(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
気体からなる旋回流を発生させる旋回流形成部が被搬送物を搬送する平坦な搬送路面に配設され、前記旋回流形成部から順次溢出してくる旋回流を被搬送物の底面と搬送路面との間隙に介在させて被搬送物を浮上させるとともに前記旋回流の旋回力によって生じる搬送力で被搬送物を搬送する非接触式浮上搬送装置であって、
前記旋回流形成部が、前記搬送路面の路幅方向で左右相互に離間して一対配設され、
前記旋回流形成部でそれぞれ発生する旋回流の旋回方向が、前記搬送路面の路幅方向で相互に逆方向に設定され、
前記左右一対の旋回流形成部からそれぞれ旋回流として溢出して合流する気体を受け入れる気体受入凹部が、前記左右一対の旋回流形成部の相互間で搬送方向に延在する気体合流領域内に設けられており、
前記搬送路面より低位置に存在する気体受入凹部の底面部分が、開閉自在に形成されていることを特徴とする非接触式浮上搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の非接触搬送装置では、搬送面上における被搬送物の回動やふらつきを回避して浮上高さ精度を保つように、旋回流形成体の旋回流の旋回方向が互いに変わるように搬送方向に複数配列することにより、それぞれの旋回流形成体から搬送面上に送り出された旋回流の旋回力を意図的に相殺させるとともに被搬送物の底面と搬送面との間隙に旋回流を送り続けて介在させた浮上状態を呈するものの、この浮上している被搬送物を搬送方向へ搬送させるためには、別途、摩擦コロやベルトなどの接触式の駆動機構を用いて被搬送物に搬送するための駆動力を与えて搬送する必要があり、このような接触式の駆動機構を付設すると搬送装置としての全体的装置構成やその駆動制御が複雑となるという問題があった。
また、従来の非接触搬送装置では、被搬送物と搬送面との間に形成される間隙空間内で送り出された旋回流が滞留して淀み、この淀んだ旋回流が過剰に送り出されると搬送方向への搬送抵抗となる場合があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、旋回流の旋回力を活用して接触式の駆動機構を付設することなく簡便な装置構成で被搬送物を完全なる非接触状態で浮上させながら円滑に搬送する非接触式浮上搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、気体からなる旋回流を発生させる旋回流形成部が被搬送物を搬送する平坦な搬送路面に配設され、前記旋回流形成部から順次溢出してくる旋回流を被搬送物の底面と搬送路面との間隙に介在させて被搬送物を浮上させるとともに前記旋回流の旋回力によって生じる搬送力で被搬送物を搬送する非接触式浮上搬送装置であって、前記旋回流形成部が、前記搬送路面の路幅方向で左右相互に離間して一対配設され、前記旋回流形成部でそれぞれ発生する旋回流の旋回方向が、前記搬送路面の路幅方向で相互に逆方向に設定され、前記左右一対の旋回流形成部からそれぞれ旋回流として溢出して合流する気体を受け入れる気体受入凹部が、前記左右一対の旋回流形成部の相互間で搬送方向に延在する気体合流領域内に設けられて
おり、前記搬送路面より低位置に存在する気体受入凹部の底面部分が、開閉自在に形成されていることによって、前述した課題を解決するものである。
【0007】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された非接触式浮上搬送装置の構成に加えて、前記旋回流形成部が、前記搬送路面の搬送方向で前後相互に離間して複数配設されているとともに、前記旋回流形成部でそれぞれ発生する旋回流の旋回方向が、前記搬送路面の搬送方向で相互に同一方向に設定されていることによって、前述した課題をさらに解決するものである。
【0008】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された非接触式浮上搬送装置の構成に加えて、前記旋回流形成部が、前記搬送路面下に設けられて搬送路面上に開口する有底の周側壁と、該周側
壁から周側壁で囲繞される旋回形成空間領域内へ前記気体を噴射して旋回流を発生させる気体噴射口とを備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項4に係る発明は、請求項
1乃至請求項3のいずれか1つに記載された非接触式浮上搬送装置の構成に加えて、
前記旋回流形成部から搬送路面と被搬送物との間隙に溢出して過剰に滞留する気体を逃す気体解放孔が、前記搬送路面に分散して配設されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項5に係る発明は、請求項3
または請求項4に記載された非接触式浮上搬送装置の構成に加えて、
前記旋回流形成部が、前記気体の噴射力を択一的に選択可能な別部品として前記搬送路面に着脱自在に取り付けられていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非接触式浮上搬送装置は、気体からなる旋回流を発生させる旋回流形成部が被搬送物を搬送する平坦な搬送路面に配設されていることにより、旋回流形成部から順次溢出してくる旋回流を被搬送物の底面と搬送路面との間隙に介在させて被搬送物を浮上させることができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0012】
本請求項1に係る発明の非接触式浮上搬送装置によれば、旋回流形成部が、搬送路面の路幅方向で左右相互に離間して一対配設され、旋回流形成部でそれぞれ発生する旋回流の旋回方向が、搬送路面の路幅方向で相互に逆方向に設定され、左右一対の旋回流形成部からそれぞれ旋回流として溢出して合流する気体を受け入れる気体受入凹部が、左右一対の旋回流形成部の相互間で搬送方向に延在する気体合流領域内に設けられていることにより、左右一対の旋回流形成部で被搬送物に作用して搬送方向の前方域に向かう旋回流作用力と搬送方向の後方域に向かう旋回流作用力との相互間で生じた大小関係に基づいて被搬送物の搬送方向が方向付けされるため、旋回流の旋回力を活用して接触式の駆動機構を付設することなく簡便な装置構成で、非接触状態で被搬送物を搬送方向の前方域へ向かって浮上させつつ円滑に搬送することができる。
すなわち、左右一対の旋回流形成部における路幅方向の両外側では、双方の旋回流が放射方向へ分散されて旋回流作用力が小さくなるが、左右一対の旋回流形成部の相互間では、双方の旋回流が搬送路面と被搬送物との間に形成される隙間空間で滞留すること無く気体受入凹部に淀みなく流れ込んで搬送方向の前方域への流路が形成されるため、気体受入凹部の大きさによっては、気体受入凹部における旋回流作用力が左右一対の旋回流形成部における路幅方向の両外側でそれぞれ生じる旋回流作用力より大きくなり、被搬送物に対して面摩擦によって伝わる力は、搬送方向の後方域へ向かって作用する旋回流作用力よりも搬送方向の前方域へ向かって作用する旋回流作用力の方が大きくなるため、接触式の駆動機構を付設することなく非接触状態で被搬送物を搬送方向の前方域へ向かって円滑に搬送させることができる。
【0013】
また、旋回流形成部内で連続的に発生する旋回流が旋回流形成部から被搬送物側に向かって搬送路面上に溢出すると、この溢出した旋回流の遠心力によって旋回流の旋回半径が拡大して、旋回流の中心近傍部分に生じる気圧が旋回流の旋回部分に生じる気圧と比べて相対的に低くなり、この低くなった気圧が被搬送物に負圧として作用することにより、被搬送物を旋回流形成部側へ吸引して引き寄せようとする力と被搬送物を溢出した旋回流で浮上させようとする力とが釣り合った被搬送物の浮上位置に被搬送物を保持するため、被搬送物を安定させた浮上支持状態で旋回流作用力による搬送力を確実に被搬送物へ伝えることができる。
すなわち、単に、搬送方向へ気体の力を被搬送物に対して付加しているのではなく、被搬送物を旋回流形成部側へ吸引して引き寄せようとする力が作用している状態で前述した旋回流作用力を被搬送物に対して付加しているため、確実に旋回流作用力による搬送力を被搬送物へ伝えることができる。
さらに、搬送方向から視た気体受入凹部の断面積が大きい程、気体受入凹部に流れ込む旋回流の流量が多くなるため、搬送方向の前方域への搬送力を大きくすることができる。
すなわち、搬送方向から視た気体受入凹部の断面積の大小を調整すると気体受入凹部に流れ込む旋回流の流量が変化するため、搬送方向の前方域への搬送力を調整することができる。
【0014】
さらに、搬送路面より低位置に存在する気体受入凹部の底面部分が、開閉自在に形成されていることにより、気体受入凹部に流れ込む旋回流の流量が変化するため、搬送方向の前方域へ向かって作用する旋回流作用力の大きさと搬送方向の後方域へ向かって作用する旋回流作用力の大きさとの大小関係を変えて被搬送物の移動方向を切り替えることができる。
また、搬送方向から視た気体受入凹部の断面積などによっては、搬送方向の前方域へ向かって作用する旋回流作用力の大きさと搬送方向の後方域へ向かって作用する旋回流作用力の大きさとの大小関係が維持されたまま搬送方向の前方域へ向かって作用する旋回流作用力の大きさが変化するため、搬送方向の前方域への搬送力を調整することができる。
【0015】
本請求項2に係る発明の非接触式浮上搬送装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、旋回流形成部が、搬送路面の搬送方向で前後相互に離間して複数配設されているとともに、旋回流形成部でそれぞれ発生する旋回流の旋回方向が、搬送路面の搬送方向で相互に同一方向に設定されていることにより、搬送方向に配列された複数組の旋回流形成部で生じた旋回流のそれぞれが被搬送物に対して搬送方向への旋回流作用力を作用するため、搬送力をより一段と大きくすることができる。
【0016】
本請求項3に係る発明の非接触式浮上搬送装置によれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、旋回流形成部が、搬送路面下に設けられて搬送路面上に開口する有底の周側壁と、この周側
壁から周側壁で囲繞される旋回形成空間領域内へ気体を噴射して旋回流を発生させる気体噴射口とを備えていることにより、簡単でコンパクトな構成で旋回流が形成されるため、モータなどの回転構造を不要として非接触式浮上搬送装置を簡素化することができる。
【0017】
本請求項4に係る発明の非接触式浮上搬送装置によれば、請求項
1乃至請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、
旋回流形成部から搬送路面と被搬送物との間隙に溢出して過剰に滞留する気体を逃す気体解放孔が、搬送路面に分散して配設されていることにより、この気体解放孔が過剰に滞留する気体の逃げ場となり、旋回流形成部から順次溢出してくる気体の流れが妨げられないため、気体解放孔が設けられていないときと比べて搬送方向の前方域および後方域へ向かって作用する旋回流作用力を大きくするとともにその差も大きくして搬送力を増加させることができる。
【0018】
本請求項5に係る発明の非接触式浮上搬送装置によれば、請求項3
または請求項4に係る発明が奏する効果に加えて、旋回流形成部が気体の噴射力を択一的に選択可能な別部品として搬送路面に着脱自在に取り付けられていることにより、旋回流形成部を付け替えるだけで旋回流による旋回力の強さが変更可能となるため、バルブなどの噴射力調整手段を用いることなく搬送方向への旋回流作用力を調整して搬送力を任意に調整することができるばかりでなく、旋回流形成部の素材や製作加工の選択肢を多様化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、気体からなる旋回流を発生させる旋回流形成部が被搬送物を搬送する平坦な搬送路面に配設され、旋回流形成部から順次溢出してくる旋回流を被搬送物の底面と搬送路面との間隙に介在させて被搬送物を浮上させるとともに旋回流の旋回力によって生じる搬送力で被搬送物を搬送する非接触式浮上搬送装置であって、旋回流形成部が、搬送路面の路幅方向で左右相互に離間して一対配設され、旋回流形成部でそれぞれ発生する旋回流の旋回方向が、搬送路面の路幅方向で相互に逆方向に設定され、左右一対の旋回流形成部からそれぞれ旋回流として溢出して合流する気体を受け入れる気体受入凹部が、左右一対の旋回流形成部の相互間で搬送方向に延在する気体合流領域内に設けられて
おり、前記搬送路面より低位置に存在する気体受入凹部の底面部分が、開閉自在に形成されていることにより、左右一対の旋回流形成部にそれぞれ設定された旋回流の旋回方向が、左右一対の旋回流形成部で被搬送物に作用して搬送方向の前方域に向かう旋回流作用力と搬送方向の後方域に向かう旋回流作用力との相互間で生じた大小関係に基づいて被搬送物の搬送方向を方向付けして、旋回流の旋回力を活用して接触式の駆動機構を付設することなく簡便な装置構成で被搬送物を非接触状態で浮上させながら円滑に搬送するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0021】
すなわち、本発明で採用する旋回流形成部の具体的な実施態様については、穿孔加工や切削加工などにより搬送路面を構成するベース部自体に直接形成されていても良いが、樹脂加工などによるチップ状の成型品等、搬送路面を構成するベース部と別体に形成されていても良く、旋回流形成部がベース部と別体に形成されている場合には、旋回流形成部の素材や製作加工の選択肢を多様化させることができるので、より好ましい。
また、旋回流形成部の具体的な構造については、空気などの気体から旋回流を形成するものであれば如何なるものであっても何ら構わない。例えば、旋回流形成部の気体噴射口から噴射された気体が、旋回方向へ案内する案内凹所の深さ3〜10mm程度の周側壁に沿って流れることで旋回流を形成するものでもよい。平面視の案内凹所の形状としては如何なるものであっても何ら構わない。この案内凹所の具体的な形状は、例えば、円形状、環状、楕円形状、多角形状、円形状に切り欠き部が形成された形状などでも良く、更に具体的には、鍔付きの円形カップ状のものがより好ましい。
また、周側壁を備えた案内凹所内に吸気口とファンとを設けて、ファンが回転することで周側壁で囲繞された案内凹所内から上方へ向かう旋回流を形成するものでも良い。
そして、本発明における旋回流形成部の具体的な配列形態については、前述したように、左右一対の旋回流形成部にそれぞれ設定された旋回流の旋回方向が、左右一対の旋回流形成部で被搬送物に作用して搬送方向の前方域に向かう旋回流作用力と搬送方向の後方域に向かう旋回流作用力との相対的な差に基づいて被搬送物の搬送方向を方向付けし、旋回流の旋回力を活用して被搬送物を浮上させつつ搬送させることが可能な浮上搬送機構を構築するものであれば如何なる配列形態であっても良い。旋回流形成部が、搬送路面の路幅方向で左右相互に離間して一対のみ配設された配列形態、あるいは、搬送路面の路幅方向で左右相互に離間して一対配設されるとともに搬送路面の搬送方向で前後相互に離間して複数配設された配列形態のいずれであっても何ら構わない。
さらに、本発明では、搬送路面の路幅方向で左右相互に離間する一対の旋回流形成部が、搬送方向で同じ位置関係で配列されても良く、搬送方向で互いにずれた位置関係で配列されても良い。
そして、本発明で採用する気体受入凹部の具体的な形状構造については、左右一対の旋回流形成部の相互間で搬送方向に延在する気体合流領域内に設けられて左右一対の旋回流形成部からそれぞれ旋回流として溢出して合流する気体を受け入れるものであれば如何なる形状構造のものであっても良く、たとえば、搬送路面より低位置に存在する気体受入凹部の底面部分が搬送路面の裏面側に向けて開放されているもの、あるいは、搬送路面より低位置に存在する気体受入凹部の底面部分が開閉自在に形成されているものであっても良く、前者の場合には、気体受入凹部が開放されていないときと比べて搬送方向の前方域へ向かって作用する旋回流作用力を大きくして搬送力を増加させることが可能であり、後者の場合には、搬送方向の前方域へ向かって作用する旋回流作用力の大きさと搬送方向の後方域へ向かって作用する旋回流作用力の大きさとの大小関係を変えて被搬送物の移動方向を切り替えることが可能である。
また、気体受入凹部の具体的な設置形態については、左右一対の旋回流形成部の相互間で搬送方向に延在する気体合流領域内に設けられていれば良く、たとえば、左右一対の旋回流形成部の相互間のやや前方域、中間域、やや後方域のいずれか、あるいは、これらのいずれかを少なくとも組み合わせて一体化した領域内に設置されて左右一対の旋回流形成部からそれぞれ旋回流として溢出して合流する気体を受け入れ可能となるものであれば良い。
そして、本発明における搬送路面は、平坦であることが重要であり、この平坦な搬送路面の加工精度が高ければ被搬送物のより安定した搬送状態が得られることは言うまでもない。また、必要に応じて、旋回流形成部から溢出された気体が路幅方向の両側縁から過度に漏出することを抑制するとともに被搬送物を搬送方向へ誘導規制するために、ガイド板を搬送路面の両側縁に設けるのも良い。
なお、本発明の非接触式浮上搬送装置によって浮上搬送させる被搬送物としては、例えば、ガラス、プラスチック、金属などの素材からなる薄板状のものであり、特に好適な被搬送物としては、太陽電池用フラットパネルや携帯電話、液晶テレビ、パソコン用液晶モニターなどに用いる0.1乃至0.5mm程度のディスプレイ用ガラス基板である。
【0022】
以下に、本発明の第1
参考例である非接触式浮上搬送装置100について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
ここで、
図1は、本発明の第1
参考例の非接触式浮上搬送装置100を示す斜視図であり、
図2は、
図1の符号2の箇所の旋回流形成部130Aを示す拡大斜視図であり、
図3は、本発明の旋回流形成部130A、130Bによる旋回流Rおよび下方へ引き寄せようとする力Dが発生する原理を示す図であり、
図4は、参考として気体受入凹部を設けていない構成の旋回流作用力を示す参考図であり、
図5は、
図1の符号5から視た拡大平面図であって第1
参考例において搬送力が発生する原理を示す図である。
【0023】
本発明の第1
参考例である非接触式浮上搬送装置100は、
図1乃至
図5に示すように、気体からなる旋回流Rを発生させる旋回流形成部130A、130Bが、例えば、0.3mm程度のディスプレイ用ガラス基板からなる薄板状の被搬送物Cを搬送する平坦な搬送路面111に配設され、旋回流形成部130A、130Bから順次溢出してくる旋回流Rを被搬送物Cの底面と搬送路面111との間隙に介在させて被搬送物Cを浮上させるとともに旋回流Rの旋回力によって生じる搬送力で被搬送物Cを搬送するように構成されている。
具体的に、非接触式浮上搬送装置100は、ベース部110と、このベース部110と支持する機台フレーム120とを備えている。
そして、ベース部110における被搬送物Cと対向する搬送路面111には、樹脂成型加工してなる鍔付きの円形カップ状の旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面111の路幅方向Sで左右相互に離間して一対、すなわち、一組のみ配設されている。
本
参考例では、旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面下に設けられて搬送路面上に開口する有底の案内凹所131の周側壁131aと、この周側壁131aの接線方向から周側壁131aで囲繞される旋回形成空間領域内へ気体としての空気を噴射して旋回流Rを発生させる気体噴射口132とを備えている。
図2に示すように、旋回流形成部130A(130B)は、空気を旋回方向へ案内する案内凹所131と、この案内凹所131を囲繞する円筒状の周側壁131aに沿って空気をそれぞれ噴射する2つの気体噴射口132とを有している。
本
参考例の場合には、これら2つの気体噴射口132が、案内凹所131を囲繞する円筒状の周側壁131aを2分する位置に設けられており、旋回流Rを確実かつ安定して発生させるようになっている。
【0024】
そして、このように構成された旋回流形成部130A、130Bが、旋回流Rを搬送路面111と被搬送物Cとの間に溢出することにより、被搬送物Cを、例えば0.05mm程度浮上させている。
ここで、旋回流形成部130Aの構造と、旋回流形成部130Bの構造との関係は、旋回流形成部130Aおよび130B間のT軸方向(被搬送物Cの搬送方向)の仮想中心線を基準とした線対称の関係であり、旋回流形成部130A、130Bでそれぞれ発生する旋回流Ra、Rbの旋回方向(
図4、
図5参照)が、搬送路面111の路幅方向Sで相互に逆方向に設定されている。
なお、本
参考例では、旋回流形成部130A、130Bを構成する樹脂成型加工してなる鍔付きの円形カップ状の部材は、ベース部110と別部材で形成されてベース部110に嵌め込まれているが、ベース部110自体に一体的に形成されていてもよい。
【0025】
さらに、気体受入凹部140は、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に設けられている。
そして、気体受入凹部140は、左右一対の旋回流形成部130A、130Bからそれぞれ旋回流Ra、Rbとして溢出して合流する空気を受け入れるために、搬送方向Tに向かって細長の矩形状凹部を呈するように構成されている。
また、機台フレーム120は、水平方向に対するベース部110の姿勢を調整自在に設けられ、本
参考例では、ベース部110の搬送路面111の設置姿勢が水平となるように調整されている。
【0026】
ここで、先ず、
図3を用いて、旋回流形成部130A(130B)から溢出される旋回流R、および、被搬送物Cを下方の旋回流形成部130A(130B)側へ引き寄せようとする力Dが発生する原理について説明する。
前述した旋回流形成部130A(130B)の気体噴射口132から空気が噴射されると、噴射された空気が案内凹所131の周側壁131aに沿って流れ、案内凹所131内で旋回流Rが連続的に継続して形成される。
そして、空気が、気体噴射口132から順次噴射されるので、案内凹所131内から連続的に発生してくる旋回流Rは、被搬送物C側に向かって上方へ移動し溢出する。
この際、旋回流Rが案内凹所131の周側壁131aから上方へ移動し、案内凹所131の周側壁131aから離れるため、溢出した旋回流Rの遠心力により旋回流Rの旋回半径が旋回流Rの旋回中心を基準に拡大する。
つまり、旋回流Rが放射方向へ広がりながら旋回する。
そして、旋回流Rの旋回中心近傍の空気が放射方向へ引っ張られるようにして、旋回流Rの旋回中心近傍の気圧が下がり旋回流Rの旋回部分に生じる気圧と比べて相対的に低くなる。
そのため、被搬送物Cに対して負圧が作用して被搬送物Cを下方の旋回流形成部130A(130B)側へ吸引して引き寄せようとする力Dが発生する。
この引き寄せようとする力Dと被搬送物Cを溢出した旋回流Rで浮上させようとする力とが釣り合って、被搬送物の浮上位置に被搬送物Cが保持される。
【0027】
続いて、本発明についての理解を容易にするために、
図4を用いて、参考として気体受入凹部を設けていない構成の旋回流作用力を説明する。
図4の参考図では、旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面111の路幅方向Sで左右相互に離間して一対配設されている。
なお、U軸が示すのは、浮上方向(鉛直方向)である。
さらに、旋回流形成部130A、130Bでそれぞれ発生する旋回流Ra、Rbの旋回方向が、搬送路面111の路幅方向Sで相互に逆方向に設定されている。
【0028】
ここで、
図4中の左側の旋回流形成部130Aの旋回流Raが案内凹所131外に出た際、T軸矢印の方向と逆方向に作用する旋回流Raの旋回流作用力をfa1、T軸矢印の方向に作用する旋回流Raの旋回流作用力をfa2とする。
同様に、
図4中の右側の旋回流形成部130Bの旋回流Rbが案内凹所131外に出た際、T軸矢印の方向と逆方向に作用する旋回流Rbの旋回流作用力をfb1、T軸矢印の方向に作用する旋回流Rbの旋回流作用力をfb2とする。
そして、fa1、fb1の和であり、搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ作用する旋回流作用力をF1とし、fa2、fb2の和であり、搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向域)へ作用する旋回流作用力をF2とする。
【0029】
このとき、配置された左右一対の旋回流形成部130A、130Bに挟まれた搬送路面111の搬送方向Tに沿った中央部分側111aでは、双方の旋回流Ra、Rbが逃げ場を失って相互に干渉したり乱れたりしてそれぞれ旋回流Ra、Rbの旋回力、すなわち、旋回流作用力fa1、fb1が減殺される。
他方、左右一対の旋回流形成部130A、130Bにおける路幅方向の両外側111bでは、双方の旋回流Ra、Rbが相互に干渉したりしないため、旋回流Ra、Rbの旋回力、すなわち、旋回流作用力fa2、fb2が減殺されない。
その結果、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの相互間で搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向と逆方向)へ作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1に対して、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの路幅方向の両外側で搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向)へ作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2が相対的に大きくなる。
さらに、被搬送物Cを吸引して下方の旋回流形成部130A、130B側へそれぞれ引き寄せようとする力Dに起因して生じる面摩擦によって被搬送物Cに伝わる力は、搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向と逆方向)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1よりも搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2の方が大きくなる。
【0030】
したがって、搬送力を受けて被搬送物Cは、T軸の矢印方向へ移動する。
つまり、左右一対の旋回流形成部130A、130Bが、旋回流Ra、Rbの旋回力を活用して被搬送物Cを非接触で浮上させつつ搬送する。
この際、ただ単に、搬送する方向へ空気の力を被搬送物Cに対して付加しているのではなく、上述した負圧による引き寄せようとする力Dが被搬送物Cに対して作用した状態で、搬送する方向への旋回流作用力F1、F2を付加しているため、旋回流作用力F1、F2の相対的な差として搬送力が被搬送物Cへ確実に伝えられる。
【0031】
続いて、
図5を用いて、本発明の第1
参考例において搬送力が発生する原理について説明する。
ここで、
図4の参考図と同様、
図5中の左側の旋回流形成部130Aの旋回流Raが案内凹所131外に出た際、T軸矢印の方向と逆方向に作用する旋回流Raの旋回流作用力をfa1、T軸矢印の方向に作用する旋回流Raの旋回流作用力をfa2とする。
また、
図5中の右側の旋回流形成部130Bの旋回流Rbが案内凹所131外に出た際、T軸矢印の方向と逆方向に作用する旋回流Rbの旋回流作用力をfb1、T軸矢印の方向に作用する旋回流Rbの旋回流作用力をfb2とする。
そして、fa1、fb1の和であり、搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ作用する旋回流作用力をF1とし、fa2、fb2の和であり、搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向域)へ作用する旋回流作用力をF2とする。
【0032】
このとき、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの路幅方向外側111bにおける旋回流Ra、Rbは放射方向へ分散されて旋回流Ra、Rbの旋回流作用力fa2、fb2が小さくなる。
他方、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの間で旋回流Ra、Rbが気体受入凹部140に流れ込んで搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)への流路が形成されて気体受入凹部140の大きさによっては気体受入凹部140における旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1が路幅方向Sで隣り合う二つの旋回流形成部130A、130Bの路幅方向外側111bにおける旋回流Rの旋回流作用力F2より大きな関係となる。
【0033】
さらに、引き寄せようとする力Dに起因して生じる面摩擦によって被搬送物Cに伝わる力は搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向域)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2よりも搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1の方が大きくなる。
したがって、搬送力を受けて被搬送物Cは、T軸矢印の方向と逆方向へ移動する。
つまり、気体受入凹部140を設けていない構成(
図4参照)と比べて搬送時の移動方向が逆向きの関係となる。
【0034】
なお、技術的思想として、搬送時の移動方向が逆向きの関係となるためには、気体受入凹部140の大きさ、特に、搬送方向Tから視た断面積を、ある程度大きくする必要がある。
本
参考例の気体受入凹部140の大きさは、この関係を満たす十分な大きさであるものとする。
つまり、気体受入凹部140を設けても必ず搬送時の移動方向が
図4の参考図の例と逆向きの関係になるわけではなく、例えば、搬送方向Tから視た断面積を徐々に大きくすると、旋回流作用力F1と旋回流作用力F2とが釣り合うときがある。
そして、釣り合ったときよりも搬送方向Tから視た断面積が大きければ、
図4の参考図の例と逆向きの関係になる。
【0035】
また、搬送路面111より低位置に存在する気体受入凹部140の底面部分が、搬送路面111の裏面側に向けて開放されているように構成してもよい。
この場合、気体受入凹部140に入ってきた旋回流Ra、Rbの空気の十分な逃げ場ができて空気の流れが妨げられない。
つまり、気体受入凹部140が開放されていないときと比べて搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1が大きくなり搬送力が増加する。
【0036】
また、旋回流作用力F1と旋回流作用力F2とが釣り合うときの搬送方向Tから視た気体受入凹部(140)の断面積よりも小さい場合であっても、気体受入凹部140の搬送路面111より底側が開放されていることにより、旋回流作用力F1と旋回流作用力F2とが釣り合うときの搬送方向Tから視た気体受入凹部(140)の断面積よりも大きい場合と効果が得られる。
【0037】
さらに、本
参考例では、旋回流形成部130A、130Bから搬送路面111と被搬送物Cとの間隙に溢出して過剰に滞留する空気を逃す気体解放孔150が、搬送路面111に分散して配設されている。
これにより、気体解放孔150が過剰に滞留する空気の逃げ場となり、旋回流形成部130A、130Bから順次溢出してくる空気の流れが妨げられない。
つまり、気体解放孔150が設けられていないときと比べて搬送方向Tの前方域および後方域へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力を大きくするとともにその相対的な差も大きくして搬送力を増加させる。
【0038】
また、本
参考例では、旋回流形成部130A、130Bが、空気の噴射力を択一的に選択可能な別部品として搬送路面111に着脱自在に取り付けられている。
これにより、旋回流形成部130A、130Bを付け替えるだけで旋回流Rによる旋回力の強さが変更可能となる。
例えば、気体噴射口132の孔の大きさが変わることにより旋回流Rによる旋回力の強さが変わり、被搬送物Cの搬送速度を自在に調整することが可能となる。
【0039】
このようにして得られた本発明の第1
参考例である非接触式浮上搬送装置100は、旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面111の路幅方向Sで左右相互に離間して一対配設され、旋回流形成部130A、130Bでそれぞれ発生する旋回流Ra、Rbの旋回方向が、搬送路面111の路幅方向Sで相互に逆方向に設定され、左右一対の旋回流形成部130A、130Bからそれぞれ旋回流Ra、Rbとして溢出して合流する空気を受け入れる気体受入凹部140が、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に設けられていることにより、一対の旋回流形成部130A、130Bが、旋回流Ra、Rbの旋回力を活用して接触式の駆動機構を付設することなく簡便な装置構成で、被搬送物Cを非接触状態で浮上させながら円滑に搬送することができ、搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向)への搬送力(F1とF2との相対的な差)を調整することができる。
【0040】
また、旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面下に設けられて搬送路面上に開口する有底の周側壁131aと、この周側壁131aの接線方向から周側壁131aで囲繞される旋回形成空間領域内へ空気を噴射して旋回流Ra、Rbを発生させる気体噴射口132とを備えていることにより、モータなどの回転構造を不要として非接触式浮上搬送装置100を簡素化することができる。
【0041】
さらに、本
参考例では、搬送路面111より低位置に存在する気体受入凹部140の底面部分が、搬送路面111の裏面側に向けて開放されていることにより、気体受入凹部140が開放されていないときと比べて搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1を大きくして搬送力を増加させることができる。
【0042】
さらに、旋回流形成部130A、130Bから搬送路面111と被搬送物Cとの間隙に溢出して過剰に滞留する空気を逃す気体解放孔150が、搬送路面111に分散して配設されていることにより、気体解放孔150が設けられていないときと比べて搬送方向Tの前方域および後方域へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1、F2を大きくするとともにその相対的な差も大きくして搬送力を増加させることができる。
【0043】
また、旋回流形成部130A、130Bが、空気の噴射力を択一的に選択可能な別部品として搬送路面111に着脱自在に取り付けられていることにより、バルブなどの噴射力調整手段を用いることなく搬送方向Tへの旋回流作用力F1、F2を調整して搬送力を調整することができるなど、その効果は甚大である。
【0044】
続いて、本発明の第2
参考例である非接触式浮上搬送装置200について、
図6および
図7に基づいて説明する。
ここで、
図6は、本発明の第2
参考例の非接触式浮上搬送装置200を示す斜視図であり、
図7は、
図6の符号7から視た平面図である。
第2
参考例の非接触式浮上搬送装置200は、第1
参考例の非接触式浮上搬送装置100の旋回流形成部130A、130Bの配置数および配列形態を変更したものであり、多くの要素について第1
参考例の非接触式浮上搬送装置100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
【0045】
本発明の第2
参考例である非接触式浮上搬送装置200では、
図6および
図7に示すように、旋回流形成部230Aおよび旋回流形成部230Bが、搬送路面211の路幅方向Sで左右相互に離間して一対配設されているとともに搬送路面211の搬送方向Tで前後相互に離間して複数配設されている。
さらに、旋回流形成部230A、230Bでそれぞれ発生する旋回流Ra、Rbの旋回方向が、搬送路面211の路幅方向Sで相互に逆方向に設定されているとともに搬送路面211の搬送方向Tで相互に同一方向に設定されている。
これにより、上述した第1
参考例と同様の効果を得ることができる。
さらに、搬送方向Tに配列された複数組の旋回流形成部230A、230Bで生じた旋回流Ra、Rbのそれぞれが被搬送物Cに対して搬送方向Tへの旋回流作用力F1、F2を作用する。そして、旋回流作用力F1、F2の相対的な差として搬送力が被搬送物Cに作用する。
【0046】
このようにして得られた本発明の第2
参考例である非接触式浮上搬送装置200は、旋回流形成部230A、230Bが、搬送路面211の路幅方向Sで左右相互に離間して一対配設されているとともに搬送路面211の搬送方向Tで前後相互に離間して複数配設され、旋回流形成部230A、230Bでそれぞれ発生する旋回流Ra、Rbの旋回方向が、搬送路面211の路幅方向Sで相互に逆方向に設定されているとともに搬送路面211の搬送方向Tで相互に同一方向に設定され、左右一対の旋回流形成部230A、230Bからそれぞれ旋回流Ra、Rbとして溢出して合流する空気を受け入れる気体受入凹部240が、左右一対の旋回流形成部230A、230Bの相互間で搬送方向に延在する気体合流領域A内に設けられていることにより、一対の旋回流形成部230A、230Bが、接触式の駆動機構を付設することなく簡便な装置構成で、被搬送物Cを非接触状態で浮上させつつ搬送力を発生させて被搬送物Cを非接触で円滑に搬送することができ、上記第1
参考例と比べて搬送力を大きくすることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例1】
【0047】
続いて、本発明の第
1実施例である非接触式浮上搬送装置300について、
図8(A)および
図8(B)に基づいて説明する。
ここで、
図8(A)は、本発明の第
1実施例において気体受入凹部340の搬送路面311より底側が閉塞しているときに搬送力が発生する原理を示す図であり、
図8(B)は、気体受入凹部340の搬送路面311より底側が開放しているときに搬送力が発生する原理を示す図である。
【0048】
第
1実施例の非接触式浮上搬送装置300は、第1
参考例の非接触式浮上搬送装置100の搬送路面111より低位置に存在する気体受入凹部140の底面部分を開閉自在に形成したものであり、多くの要素について第1
参考例の非接触式浮上搬送装置100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を付すのみとする。
【0049】
本発明の第
1実施例である非接触式浮上搬送装置300では、
図8(A)および
図8(B)に示すように、左右一対の旋回流形成部330A、330Bからそれぞれ旋回流Ra、Rbとして溢出して合流する空気を受け入れる気体受入凹部340が、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に設けられている。
【0050】
そして、気体受入凹部340の大きさ、特に、搬送方向Tから視た断面積は、旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1と旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2とが釣り合うときの搬送方向Tから視た気体受入凹部(340)の断面積よりも小さく設けられている。
図8(A)に示すように、開閉切り替え手段360によって搬送路面311より低位置に存在する気体受入凹部340の底面部分が閉塞された状態になっている。
【0051】
このとき、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aでは、旋回流Ra、Rbが気体受入凹部340に流れ込んでT軸の矢印と逆方向への流路が形成されるが気体受入凹部340の大きさが十分ではないため、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aでは旋回流Ra、Rbが逃げ場を失って旋回流Rの旋回流作用力fa1、fb1が減殺される。
他方、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの路幅方向外側311bでは、双方の旋回流Ra、Rbが相互に干渉したりしないため、旋回流Ra、Rbの旋回流作用力fa2、fb2は減殺されない。
【0052】
そして、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aでT軸の矢印と逆方向へ作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1に対して相対的に左右一対の旋回流形成部330A、330Bの路幅方向外側311bでT軸の矢印方向へ作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2が大きな関係となる。
さらに、前述した引き寄せようとする力Dに起因して生じる面摩擦によって被搬送物Cに伝わる力はT軸の矢印と逆方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1よりもT軸の矢印方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2の方が大きくなる。
したがって、搬送力を受けて被搬送物Cは、T軸の矢印方向へ移動する。
【0053】
そして、
図8(B)に示すように、開閉切り替え手段360によって搬送路面311より低位置に存在する気体受入凹部340の底面部分が開放された状態に切り替えられる。
すると、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aでは、気体受入凹部340に入ってきた旋回流Ra、Rbの空気の十分な逃げ場ができて空気の流れが妨げられなくなり、気体受入凹部340が閉塞されたときと比べて、T軸の矢印と逆方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1が大きくなり搬送力が増加する。
つまり、旋回流Ra、Rbの旋回流作用力fa1、fb1が減殺されない、または、減殺される程度が小さい。
【0054】
そして、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aの気体受入凹部340における旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1が左右一対の旋回流形成部330A、330Bの路幅方向外側311bにおける旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2より大きな関係となる。
さらに、前述した引き寄せようとする力Dに起因して生じる面摩擦によって被搬送物Cに伝わる力はT軸の矢印方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2よりもT軸の矢印と逆方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1の方が大きくなる。
したがって、搬送力を受けて被搬送物Cは、T軸の矢印と逆方向へ移動する。
【0055】
このようにして得られた本発明の第
1実施例である非接触式浮上搬送装置300は、搬送路面311より低位置に存在する気体受入凹部340の底面部分が、開閉自在に形成されていることにより、被搬送物Cの搬送時の移動方向を切り替えることができるなど、その効果は甚大である。
【0056】
続いて、本発明の第
3参考例である非接触式浮上搬送装置400について、
図9(A)〜
図9(C)に基づいて説明する。
ここで、
図9(A)〜
図9(C)は、本発明の第3
参考例の気体受入凹部440a〜440cのバリエーションを示す平面図である。
第
3参考例の非接触式浮上搬送装置400は、第1
参考例の非接触式浮上搬送装置100の気体受入凹部140の形状や配置を変更したものであり、多くの要素について第1
参考例の非接触式浮上搬送装置100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する400番台の符号を付すのみとする。
【0057】
第1変形例では、
図9(A)に示すように、気体受入凹部440aが、左右一対の旋回流形成部430A、430Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に配設されている。
気体受入凹部440aは、左右一対の旋回流形成部430A、430Bのそれぞれの中心を結ぶ仮想線上に配設されていなくても、その近傍に配設されていれば上述した第1
参考例と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
第2変形例では、
図9(B)に示すように、気体受入凹部440bが、左右一対の旋回流形成部430A、430Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に配設されている。
気体受入凹部440bは、平面視で搬送方向Tに長尺な楕円形に形成されている。
この場合も上述した第1
参考例と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
第3変形例では、
図9(C)に示すように、気体受入凹部440cが、左右一対の旋回流形成部430A、430Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に配設されている。
気体受入凹部440cは、平面視で円形に形成され、路幅方向Sで隣り合う二つの旋回流形成部430A、430Bのそれぞれの中心を結ぶ線に対して搬送方向Tでずれた位置に配設されている。
この場合も上述した第1
参考例と同様の作用効果を得ることができる。