特許第6288587号(P6288587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6288587液体と接触することを意図した物品、特に包帯
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288587
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】液体と接触することを意図した物品、特に包帯
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   A61F13/00 301M
   A61F13/00 301J
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-523644(P2015-523644)
(86)(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公表番号】特表2015-522390(P2015-522390A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】IB2013056010
(87)【国際公開番号】WO2014016759
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年6月30日
(31)【優先権主張番号】1257108
(32)【優先日】2012年7月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510336565
【氏名又は名称】コミッサリア タ レネルジー アトミク エ オ エネルジー オルタネイティヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】513323151
【氏名又は名称】ラボラトワール・ウルゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】フイエ イヴ
(72)【発明者】
【氏名】マルシケ シリル
(72)【発明者】
【氏名】ルヴォルカヴァリエ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ペルノ ジャン マルク
(72)【発明者】
【氏名】ルコント セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ラモアゼ ミシェル
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−078369(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152368(WO,A1)
【文献】 特開2012−005744(JP,A)
【文献】 米国特許第04676785(US,A)
【文献】 特開平11−056900(JP,A)
【文献】 特表2010−522595(JP,A)
【文献】 特表2006−517427(JP,A)
【文献】 特開2008−142220(JP,A)
【文献】 特開平07−016256(JP,A)
【文献】 特開2006−025918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00 − 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(L)の貯蔵特性および/または排出特性を有する物品(10)であって、前記物品(10)は、包帯である物品(10)において、該物品(10)は、
液体(L)の存在下で膨潤できる物質からなりかつ液体排出ゾーンに対して近位に配置される液体透過性近位側構造(20)と、
液体(L)を排出できかつ液体排出ゾーンに対して遠位に配置される遠位側構造(30)と、
遠位側構造(30)と近位側構造(20)との間に延びている疎水性および非吸水性を有するインサート構造(40)とを有し、該インサート構造(40)は、前記物質が膨潤されないときには、遠位側構造(30)と近位側構造(20)との間にギャップを維持することによりこれらの両構造の間の液体の交換を局部的に制限でき、かつ前記物質が液体との接触に応答して膨潤する少なくとも1つのゾーン(P)における近位側構造(20)の局部的膨張を許容し、この膨張により、近位側構造(20)および遠位側構造(30)は互いに局部的に接近され、かつ遠位側構造(30)まで膨張された近位側構造(20)の前記ゾーン(P)から液体が移送されることを特徴とする物品。
【請求項2】
前記近位側構造(20)は、膨潤できる物質の不均一分布を有することを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記インサート構造(40)は開口を備え、近位側構造(20)の膨張はインサート構造(40)の開口(50)内で少なくとも部分的に生じることを特徴とする請求項1または2記載の物品。
【請求項4】
前記インサート構造(40)は独立セル疎水性胞状物物質で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の物品。
【請求項5】
前記インサート構造(40)は、該インサート構造(40)が曲げを受けると開口できるスロット(110)を有していることを特徴とする請求項1または2記載の物品。
【請求項6】
前記膨潤できる物質は、
・セルロース繊維および高吸水性ポリマーの粒子をベースとする高吸水性ポリマーの粒子または不織布である少なくとも1つの高吸水性ポリマー(SAP)からなる物質、または、
・水膨潤性胞状物物質であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の物品。
【請求項7】
前記近位側構造は、液体排出ゾーンと接触するようになることを意図した界面層(23)、より詳しくは膨潤できる物質のインサート(22)およびインサート構造(40)と接触している界面層からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の物品。
【請求項8】
前記インサート構造(40)は、遠位側構造(30)への近位側構造(20)の取付けを行い、より詳しくは少なくとも1つの開口(50)を形成すべく遠位側構造と近位側構造との間で不連続に延びる水不透過性接着剤層からなり、近位側構造の物質の膨潤により、近位側構造と遠位側構造とが接触されて液体が遠位側構造に移送されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の物品。
【請求項9】
前記近位側構造(20)は、膨潤できる物質が膨潤されていないときはインサート構造(40)内に挿入されていて、インサート構造(40)の厚さの一部のみに亘って延びていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の物品。
【請求項10】
前記近位側構造(20)は膨潤できる物質のインサート(22)を備えているか、該インサート(22)で形成されており、インサート構造(40)は、好ましくは、インサート(22)の少なくとも一部が挿入される開口(50)を有し、インサート構造(40)は、膨張前はインサートが遠位側構造に接触しない充分な厚さを有し、インサート構造(40)は、より詳しくは、インサートの厚さより大きいが、インサート(22)の膨潤によりインサート(22)を遠位側構造(30)と接触させるのに充分なほど小さい厚さを有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の物品。
【請求項11】
前記遠位側構造(30)は近位側構造(20)の方向に開口している少なくとも1つのキャビティ(95)を有し、該キャビティ(95)は、その少なくとも一部が、膨潤が生じ易い近位側構造のゾーン上に重ねられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の物品。
【請求項12】
前記インサート構造(40)は開口を備えた2つの層(401、402)を有し、1つの下方層(401)は近位側構造(20)の側に配置されかつ1つの上方層(402)は遠位側構造(30)の側に配置され、上方層(402)の開口(502)は、下方層(401)の開口(501)よりも小さい断面を有しかつ下方層(401)の開口(501)の上に重ねられ、膨潤できる物質は、乾燥しているときは、少なくとも一部が下方層(401)の開口(501)内に収容されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の物品。
【請求項13】
前記膨潤できる物質は下記配合(混合物の全重量に対する重量%で示す)、すなわち、 ・10〜90%の水膨張性ポリマー(単一または複数)
・1〜20%の水溶性バインダ(単一または複数)
・0〜20%のグリセロール、および
・30〜80%の均質化液体
を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の物品。
【請求項14】
前記遠位側構造(30)は、マトリックス分布にしたがって配置された複数のキャビティ(95)を有し、該キャビティは、好ましくは、膨潤できる近位側構造のゾーンのように分布されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項記載の物品。
【請求項15】
前記遠位側構造(30)は、500g/m2以上の液体吸収能力を有するリザーバ形成層(31)を有していることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近位側が液体(特に、皮膚、傷および/または粘膜から分泌される液体)と接触することを意図した物品であって、これらの液体の伝播および貯蔵を管理する物品、より詳しくは(但しこれに限定するものではないが)傷に適用される包帯に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の伝播および貯蔵の管理は、解決すべき複雑な問題であり、包帯および衛生用品の分野で提案されている物品は、現時点で完全に満足できる解決法を提供していない。
【0003】
実際に、これらの物品は、相容れない特性を有する仕様を満たすものでなくてはならない。第1の条件は、できる限り遠くにかつできる限り迅速に液体を移動させ、皮膚、傷または粘膜のレベルでの液体の蓄積による離解性(maceration)または炎症のあらゆる現象を防止することである。液体は、蓄積してはいけないが、より良い衛生を保証しおよび使用者の快適性の利益を保つ目的で、湿った領域の増大を減少させるため、分泌部位からの液体の横移動を防止することも好ましい。
【0004】
このことは、包帯が使用される場合に特に重要である。この場合、傷の縁部に位置する非常にデリケートな皮膚(病変部近傍の皮膚と呼ばれる)が濡れることを防止することが重要である。なぜならば、皮膚が濡れると、例えば感染症および/または炎症のような皮膚の変質が引き起こされるからである。
【0005】
したがって、包帯は、傷から分泌される体液を功利的に排出することが望まれ、特に、これらの液体が分泌部位から該部位の周辺部に横移動するのを防止することが望まれる。このような排出により、傷の周辺部を乾燥状態に維持でき、このためより良い衛生状態が維持されかつ治癒状態が改善される。
【0006】
第2の条件は、これらの液体を貯蔵して、皮膚、傷または粘膜に戻ることを防止することである。大きな貯蔵能力は、物品の使用期間を長くできる。包帯の場合には、使用期間は特に重要である。なぜならば、包帯をそれほど頻繁でなく交換することにより、傷の治癒過程を損なう危険性が低下されるからである。しかしながら、貯蔵能力を最適化すると、液体の蓄積のため物品が厚くかつ重くなってしまう。このため、液体が漏洩する危険、および物品が重くなるためおよび例えば下肢潰瘍上の包帯は垂直になるため外れてしまう危険が生じる。また、貯蔵ゾーンから皮膚、傷または粘膜への液体の戻りが増大してしまう。実際のところ、包帯が適用される身体領域の解剖学的構造に適合するように、できる限り薄く、フレキシブルで快適な物品を得ることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第2004/0127833号明細書
【特許文献2】米国特許第4 676 785号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1 974 705(A1)号明細書
【特許文献4】欧州特許第0 875 222号明細書
【特許文献5】国際公開第00/16725号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、液体、より詳しくは傷、皮膚または粘膜から分泌された液体の伝播および貯蔵を管理でき、分泌箇所から液体を遠ざけることにより、液体の蓄積のみならず液体の横移動および皮膚、傷または粘膜への戻りをも防止できる物品を提供することが望まれている。また、包帯の場合には、最適仕様では、包帯ができる限り薄くかつ快適で、貯蔵層を設けることに付随する欠点が無く、包帯を周期的に交換する必要性を低減するか、無くすこともできることが望まれている。
【0009】
本発明は、正確には、上記目的を満たす物品、特に包帯を作ることを目指すものである。
【0010】
また本発明は、使用者の快適性を損なうことなく漏洩体液の高い吸収能力が得られる包帯以外の衛生用品、例えば使い捨て可能なおむつまたは女性用衛生用品を完全なものとすることを目指すものである。
【0011】
特許文献1には、吸収剤を受入れる独立キャビティが形成された吸収構造を有する包帯の製造方法が開示されている。これらのキャビティは包帯の貯蔵能力の増大を目指すに過ぎず、上記目的の満足できる達成は不可能である。
【0012】
特許文献2には、液体が孔から近位側に導入された後に物質が膨潤することによって、前記孔を閉じる弁部材を形成する構成の物品が開示されている。水膨潤性物質を収容したセルが、液体排出ゾーンに対する遠位側構造を構成する不透過性ベースフィルムにより支持されている。液体が、流体排出側に位置する物品の面から遠位側構造に移送されることはない。
【0013】
特許文献3には、皮膚と接触する近位側構造と、不透過性フィルムから形成された遠位側とを備えた物品が開示されている。液体の吸収の後に、物品のキャビティ内に存在する物質の膨張が生じるが、この膨張によって遠位側構造への液体の移送が生じることはない。
【0014】
これらの2つの特許文献では、膨潤できる物質が、液体を収容するキャビティ内の液体のための孔に対向して存在する。
【0015】
特許文献4には、水の吸収効果により膨潤できる吸収剤層を有し、該吸収剤層の膨張により、傷と接触するスリットが開口される構成の物品が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の第1態様によれば、この発明の要旨は、液体排出特性および/または液体貯蔵特性を有する物品、より詳しくは包帯にあり、該包帯は、
・液体の存在下で膨潤できる物質からなる液体透過性近位側構造と、
・液体を排出できる遠位側構造と、
・遠位側構造と近位側構造との間に延び、好ましくは開口を備えた疎水性および非吸水性を有するインサート構造とを有し、該インサート構造は、前記物質が膨潤されないときには、遠位側構造と近位側構造との間にギャップを維持することによりこれらの両構造の間の液体の交換を局部的に制限でき、かつ前記物質が液体との接触に応答して膨潤する少なくとも1つのゾーンにおける近位側構造の局部的膨張を許容し、この膨張により、近位側構造および遠位側構造は互いに局部的に接近され、かつ遠位側構造まで膨張された近位側構造の前記ゾーンから液体が移送されるように構成されている。
【0017】
インサート構造に開口がある場合には、開口内に膨張が生じ、開口を介しての近位側構造と遠位側構造との接触によって、毛管作用による移送が生じる。
【0018】
この発明によれば、物品は、分泌物を遠位側構造に排出することにより、分泌物が放出される箇所で分泌物を適切かつ効率的に排出できる。更に、物品が皮膚、傷および/または粘膜を覆う領域ではあるが、分泌物が放出されない領域が、遠位側構造内に存在する液体によって影響を受けることはない。なぜならば、インサート構造が存在するため、液体が近位側構造に向かって戻ることができないからである。
【0019】
特許文献2および特許文献3の教示とは異なり、遠位側構造への液体の排出が生じ、この液体は排出を続けることがある。この排出は弁部材の閉鎖に伴うことなく生じることがある。前記物質は、最初は、物品内で、反対側よりも、物品内に液体が流入する表面により近い方の側に配置される。
【0020】
用語「排出できる」とは、液体を貯蔵できる能力、横拡散により液体を拡散する能力または移送する能力を説明することを意図したものである。
【0021】
用語「横拡散」とは、物品の厚さが測定される方向に対して実質的に垂直な方向、すなわち物品が使用されるときに物品が置かれる表面に対して実質的に平行な方向への拡散を意味するものと理解すべきである。
【0022】
用語「膨潤できる物質」とは、水の存在により体積が、例えば少なくとも10%、より好ましくは200%、更には500%または3000%増大する物質を意味する。この物質は、高吸水性ポリマーからなる物質またはこのようなポリマーを含んだ物質で構成できる。
【0023】
用語「物質」は、単一物質または一緒に組合わされた1組の異なる物質を意味し、この場合、物質とは、例えば高吸水性物質の支持体として機能する1つ以上の他の物質と混合されるかこれらの物質の間に置かれる高吸水性物質からなる複合材料である。
【0024】
したがって、膨潤できる物質として、粉末、顆粒または繊維の形態をなし、液体と接触して膨潤する親水性コロイド、例えば親水性ポリウレタン発泡体または例えば親水性ポリウレタンゲルのような親水性ゲル等の水膨潤性胞状物物質(water-swelling alveolar material)がある。親水性コロイドの例として、例えばカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、アルギン酸塩または高吸水性ポリマー(superabsorbent polymers:SAP)等のセルロース誘導体があることに留意されたい。
【0025】
高吸水性ポリマー(SAP)として、例えば自身の重量の10〜50倍の水(代表例として生理液)を吸収できるが、適度の圧力が加えられた場合には水を解放できない1つ以上のポリマーを使用できる。水吸収能力は水分子とポリマーの親水基とのパワフルな相互作用、より詳しくは水素結合を確立できる能力で定まる。高吸水性ポリマーは、特に、デンプンベースのグラフトコポリマー、カルボキシメチルセルロースの架橋誘導体および改質された親水ポリアクリレートから選択される。より詳しくは、高吸水性ポリマーとして、加水分解されたデンプン/アクリロニトリルコポリマー、中和されたデンプン/アクリル酸コポリマー、鹸化されたコポリマー、アクリル酸および酢酸ビニルのエステル、加水分解されたアクリロニトリルコポリマー、アクリルアミドコポリマー、改質された架橋ポリビニルアルコール、架橋されたポリアクリレート塩、中和されかつ架橋されたポリアクリル酸、カルボキシル化されたセルロースまたはこれらの混合物がある。
【0026】
一般に、この物質は粉末状で使用され、液体、より詳しくは生理液と接触するだけで保持特性を有するゲルを形成する。
【0027】
好ましい高吸水性物質として、より詳しくは、例えばFavor(登録商標)-Pac230またはLuquasoab(登録商標)1161の名称で販売されているポリアクリル酸ナトリウムがあることに留意されたい。
【0028】
水膨潤性胞状物質として、例えばAdvaned Medical Solution(AMS)社からMCF.03の名称で販売されているような親水性ポリウレタン(PU)発泡体を使用することもできる。
【0029】
複合材料として、ポリマーベース配合物をベースとするマトリックス中に配合された上記親水性コロイドからなる物質、例えば包帯分野またはストーマ分野で使用されている親水性コロイド粘着性組成物、または例えば衛生分野で一般に使用されている、SAP粒子を配合した吸水性不織布のような織物材料があることに留意されたい。
【0030】
好ましくは、「エアレイド(Airlaid)」として知られている乾燥製造方法により得られる不織布を使用する。この不織布は、不織布の全重量に対するSAPの割合が20重量%〜60重量%のSAP粒子を含んでいる。このような不織布は、例えば、EAMCorporation社からNovathin(登録商標)の名称で販売されている。本発明の好ましい一実施形態によれば、熱接着物質またはラテックスが配合されていない高吸水性ポリマー粒子およびセルロース繊維をベースとする不織布であって、その両面がセルロースベースのウェブで被覆されている不織布が使用される。
【0031】
本発明の他の変更形態によれば、複合材料として、セルロースをベースとする2つのウェブからなる材料であって、これらのウェブの間に高吸水性ポリマーの粒子が単独でまたはバインダと組合わされて取り入れられた材料を使用することもできる。
【0032】
本発明の適用によれば、例えば親水性ポリウレタン発泡体またはSAP粒子をベースとする物質のように、可逆膨潤特性、すなわち乾燥している間は収縮してほぼ元の体積に戻ることができる、膨潤できる物質を使用するのが好ましい。
【0033】
一般に、包帯として使用するとき、特に、無害であるという観点から、滅菌に相容性を有しかつこの使用に適した物質が選択される。
【0034】
近位側構造は、分泌物が排出されるゾーン(単一または複数)とは反対側のみで物質の膨潤が本質的に生じるようにして、近位側構造内で分泌物が排出されるゾーン(単一または複数)から横方向には移動しない(殆ど移動しない)ように設計されることが望まれる。
【0035】
近位側構造は、膨潤できる物質の不均一分布、より詳しくは、近位側構造の平面にしたがったマトリックス分布を有し、例えば、膨潤できる物質が存在する領域同士の間に1〜20mmの範囲内のギャップを有する。膨潤できる物質の分布は離間している。すなわち、膨潤できる物質が存在する領域が互いに接触することはない。
【0036】
膨潤できる物質は、種々の方法で物品上に保持される。この場合、近位側構造には、膨潤できる物質の支持層として機能する透過性基板を設けるのが好ましい。この透過性支持層は、浸出液の横方向移動を制限するか、防止さえしなければならない。透過性支持層はまた、皮膚、傷または粘膜と接触することを意図した界面層としても機能する。
【0037】
一般に、支持層は、透過性を有するが、吸収性をもたない材料で形成する。
【0038】
透過性材料として、ニット、織物または不織布等の非吸収性織物材料があることに留意されたい。好ましくは、非吸収性不織布を使用できる。不織布としては、衛生分野および包帯分野で一般に使用されている任意の不織布を使用でき、より詳しくは、ウェブまたはカバーストックの用語で一般に呼ばれているスパンレイドカード不織布またはスパンレース不織布がある。その坪量は5〜50g/m2、好ましくは20〜40g/m2である。織物材料は、レーヨン、ビスコースまたはセルロース誘導体等の吸収性繊維を含まないことおよび吸収性粒子を含まないことを条件とする非吸収性材料であり、例えばポリアミド、ポリエステルおよび/またはポリオレフィン繊維がある。
【0039】
ウェブは親水性でも疎水性でもよいが、疎水性ウェブが好ましい。一実施形態によれば、ウェブはポリエチレン繊維を有している。スパンレイド不織布は、例えば、Fiberweb社からBerotex(登録商標)PE-SXの名称で販売されている疎水性スパンボンド型またはSandler社からSawabond(登録商標)4383の名称で販売されているポリエステル繊維およびポリエチレン繊維からなる親水性カード不織布を選択できる。
【0040】
非吸収性ウェブは疎水性繊維からなるのが好ましいが、親水性繊維で形成し、疎水性にする処理をすることもできる。逆に、疎水性繊維で形成し、親水性にする処理を施すこともできる。ウェブは、その透過性が充分であれば、幾つかの層で形成することもできる。
【0041】
支持層は単一材料で形成するか、種々の材料の並置により形成できるが、後者の場合は用語「複合材料」を使用する。
【0042】
他の透過性材料として孔明き材料または微孔材料があり、例えば、孔明きプラスチックフィルム(例えばポリウレタンまたはポリエチレンをベースとするもの)またはTredegar Film Product社から販売されている製品のような3Dフィルムがあることに留意されたい。これらの材料は当業者に良く知られており、衛生用品分野で一般に使用されている。また、透過性材料として、例えばLaboratoires Urgo社およびMolnlycke Health Care社からそれぞれUrgotul(登録商標)およびMepitel(登録商標)の名称で販売されている製品を使用できる。
【0043】
最後に、ポリマーをベースとする疎水性または親水性を有するが非吸水性または僅かな吸水性を有する配合物の孔明き層を使用できる。これらの配合物は、接着性を有するものでも、非接着性を有するものでもよい。包帯の場合には、傷から取外したときに治癒を損なわないようにする微接着性または非接着性にするのが好ましい。
【0044】
このような配合物は当業者に良く知られており、例えば、孔の閉塞を防止すべく組成物を吸収剤とすることなく治癒過程を促進する湿潤環境を創出するため、シリコーンゲル(単一または複数)、感圧シリコーン接着剤(単一または複数)またはポリ(スチレン-オレフィン-スチレン)型のブロックエラストマー、鉱物油および少量の親水性コロイド等の塑性化剤を含有する組成物をベースとして製造される。このような微接着性配合物は、例えば、Laboratoires Urgo社からUrgoclean(登録商標)およびUrgotul Absorb(登録商標)の名称で販売されている包帯に使用されている。
【0045】
可能な変更形態によれば、疎水性または親水性配合物からなるこれらの界面包帯およびこれらの孔明き層は、上記透過性材料、より詳しくは非吸収性不織布と組合わせることができる。
【0046】
本発明の一例示実施形態では、膨潤できる物質は透過性支持層により支持され、該支持層は、好ましくは、詳述したように疎水性でありかつ例えばインサート構造に対面する層の面に取付けられる。一変更形態では、膨潤できる物質は近位側構造の2つの層の間に存在し、これらの層を組立てることにより形成されるキャビティ内に捕捉される。
【0047】
膨潤できる物質は、例えばペレットまたは凝集体等のインサートの形態をなす非粉末状で物品の製造中に物品内に一体化され、インサートの最大寸法は、例えば1mm以上かつ15mm以下である。これらのインサートは、粉末状の高吸水性ポリマーからなる複合材料で作られる。本発明の一実施形態では、膨潤できる物質は、例えば円形または多角形(好ましくは正多角形)を有するペレットを形成できるパンチング作業によりシートから切断された後に物品内に組込まれる。
【0048】
本発明の他の実施形態では、物品の製造中に、粉末状でかつ不均一分布(例えばインサート構造の開口のように局部化されたクラスタの形態)で物品内に組込まれる。
【0049】
近位側構造は、前述のように、膨潤できる物質を物品上に保持するための少なくとも1つの支持層からなり、該支持層(単一または複数)は、膨潤できる物質が遠位側構造の方向に膨張することを妨げないと同時に、反対方向に膨張することは妨げることが好ましい。変更形態として、近位側構造は膨潤できる物質のみで形成され、膨潤できる物質を支持する機能はインサート構造により得るように構成できる。この場合、より詳しくは、膨潤できる物質は、例えばインサート構造内に収容されたペレットのような不連続なインサートの形態で組込むことができる。この場合、より詳しくは、インサート構造は、皮膚、傷または粘膜と接触する。好ましくは、特に包帯の場合の物品は傷との界面層を有し、該界面層は、傷と接触することになる物品の全下面に亘って延びている。この界面層は、膨潤できる物質を物品上に保持する機能を有するか否かは問わない。界面層は、近位側構造が皮膚および/または粘膜の方向に拡大することを制限しまたは防止するのに使用される。インサートは、界面層がインサート構造に当接して置かれると界面層により支持される。
【0050】
近位側構造は、膨潤できる物質が膨潤されていない場合には、全体としてインサート構造の外側に配置される。変更形態として、近位側構造は、膨潤できる物質が膨潤されていないときはインサート構造内に挿入され、インサート構造の厚さのごく一部に亘って延びている。
【0051】
近位側構造は、例えば、インサートの形態をなす膨潤できる物質を有し、該物質は、好ましくは、高吸水性物質の粒子が閉じ込められた不織布であり、インサート構造は、インサートが少なくとも部分的に挿入された開口を有し、インサート構造は、膨潤前はインサートが遠位側構造とは接触しない充分な厚さを有し、インサート構造は、より詳しくは、インサートの厚さより大きくかつインサートが膨潤して遠位側構造と接触できるのに充分小さい厚さを有する。
【0052】
インサート構造は疎水性および非吸収性を有し、これにより、近位側構造および遠位側構造を、近位側構造の膨張が生じない箇所で隔絶する。また、液体の横方向移動を防止しなければならず、開口を有する場合には、液体が1つの開口から他の開口へと横方向に移動することを防止しなければならない。インサート構造は、解剖学的輪郭に一致できるようにフレキシブルであることが好ましい。インサート構造は、例えば、熱可塑性材料、より詳しくはポリオレフィン、例えばポリエチレンで形成された発泡体の層の形態をなす独立セル胞状物質またはこの形式の幾つかの層のアセンブリである。インサート構造はまた、接着剤、ポリマーまたはエラストマーをベースとする疎水性および非吸収性を有するフィルム、織物材料または層の形態をなす。エラストマーとして、例えばポリウレタン、ポリジメチルシロキサンおよびこの変形物(一般に、「シリコーン」の総称で呼ぶ)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)、ポリフェニレンエーテルまたはブロックポリマーをベースとする配合物、例えば可塑化剤と組合わされた(スチレン-オレフィン-スチレン)形式または(スチレン-オレフィン)形式がある。
【0053】
包帯を構成する物品の場合、インサート構造の厚さは、例えば0.5〜4mmである。膨潤できる物質がインサート層内にインサートの形態で存在するときは、インサート構造の厚さはインサートの厚さより大きい。
【0054】
前述のように、インサート構造は好ましくは開口を有し、この場合には、近位側構造の膨張がインサート構造の開口内で少なくとも部分的に生じる。したがって、インサート構造の開口の分布は、膨潤できる物質の分布と実質的に同じであるのが有利であり、このため膨潤できる物質が存在する領域は、好ましくは各開口の中心に位置するようにして開口に重なる。開口は任意の形状にすることができる。開口は、物品の製造中にシートを切断することにより形成するか、前の作業中に切断することもできる。開口は全て同じ輪郭にしてもよいし、開口の分布は規則的でも不規則的でも構わない。開口の輪郭は、円形または多角形、より詳しくは正多角形にすることができる。開口はインサート構造の全厚に亘って均一な断面となるようにするか、近位側構造の方向に向かって減少させて、近位側構造の方向よりも遠位側構造の方向に向かって膨張が促進されるように構成できる。このように減少する断面を得るため、例えば、開口が減少するサイズで切断される幾つかのシートを使用し、次にこれらのシートを組立てることができる。また、例えばレーザを用いて所望の形状をもつ開口を直接切断することもできる。
【0055】
遠位側構造は液体を排出できる。すなわち、遠位側構造は、液体を貯蔵し、移送しおよび/または拡散させることができる。
【0056】
本発明の一例示実施形態では、遠位側構造は、500g/m2以上、更には800g/m2以上の吸水能力をもつリザーバ形成層を有している。リザーバ形成層は、インサート構造上に重ねられる。リザーバ形成層は、例えば衛生用品および包帯分野で一般的に使用されている吸収層のように、液体を貯蔵できる任意の材料で構成できる。例えば、吸収発泡体、好ましくは親水性ポリウレタン発泡体および前述のSAPベース物質、例えばコットンウールまたはヒドロゲルのようなビスコースベース、レーヨンベースまたはセルロースベースの不織布のような吸収性織物があることに留意されたい。
【0057】
本発明の他の例示実施形態では、遠位側構造は、500g/m2以上の吸水性を有するリザーバ形成層が省略される。この場合、遠位側層は、液体を拡散させまたは液体の移送を促進すべく液体を横方向に拡散させる層からなる。この場合、液体は、インサート構造の周囲に配置されたリザーバ形成層に向けてまたは液体が蒸発する自由端部に向けて放出される。
【0058】
リザーバ形成層がインサート構造の側に少なくとも部分的に配置されるときは、より薄くて、同等の吸収能力を有する物品を得ることができる。一例示実施形態では、リザーバ形成層は、インサート構造の全周に亘って延びている。リザーバ形成層がインサート層の側に配置されるときは、物品には、皮膚および/または粘膜と水不透過性のリザーバ形成層との間に配置されるバリヤ層を設けるのが有利である。リザーバ形成層がインサート構造の側に配置されるときは、液体は、遠位側構造の全部または一部を形成する移送層によりこのリザーバ形成層内に移送される。この移送層およびリザーバ形成層は、外側保護層がカバーすることができる。横方向拡散層とリザーバ層とを組合せて、両層間の接触面積を増大させ、リザーバ層による液体の吸収を促進させるのが好ましい。
【0059】
液体を拡散させることができおよび/または横方向拡散により移送できる物質は衛生用品および包帯分野で一般に使用されている。
【0060】
したがって、ニット、織物および特に不織布のような織物材料に留意されたい。これらの織物材料は、吸収性繊維または非吸収性繊維をベースとする疎水性または親水性織物である。不織布の中では親水性不織布が好ましく、特に、例えばポリエステル繊維またはポリオレフィン繊維のような非吸収性繊維と組合わされたビスコースまたはセルロース等の吸収性繊維をベースとする不織布が好ましい。このような不織布の例として、Suominen Corp and Orsa社からFibrella(登録商標)2000およびJettex(登録商標)1205cの名称で販売されている商品があることに留意されたい。
【0061】
他の材料として紙または微細構造フィルムがあり、これらのチャネルは液体を拡散しかつ移動させることができることに留意されたい。
【0062】
インサート構造は、近位側構造を遠位側構造に取付けることができ、より詳しくは遠位側構造と近位側構造との間で不連続に延びている水不透過性接着剤層で構成するか、このような層の形態にすることができ、これにより接着剤が存在しない少なくとも1つの開口を形成し、該開口で近位側構造の物質が膨潤すると、この膨潤作用下で近位側構造と遠位側構造との接触による液体の毛管作用により、液体が遠位側に移送される。
【0063】
遠位側構造は近位側構造の方向に開口している少なくとも1つのキャビティを有するのがよく、このキャビティは近位側構造の1つのゾーン上に少なくとも一部が重なっている。ここは膨潤が生じ易く、好ましくはインサート構造の1つの開口上に少なくとも一部が重なっている。このようなキャビティの存在により、近位側構造を、膨潤していない遠位側構造から部分的に距離を隔てることができ、かつインサート構造の厚さを減少させるか、膨潤できる物質が存在する箇所での近位側構造の厚さを増大させることができる。
【0064】
インサート構造には開口を備えた2つの層を設けることができ、一方の下方層は近位側構造の側に、一方の上方層は遠位側構造の側に設けられる。上方層の開口は、下方層の開口より小さい断面を有しかつ下方層の開口上に重ねられている。膨潤できる物質は、乾燥しているときには、少なくとも一部が下方層の開口内に収容される。膨潤できる物質は、下方層の開口を全体的に充満するか否かは問わない。このような変更形態は、膨潤できる物質を所定位置に保持することを容易にする。また、膨潤できる物質を収容するキャビティの段状の形状は、この膨潤できる物質で形成された流体遮断手段の水感度を高めるであろう。なぜならば、一定の断面および同じ高さを有するキャビティおよび同量の元の物質と比較した物質の同じ膨張体積では、幅狭の上方部分の存在により、物質が遠位側構造の方向に移動する距離を増大でき、したがってより迅速に遠位側部分に接触できるからである。
【0065】
下方層の開口は、好ましくは、5〜25mmの大きい寸法より詳しくは直径を有し、上方層の開口は、好ましくは、1〜10mmの大きい寸法より詳しくは直径を有している。
【0066】
膨潤できる物質は、近位側構造の側に接着剤を用いることなく下方層の開口内に保持されるのが好ましい。
【0067】
膨潤できる物質は、少なくとも物品の製造中、より詳しくはインサート構造の開口内への導入中はペースト状であることが好ましい。これにより、拡大および掻き取りにより膨潤できる物質を開口内に容易に配置できる。
【0068】
膨潤できる物質は、より詳しくはSAP粒子をベースとする水膨張性ポリマー、およびより詳しくはポリビニルピロリドンおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースをベースとする水溶性バインダからなる。
【0069】
膨潤できる物質は下記配合(混合物の全重量に対する重量%で示す)、すなわち、
・より詳しくはSAP粒子をベースとする10〜90%の水膨張性ポリマー(単一または複数)
・例えばポリビニルピロリドンおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースをベースとする1〜20%の水溶性バインダ(単一または複数)
・0〜20%のグリセロール、および
・より詳しくはアルコール、好ましくはエタノールをベースとする30〜80%の均質化液体
を有する。
【0070】
遠位側構造はマトリックス分布にしたがって配置された複数のキャビティを有し、キャビティは、好ましくは、膨潤できる近位側構造のゾーンのように分布される。キャビティ(単一または複数)の深さは、好ましくは、遠位側構造の厚さより小さく、例えば遠位側構造の厚さの10〜90%である。
【0071】
物品は滅菌状態にパッケージングされた包帯を構成するが、変更形態では使い捨て可能なおしめまたは女性の生理用品を構成できる。物品が包帯である場合には、予め形成された3つの構造(近位側構造、中間構造、遠位側構造)以外に、包帯は、使用前および使用中に無菌であることを保証するための付加層を有することが好ましい。かくして、傷の側には、界面層の性質、より詳しくは界面包帯であるかポリマーをベースとする配合であるかに基づいて、使用前に取外すことができる一時的プロテクタを設けることができる。反対側は、バクテリアおよび水に対しては不透過性を有するが水蒸気に対しては透過性を有し、液体の蒸発を促進する外側保護層によりカバーする。これらの層は、包帯の製造に一般的に使用されており、例えばExopack Advanced Coating社からInspireの名称で販売されているポリウレタンフィルムがある。このようなフィルムは、ガスより詳しくは水蒸気に対するフィルムの透過性に影響を与えないように、例えば不連続接着剤を用いて包帯に組付けられる。フィルムは、包帯の周囲で近位側構造に組付けられる。
【0072】
移送ストリップがインサート構造の長さより大きい長さを有する仕様では、移送ストリップを外側保護層によりカバーして、外側保護層内に存在する浸出物が傷の回りの領域を汚さないように防止し、またバクテリアによる包帯の外部汚染の危険を防止する。
【0073】
したがって、本発明の一態様によれば、本発明は液体を移送する用品に関し、該用品は、
液体と接触するようになることを意図した液体透過性近位側構造と、
液体透過性遠位側構造と、
近位側構造と遠位側構造との間に配置された疎水性および非吸水性を有するインサート構造とを有し、前記近位側構造は液体の効果の下で膨張できる物質からなり、該物質の膨潤により近位側構造と遠位側構造との間の距離が減少されて、液体は、近位側構造からインサート構造を通って遠位側構造に通ることができる。
【0074】
以下、本発明の非制限的な実施形態についての詳細な説明を読みかつ添付図面を参照することにより、本発明をより良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】本発明にしたがって製造された物品の一例を概略的かつ部分的に示す図面である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1の細部を示す図面である。
図4図1図3の物品が傷の上に置かれて使用されているところを示す図面である。
図5図1の物品の一変更形態を示す、図1と同様な図面である。
図6図1の物品の他の変更形態を示す、図1と同様な図面である。
図7図1の物品の他の変更形態を示す、図1と同様な図面である。
図8図1の物品の他の変更形態を示す、図1と同様な図面である。
図9図8のIX-IX線に沿う断面図である。
図10】一変更形態を示す図1と同様な図面である。
図11図10の物品の使用状態を示す図面である。
図12】本発明による物品の一変更形態を示す図1と同様な図面である。
図13図2の物品の使用状態を示す図面である。
図14】一変更形態を示す図3と同様な図面である。
図15】一変更形態を示す図1と同様な図面である。
図16図15の構造の開口を備えた層を上方から見た図面である。
図17図15の構造の開口を備えた層を上方から見た図面である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図面において、図面の明瞭化のため、種々の構成要素の実際の縮尺は必ずしも正確ではない。同様に、或る要素は、実際には互いに接触しているにも係わらず、ギャップがあるように示されていることもある。
【0077】
図1図4に示されている本発明の物品10は、傷に適用されることを意図した包帯であるが、以下の全説明は、包帯以外の物品、より詳しくは女性用衛生用品または使い捨て可能なおむつにも有効である。
【0078】
簡単化のため、全図面において包帯は、外側保護層を備えていないものが示されている。
【0079】
物品10は、皮膚および傷と接触する(好ましくは傷上で中心が合わされる)ことを意図した近位側構造20と、遠位側構造30と、インサート構造40とを有している。
【0080】
近位側構造、遠位側構造およびインサート構造の各々は、接着剤および/または物質の局部的融着を用いて永久的または非永久的に一体化される。接着剤層が使用される場合には、明瞭化のため接着剤層は必ずしも図示されない。
【0081】
図1図4の例では、遠位側構造30は、比較的高い吸収能力、より詳しくは500g/m2より大きい、更には800g/m2よりも大きい吸収能力で液体を吸収しかつ貯蔵するように作られる。変更例として、遠位側構造30は、液体が横移動できるように作られる。この移動は、液体が蒸発により排出される物品の領域に向かって、および/または後で詳細に説明するように、物品の側部に配置されるリザーバに向かって行われる。
【0082】
インサート構造40は、遠位側構造30と近位側構造20との間での液体の交換を制限可能にする。物品は、液体分泌ゾーン(単一または複数)P上に重ねられた物品のゾーン(単一または複数)内の液体の交換を促進するように、および液体分泌ゾーン(単一または複数)Pに対して横方向にオフセットしたゾーン(単一または複数)S内の遠位側構造から近位側構造への液体の交換を低減させまたは好ましくは無くすように構成されている。
【0083】
かくしてインサート構造40は、液体分泌ゾーン(単一または複数)Pのベースにギャップを維持する以外に、近位側構造20と遠位側構造30との間にもギャップを維持するように作られる。
【0084】
図1図4の例では、インサート構造40は、格子の孔のように配置された開口50を有し、該開口50は、互いに垂直な2方向の開口50同士の間に一定のギャップを有している。
【0085】
開口50の外側で、インサート構造40は、組立て領域52により遠位側構造30に接触しており、ここで、インサート構造40は、例えば接着または融着により遠位側構造30に取付けられる。
【0086】
近位側構造20は、水の存在下で膨潤できる物質からなる。この物質は、例えば、図示のように開口50内に挿入されるインサート22の形態をなしている。インサート22の膨潤(膨潤は、分泌液の存在下で開口50内で生じる)により、考察している例での近位側構造20を、図4に示すように遠位側構造30と接触する位置まで膨張させる。この接触により、液体を近位側構造20から遠位側構造30内に拡散できる流体ブリッジが形成される。
【0087】
物品10を製造するため、インサート構造40は、開口50を形成すべく、疎水性および非吸水性を有する物質のシートをパンチングすることにより、例えば格子の形態に作られる。
【0088】
インサート22は、水の存在下で膨潤能力を有する物質のシートを切断すると同時に、各インサート22の形状を、開口50の形状を補完する形状とするか、インサート22の少なくとも一部が開口50内に収容される形状にする。インサート22の厚さは開口50の深さより小さいので、ひとたび物品10が組立てられたときには、インサート22の自由面20と遠位側構造30との間には非ゼロギャップeが形成される。
【0089】
インサート22は、好ましくは図示のように、インサート構造40の下に配置される、皮膚、傷および/または粘膜との界面の層23により支持される。
製造中に、インサート22は、界面層23がインサート構造40に組付けられる前に、界面層23上の所定位置に置かれる。
【0090】
遠位側構造30は、図示のように、例えばリザーバ形成層31を有している。このリザーバ形成層31は、500g/m2以上の吸水能力を有し、かつ移送層32と、例えば水に対しては不透過性を有するが水蒸気に対しては透過性を有する外側保護層33との間に配置されている。
【0091】
移送層32は、インサート構造40に接着されるか、他の手段により組付けられる。
【0092】
物品10の使用中、物品10が置かれた少なくとも1つのゾーンP内の液体分泌物Lは、このゾーンP上に重ねられたインサート(単一または複数)22を膨潤する。
【0093】
インサート22が膨潤すると、該インサートはインサート構造40の全厚に亘って膨張して、遠位側構造30と接触するようになる。移送層32の箇所では、該移送層は、図示のように近位側構造20と遠位側構造30との間に流体ブリッジを局部的に形成する。この流体ブリッジは、近位側構造20から遠位側構造30への流体の移送を可能にし、考察している例では、リザーバ形成層31が分泌液を吸収することを可能にする。液体は次に、遠位側構造30内で、ゾーンPから横方向にオフセットした少なくとも1つのゾーンSへと横方向に拡散する。
【0094】
ゾーンS内に蓄積される液体は、未だ膨潤を受けていないインサート22と移送層32との間に空気充満空間が存在するため、物品10を通って垂直に下降することによって皮膚、傷および/または粘膜に戻ることはできない。かくして、物品10は、ゾーンS内に位置する皮膚、傷および/または粘膜の表面を乾燥状態に維持できる。
【0095】
界面層23を作るには、特許文献5の例1に開示されているように、高度に可塑化されかつ親水性コロイドの少量の粒子を含む疎水性エラストマーマトリックスから形成されたゲルでコーティングされた開メッシュ織物を使用できる。
【0096】
インサート22は、例えば、約1mmまたはその10分の1の厚さを有するシートの形態の水膨潤性物質から作られ、かつ傷と接触することを意図した界面層23の表面とは反対側の内表面上に配置される。
【0097】
インサート22を作るには、400g/m2の坪量および1.14mmの厚さを有するセルロース繊維および高吸水性ポリマーの基板であって、EAM社からJ4000950DTNBの商標で販売されているNovathin(登録商標)ブランドのシート材料、または約180g/m2の坪量を有し、Buckeys Steinfurt GmbH社からVizorb(登録商標)3924(180MBS3A)の商標で販売されているシート材料を使用できる。
【0098】
インサート構造40を作るには、独立気泡発泡体の幾つかの薄層(例えば3〜4層の薄層)を組立てて、3mm以上の厚さを達成する。この組立ては、例えば両面接着剤を用いて積層することにより行われる。インサート構造40は、例えば、0.8mmの厚さを有するAlveolit(登録商標)TEE.1000.8ブランドの独立気泡ポリエチレン(PE)疎水性発泡体の3つの層で形成される。開口50は例えば直径5mmの円形孔からなり、孔の中心は2方向に均一に1cmの間隔を隔てられる。
【0099】
移送層32は、例えばOrsa社からの不織布Jettex(登録商標)1205Cで形成され、リザーバ31を形成する層は、親水性発泡体、例えばAMS社の商標MCF03を有する厚さ4.5mmの親水性PU発泡体で作られる。
【0100】
界面層23とインサート構造40とを組付けるため、全アセンブリを、例えば加圧下で加熱することができる。
【0101】
移送層32をインサート構造40に接着するのに、例えば両面接着剤を使用できる。
【0102】
リザーバ形成層31の接着は、例えば65〜100℃の熱接着ウェブを用いて行うことができる。
【0103】
一変更形態では、界面層23は、前述のように、カバーストック型の疎水性不織布(Berotex(登録商標)PE-SX)と置換される。
【0104】
比較試験
試験は、23℃および33%および35%の湿度(hygrometry)で行われた。
【0105】
比較は、Urgotul Absorb(登録商標)の名称を有する既知の包帯と、図1図4に示された構造を有しかつ下記の材料で作られた本発明による包帯との間で行った。
・界面層23:特許文献5の例1によれば、ナトリウム・カルボキシメチルセルロースからなる親水性コロイドの親水性粒子の、ゲルの重量に対して約15重量%の懸濁液を含有する高度に可塑化された高分子量S-EB-Sエラストマーマトリックスから形成されたゲルでコーティングされたポリエステルヤーンで作られた熱硬化性ニット
・インサート22:Novathin(登録商標)J000950DTNBのペレット。ペレットの厚さは約1mm
・移送層32:セルロース(55%)およびポリエステル(45%)(Orsa社からのJettex(登録商標)1205C
・リザーバ形成層31:製造業者AMS社の商標MCF03を有する厚さ4.5mmの親水性PU発泡体
【0106】
膨潤を受けたのはどのインサート22であるか、およびインキが希釈されているのはどのインサート22であるかを使用後に確認するため、インサート22にはインキスポットを付すことができる。
【0107】
各包帯は、0.83重量%の塩化ナトリウムおよび0.04重量%の塩化カルシウムの溶液を噴射する焼結ガラススラブ上に置かれる。
【0108】
包帯の下面に接触されている焼結ガラススラブに連結されたシリンジドライバにより、体積10mlの溶液が噴射される。この焼結ガラススラブは、傷を模擬化したものである。25ミリバールの圧力を発生する重量を包帯の表面に加えて、包帯を水平に置く。焼結ガラススラブを通る液体噴射の流量は、10μl/分に設定される。
【0109】
試験の終時には、傷と接触しているインサートは膨潤を受けており、もはやインサート上にインキは見られない。模擬化した傷と接触していないインサートは、初期の外観が保たれている。比較参照した包帯(Urgotul Absorb)の場合には、皮膚と接触する湿潤表面積は90cm2であると見積もられるのに対し、本発明による包帯では湿潤表面積は僅かに7cm2であると見積もられている。すなわち、焼結ガラススラブの表面積は、病変部近傍の保護に関して有効であることを示している。かくして、本発明により、皮膚と接触する湿潤表面積は傷上に中心を有し、漏洩の危険性は、特に、包帯が水平でない場合に一層低減される。
【0110】
これらの結果は、本発明が、水平に配向される包帯および垂直に配向される包帯の両方に有効であることを示すものである。
【0111】
図5に示す物品10の変更形態は、インサート構造40上に重ねられる、リザーバ形成層31が、横方向にオフセットされかつインサート構造40の例えば全周に亘って延びているリザーバ形成層80に置換されている点で、図1図4に関連して説明した物品10とは異なっている。
【0112】
界面層23はリザーバ形成層80の下の水不透過層とするか、これらの界面層23とリザーバ形成層80との間にバリヤ形成層(図示せず)を導入することができる。
【0113】
図5の例では、遠位側構造30は移送層32に限定されており、移送層32は、該移送層32に到達した液体をリザーバ形成層80まで横方向に拡散させることができる。
【0114】
リザーバ形成層80をカバーする外側保護層82を設け、該外側保護層82は、その周囲で界面層23に組付けることができる。
【0115】
図5の例は、図1図4の例と同様に、流体連通の選択的トリガリングを可能にする構造を有し、すなわち、インサート構造40を貫通して形成された開口50内にインサート22が配置されている。
【0116】
物品10を実質的に均一な厚さにするため、リザーバ形成層80の厚さは、例えば図示のように、インサート構造40の厚さの約±20%の厚さに等しくする。
【0117】
使用中に、傷から分泌される液体は、傷の上のインサート22を膨潤させて、これらのインサート22と移送層32とを接触させ、次に移送層32内の液体をリザーバ形成層80の方向に拡散させて、リザーバ形成層80内に液体を蓄積する。
【0118】
液体分泌物の排出源の上に位置しないインサート22は、膨潤しないか、移送層32と接触するのに充分な膨潤はしない。このため、移送層32内で拡散する液体が界面層23に向かって戻ることはなく、一方で、リザーバ形成層80には到達する。
【0119】
図6の変更形態は、リザーバ形成層31または80が存在しない点で図1図5に関連して説明した物品とは異なっており、液体の排出は、本質的に蒸発により行われる。この例では、保護層82は水蒸気透過性を有し、その周囲が界面層23に組付けられる。
【0120】
図7の変更形態では、移送層32が、インサート構造40を越えて片持ち態様で、例えば20cmに等しい距離mに亘って横方向に延びており、周囲空気と接触する自由端部84を形成している。
【0121】
外側保護層82は、製造された実物大模型で、距離mより小さい距離dに亘って延びており、端部84を残してそのレベルで水の蒸発を容易にすべく、移送層32の一部のみに亘ってその頂部を覆っている。移送層32と、傷の近くの皮膚および/または粘膜との何らかの接触を防止すべく、移送層32の下面の側で、内側保護層86を移送層32上に設けることができる。
【0122】
図7の物品の使用中に、液体は、液体の分泌物と直接対面するインサート22の膨潤後に形成される流体ブリッジにより、移送層32と局部的に接触するようになり、端部84に移動し、ここで水が蒸発される。
【0123】
包帯の下面に接触されたフリットに連結されたシリンジドライバにより、体積30mlの溶液が噴射される。
【0124】
液体の噴射流量は10μl/分に設定される。50時間の作業後に、噴射液体の28mlが蒸発される。すなわち、蒸発率は90%より大きい。
【0125】
本発明の一変更形態では、移送層32またはリザーバ80の上方にチャンバが形成され、該チャンバは、遠位側構造内に存在する液体の蒸発を増大させるため、空気(好ましくは乾燥空気)が通ることを可能にしている。
【0126】
本発明の意味するリザーバ層を備えていない、図6に示す包帯形式は、例えば皮膚移植を受ける場合のように適度の浸出物または少ない浸出物の傷に特に適している。
【0127】
浸出物の多い傷にはリザーバ層を備えた包帯を使用するのが好ましい。すなわち、図7に示すような吸収層を備えていない包帯は、移送層の溢流が蒸発を最適化することができる。
【0128】
かくして、リザーバ層の有無に係わらず、傷の浸出物が多いかそれ程多くはないかによって、傷の幾つかの種類に適した一定範囲の包帯を用意できることは理解されよう。
【0129】
図8には、近位側構造20に、インサート22とインサート構造40との間の少なくとも1つの内部層101を設けることができることが示されている。内部層101は、インサート22の膨潤に伴って形状を変化できかつ内部層が遠位側構造30(この例では移送層32)と接触することができる。インサート22は、例えば、界面層23と内部層101との間に収容される。インサート22は、インサート構造40の開口50のように分布される。
【0130】
種々の層23、101の吸収特性および拡散特性は、近位側構造20が液体分泌ゾーン(単一または複数)P上に重ねられる部位において、遠位側構造30に向かう液体の移動が優先的に生じるように選択される。換言すれば、近位側構造20と遠位側構造30との間の流体ブリッジでは、近位側構造20内で横方向に移動する液体の量が充分に少ないか緩慢で、主として液体分泌ゾーン(単一または複数)Pの上方で確立されるようにする。
【0131】
一実施形態では、30g/m2の坪量でPE/PETをベースとするSandler社からのSawabond(登録商標)4383親水性不織布の界面層23を作るには、インサート22はFavor-PAC(登録商標)230高吸水性ポリマーの粒であり、内部層101は、Tre d e g a r社から40HEX X26424の名称で販売されている孔明き3Dフィルムである。インサート構造40はAlveolit(登録商標)ブランドのPE親水性発泡体であり、移送層32は45%PETおよび55%セルロースをベースとする不織布であり、その商標は、Orsa社のJetex(登録商標)1205Cである。
【0132】
図10および図11には、近位側構造20が垂直排出能力を有する第1層90および第2層91を有し(すなわち、水が優先的にこれらの層の厚さ方向に移動する)、両層90、91の間に前述のようなインサート22の形態をなす水膨潤物質が配置された構成の物品10が示されている。
【0133】
インサート構造40は、近位側構造20と遠位側構造30とを一体に接合する水不透過性接着剤の層で形成されている。この層は、インサート22と対向して配置されたキャビティ95を有している。第2層91は形状を変化でき、図11に示すように、液体が存在するとき下に横たわるインサート22が膨潤する間に、キャビティ95の底と接触する。この接触により、近位側構造20の液体が毛管作用または拡散により遠位側構造30に移送される。これにより、液体がひとたび遠位側構造30に入ると、横方向に拡散して遠位側構造30内に蓄積される。
【0134】
図12および図13は、液体との接触により水膨潤性物質が膨潤した後に、近位側構造20と遠位側構造30との直接接触が生じることはないが、両構造20、30が接近移動するという事実により流体ブリッジが確立されるように物品を作ることができることを示すものである。
【0135】
図12には、物品が液体の存在するところに置かれる前の状態が示され、図13には、近位側構造20が局部的に膨潤した後の物品の状態が示されている。この例では、近位側構造20の膨張に伴ってインサート構造40が形状を変更できることが理解されよう。物品が液体の存在するところに置かれる前の初期状態では、インサート構造の厚さは、近位側構造と遠位側構造との間に流体ブリッジが確立されることを防止する。近位側構造の膨張によりインサート構造が局部的に圧縮されると、近位側構造と遠位側構造とが充分に接近されて、毛管作用による近位側構造から遠位側構造への液体の移送が可能になる。この例では、インサート構造40は、例えばポリマーをベースとするフレキシブルな非吸収親水性物質からなり、ポリマーとしては例えば、ポリエチレンまたはポリフェニレンエーテルまたはエチレン酢酸ビニル等のポリオレフィンがある。この例では、スリット10(好ましくは、上から見たときに格子の形態をなしている)が形成されており、材料が曲げられるとスロットが開くようになっている。材料は、例えばフレキシブルフィルムの形態をなしている。この場合、インサート構造40には開口115が局部的に創成され、該開口115内には液体が近位側構造から遠位側構造に流入する。曲げを受けない隣接ゾーンでは、スリットが、近位側構造と遠位側構造との間に流体ブリッジを形成できる程には充分に開かないため、遠位側構造から近位側構造への液体の流れが阻止される。
【0136】
このような材料を使用することにより、開口を備えていないインサート構造を作ることができる。このような材料はまた、本発明の他の変更形態によれば、例えば図1図8に関連して説明した変更形態の膨潤要素と遠位側構造との間のインサート構造のキャビティ内の空気を置換する。これらの材料はまた、図10および図11のキャビティを充満するのに使用でき、したがって、遠位側の層内の液体の横方向移動中に液体が傷、皮膚または粘膜に戻るあらゆる危険性を無くすことにより、物品の作用を最適化できる。これにより、遠位側の層内に小さい厚さのキャビティを作ることができ、かつ薄い物品を得ることを促進できる。インサート22を、物品10が適用される表面の方向ではなく、遠位側構造30の方向にインサート22が膨張することを促進する形状にすることは有利である。図14には、近位側構造20をインサート構造40の開口50内に捕捉されるインサート22の形態に作ることができることが示されている。開口50の断面形状は遠位側構造30から離れるにつれて狭くなり、インサート22は、物品が置かれる表面に向かってインサートの膨張が機械的に減衰されるような補完形状を有している。
【0137】
図15図17の全てにおいて、物品10は互いに重ねられた2つの層401、402からなるインサート構造40を有し、任意であるが、図示のように、2つの層401、402の間に接着剤層150を介在させることができる。両層401、402は、それぞれの開口501、502を有している。
【0138】
界面層23に隣接する下方層401の開口501の近位側構造20に平行な平面内での断面は、遠位側構造30に隣接する上方層402に形成された開口502の断面より大きい。
【0139】
水の存在下で膨潤できる物質からなるインサート22は、下方層401の開口501内に配置される。好ましくは、上方層402の開口502は、最初はこのようなインサートを含まないのが好ましい。したがって、上方層402の機能は、各インサート22を下方層401の開口501内に保持することにある。
【0140】
図15に示すように、インサート22が乾燥しているときは、インサート22は、下方層401と上方層402との間の開口の断面の減少により、界面層23と上方層402との間に保持される。インサート22が液体と接触する状態に置かれると、徐々に膨潤する物質からなるインサートは上方層402の開口502を通って延び、遠位側構造30に到達する。
【0141】
このような物品を製造する方法は、インサート22と接触する接着剤を使用する必要なく、界面層23に対して下方層401のインサート22を保持することが可能になる。
好ましくは、下方層401の開口501は5〜25mmの間、例えば8mmの直径(最大寸法)を有し、一方、上方層402の開口502は1〜10mmの間、例えば3mmの直径(最大寸法)を有する。
【0142】
一例示実施形態では、各層401または402は、例えば商標TEE10008を有する疎水性発泡体で作られる。インサート22の水膨潤性配合物は下記の成分からなる(百分率は重量分率である)。
成分 重量%
1. 無水エタノール 51.903
2. PVP K30(BASF) 4.152
3. Klucel MF pharm(HERCULES) 1.038
4. Favor PAC 230(EVONIK) 41.523
5. Glycerol 4810 1.384
【0143】
水の存在下で膨張できる、水膨潤性ペーストの形態をなす物質が有利であり、この物質は下記物質からなる(重量%)。
・特に、SAP粒子(例えばEvonik社からのFavor PAC 230)をベースとする10〜90%の水膨張性ポリマー
・例えば、ポリビニルピロリドン(例えばBASF社からのKollidon30)および/またはヒドロキシプロピルセルロース(例えばHercules社からのKlucel MF Pharm)をベースとする1〜20%の水溶性バインダ
・0〜20%のグリセロール
・例えばアルコール(例えばエタノール)をベースとする30〜80%の均質化液体
ペーストの形態の水膨潤性物質は、製造中の取扱いを容易にできる。
【0144】
本発明は、説明した例に限定されるものではなく、図示した実施例の特徴は、例示しない変更形態と組合せることができる。
【0145】
特に物品が包帯の場合には、物品の界面層および/または他の全ての層には、治癒を促進する物質または生物学的物質、止血配合物または抗炎症配合物、および任意であるが香料、防臭剤または消臭剤のような1つ以上の活性剤を含めることができる。例示しない1つの変更形態では、図7の例の端部84は、1つの面を介して、リザーバを形成するオフセット層に連結することができる。本明細書における表現「1つを有する」は、「少なくとも1つを有する」と同義語であり、表現「・・・の間に」は、特にことわらない限り限界を含むと理解されたい。
【符号の説明】
【0146】
10 物品
20 近位側構造
22 インサート
23 界面層
30 遠位側構造
31 リザーバ形成層
32 移送層
33 外側保護層
40 インサート構造
50 開口
L 液体分泌
P 液体分泌ゾーン
S Pに対して横方向にオフセットしたゾーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17