(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288602
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】輻射式加熱装置及び輻射式加熱方法
(51)【国際特許分類】
F27B 9/36 20060101AFI20180226BHJP
F27B 9/24 20060101ALI20180226BHJP
A23G 3/02 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
F27B9/36
F27B9/24
!A23G3/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-260704(P2013-260704)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-117869(P2015-117869A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小崎 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岩城 裕樹
【審査官】
瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−214999(JP,A)
【文献】
特開2012−247103(JP,A)
【文献】
実開昭63−134393(JP,U)
【文献】
特開平04−143592(JP,A)
【文献】
特開昭58−200988(JP,A)
【文献】
特開平02−282688(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/163065(WO,A1)
【文献】
特開2013−053811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/36
F27B 9/24
A23G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成物を搬送するコンベヤと、該コンベヤに沿って配置された輻射板と、該輻射板を加熱する熱源と、を備えた輻射式加熱装置において、
前記輻射板の表面に、前記コンベヤの長手方向及び幅方向の少なくとも一方に沿って輻射率の異なった輻射材が設けられており、
前記熱源は、前記コンベヤの長手方向に間隔を隔てて配置された複数のガスバーナーと、該複数のガスバーナーの火力を同時に調節可能な火力調整手段と、を有する
ことを特徴とする輻射式加熱装置。
【請求項2】
前記ガスバーナーと対向する位置に高輻射材が設けられるとともに該高輻射材の間に該高輻射材よりも輻射率が低い低輻射材が設けられている、又は、前記ガスバーナーと対向する位置に低輻射材が設けられるとともに該低輻射材の間に該低輻射材よりも輻射率が高い高輻射材が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の輻射式加熱装置。
【請求項3】
前記高輻射材は、幅方向の両端部における面積が幅方向の中央部における面積よりも大きくなるように設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載の輻射式加熱装置。
【請求項4】
被焼成物を搬送するコンベヤと、該コンベヤに沿って配置された輻射板と、該輻射板を加熱する熱源と、を備えた輻射式加熱装置を用いて、前記コンベヤで搬送される前記被焼成物を前記輻射板からの輻射熱で加熱する輻射式輻射式加熱方法において、
前記輻射板の表面に前記被焼成物の焼成に必要な熱流束履歴に応じて輻射率が異なった輻射材を設けることにより、前記輻射板から前記被焼成物に輻射される熱流束を少なくとも前記コンベヤの長手方向において変化させるとともに、
前記熱源として前記コンベヤの長手方向に間隔を隔てて複数のガスバーナーを配置し、該複数のガスバーナーの火力を火力調整手段により同時に調節するようにした、
ことを特徴とする輻射式輻射式加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射式加熱装置及び輻射式加熱方法に係り、特に、コストダウンを図りつつ被焼成物を適切な熱流束履歴で加熱可能な輻射式加熱装置及び輻射式加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、煎餅やクッキー等の焼成食品は、焼成の仕方に応じて、化学的及び物理的な品質が変化する。例えば、食品への加熱温度に応じて、食品の褐変(メイラード反応)、タンパク質の熱変性、デンプンのゲル化等が生じ、食品近傍の雰囲気湿度に応じて、食品からの水分の蒸発や拡散が変化し、結果として焼成される食品の品質が変化する。
【0003】
よって、食品を適切な品質で焼成するには、焼成の開始から終了に亘って、時間と共に食品への火力や雰囲気湿度を変化させる必要がある。ここで、火力に対応する物理量は熱流束であり、実験(試作焼成等)やシミュレーションによって求めた適切な熱流束履歴に基づき、食品への火力調整を行うことで、食品を所望の品質で焼成することができる。
【0004】
食品を適切な熱流束履歴で焼成する米菓の焼成装置として、米菓生地を搬送するコンベヤと、コンベヤの長手方向に沿って間隔を隔てて配置された複数のガスバーナーとを備え、各ガスバーナーの火力を調節することで、米菓生地への火力を、焼成の開始から終了に亘って時間と共に変化させるようにしたものが既に知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、加熱方法としては、燃料ガスを燃焼させた熱で輻射体を加熱し、輻射体の表面からの輻射熱で、工業材料や食品等を加熱するガスヒータも既に知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3372233号公報
【特許文献2】特開2013−29217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載された焼成装置によれば、コンベヤの長手方向に間隔を隔てて配置された各ガスバーナーの火力を予め調節しておくことで、コンベヤで搬送される米菓生地に加えられる熱流束を、焼成の開始から終了に亘って適切な値に変化させることができ、食品を予め定めた熱流束履歴に則って適切に焼成できる。
【0008】
しかしながら、各ガスバーナーの火力を調整するためには、ガスバーナー毎に火力調整用のバルブや配管が必要となり、コストアップが避けられない。また、これら複数のバルブや配管の維持・管理にも多大な費用が必要となる。かかる問題点は、特許文献2に記載された輻射式加熱装置においても同様であり、密閉式ガスヒータ毎に火力調整用のバルブや配管が必要となり、コストアップが避けられない。
【0009】
本発明は、以上の事情に鑑みて創案されたものであり、コストダウンを図りつつ、被焼成物を予め定めた熱流束履歴で加熱することができる、輻射式加熱装置及び輻射式加熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、被焼成物を搬送するコンベヤと、該コンベヤに沿って配置された輻射板と、該輻射板を加熱する熱源と、を備えた輻射式加熱装置において、前記輻射板の表面に、前記コンベヤの長手方向及び幅方向の少なくとも一方に沿って輻射率の異なった輻射材が設けられて
おり、前記熱源は、前記コンベヤの長手方向に間隔を隔てて配置された複数のガスバーナーと、該複数のガスバーナーの火力を同時に調節可能な火力調整手段と、を有することを特徴とする輻射式加熱装置が提供される。
【0012】
また、前記ガスバーナーと対向する位置に高輻射材が設けられるとともに該高輻射材の間に該高輻射材よりも輻射率が低い低輻射材が設けられていてもよいし、前記ガスバーナーと対向する位置に低輻射材が設けられるとともに該低輻射材の間に該低輻射材よりも輻射率が高い高輻射材が設けられていてもよい。
【0013】
さらに、前記高輻射材は、幅方向の両端部における面積が幅方向の中央部における面積よりも大きくなるように設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明によれば、被焼成物を搬送するコンベヤと、該コンベヤに沿って配置された輻射板と、該輻射板を加熱する熱源と、を備えた輻射式加熱装置を用いて、前記コンベヤで搬送される前記被焼成物を前記輻射板からの輻射熱で加熱する輻射式輻射式加熱方法において、前記輻射板の表面に前記被焼成物の焼成に必要な熱流束履歴に応じて輻射率が異なった輻射材を設けることにより、前記輻射板から前記被焼成物に輻射される熱流束を少なくとも前記コンベヤの長手方向において変化させる
とともに、前記熱源として前記コンベヤの長手方向に間隔を隔てて複数のガスバーナーを配置し、該複数のガスバーナーの火力を火力調整手段により同時に調節するようにした、ことを特徴とする輻射式輻射式加熱方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る輻射式加熱装置及び輻射式加熱方法によれば、被焼成物を搬送するコンベヤに沿って輻射板を配置し、輻射板の表面の場所に応じて輻射率が異なった輻射材を設けたことにより、熱源の火力を輻射板の場所に応じて調節することなく、輻射板から被焼成物に加わる熱流束を焼成開始から終了に亘って変更することができる。したがって、コストダウンを図りつつ、被焼成物を予め定めた適切な熱流束履歴で加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る輻射式加熱装置を示す説明図であり、(a)は側断面図、(b)は熱流束分布図、を示している。
【
図2】
図1に示した輻射式加熱装置の詳細を示す斜視図である。
【
図3】輻射材の配置を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は熱流束分布図、を示している。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る輻射式加熱装置における輻射材の配置を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は熱流束分布図、を示している。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る輻射式加熱装置における輻射材の配置を示す平面図であり、(a)は第三実施形態、(b)は第四実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付すことにより重複した説明を省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
本発明の第一実施形態に係る輻射式加熱装置1は、
図1(a)に示したように、被焼成物2を搬送するコンベヤ3と、コンベヤ3に沿って配置された輻射板4と、輻射板4を加熱する熱源5と、を備えている。被焼成物2は、例えば、煎餅、クッキー等の焼き菓子その他の焼成食品、塗装した物品、陶磁器等、食品や工業製品の分野において加熱処理される全ての対象物を含む概念である。
【0019】
コンベヤ3は、例えば、
図1(a)及び
図2に示したように、金網から成る無端ベルトと31、無端ベルト31が巻き掛けられたヘッドプーリー32及びテールプーリー33と、無端ベルト31の搬送面34の下面を支持する支持ローラー35と、を有している。
【0020】
支持ローラー35は、無端ベルト31の搬送面34の長手方向に間隔を隔てて複数配置されており、図示した個数に限定されるものではない。ヘッドプーリー32又はテールプーリー33をモーター等の駆動手段によって回転することで、無端ベルト31が循環し、搬送面34に載置された被焼成物2が搬送される。なお、かかるコンベヤ3は、被焼成物2を搬送する搬送装置であり、図示した構成に限定されるものではなく、被焼成物2に応じて既存の搬送装置を使用することができる。
【0021】
輻射板4は、コンベヤ3の搬送面34の上下に夫々配置されており、これら輻射板4を加熱する熱源5もコンベヤ3の搬送面34の上下に夫々配置されている。各熱源5は、コンベヤ3の搬送面34の長手方向に間隔を隔てて配置された複数のガスバーナー51と、これらガスバーナー51の集合配管52に設けられ各ガスバーナー51の火力を同時に調節可能な単独の火力調整手段(例えば、開度調節バルブ53)と、を有している。
【0022】
ガスバーナー51は、コンベヤ3の長手方向に沿って形成された略直方体形状に形成されたケーシング54内に収容されており、ケーシング54のコンベヤ3の搬送面34に臨む面に輻射板4が設けられている。輻射板4は、各ガスバーナー51によって加熱され、輻射熱をコンベヤ3で搬送される被焼成物2に照射する。なお、ガスバーナー51は、コンベヤ3の幅方向に間隔を隔てて複数配置されていてもよい。
【0023】
本実施形態では、ガスバーナー51がケーシング54内に収容されていることから、ガスバーナー51の燃焼ガスが被焼成物2に吹き付けられることがなく、燃焼ガスの被焼成物2への影響を排除することができる。また、被焼成物2に水分を噴霧した場合であってもガスバーナー51の火力が弱まることがなく、被焼成物2の雰囲気湿度の制御を容易に行うことができる。また、コンベヤ3の搬送面34を挟むように上下に配置されたケーシング54は、入口61と出口62が開口された筐体6に収容されることによって、いわゆる連続加熱炉を構成している。
【0024】
熱源5は、図示した構成に限定されるものではなく、例えば、コンベヤ3の上方又は下方のいずれかのみに配置されていてもよいし、左右方向に配置されていてもよい。また、ガスバーナー51に替えて、いわゆるマイクロコンバスタを使用するようにしてもよい。
【0025】
また、火力調整手段は、必ずしも単独である必要はない。すなわち、ケーシング54を複数のガスバーナー51を含む加熱領域に区分して、その加熱領域毎に火力調整手段を配置するようにしてもよい。加熱領域は、コンベヤ3の長手方向に沿った行方向に区分してもよいし、コンベヤ3の幅方向に沿った列方向に区分してもよい。また、加熱領域の区分数は、ガスバーナー51の個数よりも少ないか、ガスバーナー51の行数又は列数よりも少ないことが好ましい。
【0026】
輻射板4のコンベヤ3の搬送面34に臨む表面には、コンベヤ3の長手方向及び幅方向の少なくとも一方に沿って輻射率の異なった輻射材7が設けられている。
図1(a)に、コンベヤ3の長手方向に沿った場所に応じて、高輻射材71と低輻射材72とを設けた例を示す。詳しくは、予め実験(試作焼成等)やシミュレーション等によって被焼成物2を適切な品質で焼成するための熱流束履歴を求めておき、その熱流束履歴に合致するように輻射率の異なった輻射材7が輻射板4の表面に配置されている。輻射材7は、輻射板4の表面に塗布又は貼付されることによって配置される。
【0027】
図1(b)に被焼成物2を適切な品質で焼成するための熱流束履歴の一例を示す。そして、例えば、この熱流束履歴曲線8の山の部分に対応する輻射板4に高輻射材71が設けられ、熱流束履歴曲線8の谷の部分に対応する輻射板4に低輻射材72が設けられる。このとき、輻射材7(高輻射材71及び低輻射材72)は配置位置だけでなく、例えば、輻射率、長手方向の長さ、面積、厚さ等についても、熱流束履歴曲線8に基づいて適宜調整される。
【0028】
高輻射材71としては、例えば、輻射率が0.8〜0.9程度のマグネシウム、酸化鉄、石膏、セラミック等が用いられる。これらの高輻射材71は、輻射板4に塗布されることによって、輻射板4の表面に配置される。また、低輻射材72としては、例えば、輻射率が0.2〜0.3程度のアルミニウム、ステンレス、銅等が用いられる。低輻射材72がアルミニウムやステンレス等の場合、板状のものが輻射板4に溶接され、低輻射材72が銅の場合は輻射板4に蒸着されることによって、輻射板4の表面に配置される。
【0029】
上述した輻射式加熱装置1を用いることによって、輻射板4の表面に被焼成物2の焼成に必要な熱流束履歴に応じて輻射率が異なった輻射材7を設けることにより、輻射板4から被焼成物2に輻射される熱流束を少なくともコンベヤ3の長手方向において変化させるようにすることができる。
【0030】
すなわち、高輻射材71からは低輻射材72よりも高い輻射熱が輻射されることから、高輻射材71と低輻射材72との配置や輻射率を予め求めておいた適切な熱流束履歴(
図1(b)参照)に合わせて設定することにより、コンベヤ3によって搬送される被焼成物2に、焼成の開始から終了に亘ってその熱流束履歴に応じた適切な熱流束を加えることができる。
【0031】
また、上述した輻射式加熱装置1を用いたことにより、個々のガスバーナー51毎に火力を個別に調節する必要がなく、各ガスバーナー51の火力を個別に調整するためのバルブや配管を省略することができ、コストダウンを図ることができ、シンプルで信頼性・耐久性に優れた加熱装置を提供することができる。
【0032】
また、上述した輻射式加熱装置1によれば、ヒータ表面の輻射率を変更することにより、ヒータ(加熱装置)の内部構造を変更することなく、高熱流束バーナー及び低熱流束バーナーに任意に変更することができる。
【0033】
さらに、ステンレス等の材料を加熱装置に使用した場合、未使用状態では輻射率は0.2程度であるものの、使用するにつれて酸化して輻射率は0.5程度まで変化することが知られている。本実施形態では、上述した輻射制御を行なうことにより、このような輻射率の過渡特性を回避したり、予め材料を酸化させる等の前処理を省略したりすることができる。
【0034】
ここで、
図3(a)は輻射材の配置を示す平面図であり、
図3(b)は熱流束分布図、を示している。
図3(b)の熱流束分布図に示した熱流束分布は、輻射板4から被焼成物2に加わるコンベヤ進行方向に沿った熱流束を示している。
図3(a)に示したように、本実施形態では、ガスバーナー51と対向する位置に高輻射材71が設けられるとともに高輻射材71の間に高輻射材71よりも輻射率が低い低輻射材72が設けられている。
【0035】
かかる構成により、ガスバーナー51によって高輻射材71が低輻射材72よりも高い温度に加熱されることから、輻射率の差と相まって、コンベヤ3の進行方向に沿って高輻射材71から被焼成物2に加わる熱流束と低輻射材72から被焼成物に加わる熱流束との差を、高輻射材71と低輻射材72が同温度に加熱された場合と比べて大きくすることができる。
【0036】
次に、本発明の第二実施形態に係る輻射式加熱装置1について、
図4(a)及び(b)を参照しつつ説明する。
図4は、本発明の第二実施形態に係る輻射式加熱装置における輻射材の配置を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は熱流束分布図、を示している。かかる第二実施形態に係る輻射式加熱装置1は、高輻射材71及び低輻射材72の配置を変更したものである。
【0037】
具体的には、
図4(a)に示したように、ガスバーナー51と対向する位置に低輻射材72が設けられるとともに低輻射材72の間に低輻射材72よりも輻射率が高い高輻射材71が設けられている。すなわち、第一実施形態における高輻射材71と低輻射材72との配置を入れ替えたものである。
【0038】
かかる構成により、ガスバーナー51によって低輻射材72が高輻射材71よりも高い温度に加熱されることから、輻射率の差を考慮すると、コンベヤ3の進行方向に沿って低輻射材72から被焼成物2に加わる熱流束と高輻射材71から被焼成物2に加わる熱流束との差を、低輻射材72と高輻射材71が同温度に加熱された場合と比べて小さくすることができる。したがって、
図4(b)に示したように、熱流束分布を均一に制御することも可能である。ただし、熱流束分布は、均一となる場合に限られず、高輻射材71及び低輻射材72の熱流束の何れか一方が高くなっても構わない。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態に係る輻射式加熱装置1について、
図5(a)及び(b)を参照しつつ説明する。
図5は、本発明の他の実施形態に係る輻射式加熱装置における輻射材の配置を示す平面図であり、(a)は第三実施形態、(b)は第四実施形態、を示している。
【0040】
図5(a)に示した第三実施形態に係る輻射式加熱装置1は、高輻射材71を幅方向の両端部における面積が幅方向の中央部における面積よりも大きくなるように設けたものである。例えば、図示したように、ガスバーナー51と対向する位置に低輻射材72を略円形状に設け、その周囲に高輻射材71を設けることにより、高輻射材71を幅方向の両端部における面積を大きくすることができる。ここで、低輻射材72の形状は、円形状に限定されるものではなく、楕円形状であってもよいし、矩形形状であってもよい。
【0041】
一般に、輻射板4の輻射熱は、ガスバーナー51に近い幅方向の中央部は温度が高く、幅方向の両端部において低くなる傾向にある。したがって、コンベヤ3の幅方向の略全域に亘って均一な温度で被焼成物2を加熱するためには、高温領域に低輻射材72を設け、低温領域に高輻射材71を設けることが好ましい。
【0042】
図5(b)に示した第四実施形態に係る輻射式加熱装置1は、輻射板4の一部に輻射材7を設けない無輻射材領域41を形成したものである。ここでは、低輻射材72と高輻射材71との間に無輻射材領域41を配置している。このように、輻射板4の一部に輻射材7を設けない領域を形成することによっても被焼成物2に輻射される熱流束を調整することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0044】
例えば、上下の輻射板4における高輻射材71及び低輻射材72の配置は、上下対称に限られず、被焼成物2の材質が上面側と下面側とで異なるような場合には、上下非対称となるように高輻射材71及び低輻射材72を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 輻射式加熱装置
2 被焼成物
3 コンベヤ
4 輻射板
5 熱源
6 筐体
7 輻射材
8 熱流束履歴曲線
31 無端ベルト
32 ヘッドプーリー
33 テールプーリー
34 搬送面
35 支持ローラー
41 無輻射材領域
51 ガスバーナー
52 集合配管
53 開度調節バルブ
54 ケーシング
61 入口
62 出口
71 高輻射材
72 低輻射材