(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、トランス、コンデンサ、計器用変成器、リアクトル、放電コイル、OFケーブルなどのPCB汚染廃電気機器から、PCBを除去する方法が、種々提案されている。
特に、近年、酸化チタンとアパタイトと鉄を複合化した可視光で働く光触媒粒子などを水に加えた光触媒洗浄液を用いたPCBの分離回収方法が注目されている。
光触媒洗浄液は、光を照射させることで活性酸素を発生することから、光触媒洗浄液中に浸漬させた前記電気機器から、付着するPCBの結合を切断して剥離させることができ、
PCB汚染油(もしくはPCB含有油)が光触媒洗浄液の液面に浮上することで、容易にPCBだけを分離し回収することができる。
【0003】
そして、この光触媒洗浄液を用いてPCBを除去する発明として、「廃電気機器からPCB油を抜く抜油工程と、抜油した廃電気機器を一次洗浄槽に収容し、光触媒洗浄液により洗浄する一次洗浄工程と、一次洗浄を終了した廃電気機器を解体する解体工程と、解体した廃電気機器を洗浄する二次洗浄工程と、二次洗浄工程を終えた前記解体廃電気機器を乾燥する乾燥工程とを組み合わせたことを特徴とするPCB汚染廃電気機器の処理システム」に係る発明が開示されている(特許文献1)。
【0004】
当該発明によれば、前記のとおり、廃電気機器からPCBを抜く抜油工程だけで96%程度のPCB油を除去することができ(特許文献1の明細書段落番号「0005」)、さらに、抜油した廃電気機器を一次洗浄槽に収容し、光触媒洗浄液により洗浄(一次洗浄)を行うため、この時点でほとんどのPCB油を除去することができる。
また、当該発明は、一次洗浄した廃電気機器を解体し、解体した廃電気機器をさらに二次洗浄することで、「PCB油の残留がなくなり、洗浄したPCB汚染廃電気機器を通常の廃棄物と同様に取り扱うことができる効果がある(特許文献1の明細書段落番号「0006」)」。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記発明は、廃電気機器からPCBを抜く抜油工程だけで、「PCB汚染廃電気機器の上蓋を取り外し、交換ノズル式抜油法により前記廃電気機器内へ水を送り込み、これを汲出する操作を繰り返して前記廃電気機器内の残留PCB油及び内壁等に付着しているPCB油を順次洗浄する(特許文献1の明細書段落番号「0009」)」工程を経る必要があり、手間がかかるだけでなく、多大な作業時間を要する。
【0007】
そして、「廃電気機器を一次洗浄槽内へそのまま投入し、光触媒洗浄液により、2時間ほど一次洗浄を行う」(特許文献1の明細書段落番号「0011」)が、一次洗浄の時点で、少なくとも2時間以上の作業時間を費しており、多数の廃電気機器を一度に洗浄する場合には、とても利用できるものではない。
【0008】
光触媒洗浄液を使ったPCBの除去方法は、PCB汚染廃電気機器を浸漬させた光触媒洗浄液に光を照射することで、PCB汚染廃電気機器に付着したPCBを当該機器から剥離させて、PCBだけを分離して回収するものであるから、PCB汚染廃電気機器に付着したPCBを、当該機器から如何に早く剥離させられるかが、作業時間を短縮するポイントになる。
【0009】
しかしながら、洗浄対象物であるPCB汚染廃電気機器は、トランス、コンデンサ、計器用変成器、リアクトル、放電コイル、OFケーブルなど、様々な形状、構造、素材のものがあり、大きさも一様ではないため、作業効率の向上、作業時間の短縮のためには、機器に合わせた洗浄装置を使用することが、作業効率の向上と作業時間の短縮を図るうえで重要である。
【0010】
そこで、本発明は、光触媒洗浄液を用い、PCB汚染廃電気機器の形状や種類に合わせて最適な洗浄を行うことができる噴射装置によって、極めて短時間に効率的にPCBを除去できる洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るPCB汚染廃電気機器の洗浄装置は、
洗浄槽内にPCB汚染廃電気機器を収容し、
PCB汚染廃電気機器を光触媒洗浄液で洗浄するPCB汚染廃電気機器の洗浄装置であって、
洗浄槽と、
PCB汚染廃電気機器を被せる棒形噴射装置と、
棒形噴射装置底部に連結し、棒形噴射装置内に光触媒洗浄液を送水するアームと、
光触媒洗浄液を循環させるポンプと、
からなり、
前記棒形噴射装置は、
PCB汚染廃電気機器を固定する支軸と、PCB汚染廃電気機器を支える支持部材と、光触媒洗浄液を噴射する噴射ノズルと、光源と、がそれぞれ取り付けられており、
予め中空容器からなるPCB汚染廃電気機器の底部に形成した貫通孔を支軸に挿通させた状態で、棒形噴射装置の上から被せて固定されたPCB汚染廃電気機器を洗浄する際、
噴射ノズルから光触媒洗浄液を噴射することで、PCB汚染廃電気機器の内壁側を洗浄しながら、PCB汚染廃電気機器の内壁に向かって光が照射されて起こる光触媒の反応効率を高める
ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るPCB汚染廃電気機器の洗浄装置は、
洗浄槽内にPCB汚染廃電気機器を収容し、
PCB汚染廃電気機器を光触媒洗浄液で洗浄するPCB汚染廃電気機器の洗浄装置であって、
洗浄槽と、
PCB汚染廃電気機器を被せる棒形噴射装置と、
棒形噴射装置底部に連結し、棒形噴射装置内に光触媒洗浄液を送水するアームと、
光触媒洗浄液を循環させるポンプと、
からなり、
前記棒形噴射装置は、
PCB汚染廃電気機器を固定する支軸と、PCB汚染廃電気機器を支える支持部材と、棒形噴射装置の周方向に沿って屈曲した光触媒洗浄液を噴射する噴射ノズルと、光源と、がそれぞれ取り付けられており、
予め中空容器からなるPCB汚染廃電気機器の底部に形成した貫通孔を支軸に挿通させた状態で、棒形噴射装置の上から被せて固定されたPCB汚染廃電気機器を洗浄する際、
噴射ノズルから光触媒洗浄液を噴射することで、PCB汚染廃電気機器の内壁側を洗浄しながら、棒形噴射装置の周囲を旋回するように発生する水流によって、PCB汚染廃電気機器の内壁に向かって光が照射されて起こる光触媒の反応効率を高める
ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るPCB汚染廃電気機器の洗浄装置は、
洗浄槽内にPCB汚染廃電気機器を収容し、
PCB汚染廃電気機器を光触媒洗浄液で洗浄するPCB汚染廃電気機器の洗浄装置であって、
回転基体と、
回転基体を中心としたドーナツ型の洗浄槽と、
洗浄槽の内側に形成された分離槽と、
さらに分離槽の内側に形成された回収槽と、
洗浄槽内に設置される棒形噴射装置と、
回転基体から放射状に延び、洗浄槽内の棒形噴射装置に連結し、光触媒洗浄液を送水するアームと、
分離槽に貯留する光触媒洗浄液を回収して、回転基体から延びるアームを通じて洗浄槽に光触媒洗浄液を送水する循環手段と、
とからなり、
前記棒形噴射装置は、
PCB汚染廃電気機器を固定する支軸と、PCB汚染廃電気機器を支える支持部材と、光触媒洗浄液を噴射する噴射ノズルと、光源と、がそれぞれ取り付けられており、
予め中空容器からなるPCB汚染廃電気機器の底部に形成した貫通孔を支軸に挿通させた状態で、棒形噴射装置の上から被せて固定されたPCB汚染廃電気機器を洗浄する際、
集電装置を備えた回転基体がアーム及び棒形噴射装置と連結した状態で周方向に回転することで、棒形噴射装置が洗浄槽内を周回しながらPCB汚染廃電気機器を洗浄することができ、
洗浄層内を周回する棒形噴射装置の噴射ノズルから光触媒洗浄液を噴射することで、PCB汚染廃電気機器の内壁側を洗浄しながら、PCB汚染廃電気機器の内壁に向かって光が照射されて起こる光触媒の反応効率を高める
ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るPCB汚染廃電気機器の洗浄装置は、
洗浄槽内にPCB汚染廃電気機器を収容し、
PCB汚染廃電気機器を光触媒洗浄液で洗浄するPCB汚染廃電気機器の洗浄装置であって、
回転基体と、
回転基体を中心としたドーナツ型の洗浄槽と、
洗浄槽の内側に形成された分離槽と、
さらに分離槽の内側に形成された回収槽と、
洗浄槽内に設置される棒形噴射装置と、
回転基体から放射状に延び、洗浄槽内の棒形噴射装置に連結し、光触媒洗浄液を送水するアームと、
分離槽に貯留する光触媒洗浄液を回収して、回転基体から延びるアームを通じて洗浄槽に光触媒洗浄液を送水する循環手段と、
とからなり、
前記棒形噴射装置は、
PCB汚染廃電気機器を固定する支軸と、PCB汚染廃電気機器を支える支持部材と、棒形噴射装置の周方向に沿って屈曲した光触媒洗浄液を噴射する噴射ノズルと、光源と、がそれぞれ取り付けられており、
予め中空容器からなるPCB汚染廃電気機器の底部に形成した貫通孔を支軸に挿通させた状態で、棒形噴射装置の上から被せて固定されたPCB汚染廃電気機器を洗浄する際、
集電装置を備えた回転基体がアーム及び棒形噴射装置と連結した状態で周方向に回転することで、棒形噴射装置が洗浄槽内を周回しながらPCB汚染廃電気機器を洗浄することができ、
洗浄層内を周回する棒形噴射装置の噴射ノズルから光触媒洗浄液を噴射することで、PCB汚染廃電気機器の内壁側を洗浄しながら、棒形噴射装置の周囲を旋回するように発生する水流によって、PCB汚染廃電気機器の内壁に向かって光が照射されて起こる光触媒の反応効率を高める
ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係るPCB汚染廃電気機器の洗浄装置は、
前記の噴射ノズルから噴射される光触媒洗浄液は、
圧縮空気を混合させることで、PCB汚染廃電気機器をバブリング洗浄する
ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るPCB汚染廃電気機器の洗浄装置は、
前記の噴射ノズルの先端の噴射口は、
幅狭に形成されていることで、
噴射される光触媒洗浄液の勢いを増加させる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るPCB汚染廃電気機器の洗浄装置は、以下の効果を奏する。
1)特定のPCB汚染廃電気機器の形状や種類に最適な洗浄を行うことができ、効率良く、一度に多数のPCB汚染廃電気機器を洗浄できる。
2)極めて短時間に、多数のPCB汚染廃電気機器を洗浄できる。
3)簡便な構成で、PCBを簡単に分離して回収することができる。
4)ドーナツ型の洗浄槽を用いた洗浄装置によれば、PCB汚染廃電気機器を洗浄槽に浸漬させて光触媒洗浄液で洗浄した状態のまま、PCB汚染廃電気機器を洗浄槽内で移動させることができるため、作業者は、同じ場所で洗浄槽へのPCB汚染廃電気機器の投入、取り出しを行うことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る洗浄装置は、光触媒洗浄液を貯留した洗浄槽内にPCB汚染廃電気機器を浸漬させ、洗浄槽内で光触媒洗浄液を噴射して水流を発生させながら洗浄を行うものである。
PCB汚染廃電気機器は、使用部材自体にPCBが浸透していたり、複雑な構造の機器内部にまでPCBが付着するなどして汚染されている。
このようなPCB汚染廃電気機器の隅々まで、短時間に洗浄することは容易ではない。
そこで、本発明は、PCB汚染廃電気機器の形状、構造等に最適な方法で洗浄できる光触媒洗浄液の噴射装置を用い、極めて短時間に効率的にPCBを除去する。
具体的には、本発明に係る洗浄装置は、洗浄槽内に光触媒洗浄液の噴射装置を備え、この噴射装置から光触媒洗浄液を噴射させることで、洗浄効率を高める。
噴射装置は、棒形の形態を有しており、PCB汚染廃電気機器の形状、構造に合わせた最適な洗浄を可能にする特徴を有する。
【0020】
なお、本発明の洗浄装置は、光触媒洗浄液を用いて洗浄することから、PCB汚染廃電気機器からPCBを剥離させる(分離させる)ことを目的としており、必ずしも、PCBを分離して回収することを目的とするものではない。
したがって、本発明の洗浄装置は、必ずしも、PCBを回収する構成を備えるものではないが、以下に示す実施例の一部は、その構成に回収手段を含む。
以下、本発明に係る実施例を、図面をもって説明する。
【0021】
図1乃至3は、棒形噴射装置を備えたPCB汚染廃電気機器の洗浄装置であり、中空容器からなるPCB汚染廃電気機器の、特に内壁側を重点的に洗浄することができる装置である。
図1は、棒形噴射装置を備えた洗浄装置の概略を示す側面図、
図2は、棒形噴射装置の平面図、
図3は
図2の噴射ノズルが屈曲した実施例を示す平面図である。
【0022】
被洗浄物である中空容器からなるPCB汚染廃電気機器は、トランス、コンデンサ、計器用変成器、リアクトル、放電コイル、OFケーブルなどのPCBに汚染された廃電気機器であって、例えば、ケーシングなどのように、一面が開放された箱型(四角形、多角形)や筒型(丸形)などの、内部が中空の形状をなした機器であり、その外形はどのような形状でも良い。
本実施例の洗浄装置では、このPCB汚染廃電気機器1を、洗浄槽2内の棒形噴射装置3に被せて洗浄する。
【0023】
光触媒洗浄液4は、酸化チタンとアパタイトと鉄を複合化した可視光で働く光触媒粒子などを加えたもので、光の照射により油などの有機物を水や二酸化炭素に分解することができるものである。
【0024】
PCB汚染廃電気機器1を棒形噴射装置3に被せるには、天面が開放状態にある中空容器からなるPCB汚染廃電気機器1の開放面側を下にして、棒形噴射装置3の上から被せる。
棒形噴射装置3は、天面に支軸5が、上端部分に支持部材6が、それぞれ設けられている。
PCB汚染廃電気機器1は、予め開放面とは反対側の底面部分に、貫通孔を設けておく。
この貫通孔に、棒形噴射装置3の支軸5を挿通させて、PCB汚染廃電気機器1を棒形噴射装置3に被せる。
【0025】
棒形噴射装置3に被せられたPCB汚染廃電気機器1は、棒形噴射装置3に取り付けられた支持部材6によって支えられるが、光触媒洗浄液を噴射すると水流の勢いが強く不安定になるため、固定することが望ましい。
そこで、PCB汚染廃電気機器1の上から、固定部材7を被せて、支軸5をナットで締める。
これにより、PCB汚染廃電気機器1を棒形噴射装置3に固定できる。
なお、支持部材6及び固定部材7は、複数の突起した棒を有し、棒の先端が尖っているため、当接するPCB汚染廃電気機器1との接触面積が小さいことから、接触して洗浄できない範囲が極めて少なくて済む。
【0026】
棒形噴射装置3は、内部が中空になっており、側面には、光触媒洗浄液を噴射する噴射ノズル8と光源9が取り付けられている。
また、棒形噴射装置3の底部には、アーム10が連結されており、このアーム10を通じて、棒形噴射装置3内に光触媒洗浄液4が供給(送水)される。
棒形噴射装置3は、アーム10との連結部分において、取り付け、取り外しが可能になっており、例えば、新しい棒形噴射装置3に交換することができる。
また、棒形噴射装置3は、被洗浄物であるPCB汚染廃電気機器1の大きさに合わせて、異なるサイズのものを用意することで、洗浄するPCB汚染廃電気機器1に合わせて最適な棒形噴射装置3を取り付けることができる。
【0027】
アーム10を通じて供給され、棒形噴射装置3の噴射ノズル8から噴射される光触媒洗浄液4は、圧縮空気を混入させることで、棒形噴射装置3に被せてあるPCB汚染廃電気機器1の内壁に噴射されたのち、気泡の浮力によってPCBや埃、塵を液面に素早く浮かせることもできる。
このような気液混合の光触媒洗浄液4を噴射することで(バブリング洗浄)、単に光触媒洗浄液4を貯留した洗浄槽2内にPCB汚染廃電気機器1を浸漬させるだけの洗浄方法に比して、極めて高い洗浄効果を得られる。
【0028】
光触媒洗浄液4に圧縮空気を混合させると、PCB汚染廃電気機器1の底面、つまりPCB汚染廃電気機器1内の液面付近に空気が貯留する可能性があるが、その場合、PCB汚染廃電気機器1に空気を逃がすための貫通孔を予め形成しておくことで、この問題を解決できる。
【0029】
また、棒形噴射装置3の側面には、光源9が設けられている。
光源9は、紫外線などの光触媒洗浄液4中の光触媒粒子を反応させることができるものであれば、どのような光源9でも利用できる。
光源9が棒形噴射装置3の側面に設けられていることで、棒形噴射装置3の側面からPCB汚染廃電気機器1の内壁に光が照射され、効率良く、且つ、短時間で、PCB汚染廃電気機器1の内壁側のPCBを剥離させることができる。
特に、PCB汚染廃電気機器1の内壁側は、勢い良く光触媒洗浄液4が噴射されて、棒形噴射装置3とPCB汚染廃電気機器1の隙間を光触媒洗浄液4が流動するため、光触媒洗浄液中の光触媒の反応を促進し、PCB汚染廃電気機器1の内壁のPCBを効果的に、且つ、短時間で剥離することができる。
【0030】
比重の軽いPCBは、PCB汚染廃電気機器1から剥離すると液面に浮上することから、洗浄槽2内の光触媒洗浄液4をオーバーフローさせて、洗浄槽2外に光触媒洗浄液4が溢れ出るようにすることで、容易にPCBだけを分離し回収することができる。
PCBの回収は、例えば、洗浄槽2に隣接するように別の槽を設け、洗浄槽2からオーバーフローした光触媒洗浄液4だけが洗浄槽2に送水されるようにして、最終的にPCBを分離して回収することもできる。
また、上記した別の槽は、さらに複数の槽に仕切ることで分離精度を上げることができ、最終的には、PCBは遠心分離機などで分離して回収することができる。
【0031】
洗浄槽2から別の槽にPCBがオーバーフローする際、勢い良くオーバーフローしてしまうと、せっかく別の槽の液面で浮遊しているPCBが撹拌されてしまい、光触媒洗浄液4とPCBの分離がなされなくなってしまう。
そこで、洗浄槽2と別の槽の間に貫通孔を設け、この貫通孔を仕切り(オーバーフロー調整ゲート)によって塞いだり、開いたりすることで、洗浄槽2と別の槽に貯留する光触媒洗浄液4の量を調整し、洗浄槽2から勢い良くオーバーフローしないように、オーバーフローの流量を調整できるようにすることもできる。
【0032】
洗浄槽2の液面にはPCBが浮遊するが、このPCBを早く洗浄槽2から隣の槽にオーバーフローさせることで、早く確実にPCBを分離回収し、作業時間を短縮できる。
そこで、洗浄槽2の壁側の液面付近に、光触媒洗浄液4を噴射する噴射孔(PCB追い出しシャワー)を設け、PCBを洗浄槽2から隣の槽に早くオーバーフローさせるようにすることもできる。
洗浄槽2の底面には、洗浄によって溜まった沈殿物を排出するための管を設けることもできる。
PCBを分離して回収した光触媒洗浄液4は、ポンプで洗浄槽2へと送水することで、再度洗浄に使用できる。
【0033】
光触媒洗浄液4を供給(送水)する際、コンプレッサーで圧縮空気をアーム10内に注入し、気液混合の光触媒洗浄液4を噴射するようにすることもできる。
これにより、PCB汚染廃電気機器1をバブリング洗浄することができ、気泡の浮力によってPCBや埃、塵を液面に素早く浮かせ、より早くPCBを分離回収できる。
【0034】
棒形噴射装置3に取り付けられている噴射ノズル8は、先端の噴射口を、幅狭に形成することもできる。
これにより、噴射口から噴射される光触媒洗浄液の勢いを増加させることができ、洗浄力を高め、洗浄時間をより短縮できる。
【0035】
図3は、
図2の棒形噴射装置側面に取り付けられた噴射ノズルが、棒形噴射装置の周方向に沿って屈曲した形状をなした実施例を示す平面図である。
噴射ノズル8は、棒形噴射装置3の側面に、棒形噴射装置3の周方向に沿って屈曲した形状をなした状態で取り付けられている。
これにより、噴射ノズル8から噴射された光触媒洗浄液4は、PCB汚染廃電気機器1の内壁側を流動しながら洗浄し、棒形噴射装置3とPCB汚染廃電気機器1の隙間で棒形噴射装置3の周方向に水流を発生させるため、一部の光触媒洗浄液4だけが洗浄槽2内を漂うというようなことがなく、光触媒洗浄液4全体が洗浄槽2内を流動する結果、PCB汚染廃電気機器1内で光が照射されて起こる光触媒の反応効率を高めてくれる。
これにより、洗浄力も高まり、洗浄時間をさらに短縮できる。
【0036】
図4乃至6は、複数の棒形噴射装置を備えたPCB汚染廃電気機器の洗浄装置であり、中空容器からなるPCB汚染廃電気機器の、特に内壁側を重点的に洗浄するほか、複数の棒形噴射装置をドーナツ型の洗浄槽内で周方向に回転させることで作業効率を高めることができる装置である。
図4は、複数の棒形噴射装置を備えた洗浄装置全体の概略を示す側面図、
図5は、複数の棒形噴射装置を備えた洗浄装置の回転基体から棒形噴射装置までの構成の概略を示す平面図、
図6は、
図5の噴射ノズルが屈曲した実施例を示す平面図である。
【0037】
被洗浄物である中空容器からなるPCB汚染廃電気機器1及び光触媒洗浄液4は、前記した棒形噴射装置3を備える洗浄装置においてした説明と同じである。
【0038】
本実施例における洗浄装置は、回転基体12を中心とし、その周りに洗浄槽2、分離槽13、回収槽14の3つのドーナツ型の槽が架台15上に設けられている。
回転基体12は、スプロケット17によって回転させる。
回転基体12は、回転基体12が回転しても電気の供給を受けることができるように集電装置16が設けられており、回転基体12から放射状に延びるアーム10に設置されたコンセントボックスに配電することにで、光源9の電源とすることができる。
回転基体12からは放射状にアーム10が延びており、アーム10先端に棒形噴射装置3が連結されていることで、アーム10を通じて棒形噴射装置3内に光触媒洗浄液4を供給(送水)する。
棒形噴射装置3は、洗浄槽2内に設置されており、PCB汚染廃電気機器1を被せた状態で、PCB汚染廃電気機器1を洗浄する。
棒形噴射装置3の構成、洗浄方法等は、前記した棒形噴射装置3においてした説明と同じである。
【0039】
分離槽13には、貯留する光触媒洗浄液4を回収する循環パイプ18が配管されている。
分離槽13から回収した光触媒洗浄液4は、ポンプによって、循環パイプ18から回転基体12に送水され、回転基体12から延びるアーム10を通じて棒形噴射装置3の噴射ノズルから噴射され、洗浄槽2での洗浄に再利用される。
このようにして、光触媒洗浄液4を循環させる。
【0040】
循環パイプ18は、回転継手19によって、回転基体12と連結されている。
回転基体12は、回転基体12から延びるアーム10と、アーム10先端に連結する棒形噴射装置3と共に、洗浄層内を周方向に回転する。
この回転によって、棒形噴射装置が洗浄槽内を周回したままPCB汚染廃電気機器を洗浄し続けることができるほか、PCB汚染廃電気機器1を洗浄している間は、PCB汚染廃電気機器1を洗浄槽2内に浸漬させておき、棒形噴射装置3に被せたり、PCB汚染廃電気機器1を棒形噴射装置3から取り出したりする作業を、任意の位置で全て行うことができるため、作業者を複数配置させたり、作業者が装置の周りを移動することがなくなり、作業効率が向上する。
【0041】
回転基体12は、電気の配線と光触媒洗浄液4とが接触しないように、仕切り用のフランジ20が取り付けられている。
また、回転基体12の軸上には、空気の吹出孔を備えたエアー吹出装置21が設けられており、2本の循環パイプ18から回転基体12内に光触媒洗浄液4が流れ込んで合流するところに、エアー吹出装置21から圧縮空気が吹き出されるようになっている。
このエアー吹出装置21から圧縮空気を注入することによって、光触媒洗浄液4に微細な気泡が発生し、棒形噴射装置3の噴射ノズル8から噴出する光触媒洗浄液4をバブル化できる。
この微細気泡を含んだ光触媒洗浄液4によって、PCB汚染廃電気機器1をバブリング洗浄することで、気泡の浮力によってPCBや埃、塵を液面に素早く浮かせ、より早くPCB汚染廃電気機器1を洗浄でき、単に光触媒洗浄液4を貯留した洗浄槽2内にPCB汚染廃電気機器1を浸漬させるだけの洗浄方法に比べて、極めて高い洗浄効果を得られる。
【0042】
光触媒洗浄液4に圧縮空気を混合させると、PCB汚染廃電気機器1の底面、つまり液面付近のPCB汚染廃電気機器1内に空気が貯留する可能性があるが、その場合、PCB汚染廃電気機器1に、空気を逃がすための貫通孔を予め形成しておくことで、この問題を解決できる。
【0043】
洗浄槽2の液面に浮遊するPCBは、オーバーフローして分離槽13に流れ込む。
分離槽13の液面に浮遊するPCBは、オーバーフローして回収槽14に流れ込む。
回収槽14に流れ込んだPCBは、分離タンク22に流れ込み、さらに分離タンク22内の複数に分かれた槽でPCBを分離し、最終的には遠心分離機によってPCBを回収する。
【0044】
洗浄槽2から分離槽13にPCBがオーバーフローする際、勢い良くオーバーフローしてしまうと、せっかく分離槽13の液面で浮遊しているPCBが撹拌されてしまい、いつまで経っても、光触媒洗浄液4とPCBとを分離できなくなってしまう。
そこで、洗浄槽2と分離槽13の間に貫通孔を設け、この貫通孔を仕切り(オーバーフロー調整ゲート23)によって塞いだり、開いたりすることで、洗浄槽2から勢い良くオーバーフローしないように洗浄槽2と分離槽13に貯留する光触媒洗浄液4の量を調整し、オーバーフローの流量を調整できるようにしている。
【0045】
洗浄槽2の液面にはPCBが浮遊するが、このPCBを早く分離槽13にオーバーフローさせることで、早く確実にPCBを分離回収し、作業時間を短縮できる。
そこで、洗浄槽2の壁側の液面付近に、光触媒洗浄液4を噴射する噴射孔(PCB追い出しシャワー24)を設けている。
これによって、PCBを洗浄槽2から分離槽13に早くオーバーフローさせることができる。
噴射孔(PCB追い出しシャワー24)から噴射される光触媒洗浄液4は、分離タンク22内から回収した光触媒洗浄液4を使用する。
洗浄槽2の底面には、洗浄によって溜まった沈殿物を排出するための排出管25が設けられている。
【0046】
棒形噴射装置3に取り付けられている噴射ノズル8は、先端の噴射口を、幅狭に形成することもできる。
これにより、噴射口から噴射される光触媒洗浄液4の勢いを増加させることができ、洗浄力を高め、洗浄時間をより短縮できる。
【0047】
図6は、
図5の棒形噴射装置側面に取り付けられた噴射ノズルが、棒形噴射装置の周方向に沿って屈曲した形状をなした実施例を示す平面図である。
噴射ノズル8は、棒形噴射装置3の側面に、棒形噴射装置3の周方向に沿って屈曲した形状をなした状態で取り付けられている。
これにより、噴射ノズル8から噴射された光触媒洗浄液4は、PCB汚染廃電気機器1の内壁側を流動しながら洗浄し、棒形噴射装置3とPCB汚染廃電気機器1の隙間で棒形噴射装置3の周方向に水流を発生させるため、一部の光触媒洗浄液4だけが洗浄槽2内を漂うというようなことがなく、光触媒洗浄液4全体が洗浄槽2内を流動する結果、PCB汚染廃電気機器1内で光が照射されて起こる光触媒の反応効率を高めてくれる。
これにより、洗浄力も高まり、洗浄時間をさらに短縮できる。