【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、「歯科臨床実習用ヒト型患者ロボットシミュレータ」に関する委託開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記患者対応シナリオを設定する患者対応シナリオ設定部を備えるとともに、該患者対応シナリオ設定部によって設定された前記患者対応シナリオを変更する患者対応シナリオ変更部を備えた
請求項1乃至16のうちいずれかに記載の医療用実習装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、様々な患者を想定し、実際の施術に即した、より臨場感のある実習を行うことができる医療用実習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、少なくとも口部、眼球、瞼、眉毛、首、腕のうちの少なくともひとつ、あるいは二つ以上を組み合わせて動作を行う駆動機構を有する人体模型と、実習者の音声を聞き取り認識する音声認識部と、模擬患者の音声を出力する音声出力部と、前記模擬患者に関する情報について、少なくとも年齢層、性別、体質、常用薬、及び病状のうちいずれかひとつ、あるいは少なくとも二つ以上を組み合わせて患者情報を設定する患者情報設定部と、予め記憶された複数の医療対処項目からなる標準医療行為シナリオから少なくとも一つのシナリオを選択可能とした標準医療行為シナリオ設定部と、前記患者情報設定部で設定した前記模擬患者に関する患者情報と、前記標準医療行為シナリオを組合せして作成した患者情報に対応した患者対応シナリオ及び前記標準医療行為シナリオを記憶する記憶部と、前記標準医療行為シナリオ設定部によって設定された前記標準医療行為シナリオ、及び、前記患者対応シナリオに基づいて前記駆動機構の動作制御、並びに前記音声認識部及び前記音声出力部の制御を行う制御部とを備えた医療用実習装置であることを特徴とする。
【0011】
上述の少なくとも口部、眼球、瞼、眉毛、首、腕のうちの少なくともひとつ、あるいは二つ以上を組み合わせて動作を行う駆動機構を有する人体模型は、少なくとも開閉可能な口部を有していれば、眼部が瞬きや目線方向を変えるなどの動作ができてもよく、表情をつかさどる頬部や眉毛などが駆動してもよい。さらに、頭部模型単体以外に、頭部模型に首部及び胸部、あるいは腕部も含めた上半身模型や、さらに下半身を備えた全身模型であってもよい。
【0012】
上述の前記患者情報設定部で設定した前記模擬患者に関する患者情報と、前記標準医療行為シナリオ設定部により設定した標準医療行為シナリオとの組合せに応じた患者対応シナリオは、例えば、老人である患者に対する抜歯の実習の場合、患者が老人である場合の抜歯のシナリオに基づいて動作制御される。なお、個別の標準医療行為の実習内容に応じた患者対応シナリオを患者情報ごとにあらかじめ登録しておき、読み出して患者対応シナリオとしてもよい。また、あらかじめ登録された個別の標準医療行為の患者対応シナリオを患者情報に応じて改変して患者対応シナリオとしてもよい。
【0013】
さらに、複数の標準医療行為の実習内容が選択され、連続して実習する場合における患者対応シナリオは、選択された複数の標準医療行為の実習内容に応じた連続する患者対応シナリオを組み合わせた新たな連続患者対応シナリオをあらかじめ登録しておき、読み出して患者対応シナリオとしてもよい。また、あらかじめ登録された連続する患者対応シナリオのうち選択された個別の標準医療行為の実習内容を組み合わせて連続患者対応シナリオを生成する新たな連続患者対応シナリオとしてもよい。
【0014】
また、前記患者対応シナリオ設定部により設定した患者対応シナリオとの組合せに応じた患者対応シナリオを記憶する記憶部は、一時的に記憶するキャッシュや、ハードデスクやRAMなどの記憶部で構成することができる。
【0015】
上述の患者情報設定部は、操作ボタンやGUIの操作による設定部のみならず、診察券や薬手帳などに設けたRFIDや二次元バーコードなど、患者を特定する識別子を検出することで設定する設定部、あるいは、例えば、患者を撮影した画像を用いた画像検出を利用した設定部、音声指示の認識による設定部など、様々な形態での設定部とすることができる。
【0016】
なお、医療対処項目、つまり標準医療行為の実習内容の項目としては、医療面接、口腔検査、歯牙の切削、ラバーダム防湿、印象採得、麻酔、抜歯、根管治療、処方薬の説明及び矯正などとすることができる。また、患者情報のうち年齢層は、子供、成人及び老人とし、体質(特異体質)は、妊婦やアレルギーなどとし、常用薬は、常用薬の有無以外にも、禁忌などの注意が必要な常用薬であるかいないかとし、さらに、病状は治療中の病状のみならず、妊娠中あるいは健康状態などを含む既往歴ともすることができる。
【0017】
この発明により、様々な患者を想定し、実際の施術に即した、より臨場感のある実習を行うことができる。
詳しくは、少なくとも口部、眼球、瞼、眉毛、首、腕のうちの少なくともひとつ、あるいは二つ以上を組み合わせて動作を行う駆動機構を有する人体模型と、実習者の音声を聞き取り認識する音声認識部と、模擬患者の音声を出力する音声出力部とを備えているため、実習者の音声を音声認識部で認識しながら、頭部模型の口部を開閉動作しながら、模擬患者の音声を出力できるため、実際の施術に即した、臨場感のある実習を行うことができる。
【0018】
また、前記模擬患者に関する情報について、少なくとも年齢層、性別、体質、常用薬、及び病状のうちいずれかひとつ、あるいは少なくとも二つ以上を組み合わせて患者情報を設定する患者情報設定部と、予め記憶された複数の標準医療行為の医療対処項目の標準医療行為シナリオから少なくとも一つの標準医療行為シナリオを選択可能とした標準医療行為シナリオ設定部と、前記患者情報設定部で設定した前記模擬患者に関する患者情報と、前記標準医療行為シナリオ設定部により設定した標準医療行為シナリオとの組合せに応じた患者対応シナリオを記憶する記憶部と、前記標準医療行為シナリオ設定部によって設定された前記標準医療行為シナリオ、及び、前記患者情報設定部で設定した前記患者情報の組合せに応じた前記患者対応シナリオに基づいて前記駆動機構の動作制御、並びに前記音声認識部及び前記音声出力部の制御を行う制御部とを備えたことにより、患者年齢、性別、アレルギーなどの体質、さらに常用薬の有無などの患者情報を設定できるとともに、実習内容に即した標準医療行為シナリオに患者情報を反映させた患者対応シナリオを生成することができる。
【0019】
また、患者情報を設定できるとともに、実習内容に即した標準医療行為シナリオに患者情報を反映させた患者対応シナリオに基づいて、少なくとも口部の開閉動作を担う駆動機構の動作制御、並びに前記音声認識部及び前記音声出力部の制御を行うため、例えば、老人や子供、あるいは妊婦など様々な患者に対する実際の施術に即した、より臨場感のある実習を行うことができる。
【0020】
この発明の態様として、前記患者情報設定部を、老人患者を模した老人モードと、成人患者を模した成人モードとを少なくとも設定可能に構成し、前記制御部を、前記老人モードの設定によって、前記成人モードの設定に比べて前記口部の開口角度を狭く制御する構成とすることができる。
この発明により、一般的な成人モードに比べて、口部の開口角度が小さく、施術しにくくなる老人モードにより、老人患者に対する実際の施術に即した、より臨場感のある実習を行うことができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記制御部を、前記老人モードの設定によって、前記成人モードの設定に比べて、前記音声認識部の認識度合いを低く制御する構成とすることができる。
上述の認識度合いは、実習者による発声のタイミング、声量、音程、滑舌度合、速さなどによる音声の音声認識部における認識率であり、認識度合いが低いとは、同様の発声に対する認識率が低いことを意味している。
この発明により、患者との受け答えにおいて、例えば、ゆっくりと、はっきりとした明瞭な発声を行うなど、実際の老人患者に対する施術に即した、さらに臨場感のある実習を行うことができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記制御部を、前記老人モードの設定によって、前記成人モードの設定に比べて、前記音声認識部の認識音量を大きく制御する構成とすることができる。
上述の認識音量は、上記認識度合に影響を及ぼす要因のひとつであり、認識可能な音量の閾値を示している。
この発明により、患者との受け答えにおいて、例えば、大きな声で発声するという、耳の遠い実際の老人患者に対する施術に即した、さらに臨場感のある実習を行うことができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記制御部を、前記老人モードの設定によって、前記音声出力部が出力する出力音声を、前記老人患者の声を模した老人音声を出力するとともに、前記成人モードの設定によって、前記出力音声を、前記成人患者の声を模した成人音声を出力する制御を行う構成とすることができる。
【0024】
この発明により、成人モードでの成人音声に比べて、高齢者である老人の音声での受け答えを体験でき、実習の臨場感をより向上させることができる。なお、成人音声及び老人音声ともに、性別ごとに設定することが、臨場感の向上のためにより好ましい。
【0025】
またこの発明の態様として、前記制御部を、前記老人モードの設定によって、前記成人モードの設定に比べて、前記駆動機構の駆動速度を遅く制御する構成とすることができる。
この発明により、例えば、発声する際の口部の開閉動作や痛みに対する生体反応などが、成人モードでの動作速度に比べて遅く動作制御されるため、実習の臨場感をより向上させることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記制御部を、前記老人モードの設定によって、前記成人モードの設定に比べて、前記音声認識部の認識に対する前記音声出力部の音声出力開始タイミング及び前記駆動機構の駆動開始タイミングを遅く制御する構成とすることができる。
【0027】
この発明により、例えば、発声する際の音声出力開始タイミングや、実習者の発声を音声認識してからの駆動開始タイミング、さらには、痛みに対する生体反応などが、成人モードでの開始タイミングに比べて遅く制御されるため、実習の臨場感をさらに、より向上させることができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記患者情報設定部を、子供患者を模した子供モードを設定可能に構成し、前記制御部を、前記子供モードの設定によって、前記出力音声を、前記子供患者の声を模した子供音声を出力する制御を行う構成とすることができる。
【0029】
この発明により、成人モードでの成人音声に比べて、子供の音声での受け答えを体験できるため、様々な患者に対する実習の臨場感をより向上させることができる。なお、子供音声も、成人音声や老人音声と同様に、性別ごとに設定することが、臨場感の向上のためにより好ましい。
【0030】
またこの発明の態様として、前記患者情報設定部を、選択操作によって前記患者情報を設定するように構成することができる。
この発明により、実習者や実習教官の設定操作を受け付けて、確実に患者情報を設定することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記患者情報設定部への操作を、GUIにおける操作部又は表示装置の表示画面に設けられた操作部で構成することができる。
上述のGUIにおける操作部は、例えば、ネットワークに接続されたタブレットに表示する操作部などとすることができ、また、表示装置の表示画面に設けられた操作部は、例えば、タッチパネルで構成する表示装置の表示画面とすることができる。
この発明により、実習者や実習教官は、視覚に基づき、画面へのタッチや、タッチペンによる操作により正確な設定操作を行って、確実に患者情報を設定することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記患者情報設定部を、前記患者情報を記憶したRFID、カード又は識別コードから読み取って前記患者情報を設定する患者情報設定読取部で構成することができる。
この発明により、実習者や、当該実習者を指導する実習教官は、設定のために操作することなく、正確に患者情報を設定することができる。なお、非接触による読み取り可能な構成であれば、患者情報を設定する際におけるインフェクションコントロールを実行することができる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記記憶部に、前記患者情報設定部で、前記常用薬に関する前記患者情報が設定された際において、前記常用薬に関する前記患者情報に対する前記実習者の質問に応答する常用薬情報を記憶することができる。
この発明により、例えば、常用薬の有無など、より現実の診察に即した実習を行うことができる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記常用薬に関する前記患者情報と、実習者が処方する処方薬に関する処方薬情報とを比較して、禁忌等の注意事項について判定する禁忌判定部を備えることができる。
【0035】
この発明により、例えば、特に高血圧や心臓病、脳梗塞、糖尿病、抗アレルギーなどの薬を常に服用していることが多い老人患者の場合に多い常用薬と、処方薬との間の禁忌等を禁忌判定部で判定して確認し、警報の報知をしたり、表示部に表示したり、評価部に評価結果を記憶したりすることができる。したがって、常用薬に対する禁忌を踏まえた、つまり、危険な状態とならないように注意が必要な診療を模した、より臨場感のある実習を行うことができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記患者対応シナリオを設定する患者対応シナリオ設定部を備えるとともに、該患者対応シナリオ設定部によって設定された前記患者対応シナリオを変更する患者対応シナリオ変更部を備えることができる。
この発明により、例えば、実習教官は実習者の実習状況に応じて、先に設定した患者対応シナリオを変化させながら、変化に富んだ様々な状況での実習を行うことができる。
【0037】
またこの発明の態様として、前記患者情報設定部で設定した設定モードに応じて血圧、脈拍、心電位、筋電位、血中酸素量等の生体信号を出力する生体信号出力部を備えることができる。
この発明により、例えば、痛みによって、脈拍が上がっている、あるいは、麻酔によって血圧が下がっているなど、実際の治療に即した、より具体的で臨場感のある実習を行うことができる。なお、生体信号出力部は、生体信号を表示する表示画面としてもよく、例えば、人体模型の腕から生体信号を触診や血圧計等の生体信号測定器具を介して得られるように構成してもよい。また、患者の容態の急変状態を起こさせて対応実習を行なうこともできる。
【0038】
またこの発明の態様として
、前記口部に、前記
患者情報設定部で設定した
設定モードに応じた咬合模型を交換可能な装着を許容する口腔部を設けることができる。
この発明により、上述したような老人モード、子供モードなど、設定した患者情報に応じた咬合模型を口腔部に装着して、リアリティのある実習を行うことができる。
【0039】
またこの発明の態様として
、前記
患者情報設定部で設定した
設定モードに応じたマスク及びカツラを交換可能な装着を許容する
頭部模型を備えることができる。
この発明により、上述したような老人モード、子供モードなど、設定した患者情報に応じた見た目の模型を用いて、さらにリアリティのある実習を行うことができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、様々な患者を想定し、実際の施術に即した、より臨場感のある実習を行うことができる医療用実習装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明による医療用実習装置1について、
図1乃至3とともに説明する。
図1は医療用実習装置Mの概略斜視図を示し、
図2は医療用実習装置Mにおける機能的ブロック図を示し、
図3は擬似患者体2における関節機構28について説明する概略図を示している。
【0043】
図4は関節機構28の説明図を示し、
図5は擬似患者体2の頭部模型2aにおける顔面の動きについての説明図を示し、
図6は擬似患者体2の頭部模型2aにおける顔面の正面図を示している。
なお、
図6において、頭部模型2aの内部構造を明示するため一部を切欠いて図示している。
【0044】
図7は擬似患者体2の頭部模型2aの概略縦断面図を示し、
図8は顎模型23の概略縦断面図を示し、
図9は眼球駆動部21aの斜視図を示し、
図10乃至12は眼球駆動部21aの説明図を示している。
【0045】
詳しくは、
図10(a)は、擬似眼球26を正面に向けた状態の眼球駆動部21aの側面図を示し、
図10(b)は同状態の平面図を示している。同様に、
図11(a)は、擬似眼球26を右に向けた状態の眼球駆動部21aの側面図、
図11(b)は同状態の平面図を示し、
図12(a)は、擬似眼球26を左に向けた状態の眼球駆動部21aの側面図を示し、
図12(b)は同状態の平面図を示している。
【0046】
また、
図13は別の眼球駆動部21aの斜視図を示し、
図14は擬似患者体2の各部の動きをまとめた表である動作設定テーブルを示し、
図15は駆動制御設定テーブルを示し、
図16はシナリオ登録テーブルを示し、
図17は患者情報設定部の概略図を示し、
図18は別の患者情報設定部の概略図を示し、
図19は常用薬のシナリオの例を示している。
【0047】
さらに、
図20,21は実習の全体フロー図を示し、
図22は患者のモード設定フロー図を示し、
図23は常用薬モードの実習フロー図を示し、
図24は妊婦モードの実習フロー図を示し、
図25はアレルギーモードの実習フロー図を示している。
図26は薬局における薬の処方実習装置の例を示している。また、
図27は在宅診療装置の例を示す。
【0048】
医療用実習装置Mは、
図1に示すように、診療器具11a〜11eを備えた器具台1と、患者を模した擬似患者体2と、その擬似患者体2を載せて治療を行うための診療台3と、GUIとして、各種情報を表示し、擬似患者体2に対する各種指示操作を受け付ける情報処理装置4とで構成している。
【0049】
器具台1は、診療台3にアームを介して回動可能に取付けたテーブル1aの手前側に器具ホルダ1bを備え、器具ホルダ1bにエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピースなどの切削工具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジなどで構成する診療器具11(11a〜11e)を着脱可能に取付けている。
【0050】
さらに、テーブル1aの上方には表示部5を配置し、患者のカルテを呼出表示したり、実習中の診療器具の操作内容などがモニタできるように構成している。
また、診療器具11は、水供給源、エア供給源やエア吸引部に接続されて駆動するが、これら機構については公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
診療器具駆動部及び操作部Aは、診療器具11を駆動する駆動部とともに、図示省略する口腔カメラ、光重合照射器、及びフートコントローラ12aを組み合わせて構成し、さらに、これらの駆動状態を検出するために診療器具状態検出部Bを設けている(
図2参照)。
【0052】
したがって、診療器具駆動部及び操作部Aは、診療器具11をオン、オフ駆動し、診療器具状態検出部Bは、器具ホルダ1bに設けられたセンサによって、各診療器具11が取り上げられたことを検出したり、フートコントローラ12aの操作を検出して、使用状態のオン、オフを検出している。しかしながら、診療器具本体に操作部を有する診療器具である場合には、当該操作部の操作をセンサによって検出してもよい。
【0053】
また、診療器具状態検出部Bは、診療器具11の回転数又は回転数に相当する電圧値、電流値、又は診療器具が駆動するエア圧、エア流量、周波数、振動数、又は診療器具11が擬似患者体2に接触する際の押圧力や診療台3に接続されたフートコントローラ12aの操作信号を検出することができる。
【0054】
また、器具ホルダ1bとして、図示するように器具台1に設けられるホルダのみならず、診療台3に設けられるホルダや、その他の診療器具11を着脱可能に取付け得るホルダであってもよい。
【0055】
擬似患者体2は、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成するとともに、その内部に、後述する擬似患者体2の姿勢、表情を変化させる擬似患者体駆動部D、擬似患者体2に対する診療状態を検出する擬似患者体の受診状態検出部C(いずれも
図2の機能ブロック図参照)を備え、頭部模型2aは全体に柔軟性材料からなる人工皮膚を被せて構成するとともに頭髪となるカツラを被せることで、人体に極めて酷似させた、いわゆるアンドロイド型のロボットとして構成している。
【0056】
このように構成する擬似患者体2は、人と同様に診療台3に載せられて、種々の処置を行うことができ、後述する姿勢、顔の表情を変化させるため機械的、電気的、流体的なエネルギー(駆動媒体)を供給する駆動源に接続されている。なお、擬似患者体2は、診療台3と一体型あるいは連動するように構成してもよく、また、診療台3を用いずに擬似患者体2だけで独立して動作する構成としてもよい。擬似患者体2の詳細については後述する。
【0057】
診療台3は、
図3に示すように、基台30に昇降可能に載置された座部シート3aと、その座部シート3aの後方に連接された傾動可能な背板シート3bと、その背板シート3bの上端に連接された傾動可能なヘッドレスト3cとを備え、これらを診療状況に応じた最適位置に制御するため座部シート昇降部、背板シート傾倒部、ヘッドレスト傾倒部(
図2参照)が設けられ、フートコントローラ12aによって操作制御されるように構成している(診療台駆動部及び操作部J)。
【0058】
このような診療台駆動部及び操作部Jとして、座部シート昇降部、背板シート傾倒部には、従来技術の油圧シリンダや電動モータ等を用いることができ、ヘッドレスト傾倒部には、電動モータ等を使用することができる。
【0059】
また、この診療台3には、スピットン3d及び治療用スタンドポール6が付設され、治療用スタンドポール6には、途中より分岐し、回動可能に突出させたアーム61、62を備えている。また、アーム61、62には、それぞれ無影灯63と、実習者の診療器具11の扱いや動き、擬似患者体2の姿勢、動き、表情の変化を撮像する撮像部を構成する撮像カメラ64、治療時の音声などを集音するためのマイク65を設置している。
【0060】
なお、スピットン3dは、口腔内を濯ぐ際などに給水する給水栓と、排唾鉢とを備えている。更に、擬似患者体2の背中又は腹部では診療台2に配設された電気系路、油圧系路又はエア系路等と接続する接続部(不図示)が設けられている。
【0061】
情報処理装置4は、例えばワークステーション等で構成され、PC本体41と、液晶モニタ等の表示部42と、キーボード、マウス等の操作部43とで構成し、GUIとして、表示部42に各種の情報を表示し、キーボード、マウス等の操作部43で各種の指示操作を受け付ける構成である。
【0062】
表示部42は、例えば、
図17に示すような操作設定画面100において、撮像カメラ64で撮影した実習時の擬似患者体2の受診状況を表示したり、必要な情報を随時呼出して表示できる他、PC本体41に内蔵した特定のプログラムを稼動させることで、擬似患者体制御操作部G(
図2参照)としても機能し、同じく患者情報設定部としても機能する。実習教官が、実習者の状況を把握しながら選択操作することで、擬似患者体2の動作や、表情をコントロールできるように構成している。
【0063】
また、後述するように、表示部42に表示したセンサ選択ボタン(図示省略)を選択操作することによって、擬似患者体2の各部に内蔵した各種のセンサSを呼び出して、検知信号をモニタ表示させるように構成してもよい。
【0064】
図2は、医療用実習装置Mの機能ブロック図を示している。
図2に示すように、中央に示し、CPUで構成する制御部Iによって、各機能ブロックA〜Jとして機能する機器や機構が制御されるように構成されており、制御部Iと各機能ブロックとは直接信号線あるいは院内LANなどで接続されている。
【0065】
診療器具状態検出部Bは、上述の診療器具駆動部及び操作部Aによって駆動される各診療器具11、口腔カメラ、光重合照射器、フートコントローラ12aの実習中の操作状態、つまり、オン、オフ、回転数、負荷などを検出する。このため、エアータービンハンドピース状態検出部a、マイクロモータハンドピース状態検出部b、スリーウエイシリンジ状態検出部c、スケーラ状態検出部d、バキュームシリンジ状態検出部e、口腔カメラ状態検出部f、光重合照射器状態検出部g、フートコントローラ操作状態検出部hを組み合わせて構成されている。
【0066】
擬似患者体の受診状態検出部Cは、擬似患者体2に内蔵した各種センサSや、診療時の状態を撮像する撮像部64で構成されている。各種センサSとしては、後述するように、擬似患者体2の頬部に対する接触を検出する検出部a、胸に対する接触を検出する検出部b、歯牙への衝撃や圧力を検出する検出部c、歯牙の温度上昇を検出する検出部d、擬似患者体姿勢検出部e、撮像手段f、マイクなどを含んでおり、これらのセンサSや撮像部f、マイクによって、実習中に擬似患者体2に対して処置、治療時に与えられる刺激の有無、度合いが検出され、受診状態検出信号として出力されるように構成している。
【0067】
擬似患者体駆動部Dは、眼球駆動部a、瞼・眉毛駆動部b、下顎開閉駆動部c、腕駆動部d、音声出力部e、音声認識部fなどを組み合わせて構成され、人体に酷似させた擬似患者体2の頭部模型2aにおける顔面や身体に組み込まれ、これらの駆動を組み合わせることによって擬似患者体2の頭部模型2aにおける顔面の表情、身体の動作などを実現している。
【0068】
記憶部Eは、擬似患者体の受診状態検出部Cから出力された受診状態検出信号や、実習結果評価演算部(禁忌判定部)Fで使用される評価基準情報、後述する標準医療行為シナリオ、設定した患者情報に沿った患者対応シナリオや、設定した患者情報、常用薬の禁忌情報など実習に必要な各種データや制御プログラム等を記憶している。
【0069】
実習結果評価演算部(禁忌判定部)Fは、実習者による実習終了後に、予め記憶部Eに記憶している評価基準と、診療器具状態検出部Bで検出した診療器具状態検出信号及び又は擬似患者体の受診状態検出部Cで検出した診療状態検出信号とを比較し、所定のアルゴリズムに基づいて実習の評価結果を出力して、実習者の技能に応じてランク付けしたり、禁忌の判定をおこなったり、評価結果に応じて不適切な診療項目を情報処理装置4の表示部42や器具台1の表示部5に表示できるように構成している。
【0070】
また、擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gは、擬似患者体2に組み込まれた擬似患者体駆動部Dの動きを制御し、頭部模型2aの表情を設定する表情設定部a、標準医療行為の実習内容に応じた実習シナリオを設定する標準医療行為シナリオ設定部b、表示部に表示する表示内容を設定する表示情報設定部c、患者情報設定部dで構成している。なお、患者情報設定部dは、模擬患者の性別を設定する性別設定部d−1、模擬患者の年齢層(成人・老人・子供等の患者モード)を設定する年齢設定部d−2、患者モードに応じて擬似患者体駆動部Dの動きの速度を設定する動作速度設定部d−3、常用薬の有無や種類を設定する常用薬設定部d−4、患者のアレルギー体質の有無の設定を行う患者体質設定部d−5、後述する音声認識・出力部21fによる音声認識度を設定する音声認識度設定部d−6、擬似患者体2の音声出力部21fから出力する音声の男女、子供、成人等を区別して音声出力を設定する音声出力設定部d−7、擬似患者体2の音声認識・出力部21fから出力する音声の音声出力を設定する音量設定部d−8、生体信号出力部Kへの出力となる患者の血圧、脈拍等を例えば緊急状態となるように設定して実習者の対応実習を行う生体信号出力設定部d−9、及び患者対応シナリオ及び患者情報を組み合わせて設定する患者対応シナリオ組み合わせ設定部d−10で構成している。したがって、例えば、表情設定部aにより、例えば、擬似患者体2の嘔吐、苦痛、不安、リラックス、不快などの表情変化を再現できるように構成している。
【0071】
このように構成した擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gを設けることにより、実習者の治療行為が擬似患者体2の表情や身体の動作に自動的に反映される本来の制御動作に加えて、後述するように、実習教官が、実習者の状況を判断して、上記表示選択ボタンを選択操作することで、擬似患者体2の表情をコントロールすることができる。
【0072】
情報処理装置4の表示部42や器具台1の表示部5で構成する表示設定部Hは、PCモニタやタブレットで構成する表示部aと、マウスなどで選択する設定操作部bとを組み合わせて構成している。この情報処理装置4の表示部42の設定操作部bを用いて上記擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gの操作を画面上でタッチパネルやタッチペン、マウス、キーボード等を使用して操作できる。
【0073】
このように医療用実習装置Mは、診療器具11を備えた診療ユニット1と、診療を受ける患者を模した擬似患者体2と、その擬似患者体2が載置される診療台3とで構成するとともに、診療器具駆動部及び操作部A、診療器具状態検出部B、受診状態検出部C、擬似患者体駆動部D、記憶部E、実習結果評価演算部(禁忌判定部)F、擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)G、表示設定部H、制御部I、及び診療台駆動部及び操作部Jを有するため、擬似患者体の受診状態検出部Cが出力する受診状態検出信号とに基づいて、擬似患者体2の表情を変化させたり、動作させることができる。
【0074】
患者情報設定読取部(常用薬読取部)Lは、RFIDやバーコード等で予め設定した患者の常用薬や体質、病歴等の患者情報を持ち歩き可能にしておき、それを読み取りできるようにしたものである。将来予定されているRFIDやICカード化された保険証やお薬手帳の情報がこれらの患者情報として保存されるので、それらの情報の読取装置として使用される。患者情報設定読取部(常用薬読取部)Lは実習装置自体若しくは、その近傍に配置され、RFIDリーダ若しくは、カードリーダに該当するものである。
【0075】
次に、受診状態検出信号や診療器具状態検出信号に基づいて、表情を変化させたり、動作する擬似患者体2における各部について詳細に説明する。
擬似患者体2は、
図3に示すように、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成し、頭部模型2aと胴体模型2bとの間、胴体模型2bと左右の腕模型2cとの間、胴体模型2bと左右の脚部模型2dとの間、さらには、左右の腕模型2cのひじ部、脚部模型2dのひざ部に関節機構28を設け、人体の関節と同様な動きとなるように屈曲自在に構成している。
【0076】
関節機構28は、骨格を構成するため相互に枢着された2本の主ロッド28a、28bに、エアシリンダ28dを付設し、エアシリンダ28dの一端に設けたロッド28eを主ロッド28aに形成した突部28fに固着し、エアシリンダ28dの他端を、主ロッド28bを固定している部材28gより突出した小ロッド28hに枢着して構成している。
このように構成した間接機構28は、エアシリンダ28dのロッド28eを進退させることで、2本の主ロッド28a、28bによって屈曲動作可能となっている。
【0077】
例えば、腕模型2cのひじ部の詳細を図示する
図4に示すように、エアシリンダ28dのロッド28eを伸長させることで、ひじの伸ばし、曲げができるように構成され、他の関節機構28も同様な構造で構成している。
【0078】
なお、腰及び膝の関節機構28などはエアシリンダ28dを駆動させずとも、診療台3の位置変化に応じて受動的に動く構成にしてもよい。また、首、腰、腕及び膝の関節機構28などの駆動は、ここではエアシリンダ28dを使用して説明しているが、エアシリンダ28dの代わりに各種の電気モータや油圧シリンダを採用してもよいことは勿論である。
【0079】
擬似患者体2は、顔面の各部、眼球、瞼、眉毛、頬、口、唇、首を駆動する駆動部の他、実習者の音声を認識するとともに音声を出力するため音声認識・出力部21fを備えており、これらの擬似患者駆動部Dを駆動することで、人に酷似した顔面表情を作れるように構成している。
【0080】
例えば、
図5に示すように、擬似患者体2は、眉の上下可動a、瞼の開閉b、眼球の上下左右移動c、口部の開閉動作dができるように構成している。また、擬似患者体2は、接触センサが内蔵された頬部、また、人と同じように、前後方向の屈曲f、左右への振れg、左右への傾きh、左右への回転を可能に構成した首部を有している。なお、頬に設けた接触センサSによる検出信号は、擬似患者体の受診状態検出部Cに送信されるように構成している。
【0081】
次に、
図6、
図7とともに頭部模型2aの内部構造について、さらに詳細に説明する。
頭部模型2aは、
図6、
図7に示すように、硬質樹脂で形成された頭骨部材24を、皮膚に似た柔らかさのシリコンゴムで形成し、表面が適宜着色加工された皮膚部材24aで覆って構成している。なお、頭骨部材24の内部には、頑丈な部材で構成するフレーム25が組み込まれている。
【0082】
フレーム25は、上顎骨部材25aと下顎骨部材25cとを顎関節部25bで連結するとともに、エアシリンダ21dを付設し、エアシリンダ21dのロッド21d’を伸張することで、下顎骨部材25cを、顎関節部25bに対して回動しながら下方向に開くように構成している。逆に、エアシリンダ21dのロッド21d’を縮小させることで、下顎骨部材25cを、顎関節部25bに対して回動しながら上方向に閉じるように構成している。
【0083】
また、フレーム25には、擬似眼球26を有した眼球駆動部21a、瞼駆動部21b、及び眉毛駆動部21c及び音声認識・出力部21f、首駆動部27を備えている。眼球駆動部21a、瞼駆動部21b、眉毛駆動部21c及び音声認識・出力部21fは、いずれも擬似患者体駆動部Dの眼球駆動部a、瞼・眉毛駆動部b、音声出力部e、音声認識部f、首駆動部gに対応している。
【0084】
瞼24bは、その一端をフレーム25に対して回転可能に固着した部材21bbを有し、これをエアシリンダ(瞼駆動部)21bのロッド21b’を進退させることで、擬似眼球26の前方で上下させて、瞼24bを開閉させるように構成している。
【0085】
また、眉毛駆動部21cは、フレーム25より突出させた突出片21caに枢着した部材21cbにエアシリンダ(眉毛駆動部)21cのロッド21c’を固着し、このロッド21c’を進退させることで、人工皮膚の眉毛に相当する部分に設けた可動部材24cを上下に移動させることにより、眉毛を上下に移動させる構成になっている。
【0086】
首27は、首駆動部gによって頭部模型2aと胴体模型2bとを前後、左右に傾倒可能に連結するジョイント機構27aを備え、このジョイント機構27aより下方に延びたロッドを、鞘部27bに回動可能に収容している。これにより、首27は、矢印で示すようにジョイント機構27aによって前後に+10度から−30度まで、左右に±45度の範囲で傾倒でき、さらにロッドを鞘部27b内で回動させることで、左右に±45度の範囲で回動できるように構成している。
また、左右の頬には、診療中の術者の不用意な接触を検出する接触センサSを内蔵している(
図5(d)参照:擬似患者体の受診状態検出部Cの頬部の接触検出部a)。
【0087】
顎模型23は、上顎模型23aと下顎模型23cとを組み合わせて構成されており、それぞれに鉄片23eを設けて、相対する上顎骨部材及び下顎骨部材に設けたマグネット25dに磁力で着脱可能に構成している。
【0088】
上顎模型23a及び下顎模型23cには、歯牙23dが1本毎に交換可能に植立されている。これによって、切削実習をした際に消耗した歯牙を交換したり、虫歯や歯石を付けた特別な歯牙に交換したりすることができる。また、顎模型23も子供用の小さい模型や、歯牙23dが植立されていない無歯顎の模型にも交換可能に構成している。なお、歯牙23dとして、例えば、特開平5−27675号公報に記載されている実習用歯牙と同様な構成を採用してもよい。
【0089】
また、上顎模型23aや下顎模型23cは、実習時の処置、治療を検出するため、以下で説明するセンサSを備えている。より具体的には、診療器具11が歯牙23dに接触したときの衝撃を検出する衝撃センサ、切削治療時に歯牙や上下顎に加えられる圧力を検出する圧力センサ、振動を検出する振動センサ、温度上昇(例えば、印象採得時、レーザ切削時など)を検出する温度センサ、歯牙の切削度合いを検出する導通あるいは抵抗値の変化を検出するセンサが設けられている。
【0090】
これらのセンサSから受診状態検出信号を制御部Iに送信することで、実習時における擬似患者体2の受診状態を客観的に把握でき、受診データとして利用できるように構成している。これらのセンサSによって、擬似患者体の受診状態検出部Cを構成し、さらに診療状態検出信号として出力されて、情報処理装置4に送信される構成である。
【0091】
舌部材23fや喉部材に内設された接触センサSを図示する
図8に示すように、接触センサSの検出信号は、擬似患者体の受診状態検出部Cから送信され、受診状態検出信号として出力される。したがって、診療器具11が、接触センサSが内蔵された舌部材23fの奥部や喉部材に接触した場合には、擬似患者体2は、後述するように、実際の患者と同様に、嘔吐の表情を表すことができる。
【0092】
擬似眼球駆動部21aの斜視図である
図9に示すように、中心部分に瞳が描かれた半球状の擬似眼球26には、眼球の後方方向に延びる棒状部材26aが設けられている。棒状部材26aは、枠体21acの上方に突出させた支持部材21abに形成した孔21aaに遊嵌され、さらに、枠体21acの開口部で互いに交差方向に設置された2つの部材21al,21akに形成された長孔21am,21anに棒状部材26aが傾いてもこじれない程度に遊びを持って挿入されている。2つの部材21al,21akには、枠体21acに取付けたステッピングモータ21ag,21ahの回転軸に連結されたねじ軸21ai,21ajと螺合する連結部21ao,21apを設けている。
【0093】
したがって、2つのステッピングモータ21ag,21ahを回転制御し、2つの部材21al,21akを枠体21ac内で移動させることで、棒状部材26aが移動して、棒状部材26aが移動擬似眼球6を、孔21aaを中心点として左右、上下に向けるようにしており、このような仕組みより、擬似眼球26は、上下に15度ずつ、左右に30度ずつの範囲で傾動可能に構成されている。
【0094】
なお、
図13に示すように、
図10に示す擬似眼球駆動部21aとは異なり、ステッピングモータの代わりに2つのエアシリンダ21aq,21adを用い、それぞれのロッドの先端に、長孔21am,21anを形成した部材21ae,21afを設け、それらを枠体21ac内で交差させ、2つの部材21ae,21afに形成した長孔21am,21anの枠体21ac内での重合位置を変えることで、2つの長孔21am,21anの重合位置に挿入された、擬似眼球26の棒状部材26aを前後、左右に移動し得るよう構成してもよい。
【0095】
また、擬似患者体2には、前述した顎模型以外に、胸への接触、麻酔部位の検出、首、腰、腕などの関節機構28の角度検出のためにセンサSを設けて擬似患者体の受診状態検出部Cを構成しており、受診状態検出信号を制御部Iに送出するように構成している。
【0096】
より具体的に説明すると、頬部の接触検出部(擬似患者体の受診状態検出部Cの頬部の接触検出部a)は、
図5で例えば擬似患者体2の両頬部における皮膚部材の下に設けた接触センサS又は圧力センサS等で構成され、実習者が診療器具11を操作する際に、頬に手をレストさせると、患者にとって不快な診療行為として検出する。
【0097】
胸部の接触検出部(擬似患者体の受診状態検出部Cの胸の接触検出部b)は、例えば擬似患者体2の胸に設けた接触センサS又は圧力センサS(不図示)等で構成され、実習者が胸に触れると、不快な診療行為として検出する。特に女性の患者の場合では、実習者が胸に触れることは、絶対に避けるべき行為であるため、そのような不快な診療行為を検出し、擬似患者体に不快感を示す表情に変化するように設定している。
【0098】
上述の擬似患者体駆動部Dを、エアシリンダを用いて構成する場合、駆動用のエアは、コンプレッサ(不図示)などから供給されるが、電気モータによって駆動されてもよく、特に駆動方式は制限しない。
【0099】
また、
図7に示す音声認識・出力部21fは、
図2の擬似患者体駆動部Dの音声出力部e及び音声認識部fに該当し、擬似患者体2の頭部模型2a内に組み込んだ小型マイクとスピーカで構成され、当該マイクで実習者の音声を検出し、図示しない音声認識部で音声認識するとともに、予め発生すべき音声を記憶部Eに記憶させておき、擬似患者体の受診状態検出部Cや診療器具状態検出部Bの状況や、診療時に上述のセンサSで検知した刺激に応じて、その場に応じた音声の他、呼吸息なども音声として出力するとともに、実習者の音声を認識する。具体的には、例えば、診療時に苦痛を感じた場合には「痛い」、診療終了時にはお礼の言葉などの音声を出力するように構成している。
【0100】
なお、簡略化する場合には、不快感を示す場合などに、単なるブザー音をならすように構成してもよい。また、擬似患者体2の胴体模型2bの胸部分には、空気袋を内蔵し、呼吸動作と併せて空気袋の一端をエアシリンダで巻き取る事によって胸が上下に動くように構成してもよいし、表情の変化に併せて呼吸動作も変化させてもよい。
【0101】
歯牙の衝撃又は押圧検出部(擬似患者体の受診状態検出部Cの歯牙への衝撃又は押圧検出部c)としては、例えば歯牙23dの内部又は底部に接触センサS、衝撃センサS又は圧力センサSを設けて構成している。これにより、診療器具11が歯牙23dに衝突したり、切削治療の際に必要以上に力を入れたり、衝撃を加えているなどの不適切な診療行為を検出することができる。
【0102】
歯牙の温度上昇検出部(擬似患者体の受診状態検出部Cの歯牙への温度上昇検出部d)は、例えば歯牙23dに内蔵した温度センサSで構成し、印象採得の際に、歯牙23dに対して熱いままの印象材料を押し当てる不快な診療行為を検出する。
【0103】
擬似患者体2の姿勢検出部(擬似患者体の受診状態検出部Cの擬似患者体姿勢検出部e)は、例えば、関節機構28に設けた回転角度センサや傾斜センサによって、擬似患者体2における頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dのそれぞれの相対位置関係を検出して擬似患者体2の姿勢を検出する。
【0104】
上述のように構成したような擬似患者体駆動部Dと、擬似患者体の受診状態検出部Cを構成するセンサとを組み込んだ擬似患者体2が行う表情の変化、身体の動作を表にまとめた動作設定テーブルを
図14に示している。
【0105】
図14に示す動作設定テーブルでは、擬似患者体2の表情、身体の動きを、頭部、あご(口)、目(目の周囲のも含む)、呼吸、動作、音声に列区分し、通常(治療前)、治療直前(顔の向き、枕の角度)、治療中(痛い、不快)、治療後の動作を行区分して示している。
【0106】
当該動作設定テーブルに示すように、頭部模型2aは、治療直前には、診療台3の設定にあわせて受動的な動きをなし、制御部Iが受診状態検出信号を監視し、異常がなければ、頭部模型2aに内蔵した各種の駆動部を駆動させて、顔面がリラックスした表情に保持するが、異常を検出すると、不快、苦痛、嘔吐などに表情を変える。
【0107】
顎は、通常(治療前)は閉じており、治療直前(顔の向き、枕の角度)には、能動的に開く。制御部Iが擬似患者体の受診状態検出部Cの受診状態検出信号を監視し、異常を検出すると、不快、苦痛、嘔吐などに表情を変えるため必要な動きに変わる。
【0108】
また、目(その周り)も、同様に変化し、呼吸は、通常(治療前)は所定のゆっくりした数で呼気、吸気を繰り返し、制御部Iが受診状態検出信号によって異常を検出すると、不快、苦痛、嘔吐などに表情を変えるため、必要な早さに変わる。
【0109】
動作は、動作設定テーブルでは、ひじが例示され、痛いときには、手を上げる。さらに、音声では、不快、苦痛、嘔吐を表現する場合には、それに応じた音声を、治療後は、お礼の言葉を、それぞれ発するように構成している。
【0110】
実習者は、擬似患者体2が、実習中にこれらの動作、表情変化を行うことによって、実際の人を治療対象としたときと同じような反応を体験しながら、実習を行うことができる。なお、本明細書において、表情の変化とは、擬似患者体2の頭部模型2aにおける顔面の表情のみの変化の他、顔面表情に加えて胴部、腕部、脚部等の動作の変化や音声出力を含んでもよい。
【0111】
続いて、このように構成した擬似患者体2を有する医療用実習装置Mを用いて、様々な患者を想定するとともに、シナリオに沿って行う実習のための機能及び構成について、以下で詳細に説明する。
【0112】
まず、本実施形態における実習では、様々な模擬患者の想定として、子供、成人及び老人などの年齢と、性別と、妊娠やアレルギーなどの体質、ワーファリン及びビスホスホネート系薬剤などの常用薬を設定可能にするとともに、実習内容として、医療面接、口腔検査、切削、ラバーダム防湿、印象採得、麻酔、抜歯、根管治療、処方薬の説明及び矯正を設定可能に構成している。
【0113】
上述したように、
図14において、擬似患者体2の表情、身体の動きを、頭部、あご(口)、目(その周り)、呼吸、動作、音声に列区分し、通常(治療前)、治療直前(顔の向き、枕の角度)、治療中(痛い、不快)、治療後の動作などが一覧表として示されているが、これらの動作について、患者モードによる設定を、
図15の駆動制御設定テーブルに示すように、設定され、登録している。
【0114】
図15に示す駆動制御設定テーブルは、成人男性モード、成人女性モード、老人モード、及び子供モードを行方向に設定し、列方向に、音声出力、開口度、動作速度、動作タイミング、音声認識度、認識音量、及び胸部接触検知を標準的な傾向として予め設定している。これらの設定は、記憶部Eに記憶している。
【0115】
その設定について詳細に説明すると、音声出力はそれぞれにモードに応じた音声で出力するように設定され、開口度、つまり上顎骨部材25aに対して開口方向に下顎骨部材25cが移動して開口する口部の大きさを、老人モード及び子供モードは成人モード(成人男性モード及び成人女性モード)に比べて小さくなるように設定している。
【0116】
また、動作速度、及び動作開始タイミングについて、老人モードはその他のモードに比べ遅く設定している。また、同様に、老人モードはその他のモードに比べ認識しにくくなるように、音声認識度は低く、認識可能な音量を大きく設定している。さらに、胸部接触検知(擬似患者体の受診状態検出部Cにおける胸の接触検出部bに対応)は、成人女性のみ検出するように設定している。なお、
図15に示す駆動制御設定テーブルは、上述の動作設定テーブルとともに、記憶部Eに記憶している。なお、音声出力においては、老人及び子供について男女別に出力できるようにしてもよい。
【0117】
また、
図16のシナリオ登録テーブルに示すように、実習内容に応じたシナリオを登録している。詳しくは、縦軸で示す標準的な医療行為の実習内容としての医療面接、口腔検査、切削、ラバーダム防湿、印象採得、麻酔、抜歯、根管治療、処方薬の説明及び矯正のそれぞれについて実習のストーリを構成する標準的医療行為シナリオが登録されている。
【0118】
また、各実習内容について、上述した患者情報に適応したパターンの患者対応シナリオのそれぞれを設定可能に登録している。患者情報については、横軸に展開した子供、成人、女性、男性、アレルギー体質、常用薬の有無と種類に応じて上記の歯科診療や治療行為別に登録した患者対応シナリオをさらに大人、子ども、男女の区別や患者特有の体質、常用薬の条件等に応じたオーダーメードの診療が行えるように展開して使用できる。なお、各実習内容について、各患者情報に適応したパターンの患者対応シナリオのそれぞれを登録しているが、すべてのパターンの患者対応シナリオを登録せずとも、各実習内容の患者対応シナリオを、各患者情報におけるキーワードで修正して用いてもよい。
【0119】
これらの患者対応シナリオの作成は、縦軸の歯科診療や治療行為別に登録した標準的医療行為シナリオと、横軸に展開した患者の特徴に応じて任意に設定できるので、操作者は、表示設定部Hの表示画面を見て標準医療行為シナリオ設定部b及び患者情報設定部dから
図16に示す縦軸の標準的医療行為シナリオの項目と横軸の患者情報設定項目とを自由に組み合わせて独自の設定を作成できる。また、このようにして作成した患者情報対応シナリオについて、患者対応シナリオ組合せ設定部d−10によって標準的医療行為毎に患者対応シナリオを個別に登録して記憶したり、複数の患者対応シナリオの順番を変更したりすることができる。
【0120】
このように標準医療行為シナリオとは、年齢層や性別、体質、常用薬、症状に関係なく全ての人に適応する医療行為シナリオである。これに対して、患者対応シナリオとは、特定の年齢層や性別、体質、常用薬、症状のいずれかひとつ、又はそれらの組合せに適応する医療行為シナリオである。
【0121】
図16で示す患者対応シナリオでは、丸印を示したアレルギー体質を持ち、且つワーファリンを常用薬として使用している老人の診療であって、医療面接と、印象採得及び処方薬の説明についての患者対応シナリオをこのテーブルから設定し、予め登録され記憶部にて記憶された患者対応シナリオで実習できるように準備される。後は、実習の開始とともに予め記憶された患者対応シナリオに従って実習が進められる。
【0122】
なお、患者の体質と、常用薬については、患者情報読取部Lで読み取り設定してもよい。このような複数の患者対応シナリオを組み合わせたシナリオを特定の順番で実習することが行いやすいように、これらの条件や順序を記憶部Eで記憶し、一つの操作で実習ができるように構成しておけば、便利である。
【0123】
次に、患者情報を設定する操作設定画面100について説明する。
図17に示す操作設定画面100は、
図1に示す表示部42の画面であって、実習者を指導する実習教官が操作する操作画面であり、シナリオ表示部101、実習状況拡大表示部102、実習状況表示部103、年齢層設定部110、常用薬設定部120、及び体質設定部130、並びに図示省略する性別設定部、実習内容設定部及びシナリオ変更部とで構成している。
【0124】
シナリオ表示部101は、後述する操作によって生成された実習シナリオが文字表示される部分であり、実習状況拡大表示部102は、実習を受けている擬似患者体2の顔をズームアップして映し出し、実習状況表示部103は当該擬似患者体2の上半身と実習者とによる実習状況を映し出す部分である。
【0125】
年齢層設定部110は、老人患者設定部111、成人患者設定部112及び子供患者設定部113を有している。常用薬設定部120は、常用薬なし設定部121、ワーファリン設定部122及びビスホスホネート系薬剤設定部123を有している。体質設定部130は、特異体質なし設定部131、アレルギー設定部132及び妊婦設定部133を有している。
【0126】
この操作設定画面100において、実習教官が、年齢層設定部110の老人患者設定部111、成人患者設定部112及び子供患者設定部113のうちいずれかを操作することで患者モードを特定するとともに、常用薬設定部120の常用薬なし設定部121、ワーファリン設定部122及びビスホスホネート系薬剤設定部123のいずれかと、体質設定部130の特異体質なし設定部131、アレルギー設定部132及び妊婦設定部133のいずれかを操作することで実習において想定する患者の患者情報を設定することができる。また、
図16の画面で示す操作を画面表示してシナリオの設定操作をしてもよい。
【0127】
なお、操作設定画面100の代わりに、
図18で示す操作設定画面100aで患者情報を設定してもよい。
上述の操作設定画面100より、より具体的に患者情報を設定する操作設定画面100aは、性別設定部160、年齢層設定部110、常用薬有無設定部140、常用薬種設定部150、及び病種設定部170を備えている。
【0128】
性別設定部160は、男性設定部161及び女性設定部162を有し、年齢層設定部110は、子供患者設定部111、成人患者設定部112及び老人患者設定部113を有している。常用薬有無設定部140は、常用薬あり設定部141及び常用薬なし設定部142を有し、常用薬種設定部150は、ビスホスホネート製剤設定部151及びワーファリン設定部152を有している。つまり、常用薬有無設定部140及び常用薬種設定部150は、操作設定画面100における常用薬設定部120に対応している。病種設定部170は、高血圧設定部171、狭心症・心筋梗塞設定部172、脳梗塞・脳出血設定部173、肝炎設定部174及び薬アレルギー設定部175を有している。
【0129】
この操作設定画面100aにおいて、実習教官が、性別設定部160の男性設定部161及び女性設定部162のいずれかを操作するとともに、年齢層設定部110の子供患者設定部111、成人患者設定部112及び老人患者設定部113のいずれかを操作することで患者モードを特定し、常用薬有無設定部140のあり設定部141及びなし設定部142のいずれかを操作し、常用薬有無設定部140のあり設定部141が操作された場合に常用薬種設定部150のビスホスホネート製剤設定部151及びワーファリン設定部152いずれかを操作するとともに、病種設定部170のうち高血圧設定部171、狭心症・心筋梗塞設定部172、脳梗塞・脳出血設定部173、肝炎設定部174及び薬アレルギー設定部175のいずれかを操作することで実習において想定する患者の患者情報を設定することができる。
【0130】
なお、操作設定画面100に病種設定部170を設けてもよく、操作設定画面100aに体質設定部130や、シナリオ表示部101、実習状況拡大表示部102及び実習状況表示部103を設けてもよく、実習内容に応じて、適宜設定すればよい。
【0131】
次に、常用薬に関する実習の具体的なシナリオの内容について、
図19とともに説明する。
この常用薬に関するシナリオでは、患者が現在服用している薬を患者に対して質問し、設定に基づいて患者が常用薬を答え、既往歴や治療方針の説明や処方薬の説明などについてのやり取りができるように構成している。
【0132】
本実施形態の医療用実習装置Mは、上述したように、実習教官が設定する患者情報に沿った患者対応シナリオを沿って実習を進めるが、複数の患者対応シナリオを記憶部Eに記憶しており、実習内容に応じた複数の患者対応シナリオから選択する構成である。
【0133】
図17や
図18で示す操作設定画面100の常用薬設定部120や体質設定部130あるいは操作設定画面100aの常用薬有無設定部140及び常用薬種設定部150や病種設定部170の操作によって設定された患者情報に応じた患者対応シナリオは、例えば、
図19に示すように、実習者のセリフと、模擬患者(擬似患者体2)のセリフとで構成されており、概略的には、実習者の質問に対して模擬患者が回答し、模擬患者の回答を診断して、実習者が治療するという受け答えのストーリとなっている。
【0134】
具体的な患者対応シナリオの一例を示す
図19では、通院や常用薬の有無について実習者が質問し、病状及び常用薬があるが常用薬の種類がわからない旨を模擬患者(擬似患者体2)が回答し、常用薬によっては出血を伴う処置をさけるという判断を実習者がするストーリ構成となっている。
このようなシナリオが、常用薬の種類や、アレルギーや妊娠の有無、病状に応じてそれぞれ記憶部Eに記憶している。
【0135】
このように構成した医療用実習装置Mによる実習に使用する患者対応シナリオの決定プロセスの流れについて、実習の全体フロー図を示す
図20及び21、患者のモード設定フロー図を示す
図22、常用薬モードの実習フロー図を示す
図23、妊婦モードの実習フロー図を示す
図24、及びアレルギーモードの実習フロー図を示す
図25とともに説明する。
【0136】
まず、実習を開始するにあたり、
図20で患者情報を設定する(ステップs1)。具体的には、
図22の患者モード設定フローに示すように、上述の操作設定画面100,100aなどの設定画面において、女性確認ステップが操作されると(ステップw1:Yes)、妊婦かどうかの確認ステップ(ステップw7)に移行する。
【0137】
続いて、子供確認ステップが操作されると(ステップw2:Yes)、男子の子供モードとなり(ステップw3)、老人確認ステップが操作されると(ステップw2:No,w4:Yes)、老人モードとなり(ステップw5)、全ての確認ステップが“No”であると成人男性モードとなる(ステップw6)。これに対し、女性確認ステップが操作されるとともに(ステップw1:Yes)、妊婦確認ステップが操作されると(ステップw7:Yes)、妊娠モードとなる(ステップw16)。妊婦確認ステップが操作されずに、子供確認ステップが操作されると(ステップw8:Yes)、女子の子供モードとなり(ステップw3)、老人設定部が操作されると(ステップw8:No,w9:Yes)、女性の老人モードとなり(ステップw5)、成人確認ステップが操作されると成人女性モードとなる(ステップw10)。
【0138】
このようにして、男女いずれかの子供モード、男女いずれかの老人モード、成人男性モード、妊娠モード及び成人女性モードが設定されたうえで、アレルギー確認ステップが操作されると(ステップw11:Yes)、アレルギーモードとなり(ステップw12)、さらには、常用薬確認ステップが操作されると(ステップw13:Yes)、常用薬モードとなり(ステップw14)、患者モードは決定する(ステップw15)。
【0139】
このように、アレルギーモードや常用薬モードは、男女いずれかの子供モード、男女いずれかの老人モード、成人男性モード、妊娠モード及び成人女性モードのいずれかとともに、アレルギーモードや常用薬モードのいずれか一方あるいは両方が設定されるモードであるが、例えば、アレルギー常用薬老人モードなどのように、男女いずれかの子供モード、男女いずれかの老人モード、成人男性モード、妊娠モード及び成人女性モードのいずれかと組み合わせたモードをあらかじめモード設定してもよい。
【0140】
また、成人男性モード、成人女性モード、男女いずれかの子供モード及び男女いずれかの老人モードの6モードのいずれかを選択可能に設定し、画面における選択操作で成人男性モード、成人女性モード、男女いずれかの子供モード及び男女いずれかの老人モードのいずれかを直接選択できる構成であってもよい。
【0141】
このように、患者モード設定フローによって患者モードが設定されたうえで、例えば、操作設定画面100aにおける病種設定部170のいずれかを選択操作することで実習内容が設定され(ステップs2)、その設定された実習内容及び患者モードに応じたシナリオを記憶部Eから読み込み、例えば、操作設定画面100のシナリオ表示部101に表示し、実習シナリオとなる(ステップs3,s4:Yes,s6)。このとき、選択された実習内容が複数である場合(ステップs4:No)、選択された実習内容のそれぞれに応じたシナリオを合成して(ステップs5)、実習に使用する患者対応シナリオを確定させて、シナリオ表示部101に表示する(ステップs6)。
【0142】
この状態で、実習を開始すると(ステップs7:Yes)、実習状況を撮影する撮影データや、擬似患者体の受診状態検出部Cにおける各検出部の診療状態検出信号等の記録を開始し(ステップs8)、実習者の発声や、診療器具11の衝撃や温度上昇などを擬似患者体の受診状態検出部Cが診療状態検出信号として検出し(ステップs9)、例えば、痛みの生体反応として、腕を上げたり、実習者の発声に対して回答を出力するなど駆動が必要であると(ステップs10:Yes)、各駆動部を、上述のステップs1で設定した患者モードに応じた駆動制御を行う(ステップs11)。
【0143】
このように患者対応シナリオは、
図20から22に示す画面上に示されたフローに基づく選択枝に従って設定事項を決定してもよいし、
図16に示すように標準医療行為シナリオと患者情報の一覧から選択して作成してもよい。このようにして作成した患者対応シナリオは、患者対応シナリオ組み合わせ設定部d−10で組合せの変更、登録を行なうことができる。また、一旦記憶部で記憶した患者情報を変更する場合は、図示しない患者情報変更部を操作して患者情報を変更した上で記憶部Eに記憶させればよい。
【0144】
ここで、より具体的な常用薬モードの患者に対する実習フローについて
図23とともに、説明する。
まず、選択された常用薬が、禁忌などに関して注意が必要である常用薬であるか判定し、注意すべき常用薬である場合(ステップt1:Yes)、禁忌等の注意喚起を促す旨を表示する(ステップt2)。そして、薬の処方が必要である場合において(ステップt3:Yes)、禁忌とならず、処方する薬の選択が適切か判定され、適切でない場合(ステップt4:No)、適切でない旨の表示を行う(ステップt5)、同様に、常用薬の観点から処置(施術)が適切か判定され、適切でない場合(ステップt6:No)、適切でない旨の表示を行う(ステップt7)。
【0145】
具体的には、上述の常用薬の禁忌としては、病気禁忌薬、アレルギー禁忌薬、併用禁忌薬、妊婦禁忌薬などが挙げられる。
特定の病気や病歴などにより使用できない薬である病気禁忌薬はその病気を悪化させたり、重い副作用を起こす可能性がある。
【0146】
ある薬もしくは同系の薬にアレルギーや過敏症のある人の服用が禁止されるアレルギー禁忌薬は、ショックやアナフィラキシー、喘息発作、血管浮腫など激しい症状を起こすおそれがある。
飲み合わせの悪い薬を常用薬として飲んでいる人に禁止される薬である併用禁忌薬は、薬物間相互作用により、作用の減弱、副作用の増強などの悪影響を及ぼすおそれがある。
【0147】
妊娠中およびその可能性のある女性に禁止される薬である妊婦禁忌薬は、胎児の発育不良、流産、場合によっては奇形など、胎児に悪い影響をおよぼすおそれがある。
さらに具体的な例としては、酸性非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作が知られているが、アナフィラキシーショックの原因となる薬剤として、セファクロル系の抗生物質に注意しなければならない。
【0148】
また、最近増加してきているインプラント手術にあっては、心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中を起こしてから6ヶ月以内のインプラント治療は禁忌となり、また、6ヶ月以上経過していても、抗血小板薬や脳梗塞の患者の処方薬として使われ、血液を固まりにくくする薬である「ワーファリン」などの抗凝血薬を服用している患者に対するインプラント治療は注意が必要となる。また、骨粗しょう症などの処方薬として使われる「ビスホスホネート系薬剤」を常用薬としている場合、インプラントの処置で抜歯したりすると「顎骨壊死」を起こすことがある。さらに、ガン(癌)の治療で現在放射線治療を行っている患者にインプラント治療を施すことは禁忌であり、特に顎骨に放射線を受けている場合には外科処置は禁忌となり、また、麻酔を行うことも危険である。
【0149】
このように、病歴や常用薬に関する禁忌を考慮して処置(施術)するが、処置(施術)が適切でないと判断された場合は、実際の治療では上述のような危険が及ぶ危険性があり、実習では適切でない旨の表示を行う(ステップt7)。
【0150】
なお、常用薬があるものの、禁忌等がなく、注意すべき常用薬と異なる場合(ステップt1:No)や、処方薬の処方を行わない場合(ステップt3:No)、処方した薬の選択が適切であった場合(ステップt4:Yes)、さらに、実習した処置が適切である場合(ステップt6:No)には、上述の実習フローとして次ステップに移行することができる。
【0151】
同様に、アレルギーがある場合の実習フロー(
図24)や妊婦である場合の実習フロー(
図25)は、上述の常用薬がある場合の実習フローにおけるステップt2乃至t7と同様のステップを行う(ステップu1乃至u6,ステップv1乃至v6)。
【0152】
このように、実習シナリオに沿って、擬似患者体2との受け答えや擬似患者体2に対する処理(施術)を行って実習するが、実習シナリオの途中やあるいは選択したシナリオが終了した後に、実習教官によって、シナリオの変更指示があった場合(ステップs12:Yes)、実習シナリオを変更して、実習を継続する。これを実習終了まで繰り返し(ステップs13:No)、実習終了に伴って(ステップs13:Yes)、実習状況の記録を終了する(ステップs14)。
【0153】
そして、実施した実習内容を評価する場合(ステップs15:No)、記憶部Eに記録した実習状況記録を読み込み(ステップs16)、読み込んだ実習状況記録からあらかじめ設定された評価項目毎に、実習結果評価演算部Fで評価し(ステップs17)、その評価結果を表示するとともに記録する(ステップs18)。さらに、評価結果データを集計して表示するとともに(ステップs19)、評価コメントを入力して記録し(ステップs20)、実習状況記録及び評価を出力して(ステップs21)、一連の実習を終了する。
なお、この医療用実習装置Mでは、これまでに実施した実習記録のみを読み込んで、実習を行わずに評価を行うこともできる(ステップs7:No)。
【0154】
上述したように、医療用実習装置Mに、少なくとも口部の開閉動作を行う擬似患者体駆動部Dの下顎開閉駆動部cを有する頭部模型2aと、実習者の音声を聞き取り認識するとともに、擬似患者体駆動部Dの模擬患者の音声を出力する音声認識部f及び音声出力部eと、模擬患者に関する情報について、少なくとも年齢層、性別、体質、常用薬、及び病状のうちいずれかひとつ、あるいは少なくとも二つ以上を組み合わせて患者情報を設定する擬似患者体設定操作部Gと、予め記憶された複数の標準医療行為の医療対処項目の標準医療行為シナリオから少なくとも一つの標準医療行為シナリオを選択可能とした標準医療行為シナリオ設定部bと、擬似患者体設定操作部Gで設定した模擬患者に関する患者情報と、標準医療行為シナリオ設定部bにより設定した標準医療行為シナリオとの組合せに応じた患者対応シナリオを記憶する記憶部Eと、該標準医療行為シナリオ設定部bによって設定された標準医療行為シナリオ、及び、擬似患者体設定操作部Gで設定した患者情報の組合せに応じた患者対応シナリオに基づいて擬似患者体駆動部Dの下顎開閉駆動部cの動作制御、並びに音声認識部f及び音声出力部eの制御を行う制御部Iとを備えたことにより、様々な患者を想定し、実際の施術に即した、より臨場感のある実習を行うことができる。
【0155】
詳しくは、少なくとも口部の開閉動作を行う擬似患者体駆動部Dの下顎開閉駆動部cを有する頭部模型2aと、実習者の音声を聞き取り認識するとともに、模擬患者の音声を出力する音声認識部f及び音声出力部eとを備えているため、実習者の音声を音声認識部f及び音声出力部eで認識しながら、頭部模型2aの口部を開閉動作しながら、模擬患者の音声を出力できるため、実際の施術に即した、臨場感のある実習を行うことができる。なお、
図2で示す擬似患者体駆動部Dの模擬患者の音声を出力する音声認識部fと音声出力部eは、
図7で示す音声認識・出力部21fに相当している。
【0156】
また、模擬患者に関する情報について、少なくとも年齢層、性別、体質、常用薬、及び病状のうちいずれかひとつ、あるいは少なくとも二つ以上を組み合わせて患者情報を設定する擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gと、予め記憶された複数の医療対処項目の標準医療行為シナリオから少なくとも一つの標準医療行為シナリオを選択可能とした標準医療行為シナリオ設定部bと、擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gで設定した模擬患者に関する患者情報と、標準医療行為シナリオ設定部bにより設定した標準医療行為シナリオとの組合せに応じた患者対応シナリオを記憶する記憶部Eと、該標準医療行為シナリオ設定部bによって設定された標準医療行為シナリオ、及び、擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gで設定した患者情報の組合せに応じた患者対応シナリオに基づいて擬似患者体駆動部Dの下顎開閉駆動部cの動作制御、並びに音声認識部f及び音声出力部eの制御を行う制御部Iとを備えたことにより、患者年齢、性別、アレルギーなどの体質、さらに常用薬の有無などの患者情報を設定できるとともに、患者毎に異なる体質、常用薬、体調等の細かな状況に即した患者対応シナリオを生成することができる。
【0157】
また、患者情報を設定できるとともに、実習内容に即した標準医療行為シナリオに患者情報を反映させた患者対応シナリオに基づいて、口部の開閉動作を担う擬似患者体駆動部Dの下顎開閉駆動部cの動作制御、並びに音声認識部f及び音声出力部eの制御を行うため、例えば、老人や子供、あるいは妊婦など様々な患者に対する実際の施術に即した、より臨場感のある実習を行うことができる。
【0158】
また、擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gを、老人患者を模した老人モードと、成人患者を模した成人モードとを設定可能に構成し、制御部Iを、老人モードの設定によって、成人モードの設定に比べて口部の開口角度を狭く制御する構成とすることにより、一般的な成人モードに比べて、口部の開口角度が小さく、施術しにくくなる老人モードにより、老人患者に対する実際の施術に即した、より臨場感のある実習を行うことができる。
【0159】
また、制御部Iを、老人モードの設定によって、成人モードの設定に比べて、音声認識部f及び音声出力部eの認識度合いを低く制御する構成とすることより、患者との受け答えにおいて、例えば、ゆっくりと、はっきりとした明瞭な発声するなど、実際の老人患者に対する施術に即した、さらに臨場感のある実習を行うことができる。
【0160】
また、制御部Iを、老人モードの設定によって、成人モードの設定に比べて、音声認識部f及び音声出力部eの認識音量を大きく制御する構成とすることにより、患者との受け答えにおいて、例えば、大きな声で発声するという、耳の遠い実際の老人患者に対する施術に即した、さらに臨場感のある実習を行うことができる。
【0161】
また、制御部Iを、老人モードの設定によって、音声認識部f及び音声出力部eが出力する出力音声を、老人患者の声を模した老人音声を出力するとともに、成人モードの設定によって、出力音声を、成人患者の声を模した成人音声を出力する制御を行う構成とすることにより、成人モードでの成人音声に比べて、高齢者の音声での受け答えを体験でき、実習の臨場感をより向上させることができる。
【0162】
また、制御部Iを、老人モードの設定によって、成人モードの設定に比べて、擬似患者体駆動部Dの駆動速度を遅く制御する構成とすることにより、例えば、発声する際の口部の開閉動作や痛みに対する生体反応などが、成人モードでの動作速度に比べて遅く動作制御されるため、実習の臨場感をより向上させることができる。
【0163】
また、制御部Iを、老人モードの設定によって、成人モードの設定に比べて、音声認識部f及び音声出力部eの音声出力開始タイミング及び擬似患者体駆動部Dの駆動開始タイミングを遅く制御する構成とすることにより、例えば、発声する際の音声出力開始タイミングや、実習者の発声を音声認識してからの駆動開始タイミング、さらには、痛みに対する生体反応などが、成人モードでの開始タイミングに比べて遅く制御されるため、実習の臨場感をさらに、より向上させることができる。
【0164】
また、成人モード及び老人モードに加えて、子供患者を模した子供モードを設定可能に構成し、制御部Iを、子供モードの設定によって、出力音声を、子供患者の声を模した子供音声を出力する制御を行う構成とすることにより、成人モードでの成人音声に比べて、子供の音声での受け答えを体験できるため、様々な患者に対する実習の臨場感をより向上させることができる。
【0165】
また、擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gを、選択操作によって患者情報を設定する操作設定画面100で構成することにより、実習者や実習教官の設定操作を受け付けて、確実に患者情報を設定することができる。
【0166】
また、記憶部Eに、擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gにおいて常用薬に関する患者情報が設定された際において、常用薬に関する患者情報に対する実習者の質問に応答する常用薬情報を記憶することにより、例えば、常用薬の有無など、より現実の診察に即した実習を行うことができる。
【0167】
また、常用薬に関する患者情報と、実習者が処方する処方薬に関する処方薬情報とを比較して、禁忌等の注意事項について判定する実習結果評価演算部(禁忌判定部)Fを備えることにより、例えば、特に高血圧や心臓病、脳梗塞、糖尿病、抗アレルギーなどの薬を常に服用していることが多い老人患者の場合に多い常用薬と、処方薬との間の禁忌等を実習結果評価演算部(禁忌判定部)Fで判定して確認し、警報を報知したり、表示部に表示したり、評価部に評価結果を記憶したりすることができる。したがって、常用薬に対する禁忌を踏まえた、つまり、危険な状態とならないように注意が必要な診療を模した、より臨場感のある実習を行うことができる。
【0168】
また、患者対応シナリオ設定部によって設定された設定患者対応シナリオを変更する患者対応シナリオ変更部を備えることにより、例えば、実習教官は実習者の実習状況に応じて、先に設定したシナリオを変化させながら、変化に富んだ様々な状況での実習を行うことができる。
【0169】
また、頭部模型2aの口部に、患者情報設定部で設定した
設定モードに応じた顎模型23を交換可能な装着できるため、上述したような老人モード、子供モードなど、設定した患者情報に応じた顎模型23を口腔部に装着して、リアリティのある実習を行うことができる。
【0170】
また、頭部模型2aを、患者情報設定部で設定した
設定モードに応じたマスク及びカツラを交換可能な装着を許容する構成とすることにより、上述したような老人モード、子供モードなど、設定した患者情報に応じた見た目の模型を用いて、さらにリアリティのある実習を行うことができる。
【0171】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の駆動機構は、擬似患者体駆動部Dに対応し、
以下同様に、
音声認識部及び音声出力部は、音声認識部f及び音声出力部eに対応し、
患者情報設定部及び患者情報設定部は、擬似患者体設定操作部Gに対応し、
GUI及び表示装置は、表示設定部Hの表示部aに対応し、
操作部は、表示設定部Hの設定操作部bに対応し、
患者情報設定読取部は、患者情報設定読取部(常用薬データ読取部)Lに対応し、
禁忌判定部は、実習結果評価演算部Fに対応し、
生体信号出力部は、生体信号出力部Kに対応し、
咬合模型は、顎模型23に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0172】
例えば、上述の説明では、操作設定画面100,100aにおいて、常用薬の有無やその種類を操作入力するように構成したが、例えば、常用薬の種類などの患者情報を識別する識別子を、RFIDリーダや二次元バーコードリーダ又はICカードリーダなどで読み取って患者情報を設定する常用薬データ読取部Lを診療台1又は擬似患者体2に備えてもよい。
【0173】
具体的には、
図1に示すように、例えば、器具台1におけるテーブル1aと器具ホルダ1bとの間に、常用薬データ読取部L(
図2参照)を構成するRFIDリーダ・ライター200、あるいはバーコードリーダやICカードリーダを装備する。そして、実習者や、当該実習者を指導する実習教官は、患者の診察券や薬手帳に装着したRFIDタグ(図示省略)や二次元バーコード又はICカード情報を、RFIDリーダ・ライター200、あるいはバーコードリーダやICカードリーダにかざすことで、RFIDリーダ・ライター200、あるいはバーコードリーダやICカードリーダと患者のRFIDタグ等とが通信し、患者の常用薬の有無やその種類、アレルギーや妊娠中などの体質、さらには、治療中の病状や病歴などの患者情報を、読み取って設定することができる。つまり、常用薬データ読取部Lを構成するRFIDリーダ・ライター200、あるいはバーコードリーダやICカードリーダを装備することで、実習者や、当該実習者を指導する実習教官は、設定のために操作設定画面などを操作することなく、正確に患者情報を設定することができる。また、非接触で患者情報を読み取りできるため、患者情報を設定する際におけるインフェクションコントロールを実行することができる。
【0174】
また、ここまでは擬似患者体2を診療台3に載置して、寝位状態の擬似患者体2に対して実習を行う例の構成について説明したが、例えば、処方箋薬局の窓口での対面問答の実習を想定し、
図26のように、立位姿勢の擬似患者体2に対して、実習を行ってもよい。
【0175】
詳述すると、
図26に示すように、例えば、薬剤師など実習者Xは、カウンタ450越しで、立位姿勢の擬似患者体2と対面して、上述したようなシナリオに応じた対面問答について、臨場感のある実習を行うことができる。この場合にも、常用薬データ読取部L(
図2参照)を構成するRFIDリーダ・ライター200、あるいはバーコードリーダやICカードリーダを設けることによって、患者情報を正確に設定できるとともに、実際の対面問答において患者自らがRFIDリーダ・ライター200、あるいはバーコードリーダやICカードリーダを用いて患者情報を設定することを想定した実習を行うこともできる。
【0176】
なお、このようなカウンタ450越しの対面問答の実習の場合、
図26に示すように、脚部模型2dのない上半身の擬似患者体2であっても臨場感のあるリアルな実習を行うことができる。
【0177】
さらには、診療台に載置した擬似患者体2に対して実習するだけでなく、在宅診療や訪問診療等を想定し、布団400やベッドに寝かせた擬似患者体2に対して実習を行ってもよい。
在宅診療や訪問診療と呼ばれる診療では、布団400に寝たままの患者に対して、例えば、訪問医療用の携帯診療ユニット300を持参し、携帯診療ユニット300に内蔵した診療器具11を用いて診療する。
【0178】
このような在宅診療や訪問診療は、
図27に示すように、不自由な姿勢での診療など、診療台3などの設備の整った医院での診療と異なり、診療器具の種類が少ない携帯診療ユニット300を用いて行うため、熟練した技術が必要である。
【0179】
図27に示すように、擬似患者体2を布団400に寝かせるように配置するとともに、携帯診療ユニット300の診療器具11を用いることで、熟練した技術の必要な在宅診療や訪問診療をリアルに再現することができ、臨場感のある実習を行うことができる。
【0180】
なお、擬似患者体2のいずれかの部分や、携帯診療ユニット300に上述のRFIDリーダ・ライター200、あるいはバーコードリーダやICカードリーダを設けてもよい。
【0181】
このように、本発明では様々な常用薬を処方されている患者に対するトレーニングのみならず、健常者に対しても正確な処方箋を発行できるトレーニングが可能である。また、高血圧や、狭心症、心筋梗塞、不整脈等の心疾患又は、喘息、糖尿病等の基礎疾患を持つ患者に対する処方箋発行のトレーニングが可能である。
【0182】
また、カルテと処方箋を照合することで、誤った処方箋を発行した時には、表示部aに表示したり、警告したりすることも出来るようにしてもよい。なお、これらのトレーニングの結果や経過は記憶部Eに記憶される。また、常用薬のデータから患者の疾患を推測して患者に確認して適切な処方箋の発行や処置及び処方薬の容量が適切かどうかのトレーニングも可能である。
【0183】
また、
図2に示すように、表示設定部Hで設定した設定モードに応じた血圧、脈拍等の生体信号を出力する生体信号出力部Kを医療用実習装置Mに備えてもよい。
具体的には、在宅診療を想定した実習状況の
図27に図示するように、擬似患者体2の腕模型2cにおける手首部の内部に、生体信号出力部Kを構成する生体信号出力部250を装備する。
【0184】
生体信号出力部250は、制御部Iに接続され、制御部Iの制御によって、受診状態検出部Cの診療状態検出信号に基づいて、実習者Xの不適切な診療行為によって、例えば、痛みによって、脈拍が上がっている、あるいは、麻酔によって血圧が下がっているなどの生体信号を、触診や血圧計等の生体信号測定器具(図示省略)を介して得られるように構成している。
【0185】
このように、生体信号出力部Kを構成する生体信号出力部250を擬似患者体2に装備することで、実習者Xの診療行為によって受診状態検出部Cが検出した診療状態検出信号に応じた生体信号を触診や血圧計等の生体信号測定器具(図示省略)を介して得られるため、実際の治療に即した、より具体的で臨場感のある実習を行うことができる。なお、生体信号出力部Kは、擬似患者体2に内蔵する生体信号出力部250のみならず、表示画面に生体信号を表示するように構成してもよい。
【0186】
また、脈拍数や心拍数は患者の年齢層によって正常値があるので年代別の正常値を記憶部Eに記憶させておけば年代別の正常値を理解したトレーニングが出来る。そして、擬似患者体設定操作部Gにおいて、標準医療行為シナリオ設定部cで測定される生体信号をシナリオ毎に設定して記憶部Eに記憶し、呼び出してトレーニングすることで、設定されたシナリオに基づく測定値が前記正常値と比較して正常範囲内か否か理解した上でのトレーニングが出来る。また、実習者に対して注意を喚起する為に測定値が異常値を示す場合には、測定値の表示の色を変えたり、警告の表示を発したりしてもよい。
【0187】
患者情報設定部dの生体信号出力設定部d−9で患者模型の血圧や脈拍を例えば、緊急状態を示す値に設定すれば、患者模型の腕模型に装着した血圧計や脈拍計からその設定に沿った電気信号が出力され、または表示部に表示されるため実習者は、緊急時に対する対応処置の実習を行うことができる。
【0188】
また、患者情報設定部dで設定した
設定モードに応じた咬合模型が口腔部に装着されているか確認可能とする報知部を設けてもよく、さらには患者情報設定部dで設定した
設定モードに応じたマスク及びカツラが頭部に装着されているかどうか確認する報知部を設けてもよい。この場合、上述したような老人モード、子供モードなど、設定した患者情報に応じた咬合模型や見た目の模型を用いて、さらにリアリティのある実習を行うことができる。