(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態において制御対象となるクレーンの例を示す概略外形図である。同図において、船舶1は、船舶本体2と、船舶本体2に搭載されたデッキクレーンシステム3とを具備する。デッキクレーンシステム3は、4台のクレーン本体4を具備する。
【0014】
クレーン本体4の各々は、旋回塔41と、ジブ42と、ワイヤ43と、フック44とを具備する。
旋回塔41は、船舶本体2に対して固定されたベース部の上端に旋回可能に設けられている。旋回塔41は、旋回モータによって駆動されて旋回する。
ジブ42は、旋回塔41に傾き可変に設けられている。ジブ42は、旋回塔41の旋回に伴って旋回する。また、ジブ42は、俯仰モータによって駆動されて傾きを変化させる(俯仰する)。
【0015】
ワイヤ43は、その一端がジブ42の先端部から垂下しており、また、他端をウインチにて巻き取られている。ワイヤ43を巻き取っているウインチは、巻モータに駆動されて回転することでワイヤ43の巻き取り量を変化させる。かかる巻き取り量の変化により、ワイヤ43がジブ42の先端部から垂下している部分の長さが変化する。
フック44は、ワイヤ43のジブ42から垂下している一端に設けられている。フック44の位置は、旋回塔41の回転や、ジブ42の傾きの変化や、ワイヤ43の巻き取り量の変化によって変化する。フック44は、貨物を支持する状態で自らの位置が変化することにより、当該貨物を移動させる。
なお、デッキクレーンシステム3の具備するクレーンの数は、
図1に示す4つに限らず1つ以上であればよい。
【0016】
図2は、デッキクレーンシステム3の機能構成を示す概略ブロック図である。同図では、デッキクレーンシステム3が具備する4台のクレーン本体4のうちの1台について駆動や当該駆動の制御を行う機能構成が示されている。
同図において、デッキクレーンシステム3は、クレーン本体4と、クレーン制御装置100と、インバータ301〜303と、操作ハンドル401〜403とを具備する。クレーン本体4は、巻モータ201と、俯仰モータ202と、旋回モータ203とを具備する。クレーン制御装置100は、記憶部110と、制御部120とを具備する。制御部120は、駆動制御部121と、速度制限部122と、速度制限解除部123とを具備する。
また、インバータ301〜303は、それぞれ、電力系統520を介して電源510から電力の供給を受けている。
【0017】
巻モータ201は、上述したように、ワイヤ43(
図1)を巻き取るウインチを回転させることで、ワイヤ43の巻き取り量を変化させる。
俯仰モータ202は、上述したように、ジブ42の傾きを変化させる。
旋回モータ203は、上述したように、旋回塔41を回転させる。
なお、以下では、巻モータ201と俯仰モータ202と旋回モータ203とを総称して「各モータ」と表記する。
【0018】
インバータ301、302、303は、それぞれ、クレーン制御装置100の制御に従って電源510からの電力を巻モータ201、俯仰モータ202、旋回モータ203へ供給する。
操作ハンドル401〜403は、いずれもクレーン本体4に対する操作者の操作を受ける。具体的には、操作ハンドル401は、ワイヤ43の巻き取り量を変化させる操作を受ける。操作ハンドル402は、ジブ42の傾きを変化させる操作を受ける。操作ハンドル403は、旋回塔の向き(旋回量)を変化させる操作を受ける。
【0019】
クレーン制御装置100は、操作ハンドル401〜403の受ける操作に従ってインバータ301〜303を制御する。これにより、クレーン制御装置100は、巻モータ201や俯仰モータ202や旋回モータ203の回転速度を制御する。クレーン制御装置100は、例えばコンピュータを用いて構成される。
記憶部110は、クレーン制御装置100の具備する記憶デバイスを用いて構成され、各種データを記憶する。特に、記憶部110は、各モータに対する速度制限の有無を記憶する。例えば、記憶部110は、速度制限の有無を示す速度制限フラグを記憶する。速度制限フラグの値「0」は速度制限なしを示し、「1」は速度制限ありを示す。
【0020】
制御部120は、クレーン制御装置100の各部を制御して各種機能を実行する。制御部120は、例えば、クレーン制御装置100の具備するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、記憶部110からプログラムを読み出して実行することで実現される。
駆動制御部121は、各モータ(各電動機)に対する動作指令に基づいて、各モータへの電力供給を制御することで各モータの駆動を制御する。より具体的には、駆動制御部121は、操作ハンドル401、402、403の受ける操作に基づいて、それぞれ、インバータ301、302、303を制御する。これにより、駆動制御部121は、各モータの回転速度を制御する。特に、速度制限ありとなっている場合、駆動制御部121は、予め設定されている各モータの制限速度の範囲内でインバータ301〜303の制御を行う。
【0021】
速度制限部122は、各モータでの消費電力の総和、または、各モータから還元される回生電力の総和のいずれかが予め定められた閾値を超えた時点で、当該時点以降の各モータの速度を制限する。
速度制限部122が、各モータでの消費電力の総和に基づいて速度制限を行うことで、各モータでの消費電力の総和の最大値を比較的小さく抑えることができる。これにより、電源510の定格出力(電源510の出力電力の最大値)は比較的小さくてよい。この点で、電源510のコスト低減を図ることができる。
【0022】
また、速度制限部122が回生電力の総和に基づいて速度制限を行うことで、回生電力の余剰を低減させることができる。これにより、例えば余剰の回生電力が各モータに流入してコイルが焼き切れるなど、余剰の回生電力に起因する不具合発生の可能性を低減させることができる。
速度制限解除部123は、所定の条件の成立を検出すると速度制限部122による速度制限を解除する。特に速度制限解除部123は、所定の条件として、1つのクレーン(クレーン本体4)に設けられた複数の電動機(各モータ)の全てが停止状態となったことを検出する。
【0023】
次に、デッキクレーンシステム3の動作について説明する。
図3は、速度制限部122が速度制限を行う処理手順の例を示すフローチャートである。同図の処理において、速度制限部122は、各モータにおける消費電力の合計値を取得する(ステップS101)。例えば、速度制限部122は、インバータ301〜303から各モータの消費電力の情報を取得して合計する。
【0024】
次に、速度制限部122は、ステップS101で得られた消費電力の合計値が所定の消費電力閾値以上か否かを判定する(ステップS102)。消費電力閾値以上であると判定した場合(ステップS102:YES)、速度制限部122は、各モータに対する速度制限を行う(ステップS103)。例えば、速度制限部122は、記憶部110の記憶している速度制限フラグに「1」(速度制限あり)を書き込むことで速度制限を設定する。
【0025】
次に、速度制限部122は、各モータにおける回生電力の合計値を取得する(ステップS104)。例えば、速度制限部122は、インバータ301〜303から各モータにおける回生電力の情報を取得して合計する。
そして、速度制限部122は、ステップS104で得られた回生電力の合計値が所定の回生電力閾値以上か否かを判定する(ステップS105)。回生電力閾値以上であると判定した場合(ステップS105:YES)、速度制限部122は、各モータに対する速度制限を行う(ステップS106)。なお、消費電力に基づく速度制限と、回生電力に基づく速度制限とで、制限速度が異なっていてもよいし同じであってもよい。
ステップS106の後、ステップS101へ戻る。
【0026】
なお、ステップS102において、消費電力の合計値が消費電力閾値未満であると判定した場合(ステップS102:NO)、ステップS104へ進む。
また、ステップS105において、回生電力の合計値が回生電力閾値未満であると判定した場合(ステップS105:NO)、ステップS101へ戻る。
【0027】
図4は、速度制限解除部123が速度制限の解除を行う処理手順の例を示すフローチャートである。同図の処理において、速度制限解除部123は、速度制限の有無を示す情報を取得する(ステップS201)。例えば、速度制限解除部123は、記憶部110から速度制限フラグを読み出す。
次に、速度制限解除部123は、ステップS201で得られた情報に基づいて速度制限中か否かを判定する(ステップS202)。速度制限中ではないと判定した場合(ステップS202:NO)、ステップS201へ戻る。
【0028】
一方、ステップS202において速度制限中であると判定した場合(ステップS202:YES)、速度制限解除部123は、各モータの状態を示す情報を取得する(ステップS203)。例えば、速度制限解除部123は、操作ハンドル401〜403の各々が受けた操作の情報を、各モータの状態を示す情報として取得する。
そして、速度制限解除部123は、ステップS203で得られた情報に基づいて、各モータが全て停止しているか否かを判定する(ステップS204)。停止していないモータがあると判定した場合(ステップS204:NO)、ステップS201へ戻る。
【0029】
一方、各モータが全て停止していると判定した場合(ステップS204:YES)、速度制限解除部123は、速度制限部122の設定した速度制限を解除する(ステップS205)。例えば、速度制限解除部123は、記憶部110の記憶している速度制限フラグに「0」(速度制限なし)を書き込むことで速度制限を解除する。
ステップS205の後、ステップS201へ戻る。
【0030】
以上のように、速度制限部122は、各モータの消費電力の総和、または、各モータから還元される回生電力の総和のいずれかが予め定められた閾値を超えた時点で、当該時点以降の各モータのうち少なくとも一つのモータの速度を制限する。そして、速度制限解除部123は、所定の条件の成立を検出すると速度制限部122による速度制限を解除する。
【0031】
速度制限部122が、各モータでの消費電力の総和に基づいて速度制限を行うことで、各モータでの消費電力の総和の最大値を比較的小さく抑えることができる。これにより、電源510の定格出力(電源510の出力電力の最大値)は比較的小さくてよい。この点で、デッキクレーンシステム3のコスト低減を図ることができる。
また、速度制限部122が回生電力の総和に基づいて速度制限を行うことで、回生電力の余剰を低減させることができる。これにより、例えば余剰の回生電力が各モータに流入してコイルが焼き切れるなど、余剰の回生電力に起因する不具合発生の可能性を低減させることができる。
また、速度制限解除部123が、速度制限を解除することで、制限が必要な場合はモータの速度を制限して消費電力や回生電力のピークを小さくすることができ、制限が不要な場合には、速度制限を解除してクレーンの性能を発揮させることができる。このように、デッキクレーンシステム3では、消費電力や回生電力のピークを小さくでき、かつ、クレーンの性能を発揮できる。
【0032】
また、速度制限解除部123は、速度制限を解除する所定の条件として、1つのクレーンに設けられた複数のモータの全てが停止状態となったことを検出する。
ここで、クレーンのモータに速度制限がかかった場合、速度制限が解除される際に問題が生じる可能性がある。例えば、デッキクレーンには、巻き・俯仰・旋回の3動作がある。複数動作を同時に行って速度制限がかかった後、これら複数動作のうち1つが行われなくなって消費電力または回生電力が規定値以下になり速度制限が解除されることが考えられる。すると、残りの動作にて操作者の意図しない速度上昇が生じ、例えば安全上の問題またはコントロール精度の低下など、何らかの問題が生じる可能性がある。
【0033】
これに対して、デッキクレーンシステム3では、速度制限を解除する際に1つのクレーンに設けられた複数のモータの全てが停止状態となっているので、操作者の意図しない速度上昇が生じない。これにより、デッキクレーンシステム3では、安全上の問題またはコントロール精度の低下などの問題発生を回避し得る。
なお、速度制限部122が、巻モータ201、俯仰モータ202、旋回モータ203のうち1つまたは2つのみに速度制限を設定するようにしてもよい。これによっても、消費電力や回生電力のピークを小さくすることができる。
【0034】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態におけるデッキクレーンシステムの機能構成を示す概略ブロック図である。なお、本実施形態で制御対象となるクレーンについては、
図1を参照して説明したのと同様であり、図示および説明を省略する。
図5において、デッキクレーンシステム6は、クレーン本体4−1〜4−4と、クレーン制御装置160と、インバータ301−1〜303−1、・・・、301−4〜303−4、と、操作ハンドル401−1〜403−1、・・・、401−4〜403−4とを具備する。クレーン本体4−i(iは、1<i4の正整数)は、巻モータ201−iと、俯仰モータ202−iと、旋回モータ203−iとを具備する。クレーン制御装置160は、記憶部170と、制御部180とを具備する。制御部180は、駆動制御部181と、速度制限部182と、速度制限解除部183とを具備する。
また、インバータ301−1〜303−1、・・・、301−4〜303−4は、それぞれ、電力系統520を介して電源510から電力の供給を受けている。
【0035】
クレーン本体4−1〜4−4、巻モータ201−1〜201−4、俯仰モータ202−1〜202−4、旋回モータ203−1〜203−4の機能は、それぞれ、
図1のクレーン本体4、巻モータ201、俯仰モータ202、旋回モータ203と同様であり、説明を省略する。
なお、以下では、クレーン本体4−1〜4−4、巻モータ201−1〜201−4、俯仰モータ202−1〜202−4、旋回モータ203−1〜203−4を総称して、それぞれ、クレーン本体4、巻モータ201、俯仰モータ202、旋回モータ203と表記する。
【0036】
インバータ301−1〜303−1、・・・、301−4〜303−4の機能は、
図1のインバータ301〜303の機能と同様であり、説明を省略する。
なお、以下では、インバータ301−1〜301−4、インバータ302−1〜302−4、インバータ303−1〜303−4を総称して、それぞれ、インバータ301、インバータ302、インバータ303と表記する。
【0037】
操作ハンドル401−1〜403−1、・・・、401−4〜403−4の機能は、
図1の操作ハンドル401〜403の機能と同様であり、説明を省略する。
なお、以下では、操作ハンドル401−1〜401−4、操作ハンドル402−1〜402−4、操作ハンドル403−1〜403−4を総称して、それぞれ、操作ハンドル401、操作ハンドル402、操作ハンドル403と表記する。
【0038】
クレーン制御装置160は、クレーン本体4毎の操作ハンドル401〜403の受ける操作に従って、対応するインバータ301〜303を制御する。これにより、クレーン制御装置160は、対応する巻モータ201や俯仰モータ202や旋回モータ203の回転速度を制御する。クレーン制御装置160は、例えばコンピュータを用いて構成される。
記憶部170は、クレーン制御装置160の具備する記憶デバイスを用いて構成され、各種データを記憶する。特に、記憶部170は、クレーン本体4毎に、各モータに対する速度制限の有無を記憶する。例えば、記憶部170は、速度制限の有無を示す速度制限フラグを、クレーン本体4−1〜4−4の各々について記憶する。速度制限フラグの値「0」は速度制限なしを示し、「1」は速度制限ありを示す。
【0039】
制御部180は、クレーン制御装置160の各部を制御して各種機能を実行する。制御部180は、例えば、クレーン制御装置の具備するCPUが、記憶部170からプログラムを読み出して実行することで実現される。
駆動制御部181は、クレーン本体4毎に、各モータ(各電動機)に対する動作指令に基づいて、各モータへの電力供給を制御することで各モータの駆動を制御する。より具体的には、駆動制御部181は、操作ハンドル401、402、403の受ける操作に基づいて、それぞれ、対応するインバータ301、302、303を制御する。これにより、駆動制御部181は、各モータの回転速度を制御する。特に、速度制限ありとなっている場合、駆動制御部181は、予め設定されている各モータの制限速度の範囲内でインバータ301〜303の制御を行う。
【0040】
速度制限部182は、巻モータ201−1〜201−4、俯仰モータ202−1〜202−4、旋回モータ203−1〜203−4の消費電力の総和、または、これらのモータから還元される回生電力の総和のいずれかが予め定められた閾値を超えた時点で、当該時点以降の各モータの速度を制限する。
速度制限部182が、各モータでの消費電力の総和に基づいて速度制限を行うことで、各モータでの消費電力の総和の最大値を比較的小さく抑えることができる。これにより、電源510の定格出力は比較的小さくてよい。この点で、電源510のコスト低減を図ることができる。
【0041】
また、速度制限部182が回生電力の総和に基づいて速度制限を行うことで、回生電力の余剰を低減させることができる。これにより、例えば余剰の回生電力が各モータに流入してコイルが焼き切れるなど、余剰の回生電力に起因する不具合発生の可能性を低減させることができる。
速度制限解除部183は、所定の条件の成立を検出すると速度制限部182による速度制限を、クレーン本体4毎に解除する。特に速度制限解除部183は、所定の条件として、1つのクレーン(クレーン本体4)に設けられた複数の電動機(各モータ)の全てが停止状態となったことを検出する。
【0042】
次に、デッキクレーンシステム6の動作について説明する。
図6は、速度制限部182が速度制限を行う処理手順の例を示すフローチャートである。同図の処理において、速度制限部182は、クレーン本体4−1〜4−4全ての各モータにおける消費電力の合計値を取得する(ステップS301)。例えば、速度制限部182は、インバータ301−1〜303−1、・・・、301−4〜303−4から各モータの消費電力の情報を取得して合計する。
【0043】
次に、速度制限部182は、ステップS301で得られた消費電力の合計値が所定の消費電力閾値以上か否かを判定する(ステップS302)。なお、第1の実施形態における消費電力閾値が1台のクレーン本体4における消費電力の合計値に対する閾値であったのに対し、本実施形態における消費電力閾値は4台のクレーン本体4における消費電力の合計値に対する閾値である。
例えば、第1の実施形態における消費電力閾値は、電源510の供給する電力のうち4台のクレーン本体4に割り当てられる電力を4(クレーン台数)で除算した値に設定される。これに対して、本実施形態における消費電力閾値は、電源510の供給する電力のうち4台のクレーン本体4に割り当てられる電力の値に設定される。
【0044】
ステップS302において、消費電力の合計値が消費電力閾値以上であると判定した場合(ステップS302:YES)、速度制限部182は、クレーン本体4−1〜4−4の全てについて各モータに対する速度制限を行う(ステップS303)。例えば、速度制限部182は、記憶部170がクレーン本体4毎に記憶している速度制限フラグに「1」(速度制限あり)を書き込むことで、4つのクレーン本体4全てに対して速度制限を設定する。
【0045】
次に、速度制限部182は、クレーン本体4−1〜4−4全ての各モータにおける回生電力の合計値を取得する(ステップS304)。例えば、速度制限部182は、インバータ301−1〜303−1、・・・、301−4〜303−4から各モータにおける回生電力の情報を取得して合計する。
そして、速度制限部182は、ステップS304で得られた回生電力の合計値が所定の回生電力閾値以上か否かを判定する(ステップS305)。回生電力閾値以上であると判定した場合(ステップS305:YES)、速度制限部182は、各モータに対する速度制限を行う(ステップS306)。
【0046】
なお、第1の実施形態における回生電力閾値が1台のクレーン本体4における回生電力の合計値に対する閾値であったのに対し、本実施形態における回生電力閾値は4台のクレーン本体4における回生電力の合計値に対する閾値である。
なお、消費電力に基づく速度制限と、回生電力に基づく速度制限とで、制限速度が異なっていてもよいし同じであってもよい。
ステップS306の後、ステップS301へ戻る。
【0047】
なお、ステップS302において、消費電力の合計値が消費電力閾値未満であると判定した場合(ステップS302:NO)、ステップS304へ進む。
また、ステップS305において、回生電力の合計値が回生電力閾値未満であると判定した場合(ステップS305:NO)、ステップS301へ戻る。
【0048】
図7は、速度制限解除部183が速度制限の解除を行う処理手順の例を示すフローチャートである。同図の処理において、速度制限解除部183は、クレーン本体4毎に処理を行うループL11を開始する(ステップS401)。以下、ループL11で処理対象となっているクレーン本体4を、「対象クレーン」と称する。
【0049】
ループL11の処理において、速度制限解除部183は、対象クレーンについて速度制限の有無を示す情報を取得する(ステップS402)。例えば、速度制限解除部183は、対象クレーンの速度制限フラグを記憶部170から読み出す。
次に、速度制限解除部183は、ステップS402で得られた情報に基づいて、対象クレーンが速度制限中か否かを判定する(ステップS403)。
【0050】
速度制限中であると判定した場合(ステップS403:YES)、速度制限解除部183は、対象クレーンの各モータの状態を示す情報を取得する(ステップS404)。例えば、速度制限解除部183は、対象クレーン4−iに対応する操作ハンドル401−i〜403−iの各々が受けた操作の情報を、対象クレーンの各モータの状態を示す情報として取得する。
【0051】
そして、速度制限解除部183は、ステップS404で得られた情報に基づいて、対象クレーンの各モータが全て停止しているか否かを判定する(ステップS405)。
【0052】
対象クレーンの各モータが全て停止していると判定した場合(ステップS405:YES)、速度制限解除部183は、速度制限部182の設定した速度制限を、対象クレーンについて解除する(ステップS406)。例えば、速度制限解除部183は、記憶部170の記憶している速度制限フラグのうち対象クレーンの速度制限フラグに「0」(速度制限なし)を書き込むことで速度制限を解除する。
【0053】
その後、速度制限解除部183は、ループL11の終端処理を行う(ステップS407)。具体的には、速度制限解除部183は、クレーン本体4−1〜4−4の全てに対してループL11の処理を完了したか否かを判定する。未処理のクレーン本体があると判定した場合、ステップS401へ戻り、未処理のループに対するループL11の処理を行う。一方、クレーン本体4−1〜4−4の全てに対してループL11の処理を完了したと判定した場合、ループL11を終了する。
その後、ステップS401へ戻る。
【0054】
なお、ステップS403において速度制限中ではないと判定した場合(ステップS403:NO)、ステップS407へ進む。
また、ステップS405において停止していないモータがあると判定した場合も(ステップS405:NO)、ステップS407へ進む。
【0055】
以上のように、速度制限部182は、複数のクレーン(クレーン本体4)に設けられた複数の電動機(各モータ)での消費電力の総和、または、当該複数の電動機から還元される回生電力の総和のいずれかが予め定められた閾値を超えた時点で、当該時点以降の少なくとも一つの電動機の速度を制限する。また、速度制限解除部183は、1つのクレーンに設けられた複数の電動機の全てが停止状態となったことを検出すると、当該クレーンに対する速度制限を解除する。
【0056】
速度制限部182が、複数のクレーンの各モータの消費電力の総和または回生電力の総和に基づいて速度制限の要否を判定することで、クレーン毎に判定を行う場合よりも速度制限が生じにくくすることができる。この点において、クレーン制御装置160によれば、消費電力や回生電力のピークを小さくでき、かつ、クレーンの性能を発揮できる。
【0057】
また、速度制限解除部183が、1つのクレーンに設けられた複数の電動機の全てが停止状態となったことを検出すると、当該クレーンに対する速度制限を解除する。これにより、第1の実施形態の場合と同様、デッキクレーンシステム6では、安全上の問題またはコントロール精度の低下などの問題発生を回避し得る。
【0058】
なお、クレーン制御装置100または160の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。