方向D31とは反対の方向である。この場合、第3の位置P3における回転磁界MFの第3の方向D31の成分の強度に応じて、ホイートストンブリッジ回路34の出力ポートE1,E2の電位差が変化する。差分検出器35は、ホイートストンブリッジ回路34の出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を第5の検出信号S5として出力する。従って、第5の検出信号生成部31は、第3の位置P3における回転磁界MFの第3の方向D31の成分の強度を検出して、その強度を表す第5の検出信号S5を生成する。この強度および第5の検出信号S5は、第3の位置P3における回転磁界MFの方向DMが第3の方向D31に対してなす角度と対応関係を有する。
【0072】
第6の検出信号生成部32では、磁気検出素子R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第7の方向D32であり、磁気検出素子R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第7の方向D32とは反対の方向である。この場合、第3の位置P3における回転磁界MFの第7の方向D32の成分の強度に応じて、ホイートストンブリッジ回路36の出力ポートE1,E2の電位差が変化する。差分検出器37は、ホイートストンブリッジ回路36の出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を第6の検出信号S6として出力する。従って、第6の検出信号生成部32は、第3の位置P3における回転磁界MFの第7の方向D32の成分の強度を検出して、その強度を表す第6の検出信号S6を生成する。この強度および第6の検出信号S6は、第3の位置P3における回転磁界MFの方向DMが第3の方向D31に対してなす角度と対応関係を有する。
【0073】
第7の検出信号生成部41では、磁気検出素子R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第4の方向D41であり、磁気検出素子R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第4の方向D41とは反対の方向である。この場合、第4の位置P4における回転磁界MFの第4の方向D41の成分の強度に応じて、ホイートストンブリッジ回路44の出力ポートE1,E2の電位差が変化する。差分検出器45は、ホイートストンブリッジ回路44の出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を第7の検出信号S7として出力する。従って、第7の検出信号生成部41は、第4の位置P4における回転磁界MFの第4の方向D41の成分の強度を検出して、その強度を表す第7の検出信号S7を生成する。この強度および第7の検出信号S7は、第4の位置P4における回転磁界MFの方向DMが第4の方向D41に対してなす角度と対応関係を有する。
【0074】
第8の検出信号生成部42では、磁気検出素子R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第8の方向D42であり、磁気検出素子R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第8の方向D42とは反対の方向である。この場合、第4の位置P4における回転磁界MFの第8の方向D42の成分の強度に応じて、ホイートストンブリッジ回路46の出力ポートE1,E2の電位差が変化する。差分検出器47は、ホイートストンブリッジ回路46の出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を第8の検出信号S8として出力する。従って、第8の検出信号生成部42は、第4の位置P4における回転磁界MFの第8の方向D42の成分の強度を検出して、その強度を表す第8の検出信号S8を生成する。この強度および第8の検出信号S8は、第4の位置P4における回転磁界MFの方向DMが第4の方向D41に対してなす角度と対応関係を有する。
【0075】
第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、4つの個別部品によって構成されていてもよい。4つの個別部品は、機械的構造が同じであると共に、機械的構造と複数の磁化固定層の磁化の方向との位置関係も同じものであってもよい。この場合には、4つの個別部品の配置と姿勢によって、上述の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向を容易に規定することができる。
【0076】
なお、検出信号生成部11,12,21,22,31,32,41,42内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
【0077】
ここで、
図6を参照して、磁気検出素子の構成の一例について説明する。
図6は、
図4に示した角度センサ2における1つの磁気検出素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つの磁気検出素子は、複数の下部電極162と、複数のMR素子150と、複数の上部電極163とを有している。複数の下部電極162は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極162は細長い形状を有している。下部電極162の長手方向に隣接する2つの下部電極162の間には、間隙が形成されている。
図6に示したように、下部電極162の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子150が配置されている。MR素子150は、下部電極162側から順に積層された自由層151、非磁性層152、磁化固定層153および反強磁性層154を含んでいる。自由層151は、下部電極162に電気的に接続されている。反強磁性層154は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層153との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層153の磁化の方向を固定する。複数の上部電極163は、複数のMR素子150の上に配置されている。個々の上部電極163は細長い形状を有し、下部電極162の長手方向に隣接する2つの下部電極162上に配置されて隣接する2つのMR素子150の反強磁性層154同士を電気的に接続する。このような構成により、
図6に示した磁気検出素子は、複数の下部電極162と複数の上部電極163とによって直列に接続された複数のMR素子150を有している。なお、MR素子150における層151〜154の配置は、
図6に示した配置とは上下が反対でもよい。
【0078】
前述の通り、回転磁界MFの方向DMが所定の周期で回転すると、第1ないし第8の検出信号S1〜S8は、いずれも、前記所定の周期と等しい信号周期で周期的に変化する。第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形は、理想的には正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)となる。しかし、実際には、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形は、正弦曲線から歪む場合がある。第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因には、大きく分けて、磁界発生部5が発生する回転磁界MFによる第1の原因と、磁気検出素子による第2の原因とがある。
【0079】
第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が正弦曲線から歪むということは、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々は、理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する理想成分と、この理想成分以外の誤差成分とを含むということである。この場合は、角度検出値に誤差が生じる場合がある。以下、角度検出値に生じる誤差を、角度誤差と言う。第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々が理想成分のみからなる場合に算出される角度検出値は、角度センサ2の真の検出対象の角度に相当する。以下、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々が理想成分のみからなる場合に算出される角度検出値を理想角度と言う。角度誤差は、理想角度と角度検出値との差である。第1の原因によって第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む場合には、回転磁界角度θMは、理想角度と一致しない場合がある。
【0080】
本実施の形態では、回転磁界MFの方向DMが所定の周期で変化する場合、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々は、理想成分と第1の誤差成分と第2の誤差成分を含む。第1の誤差成分は、理想成分に対するn次の高調波に相当する誤差成分である。nは、5以上である。第2の誤差成分は、理想成分に対するm次の高調波に相当する誤差成分である。mは、nとは異なる。本実施の形態では特に、mは3であり、nは5である。
【0081】
第1および第2の検出信号S1,S2の理想成分の位相は互いに異なり、第3および第4の検出信号S3,S4の理想成分の位相は互いに異なり、第5および第6の検出信号S5,S6の理想成分の位相は互いに異なり、第7および第8の検出信号S7,S8の理想成分の位相は互いに異なる。本実施の形態では、第1および第2の検出信号S1,S2の理想成分の位相差と、第3および第4の検出信号S3,S4の理想成分の位相差と、第5および第6の検出信号S5,S6の理想成分の位相差と、第7および第8の検出信号S7,S8の理想成分の位相差は、いずれも90°である。
【0082】
次に、
図5を参照して、角度センサ2の、第1ないし第4の検出部10,20,30,40以外の部分について説明する。角度センサ2は、第1ないし第4の検出部10,20,30,40の他に、角度検出部50を備えている。角度検出部50は、回転磁界角度θMと対応関係を有する角度検出値θsを生成する。
図5は、角度検出部50の構成を示す機能ブロック図である。角度検出部50は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。
【0083】
角度検出部50は、第1の信号Saを生成する第1の演算回路52と、第2の信号Sbを生成する第2の演算回路53と、第1および第2の信号Sa,Sbに基づいて角度検出値θsを算出する角度演算部54とを有している。
【0084】
角度検出部50は、更に、アナログ−デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す。)511,512,513,514,515,516,517,518を有している。第1の演算回路52、第2の演算回路53および角度演算部54では、デジタル信号が用いられる。A/D変換器511〜518は、それぞれ、第1ないし第8の検出信号S1〜S8をデジタル信号に変換する。第1の演算回路52は、それぞれA/D変換器511,513,515,517によってデジタル信号に変換された第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7を用いた演算を行って、第1の信号Saを生成する。第2の演算回路53は、それぞれA/D変換器512,514,516,518によってデジタル信号に変換された第2、第4、第6および第8の検出信号S2,S4,S6,S8を用いた演算を行って、第2の信号Sbを生成する。第1および第2の信号Sa,Sbの生成方法と、角度検出値θsの算出方法については、後で詳しく説明する。
【0085】
次に、第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係について詳しく説明する。第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、以下のような複数の位相関係が生じる位置関係で配置されている。すなわち、この位置関係では、第1および第3の検出信号S1,S3の理想成分の間には、第1の位相関係が生じる。第2および第4の検出信号S2,S4の理想成分の間には、第2の位相関係が生じる。第5および第7の検出信号S5,S7の理想成分の間には、第3の位相関係が生じる。第6および第8の検出信号S6,S8の理想成分の間には、第4の位相関係が生じる。第1および第5の検出信号S1,S5の理想成分の間には、第5の位相関係が生じる。第2および第6の検出信号S2,S6の理想成分の間には、第6の位相関係が生じる。第3および第7の検出信号S3,S7の理想成分の間には、第7の位相関係が生じる。第4および第8の検出信号S4,S8の理想成分の間には、第8の位相関係が生じる。
【0086】
第1の位相関係は、第1および第3の検出信号S1,S3の和または差を求める第1の演算を行うと第1および第3の検出信号S1,S3に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られることになる関係である。
【0087】
第2の位相関係は、第2および第4の検出信号S2,S4の和または差を求める第2の演算を行うと第2および第4の検出信号S2,S4に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られることになる関係である。
【0088】
第3の位相関係は、第5および第7の検出信号S5,S7の和または差を求める第3の演算を行うと第5および第7の検出信号S5,S7に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られることになる関係である。
【0089】
第4の位相関係は、第6および第8の検出信号S6,S8の和または差を求める第4の演算を行うと第6および第8の検出信号S6,S8に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られることになる関係である。
【0090】
第5の位相関係は、第1および第5の検出信号S1,S5の和または差を求める第5の演算を行うと第1および第5の検出信号S1,S5に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られることになる関係である。
【0091】
第6の位相関係は、第2および第6の検出信号S2,S6の和または差を求める第6の演算を行うと第2および第6の検出信号S2,S6に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られることになる関係である。
【0092】
第7の位相関係は、第3および第7の検出信号S3,S7の和または差を求める第7の演算を行うと第3および第7の検出信号S3,S7に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られることになる関係である。
【0093】
第8の位相関係は、第4および第8の検出信号S4,S8の和または差を求める第8の演算を行うと第4および第8の検出信号S4,S8に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られることになる関係である。
【0094】
以下、本実施の形態の第1の実施例と第2の実施例について説明する。始めに、第1の実施例について説明する。第1の実施例では、第1の位相関係は、第1および第3の検出信号S1,S3の理想成分の位相差が180°/nとなる関係であり、第2の位相関係は、第2および第4の検出信号S2,S4の理想成分の位相差が180°/nとなる関係である。この場合、第1の演算は、第1および第3の検出信号S1,S3の和を求める演算であり、第2の演算は、第2および第4の検出信号S2,S4の和を求める演算である。第1の実施例では、上記の第1および第2の位相関係が生じるように、第1および第2の検出部10,20を配置する。具体的には、
図3に示した角度θ1が電気角の180°/nに相当する角度になるように、第1および第2の位置P1,P2を規定する。
【0095】
また、第3の位相関係は、第5および第7の検出信号S5,S7の理想成分の位相差が180°/nとなる関係であり、第4の位相関係は、第6および第8の検出信号S6,S8の理想成分の位相差が180°/nとなる関係である。この場合、第3の演算は、第5および第7の検出信号S5,S7の和を求める演算であり、第4の演算は、第6および第8の検出信号S6,S8の和を求める演算である。第1の実施例では、上記の第3および第4の位相関係が生じるように、第3および第4の検出部30,40を配置する。具体的には、
図3に示した角度θ2が電気角の180°/nに相当する角度になるように、第3および第4の位置P3,P4を規定する。
【0096】
また、第5の位相関係は、第1および第5の検出信号S1,S5の理想成分の位相差が180°/mとなる関係であり、第6の位相関係は、第2および第6の検出信号S2,S6の理想成分の位相差が180°/mとなる関係である。この場合、第5の演算は、第1および第5の検出信号S1,S5の和を求める演算であり、第6の演算は、第2および第6の検出信号S2,S6の和を求める演算である。第1の実施例では、上記の第5および第6の位相関係が生じるように、第1および第3の検出部10,30を配置する。具体的には、
図3に示した角度θ3が電気角の180°/mに相当する角度になるように、第1および第3の位置P1,P3を規定する。
【0097】
また、第7の位相関係は、第3および第7の検出信号S3,S7の理想成分の位相差が180°/mとなる関係であり、第8の位相関係は、第4および第8の検出信号S4,S8の理想成分の位相差が180°/mとなる関係である。この場合、第7の演算は、第3および第7の検出信号S3,S7の和を求める演算であり、第8の演算は、第4および第8の検出信号S4,S8の和を求める演算である。上記の第7および第8の位相関係は、第1ないし第6の位相関係が生じるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定することによって生じる。
【0098】
本実施の形態では特に、mは3であり、nは5である。従って、180°/mは60°であり、180°/nは36°である。また、第1ないし第8の検出信号S1〜S8における1周期すなわち電気角の360°は、磁界発生部5の1回転すなわち磁界発生部5の回転角の360°に相当する。従って、第1の実施例では、第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、角度θ1と角度θ2がいずれも36°になり、角度θ3が60°になるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定して、第1ないし第4の検出部10,20,30,40を配置する。
【0099】
ここで、第1の検出信号S1の理想成分をcosθと表し、第2の検出信号S2の理想成分をsinθと表す。この場合、第1および第2の検出信号S1,S2は、それぞれ下記の式(1)、(2)で表すことができる。式(1)において、a
1・cos(nθ)は第1の検出信号S1の第1の誤差成分を表し、b
1・cos(mθ)は第1の検出信号S1の第2の誤差成分を表す。また、式(2)において、a
2・sin(nθ)は第2の検出信号S2の第1の誤差成分を表し、b
2・sin(mθ)は第2の検出信号S2の第2の誤差成分を表す。
【0100】
S1=cosθ+a
1・cos(nθ)+b
1・cos(mθ) …(1)
S2=sinθ+a
2・sin(nθ)+b
2・sin(mθ) …(2)
【0101】
第1の実施例では、第3および第4の検出信号S3,S4は、それぞれ下記の式(3)、(4)で表すことができる。
【0102】
S3=cos(θ+180°/n)
+a
1・cos{n(θ+180°/n)}
+b
1・cos{m(θ+180°/n)}
=cos(θ+180°/n)
+a
1・cos(nθ+180°)
+b
1・cos{m(θ+180°/n)}
=cos(θ+180°/n)
−a
1・cos(nθ)
+b
1・cos{m(θ+180°/n)} …(3)
S4=sin(θ+180°/n)
+a
2・sin{n(θ+180°/n)}
+b
2・sin{m(θ+180°/n)}
=sin(θ+180°/n)
+a
2・sin(nθ+180°)
+b
2・sin{m(θ+180°/n)}
=sin(θ+180°/n)
−a
2・sin(nθ)
+b
2・sin{m(θ+180°/n)} …(4)
【0103】
また、第5および第6の検出信号S5,S6は、それぞれ下記の式(5)、(6)で表すことができる。
【0104】
S5=cos(θ+180°/m)
+a
1・cos{n(θ+180°/m)}
+b
1・cos{m(θ+180°/m)}
=cos(θ+180°/m)
+a
1・cos{n(θ+180°/m)}
+b
1・cos(mθ+180°)
=cos(θ+180°/m)
+a
1・cos{n(θ+180°/m)}
−b
1・cos(mθ) …(5)
S6=sin(θ+180°/m)
+a
2・sin{n(θ+180°/m)}
+b
2・sin{m(θ+180°/m)}
=sin(θ+180°/m)
+a
2・sin{n(θ+180°/m)}
+b
2・sin(mθ+180°)
=sin(θ+180°/m)
+a
2・sin{n(θ+180°/m)}
−b
2・sin(mθ) …(6)
【0105】
また、第7および第8の検出信号S7,S8は、それぞれ下記の式(7)、(8)で表すことができる。
【0106】
S7=cos(θ+180°/n+180°/m)
+a
1・cos{n(θ+180°/n+180°/m)}
+b
1・cos{m(θ+180°/n+180°/m)}
=cos(θ+180°/n+180°/m)
+a
1・cos{n(θ+180°/m)+180°}
+b
1・cos{m(θ+180°/n)+180°}
=cos(θ+180°/n+180°/m)
−a
1・cos{n(θ+180°/m)}
−b
1・cos{m(θ+180°/n)} …(7)
S8=sin(θ+180°/n+180°/m)
+a
2・sin{n(θ+180°/n+180°/m)}
+b
2・sin{m(θ+180°/n+180°/m)}
=sin(θ+180°/n+180°/m)
+a
2・sin{n(θ+180°/m)+180°}
+b
2・sin{m(θ+180°/n)+180°}
=sin(θ+180°/n+180°/m)
−a
2・sin{n(θ+180°/m)}
−b
2・sin{m(θ+180°/n)} …(8)
【0107】
式(1)、(3)から理解されるように、第1の実施例における第1の演算、すなわち第1および第3の検出信号S1,S3の和を求める演算を行うと、式(1)中の第1の誤差成分a
1・cos(nθ)と式(3)中の第1の誤差成分−a
1・cos(nθ)が相殺されて、第1および第3の検出信号S1,S3に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0108】
また、式(2)、(4)から理解されるように、第1の実施例における第2の演算、すなわち第2および第4の検出信号S2,S4の和を求める演算を行うと、式(2)中の第1の誤差成分a
2・sin(nθ)と式(4)中の第1の誤差成分−a
2・sin(nθ)が相殺されて、第2および第4の検出信号S2,S4に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0109】
また、式(5)、(7)から理解されるように、第1の実施例における第3の演算、すなわち第5および第7の検出信号S5,S7の和を求める演算を行うと、式(5)中の第1の誤差成分a
1・cos{n(θ+180°/m)}と式(7)中の第1の誤差成分−a
1・cos{n(θ+180°/m)}が相殺されて、第5および第7の検出信号S5,S7に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0110】
また、式(6)、(8)から理解されるように、第1の実施例における第4の演算、すなわち第6および第8の検出信号S6,S8の和を求める演算を行うと、式(6)中の第1の誤差成分a
2・sin{n(θ+180°/m)}と式(8)中の第1の誤差成分−a
2・sin{n(θ+180°/m)}が相殺されて、第6および第8の検出信号S6,S8に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0111】
また、式(1)、(5)から理解されるように、第1の実施例における第5の演算、すなわち第1および第5の検出信号S1,S5の和を求める演算を行うと、式(1)中の第2の誤差成分b
1・cos(mθ)と式(5)中の第2の誤差成分−b
1・cos(mθ)が相殺されて、第1および第5の検出信号S1,S5に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0112】
また、式(2)、(6)から理解されるように、第1の実施例における第6の演算、すなわち第2および第6の検出信号S2,S6の和を求める演算を行うと、式(2)中の第2の誤差成分b
2・sin(mθ)と式(6)中の第2の誤差成分−b
2・sin(mθ)が相殺されて、第2および第6の検出信号S2,S6に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0113】
また、式(3)、(7)から理解されるように、第1の実施例における第7の演算、すなわち第3および第7の検出信号S3,S7の和を求める演算を行うと、式(3)中の第2の誤差成分b
1・cos{m(θ+180°/n)}と式(7)中の第2の誤差成分−b
1・cos{m(θ+180°/n)}が相殺されて、第3および第7の検出信号S3,S7に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0114】
また、式(4)、(8)から理解されるように、第1の実施例における第8の演算、すなわち第4および第8の検出信号S4,S8の和を求める演算を行うと、式(4)中の第2の誤差成分b
2・sin{m(θ+180°/n)}と式(8)中の第2の誤差成分−b
2・sin{m(θ+180°/n)}が相殺されて、第4および第8の検出信号S4,S8に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0115】
図7は、第1の実施例における第1および第3の検出信号S1,S3の波形の一例を示す波形図である。
図8は、第1の実施例における第5および第7の検出信号S5,S7の波形の一例を示す波形図である。
図9は、第1の実施例における第1および第5の検出信号
S1,S5の波形の一例を示す波形図である。
図10は、第1の実施例における第3および第7の検出信号S3,S7の波形の一例を示す波形図である。
図7ないし
図10において、横軸は理想角度θを示し、縦軸の「信号値」は、第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7の各々の理想成分の最大値が1になるように表した信号の値を示している。符号S1i,S3i,S5i,S7iは、それぞれ、第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7の各々の理想成分を示している。符号S1n,S3n,S5n,S7nは、それぞれ、第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7の各々の第1の誤差成分を示している。符号S1m,S3m,S5m,S7mは、それぞれ、第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7の各々の第2の誤差成分を示している。
【0116】
図7に示したように、第1の検出信号S1の第1の誤差成分S1nと第3の検出信号S3の第1の誤差成分S3nは、第1および第3の検出信号S1,S3の和を求める演算を行うと相殺される位相関係になっている。また、
図8に示したように、第5の検出信号S5の第1の誤差成分S5nと第7の検出信号S7の第1の誤差成分S7nは、第5および第7の検出信号S5,S7の和を求める演算を行うと相殺される位相関係になっている。また、
図9に示したように、第1の検出信号S1の第2の誤差成分S1mと第5の検出信号S5の第2の誤差成分S5mは、第1および第5の検出信号S1,S5の和を求める演算を行うと相殺される位相関係になっている。また、
図10に示したように、第3の検出信号S3の第2の誤差成分S3mと第7の検出信号S7の第2の誤差成分S7mは、第3および第7の検出信号S3,S7の和を求める演算を行うと相殺される位相関係になっている。
【0117】
図示しないが、第2の検出信号S2の第1の誤差成分と第4の検出信号S4の第1の誤差成分は、第2および第4の検出信号S2,S4の和を求める演算を行うと相殺される位相関係になっている。また、第6の検出信号S6の第1の誤差成分と第8の検出信号S8の第1の誤差成分は、第6および第8の検出信号S6,S8の和を求める演算を行うと相殺される位相関係になっている。また、第2の検出信号S2の第2の誤差成分と第6の検出信号S6の第2の誤差成分は、第2および第6の検出信号S2,S6の和を求める演算を行うと相殺される位相関係になっている。また、第4の検出信号S4の第2の誤差成分と第8の検出信号S8の第2の誤差成分は、第4および第8の検出信号S4,S8の和を求める演算を行うと相殺される位相関係になっている。
【0118】
次に、第2の実施例について説明する。第2の実施例では、第1の位相関係は、第1および第3の検出信号S1,S3の理想成分の位相差が360°/nとなる関係であり、第2の位相関係は、第2および第4の検出信号S2,S4の理想成分の位相差が360°/nとなる関係である。この場合、第1の演算は、第1および第3の検出信号S1,S3の差を求める演算であり、第2の演算は、第2および第4の検出信号S2,S4の差を求める演算である。第2の実施例では、上記の第1および第2の位相関係が生じるように、第1および第2の検出部10,20を配置する。具体的には、
図3に示した角度θ1が電気角の360°/nに相当する角度になるように第1および第2の位置P1,P2を規定する。
【0119】
また、第3の位相関係は、第5および第7の検出信号S5,S7の理想成分の位相差が360°/nとなる関係であり、第4の位相関係は、第6および第8の検出信号S6,S8の理想成分の位相差が360°/nとなる関係である。この場合、第3の演算は、第5および第7の検出信号S5,S7の差を求める演算であり、第4の演算は、第6および第8の検出信号S6,S8の差を求める演算である。第2の実施例では、上記の第3および第4の位相関係が生じるように、第3および第4の検出部30,40を配置する。具体的には、
図3に示した角度θ2が電気角の360°/nに相当する角度になるように第3および第4の位置P3,P4を規定する。
【0120】
また、第5の位相関係は、第1および第5の検出信号S1,S5の理想成分の位相差が360°/mとなる関係であり、第6の位相関係は、第2および第6の検出信号S2,S6の理想成分の位相差が360°/mとなる関係である。この場合、第5の演算は、第1および第5の検出信号S1,S5の差を求める演算であり、第6の演算は、第2および第6の検出信号S2,S6の差を求める演算である。第2の実施例では、上記の第5および第6の位相関係が生じるように、第1および第3の検出部10,30を配置する。具体的には、
図3に示した角度θ3が電気角の360°/mに相当する角度になるように第1および第3の位置P1,P3を規定する。
【0121】
また、第7の位相関係は、第3および第7の検出信号S3,S7の理想成分の位相差が360°/mとなる関係であり、第8の位相関係は、第4および第8の検出信号S4,S8の理想成分の位相差が360°/mとなる関係である。この場合、第7の演算は、第3および第7の検出信号S3,S7の差を求める演算であり、第8の演算は、第4および第8の検出信号S4,S8の差を求める演算である。上記の第7および第8の位相関係は、第1ないし第6の位相関係が生じるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定することによって生じる。
【0122】
本実施の形態では特に、360°/nは72°であり、360°/mは120°である。第2の実施例では、角度θ1と角度θ2がいずれも72°になり、角度θ3が120°になるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定して、第1ないし第4の検出部10,20,30,40を配置する。
【0123】
第1の実施例と同様に、第1および第2の検出信号S1,S2をそれぞれ式(1)、(2)で表すと、第2の実施例では、第3および第4の検出信号S3,S4は、それぞれ下記の式(9)、(10)で表すことができる。
【0124】
S3=cos(θ+360°/n)
+a
1・cos{n(θ+360°/n)}
+b
1・cos{m(θ+360°/n)}
=cos(θ+360°/n)
+a
1・cos(nθ+360°)
+b
1・cos{m(θ+360°/n)}
=cos(θ+360°/n)
+a
1・cos(nθ)
+b
1・cos{m(θ+360°/n)} …(9)
S4=sin(θ+360°/n)
+a
2・sin{n(θ+360°/n)}
+b
2・sin{m(θ+360°/n)}
=sin(θ+360°/n)
+a
2・sin(nθ+360°)
+b
2・sin{m(θ+360°/n)}
=sin(θ+360°/n)
+a
2・sin(nθ)
+b
2・sin{m(θ+360°/n)} …(10)
【0125】
また、第5および第6の検出信号S5,S6は、それぞれ下記の式(11)、(12)で表すことができる。
【0126】
S5=cos(θ+360°/m)
+a
1・cos{n(θ+360°/m)}
+b
1・cos{m(θ+360°/m)}
=cos(θ+360°/m)
+a
1・cos{n(θ+360°/m)}
+b
1・cos(mθ+360°)
=cos(θ+360°/m)
+a
1・cos{n(θ+360°/m)}
+b
1・cos(mθ) …(11)
S6=sin(θ+360°/m)
+a
2・sin{n(θ+360°/m)}
+b
2・sin{m(θ+360°/m)}
=sin(θ+360°/m)
+a
2・sin{n(θ+360°/m)}
+b
2・sin(mθ+360°)
=sin(θ+360°/m)
+a
2・sin{n(θ+360°/m)}
+b
2・sin(mθ) …(12)
【0127】
また、第7および第8の検出信号S7,S8は、それぞれ下記の式(13)、(14)で表すことができる。
【0128】
S7=cos(θ+360°/n+360°/m)
+a
1・cos{n(θ+360°/n+360°/m)}
+b
1・cos{m(θ+360°/n+360°/m)}
=cos(θ+360°/n+360°/m)
+a
1・cos{n(θ+360°/m)+360°}
+b
1・cos{m(θ+360°/n)+360°}
=cos(θ+360°/n+360°/m)
+a
1・cos{n(θ+360°/m)}
+b
1・cos{m(θ+360°/n)} …(13)
S8=sin(θ+360°/n+360°/m)
+a
2・sin{n(θ+360°/n+360°/m)}
+b
2・sin{m(θ+360°/n+360°/m)}
=sin(θ+360°/n+360°/m)
+a
2・sin{n(θ+360°/m)+360°}
+b
2・sin{m(θ+360°/n)+360°}
=sin(θ+360°/n+360°/m)
+a
2・sin{n(θ+360°/m)}
+b
2・sin{m(θ+360°/n)} …(14)
【0129】
式(1)、(9)から理解されるように、第2の実施例における第1の演算、すなわち第1および第3の検出信号S1,S3の差を求める演算を行うと、式(1)中の第1の誤差成分a
1・cos(nθ)と式(9)中の第1の誤差成分a
1・cos(nθ)が相殺されて、第1および第3の検出信号S1,S3に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0130】
また、式(2)、(10)から理解されるように、第2の実施例における第2の演算、すなわち第2および第4の検出信号S2,S4の差を求める演算を行うと、式(2)中の第1の誤差成分a
2・sin(nθ)と式(10)中の第1の誤差成分a
2・sin(nθ)が相殺されて、第2および第4の検出信号S2,S4に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0131】
また、式(11)、(13)から理解されるように、第2の実施例における第3の演算、すなわち第5および第7の検出信号S5,S7の差を求める演算を行うと、式(11)中の第1の誤差成分a
1・cos{n(θ+360°/m)}と式(13)中の第1の誤差成分a
1・cos{n(θ+360°/m)}が相殺されて、第5および第7の検出信号S5,S7に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0132】
また、式(12)、(14)から理解されるように、第2の実施例における第4の演算、すなわち第6および第8の検出信号S6,S8の差を求める演算を行うと、式(12)中の第1の誤差成分a
2・sin{n(θ+360°/m)}と式(14)中の第1の誤差成分a
2・sin{n(θ+360°/m)}が相殺されて、第6および第8の検出信号S6,S8に比べて第1の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0133】
また、式(1)、(11)から理解されるように、第2の実施例における第5の演算、すなわち第1および第5の検出信号S1,S5の差を求める演算を行うと、式(1)中の第2の誤差成分b
1・cos(mθ)と式(11)中の第2の誤差成分b
1・cos(mθ)が相殺されて、第1および第5の検出信号S1,S5に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0134】
また、式(2)、(12)から理解されるように、第2の実施例における第6の演算、すなわち第2および第6の検出信号S2,S6の差を求める演算を行うと、式(2)中の第2の誤差成分b
2・sin(mθ)と式(12)中の第2の誤差成分b
2・sin(mθ)が相殺されて、第2および第6の検出信号S2,S6に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0135】
また、式(9)、(13)から理解されるように、第2の実施例における第7の演算、すなわち第3および第7の検出信号S3,S7の差を求める演算を行うと、式(9)中の第2の誤差成分b
1・cos{m(θ+360°/n)}と式(13)中の第2の誤差成分b
1・cos{m(θ+360°/n)}が相殺されて、第3および第7の検出信号S3,S7に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0136】
また、式(10)、(14)から理解されるように、第2の実施例における第8の演算、すなわち第4および第8の検出信号S4,S8の差を求める演算を行うと、式(10)中の第2の誤差成分b
2・sin{m(θ+360°/n)}と式(14)中の第2の誤差成分b
2・sin{m(θ+360°/n)}が相殺されて、第4および第8の検出信号S4,S8に比べて第2の誤差成分が低減された信号が得られる。
【0137】
本実施の形態では、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が第1の原因である場合と第2の原因である場合のいずれの場合においても、第1および第2の検出信号S1,S2をそれぞれ式(1)、(2)で表すと、第1の実施例では式(3)〜(8)が成り立ち、第2の実施例では式(9)〜(14)が成り立つ。
【0138】
次に、第1および第2の信号Sa,Sbの生成方法と角度検出値θsの算出方法について説明する。始めに、前述の第1の実施例の場合における、第1および第2の信号Sa,Sbの生成方法と角度検出値θsの算出方法について説明する。前述のように、第1の演算回路52は、第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7を用いた演算を行って、第1の信号Saを生成する。第1の演算回路52における演算には、第1の実施例における第1の演算と第3の演算と第5の演算と第7の演算が含まれる。具体的には、例えば、第1の演算回路52は、下記の式(15)によって第1の信号Saを生成する。式(15)では、式(1)、(3)、(5)、(7)で表される第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7を用いている。なお、以下の説明では、α=180°/nとし、β=180°/mとする。
【0139】
Sa=S1+S3+S5+S7
=cosθ+cos(θ+α)+cos(θ+β)+cos(θ+α+β)
=2cos(θ+α/2)・cos(−α/2)
+2cos(θ+α/2+β)・cos(−α/2)
=4cos(α/2)・cos(θ+α/2+β/2)・cos(−β/2)
=4cos(α/2)・cos(β/2)・cos(θ+α/2+β/2)
…(15)
【0140】
第1の演算回路52における演算では、式(1)、(3)中の2つの第1の誤差成分が相殺され、式(5)、(7)中の2つの第1の誤差成分が相殺され、式(1)、(5)中の2つの第2の誤差成分が相殺され、式(3)、(7)中の2つの第2の誤差成分が相殺される。これにより、第1の信号Saは、第1、第3、第5、第7の検出信号S1,S3,S5,S7に比べて第1および第2の誤差成分が低減された信号になる。
【0141】
また、前述のように、第2の演算回路53は、第2、第4、第6および第8の検出信号S2,S4,S6,S8を用いた演算を行って、第2の信号Sbを生成する。第2の演算回路53における演算には、第1の実施例における第2の演算と第4の演算と第6の演算と第8の演算が含まれる。具体的には、例えば、第2の演算回路53は、下記の式(16)によって第2の信号Sbを生成する。式(16)では、式(2)、(4)、(6)、(8)で表される第2、第4、第6および第8の検出信号S2,S4,S6,S8を用いている。
【0142】
Sb=S2+S4+S6+S8
=sinθ+sin(θ+α)+sin(θ+β)+sin(θ+α+β)
=2sin(θ+α/2)・cos(−α/2)
+2sin(θ+α/2+β)・cos(−α/2)
=4cos(α/2)・sin(θ+α/2+β/2)・cos(−β/2)
=4cos(α/2)・cos(β/2)・sin(θ+α/2+β/2)
…(16)
【0143】
第2の演算回路53における演算では、式(2)、(4)中の2つの第1の誤差成分が相殺され、式(6)、(8)中の2つの第1の誤差成分が相殺され、式(2)、(6)中の2つの第2の誤差成分が相殺され、式(4)、(8)中の2つの第2の誤差成分が相殺される。これにより、第2の信号Sbは、第2、第4、第6、第8の検出信号S2,S4,S6,S8に比べて第1および第2の誤差成分が低減された信号になる。
【0144】
角度演算部54は、第1および第2の信号Sa,Sbに基づいて角度検出値θsを算出する。具体的には、例えば、角度演算部54は、式(15)、(16)によって生成された第1および第2の信号Sa,Sbを用いて、下記の式(17)によって、θsを算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
【0145】
θs=atan(Sb/Sa)−(α/2+β/2) …(17)
【0146】
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(17)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、Sa,Sbの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(17)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。角度演算部54は、式(17)と、上記のSa,Sbの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
【0147】
次に、前述の第2の実施例の場合における、第1および第2の信号Sa,Sbの生成方法と角度検出値θsの算出方法について説明する。第1の演算回路52における演算には、第2の実施例における第1の演算と第3の演算と第5の演算と第7の演算が含まれる。具体的には、例えば、第1の演算回路52は、下記の式(18)によって第1の信号Saを生成する。式(18)では、式(1)、(9)、(11)、(13)で表される第1、第3、第5および第7の検出信号S1,S3,S5,S7を用いている。なお、以下の説明では、γ=360°/nとし、δ=360°/mとする。
【0148】
Sa=S1−S3−S5+S7
=cosθ−cos(θ+γ)−cos(θ+δ)+cos(θ+γ+δ)
=−2sin(θ+γ/2)・sin(−γ/2)
+2sin(θ+γ/2+δ)・sin(−γ/2)
=4sin(γ/2)・sin(−δ/2)・cos(θ+γ/2+δ/2)
=−4sin(γ/2)・sin(δ/2)・cos(θ+γ/2+δ/2)
…(18)
【0149】
第1の演算回路52における演算では、式(1)、(9)中の2つの第1の誤差成分が相殺され、式(11)、(13)中の2つの第1の誤差成分が相殺され、式(1)、(11)中の2つの第2の誤差成分が相殺され、式(9)、(13)中の2つの第2の誤差成分が相殺される。これにより、第1の信号Saは、第1、第3、第5、第7の検出信号S1,S3,S5,S7に比べて第1および第2の誤差成分が低減された信号になる。
【0150】
また、第2の演算回路53における演算には、第2の実施例における第2の演算と第4の演算と第6の演算と第8の演算が含まれる。具体的には、例えば、第2の演算回路53は、下記の式(19)によって第2の信号Sbを生成する。式(19)では、式(2)、(10)、(12)、(14)で表される第2、第4、第6および第8の検出信号S2,S4,S6,S8を用いている。
【0151】
Sb=S2−S4−S6+S8
=sinθ−sin(θ+γ)−sin(θ+δ)+sin(θ+γ+δ)
=2sin(−γ/2)・cos(θ+γ/2)
−2sin(−γ/2)・cos(θ+γ/2+δ)
=4sin(γ/2)・sin(θ+γ/2+δ/2)・sin(−δ/2)
=−4sin(γ/2)・sin(δ/2)・sin(θ+γ/2+δ/2)
…(19)
【0152】
第2の演算回路53における演算では、式(2)、(10)中の2つの第1の誤差成分が相殺され、式(12)、(14)中の2つの第1の誤差成分が相殺され、式(2)、(12)中の2つの第2の誤差成分が相殺され、式(10)、(14)中の2つの第2の誤差成分が相殺される。これにより、第2の信号Sbは、第2、第4、第6、第8の検出信号S2,S4,S6,S8に比べて第1および第2の誤差成分が低減された信号になる。
【0153】
角度演算部54は、第1および第2の信号Sa,Sbに基づいて角度検出値θsを算出する。具体的には、例えば、角度演算部54は、式(18)、(19)によって生成された第1および第2の信号Sa,Sbを用いて、下記の式(20)によって、θsを算出する。
【0154】
θs=atan(Sb/Sa)−(γ/2+δ/2) …(20)
【0155】
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(20)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、Sa,Sbの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(20)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。角度演算部54は、式(20)と、上記のSa,Sbの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
【0156】
なお、本実施の形態における第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係は、第1ないし第8の位相関係が生じるものであればよく、上記の第1および第2の実施例に限られるものではない。
【0157】
例えば、第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係は、角度θ1と角度θ2が電気角の180°/nに相当する角度になり、角度θ3が電気角の360°/mに相当する角度になる関係であってもよい。この場合には、例えば、第1の演算回路52は下記の式(21)によって第1の信号Saを生成し、第2の演算回路53は下記の式(22)によって第2の信号Sbを生成する。これにより、第1および第2の誤差成分が低減された第1および第2の信号Sa,Sbが得られる。
【0158】
Sa=S1+S3−S5−S7 …(21)
Sb=S2+S4−S6−S8 …(22)
【0159】
また、第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係は、角度θ1と角度θ2が電気角の360°/nに相当する角度になり、角度θ3が電気角の180°/mに相当する角度になる関係であってもよい。この場合には、例えば、第1の演算回路52は下記の式(23)によって第1の信号Saを生成し、第2の演算回路53は下記の式(24)によって第2の信号Sbを生成する。これにより、第1および第2の誤差成分が低減された第1および第2の信号Sa,Sbが得られる。
【0160】
Sa=S1−S3+S5−S7 …(23)
Sb=S2−S4+S6−S8 …(24)
【0161】
以上説明したように、本実施の形態に係る角度センサ2および角度センサシステム1では、第1ないし第4の検出部10,20,30,40が所定の位置関係で配置され、角度検出部50では、第1および第2の誤差成分が低減された第1および第2の信号Sa,Sbを生成するために、加算や減算といった比較的簡単な演算が行われる。これにより、本実施の形態によれば、第1ないし第8の検出信号S1〜S8に含まれる、5以上の次数の高調波に相当する第1の誤差成分と、第1の誤差成分とは異なる次数の高調波に相当する第2の誤差成分に起因した角度誤差を容易に低減することができる。
【0162】
ところで、第1および第2の誤差成分に起因した角度誤差を低減する他の方法としては、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々に含まれる第1および第2の誤差成分が小さくなるように、信号処理によって第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々を補正する方法が考えられる。具体的には、例えば、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形に対してフーリエ変換を行い、その結果に基づいて第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々に含まれる第1および第2の誤差成分を相殺することが考えられる。しかし、この方法では、複雑な信号処理が必要になるという問題点がある。この問題点は、誤差成分の次数が高くなるほど顕著になる。
【0163】
これに対し、本実施の形態では、前述のように、比較的簡単な演算によって、第1および第2の誤差成分が低減された第1および第2の信号Sa,Sbを生成することができる。また、本実施の形態では、第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係を調整することによって、任意の次数の誤差成分を低減することができる。これらのことから、本実施の形態によれば、信号処理によって第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々を補正する場合に比べて、第1および第2の誤差成分に起因した角度誤差を容易に低減することができる。
【0164】
また、本実施の形態では、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が、前述の第1の原因と第2の原因の少なくとも一方を含む場合に、第1および第2の誤差成分に起因した角度誤差を低減することができる。
【0165】
次に、以下に示す一例を用いて、本実施の形態による角度誤差の低減の効果を具体的に示す。まず、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2に基づいて算出される角度検出値θsに相当する値を、未補正角度検出値と呼び、記号θpで表す。未補正角度検出値θpは、下記の式(25)によって算出される。
【0166】
θp=atan(S2/S1) …(25)
【0167】
θpが0°以上360°未満の範囲内では、式(25)におけるθpの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S1,S2の正負の組み合わせにより、θpの真の値が、式(25)におけるθpの2つの解のいずれであるかを判別することができる。
【0168】
また、未補正角度検出値θpに生じる角度誤差を記号Epで表し、角度検出値θsに生じる角度誤差を記号Esで表す。角度誤差Ep,Esの算出は、角度センサシステム1の外部の図示しない制御部によって、この制御部が角度センサ2の真の検出対象の角度を認識できる状況の下で行われる。この状況は、例えば、制御部の指令によって真の検出対象の角度を変化させる場合や、制御部が真の検出対象の角度の情報を取得できる場合に得られる。真の検出対象の角度は、例えば、磁界発生部5の回転角である。以下、制御部が認識している真の検出対象の角度を、特に基準角度θrと言う。理想角度θは、真の検出対象の角度および基準角度θrに相当する。角度誤差Ep,Esは、それぞれ下記の式(26)、(27)によって算出される。
【0169】
Ep=θp−θr …(26)
Es=θs−θr …(27)
【0170】
図11は、未補正角度検出値θpに生じる角度誤差Epの波形の一例を示す波形図である。
図12は、角度検出値θsに生じる角度誤差Esの波形の一例を示す波形図である。
図11および
図12において横軸は、基準角度θrと等しい理想角度θを示し、縦軸は角度誤差EpまたはEsの大きさを示している。
【0171】
第1および第2の検出信号S1,S2は、第1および第2の誤差成分が低減される前の信号である。未補正角度検出値θpに生じる角度誤差Epは、主に、第1および第2の誤差成分に起因して生じたものである。
図11および
図12に示したように、角度検出値θsに生じる角度誤差Esは、未補正角度検出値θpに生じる角度誤差Epよりも小さい。このように、本実施の形態によれば、第1および第2の誤差成分に起因した角度誤差を低減することができる。
【0172】
なお、本発明の角度センサおよび角度センサシステムは、第1および第2の誤差成分のうち、第1の誤差成分にのみ起因した角度誤差を低減できるようにしたものであってもよい。この場合には、角度センサ2から第3および第4の検出部30,40を省くことができる。また、この場合には、第1の演算回路52は、第1の信号Saを生成するための前述の複数の式においてS5とS7を0とすることによって、第1の信号Saを生成することができる。また、第2の演算回路53は、第2の信号Sbを生成するための前述の複数の式においてS6とS8を0とすることによって、第2の信号Sbを生成することができる。
【0173】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。始めに、
図13を参照して、本実施の形態に係る角度センサシステムの概略の構成について説明する。本実施の形態に係る角度センサシステム1は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る角度センサシステム1は、第1の実施の形態における磁界発生部5の代わりに、磁界発生部7を備えている。本実施の形態における磁界発生部7は、円柱状の磁石であり、方向が回転する回転磁界MFを発生する。磁界発生部7は、中心軸Cを中心として回転方向Dに回転する。
【0174】
磁界発生部7は、磁化の方向が互いに異なる第1および第2の部分7A,7Bを含んでいる。第1および第2の部分7A,7Bは、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されている。
図13において、符号7AMを付した記号は第1の部分7Aの磁化の方向を表し、符号7BMを付した記号は第2の部分7Bの磁化の方向を表している。第1の部分7Aの磁化の方向7AMは、中心軸Cに平行な方向である。
図13において、方向7AMは上に向かう方向である。第2の部分7Bの磁化の方向7BMは、方向7AMとは反対の方向である。
【0175】
本実施の形態では、角度センサ2の第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、磁界発生部7の一方の端面に対向するように配置される。なお、
図13では、理解を容易にするために、第1ないし第4の検出部10,20,30,40を別体として描いているが、第1ないし第4の検出部10,20,30,40は一体化されていてもよい。また、
図13では、第1ないし第4の検出部10,20,30,40が中心軸Cに平行な方向に積層されているが、その積層順序は
図13に示した例に限られない。第1ないし第4の検出部10,20,30,40に対する磁界発生部7の相対的な位置は、回転方向Dに変化する。
【0176】
なお、本実施の形態に係る角度センサシステム1の構成は、
図13に示した例に限られない。例えば、
図13に示したように配置された磁界発生部7と第1ないし第4の検出部10,20,30,40において、磁界発生部7が固定されて第1ないし第4の検出部10,20,30,40が回転してもよいし、磁界発生部7と第1ないし第4の検出部10,20,30,40が互いに反対方向に回転してもよいし、磁界発生部7と第1ないし第4の検出部10,20,30,40が同じ方向に互いに異なる角速度で回転してもよい。いずれの場合においても、第1ないし第4の検出部10,20,30,40に対する磁界発生部7の相対的な位置は、中心軸Cを中心として回転方向Dに回転する。
【0177】
ここで、
図13および
図14を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。本実施の形態では、Z方向を、
図13に示した中心軸Cに平行で、
図13における下から上に向かう方向とする。
図14において、X方向は右に向かう方向であり、Y方向は上に向かう方向であり、Z方向は奥から手前に向かう方向である。
【0178】
第1の実施の形態で説明したように、第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、それぞれ、第1ないし第4の位置P1,P2,P3,P4における回転磁界MFを検出する。本実施の形態では、第1ないし第4の位置P1,P2,P3,P4のそれぞれにおける回転磁界MFの方向DMが同じになるように、第1ないし第4の位置P1,P2,P3,P4は、回転方向Dについて同じ位置になっている。
【0179】
本実施の形態における基準平面は、磁界発生部7の一方の端面に平行で且つ中心軸Cに垂直である。本実施の形態では、第1の位置P1を基準位置PRとし、X方向を基準方向DRとする。回転磁界MFの方向DMは、
図14において時計回り方向に回転するものとする。基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度、すなわち回転磁界角度θMは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
【0180】
また、
図14に示したように、第1の方向D11、第2の方向D21、第3の方向D31、第4の方向D41、第5の方向D12、第6の方向D22、第7の方向D32および第8の方向D42を定義する。第1ないし第8の方向D11,D21,D31,D41,D12,D22,D32,D42は、いずれも、基準平面に対して平行な方向である。第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41は、互いに異なっている。本実施の形態では、第1の方向D11は、X方向および基準方向DRと同じ方向である。第2の方向D21は、第1の方向D11から、反時計回り方向に角度θ1だけ回転した方向である。第3の方向D31は、第1の方向D11から、反時計回り方向に角度θ3だけ回転した方向である。第4の方向D41は、第3の方向D31から、反時計回り方向に角度θ2だけ回転した方向である。角度θ1〜θ3の具体的な値については、後で説明する。
【0181】
第5ないし第8の方向D12,D22,D32,D42は、それぞれ、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41から、所定の角度だけ回転した方向である。本実施の形態では、第5ないし第8の方向D12,D22,D32,D42は、それぞれ、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41から、時計回り方向に90°だけ回転した方向である。
【0182】
本実施の形態では、第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係は、第1ないし第4の位置P1〜P4のそれぞれにおける回転磁界MFの方向DMが同じであるが、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41が互いに異なる関係である。
【0183】
第1ないし第4の検出部10,20,30,40内の複数の磁化固定層の磁化の方向と第1ないし第8の方向D11,D21,D31,D41,D12,D22,D32,D42との関係は、第1の実施の形態と同じである。
【0184】
第1の実施の形態と同様に、第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、4つの個別部品によって構成されていてもよい。4つの個別部品は、機械的構造が同じであると共に、機械的構造と複数の磁化固定層の磁化の方向との位置関係も同じものであってもよい。この場合には、第2の検出部20は、第1の検出部10に対して、反時計回り方向に角度θ1だけ回転した姿勢で配置される。第3の検出部30は、第1の検出部10に対して、反時計回り方向に角度θ3だけ回転した姿勢で配置される。第4の検出部40は、第3の検出部30に対して、反時計回り方向に角度θ2だけ回転した姿勢で配置される。
【0185】
あるいは、第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、機械的構造と配置の姿勢は同じで、それらに含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向のみが、それぞれ対応する方向に一致するように構成されていてもよい。
【0186】
第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、第1の実施の形態で説明した第1ないし第8の位相関係が生じる位置関係で配置されている。以下、本実施の形態の第1の実施例と第2の実施例について説明する。始めに、第1の実施例について説明する。本実施の形態の第1の実施例における第1ないし第8の位相関係は、第1の実施の形態の第1の実施例と同じである。第1の実施例では、第1の実施例における第1および第2の位相関係が生じるように、第1および第2の検出部10,20を配置する。具体的には、
図14に示した角度θ1が電気角の180°/nに相当する角度になるように第1および第2の方向D11,D21を規定する。また、第1の実施例における第3および第4の位相関係が生じるように、第3および第4の検出部30,40を配置する。具体的には、
図14に示した角度θ2が電気角の180°/nに相当する角度になるように第3および第4の方向D31,D41を規定する。また、第1の実施例における第5および第6の位相関係が生じるように、第1および第3の検出部10,30を配置する。具体的には、
図14に示した角度θ3が電気角の180°/mに相当する角度になるように第1および第3の方向D11,D31を規定する。第1の実施例における第7および第8の位相関係は、第1の実施例における第1ないし第6の位相関係が生じるように第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41を規定することによって生じる。
【0187】
本実施の形態では特に、mは3であり、nは5である。従って、180°/mは60°であり、180°/nは36°である。また、第1ないし第8の検出信号S1〜S8における1周期すなわち電気角の360°は、磁界発生部7の1回転すなわち磁界発生部7の回転角の360°に相当する。従って、第1の実施例では、角度θ1と角度θ2がいずれも36°になり、角度θ3が60°になるように第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41を規定する。
【0188】
第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が第2の原因である場合には、第1の実施例では、第1および第2の検出信号S1,S2をそれぞれ第1の実施の形態における式(1)、(2)で表すと、第3ないし第8の検出信号S3〜S8は、それぞれ第1の実施の形態における式(3)〜(8)で表すことができる。
【0189】
次に、第2の実施例について説明する。本実施の形態の第2の実施例における第1ないし第8の位相関係は、第1の実施の形態の第2の実施例と同じである。第2の実施例では、第2の実施例における第1および第2の位相関係が生じるように、第1および第2の検出部10,20を配置する。具体的には、
図14に示した角度θ1が電気角の360°/nに相当する角度になるように第1および第2の方向D11,D21を規定する。また、第2の実施例における第3および第4の位相関係が生じるように、第3および第4の検出部30,40を配置する。具体的には、
図14に示した角度θ2が電気角の360°/nに相当する角度になるように第3および第4の方向D31,D41を規定する。また、第2の実施例における第5および第6の位相関係が生じるように、第1および第3の検出部10,30を配置する。具体的には、
図14に示した角度θ3が電気角の360°/mに相当する角度になるように第1および第3の方向D11,D31を規定する。第2の実施例における第7および第8の位相関係は、第2の実施例における第1ないし第6の位相関係が生じるように第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41を規定することによって生じる。
【0190】
本実施の形態では特に、360°/nは72°であり、360°/mは120°である。第2の実施例では、角度θ1と角度θ2がいずれも72°になり、角度θ3が120°になるように第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41を規定する。
【0191】
第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が第2の原因である場合には、第2の実施例では、第1および第2の検出信号S1,S2をそれぞれ第1の実施の形態における式(1)、(2)で表すと、第3ないし第8の検出信号S3〜S8は、それぞれ第1の実施の形態における式(9)〜(14)で表すことができる。
【0192】
本実施の形態では、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が第2の原因を含む場合に、第1および第2の誤差成分に起因した角度誤差を低減することができる。
【0193】
なお、本実施の形態における第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係は、第1の実施の形態に係る角度センサシステム1に適用してもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0194】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。始めに、
図15を参照して、本実施の形態に係る角度センサシステムの概略の構成について説明する。本実施の形態に係る角度センサシステム1は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る角度センサシステム1は、第1の実施の形態における磁界発生部5の代わりに、磁界発生部8を備えている。
【0195】
図15において、X方向は右に向かう方向であり、Y方向は上に向かう方向であり、Z方向は奥から手前に向かう方向である。磁界発生部8は、X方向に沿って交互に直線状に配列された複数組の第1の部分8Aと第2の部分8Bを有している。第1の部分8Aと第2の部分8Bは、互いに反対方向の磁化を有している。
図15において、複数の白抜きの矢印は、部分8A,8Bの磁化の方向を表している。
図15において、第1の部分8Aの磁化の方向はY方向である。第2の部分8Bの磁化の方向は、第1の部分8Aの磁化の方向とは反対の方向である。
【0196】
磁界発生部8は、X方向に平行な側面8aを有している。本実施の形態では、角度センサ2の第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、磁界発生部8の側面8aに対向するように配置される。
【0197】
角度センサ2と磁界発生部8の一方は、図示しない動作体に連動して、直線的に移動する。これにより、第1ないし第4の検出部10,20,30,40に対する磁界発生部8の相対的な位置が所定の方向DLに変化する。方向DLは、X方向に平行な方向である。
図15に示した例では、方向DLは、−X方向である。
【0198】
ここで、
図15および
図16を参照して、本実施の形態における第1ないし第4の検出部10,20,30,40の配置と、方向と角度の定義について説明する。第1の実施の形態で説明したように、第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、それぞれ、第1ないし第4の位置P1,P2,P3,P4における回転磁界MFを検出する。本実施の形態では、第1ないし第4の位置P1,P2,P3,P4のそれぞれにおける回転磁界MFの方向DMが互いに異なるように、第1ないし第4の位置P1,P2,P3,P4が互いに異なっている。
【0199】
図16に示したように、第1ないし第4の位置P1〜P4は、方向DL(−X方向)に平行な仮想の直線L上にあって互いに異なっている。第2の位置P2は、第1の位置P1から、X方向に距離L1だけ移動した位置である。第3の位置P3は、第1の位置P1から、X方向に距離L3だけ移動した位置である。第4の位置P4は、第3の位置P3から、X方向に距離L2だけ移動した位置である。距離L1〜L3の具体的な値については、後で説明する。
【0200】
本実施の形態における基準平面は、Z方向に垂直である。基準位置PRは、基準平面内に位置する。本実施の形態では、第1の位置P1を基準位置PRとし、Y方向を基準方向DRとする。回転磁界MFの方向DMは、
図16において時計回り方向に回転するものとする。基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度、すなわち回転磁界角度θMは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
【0201】
また、
図16に示したように、第1の方向D11、第2の方向D21、第3の方向D31、第4の方向D41、第5の方向D12、第6の方向D22、第7の方向D32および第8の方向D42を定義する。第1ないし第8の方向D11,D21,D31,D41,D12,D22,D32,D42は、いずれも、基準平面に対して平行な方向である。本実施の形態では、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41は、いずれもY方向とする。
【0202】
第5ないし第8の方向D12,D22,D32,D42は、それぞれ、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41から、所定の角度だけ回転した方向である。本実施の形態では、第5ないし第8の方向D12,D22,D32,D42は、それぞれ、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41から、時計回り方向に90°だけ回転した方向、すなわちX方向である。
【0203】
第1ないし第4の位置P1,P2,P3,P4は、それぞれ第1ないし第4の検出部10,20,30,40内に存在する。第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係は、第1ないし第4の位置P1,P2,P3,P4が上述のように互いに異なる関係である。
【0204】
第1ないし第4の検出部10,20,30,40内の複数の磁化固定層の磁化の方向と第1ないし第8の方向D11,D21,D31,D41,D12,D22,D32,D42との関係は、第1の実施の形態と同じである。
【0205】
第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、第1の実施の形態と同様に、4つの個別部品によって構成されていてもよい。4つの個別部品は、機械的構造が同じであると共に、機械的構造と複数の磁化固定層の磁化の方向との位置関係も同じものであってもよい。あるいは、第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、これら全てを含む1つの部品によって構成されていてもよい。
【0206】
第1ないし第4の検出部10,20,30,40は、第1の実施の形態で説明した第1ないし第8の位相関係が生じる位置関係で配置されている。以下、本実施の形態の第1の実施例と第2の実施例について説明する。
【0207】
始めに、第1の実施例について説明する。本実施の形態の第1の実施例における第1ないし第8の位相関係は、第1の実施の形態の第1の実施例と同じである。第1の実施例では、第1の実施例における第1および第2の位相関係が生じるように、第1および第2の検出部10,20を配置する。具体的には、
図16に示した距離L1が電気角の180°/nに相当する大きさになるように第1および第2の位置P1,P2を規定する。また、第1の実施例における第3および第4の位相関係が生じるように、第3および第4の検出部30,40を配置する。具体的には、
図16に示した距離L2が電気角の180°/nに相当する大きさになるように第3および第4の位置P3,P4を規定する。また、第1の実施例における第5および第6の位相関係が生じるように、第1および第3の検出部10,30を配置する。具体的には、
図16に示した距離
L3が電気角の180°/mに相当する大きさになるように第1および第3の位置P1,P3を規定する。第1の実施例における第7および第8の位相関係は、第1の実施例における第1ないし第6の位相関係が生じるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定することによって生じる。
【0208】
磁界発生部8において、1つの第2の部分8Bを介して隣接する2つの第1の部分8Aの中心間の距離と、1つの第1の部分8Aを介して隣接する2つの第2の部分8Bの中心間の距離は、互いに等しい。ここで、
図15に示したように、1つの第2の部分8Bを介して隣接する2つの第1の部分8Aの中心間の距離を1ピッチと言い、記号Lpで表す。第1ないし第8の検出信号S1〜S8における1周期すなわち電気角の360°は、1ピッチに相当する。従って、上記の電気角の180°/nに相当する大きさとは、Lp/(2n)であり、上記の電気角の180°/mに相当する大きさとは、Lp/(2m)である。第1の実施例では、距離L1と距離L2がいずれもLp/(2n)になり、距離L3がLp/(2m)になるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定する。本実施の形態では特に、mは3であり、nは5である。従って、第1の実施例では、距離L1と距離L2がいずれもLp/10になり、距離L3がLp/6になるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定する。
【0209】
第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が、第1の原因である場合と第2の原因である場合のいずれの場合においても、第1の実施例では、第1および第2の検出信号S1,S2をそれぞれ第1の実施の形態における式(1)、(2)で表すと、第3ないし第8の検出信号S3〜S8は、それぞれ第1の実施の形態における式(3)〜(8)で表すことができる。
【0210】
次に、第2の実施例について説明する。本実施の形態の第2の実施例における第1ないし第8の位相関係は、第1の実施の形態の第2の実施例と同じである。第2の実施例では、第2の実施例における第1および第2の位相関係が生じるように、第1および第2の検出部10,20を配置する。具体的には、
図16に示した距離L1が電気角の360°/nに相当する大きさになるように第1および第2の位置P1,P2を規定する。また、第2の実施例における第3および第4の位相関係が生じるように、第3および第4の検出部30,40を配置する。具体的には、
図16に示した距離L2が電気角の360°/nに相当する大きさになるように第3および第4の位置P3,P4を規定する。また、第2の実施例における第5および第6の位相関係が生じるように、第1および第3の検出部10,30を配置する。具体的には、
図16に示した距離L3が電気角の360°/mに相当する大きさになるように第1および第3の位置P1,P3を規定する。第2の実施例における第7および第8の位相関係は、第2の実施例における第1ないし第6の位相関係が生じるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定することによって生じる。
【0211】
なお、上記の電気角の360°/nに相当する大きさとは、Lp/nであり、上記の電気角の360°/mに相当する大きさとは、Lp/mである。第2の実施例では、距離L1と距離L2がいずれもLp/nになり、距離L3がLp/mになるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定する。本実施の形態では特に、mは3であり、nは5である。従って、第2の実施例では、距離L1と距離L2がいずれもLp/5になり、距離L3がLp/3になるように第1ないし第4の位置P1〜P4を規定する。
【0212】
第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が、第1の原因である場合と第2の原因である場合のいずれの場合においても、第2の実施例では、第1および第2の検出信号S1,S2をそれぞれ第1の実施の形態における式(1)、(2)で表すと、第3ないし第8の検出信号S3〜S8は、それぞれ第1の実施の形態における式(9)〜(14)で表すことができる。
【0213】
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が、第1の原因と第2の原因の少なくとも一方を含む場合に、第1および第2の誤差成分に起因した角度誤差を低減することができる。
【0214】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0215】
[第4の実施の形態]
次に、
図17を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る角度センサシステムの概略の構成について説明する。本実施の形態に係る角度センサシステム1は、以下の点で第3の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、第1ないし第4の位置P1〜P4のそれぞれにおける回転磁界MFの方向DMが同じになるように、第1ないし第4の位置P1〜P4が所定の方向DLについて同じ位置になっている。
【0216】
本実施の形態における第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係は、第2の実施の形態と同様に、第1ないし第4の検出部10,20,30,40が配置されている位置における回転磁界MFの方向DMが同じであるが、第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41が互いに異なる関係である。第1ないし第4の方向D11,D21,D31,D41の定義は、第2の実施の形態における
図14に示した定義と同じである。また、第1ないし第4の検出部10,20,30,40の位置関係の具体的な内容は、第2の実施の形態と同じである。
【0217】
本実施の形態では、第1ないし第8の検出信号S1〜S8の各々の波形が歪む原因が第2の原因を含む場合に、第1および第2の誤差成分に起因した角度誤差を低減することができる。
【0218】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2または第3の実施の形態と同様である。
【0219】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の角度センサの角度検出部は、各検出信号に含まれる第1および第2の誤差成分以外の誤差成分に起因した角度誤差を低減するための処理を行う部分を含んでいてもよい。