(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸方向可動に支承されているスライドリング(2)と、カウンタリング(3,3′′′′,3′′′′′)とを有するスライドリングシール(1,1′,1′′,1′′′,1′′′′,1′′′′′,1′′′′′′)であって、前記スライドリング(2)と前記カウンタリング(3,3′′′′,3′′′′′)とが、それぞれ互いに接触し合ったシール面(2a,3a,3′′′′a,3′′′′′a)を有し、前記スライドリング(2)のシール面(2a)が、前記カウンタリング(3,3′′′′,3′′′′′)のシール面(3a,3′′′′a,3′′′′′a)に向かい合って位置しており、前記スライドリング(2)は、ばね手段(4)によって前記カウンタリング(3,3′′′′,3′′′′′)に押圧されており、前記カウンタリング(3,3′′′′,3′′′′′)は支持リング(5,5′,5′′,5′′′,5′′′′′′)内に収容されている、スライドリングシールにおいて、複数の磁気的なN極とS極とを備えた磁気トラックが設けられており、前記支持リング(5,5′,5′′,5′′′,5′′′′′′)に、半径方向内側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的な内側の隆起部(6,6′′′,6′′′′,6′′′′′)が配置されていることを特徴とする、スライドリングシール。
前記支持リング(5,5′,5′′,5′′′,5′′′′′′)に、半径方向内側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的な内側の隆起部(6,6′′′,6′′′′,6′′′′′)が配置されている、請求項2記載のスライドリングシール。
前記支持リング(5,5′,5′′,5′′′,5′′′′′′)に、半径方向外側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的な外側の隆起部(7,7′′′)が配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のスライドリングシール。
前記支持リング(5′)は、1つの半径方向平面に位置する円環状のフランジ(5a′)を有し、該円環状のフランジ(5a′)は、前記支持リング(5′)が小さな遊びを持ってシャフト(10)に装着可能になるように形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のスライドリングシール。
前記支持リング(5′′′)に、半径方向内側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的な内側の隆起部(6′′′)は、前記支持リング(5′′′)に、半径方向外側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的な外側の隆起部(7′′′)とは異なる材料から製作されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のスライドリングシール。
前記カウンタリング(3,3′′′′,3′′′′′)は、支持リング(5,5′,5′′,5′′′,5′′′′′′)内に形状接続式に収容されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のスライドリングシール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景に基づき、エンジンの摩擦出力を減少させるスライドリングシールを求める要求が生じている。さらに、たとえばエンコーダのような別の装置を問題なく取り付けることができるようにするために、構成スペース節約的に使用可能となるようなスライドリングシールを提供することが望まれている。特に、スライドリングシールとエンコーダとを含むアッセンブリの全体コストや重量を減少させることが望まれている。
【0005】
したがって、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、冒頭で述べた形式のスライドリングシールを改良して、当該スライドリングシールが、廉価な製作の後に構成スペースを節約できるように使用可能となるようなスライドリングシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明の構成では、複数の磁気的なN極とS極とを備えた磁気トラックが設けられているようにした。
【0007】
本発明によれば、まず、回転するカウンタリングは、このカウンタリングがシャフトと一緒に回転し得るように取り付けられる。その後に、このカウンタリングを、シャフトに位置決めされた支持リングに結合させる。特に、支持リング内でのカウンタリングの位置固定が、回転するカウンタリングに、ある程度の自由度を付与する。支持リング内でのこのような位置固定により、回転するカウンタリングは、軸方向においても半径方向においても、小さな変位運動を実施することができ、こうして静的なスライドリングと共に、永続的な信頼性の良いシール機能を発揮するスライドリングシールを形成することができる。このような位置固定により、回転するカウンタリングを、少なくとも半径方向に作用する押圧力に抗して、損傷を受けることなしに半径方向に変位させるか、または運動させることができる。支持リング内でのカウンタリングのこのような位置固定により、スライドリングシールは特にコンパクトにかつ構成スペースを節約するように形成され得る。なぜならば、支持リングの内部に、カウンタリングに少なくとも半径方向で力を加える手段を配置するだけで済むからである。スライドリングシール、特に支持リングに、複数のN極およびS極を備えた磁気トラックを形成することにより、廉価な製作の後に構成スペースを節約するように使用可能となる、エンコーダ機能を有するスライドリングシールを提供することができる。
【0008】
したがって、冒頭で挙げた課題は解決されている。
【0009】
支持リングには、半径方向内側に向けられた、つまり半径方向内側に面した、少なくとも部分的に弾性的な内側の隆起部が配置されていてよい。この内側の隆起部はエラストマから製作されていると有利である。この内側の隆起部は、カウンタリングの半径方向外側の周面を押圧することができ、これによりカウンタリングを摩擦接続式(摩擦力を利用して接続する構造)に位置固定することができる。半径方向内側に向けられた内側の隆起部は、支持リングに設けられた支持フランジの内周面に沿って配置されていると有利である。
【0010】
支持リングには、半径方向外側に向けられた、つまり半径方向外側に面した、少なくとも部分的に弾性的な外側の隆起部が配置されていてよい。この外側の隆起部はエラストマまたはエラストマではないプラスチックから製作されていると有利である。この具体的な構成により、スライドリングシールが同時にエンコーダとしても機能するように当該スライドリングシールを改良することが可能になる。すなわち、半径方向外側の隆起部には、フェライトを導入することができる。フェライトは半径方向外側の隆起部もしくはエラストマもしくはプラスチックの磁化を可能にする。
【0011】
内側の隆起部および/または外側の隆起部は、複数の磁気的なN極とS極とを備えた磁気トラックを有していてよい。この具体的な構成により、シャフトの回転を監視することができる。特に、シャフトがどのような回転状態にあるのかを確認することができる。規則的に互いに交互に連続するN極およびS極の他に、基準点を成すN極またはS極が不規則的に配置されていてもよい。センサによって、これらの基準点を検出して、シャフトの回転状態もしくはシャフトの位置に対応させることができる。
【0012】
支持リングには、隆起部材料を通過させるための複数の通過部が形成されていてよい。この具体的な構成により、半径方向内側の隆起部と半径方向内側の隆起部とを同じ材料から製作することができる。たとえば、エラストマの射出成形時に、エラストマが、前記通過部を通って半径方向外側の範囲から半径方向内側の範囲へ流れるようにエラストマを射出することができる。こうして、半径方向外側の隆起部と半径方向内側の隆起部とを、問題なく同じ材料から製作することができる。
【0013】
支持リングの軸方向の一方の端部では、その縁部に1つの切欠きが形成されていてよい。この切欠きは溝として形成されていると有利である。この切欠きは、この切欠き内に軸方向で係合が行われ得るように方向付けられかつ配置されている。すなわち、支持リングがシャフトに押し被される際に、シャフトに対して相対的に支持リングの向きを、前記切欠きが、相補的な対応部材と係合するように調整することができる。この場合には、前記切欠きにより、シャフトに対して相対的な支持リングの適正な位置決めを確保する機械的な基準が提供され得る。
【0014】
支持リングは、1つの半径方向平面に位置する円環状のフランジを有していてよい。この場合、この円環状のフランジは、支持リングが小さな遊びを持ってシャフトに装着可能になるように形成されている。支持リングは種々の態様の構成を有していてよい。支持リングは具体的には、1つの半径方向平面に位置する円環状のフランジを有していてよく、この場合、フランジからは、軸方向でつばが突出していて、このつばはフランジの、スライドリングおよびカウンタリングとは反対の側に形成されている。このような具体的な構成により、支持リングの半径方向位置決めが可能になる。
【0015】
半径方向内側の隆起部は、半径方向外側の隆起部とは異なる材料から製作されていてもよい。この具体的な構成により、半径方向内側の隆起部の弾性率に影響を与えることなしに、半径方向外側の隆起部にフェライトまたは別の磁化可能な材料を問題なく混入させることができる。このような背景に基づき、たとえば、半径方向内側の隆起部を、磁化可能な粒子の混入物を有しないエラストマから製作することが考えられる。しかし、半径方向外側の隆起部には、この半径方向外側の隆起部に磁気トラックを付与できるようにするために、磁化可能な粒子が混入されていてよい。半径方向外側の隆起部にプラスチックが使用されると、エラストマの場合よりも著しく高い充填度が可能になる。最大65%までの充填度が特に好都合であることが判った。
【0016】
カウンタリングは、支持リング内に摩擦接続式に収容されていてよい。これにより、廉価に製造可能な、僅かに圧縮されたエラストマを使用することができるので、カウンタリングに力を加えて、このカウンタリングを軽度に可動となるように支持リング内に位置固定することができる。
【0017】
カウンタリングは、支持リング内に形状接続式に、つまり係合に基づいた嵌合により、収容されていてよい。これにより、カウンタリングを、たとえば支持リング内に迅速にクリップイン式またはスナップイン式に係合させることができる。こうして、迅速な組付けが可能になる。
【0018】
カウンタリングは、支持リング内に材料接続式(接着剤等の他の材料を用いて接続する構造)に収容されていてよい。接着剤の使用により、カウンタリングを確実に位置固定することができる。接着剤により、カウンタリングまたは支持リングにおける誤差を問題なく補償することができる。
【0019】
前記ばね手段は、ベローズ状に形成されていて、金属、プラスチックまたはエラストマから製作されていてよい。このようなベローズ状のばね手段は軸方向において特に短い構造を有する。したがって、スライドリングシールは軸方向において極めてコンパクトでかつ短尺に形成され得る。回転するカウンタリングにスライドリングを押圧する力に関連して、前記ばね手段は金属、プラスチックまたはエラストマから製作されていてよい。
【0020】
外側の周面を備えたシャフトと、上で説明したスライドリングシールとを有する本発明によるアッセンブリの構成では、支持リングが前記シャフトに押し被せられているか、前記シャフトに中間嵌めにより結合されているか、または支持リングが、小さな遊びを持って前記シャフトに座着されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スライドリングシールが、廉価な製作の後に構成スペースを節約できるように使用可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】スライドリングシールと、エンコーダ用のセンサとを備えたシャフトの断面図および平面図である。
【
図2】
図1に示したスライドリングシールの「B」で示した部分の詳細図である。
【
図3】隆起部材料を通過させるための複数の通過部を備えた支持リングの全体図および「D」で示した部分の詳細図である。
【
図4】縁部に1つの切欠きが形成されている支持リングの全体図、この全体図の「C」で示した部分における、成形工具内に配置されている突起により形成された、エラストマ内の凹設部を示す詳細図および全体図の「E」で示した部分における切抜き部の詳細図である。
【
図5】シャフトとスライドリングシールとエンコーダ用のセンサとを有するアッセンブリを示す斜視図である。
【
図6】スライドリングシールとエンコーダ用のセンサとを備えたシャフトの断面図および平面図ならびに断面図の「K」で示した部分における、軸方向に突出したつばの詳細図(K)および支持リングの種々の実施形態を示す詳細図(Ka、Kb、Kc)である。
【
図7】
図6の断面図の「F」で示した部分におけるスライドリングシールの詳細図である。
【
図8】シャフトとスライドリングシールとを有するアッセンブリであって、スライドリングシールに設けられた支持リングを貫いてシャフトの位置決めピンが貫通しているアッセンブリを示す斜視図および「L」の部分における位置決めピンの詳細図である。
【
図9】半径方向に配置された長孔を有する支持リングの全体図、「H」の部分におけるこの長孔の詳細図および「J」の部分における、突起によりエラストマに形成された凹設部の詳細図である。
【
図10】隆起部材料のための複数の通過部を有する支持リングの全体図および「G」の部分における通過部の詳細図である。
【
図11】スライドリングシールとエンコーダ用のセンサとを備えたシャフトの断面図および平面図ならびに「N」で示した部分におけるシャフトと支持リングとの間の半径方向の遊びを示す詳細図である。
【
図12】
図11の「M」で示した部分におけるスライドリングシールの詳細図である。
【
図13】シャフトとスライドリングシールとを有するアッセンブリの斜視図ならびに「O」で示した部分における、シャフトに設けられた、支持リングを貫通した位置決めピンの詳細図である。
【
図14】長孔を有する支持リングの全体図および「P」で示した部分における長孔の詳細図ならびに「Q」で示した部分における、突起によりエラストマに形成された凹設部の詳細図である。
【
図15】隆起部材料のための複数の通過部を備えた支持リングの全体図および「R」で示した部分における通過部の詳細図である。
【
図16】スライドリングシールとエンコーダ用のセンサとを備えたシャフトの断面図および平面図である。
【
図17】
図16に示した「R」の部分における、外側の隆起部と内側の隆起部とが互いに異なる材料から製作されているスライドリングシールの詳細図である。
【
図18】スライドリングシールとエンコーダ用のセンサとを備えたシャフトの断面図および平面図である。
【
図19】
図18に示した、カウンタリングが形状接続式に支持リング内に収容されているスライドリングシールの詳細図である。
【
図20】スライドリングシールとエンコーダ用のセンサとを備えたシャフトの断面図および平面図である。
【
図21】
図20に示した、カウンタリングが形状接続式に支持リング内に収容されているスライドリングシールの詳細図である。
【
図22】スライドリングシールとエンコーダ用のセンサとを備えたシャフトの断面図および平面図である。
【
図23】
図22に示した、カウンタリングが材料接続式に支持リング内に収容されているスライドリングシールの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面を用いて詳しく説明する。
【0024】
図1には、スライドリングシール1を含むアッセンブリが、平面図(右側)およびA−A線に沿った断面図(左側)で示されている。このスライドリングシール1は
図2に詳細に図示されている。
【0025】
図2には、軸方向に可動に支持されているスライドリング2と、対向するカウンタリング3とを有するスライドリングシール1が示されている。スライドリング2とカウンタリング3とは、それぞれ互いに接触したシール面2a,3aを有する。スライドリング2のシール面2aはカウンタリング3のシール面3aに向かい合って位置しており、スライドリング2は、ばね手段4によりカウンタリング3に押圧されている。カウンタリング3は摩擦接続式(摩擦力を利用して接続する構造、以下同様とする)に支持リング5内に収容されている。
スライドリングシール1は、複数の磁気的なN極およびS極を備えた磁気トラックを有する。
【0026】
支持リング5には、半径方向内側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的な内側の隆起部6が配置されている。この内側の隆起部6はエラストマから製作されていて、半径方向でカウンタリング3に力を加えている。
【0027】
支持リング5には、半径方向外側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的な外側の隆起部7が配置されている。この外側の隆起部7はエラストマから製作されている。内側の隆起部6のエラストマは外側の隆起部7のエラストマと同一である。
【0028】
外側の隆起部7は、複数の磁気的なN極およびS極を備えた磁気トラックを有する。具体的には、外側の隆起部7のエラストマ内には、磁化可能な粒子、すなわちフェライトが収容されている。磁化可能な粒子は、磁化装置(図示しない)によってその磁気双極子に関して、互いに交互に連続するN極とS極とから成るパターンが生じるように方向付けられている。この場合、少なくとも1つのN極および/またはS極が、その他のN極および/またはS極に比べて不規則的に形成されているような構成も考えられる。
【0029】
支持リング5には、隆起部材料を通過させるための通過部8が形成されている。
【0030】
図2に示した状態では、支持リング5の内径に相当する内周面20が座着範囲14において直接にシャフト10に座着している。
【0031】
図3の上側の図には、支持リング5の全体図が示されている。支持リング5には、隆起部材料のための複数の通過部8が形成されている。
図3の下側の図には、前記通過部8の部分的な拡大図が図示されている。
【0032】
図4の上側の図からは、支持リング5の一方の軸方向端部でその縁部に1つの切欠き9が形成されていることが判る。
図4の右下の図には、この切欠き9が拡大されて図示されている。この方形の切欠き9内には、軸方向で対応部材を係合させることができる。これにより、支持リング5を、
図1に示したようなシャフト10に組み付けることができる。
【0033】
図4の左下の図には、軸方向に延びる凹設部11が図示されている。この凹設部11は、成形工具に位置決めされている突起によって作成されている。この突起は、内側の隆起部6の製作時にエラストマ層の内側範囲に突入する。この突起は、半径方向で支持リング5にまで届くような深さに形成されている。この場合、突起と支持リング5との間には、極めて薄いエラストマフィルムしか残らないことが可能である。しかし、突起は軸方向では、内側の隆起部6にまで突入しないので、内側の隆起部6は突起によって損なわれずに済む。
【0034】
半径方向内側の隆起部6の製作時には、突起を備えた成形工具が使用される。この成形工具は半径方向内側の隆起部6に複数の凹面状の凹設部11を形成する。支持リング5の材料は幾つかの個所においてむき出しになるか、またはエラストマから成る極めて薄いフィルムしか有しない。突起は半径方向においては、半径方向内側の隆起部6がカウンタリング3に接触する個所を越えて支持リング5に突入してはならない。この限りでは、常につばが残されていて、このつばによって半径方向内側の隆起部6が周方向もしくはカウンタリング3の外周面に沿ってカウンタリング3に摩擦接続式に接触することが確保されていなければならない。
【0035】
使用された成形工具に設けられた突起は、型キャビティ内での支持リング5の保持、外径の調節ならびに支持リング5の安定化のために働く。支持リング5の金属薄板は、エラストマまたは別のプラスチックの装入時における撓みおよび変形に対して保護されなければならない。
【0036】
図4には、方形の溝として形成されている切欠き9が図示されている。この切欠き9は、シャフト10に対して相対的なエンコーダの周方向側の位置決めのための機械的な基準として働く。このことは特に、シャフト10に対して周方向で磁化パターンが位置決めされなければならないようなエンコーダにおいて重要となる。
【0037】
図5には、切欠き9を備えた支持リング5が図示されている。
【0038】
図6には、左側の図に、シャフト10に座着されているスライドリングシール1′が図示されている。このスライドリングシール1′は
図7に詳細に図示されている。
【0039】
図6の左下の図には、スライドリングシール1′の支持リング5′の詳細図が示されている。この図からは、支持リング5′が円環状のフランジ5a′を有することが判る。このフランジ5a′は1つの半径方向平面に位置しており、この場合、フランジ5a′からは軸方向でつば5b′が突出しており、このつば5b′はフランジ5a′の、
図7に示したスライドリング2とカウンタリング3とは反対の側に形成されている。
【0040】
支持リング5′と、シャフト10に設けられた小さな段部との間には、当付け範囲21′が設けられている。
【0041】
支持リング5′は円環状のフランジ5a′を有する。この円環状のフランジ5a′は1つの半径方向平面に位置しており、この場合、円環状のフランジ5a′は、支持リング5′が小さな遊びを持ってシャフト10に装着可能になるように形成されている。
【0042】
支持リング5′は必ずしもつばを有する必要はない。範囲Kにおけるシャフトの構成に応じて、支持リング5′の種々の設計バリエーションが考えられる。これらの設計バリエーションは
図6の下側の別の3つの図(Ka,Kb,Kc)に図示されている。
【0043】
図7には、半径方向の遊びを持ってシャフト10に座着されているスライドリングシール1′が図示されている。座着範囲14′では、支持リング5′が直接にシャフト10に載着されていない。
【0044】
スライドリングシール1′の支持リング5′は、内周面20′を有する。この内周面20′は小さな遊びを持ってシャフト10に載着されている。「小さな遊び」とは、数ミリメートルの半径方向ギャップ幅を意味する。半径方向ギャップ幅は0よりも大きく、ただし最大で10mmであることが有利である。つまり、半径方向ギャップ幅はユニット内に提供されている半径方向の構成スペースに関連する。
【0045】
図7に示したように、支持リング5′とシャフト10との間には、Oリング22が設けられている。このOリング22は静的なシールを生ぜしめる。Oリング22はエラストマから製作されていると有利である。
【0046】
図8には、上側の図に、シャフト10と、支持リング5′を備えたスライドリングシール1′とを有するアッセンブリが図示されている。シャフト10は位置決めピン12を有し、この位置決めピン12は支持リング5′を貫通している。位置決めピン12は
図8の下側の図に拡大されて図示されている。
【0047】
位置決めピン12は、シャフト10に対して相対的にエンコーダを周方向で位置決めするために働く機械的な基準を成す。このことは、特にシャフト10に対して周方向に磁化パターンが位置決めされなければならないようなエンコーダにおいて重要となる。
【0048】
図9の上側の図に図示されている支持リング5′には、複数の貫通孔13′が設けられている。これらの貫通孔13′は、エンコーダに隣接した構成部分にシャフト10をねじ締結するために働く。隣接した構成部分とは、たとえば内燃機関のフライホイールであってよい。支持リング5′は、シャフト10に当接するための内周面20′を有する。
【0049】
図9の左下の図には、長孔15′が拡大されて図示されている。この長孔15′は機械的な基準として働く。支持リング5′に半径方向で配置された長孔15′は、シャフト10に対して相対的にエンコーダを周方向で位置決めするために働く。このことは、特に磁化パターンがシャフト10に対して周方向で位置決めされなければならないようなエンコーダにおいて重要となる。
【0050】
図9の右下には、エラストマ層に設けられた、軸方向に延びる凹設部11が図示されている。突起は支持リング5′のところまで突入することができる。
【0051】
図10の上側の部分には、支持リング5′を別の方向から見た図が示されている。この場合、複数の通過部8′が図示されている。これらの通過部8′は、エラストマが、半径方向外側の隆起部7の範囲から半径方向内側の隆起部6の範囲へ到達することを可能にする。
図10の下側の部分には、通過部8′が拡大されて図示されている。
【0052】
図11では、左側の図に別のスライドリングシール1′′が図示されている。このスライドリングシール1′′の支持リング5′′は、半径方向の遊びを持ってシャフト10に座着されている。半径方向の遊びの範囲は、真ん中の円形の図に図示されている。
【0053】
図11に示したスライドリングシール1′′は、円環状のフランジ5a′′を有する。この円環状のフランジ5a′′は、シャフト10の周面から半径方向で1mmよりも多い長さだけ上のところで終わっている。
【0054】
スライドリングシール1′′は、僅かな締めしろを持って座着した支持リング5′′を有する。当業者にとって、このような嵌め合いは「中間嵌め」を意味する。択一的に、支持リング5′′を小さな遊びを持って組み付けることもできる。
【0055】
図11には、スライドリングシール1′′が詳細に図示されている。このスライドリングシール1′′では、支持リング5′′が円環状のフランジ5a′′を有し、この円環状のフランジ5a′′は1つの半径方向平面に位置している。しかし、フランジ5a′′はシャフト10の軸方向に延びる周面にまでは延びておらず、この軸方向の周面よりも上で終わっている。したがって、支持リング5′′は遊びを持ってシャフト10に位置決めされている。このことは、
図11の真ん中上の図に図示されている。
【0056】
図12に示した支持リング5′′はシャフト10と、隣接した構成部分16、つまり内燃機関のフライホイールとの間に位置決めされている。このような構成部分は
図7においても、スライドリングシール1′につき図示されている。
【0057】
図12に示したスライドリングシール1′′は、支持リング5′′を有する。この支持リング5′′の内周面20′′は座着範囲14′′においてシャフト10に座着されている。
【0058】
図12に示した実施形態では、支持リング5′′とシャフト10との間にOリング22が設けられている。このOリング22は静的なシールを生ぜしめる。Oリング22はエラストマから製作されていると有利である。
【0059】
図13の上側の図には、シャフト10と、支持リング5′′を備えたスライドリングシール1′′とを有するアッセンブリが図示されている。シャフト10からは、位置決めピン12が突出しており、この位置決めピン12は
図13の下側の図に拡大されて図示されている。
【0060】
図14に示したように、位置決めピン12は長孔15′′を貫通する。この長孔15′′は機械的な基準として働く。半径方向に配置された長孔15′′は支持リング5′′に、エンコーダをシャフト10に対して相対的に周方向で位置決めするために形成されている。このことは特に、磁化パターンがシャフト10に対して周方向に位置決めされなければならないようなエンコーダにおいて重要となる。
【0061】
図14の上側の図には、複数の貫通孔13′′を備えた支持リング5′′が示されている。支持リング5′′はさらに、内周面20′′を有する。
図14の左下の図には、長孔15′′が拡大されて図示されている。
図14の右下の図には、既に前の図面につき説明した、軸方向に延びる凹設部11が図示されている。この凹設部11はエラストマ層に軸方向に延びる溝の形で形成されている。
【0062】
図15の上側の図には、支持リング5′′が図示されている。この支持リング5′′には、まだ液状のエラストマの流れを案内するための複数の通過部8′′が形成されている。
図15の下側の図には、これらの通過部8′′が拡大されて図示されている。
【0063】
図16には、
図17に詳細に図示されているスライドリングシール1′′′が示されている。このスライドリングシール1′′′は、スライドリングシール1とほぼ同じ構造を示しているが、ただし通過部8を有しない支持リング5′′′が設けられている。半径方向内側の隆起部6′′′は、半径方向外側の隆起部7′′′とは異なる材料から製作されている。このような具体的な構成により、半径方向内側の隆起部6′′′の弾性率に影響を与えることなしに、半径方向外側の隆起部7′′′に、磁化可能な金属粒子を混入することが可能となる。
【0064】
エラストマの代わりに、冷却後にエラストマほどに弾性的にはならない射出成形可能なプラスチックを使用することもできる。
【0065】
図17には、支持リング5′′′を備えたスライドリングシール1′′′が示されている。支持リング5′′′の内周面20′′′は座着範囲14′′′においてシャフト10に座着されている。
【0066】
図18には、左側の図に、スライドリングシール1′′′′を有するアッセンブリが断面図で示されている。このスライドリングシール1′′′′は
図19に詳しく図示されている。
【0067】
図19には、軸方向可動に支承されているスライドリング2と、カウンタリング3′′′′とを有するスライドリングシール1′′′′が示されている。スライドリング2とカウンタリング3′′′′とは、それぞれ互いに接触したシール面2a,3′′′′aとを有し、スライドリング2のシール面2aはカウンタリング3のシール面3′′′′aに向かい合って位置している。スライドリング2は、ばね手段4によってカウンタリング3′′′′に押圧されている。カウンタリング3′′′′は形状接続式(接続される互いの部材の形状を利用して接続する構造、以下同様とする)に、つまり係合に基づいた嵌合により、支持リング5内に収容されている。
【0068】
支持リング5には、半径方向内側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的である内側の隆起部6′′′′が配置されている。この内側の隆起部6′′′′はエラストマから製作されていて、カウンタリング3′′′′を形状接続式に位置固定している。カウンタリング3′′′′は、斜めに面取りされた面取り部を有し、この面取り部には、内側の隆起部6′′′′に設けられたピンが載着されている。これにより、形状接続、つまり係合に基づいた嵌合が形成される。
【0069】
カウンタリング3′′′′は片側でしか斜めに面取りされていない。片側の斜め面取りの場合、軸方向の比較的小さな所要構成スペースにおいてカウンタリング3′′′′が使用可能になることが有利である。たとえば製造技術的な理由からシール面3′′′′aを片側にしか形成することができないという理由で、カウンタリング3′′′′を一方向でしか組み込むことができない場合には、誤取付けを回避するためにこのような変化形を使用することができる。
【0070】
図20の左側の図には、スライドリングシール1′′′′′を有するアッセンブリが断面図で示されている。このスライドリングシール1′′′′′は
図21に詳しく図示されている。
【0071】
図21には、軸方向可動に支承されているスライドリング2と、カウンタリング3′′′′′とを有するスライドリングシール1′′′′′が示されている。スライドリング2とカウンタリング3′′′′′とは、それぞれ互いに接触したシール面2a,3′′′′′aを有し、この場合、スライドリング2のシール面2aはカウンタリング3′′′′′のシール面3′′′′′aに向かい合って位置しており、スライドリング2はばね手段4によってカウンタリング3′′′′′に押圧されている。カウンタリング3′′′′′は形状接続式に、つまり係合に基づいた嵌合により、支持リング5内に収容されている。
【0072】
支持リング5には、半径方向内側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的である内側の隆起部6′′′′′が配置されている。この内側の隆起部6′′′′′はエラストマから製作されていて、カウンタリング3′′′′′を形状接続式に位置固定している。カウンタリング3′′′′′は、斜めに面取りされた2つの面取り部を有し、両面取り部は1つの先端エッジを形成するように互いに接近する方向に延びている。形成された先端エッジには、内側の隆起部6′′′′′に設けられたピンが背後から係合している。これにより、形状接続、すなわち係合に基づいた嵌合が形成される。
【0073】
カウンタリング3′′′′′は支持リング5内に単純に過剰寸法を持って圧入されるのではない。すなわち、カウンタリング3′′′′′は支持リング5内に摩擦接続式に圧入されるのではない。カウンタリング3′′′′′は支持リング5の内側の隆起部6′′′′′内に圧入され、この場合、カウンタリング3′′′′′の外周面は両側に斜めの面取り部を有する。これらの斜めの面取り部を介して、圧入されたカウンタリング3′′′′′は支持リング5の、図示されたように加工成形された内側の隆起部6′′′′′内に形状接続式に、つまり係合に基づいた嵌合により位置固定される。両側に斜めの面取り部が設けられている場合、組立て時にカウンタリング3′′′′′を支持リング5内に簡単に圧入することができるという利点が得られる。全自動的な組立てにおいては、カウンタリング3′′′′′を任意の向きで支持リング5に圧入することができる。
【0074】
図22の左側の図には、スライドリングシール1′′′′′′を有するアッセンブリの断面図が示されている。このスライドリングシール1′′′′′′は
図23に詳しく図示されている。
【0075】
図23には、軸方向可動に支承されているスライドリング2と、カウンタリング3とを有するスライドリングシール1′′′′′′が示されている。スライドリング2とカウンタリング3とは、それぞれ互いに接触したシール面2a,3aを有し、この場合、スライドリング2のシール面2aはカウンタリング3のシール面3aに向かい合って位置しており、スライドリング2はばね手段4によってカウンタリング3に押圧されている。カウンタリング3は材料接続式(接着剤等の他の材料を用いて接続する構造、以下同様とする)に支持リング5′′′′′′内に収容されている。
【0076】
支持リング5′′′′′′には、半径方向内側に向けられた、少なくとも部分的に弾性的である内側の隆起部が配置されていない。したがって、支持リング5′′′′′′に通過部も設けられていない。カウンタリング3は接着剤19によって材料接続式に支持リング5′′′′′′内に位置固定されている。
【0077】
図2、
図7、
図12、
図17、
図19および
図21に示した実施形態では、支持リング5,5′,5′′,5′′′とシャフト10との間の接合面の範囲に位置する各座着範囲14′,14′′,14′′′のところに、かつ/または各座着範囲の内部に、静的なシールが設けられていてよい。このような静的なシールはシールラッカまたは環状のシールビードの形で設けられていてよい。シールビードはエラストマまたはシリコーンを有していてよい。
【0078】
各図面に図示されている全てのスライドリングシール1,1′,1′′,1′′′,1′′′′,1′′′′′,1′′′′′′において、ばね手段4はベローズ状に形成されている。ばね手段4は金属、プラスチックまたはエラストマから製作されていてよい。
【0079】
スライドリングシール1,1′,1′′,1′′′,1′′′′,1′′′′′,1′′′′′′は、シールとエンコーダとを統合したユニットである。エンコーダはセンサ17により検出され得る。センサ17は、たとえば
図1に図示したようにフランジ18に載着されている。フランジ18には、センサ17のための収容部が形成されている。
【0080】
前記スライドリングシール1,1′,1′′,1′′′,1′′′′,1′′′′′,1′′′′′′は、複数のN極およびS極を備えた磁気トラックを有する。
【0081】
前記スライドリングシール1,1′,1′′,1′′′,1′′′′,1′′′′′,1′′′′′′は、内燃機関で使用される。