(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サイド延長部は、前記交差する方向のうち前記リアクトルを設置対象に取り付けたときに前記設置対象に向かう方向に延びており、前記サイド延長部における前記設置対象に対向する面が設置面である請求項1に記載のリアクトル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施の形態の説明]
最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
(1) 本発明の一態様に係るリアクトルは、巻線を螺旋状に巻回した一対の巻回部を横並びに有するコイルと、圧粉成形体から構成されるU字状のコア片を有する磁性コアとを備える。上記U字状のコア片は、上記一対の巻回部の端面に対向する部分を有しており、上記巻回部に覆われず、上記一対の巻回部間に跨るように配置されるサイド基部と、上記サイド基部から上記一対の巻回部内にそれぞれ配置されるように突出し、ギャップに対向する端面を有する一対のミドル部と、上記サイド基部から上記ミドル部の軸方向に交差する方向に延びるサイド延長部と、上記サイド基部における上記一対のミドル部の横並び方向の中央領域から、上記ミドル部とは反対側に突出する中央突出部とを含む。
【0013】
上記のリアクトルは、特定のU字状のコア片を備えることで、以下の理由により、設置面積が小さく、低損失であり、製造性にも優れる。
【0014】
(設置面積が小さい理由)
上記のリアクトルは、サイド延長部を備えるため、サイド延長部を有さずに同一の磁路断面積を確保する場合に比較して、U字状のコア片のサイド基部における巻回部の軸方向に沿った長さ(以下、厚さと呼ぶことがある)を短くできる。その結果、U字状のコア片における巻回部の軸方向に平行な面を、リアクトルを設置対象に取り付けたときに設置対象に対向する設置面とすると、U字状のコア片の設置面は、上記巻回部の軸方向に沿った長さが小さく、設置面積を小さくできる。従って、上記のリアクトルは、設置面積が小さい。
【0015】
(低損失な理由)
上記のリアクトルは、U字状のコア片のミドル部において別のコア片との間に設けられるギャップに対向する端面は、ミドル部がコイルの巻回部内に挿入されることで、巻回部内に配置される。そのため、上記のリアクトルは、磁性コアを構成するコア片間に設けるギャップを巻回部内に配置できる。上記のリアクトルは、上述の中間コア片と端部コア片との間のようなコイルの巻回部と巻回部が無い部分との境界にギャップが設けられないため、この境界のギャップからの漏れ磁束に起因する損失が生じ得ず、低損失である。
【0016】
(製造性が良い理由)
上記のリアクトルは、ミドル部とサイド基部とを一体に備えるU字状のコア片を構成要素とするため、上述の中間コア片と端部コア片とが別部材である場合と比較して、組立部品数が少なく、工程数を低減でき、ひいては製造性に優れる。また、上記のリアクトルは、上述のようにコイルの巻回部内にギャップを配置できるため、上述の境界に配置するための特定のギャップ材の準備も不要であり、この点からも製造性に優れる。
【0017】
特に、上記のリアクトルは、中央突出部を備えるため、U字状のコア片を平面視したとき、中央突出部を含むミドル部の横並び方向の中央領域の厚さ(後述の厚さT
A、
図3)と、中央領域の両側に位置する領域(左右の領域)の厚さ(後述の厚さT
B、
図3)とを等しくし易い。このような形状の圧粉成形体(U字状のコア片)を製造する場合に、ミドル部の軸方向を押圧方向とし、圧粉成形体における上述の各領域の厚さが特定の範囲になるように給粉厚さを調整することで、上述の各領域の密度差や、上述の領域の境界近傍での密度の斑などが生じ難くなる。従って、均一的な密度を有する圧粉成形体を精度よく安定して製造できる。また、ミドル部の軸方向を押圧方向とすることで、ミドル部の軸方向に直交する方向を押圧方向とする場合に比較して、サイド延長部を有する圧粉成形体を精度よく安定して製造できる。この点からも、上記のリアクトルは、製造性に優れる。
【0018】
(2) 上記のリアクトルの一例として、上記サイド延長部が上記交差する方向のうち上記リアクトルを設置対象に取り付けたときに上記設置対象に向かう方向に延びており、上記サイド延長部における上記設置対象に対向する面が設置面である形態が挙げられる。
【0019】
上記形態は、U字状のコア片のサイド延長部が設置対象に向かって延びているため、サイド延長部を有さずに同一の磁路断面積を確保する場合に比較して、サイド基部の厚さを小さくできる。また、上記形態は、サイド延長部が上記交差する方向のうち巻回部の横並び方向に延びた場合に比較して、リアクトルにおける上記横並び方向の長さ(以下、幅と呼ぶことがある)も小さくできる。ここで、例えば、サイド延長部がコイルの外周面よりも上記横並び方向に突出する場合には、U字状のコア片の厚さを小さくできるものの幅が大きくなる。リアクトルの設置に際しては、この横並び方向の突出部分を含むスペースを確保する必要があるため、この場合、設置面積を十分に小さくし難い。これに対し、上記形態は、U字状のコア片の厚さ及び幅の双方を小さくでき、設置面積がより小さい。また、上記形態は、U字状のコア片が設置面を有することで、リアクトルを安定して設置対象に取り付けられる上に、使用時に発熱するコイルの放熱経路にU字状のコア片を利用できて放熱性にも優れる。
【0020】
(3) 上記(2)のリアクトルの一例として、上記サイド延長部が上記直交する方向のうち上記設置対象から離れる方向にも延びている形態が挙げられる。
【0021】
上記形態は、サイド延長部が設置対象に対して近接方向及び離反方向の双方に延びているため、このサイド延長部を有さずに同一の磁路断面積を確保する場合に比較して、サイド基部の厚さをより小さくできる上に、上述のように幅も小さくできる。従って、上記形態は、U字状のコア片における巻回部の軸方向に平行な面を設置面とすると、設置面積を更に小さくできる。
【0022】
(4) 上記のリアクトルの一例として、上記ミドル部の軸方向に沿った上記サイド基部の厚さと上記中央突出部の突出長さとの合計を厚さT
Aとし、上記ミドル部の軸方向に沿った突出長さと上記サイド基部の厚さとの合計を厚さT
Bとするとき、厚さの比T
A/T
Bが0.5以上2以下である形態が挙げられる。
【0023】
上記形態は、中央突出部を含む中央領域の厚さT
Aと中央突出部を含まない両側の領域(左右の領域)の厚さT
Bとが特定の範囲である、好ましくは等しいことで、上述のように圧粉成形体のU字状のコア片を精度よく安定して製造でき、製造性に優れる。
【0024】
(5) 上記のリアクトルの一例として、上記一対のミドル部の横並び方向に沿って上記サイド基部の側面から上記中央突出部の側縁までの長さを幅W
1Sとし、上記中央突出部における上記一対のミドル部の横並び方向に平行な中央外端面の長さを幅W
1Cとし、上記各ミドル部における上記一対のミドル部の横並び方向に沿った長さをそれぞれ幅W
2Sとし、上記一対のミドル部の横並び方向に沿った上記一対のミドル部間の長さを幅W
2Cとするとき、内外の幅の比(W
1S/W
1C)/(W
2S/W
2C)が0.8以上1.25以下である形態が挙げられる。
【0025】
上記形態に備えるU字状のコア片は、平面視したとき、上述の中央領域の幅と左右の領域の幅との比がコイルに向かう側(以下、内側と呼ぶことがある)とコイルから離れた側(以下、外側と呼ぶことがある)とで同等又は同等程度であるといえる。即ち、コイルに向かう側の凹凸形状(コイル側に突出するミドル部に起因する形状)と、コイルから離れた側の凹凸形状(コイルとは反対側に突出する中央突出部に起因する形状)とがほぼ対応しているといえる。このような特定の形状の圧粉成形体(U字状のコア片)は、上述のようにミドル部の軸方向を押圧方向とすると、上述の中央領域に対する押圧力と左右の領域に対する押圧力とを均一的にし易い。即ち、この圧粉成形体は、U字状のコア片の内側形状と外側形状との双方が段差形状であるものの、概ね対応した段差状態であるため、所定の形状・寸法の圧粉成形体を精度よく成形でき、成形性に優れる。また、上述の中央領域と左右の領域との密度差なども低減でき、U字状のコア片を安定して製造できる。従って、上記形態は、リアクトルの製造性により優れる。この形態は、上述の厚さの比T
A/T
Bが0.5以上2以下を満たすことが好ましい。
【0026】
(6) 上記(5)のリアクトルの一例として、左右の幅の比(W
1S/W
2S)、中央の幅の比(W
1C/W
2C)のいずれもが0.8以上1.25以下である形態が挙げられる。
【0027】
上記形態に備えるU字状のコア片は、平面視したとき、コイルに向かう側の凹凸形状と、コイルから離れた側の凹凸形状とがより等しい形状といえ、更に成形性に優れる。従って、上記形態は、リアクトルの製造性に更に優れる。
【0028】
(7) 上記のリアクトルの一例として、上記U字状のコア片の少なくとも一つの角部がR面取り又はC面取りがなされている形態が挙げられる。
【0029】
上記形態は、直角などの鋭利な角部と比較して成形性や脱型性に優れる上に、U字状のコア片の成形時やコイルとの組み付け時などでの角部の割れを抑制し易く、製造性に優れる。
【0030】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るリアクトルを具体的に説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
【0031】
[実施形態1]
図1〜
図6を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。以下、
図1に示すリアクトル1Aをコンバータケースなどの設置対象(図示せず)に取り付けたとき、
図1における下面が設置対象に対向する面(設置対象に接する設置面となる場合がある)として説明する。この設置状態は、例示であり、別の面が設置対象に対向する面となる場合がある。
【0032】
(リアクトル)
・全体構成
リアクトル1Aは、巻線2wを螺旋状に巻回したコイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3とを備える。磁性コア3は、コイル2内に配置される複数のコア片31m,…と、コイル2が実質的に配置されず、コイル2から露出される部分を有する一対のU字状のコア片32m,32mとを備える。リアクトル1Aは、コア片32mが特定の形状の圧粉成形体から構成される点を特徴の一つとする。概略を述べると、コア片32mは、コイル2内に配置される部分(ミドル部321)と、コイル2が配置されない部分(サイド基部322)と、コイル2の端面2eを含む仮想面20(
図2)に沿って突出する部分(サイド延長部3223)と、コイル2の軸方向にコイル2から離れるように突出する部分(中央突出部3225)とを有する異形のU字状である。以下、より詳細に説明する。なお、
図1,
図3〜
図5、後述する
図7〜
図10では、分かり易いようにサイド基部322に二点鎖線のクロスハッチングを付している。
図1では、サイド基部322における中央突出
部3225に重複する部分には上記クロスハッチングを省略している。
図3及び
図8では、下面32dに破線の格子状ハッチングを付している。
【0033】
・コイル
コイル2は、
図1,
図2に示すように1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回して形成された一対の筒状(ここでは角部を丸めた四角筒状)の巻回部2a,2bと、巻線2wの一部から形成されて両巻回部2a,2bを接続する連結部2rとを備える。各巻回部2a,2bは、各軸方向が平行するように横並び(並列)されている。この例では、巻線2wは、平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(いわゆるエナメル線)であり、巻回部2a,2bはエッジワイズコイルである。巻線2wの両端部はいずれも、巻回部2a,2bから適宜な方向に引き出されて、その先端(導体)に端子金具(図示せず)が接続される。コイル2は、端子金具を介して電源などの外部装置(図示せず)に電気的に接続される。
【0034】
・磁性コア
磁性コア3は、
図1,
図2に示すように複数の柱状のコア片31m,…と、一対のU字状のコア片32m,32mと、コア片間に介在されるギャップ(ここではギャップ材31g)とを備える。コア片32m,32mは、U字の開口部が向かい合うように配置され、コア片31m及びギャップ材31gは、コア片32m,32m間に配置される。より具体的には、磁性コア3は、一方のU字状のコア片32mに備えるミドル部321,321と他方のU字状のコア片32mに備えるミドル部321,321との間に、コア片31mを含む柱状の積層物をそれぞれ挟むように、コア片31m,32mが環状に組み付けられて、コイル2を励磁したときに閉磁路を形成する。
【0035】
・・材質
この例では、コア片31m,32mはいずれも圧粉成形体である。圧粉成形体は、代表的には、鉄や鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)といった軟磁性の金属の粉末と、適宜バインダ(樹脂など)や潤滑剤とを含む原料粉末を成形した後、成形に伴う歪みの除去などを目的とした熱処理を施して得られる。金属粉末に絶縁処理を施した被覆粉末や、金属粉末と絶縁材とを混合した混合粉末を原料粉末に用いることで、成形後、金属粒子と金属粒子間に介在する絶縁材とによって実質的に構成される圧粉成形体が得られる。この圧粉成形体は、絶縁材を含むことで、渦電流を低減できて低損失である。上記の成形には、代表的には、貫通孔を有するダイと、貫通孔に挿入されて原料粉末を押圧する上パンチ及び下パンチとを備える金型を利用する。U字状のコア片32mの成形の詳細は後述する。
【0036】
・・U字状のコア片
各U字状のコア片32m,32mは、いずれも同一形状であり、平面視U字状(
図3)、正面視長方形状(
図5)である。具体的にはコア片32mは、
図1に示すようにコイル2の巻回部2a,2bに覆われず、コイル2の一対の巻回部2a,2b間を跨ぐように配置されるサイド基部322と、サイド基部322から一対の巻回部2a,2b内にそれぞれ配置されるように突出する一対のミドル部321,321とを備える。この点は、平面視U字状、正面視及び側面視が直方体状の従来のU字コア片、即ち、コア片の厚さ及び高さがU字に沿った全長に亘って一様なものと類似する。更に、コア片32mは、サイド基部322が、巻回部2a,2bの端面2e,2eを含む仮想面20(
図2)に対向するように配置され、端面2e,2eに対向する部分を有する。また、コア片32mは、側面視Γ字状であり(
図4)、下面32dがミドル部321,321の下面321dよりも突出している。そして、コア片32mは、
図1〜
図3に示すように外端面の一部がミドル部321の突出方向とは逆方向に突出している。より具体的にはコア片32mは、サイド基部322からミドル部321の軸方向に交差する方向に延びるサイド延長部3223と、サイド基部322における一対のミドル部321,321の横並び方向(
図3では左右方向。以下、単にミドル部の並列方向と呼ぶことがある)の中央領域から、ミドル部321とは反対側に突出する中央突出部3225とを備える。
【0037】
U字状のコア片32mは、
図3に示すように平面視したとき、コイル2に向かう側(内側、
図3では下側)の輪郭は、中央領域が上向きに凹んだ形状になっている。一方、コイル2から離れる側(外側、
図3では上側)の輪郭は、中央領域が上向きに凸の形状となっている。即ち、コア片32mの内側の輪郭における凹みが外側の輪郭に凸部として表れているといえ、内側の輪郭と外側の輪郭とが対応しているといえる。
【0038】
・・・サイド基部
サイド基部322は、直方体状の仮想領域(
図1、
図3〜
図5において二点鎖線のクロスハッチング部分)である。この例では、サイド基部322は、外周面として、上面32uと、一対の側面32s,32sと、コイル2の巻回部2a,2bの端面2e,2eに対向する内端面32i(
図2〜
図5)と、ミドル部321,321の端面321i,321iにそれぞれ対向する縁外端面322soとを備える。上面32uは、異形のU字状の平面(
図3)、側面31sはΓ字状の平面(
図4)、内端面32iは⊥字状(逆T字状)の平面(
図5)、縁外端面322soは長方形状の平面である。上面32uに対して、側面32s、内端面32i、及び縁外端面322soはいずれも、直交に設けられている。巻回部2a,2bの端面2e,2e(仮想面20(
図2))に対して、内端面32i及び縁外端面322soはいずれも、平行に設けられている。この内端面32iは、端面2e,2eに対向する部分である。
【0039】
・・・ミドル部
各ミドル部321,321はいずれも、正面視長方形状(
図5)の平面からなる端面321iを有する直方体状(
図2)の部分であり、サイド基部322に対して、そのミドル部の並列方向の中央領域を挟むように離間して設けられている(
図2、
図3、
図5)。
【0040】
ミドル部321の端面321iの大きさは、コイル2に応じた所定の磁路断面積を有するように適宜選択できる。また、端面321iの形状は、コイル2(巻回部2a,2b)の内周形状などに応じて適宜変更でき、例えば、円形などとすることができる。この例では、長方形状の端面321iの4個の角部は全て、巻回部2a,2bの内周形状と同様に丸められている。即ち、四隅はいずれも、R面取りされている。そして、端面321iは、コア片32m,31m間に配置されるギャップ材31gに対向する面である(
図2)。
【0041】
ミドル部321におけるサイド基部322からの突出長さL
321(ミドル部321の軸方向に沿った長さ。
図3、
図4)は、適宜選択できる。特に、ミドル部321の突出長さL
321は、後述する特定の関係(厚さの比T
A/T
B(
図3)が0.5〜2)を満たす範囲で選択することが好ましい。
【0042】
・・・サイド延長部
サイド延長部3223は、この例では、コイル2(巻回部2a,2b)の軸方向に交差する方向のうち、設置対象に向かう方向(ここでは下方)に延びている(
図1、
図4、
図5)。U字状のコア片32mは、このサイド延長部3223における設置対象に対向する下面32dを設置面とする。
【0043】
サイド延長部3223におけるサイド基部322からの突出長さL
3223(この例では、設置対象に向かう方向の長さであり、ミドル部321の下面321dから下面32dまでの長さに等しい。
図4)は、適宜選択できる。後述の合計磁路断面積を一定とする場合、突出長さL
3223が長いほど、中央領域の厚さT
A(
図3、詳細は後述)を小さくし易くなり、U字状のコア片32mの設置面積(ここでは下面32dの面積)を小さくできる。サイド延長部3223の突出長さL
3223が長過ぎると、厚さT
Aが薄くなり過ぎて成形し難くなったり、設置状態が不安定になったり、放熱性の向上が不十分になったりする。サイド延長部3223の突出長さL
3223は、例えば、ミドル部321の長さLの10%以上100%以下程度、更に10%以上70%以下程度、更には10%以上50%以下程度が挙げられる。この例では、サイド延長部3223の突出長さL
3223は、ミドル部321の長さLの25%程度である。
【0044】
サイド延長部3223は、
図4に示すように、サイド基部322の厚さT(ミドル部321の軸方向に沿った長さ)と同一の厚さで、一方の側面32sから他方の側面32sの全域に亘って設けることが好ましい。この場合、サイド延長部3223が十分に大きな体積を有することで、サイド基部322の厚さTを薄くし易い。その結果、リアクトル1Aの設置面積を小さくし易い。
【0045】
・・・中央突出部
中央突出部3225は、サイド基部322におけるミドル部の並列方向の中央領域、より具体的には内端面32iにおける一対のミドル部321,321に挟まれる領域に対向して部分的に存在する(
図2)。また、中央突出部3225は、コイル2の巻回部2a,2bの端面2e,2eにおける隣り合う領域に対向して存在するともいえる(
図1)。この中央突出部3225は、正面視においてサイド基部322の一部にのみ存在するミドル部321とは異なり、背面視において上面32uから下面32dの全長に亘って連続して存在する(
図1,
図4)。
【0046】
中央突出部3225は、この例では平面視台形状であり(
図3)、内端面32iに対向し、一対のミドル部321,321の横並び方向(並列方向)に平行な平面からなる中央外端面322coと、上述の縁外端面322soと、両面322co,322so間を接続する二つの傾斜面322io,322ioとを備える。中央突出部3225の平面形状は適宜変更でき、例えば、長方形状とすることができる。この例では、長方形状をC面取りすることで台形状としており、傾斜面322ioは、C面取りを行ったことで形成されたものである。また、この例では、中央外端面322coと傾斜面322ioとの角部、傾斜面322ioと縁外端面322soとの角部をR面取りしている。
【0047】
中央突出部3225におけるサイド基部322からの突出長さL
3225(この例では、ミドル部321の軸方向に沿ったコイル2から離れる方向の長さであり、中央外端面322coと縁外端面322soとの間の距離に等しい。
図4)は、適宜選択できる。特に、中央突出部3225の突出長さL
3225は、後述する特定の関係(厚さの比T
A/T
B(
図3)が0.5〜2)を満たす範囲で選択することが好ましい。
【0048】
・・・角部
図1に示すU字状のコア片32mでは、上述のミドル部321の四つの角部、中央突出部3225の角部の他、上面32uと側面32sとの角部(ミドル部321,321の上外側の角部を含む)、下面32dと側面32sとの角部をR面取りしている。R面取りに代えてC面取りとしたり、R面取り及びC面取りを省略したりすることができる。R面取りの半径や、C面取りの切落とし辺の長さは、コア片32mにおける過度な体積減少を招かない範囲で適宜選択できる。例えば、R面取りの半径は、0.5mm以上5mm以下程度、更には2mm以上4mm以下程度、C面取りの切落とし辺の長さは、0.5mm以上5mm以下程度、更には2mm以上4mm以下程度が挙げられる。
【0049】
・・・サイズ
・・・・磁路断面積
サイド延長部3223及び中央突出部3225の大きさは、サイド基部322とサイド延長部3223と中央突出部3225との合計磁路断面積が、ミドル部321の磁路断面積(ここでは端面321iの面積に等しい)に同等又は同等以上となるように設定する。具体的には、サイド基部322とサイド延長部3223と中央突出部3225とを含む箇所を
図2に示すX−X切断線(コイル2の磁束に直交方向の切断線)で切断したときの断面積(合計磁路断面積)と、ミドル部321の磁路断面積とが同等、又は前者合計磁路断面積の方が若干大きくなるように設計する。この例では前者合計磁路断面積の方が極僅かに大きい。
【0050】
・・・・厚さ
図3に示すように、サイド基部322におけるミドル部321の軸方向に沿った長さ(厚さT)と中央突出部3225の突出長さL
3225との合計を厚さT
Aとし、ミドル部321の突出長さL
321とサイド基部322の厚さTとの合計を厚さT
Bとするとき、厚さの比T
A/T
Bが0.5以上2以下であることが好ましい。後述するようにU字状のコア片32mの成形にあたり、ミドル部321の軸方向を成形時の押圧方向とすると、ミドル部321の端面321iと、外端面322so,322co及び傾斜面322ioとをパンチ形成面にできる。この場合、ミドル部321の軸方向及び並列方向の双方に直交する方向を押圧方向とする、即ち上面32u及び下面32dをパンチ形成面にする場合に比較して、サイド延長部3223の割れや不十分な押圧などを防止でき、成形し易い。
【0051】
上記厚さの比T
A/T
Bが小さ過ぎたり、大き過ぎたりすると、即ち、U字状のコア片32mの中央領域の厚さT
Aと中央領域を挟む左右の領域の厚さT
Bとの差が大き過ぎると、後述するようにミドル部321の軸方向を押圧方向とする場合に成形時の押圧力が不均一になり易い。具体的には、薄肉部分が過度に押圧されたり、厚肉部分への押圧力が不十分になったりする。その結果、コア片32mに部分的に密度差が生じ得る。この密度差が大き過ぎると、低密度部分に割れなどが生じたり、高密度と低密度との境界部分で割れが生じたりし得る。厚さの比T
A/T
Bが0.5以上2以下であれば、このような圧粉成形体の成形時の押圧力のばらつきに起因する密度差などを低減して、均一的な密度を有するコア片32mを安定して製造し易い。厚さの比T
A/T
Bは、0.6以上1.7以下、更に0.7以上1.4以下、更には0.8以上1.25以下が好ましく、1に近いほど好ましい。ここでは、厚さの比T
A/T
Bは約0.83である。
【0052】
・・・・幅
一対のミドル部321,321の横並び方向(並列方向)に沿って、サイド基部322の側面32sから中央突出部3225の側縁(ここでは中央外端面322coの側縁)までの長さを幅W
1Sとし、中央突出部3225の中央外端面322coの長さを幅W
1Cとする。ミドル部321における上記並列方向に沿った長さを幅W
2Sとし、上記並列方向に沿った一対のミドル部321,321間の長さを幅W
2Cとする。このとき、内外の幅の比(W
1S/W
1C)/(W
2S/W
2C)が0.8以上1.25以下であることが好ましい。更に左右の幅の比(W
1S/W
2S)及び中央の幅の比(W
1C/W
2C)のいずれもが0.8以上1.25以下を満たすことがより好ましい。この例では、幅W
1Sは、中央外端面322coの側縁までの長さとし、傾斜面322ioで覆われる傾斜部分を含む。
【0053】
U字状のコア片32mが、内外の幅の比(W
1S/W
1C)/(W
2S/W
2C)が0.8以上1.25以下を満たす場合、上述のようにコア片32mの内側の輪郭と外側の輪郭とが非常に類似しているといえる。このようなコア片32mは、後述するようにミドル部321の軸方向を成形時の押圧方向とすると、中央領域と左右の領域とを均一的に押圧し易く、形状及び寸法を高精度に成形できる。また、均一的に押圧できることから、中央領域と左右の領域とにおける密度差なども低減でき、コア片32mの製造性に優れる。更に、左右の幅の比(W
1S/W
2S)、中央の幅の比(W
1C/W
2C)も0.8以上1.25以下を満たすことで、コア片32mの内側の輪郭と外側の輪郭とが更に等しくなり易く、形状精度、寸法精度に優れるコア片32mを成形できる。コア片32mが異形のU字状という特定の形状であり、このようなコア片32mを圧粉成形体とすることから、その成形性を考慮して、上述の厚さの比や幅の比を特定の範囲とすることを提案する。
【0054】
内外の幅の比(W
1S/W
1C)/(W
2S/W
2C)、左右の幅の比(W
1S/W
2S)、中央の幅の比(W
1C/W
2C)はいずれも、0.5以上2以下、更に0.6以上1.7以下、更には0.7以上1.4以下が好ましく、1に近いほど好ましい。ここでは、内外の幅の比{(W
1S/W
1C)/(W
2S/W
2C)}、左右の幅の比(W
1S/W
2S)、中央の幅の比(W
1C/W
2C)はいずれも、1である。
【0055】
・・・製造方法
図6を参照して、U字状のコア片32mの製造方法を説明する。
コア片32mの成形には、例えば、貫通孔110hを有するダイ110と、ダイ110内に挿入され、貫通孔110hの内周面と共に原料粉末Pの給粉空間を形成する押圧面113uを有する下パンチ113と、下パンチ113と共に原料粉末Pを押圧する押圧面112dを備える上パンチ112とを備える金型100を利用する。
【0056】
この例に示す金型100の具体的な形状を説明する。
貫通孔110hの内周の平面形状は、U字状のコア片32mの正面形状(
図5)と同様に角部を丸めた長方形状である。貫通孔110hの内周面のうち、平面部分が平面からなる上面32u,下面32d,側面32sを形成し、丸められた角部分が直交する二つの面32u,32s、面32d,32sを繋ぐ角部(ここではR面取り部)を形成する。
【0057】
上パンチ112の押圧面112dは、U字状のコア片32mの外端面を形成する面であり、外端面の形状に対応して角部を丸めた長方形状の面である。この長方形状の中央部分に、底部が平面である凹部を有する。押圧面112dの凹部を挟む両側の部分も平面であり、凹部と平面との連結部分が傾斜している。凹部の平面部分が中央外端面322coを形成し、凹部を挟む両側の部分の平面部分が縁外端面322so,322soを形成し、傾斜している部分が傾斜面322io,322ioを形成する。上パンチ112は、凹部を有することで、外端面における部分的な突出部分(中央突出部3225)を有するコア片32mを製造できる。
【0058】
下パンチ113は、
図6の右上の平面図に示すように複数のパンチを組み合わせて用いる。具体的には、組み合わせて⊥形状(逆T字状)の内端面32i(
図5)を形成する長方形状の押圧面114u,120uをそれぞれ備える下パンチ114,120と、ミドル部321,321の端面321i,321i(
図5)を形成する長方形状の押圧面116u,118uをそれぞれ備える下パンチ116,118との合計四つの下パンチ114〜120を用いる。下パンチ114〜120は相互に移動可能であり、その位置を調整することで、内端面32iに対して部分的に突出する部分(ミドル部321,321)を有するコア片32mを製造できる。また、両パンチ112,113によって、外端面及び内端面32iの双方に沿って延長する部分(サイド延長部3223)を有するコア片32mを製造できる。
【0059】
次に、具体的な手順を説明する。
図6の上段に示すように、貫通孔110hに下パンチ113を挿入して給粉空間を形成して、原料粉末Pを給粉空間に充填する。コア片32mと給粉空間とができるだけ相似形状となるように下パンチ113の位置を調整する。ここでは、
図6の中段に示すように、下パンチ114,120の押圧面114u,120uを、下パンチ116,118の押圧面116u,118uよりも上方に突出させて原料粉末Pを充填し、原料粉末Pの表面を平坦としている。
【0060】
原料粉末Pを充填したら、
図6の下段に示すように上パンチ112をダイ110の貫通孔110hに挿入し、下パンチ113(114〜120)の位置を調整しつつ、両パンチ112,113で原料粉末Pを圧縮する。上パンチ112の押圧面112dの凹部と⊥形状に配置された下パンチ114,120の押圧面114u,120uとの間の距離をT
aとし、上パンチ112の押圧面112dの凹部の両側部分と下パンチ116,118の押圧面116u,118uとの間の距離をそれぞれT
b,T
bとするとき、原料粉末Pの厚さの比T
a/T
bが所定の厚さの比T
A/T
Bと同等又は同等程度となるように下パンチ113(114〜120)の位置を調整する。こうすることで、コア片32mにおける中央領域の圧縮度合いと、左右の領域の圧縮度合いとが等しくなり易く、圧縮物200に密度差などが生じることを抑制できる。圧縮物200をダイ110から抜き出すことで、異形のU字状のコア片32m(熱処理前)が得られる。
【0061】
・・コア片31m
各コア片31mは、
図2に示すようにいずれも同一形状であり、この例ではU字状のコア片32mのミドル部321の端面321iと同一形状の端面31iを有する直方体状である。コア片31mの端面31iは、コア片32mの端面321iと同様にギャップ材31gに対向する面である。
【0062】
・・ギャップ
ギャップ材31gは、コア片31m,32mよりも比透磁率が低い材料、代表的にはアルミナなどの非磁性材で構成される。この例では、ギャップ材31gは、平面視長方形状の非磁性材の平板としている。コア片31m及びギャップ材31gの個数、ギャップ材31gの形状は適宜選択できる。ギャップ材31gに代えて、又はギャップ材31gと併用してエアギャップとすることができる。
【0063】
リアクトル1Aでは、磁性コア3に少なくとも一つのギャップを含み、コア片間に配置される。即ち、ギャップは、コア片31m,32m間やコア片31m,31m間に配置される。従って、リアクトル1Aでは、ギャップはコイル2の巻回部2a,2b内に配置される。
【0064】
(作用効果)
実施形態1のリアクトル1Aは、特定のU字状のコア片32mを構成要素とすることで、設置面積が小さく、低損失であり、製造性にも優れる。具体的には、以下の通りである。
【0065】
U字状のコア片32mは、サイド基部322から、ミドル部321(コイル2の巻回部2a,2b)の軸方向に直交する方向であって設置対象に向かう方向に突出するサイド延長部3223を一体に備えることで、巻回部2a,2bの軸方向に沿った長さ(厚さT
A)を小さくできる。この薄肉のサイド延長部3223の一面(ここでは下面32d)をリアクトル1Aの設置面とすることで、リアクトル1Aはコイル2の軸方向に沿った突出部分が小さく、設置面積が小さい。
【0066】
U字状のコア片32mは、サイド基部322から突出する一対のミドル部321,321を一体に備え、コア片間に設けられるギャップ(ギャップ材31g)に対向する端面321
i,321
iをコイル2の巻回部2a,2b内に配置できる。即ち、リアクトル1Aは、ギャップを巻回部2a,2b内に配置できる。従って、リアクトル1Aは、磁性コアにおいてコイル内に配置される部分とコイルに覆われない部分との境界にギャップがある場合と比較して、この境界のギャップからの漏れ磁束に起因する損失が生じ得ず、低損失である。
【0067】
U字状のコア片32mは、コイル2外に配置されるサイド基部322とコイル2内に配置される一対のミドル部321,321とを一体に備えることで、組立部品数が少なく、工程数を低減できる。また、リアクトル1Aは、上述のようにコイル2の巻回部2a,2b内にギャップを配置できるため、上述の境界のギャップからの漏れ磁束を低減するために特定のギャップ材を省略できる。これらの点から、リアクトル1Aは、製造性に優れる。
【0068】
特に、U字状のコア片32mは、中央突出部3225を備えることで、中央領域の厚さT
Aと、左右の領域の厚さT
Bとを等しくし易い。その結果、上述のようにミドル部321の軸方向を押圧方向としてコア片32mを成形する場合に上記の領域間の密度差を低減して、全体に亘って均一的な密度に成形し易い。また、ミドル部321,321と中央突出部3225とはミドル部321の軸方向に平行に位置するものの、サイド延長部3223はミドル部321の軸方向に直交する。即ち、コア片32mは、サイド基部322に対して、多方向に突出部分を有する異形状である。このような複雑な立体形状でありながらも、上述のようにミドル部321の軸方向を押圧方向とし、特定の形状の金型100を利用することで、コア片32mを精度よく安定して製造できる。これらの点から、リアクトル1Aは、製造性に優れる。
【0069】
更に、リアクトル1Aでは、傾斜面322ioなどのようにC面取りを行ったり、角部にR面取りを行ったりしている。そのため、異形のU字状のコア片32mの成形にあたり、直角といった鋭利な角部を有する場合と比較して、金型からの脱型時やコイル2との組み付け時などで割れなどを防止し易い。この点からも、リアクトル1Aは、製造性に優れる。
【0070】
その他、リアクトル1Aは、磁性コア3の一部(一対のU字状のコア片32m,32mの下面32d,32d)を設置面とすることで、設置対象への取り付けの安定性を高められたり、放熱性を高められたりする。
【0071】
[実施形態2]
図7〜
図10を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明する。リアクトル1Bの基本的な構成は、実施形態1のリアクトル1Aと同様であり、コイル2と磁性コア3とを備える。磁性コア3は、多方向に突出する異形状のU字状のコア片32m,32mと、コア片32m,32m間に配置されるコア片31m及びギャップ材31g(
図1,
図2)とを備える。特に、リアクトル1Bに備えるコア片32mは、サイド延長部の突出状態が実施形態1と異なる。以下、この相違点を詳細に説明し、その他の構成は説明を省略する。
【0072】
実施形態1のリアクトル1Aは、サイド延長部3223が設置対象に向かう側(
図1では下側)にのみ延びた形態である。実施形態2のリアクトル1Bでは、U字状のコア片32mが、サイド基部322から、設置対象に向かう方向及び設置対象とは離れる方向の双方にそれぞれ延びた部分を有する。詳しくは、
図7,
図9,
図10に示すように、コア片32mは、サイド基部322から、ミドル部321の軸方向(コイル2の巻回部2a,2bの軸方向)に直交する方向であって設置対象に向かう側(ここでは下側)に突出する下側サイド延長部3223dと、設置対象から離れる側(ここでは上側)に突出する上側サイド延長部3223uとを備える。
【0073】
実施形態2のリアクトル1Bは、サイド延長部が上下の双方に突出していることで、U字状のコア片32mにおけるコイル2の巻回部2a,2bの軸方向に沿った長さ(厚さT
A、
図8、
図9)をより小さくでき、設置面積を更に小さくできる。
【0074】
この例では、
図9に示すように、下側サイド延長部3223dの突出長さL
3223と上側サイド延長部3223uの突出長さL
3223とが等しいが、異ならせることができる。突出長さL
3223,L
3223が等しいことで、U字状のコア片32mは、
図10に示すように線対称な形状になり、成形し易く、製造性を高められる。また、この例では、コア片32mの上面32uがコイル2の外周面と概ね面一となるように上側サイド延長部3223u,下側サイド延長部3223dを備えるが(
図7)、上側サイド延長部3223uがコイル2の外周面から突出する形態とすることができる。この形態は、上記厚さT
Aを更に小さくできて、設置面積をより一層小さくできる。
【0075】
なお、この例では、リアクトル1Bにおける厚さの比T
A/T
Bは0.8、内外の幅の比{(W
1S/W
1C)/(W
2S/W
2C)}、左右の幅の比(W
1S/W
2S)、中央の幅の比(W
1C/W
2C)はいずれも、1である。
【0076】
このようなサイド基部322から上下の双方に延びたサイド延長部3223u,3223dを有するU字状のコア片32mは、例えば、上述の⊥形状の押圧面をつくる二つの下パンチ114,120に代えて、H字形状の押圧面をつくる複数の下パンチを利用することで製造できる。
【0077】
[実施形態3]
実施形態1のリアクトル1Aでは、サイド延長部3223が設置対象に向かう側に延びた形態を説明した。その他、サイド延長部は、一対のミドル部321,321の横並び方向(ミドル部の並列方向)に延びた形態とすることができる。この形態は、
図1を参照して簡単にいうと、サイド基部322の左右方向に延びた形態である。このような左右方向に延びるサイド延長部を備えることで、この形態も、U字状のコア片におけるコイル2の巻回部2a,2bの軸方向に沿った長さ(厚さT
A)を小さくできる。
【0078】
特に、ミドル部の並列方向に延びる部分におけるサイド基部322からの突出長さは、コイル2の外周面の仮想延長面に達する大きさとすることが好ましい。即ち、U字状のコア片の側面とコイルの外周面とが面一になるように上記突出長さを調整する。この場合、ミドル部の並列方向に延びる部分を有していながらも、リアクトルにおけるミドル部の並列方向に沿った大きさ(幅)を、この部分を有さない実施形態1のリアクトル1Aと同様にできる。
【0079】
その他、上述した実施形態1又は実施形態2と、この実施形態3とを組み合わせた形態とすることができる。
【0080】
(その他の構成など)
リアクトル1A,1Bなどは、以下の部材を備えることができる。これらの部材の少なくとも一つを省略することもできる。
【0081】
・・センサ
温度センサ、電流センサ、電圧センサ、磁束センサなどのリアクトル1A,1Bなどの物理量を測定するセンサ(図示せず)を備えることができる。
【0082】
・・放熱板
コイル2の外周面の任意の箇所に放熱板(図示せず)を備えることができる。例えば、コイル2の設置面(ここでは下面)に放熱板を備えると、コンバータケースなどの設置対象にコイル2の熱を、放熱板を介して良好に伝えられて放熱性を高められる。放熱板の構成材料は、アルミニウムやその合金といった金属や、アルミナなどの非金属などの熱伝導性に優れるものを利用できる。放熱板をリアクトル1A,1Bなどの設置面(ここでは下面)全体に設けてもよい。放熱板は、例えば、後述の接合層によってコイル2と磁性コア3との組物に固定できる。
【0083】
・・接合層
リアクトル1A,1Bなどの設置面(ここでは下面)のうち、少なくともコイル2の設置面(ここでは下面)に接合層(図示せず)を備えることができる。接合層を備えることで、設置対象又は上述の放熱板を備える場合には放熱板にコイル2を強固に固定でき、コイル2の動きの規制、放熱性の向上、設置対象又は上記放熱板への固定の安定性などを図ることができる。接合層の構成材料は、絶縁性樹脂、特にセラミックスフィラーなどを含有して放熱性に優れるもの(例えば、熱伝導率が0.1W/m・K以上、更に1W/m・K以上、特に2W/m・K以上)が好ましい。具体的な樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0084】
・・絶縁部材
コイル2と磁性コア3との間に介在される絶縁部材(図示せず)を備えることができる。絶縁部材は、1.ボビンなどの成形部品、2.絶縁テープや絶縁紙などの巻回層、3.ワニスといった絶縁塗料などの塗布層、4.コイル2及び磁性コア3の少なくとも一方に絶縁性樹脂を射出成形などで成形したモールド部などが挙げられる。ボビンやモールド部の構成樹脂は、PPS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、LCP、ナイロン6、ナイロン66、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。絶縁部材を備えることで、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高められる。
【0085】
なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。