特許第6288499号(P6288499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6288499-強化ガラス板及びこれを用いた携帯端末 図000003
  • 特許6288499-強化ガラス板及びこれを用いた携帯端末 図000004
  • 特許6288499-強化ガラス板及びこれを用いた携帯端末 図000005
  • 特許6288499-強化ガラス板及びこれを用いた携帯端末 図000006
  • 特許6288499-強化ガラス板及びこれを用いた携帯端末 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288499
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】強化ガラス板及びこれを用いた携帯端末
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20180226BHJP
   C03B 33/04 20060101ALI20180226BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20180226BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20180226BHJP
   B23K 26/382 20140101ALN20180226BHJP
   B23K 26/402 20140101ALN20180226BHJP
【FI】
   C03C21/00 101
   C03B33/04
   C03C19/00
   H01L31/04 135
   !B23K26/382
   !B23K26/402
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-19938(P2014-19938)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-91739(P2015-91739A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-208135(P2013-208135)
(32)【優先日】2013年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史雄
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−184155(JP,A)
【文献】 特開2012−250905(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078406(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/001841(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/088989(WO,A1)
【文献】 特開2013−195293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00 −23/00
C03B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に圧縮応力を有する強化ガラスにおいて、
表面に貫通孔が形成されており、該貫通孔の内周面が研磨面であり、且つ該貫通孔内に赤外線透過部材が配置されていることを特徴とする強化ガラス。
【請求項2】
赤外線透過部材が、強化ガラスの視認側になるべき表面と同一の高さ位置で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の強化ガラス。
【請求項3】
赤外線透過部材が円盤形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の強化ガラス。
【請求項4】
赤外線透過部材が、酸化物系ガラス、カルコゲナイド系ガラス、ハロゲン系ガラス、シリコン、ゲルマニウム、ZnSe、ZnS、ポリエチレンの何れかであることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項5】
赤外線透過部材が、強化ガラスの貫通孔内に、接着剤により接着固定されていることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項6】
赤外線透過部材が、赤外線透過部材及び/又は強化ガラスの軟化変形により、強化ガラスの貫通孔内に固定されていることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項7】
赤外線透過部材が、強化ガラスの視認側になるべき表面よりも低い高さ位置で固定されていることを特徴とする請求項に記載の強化ガラス。
【請求項8】
一方の表面における貫通孔の総面積が0.1〜100mmであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項9】
[一方の表面における貫通孔の総面積(mm)]/[厚み(mm)]の比率が0.5〜800であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項10】
貫通孔の厚み方向の断面がテーパー状であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項11】
貫通孔の厚み方向の断面がテーパー状であり、該貫通孔の孔面積が小さい側の強化ガラスの表面を上方に配置すると共に、該貫通孔内に赤外線透過部材を配置し、更に該赤外線透過部材を該貫通孔の下方から支持部材により支持することを特徴とする請求項10に記載の強化ガラス。
【請求項12】
貫通孔の内周面に圧縮応力を有することを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項13】
平板形状であり、且つ板厚が2mm以下であることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項14】
表面の圧縮応力値が200MPa以上であり、且つ表面の応力深さが5μm以上であることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項15】
ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜71%、Al 3〜30%、LiO 0〜10%、NaO 7〜20%、KO 0〜15%を含有することを特徴とする請求項1〜14の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項16】
請求項1〜15の何れかに記載の強化ガラスを備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項17】
貫通孔の位置に対応するように、赤外線センサーが配置されていることを特徴とする請求項16に記載の携帯端末。
【請求項18】
貫通孔の位置に対応するように、更にスピーカーが配置されていることを特徴とする請求項17に記載の携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ガラス及びこれを用いた携帯端末に関し、具体的には、赤外線センサーを動作させるための貫通孔を有する強化ガラス及びこれを用いた携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルカメラ、携帯端末等のデバイスは、広く使用されており、ますます普及する傾向にある。従来、これらの用途では、ディスプレイを保護するための保護部材として、アクリル等の樹脂基板が用いられていた。しかし、アクリル樹脂基板は、ヤング率が低いため、ペンや人の指等でディスプレイの表示面が押された場合に撓み易く、樹脂基板が内部のディスプレイに接触して表示不良が発生することがあった。またアクリル樹脂基板は、表面に傷が付き易く、視認性が低下し易いという問題もあった。これらの問題を解決する一つの方法は、保護部材としてガラス板を用いることである。このガラス板(カバーガラス)には、(1)高い機械的強度を有すること、(2)低密度で軽量であること、(3)安価で多量に供給できること、(4)泡品位に優れること、(5)可視域において高い光透過率を有すること、(6)ペンや指等で表面を押した際に撓み難いように高いヤング率を有すること、が要求される。特に(1)の要件を満たさない場合は、保護部材としての用を足さなくなるため、従来からイオン交換処理等で強化処理したガラス板(所謂、強化ガラス板)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−83045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、人の動きを検知してON/OFFを制御する赤外線センサーが研究開発されている。このような赤外線センサーでは、人体から発せられる僅かな赤外線の有無を検知することでON/OFFの制御が可能になる。この検知技術の応用として、デバイスの消費電力を低下させるために、画面の前に人が居る/居ないを赤外線センサーで判定し、この判定に基づきデバイスの電源のON/OFFを自動制御することが検討されている。
【0005】
しかし、この赤外線センサーを携帯端末に用いると、波長5〜20μm、特に5〜7μmの赤外線の検知が問題になる。具体的には、携帯端末では、ディスプレイを保護するために、強化ガラスからなるカバーガラスが使用されるが、このカバーガラスは、波長5〜20μmの赤外線を透過させないため、赤外線の検知の障害となる。なお、波長5〜20μmは、ノイズが入り難い波長域であり、この波長域を採択すると、赤外センサーの感度を高めることができる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、その技術的課題は、ディスプレイ等の保護に好適であり、且つ波長5〜20μmの赤外線を透過させる強化ガラスを創案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、強化ガラスの表面に厚み方向に延びる貫通孔を形成することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力を有する強化ガラスにおいて、表面に貫通孔を有することを特徴とする。ここで、「貫通孔」は、一つである場合に限られず、赤外線の透過性を高める目的等のために、複数であってもよい。
【0008】
強化ガラスの表面に貫通孔を形成し、その貫通孔の下方に赤外線センサーを配置すると、人体から発せられる僅かな赤外線が貫通孔を透過して、赤外線センサーで検知可能になり、結果として、画面の前に人が居る/居ないを赤外線センサーで判定し、この判定に基づきデバイスの電源のON/OFFを自動制御することが可能になる。
【0009】
第二に、本発明の強化ガラスは、貫通孔が赤外線センサーを動作させるために形成されていることが好ましい。そして、例えば、赤外線センサーの受光角(赤外線センサーの光軸と入射角の間の角度)45°以内の領域が赤外線検知領域になる場合、この領域に貫通孔を形成すると、赤外線センサーで赤外線を検知可能になり、赤外線センサーを動作させることが可能になる。図1は、赤外線検知領域1(網掛け領域)を示すための断面概念図である。図1では、強化ガラス2の表面に貫通孔3が形成されると共に、強化ガラス2の下方に赤外線センサー4が配置されている。図1から分かるように、赤外線センサー4の受光角45°以内の赤外線検知領域1に、貫通孔3が形成されている。
【0010】
第三に、本発明の強化ガラスは、貫通孔内に赤外線透過部材が配置されていることが好ましい。ここで、「赤外線透過部材」とは、波長5〜7μmにおける透過率(厚み方向)が10%以上の部材を指す。
【0011】
第四に、本発明の強化ガラスは、赤外線透過部材が、酸化物系ガラス、カルコゲナイド系ガラス、ハロゲン系ガラス、シリコン、ゲルマニウム、ZnSe、ZnS、ポリエチレンの何れかが好ましい。
【0012】
第五に、本発明の強化ガラスは、赤外線透過部材が、強化ガラスの貫通孔内に、接着剤により接着固定されていることが好ましい。
【0013】
第六に、本発明の強化ガラスは、赤外線透過部材が、赤外線透過部材及び/又は強化ガラスの軟化変形により、強化ガラスの貫通孔内に固定されていることが好ましい。
【0014】
第七に、本発明の強化ガラスは、赤外線透過部材が、強化ガラスの視認側になるべき表面よりも低い高さ位置で固定されていることが好ましい。
【0015】
第八に、本発明の強化ガラスは、一方の表面における貫通孔の総面積が0.1〜100mmであることが好ましい。ここで、「貫通孔の総面積」は、貫通孔が複数である場合は、その面積の合計を指す。
【0016】
第九に、本発明の強化ガラスは、[一方の表面における貫通孔の総面積(mm)]/[厚み(mm)]の比率が0.5〜800であることが好ましい。
【0017】
第十に、本発明の強化ガラスは、貫通孔の厚み方向の断面がテーパー状であることが好ましい。
【0018】
第十一に、本発明の強化ガラスは、貫通孔の厚み方向の断面がテーパー状であり、該貫通孔の孔面積が小さい側の強化ガラスの表面を上方に配置すると共に、該貫通孔内に赤外線透過部材を配置し、更に該赤外線透過部材を該貫通孔の下方から支持部材により支持することが好ましい。
【0019】
第十二に、本発明の強化ガラスは、貫通孔の内周面に圧縮応力を有することが好ましい。このようにすれば、強化ガラスが貫通孔を起点して破損し難くなる。
【0020】
第十三に、本発明の強化ガラスは、平板形状であり、且つ板厚が2mm以下であることが好ましい。
【0021】
第十四に、本発明の強化ガラスは、表面の圧縮応力値が200MPa以上であり、且つ表面の応力深さが5μm以上であることが好ましい。「表面の圧縮応力値及び応力深さ」は、表面応力計(例えば、株式会社東芝製FSM−6000)を用いて、干渉縞の本数とその間隔を観察することで算出した値を指す。
【0022】
第十五に、本発明の強化ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜71%、Al 3〜30%、LiO 0〜10%、NaO 7〜20%、KO 0〜15%を含有することが好ましい。
【0023】
第十六に、本発明の携帯端末は、上記の強化ガラスを備えることを特徴とする。
【0024】
第十七に、本発明の携帯端末は、貫通孔の位置に対応するように、赤外線センサーが配置されていることが好ましい。
【0025】
第十八に、本発明の携帯端末は、貫通孔の位置に対応するように、更にスピーカーが配置されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】強化ガラスにおける赤外線検知領域を示すための断面概念図である。
図2】強化ガラスの表面を上方から見た模式図である。
図3】[実施例2]における強化ガラス板に形成された貫通孔の寸法を示す図である。
図4】[実施例4]に係る実施態様を示す断面概念図である。
図5】[実施例5]に係る実施態様を示す断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力を有する。表面に圧縮応力を形成する方法には、物理強化法と化学強化法がある。本発明の強化ガラスは、化学強化法で表面に圧縮応力を形成することが好ましい。化学強化法として、歪点以下の温度で、イオン交換により表面にイオン半径の大きいアルカリイオンを導入する方法、つまりイオン交換処理が好ましい。イオン交換処理であれば、ガラスの厚みが薄くても、表面に圧縮応力を適正に形成することができ、結果として、所望の機械的強度を確保することができる。更に、表面に圧縮応力を形成した後に強化ガラスを切断しても、風冷強化法等の物理強化法のように、強化ガラスが容易に破壊しない。
【0028】
イオン交換処理の条件は、ガラスの粘度特性、用途、厚み、内部の引っ張り応力等を考慮して、最適な条件を選択すればよい。特に、KNO溶融塩中のKイオンをガラス中のNa成分とイオン交換すると、ガラスの表面に圧縮応力を効率良く形成することができる。
【0029】
本発明の強化ガラスは、表面に貫通孔を有することを特徴とする。一方の表面における貫通孔の総面積は、好ましくは200mm以下、150mm以下、100mm以下、50mm以下、30mm以下、20mm以下、15mm以下、10mm以下、5mm以下、2mm以下、1mm以下、特に0.5mm以下であり、一方の表面における赤外線センサーを動作させるための貫通孔の総面積は、好ましくは200mm以下、150mm以下、100mm以下、50mm以下、30mm以下、20mm以下、15mm以下、10mm以下、5mm以下、2mm以下、1mm以下、特に0.5mm以下である。貫通孔の総面積が小さい程、貫通孔が視認され難くなるため、携帯端末等のデザイン性が損なわれ難くなると共に、埃や水分等が貫通孔からデバイス内に入り込み難くなるため、携帯端末等の信頼性が向上する。一方、貫通孔の総面積が小さ過ぎると、赤外線が強化ガラス中を透過し難くなる。よって、貫通孔の総面積は、好ましくは0.1mm以上、0.2mm以上、特に0.3mm以上であり、赤外線センサーを動作させるための貫通孔の総面積は、好ましくは0.1mm以上、0.2mm以上、特に0.3mm以上である。
【0030】
一方の表面における貫通孔の総面積は、他方の表面における貫通孔の総面積と同じでなくてもよく、異なっていてもよい。例えば、貫通孔の厚み方向の断面をテーパー状にして、総面積が大きくなる方を赤外線センサー側とし、総面積が小さくなる方を視認側(外側)としてもよい。このようにすれば、携帯端末等のデザイン性が損なわれ難くなると共に、埃や水分等が貫通孔からデバイス内に入り込み難くなる。また、貫通孔の厚み方向の断面をテーパー状にして、総面積が小さくなる方を赤外線センサー側とし、総面積が大きくなる方を視認側としてもよい。このようにすれば、貫通孔内に赤外線を効率良く透過させることができる。なお、テーパー角(90°からのズレ角度)は、好ましくは0.1〜20°、0.5〜15°、特に1〜10°である。
【0031】
本発明の強化ガラスにおいて、 [一方の表面における貫通孔の総面積(mm)]/[厚み(mm)]の比率は、好ましくは0.5以上、1以上、3以上、5以上、10以上、特に15以上である。[一方の表面における貫通孔の総面積(mm)]/[厚み(mm)]の比率が小さ過ぎると、赤外線が強化ガラス中を透過し難くなる。一方、[一方の表面における貫通孔の総面積(mm)]/[厚み(mm)]の比率は、好ましくは800以下、600以下、500以下、300以下、200以下、特に100以下である。[一方の表面における貫通孔の総面積(mm)]/[厚み(mm)]の比率が大き過ぎると、貫通孔が視認され易くなるため、携帯端末等のデザイン性が損なわれ易くなる。更に埃や水分等が貫通孔からデバイス内に入り込み易くなるため、携帯端末等の信頼性が低下し易くなる。
【0032】
本発明の強化ガラスは、貫通孔内に赤外線透過部材が配置されていることが好ましい。貫通孔内に赤外線透過部材が配置されていると、埃や水分等が貫通孔からデバイス内に入り込み難くなるため、携帯端末等の信頼性が向上する。
【0033】
赤外線透過部材として、酸化物系ガラス、カルコゲナイド系ガラス、ハロゲン系ガラス等のガラス、シリコン、ゲルマニウム等の金属、ZnSe、ZnS等の結晶、ポリエチレン等の樹脂を用いることができる。その中でも、酸化物系ガラスは、外観と機械的強度の観点から好ましい。酸化物系ガラスは、ガラス組成として、TeO、Bi、Al、TiOの一種又は二種以上を主要成分とすることが好ましく、上記成分の合量は20モル%以上、特に30モル%以上が好ましい。上記成分以外にも、ガラス化を促進するためにアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ZnO、希土類酸化物等を添加することができる。なお、SiO、B、Pは、ガラス化を促進するが、赤外線透過率を低下させる成分である。よって、これらの成分の合量は5モル%未満、特に1モル%未満が好ましい。
【0034】
赤外線透過部材を貫通孔内に配置する場合、赤外線透過部材は、強化ガラスの視認側になるべき表面と同一の高さ位置で配置することが好ましく、また赤外線透過部材の破損を防止するために、強化ガラスの視認側になるべき表面よりも低い高さ位置(望ましくは10μm以上下方、特に100μm以上下方)で配置することも好ましい。
【0035】
本発明の強化ガラスは、貫通孔内に赤外線透過部材を固定することが好ましい。このようにすれば、赤外線透過部材が強化ガラスから脱落する事態を防止することができる。貫通孔内に赤外線透過部材を固定する場合、赤外線透過部材と強化ガラスの隙間に接着剤を注入して、接着固定することが好ましい。接着剤として、2液混合系、UV硬化系等の有機系樹脂、低融点ガラス、セラミック等の無機系材料を用いることが好ましい。なお、有機系樹脂を用いると、接着作業が容易になる。無機系材料を用いると、気密性が向上するため、水分等が貫通孔からデバイス内に入り込み難くなる。接着剤は、他部材と屈折率が整合していること、特に強化ガラスの屈折率nと同等(±0.5)であることが好ましい。また、接着剤は、透明であることが好ましい。透明接着剤を用いると、貫通孔が視認され難くなるため、携帯端末等のデザイン性が損なわれ難くなる。
【0036】
更に、赤外線透過部材及び/又は強化ガラス(好ましくは赤外線透過部材)を軟化変形させることにより、貫通孔内に赤外線透過部材を固定してもよい。このようにすれば、接着剤が不要になる。また、貫通孔の厚み方向の断面をテーパー形状に加工し、孔面積が小さい側の強化ガラスの表面を上方に配置した上で、赤外線透過部材を下方から貫通孔内に挿入し、貫通孔の下方から赤外線透過部材を支持部材により支持することもできる。
【0037】
本発明の強化ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜71%、Al 3〜30%、LiO 0〜10%、NaO 7〜20%、KO 0〜15%を含有することが好ましい。上記のように各成分の含有範囲を限定した理由を以下に説明する。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は、質量%を意味する。
【0038】
SiOは、ガラスのネットワークを形成する成分である。SiOの含有量は、好ましくは40〜71%、40〜70%、40〜65%、45〜65%、55〜64%、特に55〜62%である。SiOの含有量が多過ぎると、溶融性、成形性が低下し易くなったり、熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。一方、SiOの含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなる。また熱膨張係数が高くなって、ガラスの耐熱衝撃性が低下し易くなる。
【0039】
Alは、イオン交換性能、歪点、ヤング率を高める成分である。Alの含有量は3〜30%が好ましい。Alの含有量が多過ぎると、ガラスに失透結晶が析出し易くなって、オーバーフローダウンドロー法等による成形が困難になる。また熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなったり、高温粘性が高くなって溶融性が低下し易くなる。Alの含有量が少な過ぎると、イオン交換性能を十分に発揮できない虞が生じる。上記観点から、Alの好適な上限範囲は28%以下、26%以下、24%以下、22%以下、特に19%以下である。また好適な下限範囲は7.5%以上、11%以上、12%以上、15%以上、16%以上、17%以上、特に18%以上である。
【0040】
LiOは、イオン交換成分であると共に、高温粘度を低下させて溶融性、成形性を高める成分である。また、LiOは、ヤング率を高める成分である。更に、LiOは、アルカリ金属酸化物の中では圧縮応力値を高める効果が大きい。しかし、LiOの含有量が多過ぎると、液相粘度が低下して、ガラスが失透し易くなる。また熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなったりする。更に、低温粘性が低下し過ぎて、イオン交換処理の際に応力緩和が生じ易くなり、その場合、圧縮応力値が低くなる場合がある。従って、LiOの含有量は、好ましくは0〜10%、0〜3.5%、0〜2%、0〜1%、0〜0.5%、特に0〜0.1%であり、実質的に含有しないこと、つまり0.01%未満に抑えることが望ましい。
【0041】
NaOは、イオン交換成分であると共に、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性を高める成分である。また、NaOは、耐失透性を改善する成分でもある。NaOの含有量は、好ましくは7〜20%、10〜20%、10〜19%、12〜19%、12〜17%、13〜17%、特に14〜17%である。NaOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。また歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成のバランスを欠き、かえって耐失透性が低下する傾向がある。一方、NaOの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下したり、熱膨張係数が低くなり過ぎたり、イオン交換性能が低下し易くなる。
【0042】
Oは、イオン交換を促進する効果があり、アルカリ金属酸化物の中では応力深さを増加させる効果が大きい。また高温粘度を低下させて、溶融性、成形性を高める成分である。更に耐失透性を改善する成分でもある。KOの含有量は0〜15%が好ましい。KOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなって、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。更に歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成のバランスを欠き、かえってガラスの耐失透性が低下し易くなる。よって、KOの好適な上限範囲は12%以下、10%以下、8%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、特に2%以下である。
【0043】
アルカリ金属酸化物RO(RはLi、Na、Kから選ばれる一種以上)の合量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなることに加えて、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。また、ROの合量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎて、高い圧縮応力値が得られない場合がある。更に液相温度付近の粘性が低下して、高い液相粘度を確保することが困難になる場合がある。よって、ROの合量は、好ましくは22%以下、20%以下、特に19%以下である。一方、ROの合量が少な過ぎると、イオン交換性能、溶融性が低下する場合がある。よって、ROの合量は、好ましくは8%以上、10%以上、13%以上、特に15%以上である。
【0044】
質量比(NaO+KO)/Alの値は、好ましくは0.7〜2、0.8〜1.6、0.9〜1.6、1〜1.6、特に1.2〜1.6である。質量比(NaO+KO)/Alの値が大き過ぎると、低温粘性が低下し過ぎて、イオン交換性能が低下したり、ヤング率が低下したり、熱膨張係数が高くなって、耐熱衝撃性が低下し易くなる。またガラス組成のバランスを欠いて、ガラスが失透し易くなる。一方、質量比(NaO+KO)/Alの値が小さ過ぎると、溶融性、耐失透性が低下し易くなる。
【0045】
質量比KO/NaOは0〜2が好ましい。質量比KO/NaOを調整すると、圧縮応力値と応力深さを調整することができる。応力深さよりも圧縮応力値を優先的に高めたい場合は、質量比KO/NaOを0〜0.5、特に0〜0.3、0〜0.2に規制することが好ましい。一方、圧縮応力値よりも応力深さを優先的に高めたり、短時間で応力深さを高めたい場合は、質量比KO/NaOを0.3〜2、0.5〜2、1〜2、1.2〜2、特に1.5〜2に規制することが好ましい。なお、質量比KO/NaOが大き過ぎると、ガラスの組成のバランスを欠いて、ガラスが失透し易くなる。
【0046】
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を導入してもよい。
【0047】
アルカリ土類金属酸化物R’O(R’はMg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種以上)は、種々の目的で導入可能な成分である。しかし、R’Oの合量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなったり、耐失透性、イオン交換性能が低下し易くなる。よって、R’Oの合量は、好ましくは0〜9.9%、0〜8%、0〜6、特に0〜5%である。
【0048】
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性を高めると共に、歪点、ヤング率を高める成分である。特に、MgOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、イオン交換性能を高める効果が大きい。MgOの含有量は0〜6%が好ましい。しかし、MgOの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなったり、耐失透性が低下し易くなる。よって、MgOの含有量は、好ましくは4%以下、3%以下、2%以下、特に1.5%以下である。
【0049】
CaOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性を高めると共に、歪点、ヤング率を高める成分である。特に、CaOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、イオン交換性能を高める効果が大きい。CaOの含有量は0〜6%が好ましい。しかし、CaOの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなったり、耐失透性、イオン交換性能が低下する場合がある。よって、CaOの含有量は、好ましくは4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、1%未満、特に0.5%以下である。
【0050】
SrOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性を高めると共に、歪点、ヤング率を高める成分である。SrOの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなったり、イオン交換性能、耐失透性が低下し易くなる。よって、SrOの含有量は、好ましくは3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、0.5%以下、0.2%以下、特に0.1%以下である。
【0051】
BaOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性を高めると共に、歪点、ヤング率を高める成分である。BaOの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなったり、イオン交換性能、耐失透性が低下し易くなる。よって、BaOの含有量は、好ましくは3%以下、2.5%以下、2%以下、1%以下、0.8%以下、0.5%以下、0.2%以下、特に0.1%以下である。
【0052】
イオン交換性能を高める観点から、SrO+BaO(SrOとBaOの合量)の好適な範囲は3%以下、2.5%以下、2%以下、1%以下、0.2%以下、特に0.1%以下である。
【0053】
ZnOは、イオン交換性能を高める成分であり、特に、圧縮応力値を高める効果が大きい成分である。また低温粘性を低下させずに高温粘性を低下させる効果を有する成分である。しかし、ZnOの含有量が多くなると、ガラスが分相したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなる。よって、ZnOの含有量は、好ましくは8%以下、6%以下、4%以下、特に3%以下である。
【0054】
質量比R’O/ROは、好ましくは0.5以下、0.4以下、特に0.3以下である。質量比R’O/ROが大き過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。
【0055】
SnOは、イオン交換性能、特に圧縮応力値を高める効果がある。一方、SnOの含有量が多過ぎると、SnOに起因する失透が発生したり、ガラスが着色し易くなる。よって、SnOの含有量は、好ましくは0.01〜3%、0.01〜1.5%、特に0.1〜1%である。
【0056】
ZrOは、イオン交換性能、ヤング率、歪点を高めると共に、高温粘性を低下させる成分である。また液相粘度付近の粘性を高める効果もある。このため、ZrOを所定量導入すると、イオン交換性能と液相粘度を同時に高めることができる。但し、ZrOの含有量が多過ぎると、耐失透性が極端に低下する場合がある。よって、ZrOの含有量は、好ましくは0〜10%、0.001〜10%、0.1〜9%、0.5〜7%、1〜5%、特に2.5〜5%である。
【0057】
は、液相温度、高温粘度、密度を低下させる成分であると共に、イオン交換性能、特に圧縮応力値を高める成分である。しかし、Bの含有量が多過ぎると、イオン交換によって表面にヤケが発生したり、耐水性が低下したり、液相粘度が低下する虞がある。また応力深さが低下する傾向にある。よってBの含有量は、好ましくは0〜6%、0〜4%、特に0〜3%である。
【0058】
TiOは、イオン交換性能を高める成分である。また高温粘度を低下させる成分である。しかし、TiOの含有量が多過ぎると、ガラスが着色したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなる。特にディスプレイのカバーガラスに用いる場合、TiOの含有量が多くなると、溶融雰囲気や原料を変更した時に、透過率が変化し易くなる。そのため紫外線硬化樹脂等の光を利用して、強化ガラスをデバイスに接着する工程において、紫外線照射条件が変動し易くなり、デバイスの安定生産が困難になる。よって、TiOの含有量は、好ましくは10%以下、8%以下、6%以下、5%以下、4%以下、2%以下、0.7%以下、0.5%以下、0.1%以下、特に0.01%以下である。
【0059】
は、イオン交換性能を高める成分であり、特に、応力深さを高める成分である。しかし、Pの含有量が多くなると、ガラスが分相したり、耐水性、耐失透性が低下し易くなる。よって、Pの含有量は、好ましくは5%以下、4%以下、3%以下、特に2%以下である。
【0060】
清澄剤として、As、Sb、CeO、F、SO、Clの群から選択された一種又は二種以上を0.001〜3%導入することが好ましい。但し、環境に対する配慮から、Asの含有量は、好ましくは0.1%未満、特に0.01%未満であり、Sbの含有量は、好ましくは0.1%未満、特に0.01%未満である。CeOは、透過率を低下させる成分である。よって、CeOの含有量は、好ましくは0.1%未満、特に0.01%未満である。Fは、低温粘性を低下させて、圧縮応力値を低下させる成分である。よって、Fの含有量は、好ましくは0.1%未満、特に0.01%未満である。特に好ましい清澄剤は、SOとClであり、SOとClの1者又は両者を、0.001〜3%、0.001〜1%、0.01〜0.5%、特に0.05〜0.4%導入することが好ましい。
【0061】
Nd、La等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分である。しかし、原料自体のコストが高く、また多量に導入すると、耐失透性が低下し易くなる。よって、希土類酸化物の含有量は、好ましくは3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。
【0062】
CoO、NiO等の遷移金属元素は、透過率を低下させる成分である。特に、タッチパネルディスプレイに用いる場合、遷移金属元素の含有量が多いと、タッチパネルディスプレイの視認性が損なわれる。よって、遷移金属酸化物の含有量は、好ましくは0.5%以下、0.1%以下、特に0.05%以下である。
【0063】
PbO、Biは、環境に対する配慮から、その含有量をそれぞれ0.1%未満に限定することが好ましい。
【0064】
本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力を有する。表面の圧縮応力値は、好ましくは200MPa以上、300MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、700MPa以上、800MPa以上、900MPa以上、1000MPa以上、特に1100MPa以上である。圧縮応力値が大きい程、強化ガラスの機械的強度が高くなる。一方、表面に極端に大きな圧縮応力が形成されると、表面にマイクロクラックが発生し、かえって機械的強度が低下する虞がある。また強化ガラスに内在する引っ張り応力が極端に高くなる虞がある。よって、圧縮応力値は、好ましくは2500MPa以下、2000MPa以下、特に1500MPa以下である。なお、圧縮応力値を大きくするには、Al、TiO、ZrO、MgO、ZnO、SnOの含有量を増加させたり、SrO、BaOの含有量を低減すればよい。またイオン交換時間を短くしたり、イオン交換溶液の温度を下げればよい。
【0065】
表面の応力深さは、好ましくは5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、30μm以上、特に40μm以上である。応力深さが大きい程、強化ガラスに深い傷が付いても、強化ガラスが割れ難くなる。一方、応力深さが大き過ぎると、強化ガラスを切断し難くなったり、内部の引っ張り応力が極端に高くなって、機械的な衝撃により強化ガラスが破損し易くなるため、応力深さは、好ましくは500μm以下、100μm以下、80μm以下、特に60μm以下である。なお、応力深さを大きくするには、KO、P、TiO、ZrOの含有量を増加させたり、SrO、BaOの含有量を低減すればよい。またイオン交換時間を長くしたり、イオン交換溶液の温度を高めればよい。
【0066】
内部の引っ張り応力値は、好ましくは200MPa以下、150MPa以下、100MPa以下、特に50MPa以下である。内部の引っ張り応力値が小さい程、内部欠陥により強化ガラスが破損し難くなるが、内部の引っ張り応力値が小さ過ぎると、表面の圧縮応力値や応力深さが低下する。よって、内部の引っ張り応力値は、好ましくは1MPa以上、10MPa以上、特に15MPa以上である。
【0067】
本発明の強化ガラスは、平板形状が好ましく、その場合、板厚は、好ましくは2mm以下、1.5mm以下、1.3mm以下、1.1mm以下、0.9mm以下、0.7mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、特に0.05〜0.3mmである。板厚が小さい程、強化ガラスを軽量化することできる。なお、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形する場合、表面を研磨、エッチングしなくても、ガラス板の薄肉化、平滑化を達成することができる。
【0068】
本発明の強化ガラスは、未研磨の表面を有することが好ましく、未研磨の表面の平均表面粗さRaは、好ましくは10Å以下、5Å以下、4Å以下、3Å以下、特に2Å以下である。ここで、表面の平均表面粗さRaは、例えばSEMI D7−97「FPDガラス板の表面粗さの測定方法」に準拠した方法で測定することができる。ガラスの理論強度は本来非常に高いが、この理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、ガラスの表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。それ故、表面を未研磨とすれば、本来のガラスの機械的強度が損なわれず、ガラスが破壊し難くなる。また、ガラスの表面を未研磨とすれば、研磨工程を省略できるため、強化ガラスの製造コストを下げることができる。本発明の強化ガラスにおいて、強化ガラスの両表面全体を未研磨とすれば、強化ガラスが更に破壊し難くなる。また切断面(端面)から破壊に至る事態を防止するため、切断面に面取り加工やエッチング処理等を行ってもよい。なお、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形すれば、未研磨でも表面品位を高めることができる。
【0069】
本発明の強化ガラスにおいて、液相温度は、好ましくは1200℃以下、1050℃以下、1030℃以下、1010℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下、特に870℃以下である。液相温度を低下させるには、NaO、KO、Bの含有量を増加したり、Al、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrOの含有量を低減すればよい。
【0070】
液相粘度は、好ましくは104.0dPa・s以上、104.3dPa・s以上、104.5dPa・s以上、105.0dPa・s以上、105.4dPa・s以上、105.8dPa.s以上、106.0dPa・s以上、特に106.2dPa・s以上である。液相粘度を上昇させるには、NaO、KOの含有量を増加したり、Al、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrOの含有量を低減すればよい。
【0071】
なお、液相粘度が高く、液相温度が低い程、耐失透性、成形性が良好になる。そして、液相温度が1200℃以下、液相粘度が104.0dPa・s以上であれば、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形することができる。ここで、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値を指す。「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を指す。
【0072】
本発明の強化ガラスにおいて、密度は、好ましくは2.8g/cm以下、2.6g/cm以下、特に2.5g/cm以下である。密度が小さい程、ガラスを軽量化することができる。ここで、「密度」は、周知のアルキメデス法で測定した値を指す。なお、密度を低下させるには、SiO、P、Bの含有量を増加させたり、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ZnO、ZrO、TiOの含有量を低減すればよい。ここで、「密度」は、周知のアルキメデス法で測定可能である。
【0073】
30〜380℃の温度範囲における熱膨張係数は、好ましくは70〜110×10−7/℃、75〜110×10−7/℃、80〜105×10−7/℃、特に85〜100×10−7/℃である。熱膨張係数を上記範囲に規制すれば、金属、有機系接着剤等の部材と熱膨張係数が整合し易くなり、これらの部材の剥離を防止することができる。ここで、「30〜380℃の温度範囲における熱膨張係数」は、ディラトメーターを用いて、平均熱膨張係数を測定した値を指す。なお、熱膨張係数を上記範囲に規制するには、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の含有量を調整すればよい。具体的には、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の含有量を増やすと、熱膨張係数が上昇し、逆に減らすと、熱膨張係数が低下する。
【0074】
歪点は、好ましくは500℃以上、510℃以上、520℃以上、540℃以上、550℃以上、560℃以上、580℃以上、600℃以上、特に620℃以上である。歪点が高い程、耐熱性が向上し、強化ガラスに熱処理を施したとしても、圧縮応力が消失し難くなる。また歪点が高くなると、イオン交換処理で応力緩和が生じ難くなり、高い圧縮応力値を確保し易くなる。歪点を高めるには、アルカリ土類金属酸化物、Al、ZrO、Pの含有量を増加させたり、アルカリ金属酸化物の含有量を低減すればよい。ここで、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づく測定値である。
【0075】
102.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1650℃以下、1500℃以下、1450℃以下、1430℃以下、1420℃以下、特に1400℃以下である。102.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当しており、102.5dPa・sにおける温度が低い程、低温でガラスを溶融することができる。よって、102.5dPa・sにおける温度が低い程、溶融窯等のガラス製造設備への負荷が小さくなる共に、ガラスの泡品位を高めることができる。結果として、ガラスを安価に製造することができる。なお、102.5dPa・sにおける温度を低下させるには、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ZnO、B、TiOの含有量を増加させたり、SiO、Alの含有量を低減すればよい。ここで、「102.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0076】
ヤング率は、好ましくは70GPa以上、73GPa以上、特に75GPa以上である。ヤング率が高い程、ディスプレイのカバーガラスに用いる場合に、ペンや指等により、カバーガラスの表面を押した際の変形量が小さくなるため、内部のディスプレイに与えるダメージが軽減される。ここで、「ヤング率」は、周知の共振法で測定可能である。
【0077】
本発明に係るガラスは、表面に貫通孔を有し、強化処理に用いることを特徴にし、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜71%、Al 3〜30%、LiO 0〜3.5%、NaO 7〜20%、KO 0〜15%を含有することが好ましく、SiO 40〜71%、Al 7.5〜25%、LiO 0〜2%、NaO 10〜19%、KO 0〜15%、MgO 0〜6%、CaO 0〜6%、SrO 0〜3%、BaO 0〜3%、ZnO 0〜8%、SnO 0.01〜3%を含有することがより好ましく、SiO 40〜71%、Al 13〜25%、LiO 0〜1%、NaO 10〜19%、KO 0〜10%、MgO 0〜6%、CaO 0〜6%、SrO 0〜3%、BaO 0〜3%、ZnO 0〜8%、SnO 0.01〜3%を含有することが更に好ましい。本発明に係るガラスの技術的特徴(好適な特性、成分範囲等)は、本発明の強化ガラスの技術的特徴と重複する。ここでは、その重複の部分について、その記載を省略する。
【0078】
本発明に係るガラスは、例えば、所望のガラス組成になるように調合したガラス原料を連続溶融炉に投入し、1500〜1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で板状に成形し、徐冷することにより作製することができる。
【0079】
ガラス板を成形するには、オーバーフローダウンドロー法を採択することが好ましい。オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形すれば、未研磨で表面品位が良好なガラス板を作製することができる。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、ガラス板の表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。ここで、オーバーフローダウンドロー法は、溶融状態のガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを桶状構造物の下頂端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス板を製造する方法である。桶状構造物の構造や材質は、ガラス板の寸法や表面精度を所望の状態とし、ガラス板に使用できる品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方へ延伸成形する方法は特に制限されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスリボンに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採択してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスリボンの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採択してもよい。
【0080】
高い表面品位が要求されない場合には、オーバーフローダウンドロー法以外の成形方法を採択することができる。例えば、ダウンドロー法(スロットダウン法、リドロー法等)、フロート法、ロールアウト法、プレス法等の成形方法を採択することができる。例えば、プレス法でガラス板を成形すれば、小型のガラス板を効率良く作製することができる。
【0081】
本発明の強化ガラスは、溶融ガラスを成形して、ガラスを作製した後、得られたガラスの表面に貫通孔を形成すると共に、強化処理を行うことにより作製することができる。ガラスを所定サイズに切断する時期は、強化処理前でもよいが、強化処理後であれば、製造コストを低減することができる。強化処理は、イオン交換処理が好ましく、イオン交換処理は、例えば400〜550℃のKNO溶融塩中にガラスを1〜8時間浸漬することにより行うことができる。イオン交換処理の条件は、ガラスの粘度特性、用途、厚み、内部の引っ張り応力等を考慮して、最適な条件を選択すればよい。表面に貫通孔を形成する時期は、強化処理後でもよいが、強化処理前であれば、強化処理により、貫通孔の内周面にも圧縮応力を形成することができ、結果として貫通孔の機械的強度を高めることができる。
【0082】
ガラスの表面に貫通孔を形成する方法として、種々の方法を採択することができる。例えば、所望の貫通孔の表面形状になるように、レーザーによりガラスの表面に初期クラックを形成した後、急冷して、この初期クラックをガラスの厚み方向に進展させて、ガラスの厚み方向に貫通させる方法を採択することができる。また、所望の貫通孔の表面形状になるように、短パルスのレーザー(例えばフェムト秒レーザー)をガラスの表面に照射して、照射部分について厚み方向に成分揮発を促進し、最終的に貫通孔を形成する方法を採択することもできる。このようにすれば、微小な貫通孔を効率良く形成することができる。また、貫通孔を形成すべき部分以外の表面部分について、マスキング処理を行った後、ガラスをエッチング液に浸漬して、マスキング処理を行っていない部分をエッチングにより溶解させることにより、貫通孔を形成する方法を採択することもできる。このようにすれば、貫通孔の内周面が滑らかになり、貫通孔からクラックが進展し難くなる。更に、所定形状のドリルによりガラスの表面に貫通孔を形成する方法を採択することもできる。例えば、治具又は樹脂によりガラスをステージに固定した上で、ドリルを装着した孔開けマシンを用いて、所定の回転数でドリルを回転させながら、ガラスの表面に貫通孔を形成する方法を採択することもできる。このようにすれば、ガラスの表面に容易に貫通孔を形成することができる。なお、必要に応じて、ステージを運動させると、貫通孔の形状を調整することができる。
【0083】
機械的手段により貫通孔を形成する場合、貫通孔の内周面に対して、エッチング、ファイアポリッシュ、研磨等を行うことが好ましい。このようにすれば、貫通孔の内周面に存在するクラックソースを低減することができ、貫通孔からクラックが進展し難くなる。
【0084】
ガラスの表面に貫通孔を形成すると共に、イオン交換処理により圧縮応力を形成した後に、必要に応じて、赤外線透過部材を貫通孔内に配置してもよい。その場合、赤外線透過部材をそのまま嵌合してもよいが、上記の通り接着剤を介して、赤外線透過部材を貫通孔内に接着固定することが好ましい。
【0085】
本発明の携帯端末は、上記の強化ガラスを備えることを特徴とする。本発明の携帯端末の技術的特徴の一部は、本発明の強化ガラスの説明欄に記載済みであり、ここでは、その説明を省略する。
【0086】
本発明の携帯端末は、強化ガラスに形成された貫通孔の位置に対応するように、赤外線センサーが配置されていることが好ましい。このようにすれば、人体から発せられる僅かな赤外線が貫通孔を透過して、赤外線センサーで検知可能になる。
【0087】
また、本発明の携帯端末は、強化ガラスに形成された貫通孔の位置に対応するように、更にスピーカーが配置されていることが好ましい。このようにすれば、音声情報をスピーカーで検知し易くなる。更に、本発明の携帯端末は、貫通孔の位置に対応するように、赤外線センサーとスピーカーが共に配置されることが好ましい。このようにすれば、貫通孔の数が少なくなり、孔開け工程を簡略化することができる。
【0088】
図2は、強化ガラスの表面を上方から見た模式図である。図2(a)では、強化ガラス5の表面に貫通孔6、7が二つ形成されており、一方の貫通孔6の位置に対応するように、赤外センサー8が下方に配置されており、他方の貫通孔7の位置に対応するように、スピーカー9が配置されている。図2(b)では、強化ガラス10の表面に貫通孔11が一つ形成されており、この貫通孔11の位置に対応するように、赤外線センサー12とスピーカー13が共に配置されている。
【実施例1】
【0089】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。以下の実施例は単なる例示である。
【0090】
表1は、試料No.1〜9を示している。
【0091】
【表1】
【0092】
次のようにして各試料を作製した。まず、表中のガラス組成となるように、ガラス原料を調合し、白金ポットを用いて1580℃で8時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、ガラス板を得た。得られたガラス板について、種々の特性を評価した。
【0093】
密度は、周知のアルキメデス法による測定値である。
【0094】
歪点Ps、徐冷点Taは、ASTM C336の方法に基づく測定値である。
【0095】
軟化点Tsは、ASTM C338の方法に基づく測定値である。
【0096】
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法による測定値である。
【0097】
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値である。液相粘度logηTLは、液相温度における各ガラスの粘度を示している。
【0098】
ヤング率は、曲げ共振法による測定値である。
【0099】
熱膨張係数αは、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を測定した値である。
【0100】
各試料を430℃に保持されたKNO槽に4時間浸漬し、イオン交換処理を行った。イオン交換処理後、表面の圧縮応力値CS及び応力深さDOLを測定した。圧縮応力値CS及び応力深さDOLは、表面応力計(株式会社東芝製FSM−6000)を用いて、干渉縞の本数とその間隔を観察することで算出した。算出に際し、試料No.1の屈折率を1.52、光学弾性定数を28[(nm/cm)/MPa]、試料No.7の屈折率を1.51、光学弾性定数を28[(nm/cm)/MPa]、それ以外の試料の屈折率を1.50、光学弾性定数を30[(nm/cm)/MPa]とした。
【実施例2】
【0101】
試料No.2のガラス組成になるようにガラス原料を調合、溶融、清澄、供給した後、オーバーフローダウンドロー法により成形、切断し、0.7mmのガラス板を得た。このガラス板について、所定のドリルを用いて、強化ガラスの表面に貫通孔(総面積約50mm)を形成した後、貫通孔の内周面について研磨加工を行うと共に、強化ガラスの切断面についてコーナーカット(表面方向)、面取り加工(厚み方向)を行った。続いて、得られたガラス板を430℃に保持されたKNO槽に4時間浸漬することにより、強化ガラス板を得た。最後に、強化ガラス板の赤外線センサー側になるべき表面に所定の印刷処理を行った後、強化ガラス板の下方に赤外線センサーとスピーカーを配置した。ここで、貫通孔は、強化ガラス板の上方から、スピーカーの全部が見えると共に、赤外線センサーの一部が見えるような形状とした。更に強化ガラス板と赤外センサーの離間距離が1mmになるように、赤外センサーを配置した。図3は、[実施例2]における強化ガラス板に形成された貫通孔の寸法を示す図である。なお、[実施例2]では、試料No.2の材質を使用したが、試料No.1、3〜9の材質でも、同様にして表面に貫通孔を有する強化ガラス板を作製することができる。
【実施例3】
【0102】
[実施例2]と同様の方法にて、試料No.2の材質について、表面に直径φ5mmの貫通孔を有する強化ガラス板(板厚0.7mm)を作製した。次に、強化ガラス板の赤外線センサー側になるべき表面に所定の印刷処理を行った後、貫通孔の下方に赤外線センサーを配置すると共に、貫通孔内にTeO系ガラスを取り付けた。TeO系ガラスは、ガラス組成として、TeO 80モル%、ZnO 20モル%を含有し、直径φ4.9mm、厚み0.5mmの円盤形状を有し、両表面が鏡面仕上げされている。なお、赤外線透過部材の外周側面についても、外観上、鏡面に仕上げることが好ましい。TeO系ガラスの取り付けに際しては、円盤状のTeO系ガラスを貫通孔の中心位置に配置した後、貫通孔の隙間にUV硬化系樹脂を注入し、UV光によりUV硬化系樹脂を硬化させることにより、TeO系ガラスを貫通孔内に接着固定した。なお、接着剤が貫通孔から食み出した場合は、UV硬化前に取り除くか、或いはUV硬化後に機械研磨によって取り除くことが好ましい。
【実施例4】
【0103】
[実施例2]と同様の方法にて、試料No.2の材質について、視認側になるべき表面に直径φ5mmの貫通孔を有する強化ガラス板を作製した。貫通孔の厚み方向の断面をテーパー形状に加工し、そのテーパー角を2°とした。なお、貫通孔は、視認側になるべき表面から赤外線センサー側になるべき表面に向けて、厚み方向に徐々に広がっていく形状とした。次に、強化ガラス板の赤外線センサー側になるべき表面に所定の印刷処理を行った後、貫通孔の下方に赤外線センサーを配置すると共に、貫通孔内にTeO系ガラスを取り付けた。TeO系ガラスは、ガラス組成として、TeO 80モル%、ZnO 20モル%を含有し、貫通孔の孔寸法と略同等の寸法を有し、つまり厚み方向にテーパー角2°のテーパー形状を有すると共に、両表面が鏡面仕上げされている。TeO系ガラスの取り付けに際しては、接着剤を使用せずに、TeO系ガラスを支持するために、貫通孔の赤外線センサー側になるべき表面に支持部材を取り付けることにより、TeO系ガラスを貫通孔内に固定した。
【0104】
図4は、[実施例4]に係る実施態様を示す断面概念図である。図4から分かるように、強化ガラス板21の表面には、強化ガラス板21の厚み方向に延びる貫通孔22が形成されており、貫通孔22の下方には赤外線センサー23が配置されている。そして、貫通孔22の厚み方向の断面はテーパー状であり、貫通孔22の孔面積が小さい側の強化ガラス板21の表面が上方に配置されると共に、貫通孔22の孔面積の大きい側の強化ガラス板21の表面が下方に配置されている。そして、強化ガラス板21の貫通孔22内には赤外線透過部材24(TeO系ガラス)が配置されており、赤外線透過部材24は、テーパー形状に加工されており、このテーパー形状は、貫通孔22のテーパー形状と略整合している。赤外線透過部材24は、貫通孔22の下方から貫通孔22内に挿入された後、貫通孔22の下方から支持部材25により支持されることで貫通孔22内に固定されている。
【実施例5】
【0105】
TeO系ガラスの厚みを0.4mmにした以外は、[実施例3]と同様にして、TeO系ガラスを貫通孔内に接着固定した。[実施例5]では、TeO系ガラスの厚みが薄いため、TeO系ガラスが、強化ガラスの視認側になるべき表面よりも100μm低い高さ位置で接着固定されることになった。
【0106】
図5は、[実施例5]に係る実施態様を示す断面概念図である。図5から分かるように、強化ガラス板31の表面には、強化ガラス板31の厚み方向に延びる貫通孔32が形成されている。貫通孔32の下方には、赤外線センサー33が配置されており、強化ガラス板31の貫通孔32内には、赤外線透過部材34(TeO系ガラス)が配置されている。赤外線透過部材34は、接着剤(UV硬化系樹脂)35により強化ガラス板31の貫通孔32の内部に固定されている。そして、赤外線透過部材34は、強化ガラス板31の視認側になるべき表面36よりも100μm低い高さ位置で接着固定されている。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の強化ガラス板は、携帯電話、デジタルカメラ、PDA等のカバーガラスとして好適である。本発明の強化ガラス板は、これらの用途以外にも、高い機械的強度が要求される用途、例えば窓ガラス、磁気ディスクの基板、フラットパネルディスプレイの基板、タッチパネルディスプレイ用基板、太陽電池のカバーガラス、固体撮像素子のカバーガラス、食器等への応用が期待される。
【符号の説明】
【0108】
1 赤外線検知領域
2、5、10 強化ガラス
3、6、7、11、22、32 貫通孔
4、8、12、23、33 赤外線センサー
9、13 スピーカー
21、31 強化ガラス板
24、34 赤外線透過部材
25 支持部材
36 視認側になるべき表面
図1
図2
図3
図4
図5