(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板は、樹脂フィルムであり、前記補強部が形成された側の前記開口と所定の距離間隔で交互に並設された磁性を有する金属をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明によるマスクの実施形態の一例を示す図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、その一部拡大平面図である。
【0012】
図1(a)に示すマスク1は、複数の細長状の開口を有していても、その開口の微細化に伴う形状の変形を防ぐものであり、基板2と、金属(メタル)3と、開口4とを備える。マスク1は、両面が加工されたものであり、
図1(a)では、表面(第2面)側の形状を示している。基板2は、ポリイミドの樹脂フィルムであって、その樹脂フィルム上に開口4と所定の距離間隔で交互に並設された磁性を有するライン状の金属3を備える。これにより、基板2は、樹脂フィルムに金属3が設けられたハイブリッド型のマスクを構成している。
【0013】
ここで、ライン状の金属3は、例えば、成膜の際にマスク1自体が磁力によって固定されるために用いられるものである。この金属3は、例えば、磁性材料の一種であるニッケルである。そして、金属3は、磁力によりマスク1を固定させる観点から、表面(第2面)側に設けられていればよく、例えば、20μm〜50μm程度の厚みを有するものが好ましい。
【0014】
なお、金属3は、ニッケルに限られず、ニッケル合金であってもよい。このようなハイブリッド型のマスクは、磁力によって固定することができるので、基板2をレーザ加工する際、精度良く加工することができる。また、開口4の開口幅は、例えば、微細加工用として数μm程度であることが好ましい。
【0015】
図1(b)では、
図1(a)に示す枠Aで囲む領域の拡大平面図を示しており、開口周辺をさらに詳しく示している。マスク1は、さらに、基板2の表面側にて開口4の長手方向に交差して橋渡し状に形成され、基板2の厚さより薄い複数の補強部(リブ)5と、補強部5の側方側に位置する開口周辺の領域を長手方向に沿って段差が設けられて形成された掘削部6とを備える。
【0016】
図2は、
図1(b)に示すマスクの斜視図である。
図2に示す通り、補強部5は、例えば、開口4を橋渡し状に跨ぐ部分の下面側に切欠部5aが設けられており、凹形の形状を反転させた橋型の形状を有している。なお、補強部5は、弓形に曲がったアーチ型の形状であってもよい。
【0017】
ここで、上記の切欠部5aを設けることにより、例えば、成膜の際、飛来して来る成膜用の物質(以下「成膜物質」という。)が補強部5を回り込むため、マスク1は、その分、成膜物質を開口4に通過させやすくできる。さらに、たとえ、成膜物質が補強部5に付着して経時的に切欠部5aに堆積していった場合であっても、成膜物質が開口4を通過しやすい状態は、その切欠部5aがあるうちは、元々切欠部5aが形成されていない場合と比較して維持される。
【0018】
なお、切欠部5aを有する補強部5を採用した場合、マスク1は、開口4の開口幅と開口4の高さとの比(高さ/開口幅)を、例えば、1.0±0.2の範囲内にして、掘削部6が形成されることが好ましい。最も好ましくは、高さ/開口幅が、1.0である。このような比率にして掘削部6が形成された場合、
図2に示す通り、マスク1において段差ができるため、その分、成膜物質が開口4を通過しやすくなる。
【0019】
図3は、
図1(b)に示すマスクのB−B線拡大断面図である。ここで、図中、符号wは、
図2に示す開口4の開口幅と交差する方向の補強部5の幅を示す。符号d
1は、
図4で後述する透明基板7の上面と補強部5の底部5bまでの距離を示す。符号hは、基板2の高さを示す。
図3において、底部5bは、
図2に示す補強部5の切欠部5aの最も窪んだ箇所を示す。マスク1の厚さに対して、幅wと距離d
1との関係は、以下、
図4,5を参照して、詳細に説明する。
【0020】
図4は、補強部の幅を決定するための数値計算の条件の一例を示す模式図である。ここで、
図4では、説明をわかりやすくするため、マスク1について、
図2に示す補強部5のみを描いている。成膜を実際に行う場合、透明基板7とマスク1とは、例えば、接触した状態で成膜処理が施される。なお、透明基板7は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜である。
図4において、符号d
2は、成膜源8から透明基板7までの距離を表しており、一例として、30mmとする。
【0021】
また、
図4において、符号r
1は、幅wの半分の距離を表している。符号r
2は、成膜物質が補強部5の側面に衝突するか否かを決める指標となる距離を示している。具体的には、符号r
2は、成膜源8から所定の放射角度で放射された成膜物質8aが符号r
2の距離(図中、矢印の先を示す位置)より短い位置を横切って原点(図中、XY軸の交点)Oに向かう場合、その成膜物質8aは、補強部5の側面に衝突して原点Oに到達できないことを意味する。符号r
3は、成膜源8から所定の放射角度で放射された成膜物質8bが符号r
3の距離の位置(図中、矢印の先を示す位置)を通過して、
図4において、XY軸が交わる原点Oに向けて飛来する場合の距離を示している。
【0022】
また、別の観点でみると、
図4において、符号θ
1,θ
2は、成膜源8からの放射された成膜物質が原点Oに向かう入射角度を示し、この角度θ
1は、スパッタリングによる成膜物質の放射角度の一例である、約70度を示し、この角度θ
1より大きい角度になると、原点Oに向かう成膜物質は、補強部5に衝突して原点に到達することが困難になることを意味する。なお、角度θ
2は、約40度を示しており、角度θ
2より小さい角度になると、成膜源8から放射されて原点Oに向かう成膜物質は、到達しにくくなることを示している。
【0023】
つまり、幅wは、距離d
1,d
2と、成膜源8から放射される成膜物質8a,8bの放射角度(又は、上記入射角度)と、補強部5の形成位置等のパラメータに依存して求まる。したがって、補強部5が真下の開口箇所を覆う影響を抑制するために、これらのパラメータに基づいて、数値計算を行うことにより、補強部5の最適な形状が求められる。そして、例えば、幅wの長さを最適化することで、成膜時に発生する成膜ムラが抑制される。
【0024】
図5は、補強部の幅を決定するための数値計算の結果の一例を示すグラフである。この
図5は、距離d
1に応じて、最適な幅wを求めることができることを示している。ここで、横軸は、幅w(μm)を示し、縦軸は、幅wに依存する安定度(%)を示す。安定度は、補強部5が存在しない場合、原点Oに向かう成膜物質は、阻害されないので、100%の値となる。
【0025】
また、安定度が90%とは、距離d
1に応じて、幅wを何μmとすれば、補強部5の影になる部分の影響が10%程度(例えば、スパッタによる成膜厚のバラツキとして許される範囲)になることを意味する。すなわち、補強部5が開口4を橋渡しすることにより、補強部5の真下に位置する開口箇所は、その補強部5の影になる。その結果、特定方向から飛来する成膜物質は、補強部5に衝突し、補強部5の真下に位置する開口箇所に到達できなくなる。なお、その影響が約10%程度以内に抑えることが好ましい。例えば、約10%程度の変動を閾値T(安定度が約90%)とし、距離d
1=5μmとした場合には、以下の通りになる。すなわち、
図5に破線で示す約90%の閾値Tのラインと、数値計算で求められた距離d
1=5μmの実線C
1との交点から、垂線を下ろして横軸と交わる位置の値が、最適な幅wとなる。この場合、幅wは、約2μm程度が好ましいことになる。
【0026】
また、同様にして、距離d
1=10μmの場合、閾値Tのラインと、数値計算で求められた距離d
1=10μmの実線C
2の交点から、幅wは、約5μm程度が好ましいことになる。
また、同様にして、距離d
1=15μmの場合、閾値Tのラインと、数値計算で求められた距離d
1=15μmの実線C
3の交点から、幅wは、約7μm程度が好ましいことになる。この場合、基板2におけるポリイミドの高さhは、25μm程度であることが好ましい。したがって、マスク1の厚みを増さずに距離d
1を高くするほど、補強部5の幅wは、太くすることができる。
【0027】
以上より、本発明によるマスクは、例えば
図5に示した加工データに基づいて、補強部5や掘削部6が形成されている。これにより、補強部5の形成のためにマスク自体を厚くする必要がなく、かつ、補強部5がマスク1の強度を保つことができる。したがって、本発明によるマスクは、複数の微細な開口を有していても、補強部5により開口4の形状の変形を防ぐことができる。さらに、補強部5及び掘削部6の形状が、成膜物質を開口4に通過させやすくすることができる。
【0028】
なお、説明の便宜上、
図4では、成膜源8として説明しているが、例えば、成膜源8の替りに、有機EL(Electro Luminescence)素子の作成に用いられる蒸着源としてもよい。この場合、蒸着用の物質が放射されることになるが、上記の説明と同様にして、幅wが求められる。
【0029】
次に、上記マスクの実施形態の変形例について、説明する。
上記実施形態では、
図2に示した通り、マスク1において、補強部5に切欠部5aを有している。このような切欠部5aを設けたのは、
図4等を参照して上述した通り、成膜物質が補強部5を回り込んで透明基板7に到達しやすくするためである。ただし、本発明によるマスクは、これに限定されない。
【0030】
図6は、本発明によるマスクの実施形態の変形例を示す斜視図である。変形例のマスク1aでは、
図1に示すマスク1と同様、複数の補強部5が、基板2の片面側にて開口4の長手方向に交差して橋渡し状に形成されているが、切欠部5aが形成されていない構造になっている。この場合、切欠部5aを形成しない分、補強部5の幅wを、
図2に示す補強部5の幅wに比べて薄くしている。この際、
図2に示す補強部5と同様の強度が維持できるように幅wを薄くすることが好ましい。このようにすると、
図6に示す補強部5は、幅wを薄くした分、成膜物質が透明基板7に到達しやすくなる。したがって、変形例のマスク1aによれば、幅wを薄くしても、マスク1a自体の厚みを増さずに機械的な強度を向上させ、その強度に応じた厚さを維持できる。
【0031】
また、
図1に示す実施形態では、マスク1において、細長状の開口4を橋渡しする補強部5の位置が、各列の開口毎に同じ位置になるようにしたが、本発明によるマスクは、これに限定されない。例えば、マスク1は、補強部5の位置が、隣りの開口4に形成された補強部5の位置と交互にずらした位置関係になるようにして配置してもよい。
【0032】
具体的には、マスク1は、基板2に複数の細長状の開口4を有するマスクであって、基板2の片面側にて開口4の長手方向に交差して橋渡し状に形成され、基板2の厚さより薄い複数の補強部5と、補強部5の側方側に位置する開口周辺の領域を長手方向に沿って段差が設けられて形成された掘削部6とを備え、補強部5の位置が、隣りの開口4に形成された補強部5の位置と交互にずらした位置関係になるようにしてもよい。
【0033】
これにより、マスク1では、補強部5の位置が隣りの開口4に形成された補強部5の位置と交互にずらした位置関係を有するので、この場合においても、補強部5の形成のためにマスク自体の厚みを増さずに機械的な強度を向上させ、その強度に応じた厚さを維持できるマスクを提供できる。
【0034】
なお、互いの補強部5の間隔は、開口4内で隣りの補強部5との干渉を避ける位置関係にすることが好ましい。これにより、隣りの補強部5の形成する影になる部分の影響を考慮せずに済む。
【0035】
次に、本発明によるマスクの製造方法について、
図7〜9を参照して説明する。このマスクの製造方法は、マスク自体の厚みを増さずに必要な機械的な強度を保ち、その強度に応じた厚さを維持できるマスクを提供する。最初に、本発明によるマスクの製造方法を実現させるためのマスク加工装置について、
図8を参照して説明する。
【0036】
図8は、上記マスク加工装置の構成例を示すブロック図である。このマスク加工装置Mは、本発明によるマスクを製造するものであって、制御部10と、レーザ発生部11と、光学系12と、搬送処理部13と、バス14とを備える。このうち、レーザ発生部11、光学系12、搬送処理部13及び制御部10は、バス14を介して互いに接続されている。
【0037】
制御部10は、マスク加工装置Mの統括的な制御を行うものであり、マイクロプロセッサを搭載し、例えば、レーザ発生部11に指示を出すことにより、レーザ光を発生させる。また、制御部10は、例えば、搬送処理部13に指示を出すことにより、マスク1の搬送等を制御する。
【0038】
さらに、制御部10には、メモリ10aが備えられている。このメモリ10aは、プログラムやデータ等を記録するものであり、例えば、マスク加工装置Mの制御を行う制御プログラムを予め記録している不揮発性のメモリである。この制御プログラムには、本発明によるマスクの製造方法を実行するためのプログラムが含まれている。また、メモリ10aは、マスク加工に必要な加工データを予め記録している。なお、加工データは、予め制御プログラムに組み込まれていてもよい。また、加工データには、予め補強部5を形成する位置と掘削部6を形成する位置とが記された情報も含む。
【0039】
制御部10は、メモリ10aから、例えば、制御プログラムを読み出し、加工データを参照し、マスク1の製造の処理を行う。また、制御部10は、例えば、演算処理等を行い、結果をメモリ10aに記録する。
【0040】
レーザ発生部11は、レーザ光を発生するものであり、制御部10からレーザ光の発生の指示を受け、レーザ光を光学系12に出力する。ここで、レーザ発生部11には、レーザの一種であるYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ装置が設けられている。このYAGレーザ装置は、例えば、レーザ加工を施すものであり、YAGロッドを発振器としてレーザ光を励起して発振する。なお、レーザ発生部11は、レーザ発生手段として、YAGレーザ装置に限られず、例えば、エキシマレーザ装置等の他のレーザ装置を適用してもよい。
【0041】
光学系12は、レーザ加工に適した波長に変換して集光するもので、YAGレーザ装置から発振されたレーザ光の波長を変換する波長変換結晶を有する。この波長変換結晶を通過したレーザ光は、固体UV(Ultra Violet)レーザとして高調波に変換される。また、光学系12は、高調波に変換されたレーザ光をマスク1に集光するため、所定の倍率で縮小投影するプロジェクション等の光学部品を備えている。
【0042】
搬送処理部13は、図示省略のステージ上に載置されたマスク1を移動させるもので、例えば、図示省略の搬送機構により、マスク1を左右方向に移動させることができる。また、搬送処理部13は、図示省略の反転機構により、マスク1を反転させることができる。
【0043】
以上説明したマスク加工装置Mを用いたマスクの製造方法について、
図7及び
図9を参照して説明する。
【0044】
図7は、本発明によるマスクの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図9は、本発明によるマスクの製造方法の実施形態を模式的に示す工程図であり、(a)は、基材投入工程で用いるマスク1の一部の拡大断面図であり、(b)は、パターン加工工程(第1工程)を模式的に示した図であり、(c)は、掘削加工工程(第2工程)を模式的に示した図である。
【0045】
先ず、
図8に示すマスク加工装置Mの制御部10は、例えば、図示省略の入力手段により、本発明によるマスクの製造開始の指示入力を受け付けると、制御プログラムや加工データを読み出して、
図7に示すフローチャートの処理を開始する。
【0046】
図7のステップS1において、制御部10は、
図8に示す搬送処理部13に指示を出すことにより、基材投入の処理を行う。
本発明によるマスクの製造方法では、予め、基板2の表面(第2面)上に金属3を所定の配列でライン状に配置したものを用いる。
図9(a)に示す通り、断面が台形状の金属3は、開口が形成される箇所を挟むようにして所定の間隔で基板2の表面上に形成されている。搬送処理部13は、ステージ(図示省略)上に載置された、パターン加工される前段階のマスク1をレーザ照射位置に移動させる。マスク1の移動が完了すると、制御部10は、ステップS2の処理に移行する。
【0047】
図7のステップS2において、制御部10は、
図8に示すレーザ発生部11に指示を出すことにより、マスク1の裏面(第1面)側で開口となる領域に溝2aを形成するパターン加工の処理を行う(第1工程)。具体的には、レーザ発生部11は、YAGレーザ装置から、レーザ光pを励起して発振する。このレーザ光pは、
図8に示す光学系12を介して、高調波に変換された後、
図9(b)に示す通り、溝2aを形成する位置に照射される。この照射により、マスク1では、ポリイミドが削られることにより溝2aが形成される。なお、
図9(b)では、レーザ光pを光束として破線の矢印で示している。ここで、搬送処理部13は、凹形状の溝2aを形成する位置にレーザ照射ができるようにするため、ステージに載置されたマスク1を
図9の紙面に垂直な方向に適宜移動させる。これにより、マスク1の裏面側では、開口となる全ての領域に溝2aが形成される。
【0048】
なお、制御部10は、レーザ光pでポリイミドを削る深さを制御することにより、
図2に示す補強部5の切欠部5aの深さの調節を行うことができる。パターン加工の処理が完了すると、制御部10は、ステップS3の処理に移行する。
【0049】
図7のステップS3において、制御部10は、
図8に示すレーザ発生部11に指示を出すことにより、開口4を形成しつつ、補強部5と凹部6とを形成する掘削加工を行う(第2工程)。具体的には、制御部10は、搬送処理部13に指示を出すことにより、搬送処理部13は、一例として、ステージを介してマスク1を移動させ、レーザ照射位置から退避させた後、そのマスク1を上下反転させてステージに載置する。続いて、搬送処理部13は、反転されたマスク1をステージを介して移動させて、再び、マスク1をレーザ照射位置に設定する。
【0050】
続いて、制御部10の指示により、レーザ発生部11は、YAGレーザ装置から、レーザ光pを励起して発振する。この際、レーザ発生部11は、光学系12を介して、ステップS1のパターン加工よりもビーム口径の大きいレーザ光pをマスク1に向けて照射する。
【0051】
つまり、制御部10は、
図9(c)に示す通り、レーザ発生部11にレーザ光pによるレーザ加工を行わせることにより、マスク1では、基板2の裏面(第1面)の反対側の表面(第2面)側からレーザ照射による加工を施して溝2aを貫通させることにより開口4を形成しつつ、その開口4の長手方向に交差して橋渡し状の複数の補強部5を形成すると共に、その補強部5の側方側に位置する開口周辺の領域を長手方向に沿って段差が設けられた掘削部6を形成する。
【0052】
より詳細には、制御部10は、レーザ発生部11に指示を出し、レーザ光pを表面(第2面)側から照射させてポリイミドを削ることにより、ステップS2で形成した溝2aが貫通される。その結果、マスク1には、開口4が形成される。この際、制御部10は、レーザ発生部11に指示を出し、レーザ光でポリイミドの分子構造を破壊する仕方で開口周辺の領域を長手方向に沿って削ることにより、マスク1には、複数箇所に掘削部6が形成される(
図2参照)。これにより、レーザ照射を避けた領域については、補強部5が、1つの開口4につき、所定の間隔をおいて複数形成される(
図2参照)。この際、制御部10は、開口4の長手方向に交差して橋渡し状に形成され、基板2の厚さより薄い複数の補強部5の位置を、例えば、各列の開口毎に同じ位置になるようにして製造する。なお、開口4が貫通しても補強部5が形成されるので、強度が維持される。
【0053】
このようにして、制御部10は、マスク1を移動させてレーザ照射を行わせることにより、
図1に示すマスク1を製造することができる。すなわち、本発明のマスクの製造方法では、マスク1の両面加工をすることにより、開口4のパターン形成と、補強部5の形成と、掘削部6の形成を1度の製造工程でできる。マスク1の製造が完了すると、制御部10は、搬送処理部13にステージを介してマスク1を所定の位置に移動させる。そして、制御部10は、
図7に示すフローチャートの処理を終了する。
なお、マスクの両面加工を行う場合、一般的には、マスクの表面と裏面との位置合わせにそれぞれ精度が要求される。しかし、本発明によるマスクの製造方法では、裏面におけるパターン加工工程で開口4を形成する位置決めの精度を上げれば、表面では、裏面ほど精度を要求されずに済む。これは、掘削加工工程の際、掘削部6の幅にある程度の余裕があり、
図9(c)に示す通り、開口幅がパターン加工工程で決まるためである。したがって、本発明によるマスクの製造方法では、精度良く、開口4のパターン形成を行うことができる。
【0054】
以上より、本発明によるマスクの製造方法によれば、補強部5と掘削部6とを形成することにより、マスク自体の厚みを増さずに機械的な強度を向上させ、その強度に応じた厚さを維持できる。したがって、本発明によるマスクの製造方法では、例えば、製造段階で、微細化により開口が変形せず、より微細な細長状のマスクを製造することができる。