【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の第1態様によれば、この発明の要旨は、液体排出特性および/または液体貯蔵特性を有する物品、より詳しくは包帯にあり、該包帯は、
・液体の存在下で膨潤できる物質からなる液体透過性近位側構造と、
・液体を排出できる遠位側構造と、
・遠位側構造と近位側構造との間に延び、好ましくは開口を備えた疎水性および非吸水性を有するインサート構造とを有し、該インサート構造は、前記物質が膨潤されないときには、遠位側構造と近位側構造との間にギャップを維持することによりこれらの両構造の間の液体の交換を局部的に制限でき、かつ前記物質が液体との接触に応答して膨潤する少なくとも1つのゾーンにおける近位側構造の局部的膨張を許容し、この膨張により、近位側構造および遠位側構造は互いに局部的に接近され、かつ遠位側構造まで膨張された近位側構造の前記ゾーンから液体が移送されるように構成されている。
【0017】
インサート構造に開口がある場合には、開口内に膨張が生じ、開口を介しての近位側構造と遠位側構造との接触によって、毛管作用による移送が生じる。
【0018】
この発明によれば、物品は、分泌物を遠位側構造に排出することにより、分泌物が放出される箇所で分泌物を適切かつ効率的に排出できる。更に、物品が皮膚、傷および/または粘膜を覆う領域ではあるが、分泌物が放出されない領域が、遠位側構造内に存在する液体によって影響を受けることはない。なぜならば、インサート構造が存在するため、液体が近位側構造に向かって戻ることができないからである。
【0019】
特許文献2および特許文献3の教示とは異なり、遠位側構造への液体の排出が生じ、この液体は排出を続けることがある。この排出は弁部材の閉鎖に伴うことなく生じることがある。前記物質は、最初は、物品内で、反対側よりも、物品内に液体が流入する表面により近い方の側に配置される。
【0020】
用語「排出できる」とは、液体を貯蔵できる能力、横拡散により液体を拡散する能力または移送する能力を説明することを意図したものである。
【0021】
用語「横拡散」とは、物品の厚さが測定される方向に対して実質的に垂直な方向、すなわち物品が使用されるときに物品が置かれる表面に対して実質的に平行な方向への拡散を意味するものと理解すべきである。
【0022】
用語「膨潤できる物質」とは、水の存在により体積が、例えば少なくとも10%、より好ましくは200%、更には500%または3000%増大する物質を意味する。この物質は、高吸水性ポリマーからなる物質またはこのようなポリマーを含んだ物質で構成できる。
【0023】
用語「物質」は、単一物質または一緒に組合わされた1組の異なる物質を意味し、この場合、物質とは、例えば高吸水性物質の支持体として機能する1つ以上の他の物質と混合されるかこれらの物質の間に置かれる高吸水性物質からなる複合材料である。
【0024】
したがって、膨潤できる物質として、粉末、顆粒または繊維の形態をなし、液体と接触して膨潤する親水性コロイド、例えば親水性ポリウレタン発泡体または例えば親水性ポリウレタンゲルのような親水性ゲル等の水膨潤性
胞状物物質(water-swelling alveolar material)がある。親水性コロイドの例として、例えばカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、アルギン酸塩または高吸水性ポリマー(superabsorbent polymers:SAP)等のセルロース誘導体があることに留意されたい。
【0025】
高吸水性ポリマー(SAP)として、例えば自身の重量の10〜50倍の水(代表例として生理液)を吸収できるが、適度の圧力が加えられた場合には水を解放できない1つ以上のポリマーを使用できる。水吸収能力は水分子とポリマーの親水基とのパワフルな相互作用、より詳しくは水素結合を確立できる能力で定まる。高吸水性ポリマーは、特に、デンプンベースのグラフトコポリマー、カルボキシメチルセルロースの架橋誘導体および改質された親水ポリアクリレートから選択される。より詳しくは、高吸水性ポリマーとして、加水分解されたデンプン/アクリロニトリルコポリマー、中和されたデンプン/アクリル酸コポリマー、鹸化されたコポリマー、アクリル酸および酢酸ビニルのエステル、加水分解されたアクリロニトリルコポリマー、アクリルアミドコポリマー、改質された架橋ポリビニルアルコール、架橋されたポリアクリレート塩、中和されかつ架橋されたポリアクリル酸、カルボキシル化されたセルロースまたはこれらの混合物がある。
【0026】
一般に、この物質は粉末状で使用され、液体、より詳しくは生理液と接触するだけで保持特性を有するゲルを形成する。
【0027】
好ましい高吸水性物質として、より詳しくは、例えばFavor(登録商標)-Pac230またはLuquasoab(登録商標)1161の名称で販売されているポリアクリル酸ナトリウムがあることに留意されたい。
【0028】
水膨潤性胞状物質として、例えばAdvaned Medical Solution(AMS)社からMCF.03の名称で販売されているような親水性ポリウレタン(PU)発泡体を使用することもできる。
【0029】
複合材料として、ポリマーベース配合物をベースとするマトリックス中に配合された上記親水性コロイドからなる物質、例えば包帯分野またはストーマ分野で使用されている親水性コロイド粘着性組成物、または例えば衛生分野で一般に使用されている、SAP粒子を配合した吸水性不織布のような織物材料があることに留意されたい。
【0030】
好ましくは、「エアレイド(Airlaid)」として知られている乾燥製造方法により得られる不織布を使用する。この不織布は、不織布の全重量に対するSAPの割合が20重量%〜60重量%のSAP粒子を含んでいる。このような不織布は、例えば、EAMCorporation社からNovathin(登録商標)の名称で販売されている。本発明の好ましい一実施形態によれば、熱接着物質またはラテックスが配合されていない高吸水性ポリマー粒子およびセルロース繊維をベースとする不織布であって、その両面がセルロースベースのウェブで被覆されている不織布が使用される。
【0031】
本発明の他の変更形態によれば、複合材料として、セルロースをベースとする2つのウェブからなる材料であって、これらのウェブの間に高吸水性ポリマーの粒子が単独でまたはバインダと組合わされて取り入れられた材料を使用することもできる。
【0032】
本発明の適用によれば、例えば親水性ポリウレタン発泡体またはSAP粒子をベースとする物質のように、可逆膨潤特性、すなわち乾燥している間は収縮してほぼ元の体積に戻ることができる、膨潤できる物質を使用するのが好ましい。
【0033】
一般に、包帯として使用するとき、特に、無害であるという観点から、滅菌に相容性を有しかつこの使用に適した物質が選択される。
【0034】
近位側構造は、分泌物が排出されるゾーン(単一または複数)とは反対側のみで物質の膨潤が本質的に生じるようにして、近位側構造内で分泌物が排出されるゾーン(単一または複数)から横方向には移動しない(殆ど移動しない)ように設計されることが望まれる。
【0035】
近位側構造は、膨潤できる物質の不均一分布、より詳しくは、近位側構造の平面にしたがったマトリックス分布を有し、例えば、膨潤できる物質が存在する領域同士の間に1〜20mmの範囲内のギャップを有する。膨潤できる物質の分布は離間している。すなわち、膨潤できる物質が存在する領域が互いに接触することはない。
【0036】
膨潤できる物質は、種々の方法で物品上に保持される。この場合、近位側構造には、膨潤できる物質の支持層として機能する透過性基板を設けるのが好ましい。この透過性支持層は、浸出液の横方向移動を制限するか、防止さえしなければならない。透過性支持層はまた、皮膚、傷または粘膜と接触することを意図した界面層としても機能する。
【0037】
一般に、支持層は、透過性を有するが、吸収性をもたない材料で形成する。
【0038】
透過性材料として、ニット、織物または不織布等の非吸収性織物材料があることに留意されたい。好ましくは、非吸収性不織布を使用できる。不織布としては、衛生分野および包帯分野で一般に使用されている任意の不織布を使用でき、より詳しくは、ウェブまたはカバーストックの用語で一般に呼ばれているスパンレイドカード不織布またはスパンレース不織布がある。その坪量は5〜50g/m
2、好ましくは20〜40g/m
2である。織物材料は、レーヨン、ビスコースまたはセルロース誘導体等の吸収性繊維を含まないことおよび吸収性粒子を含まないことを条件とする非吸収性材料であり、例えばポリアミド、ポリエステルおよび/またはポリオレフィン繊維がある。
【0039】
ウェブは親水性でも疎水性でもよいが、疎水性ウェブが好ましい。一実施形態によれば、ウェブはポリエチレン繊維を有している。スパンレイド不織布は、例えば、Fiberweb社からBerotex(登録商標)PE-SXの名称で販売されている疎水性スパンボンド型またはSandler社からSawabond(登録商標)4383の名称で販売されているポリエステル繊維およびポリエチレン繊維からなる親水性カード不織布を選択できる。
【0040】
非吸収性ウェブは疎水性繊維からなるのが好ましいが、親水性繊維で形成し、疎水性にする処理をすることもできる。逆に、疎水性繊維で形成し、親水性にする処理を施すこともできる。ウェブは、その透過性が充分であれば、幾つかの層で形成することもできる。
【0041】
支持層は単一材料で形成するか、種々の材料の並置により形成できるが、後者の場合は用語「複合材料」を使用する。
【0042】
他の透過性材料として孔明き材料または微孔材料があり、例えば、孔明きプラスチックフィルム(例えばポリウレタンまたはポリエチレンをベースとするもの)またはTredegar Film Product社から販売されている製品のような3Dフィルムがあることに留意されたい。これらの材料は当業者に良く知られており、衛生用品分野で一般に使用されている。また、透過性材料として、例えばLaboratoires Urgo社およびMolnlycke Health Care社からそれぞれUrgotul(登録商標)およびMepitel(登録商標)の名称で販売されている製品を使用できる。
【0043】
最後に、ポリマーをベースとする疎水性または親水性を有するが非吸水性または僅かな吸水性を有する配合物の孔明き層を使用できる。これらの配合物は、接着性を有するものでも、非接着性を有するものでもよい。包帯の場合には、傷から取外したときに治癒を損なわないようにする微接着性または非接着性にするのが好ましい。
【0044】
このような配合物は当業者に良く知られており、例えば、孔の閉塞を防止すべく組成物を吸収剤とすることなく治癒過程を促進する湿潤環境を創出するため、シリコーンゲル(単一または複数)、感圧シリコーン接着剤(単一または複数)またはポリ(スチレン-オレフィン-スチレン)型のブロックエラストマー、鉱物油および少量の親水性コロイド等の塑性化剤を含有する組成物をベースとして製造される。このような微接着性配合物は、例えば、Laboratoires Urgo社からUrgoclean(登録商標)およびUrgotul Absorb(登録商標)の名称で販売されている包帯に使用されている。
【0045】
可能な変更形態によれば、疎水性または親水性配合物からなるこれらの界面包帯およびこれらの孔明き層は、上記透過性材料、より詳しくは非吸収性不織布と組合わせることができる。
【0046】
本発明の一例示実施形態では、膨潤できる物質は透過性支持層により支持され、該支持層は、好ましくは、詳述したように疎水性でありかつ例えばインサート構造に対面する層の面に取付けられる。一変更形態では、膨潤できる物質は近位側構造の2つの層の間に存在し、これらの層を組立てることにより形成されるキャビティ内に捕捉される。
【0047】
膨潤できる物質は、例えばペレットまたは凝集体等のインサートの形態をなす非粉末状で物品の製造中に物品内に一体化され、インサートの最大寸法は、例えば1mm以上かつ15mm以下である。これらのインサートは、粉末状の高吸水性ポリマーからなる複合材料で作られる。本発明の一実施形態では、膨潤できる物質は、例えば円形または多角形(好ましくは正多角形)を有するペレットを形成できるパンチング作業によりシートから切断された後に物品内に組込まれる。
【0048】
本発明の他の実施形態では、物品の製造中に、粉末状でかつ不均一分布(例えばインサート構造の開口のように局部化されたクラスタの形態)で物品内に組込まれる。
【0049】
近位側構造は、前述のように、膨潤できる物質を物品上に保持するための少なくとも1つの支持層からなり、該支持層(単一または複数)は、膨潤できる物質が遠位側構造の方向に膨張することを妨げないと同時に、反対方向に膨張することは妨げることが好ましい。変更形態として、近位側構造は膨潤できる物質のみで形成され、膨潤できる物質を支持する機能はインサート構造により得るように構成できる。この場合、より詳しくは、膨潤できる物質は、例えばインサート構造内に収容されたペレットのような不連続なインサートの形態で組込むことができる。この場合、より詳しくは、インサート構造は、皮膚、傷または粘膜と接触する。好ましくは、特に包帯の場合の物品は傷との界面層を有し、該界面層は、傷と接触することになる物品の全下面に亘って延びている。この界面層は、膨潤できる物質を物品上に保持する機能を有するか否かは問わない。界面層は、近位側構造が皮膚および/または粘膜の方向に拡大することを制限しまたは防止するのに使用される。インサートは、界面層がインサート構造に当接して置かれると界面層により支持される。
【0050】
近位側構造は、膨潤できる物質が膨潤されていない場合には、全体としてインサート構造の外側に配置される。変更形態として、近位側構造は、膨潤できる物質が膨潤されていないときはインサート構造内に挿入され、インサート構造の厚さのごく一部に亘って延びている。
【0051】
近位側構造は、例えば、インサートの形態をなす膨潤できる物質を有し、該物質は、好ましくは、高吸水性物質の粒子が閉じ込められた不織布であり、インサート構造は、インサートが少なくとも部分的に挿入された開口を有し、インサート構造は、膨潤前はインサートが遠位側構造とは接触しない充分な厚さを有し、インサート構造は、より詳しくは、インサートの厚さより大きくかつインサートが膨潤して遠位側構造と接触できるのに充分小さい厚さを有する。
【0052】
インサート構造は疎水性および非吸収性を有し、これにより、近位側構造および遠位側構造を、近位側構造の膨張が生じない箇所で隔絶する。また、液体の横方向移動を防止しなければならず、開口を有する場合には、液体が1つの開口から他の開口へと横方向に移動することを防止しなければならない。インサート構造は、解剖学的輪郭に一致できるようにフレキシブルであることが好ましい。インサート構造は、例えば、熱可塑性材料、より詳しくはポリオレフィン、例えばポリエチレンで形成された発泡体の層の形態をなす独立セル胞状物質またはこの形式の幾つかの層のアセンブリである。インサート構造はまた、接着剤、ポリマーまたはエラストマーをベースとする疎水性および非吸収性を有するフィルム、織物材料または層の形態をなす。エラストマーとして、例えばポリウレタン、ポリジメチルシロキサンおよびこの変形物(一般に、「シリコーン」の総称で呼ぶ)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)、ポリフェニレンエーテルまたはブロックポリマーをベースとする配合物、例えば可塑化剤と組合わされた(スチレン-オレフィン-スチレン)形式または(スチレン-オレフィン)形式がある。
【0053】
包帯を構成する物品の場合、インサート構造の厚さは、例えば0.5〜4mmである。膨潤できる物質がインサート層内にインサートの形態で存在するときは、インサート構造の厚さはインサートの厚さより大きい。
【0054】
前述のように、インサート構造は好ましくは開口を有し、この場合には、近位側構造の膨張がインサート構造の開口内で少なくとも部分的に生じる。したがって、インサート構造の開口の分布は、膨潤できる物質の分布と実質的に同じであるのが有利であり、このため膨潤できる物質が存在する領域は、好ましくは各開口の中心に位置するようにして開口に重なる。開口は任意の形状にすることができる。開口は、物品の製造中にシートを切断することにより形成するか、前の作業中に切断することもできる。開口は全て同じ輪郭にしてもよいし、開口の分布は規則的でも不規則的でも構わない。開口の輪郭は、円形または多角形、より詳しくは正多角形にすることができる。開口はインサート構造の全厚に亘って均一な断面となるようにするか、近位側構造の方向に向かって減少させて、近位側構造の方向よりも遠位側構造の方向に向かって膨張が促進されるように構成できる。このように減少する断面を得るため、例えば、開口が減少するサイズで切断される幾つかのシートを使用し、次にこれらのシートを組立てることができる。また、例えばレーザを用いて所望の形状をもつ開口を直接切断することもできる。
【0055】
遠位側構造は液体を排出できる。すなわち、遠位側構造は、液体を貯蔵し、移送しおよび/または拡散させることができる。
【0056】
本発明の一例示実施形態では、遠位側構造は、500g/m
2以上、更には800g/m
2以上の吸水能力をもつリザーバ形成層を有している。リザーバ形成層は、インサート構造上に重ねられる。リザーバ形成層は、例えば衛生用品および包帯分野で一般的に使用されている吸収層のように、液体を貯蔵できる任意の材料で構成できる。例えば、吸収発泡体、好ましくは親水性ポリウレタン発泡体および前述のSAPベース物質、例えばコットンウールまたはヒドロゲルのようなビスコースベース、レーヨンベースまたはセルロースベースの不織布のような吸収性織物があることに留意されたい。
【0057】
本発明の他の例示実施形態では、遠位側構造は、500g/m
2以上の吸水性を有するリザーバ形成層が省略される。この場合、遠位側層は、液体を拡散させまたは液体の移送を促進すべく液体を横方向に拡散させる層からなる。この場合、液体は、インサート構造の周囲に配置されたリザーバ形成層に向けてまたは液体が蒸発する自由端部に向けて放出される。
【0058】
リザーバ形成層がインサート構造の側に少なくとも部分的に配置されるときは、より薄くて、同等の吸収能力を有する物品を得ることができる。一例示実施形態では、リザーバ形成層は、インサート構造の全周に亘って延びている。リザーバ形成層がインサート層の側に配置されるときは、物品には、皮膚および/または粘膜と水不透過性のリザーバ形成層との間に配置されるバリヤ層を設けるのが有利である。リザーバ形成層がインサート構造の側に配置されるときは、液体は、遠位側構造の全部または一部を形成する移送層によりこのリザーバ形成層内に移送される。この移送層およびリザーバ形成層は、外側保護層がカバーすることができる。横方向拡散層とリザーバ層とを組合せて、両層間の接触面積を増大させ、リザーバ層による液体の吸収を促進させるのが好ましい。
【0059】
液体を拡散させることができおよび/または横方向拡散により移送できる物質は衛生用品および包帯分野で一般に使用されている。
【0060】
したがって、ニット、織物および特に不織布のような織物材料に留意されたい。これらの織物材料は、吸収性繊維または非吸収性繊維をベースとする疎水性または親水性織物である。不織布の中では親水性不織布が好ましく、特に、例えばポリエステル繊維またはポリオレフィン繊維のような非吸収性繊維と組合わされたビスコースまたはセルロース等の吸収性繊維をベースとする不織布が好ましい。このような不織布の例として、Suominen Corp and Orsa社からFibrella(登録商標)2000およびJettex(登録商標)1205cの名称で販売されている商品があることに留意されたい。
【0061】
他の材料として紙または微細構造フィルムがあり、これらのチャネルは液体を拡散しかつ移動させることができることに留意されたい。
【0062】
インサート構造は、近位側構造を遠位側構造に取付けることができ、より詳しくは遠位側構造と近位側構造との間で不連続に延びている水不透過性接着剤層で構成するか、このような層の形態にすることができ、これにより接着剤が存在しない少なくとも1つの開口を形成し、該開口で近位側構造の物質が膨潤すると、この膨潤作用下で近位側構造と遠位側構造との接触による液体の毛管作用により、液体が遠位側に移送される。
【0063】
遠位側構造は近位側構造の方向に開口している少なくとも1つのキャビティを有するのがよく、このキャビティは近位側構造の1つのゾーン上に少なくとも一部が重なっている。ここは膨潤が生じ易く、好ましくはインサート構造の1つの開口上に少なくとも一部が重なっている。このようなキャビティの存在により、近位側構造を、膨潤していない遠位側構造から部分的に距離を隔てることができ、かつインサート構造の厚さを減少させるか、膨潤できる物質が存在する箇所での近位側構造の厚さを増大させることができる。
【0064】
インサート構造には開口を備えた2つの層を設けることができ、一方の下方層は近位側構造の側に、一方の上方層は遠位側構造の側に設けられる。上方層の開口は、下方層の開口より小さい断面を有しかつ下方層の開口上に重ねられている。膨潤できる物質は、乾燥しているときには、少なくとも一部が下方層の開口内に収容される。膨潤できる物質は、下方層の開口を全体的に充満するか否かは問わない。このような変更形態は、膨潤できる物質を所定位置に保持することを容易にする。また、膨潤できる物質を収容するキャビティの段状の形状は、この膨潤できる物質で形成された流体遮断手段の水感度を高めるであろう。なぜならば、一定の断面および同じ高さを有するキャビティおよび同量の元の物質と比較した物質の同じ膨張体積では、幅狭の上方部分の存在により、物質が遠位側構造の方向に移動する距離を増大でき、したがってより迅速に遠位側部分に接触できるからである。
【0065】
下方層の開口は、好ましくは、5〜25mmの大きい寸法より詳しくは直径を有し、上方層の開口は、好ましくは、1〜10mmの大きい寸法より詳しくは直径を有している。
【0066】
膨潤できる物質は、近位側構造の側に接着剤を用いることなく下方層の開口内に保持されるのが好ましい。
【0067】
膨潤できる物質は、少なくとも物品の製造中、より詳しくはインサート構造の開口内への導入中はペースト状であることが好ましい。これにより、拡大および掻き取りにより膨潤できる物質を開口内に容易に配置できる。
【0068】
膨潤できる物質は、より詳しくはSAP粒子をベースとする水膨張性ポリマー、およびより詳しくはポリビニルピロリドンおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースをベースとする水溶性バインダからなる。
【0069】
膨潤できる物質は下記配合(混合物の全重量に対する重量%で示す)、すなわち、
・より詳しくはSAP粒子をベースとする10〜90%の水膨張性ポリマー(単一または複数)
・例えばポリビニルピロリドンおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースをベースとする1〜20%の水溶性バインダ(単一または複数)
・0〜20%のグリセロール、および
・より詳しくはアルコール、好ましくはエタノールをベースとする30〜80%の均質化液体
を有する。
【0070】
遠位側構造はマトリックス分布にしたがって配置された複数のキャビティを有し、キャビティは、好ましくは、膨潤できる近位側構造のゾーンのように分布される。キャビティ(単一または複数)の深さは、好ましくは、遠位側構造の厚さより小さく、例えば遠位側構造の厚さの10〜90%である。
【0071】
物品は滅菌状態にパッケージングされた包帯を構成するが、変更形態では使い捨て可能なおしめまたは女性の生理用品を構成できる。物品が包帯である場合には、予め形成された3つの構造(近位側構造、中間構造、遠位側構造)以外に、包帯は、使用前および使用中に無菌であることを保証するための付加層を有することが好ましい。かくして、傷の側には、界面層の性質、より詳しくは界面包帯であるかポリマーをベースとする配合であるかに基づいて、使用前に取外すことができる一時的プロテクタを設けることができる。反対側は、バクテリアおよび水に対しては不透過性を有するが水蒸気に対しては透過性を有し、液体の蒸発を促進する外側保護層によりカバーする。これらの層は、包帯の製造に一般的に使用されており、例えばExopack Advanced Coating社からInspireの名称で販売されているポリウレタンフィルムがある。このようなフィルムは、ガスより詳しくは水蒸気に対するフィルムの透過性に影響を与えないように、例えば不連続接着剤を用いて包帯に組付けられる。フィルムは、包帯の周囲で近位側構造に組付けられる。
【0072】
移送ストリップがインサート構造の長さより大きい長さを有する仕様では、移送ストリップを外側保護層によりカバーして、外側保護層内に存在する浸出物が傷の回りの領域を汚さないように防止し、またバクテリアによる包帯の外部汚染の危険を防止する。
【0073】
したがって、本発明の一態様によれば、本発明は液体を移送する用品に関し、該用品は、
液体と接触するようになることを意図した液体透過性近位側構造と、
液体透過性遠位側構造と、
近位側構造と遠位側構造との間に配置された疎水性および非吸水性を有するインサート構造とを有し、前記近位側構造は液体の効果の下で膨張できる物質からなり、該物質の膨潤により近位側構造と遠位側構造との間の距離が減少されて、液体は、近位側構造からインサート構造を通って遠位側構造に通ることができる。
【0074】
以下、本発明の非制限的な実施形態についての詳細な説明を読みかつ添付図面を参照することにより、本発明をより良く理解できるであろう。