特許第6288622号(P6288622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288622
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】除草用ラジコンボート
(51)【国際特許分類】
   A01B 39/18 20060101AFI20180226BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20180226BHJP
   B63H 7/02 20060101ALI20180226BHJP
   B63H 25/52 20060101ALI20180226BHJP
   B63B 35/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   A01B39/18 Z
   A01B69/00 B
   B63H7/02
   B63H25/52
   B63B35/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-47556(P2016-47556)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-158507(P2017-158507A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2016年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】510265944
【氏名又は名称】株式会社 和仁農園
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】和仁 松男
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5657826(JP,B2)
【文献】 特開2008−069551(JP,A)
【文献】 特開2011−205967(JP,A)
【文献】 特開昭52−033289(JP,A)
【文献】 特開昭53−087495(JP,A)
【文献】 特開平10−007090(JP,A)
【文献】 特開2009−240242(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0010159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 39/00−39/28
A01B 69/00−69/08
B63H 7/00−7/02
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信部を備えたボート本体と、該ボート本体に設けられた推進装置と、前記ボート本体の船尾側に設けられ垂下したチェーンを備えた除草器具と、前記ボート本体に設けられ旋回用プロペラを備えた旋回用プロペラ装置と、該旋回用プロペラ装置および前記推進装置を制御するためのコントローラーとを有した除草用ラジコンボートであって、
前記ボート本体は板状発泡性樹脂にて構成され、
前記旋回用プロペラ装置の前記旋回用プロペラは、前記ボート本体の船首側船上に設けられると共に一対の旋回用プロペラを有し、該一対の旋回用プロペラは、前記ボート本体を右に旋回させるための右旋回用プロペラと、前記ボート本体を左に旋回させるための左旋回用プロペラとを有し、さらに、前記右旋回用プロペラは、平面視で前記ボート本体の左側において前進方向に沿って配され、前記左旋回用プロペラは、平面視で前記ボート本体の右側において前進方向に沿って配されていることを特徴とする除草用ラジコンボート。
【請求項2】
受信部を備えたボート本体と、該ボート本体に設けられた推進装置と、前記ボート本体の船尾側に設けられ垂下したチェーンを備えた除草器具と、前記ボート本体に設けられ旋回用プロペラを備えた旋回用プロペラ装置と、該旋回用プロペラ装置および前記推進装置を制御するためのコントローラーとを有した除草用ラジコンボートであって、
前記ボート本体は板状発泡性樹脂にて構成され、
前記旋回用プロペラ装置の前記旋回用プロペラは、前記ボート本体の船首側船上に設けられると共に前記ボート本体の前進方向に沿って配された一つの正逆回転可能な旋回用プロペラから構成されていることを特徴とする除草用ラジコンボート。
【請求項3】
前記推進装置は前記ボート本体上の船尾側に設けられている請求項1または2に記載の除草用ラジコンボート。
【請求項4】
前記除草器具の前記チェーンは、分岐した線条部材を有している請求項1ないし3のいずれかに記載の除草用ラジコンボート。
【請求項5】
前記ボート本体は、薬液散布装置を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の除草用ラジコンボート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信による遠隔操作によって、特に水田の雑草を除草するために使用して好適な除草用ラジコンボートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば稲作を行う水田では、雑草の繁殖が稲の健全な生育に悪影響を与えることから除草作業が頻繁に行われている。この除草作業は主に手作業や除草効果のある草取り器具などを使用して人力で行われており、高齢化する農業従事者にとっては著しい負担となっている。
【0003】
そして、この問題を解決するものとして、水田の地面を引き摺るように垂下されたチェーンを含む除草器具を船首側に配して方向転換を容易にした水田除草用無人運転ボート(特許第5657826号公報)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5657826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この種の除草用ラジコンボートにおける方向転換性能および操作性をさらに向上させるために想起されたものであり、すなわち、本発明の課題は、舵を設ける必要もなく、より簡素な構造で、方向転換性能および操作性により優れ、高齢の農業従事者であっても容易に操縦することができると共に、除草作業における負担を著しく軽減できる除草用ラジコンボートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するものは、受信部を備えたボート本体と、該ボート本体に設けられた推進装置と、前記ボート本体の船尾側に設けられ垂下したチェーンを備えた除草器具と、前記ボート本体に設けられ旋回用プロペラを備えた旋回用プロペラ装置と、該旋回用プロペラ装置および前記推進装置を制御するためのコントローラーとを有し除草用ラジコンボートであって、前記ボート本体は板状発泡性樹脂にて構成され、前記旋回用プロペラ装置の前記旋回用プロペラは、前記ボート本体の船首側船上に設けられると共に一対の旋回用プロペラを有し、該一対の旋回用プロペラは、前記ボート本体を右に旋回させるための右旋回用プロペラと、前記ボート本体を左に旋回させるための左旋回用プロペラとを有し、さらに、前記右旋回用プロペラは、平面視で前記ボート本体の左側において前進方向に沿って配され、前記左旋回用プロペラは、平面視で前記ボート本体の右側において前進方向に沿って配されていることを特徴とする除草用ラジコンボートである(請求項1)。
また、上記課題を有するものは、受信部を備えたボート本体と、該ボート本体に設けられた推進装置と、前記ボート本体の船尾側に設けられ垂下したチェーンを備えた除草器具と、前記ボート本体に設けられ旋回用プロペラを備えた旋回用プロペラ装置と、該旋回用プロペラ装置および前記推進装置を制御するためのコントローラーとを有した除草用ラジコンボートであって、前記ボート本体は板状発泡性樹脂にて構成され、前記旋回用プロペラ装置の前記旋回用プロペラは、前記ボート本体の船首側船上に設けられると共に前記ボート本体の前進方向に沿って配された一つの正逆回転可能な旋回用プロペラから構成されていることを特徴とする除草用ラジコンボートである(請求項2)。
【0007】
前記推進装置は前記ボート本体上の船尾側に設けられていることが好ましい(請求項3)。前記除草器具の前記チェーンは、分岐した線条部材を有していることが好ましい(請求項4)。前記ボート本体は、薬液散布装置を有していてもよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した除草用ラジコンボートによれば、舵を設ける必要もなく、簡素な構造で、方向転換性能および操作性により優れ、高齢の農業従事者であっても容易に操縦することができると共に、除草作業における負担を著しく軽減できる。
請求項2に記載した除草用ラジコンボートによれば、舵を設ける必要もなく、簡素な構造で、方向転換性能および操作性により優れ、高齢の農業従事者であっても容易に操縦することができると共に、除草作業における負担を著しく軽減できる。また、より簡素な構造の除草用ラジコンボートが構成される。
請求項3に記載した除草用ラジコンボートによれば、舵を設ける必要もなく、簡素な構造で、方向転換性能および操作性により優れ、高齢の農業従事者であっても容易に操縦することができると共に、除草作業における負担を著しく軽減できる。
請求項4に記載した除草用ラジコンボートによれば、上記請求項1ないし3の効果に加え、より除草効果の高い除草用ラジコンボートが構成される。
請求項5に記載した除草用ラジコンボートによれば、上記請求項1ないし4の効果に加え、除草作業と薬剤散布作業の双方を同時に行える除草用ラジコンボートが構成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の除草用ラジコンボートの一実施例を背面側から視た斜視図である。
図2図1に示した除草用ラジコンボートの平面図である。
図3図1に示した除草用ラジコンボートのコントローラーの正面図である。
図4図1に示した除草用ラジコンボートの右旋回用プロペラを説明するための部分拡大左側面図である。
図5図1に示した除草用ラジコンボートの左旋回用プロペラを説明するための部分拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、ボート本体3に設けられ旋回用プロペラ7a,7bを備えた旋回用プロペラ装置8と、旋回用プロペラ装置8および推進装置9を制御するためのコントローラー10とを有していることで、舵を設ける必要もなく、より簡素な構造で、方向転換性能および操作性により優れ、高齢の農業従事者であっても容易に操縦することができると共に、除草作業における負担を著しく軽減できる除草用ラジコンボートを実現した。
【実施例1】
【0011】
本発明の除草用ラジコンボート1を図1ないし図5に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の除草用ラジコンボート1は、受信部2を備えたボート本体3と、ボート本体3に設けられた推進装置4と、ボート本体3の船尾3a側に設けられ、垂下したチェーン5を備えた除草器具6と、ボート本体3に設けられボート本体3の前進方向に沿って配された旋回用プロペラ7a,7bを備えた旋回用プロペラ装置8と、旋回用プロペラ装置8および推進装置4を制御するためのコントローラー10とを有している。以下、各構成について順次詳述する。
【0012】
除草用ラジコンボート1は、図3に示したコントローラー10によって無線にて遠隔操作することにより、使用者が水田等に入ることなく除草作業を行うことができ、高齢の農業従事者であっても容易に操縦することができ、除草作業における負担を著しく軽減させることができる除草具である。
【0013】
ボート本体3は、コントローラー10からの無線信号(指令)を受信する受信部2と、推進装置4と、除草器具6および旋回用プロペラ装置8を搭載または取り付けるためのものであり、この実施例のボート本体3は、ビート板状の板状発泡性樹脂にて形成されている。これにより、軽量でより簡素な除草用ラジコンボートが構成できる。
【0014】
受信部2内には、受信機(図示しない)と、受信機で受信したコントローラー10からの指令に基づいて推進装置4の動力装置11および旋回用プロペラ装置8の動力装置14a,14bを制御する制御部(図示しない)が設けられている。
【0015】
具体的には、この実施例の受信部2は、ボート本体3上に設けられ進行方向に沿って平行にかつ離間して配されたフレーム15a,15bの前方側において、フレーム15a,15bに直交する方向に架橋された第1横断フレーム16a,第2横断フレーム16b上に載置され固定されている。
【0016】
推進装置4は、ボート本体3を進行方向に沿って前進させるためのものであり、図1または図2に示すように、推進用プロペラ9と、推進用プロペラ9を回転させるための動力装置11と、透明性樹脂にて形成されたアーチ状のダクト12と、燃料タンク13とを有している。
【0017】
具体的には、この実施例の推進装置4は、ボート本体3上に設けられ進行方向に沿って平行にかつ離間して配されたフレーム15a,15bの後方側において、フレーム15a,15bに直交する方向に架橋された第3横断フレーム17a,第4横断フレーム17b上に載置され固定されている。
【0018】
除草器具6は、水田等において雑草を除草するためのものであり、チェーン5を地面に沿って引き摺ることで、雑草が引き抜かれたり、水と泥が掻き混ぜられて水が濁って光合成を阻害することで雑草を枯れさせたり、雑草の上に泥が堆積することで雑草の成長を阻害することで除草作用を生じさせるものである。
【0019】
チェーン5は、図1または2に示すように、フレーム15a,15bの最後部において、フレーム15a,15bに直交する方向に架橋された第5横断フレーム18に、複数本(この実施例では6本)一端部が固定され垂下されている。
【0020】
複数本のチェーン5の最後部には、分岐した線条部材19がそれぞれ固定されている。この実施例では四方に分岐した線条部材が各チェーン5に固定されており、これらによって、より高い除草効果を得ることができるよう構成されている。
【0021】
旋回用プロペラ装置8は、ボート本体3を左右に方向転換するためのものであり、本発明の除草用ラジコンボート1は、このような旋回用プロペラ装置8を有していることにより、舵を設ける必要もなく、より簡素な構造で、方向転換性能および操作性により優れた除草用ラジコンボートに構成されている。
【0022】
旋回用プロペラ装置8は、ボート本体3に設けられボート本体3の前進方向に沿って配された一対の旋回用プロペラ7a,7bと、旋回用プロペラ7a,7bを回転させるための動力装置14a,14bを有している。
【0023】
旋回用プロペラ7aは、図2または図4に示すように、平面視でボート本体3の左側に配されボート本体3を右側に向かって推進させるための右旋回用プロペラであり、右旋回用プロペラ7aの回転によって、図2中、h方向(左方向)に向かって風を生起させることにより、ボート本体3を右に旋回させるように作用する構成されている。
【0024】
他方、旋回用プロペラ7bは、図2または図5に示すように、平面視でボート本体3の右側に配されボート本体3を左側に向かって推進させるための左旋回用プロペラであり、左旋回用プロペラ7bの回転によって、図2中、j方向(右方向)に向かって風を生起させることにより、ボート本体3を左に旋回させるように作用する構成されている。
【0025】
また、これら右旋回用プロペラ7aおよび左旋回用プロペラ7bは、図2に示すように、船首3b側に設けられることで、船首3bが機敏に動作して方向転換性能がより高い除草用ラジコンボートに構成されている。
【0026】
コントローラー10は、無線による遠隔操作によって旋回用プロペラ装置8および推進装置9を制御するためのものであり、コントローラー10の各種操作による指令を内蔵された発信機(図示しない)を介して受信部2に伝達する機能を有する。そして、この実施例のコントローラー10は、図3に示すように、一時的に船体速度を上下させたり、右旋回用プロペラ7aを回転させて右に旋回させる左側スティック20と、左旋回用プロペラ7bを回転させて左に旋回させる右側スティック21とを有することで、水田等においてボート本体3を自在に移動させることができるよう構成されている。
【0027】
つぎに、本発明の除草用ラジコンボート1の使用方法について、コントローラー10による操縦方法と共に説明する。
除草用ラジコンボート1を使用する場合は、まず、ボート本体3を水田等に浮かべる。この状態で、コントローラー10の左側スティック20を図3中、上方に押し上げると、ボート本体3は徐々に加速しながら前進する。減速または停止させる場合は、左側スティック20を図3中、下方に押し下げると徐々に減速し、さらに下げ続けると停止するよう構成されている。さらに、右に旋回させる場合は、左側スティック20を図3中、右側に傾斜させると、右旋回用プロペラ7aが図2中h方向に送風するよう回転することで右に旋回する。他方、左に旋回させる場合は、右側スティック21を図3中、左側に傾斜させると、左旋回用プロペラ7bが図2中j方向に送風するよう回転することで、左に旋回するよう構成されている。
【0028】
このように、除草用ラジコンボート1は、極めて簡単な操作で水田等を自在に移動させることができ、高齢の農業従事者であっても容易に操縦することができると共に、方向転換も右旋回用プロペラ7aおよび左旋回用プロペラ7bの作用で行うことができるため、舵を設ける必要もなく、極めて簡素な構造で、方向転換性能および操作性により優れた除草用ラジコンボート1を作製できる。
【0029】
また、除草器具6が船尾3a側に取り付けられているため、方向転換に際して、除草器具が船首側に取り付けられたものに比して、除草器具が稲等の作物に接触して害することもなく、さらに、船首側が軽くなるため、右旋回用プロペラ7aおよび左旋回用プロペラ7bによる旋回も機敏で安定したものとなる。
【0030】
そして、このようなボート本体3の移動に伴い、除草器具6のチェーン5が地面に沿って引き摺られることによって、雑草が引き抜かれたり、水と泥が掻き混ぜられて水が濁って光合成を阻害することで雑草が枯れたり、雑草の上に泥が堆積することで雑草の成長が阻害されて除草作用が生じる。さらに、チェーン5の最後部には、四方に分岐した線条部材19が固定されていることで、より高い除草効果を得ることができる。
【0031】
なお、この実施例の除草用ラジコンボート1は、図2中、左右の対称的位置に一対の右旋回用プロペラ7aおよび左旋回用プロペラ7bを有するものであるが、これに限定されるものではなく、旋回用プロペラ装置が、正逆回転可能な一つの旋回用プロペラからなるものも本発明の範疇に包含される。これによって、より簡素な構造の除草用ラジコンボートを構成できる。また、ボート本体が薬液タンクおよび薬液散布部を備えた薬液散布装置を搭載し、コントローラーによって薬液散布可能に構成された除草用ラジコンボートも本発明の範疇に包含される。これにより、除草作業と薬剤散布作業の双方を同時に行える除草用ラジコンボートが構成される。
【符号の説明】
【0032】
1 除草用ラジコンボート
2 受信部
3 ボート本体
3a 船尾
3b 船首
4 推進装置
5 チェーン
6 除草器具
7a 右旋回用プロペラ
7b 左旋回用プロペラ
8 旋回用プロペラ装置
9 推進用プロペラ
10 コントローラー
11 推進装置の動力装置
12 ダクト
13 燃料タンク
14a,14b 旋回用プロペラ装置の動力装置
15a,15b フレーム
16a 第1横断フレーム
16b 第2横断フレーム
17a 第3横断フレーム
17b 第4横断フレーム
18 第5横断フレーム
19 線条部材
20 左側スティック
21 右側スティック
図1
図2
図3
図4
図5