特許第6288500号(P6288500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288500
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂製プレートの積層方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/70 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   B29C65/70
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-21999(P2014-21999)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-147364(P2015-147364A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森竹 明雄
(72)【発明者】
【氏名】幸松 健一
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0248524(US,A1)
【文献】 特開2013−123801(JP,A)
【文献】 特開平09−085830(JP,A)
【文献】 特開平07−195525(JP,A)
【文献】 特開昭59−002812(JP,A)
【文献】 特開2006−168291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製プレートを該熱可塑性樹脂製プレートと異なる材質の母材に積層する方法において、前記母材にアンカー部材を固定し、前記熱可塑性樹脂製プレートに前記母材に向かって縮径する開口部を設け、前記アンカー部材が前記開口部から露出した状態で前記熱可塑性樹脂製プレートを母材に積層させ、露出したアンカー部材の周囲に前記熱可塑性樹脂製プレートと同材質の溶融樹脂を充填させ前記熱可塑性樹脂製プレートと前記母材を固定する固定点を有することを特徴とする熱可塑性樹脂製プレートの積層方法。
【請求項2】

熱可塑性樹脂製プレートを該熱可塑性樹脂製プレートと異なる材質の母材に積層する方法において、前記母材にアンダーカット部を形成し、前記熱可塑性樹脂製プレートに前記母材に向かって拡径する開口部を設け、前記アンダーカット部が前記開口部から露出した状態で前記熱可塑性樹脂製プレートを前記母材に積層させ、前記アンダーカット部の内部、かつ周囲に前記熱可塑性樹脂製プレートと同材質の溶融樹脂を充填させ前記熱可塑性樹脂製プレートと前記母材を固定する固定点を有することを特徴とする熱可塑性樹脂製プレートの積層方法。
【請求項3】

前記母材が金属製であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂製プレートの積層方法。
【請求項4】

前記母材がコンクリート製であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂製プレートの積層方法。
【請求項5】

任意の前記固定点と該固定点の最近傍に位置する複数の他の前記固定点との距離が互いに等しくなるように前記固定点を配列することを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂製プレートの積層方法。
【請求項6】

配列された前記固定点同士を結ぶ直線を1辺とする正方形の頂点に前記固定点を形成することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂製プレートの積層方法。
【請求項7】

前記正方形の対角線の交点に前記固定点を形成することを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂製プレートの積層方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製プレートを異種材に積層する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、薬品プラント、半導体製造装置、バイオ関連などの化学分野、そのほか上下水道、農業用水、食品分野、水産業などに使用されるコンクリート製、または金属製のタンクは、その壁面に防水処理、または薬液や産業排水等による腐食や損傷を抑制するために、ライニングシートが貼設され積層構造が形成されている。
【0003】
このようにライニングシートを積層する際の方法として、例えばコンクリート壁に合成樹脂製の漏水防止シートをその上からアンカー打ち込みにより固定し、露出したアンカーの頭部とその周囲を、合成樹脂の加熱溶融物にて被覆する方法が先に提案されている(特許文献1参照。)。また例えば、コンクリート造躯体に防蝕パネルをアンカーボルトで固定し、露出したボルト頭部にキャップでカバーする方法(特許文献2参照)、座面が熱可塑性樹脂で被覆された皿ネジで、躯体に防水部材を固定し、熱可塑性樹脂と防水部材を溶剤融着または熱融着させる方法(特許文献3参照)が先に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−280724号公報
【特許文献2】特開2001−220811号公報
【特許文献3】特開2006−291638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された方法では、漏水防止シート、または防蝕パネルの表面をアンカーボルトの頭部により挟持して固定しているため、漏水防止シート、または防蝕パネルとコンクリート壁という積層構造同士の接合強度が弱いという問題があった。また、漏水防止シート、または防蝕パネルの表面に突出したアンカーボルトの頭部とその周囲を、加熱溶融物、またはキャップで被覆しているため、仕上がり面が平坦とならず、流体の流れの邪魔となり、ゴミがたまることもあり、さらに、見栄えが悪いという問題もあった。引用文献3に記載された方法においても、皿ネジの座面を防水部材に溶剤融着または熱融着させる構造としているため、皿ネジと防水部材との接合が弱く、皿ネジ頭部が防水部材の表面に突出するため仕上がり面が平坦とならなかった。さらに、シート表面に突出したボルト頭部や皿ネジ頭部を被覆材で被覆するため、シートと被覆材の密着性が乏しく、すなわち、シール性が不足するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、熱可塑性樹脂製プレートを異種材の表面に積層する際に、積層される異種材同士の接合強度、及びシール性を向上させることができる熱可塑性樹脂製プレートの積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】

このため本発明は、熱可塑性樹脂製プレートを該熱可塑性樹脂製プレートと異なる材質の母材に積層する方法において、前記母材にアンカー部材を固定し、前記熱可塑性樹脂製プレートに前記母材に向かって縮径する開口部を設け、前記アンカー部材が前記開口部から露出した状態で前記熱可塑性樹脂製プレートを母材に積層させ、露出したアンカー部材の周囲に前記熱可塑性樹脂製プレートと同材質の溶融樹脂を充填させ前記熱可塑性樹脂製プレートと前記母材を固定する固定点を有することを第1の特徴とする。
【0008】

また、熱可塑性樹脂製プレートを該熱可塑性樹脂製プレートと異なる材質の母材に積層する方法において、前記母材にアンダーカット部を形成し、前記熱可塑性樹脂製プレートに前記母材に向かって拡径する開口部を設け、前記アンダーカット部が前記開口部から露出した状態で前記熱可塑性樹脂製プレートを前記母材に積層させ、前記アンダーカット部の内部、かつ周囲に前記熱可塑性樹脂製プレートと同材質の溶融樹脂を充填させ前記熱可塑性樹脂製プレートと前記母材を固定する固定点を有することを第2の特徴とする。
【0009】
さらに、前記母材が金属製であることを第3の特徴とし、前記母材がコンクリート製であることを第4の特徴とする。またさらに、任意の前記固定点と該固定点の最近傍に位置する複数の他の前記固定点との距離が互いに等しくなるように前記固定点を配列することを第5の特徴とし、配列された前記固定点同士を結ぶ直線を1辺とする正方形の頂点に前記固定点を形成することを第6の特徴とし、前記正方形の対角線の交点に前記固定点を形成することを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の優れた効果を有する。
(1)熱可塑性樹脂製プレートと金属製、またはコンクリート製の母材をアンカー部材、及び溶融樹脂を介して接合するため、積層構造となる異種材同士の接合を強固とすることができる。
(2)アンカー部材の周囲に溶融樹脂を充填するため、平坦な仕上がり面を得ることができる。また、仕上がり面に突出した箇所がないため、タンクなどの内容量をアップさせることができる。さらに、流体の流れを妨げず、ゴミなどがたまる心配もなく、清掃も簡単にできる。
(3)充填する溶融樹脂と熱可塑性樹脂製プレートは同材質であるため、密着性が良く、すなわちシール性を向上させることができる。
(4)母材に雌ネジ部、もしくは開孔部を形成した際には、アンカー部材が不要となるため、施工性を向上させる上に、コストを低廉化することができる。
(5)母材と熱可塑性樹脂製プレートという異種材による積層構造であるため、熱可塑性樹脂製プレートが老朽化した際に、熱可塑性樹脂製プレートだけを更新することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一の実施形態における施工手順を示す断面図である。
図2】本発明の第一の実施形態におけるアンカー部材の一例を示す(a)が平面図、(b)が側面図である。
図3】本発明の第一の実施形態におけるアンカー部材の他例を示す(a)が平面図、(b)が側面図である。
図4】本発明の第二の実施形態における施工手順を示す断面図である。
図5】本発明の第二の実施形態における母材の加工例を示す断面図である。
図6】本発明の第三の実施形態における施工手順を示す平面図である。
図7】本発明の第三の実施形態におけるアンカー部材を示す斜視図である。
図8】本発明の第三の実施形態におけるアンカー部材を示す斜視図である。
図9】本発明の第四の実施形態における施工手順を示す断面図である。
図10】本発明の実施形態におけるタンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に本発明の第一の実施形態における積層方法について、図1図3を参照して説明する。図1は、第一の実施形態における施工手順を示す断面図である。図2は、アンカー部材3の一例を示す(a)が平面図、(b)が側面図であり、図3は、アンカー部材3の他例を示す(a)が平面図、(b)が側面図である。
【0013】
本発明の第一の実施形態では、まず図1(a)に示すように、金属製母材2にアンカー部材3を溶接して固定し、アンカー部材3を露出させた状態でアンカー部材3の周囲に熱可塑性樹脂製プレート1を仮止めする。熱可塑性樹脂製プレート1の仮止め方法は、接着剤、もしくは両面テープを用いて母材2に貼着するほか、クランプ等の工具で挟むなど様々な手法を用いることができる。図1の(a)においては、アンカー部材3と対応する位置の熱可塑性樹脂製プレート1に、予めテーパ面12を有する円形状の開口部11を設けてアンカー部材3を露出させている。
【0014】
熱可塑性樹脂製プレート1は、熱可塑性樹脂であれば、とくに限定されるものではない、さらには、同種の樹脂に対して熱融着可能であるものが好ましい。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、又はポリオキシメチレンなどがあげられる。母材2は金属製としているが熱可塑性樹脂製プレート1よりも高強度でタンクなどの構造材としてしようできるものならよく、金属またはコンクリートが適用される。さらに、金属の材質は、鋳鉄、鋳鋼、炭素鋼、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、ステンレス、チタンなど強度上問題のないものであれば特に限定されない。また、母材2が金属であれば施工完成時やメンテナンス時に放電式の検査機器でピンホールや亀裂などの検査が行える。
【0015】
アンカー部材3の形状は、一例として図2に示すように、矩形金属板の中央部に円形の開口部31を設け、縁部を折曲して溶接部32を設けて側面視がコの字状となるように構成され、図1(a)に示すように、溶接部32が母材2に溶接され、コの字状の内側の空間に溶融樹脂5が充填される。また、他例としては、図3に示すように、金属板に凸凹面を連続して形成し、凸部34に長穴33を設けて構成され、凹部35が母材2に溶接され、凸部34の背面側の空間に溶融樹脂5が充填される。アンカー部材3は、母材2と溶接される溶接箇所と、溶融樹脂5が入り込む空間を有する形状であれば何れの形状でも使用することができ、本実施の形態に限定されるものではない。また、アンカー部材3の固定方法は溶接としているが、リベット、ボルトによる固定などでもよい。アンカー部材3の材質は、母材2と同材質が好ましいが、熱可塑性樹脂製プレート1より高強度で母材2と固定できるものであればよく熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂やこれらの樹脂を繊維強化したものでも金属の金具でもよい。金属の場合は鋳鉄、鋳鋼、炭素鋼、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、ステンレス、チタンなど強度上問題のないものであれば特に限定されない。さらに、アンカー部材3が金属の場合、検査やメンテナンスの時などにピンホールや亀裂などの不具合も放電式の検査機器で確認することができる。
【0016】
図1(b)に示すように、開口部11に溶融樹脂5を押出溶接機4により流し込み、図1(c)に示すように、開口部11に溶融樹脂5を充填し、溶融樹脂5が固化することで、母材2上に熱可塑性樹脂製プレート1を一体構造となるよう積層させる。溶融樹脂5は、アンカー部材3の開口部31、または溶接部32が設けられていない側面側を介してアンカー部材3の内側に流入し、アンカー部材3を溶融樹脂5内に包含して固化するため、母材2に溶接されたアンカー部材3を介して、熱可塑性樹脂製プレート1を強固に固定することが可能となる。尚、開口部11のテーパ面12は、母材2側に向かって縮径しているが、例えば、開口部11にテーパ面12を設けず形成し、施工性を簡便化させるほか、母材2側に向かって拡径したテーパ面12を設け、固化した溶融樹脂5が離脱しにくいアンダーカット構造とすることも可能であり、開口部11の形状は、本実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
押出溶接機4は、上述した熱可塑性樹脂に熱を加え流動状の溶融樹脂5とし、溶融樹脂5を目的部位に押し出すことのできる装置(商品名;ウエルドプラストS2、株式会社ライスター・テクノロジーズ社製)を使用した。さらに、本装置は熱風を吹き出して熱可塑性樹脂製プレート1、母材2、アンカー部材3を温めることにより溶融樹脂5が流れやすくなり充填しやすくなる。
【0018】
以上のように、本発明の第一の実施形態は、例えばタンクなどの平面部の平面状の金属製母材2に熱可塑性樹脂製プレート1をアンカー部材3及び溶融樹脂5により一体化させた熱可塑性樹脂製プレート1の施行方法を示す。尚、母材2がコンクリート製の場合には、アンカーボルトを母材2に打設し、アンカーボルトの先端に上記したアンカー部材3を溶接することで、母材2と異種材の熱可塑性樹脂製プレート1を母材2に積層させることが可能である。
【0019】
次に、本発明の第二の実施形態における積層方法について、図4、及び図5を参照して説明する。図4は、第二の実施形態における施工手順を示す断面図であり、図5は、第二の実施形態における母材2の加工例を示す断面図である。尚、第一の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施形態との相違点を主に説明する。
【0020】
本発明の第二の実施形態では、図4(a)に示すように、金属製母材2に雌ネジ孔21を形成し、雌ネジ孔21を露出させた状態で雌ネジ孔21の周囲に熱可塑性樹脂製プレート1を仮止めする。図4の(a)においては、雌ネジ孔21と対応する位置の熱可塑性樹脂製プレート1に、予めテーパ面12を有する円形状の開口部11を設けて雌ネジ孔21を露出させている。テーパ面12は、母材2側に向かって拡径するよう形成される。
【0021】
図4(b)に示すように、開口部11、及び雌ネジ孔21に溶融樹脂5を押出溶接機4により流し込み、図4(c)に示すように、開口部11、及び雌ネジ孔21を溶融樹脂5で充填し、溶融樹脂5を固化させて、母材2上に熱可塑性樹脂製プレート1を一体構造となるよう積層させる。溶融樹脂5は、熱可塑性樹脂製プレート1と融着して一体成型されるとともに、固化した際に雌ネジ孔21と確実に係合するため、熱可塑性樹脂製プレート1と母材2を強固に係合させることができ、熱可塑性樹脂製プレート1と母材2の接合強度を向上させることができる。さらに万一、溶融樹脂5と熱可塑性樹脂製プレート1が融着されない場合においても、テーパ面12を母材2側に向かって拡径させているため、固化した溶融樹脂5が熱可塑性樹脂製プレート1から離脱することを防止することができる。
【0022】
以上のように、本発明の第二の実施形態は、平面状の金属製母材2に雌ネジ孔21を形成する、いわゆるアンダーカット部を形成し、溶融樹脂5により熱可塑性樹脂製プレート1と母材2を係合させた熱可塑性樹脂製プレート1の施行方法を示す。尚、雌ネジ孔21は、母材2を貫通しないよう形成されているが、貫通させて形成しても良い。よって、母材2に加工する雌ネジ孔21は、例えば図5(a)に示すように、断面視の形状が、熱可塑性樹脂製プレート1側に向かって縮径するテーパ面22を有する円錐、角錐形状、また例えば図5(b)に示すように、断面視で開孔の中ほどに凹部23を有し、径の異なる円柱、または角柱を組み合わせてなる形状、さらに例えば図5(c)に示すように、断面視が段部24を有し熱可塑性樹脂製プレート1側の径よりも母材2側の径が大きい円柱、または角柱形状であれば良く、固化した溶融樹脂5が母材2に対して係合され、かつ離脱しにくいアンダーカット形状であれば、いずれの形状でも施工するができる。本実施形態では金属製母材2に雌ネジ孔21を形成していたが母材2はコンクリートであっても同様に適用できる。
【0023】
例えば、タンクなどの平面部へ本発明の第一および第二の実施形態における熱可塑性樹脂製プレート1を、溶融樹脂5を充填して母材2に積層するために固定する固定点は複数配置する必要が生じる。その固定点の配置については、任意の固定点と固定点の最近傍に位置する複数の他の固定点との距離が互いに等しくなるように固定点を配列すると固定点同士を結ぶ直線を1辺とする正三角形または、正方形の頂点に固定点が形成される。正三角形または、正方形の格子状に固定点が配列されることで積層構造体に熱が加わった時に熱可塑性樹脂製プレート1の変形が少なく安定する。正方形の配列の場合は熱可塑性樹脂製プレート1の材質などにより必要に応じて正方形の対角線の交点に補助の固定点を追加してもよい。
【0024】
次に、本発明の第三の実施形態における積層方法について、図6、及び図7を参照して説明する。図6は、本発明の第三の実施形態における施工手順を示す平面図であり、図7は、本発明の第三の実施形態におけるアンカー部材3を示す斜視図である。
【0025】
本発明の第三の実施形態では、図6図7に示すように、例えばタンクなどの角隅部の母材2に熱可塑性樹脂製プレート1を積層させる。母材2は金属製で、図7に示すように、母材2にアンカー部材3を溶接する。アンカー部材3は、細長い金属板の中央に複数の長穴33が形成され、隣り合う長穴33間の端辺に、長穴33の半分の大きさの切欠き部36が形成されている。長穴33の両側辺は、溶接部37で、図6に示すように、母材2の角隅部を形成する両辺に対して45°の角度でアンカー部材3が母材2に溶接される。図6(a)に示すように、アンカー部材3が溶接された母材2の両辺には、熱可塑性樹脂製プレート1が仮止めされる。
【0026】
図6(b)に示すように、熱可塑性樹脂製プレート1同士の間隙13を埋めて、溶融樹脂5を押出溶接機4により流し込み、図6(c)に示すように、溶融樹脂5を固化させて、母材2上に熱可塑性樹脂製プレート1を一体構造となるよう積層させる。溶融樹脂5は、アンカー部材3の長穴33、または切欠き部36を介してアンカー部材3の内側に流入し、アンカー部材3を溶融樹脂5内に巻き込んで固化するため、母材2に溶接されたアンカー部材3を介して、熱可塑性樹脂製プレート1を強固に固定することが可能となる。
【0027】
以上のように、本発明の第三の実施形態は、角隅部の金属製母材2に熱可塑性樹脂製プレート1をアンカー部材3及び溶融樹脂5により一体化させた熱可塑性樹脂製プレート1の施行方法を示す。尚、母材2がコンクリート製の場合には、コンクリート製母材2の角隅部にL字型の鋼材を打設し、この鋼材にアンカー部材3を溶接することで、積層させることが可能である。また、図8に示すように、上記実施例では角隅部における熱可塑性樹脂製プレート1の接合について説明しているが図3に示すアンカー部材3を利用し同様の施工方法で平面に熱可塑性樹脂製プレート1を接合することで積層が可能である。
【0028】
次に、本発明の第四の実施形態における積層方法について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の第四の実施形態における施工手順を示す断面図である。
【0029】
本発明の第四の実施形態では、図9(a)に示すように、金属製、またはコンクリート製母材2の角隅部に雌ネジ孔21を形成し、雌ネジ孔21を露出させた状態で雌ネジ孔21の両辺の母材2に熱可塑性樹脂製プレート1を仮止めする。熱可塑性樹脂製プレート1の仮止め方法は、接着剤、もしくは両面テープを用いて母材2に貼着するほか、クランプ等の工具で挟むなど様々な手法を用いることができる。
【0030】
図9(b)に示すように、雌ネジ孔21、及び熱可塑性樹脂製プレート1間の間隙13に溶融樹脂5を押出溶接機4により流し込み、図9(c)に示すように、溶融樹脂5を固化させて、母材2上に熱可塑性樹脂製プレート1を一体構造となるよう積層させる。溶融樹脂5は、熱可塑性樹脂製プレート1と融着するとともに、固化した際に雌ネジ孔21と確実に係合するため、熱可塑性樹脂製プレート1と母材2を強固に係合させることができ、熱可塑性樹脂製プレート1と母材2の接合強度を向上させることができる。
【0031】
以上のように、本発明の第四の実施形態は、角隅部の母材2に雌ネジ孔21を形成し、溶融樹脂5により熱可塑性樹脂製プレート1と母材2を係合させて積層する方法、及び積層構造を示す。尚、雌ネジ孔21は、母材2を貫通しないよう設けられているが、貫通させて形成しても良い。
【0032】
第一乃至第四の実施形態に示す積層方法は、例えば図10に示すような、タンク6の母材2に熱可塑性樹脂製プレート1を積層させることができる。図10においては、破線で示した箇所が夫々の積層方法を示す箇所であり、符号61が第一の実施形態における積層方法を示す箇所であり、符号62が第二の実施形態における積層方法を示す箇所であり、符号63が第三の実施形態における積層方法を示す箇所であり、符号64が第四の実施形態における積層方法を示す箇所である。また、タンク6の内面側に熱可塑性樹脂製プレート1を積層させるばかりでなく、タンク6の外面側に熱可塑性樹脂製プレート1を積層させることも可能である。
【0033】
尚、本発明の要旨は、熱可塑性樹脂製プレート1を異種材の母材2に積層させ、アンカー部材3もしくはアンダーカット部、及び溶融樹脂5により、異種材間を接合させる方法である。よって、例えばアンカー部材3として六角ナットを用い、溶融樹脂5を充填する方法でも良く、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加えることができることは言うまでもない。また、上記実施例では角隅部における熱可塑性樹脂製プレート1の接合について説明しているが同様に平面で熱可塑性樹脂製プレート1を接合することで積層が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 熱可塑性樹脂製プレート
11 開口部
12 テーパ面
13 間隙
2 母材
21 雌ネジ孔
22 テーパ面
23 凸部
24 段部
3 アンカー部材
31 開口部
32 溶接部
33 長穴
34 凸面
35 凹面
36 切欠き部
37 溶接部
4 押出溶接機
5 溶融樹脂
6 タンク
61 第一の実施形態における積層方法を示す箇所
62 第二の実施形態における積層方法を示す箇所
63 第三の実施形態における積層方法を示す箇所
64 第四の実施形態における積層方法を示す箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10