特許第6288690号(P6288690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6288690歯科用の複模型を作製するためのフラスコ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6288690
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】歯科用の複模型を作製するためのフラスコ
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/20 20060101AFI20180226BHJP
   A61C 13/16 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   A61C13/20 Z
   A61C13/16
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-184194(P2017-184194)
(22)【出願日】2017年9月25日
【審査請求日】2017年10月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517337633
【氏名又は名称】株式会社ULTI−Medical
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】大山 吉雄
(72)【発明者】
【氏名】大山 定和
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−092513(JP,U)
【文献】 特開2015−213742(JP,A)
【文献】 特開平07−163592(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第03541719(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/20
A61C 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用補綴物の本模型を載置する面が平坦である底材と、
前記底材に着脱自在に取り付けできる筒状の側材とを備え、
前記側材は、上面と下面に開口を有し、熱可塑性樹脂製であり、
前記側材には、当該側材の他の部分よりも強度が弱い脆弱部が当該側材の上下方向に連続して厚み方向に設けられていることを特徴とする、歯科用の複模型を作製するためのフラスコ。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、あるいはこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用の複模型を作製するためのフラスコ。
【請求項3】
前記側材は、前記上面から前記下面にかけて延びる法線に対して2度〜4度傾斜する抜き勾配を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯科用の複模型を作製するためのフラスコ。
【請求項4】
前記側材は、透明又は半透明であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の歯科用の複模型を作製するためのフラスコ。
【請求項5】
前記底材は、歯科用補綴物の本模型を固定するための磁性体又は磁石を備えていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の歯科用の複模型を作製するためのフラスコ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科用の複模型を作製するためのフラスコに係り、より詳しくは、フラスコに流動シリコーン等の複模型用印象材を注入した後に、固化されたモールドを取り出しやすい歯科用の複模型を作製するためのフラスコに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属又は樹脂製の義歯床又は部分義歯床の作製は、以下の手順により行われている。
まず、患者の口腔内(顎)形状の本模型(石膏模型)を取る。
次に、その本模型を、複模型を作製するためのフラスコに配置し、フラスコに流動性を有する流動シリコーン(以下、流動シリコーン)等の複模型用印象材を注入して固化し、シリコーン製等のモールド(型)を作製する。
次いで、そのモールドの凹所に、例えばリン酸塩等の成分を調整した膨張鋳型材を充填して固化し、元の本模型に基づく、作業用の複模型(複製模型)を作製する。
そして、拡大された複模型上で別のモールドを組み合わせて両者の間の空洞に高温溶融状態の金属又は樹脂を流し込んで、金属又は樹脂製の義歯床又は部分義歯床が作製される。
【0003】
例えば、特許文献1には、平坦な内部底面を有する底板部と、前記内部底面を囲む側壁部とを有し、前記内部底面と前記側壁部の内面によって形成され複数の球を収容可能な空間を有する構造体と、前記内部底面の周囲の複数の位置の垂直方向にある対応する複数の位置に設けられ、支持する板から受ける重量によって垂直方向に弾性的に移動可能な形態で前記板を水平状態で支持可能な複数の支持部材とを備える、歯科用の複製模型を作製するための装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5863678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の複模型を作製するためのフラスコは、使い捨てでなく、繰り返して使用することを目的として製造されている。そのため、フラスコに流動シリコーン等の複模型用印象材を注入して固化し、モールドを作製した後に、固化した印象材からフラスコを取り外す際に強い力が必要であった。それゆえに、固化した印象材からフラスコを取り外す際に、固化した印象材を壊してしまう虞もあった。
【0006】
さらに、従来の複模型を作製するためのフラスコは繰り返して使用するため、使用する度に掃除をする等のメンテナンスが必要であり、作業が煩雑になるという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、フラスコに流動シリコーン等の複模型用印象材を注入した後に、固化されたモールドを取り出しやすい使い捨ての歯科用の複模型を作製するためのフラスコを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、歯科用補綴物の本模型を載置する面が平坦である底材と、
前記底材に着脱自在に取り付けできる筒状の側材とを備え、
前記側材は、上面と下面に開口を有し、熱可塑性樹脂製であり、
前記側材には、当該側材の他の部分よりも強度が弱い脆弱部が当該側材の上下方向に連続して厚み方向に設けられていることを特徴とする、歯科用の複模型を作製するためのフラスコに関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、あるいはこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用の複模型を作製するためのフラスコに関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記側材は、前記上面から前記下面にかけて延びる法線に対して2度〜4度傾斜する抜き勾配を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯科用の複模型を作製するためのフラスコに関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記側材は、透明又は半透明であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の歯科用の複模型を作製するためのフラスコに関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記底材は、歯科用補綴物の本模型を固定するための磁性体又は磁石を備えていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の歯科用の複模型を作製するためのフラスコに関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、歯科用補綴物の本模型を載置する面が平坦である底材と、前記底材に着脱自在に取り付けできる筒状の側材とを備え、前記側材は、上面と下面に開口を有し、熱可塑性樹脂製であり、前記側材には、当該側材の他の部分よりも強度が弱い脆弱部が当該側材の上下方向に連続して厚み方向に設けられているため、本発明に係るフラスコに流動シリコーン等の複模型用印象材を注入して固化し、モールドを作製した後に、手や工具等により、脆弱部に力を加えることで脆弱部が割れ、より容易にフラスコの側材をモールドから取り外すことができる。


【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記熱可塑性樹脂はポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、あるいはこれらの組み合わせであるため、より容易に本発明に係るフラスコの側材の脆弱部を割ることができ、且つ割った後の側材の破片が散らばらずに取り外すことができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、前記側材は、前記上面から前記下面にかけて延びる法線に対して2度〜4度傾斜する抜き勾配を有しているため、側材を重ね合わせることができる。これにより、本発明に係るフラスコに本模型を載置した際に、本模型のサイズが大きくフラスコの側材の高さが足りない場合に、フラスコの側材を上方向に重ね合わせることで、フラスコの側材の高さを増加させることができ、従来では対応出来ない大きさを有する本模型においても、モールドをより容易に作製することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、前記側材は、透明又は半透明であるため、本発明に係るフラスコに本模型を配置し、フラスコに流動シリコーン等の複模型用印象材を注入する際に、フラスコ内に配置された本模型が動いていないか、又は気泡が入っていないか等の状態を確認することでき、本模型の位置を修正する又は気泡を取り除く等の操作ができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、前記底材は、歯科用補綴物の本模型を固定するための磁性体又は磁石を備えているため、本発明に係るフラスコに載置する本模型に磁性体又は磁石が設けられている、又は磁性体又は磁石を設けることにより、本模型をより容易且つ強固にフラスコの底材上に保持することができる。これにより、本発明に係るフラスコに流動シリコーン等の複模型用印象材を注入して固化し、モールドを作製する際に本模型の移動やずれによって生じる複模型の精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの、底材及び側材の概略斜視図である。
図2】本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの、底材と側材を取り付けた様子を示す概略斜視図である。
図3】本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの概略断面図であって、底材に本模型を載置し、底材と側材を取り付け、流動シリコーン等の複模型用印象材を注入した様子を示す概略断面図である。
図4】本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの概略断面図であって、底材に本模型を載置し、底材と側材を取り付け、流動シリコーン等の複模型用印象材を注入して固化し、その後側材を割ってモールドから取り外した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの、底材及び側材の概略斜視図である。図2は、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの、底材と側材を取り付けた様子を示す概略斜視図である。図3は、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの概略断面図であって、底材に本模型を載置し、底材と側材を取り付け、流動シリコーン等の複模型用印象材を注入した様子を示す概略断面図である。図4は、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコの概略断面図であって、底材に本模型を載置し、底材と側材を取り付け、流動シリコーン等の複模型用印象材を注入して固化し、その後側材を割ってモールドから取り外した状態を示す概略断面図である。
【0020】
図1図4に示す如く、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコ(1)は、歯科用補綴物の本模型(4)を載置する面が平坦である底材(2)と、底材(2)に着脱自在に取り付けできる筒状の側材(3)とを備えている。
【0021】
底材(2)は、テーブル等の作業台に底材(2)を載置した時に、歯科用補綴物の本模型(4)を載置する面が平坦となる形状を備えている。
尚、底材(2)は、テーブル等の作業台に底材(2)を載置した時に、歯科用補綴物の本模型(4)を載置する面が平坦となる形状を備えており、側材(3)を着脱自在に取り付けることができる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
【0022】
底材(2)の材質は、耐衝撃性や耐熱性の観点から、ポリカーボネート(PC)であることが望ましいが、これに限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂、金属、ガラス、木材、あるいはこれらの組み合わせ等、いかなるものでも用いることができる。
【0023】
底材(2)は、歯科用補綴物の本模型(4)を固定するための磁性体又は磁石(21)を備えていても良い(図3参照)。磁性体又は磁石(21)を備えていることによって、底材(2)に載置する歯科用補綴物の本模型(4)が磁性体又は磁石(図示せず)を備えている場合、電磁気力により、歯科用補綴物の本模型(4)と底材(2)の磁性体又は磁石(21)に引力が働き引き合うため、歯科用補綴物の本模型(4)をより容易且つ強固に底材(2)に固定することができる。これにより、複模型作成中において、歯科用補綴物の本模型(4)がずれてしまい、モールド(6)の形状が崩れてしまうことを防止することができる。
尚、磁性体又は磁石(21)は、例えば、底材(2)に埋め込まれ、底材(2)の歯科用補綴物の本模型(4)を載置する面には露出していない位置に配置されている。
尚、磁性体又は磁石(21)の位置はこれに限定されず、歯科用補綴物の本模型(4)を、底材(2)の歯科用補綴物の本模型(4)を載置する面に固定することができ、歯科用補綴物の本模型(4)を、印象材を流し込みモールド(6)を作成することができる位置に固定することができる位置であれば、底材のいかなる位置に設けられていても良い。
磁性体又は磁石(21)は、底材(2)と一体的に設けられていても良く、又は接着剤等により接着されることにより別体として設けられていても良い。
磁性体又は磁石(21)の材質は特に限定されず、フェライト、ネオジウム、サマリウム、コバルト、アルニコ、あるいはこれらの組み合わせ等、磁性体又は磁石として通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0024】
図1図2に示す如く、側材(3)は、底材(2)に着脱自在に取り付けできる筒状を呈しており、上面(31)と下面(32)に開口(33)を有し、熱可塑性樹脂製である。
側材(3)は、底材(2)に着脱自在に取り付けできる筒状であり、底材(2)に載置した本模型を取り囲み、印象材(5)のモールド(6)を形成できる大きさを有し、上面(31)と下面(32)に開口(33)を有していれば良く、例えば上面視略円形状、楕円形状、上面視略三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等、いかなる形状であっても良い。
また、例えば、上面視略円形状であり、下面視略三角形状である等、複数の形状を組み合わせたものであっても良い。
尚、側材(3)の上面(31)側の開口(33)は、側材(3)の上面(31)の全面に亘って設けられていてもよく、例えば、上面(31)の半分だけに設けられていてもよく、上面(31)の開口(33)から、印象材(5)をフラスコ内に注入できる大きさであれば良い。
【0025】
側材(3)は、脆弱部(34)を備えていることが望ましい。脆弱部(34)は、側材(3)の他の部分よりも強度が弱い脆弱部が厚み方向に断続的又は連続的に設けられている。
脆弱部(34)は、直線状の切り込み、U字又はV字の切り込みであるノッチ構造、ハーフカット、ミシン目、薄肉部、側材(3)の分子の方向を揃えて分子の配向性により脆弱性を付与する、あるいはこれらの組み合わせ等、脆弱部(34)が側材(3)の他の部分よりも強度が弱く、例えば、脆弱部(34)の近くを指で押すことで、せん断変形により容易に割ることができる構造等、手や工具等により割り易くなる構造であればいかなる構造であっても良い。
脆弱部(34)の形状は特に限定されず、例えば、図1に示す如く、側材(3)の上面(31)及び下面(32)に対して垂直方向に設けられていても良く、平行に設けられていても良く、斜め方向に設けられていても良く、これらを組み合わせた形状であっても良い。また、脆弱部(34)の数は特に限定されず、例えば、脆弱部(34)は、側材(3)の上面(31)及び下面(32)に対して垂直方向に1つ設けても良く、複数設けても良い。
脆弱部(34)が側材(3)に設けられていることにより、本発明に係るフラスコ(1)に流動シリコーン等の複模型用印象材(5)を注入して固化し、モールド(6)を作製した後に、手や工具等により、脆弱部(34)に力を加えることで脆弱部(34)が割れ、容易に側材(3)をモールド(6)から取り外すことができる(図3図4参照)。
【0026】
側材(3)と底材(2)の取り付け構造は特に限定されず、本発明に係るフラスコ(1)に流動シリコーン等の複模型用印象材(5)を注入した際に、複模型用印象材(5)が取り付け部分から漏れないように取り付けられている構造であればよい。
例えば、取り付け部分の構造としては、底材(2)の上下方向中途部に段部(22)を設け、この段部(22)に側材(3)の下面(32)を嵌め込む、底材(2)と側材(3)の取り付け部分にネジを切って底材(2)と側材(3)を螺合させる、側材(3)の内面に下面(32)から上方向中途部にかけて薄肉部を設けて段部(35)を形成し、側材(3)の段部(35)と底材(2)若しくは底材(2)の段部(22)とを嵌合させる、側材(3)の下面(32)の内径を底材(2)の取り付け部分の外径よりも僅かに小さくし底材(2)と側材(3)とを嵌合させる等により構成された構造が挙げられるがこれに限定されない。
上述の取り付け部分の構造としては、容易且つ強固に側材(3)と底材(2)を取り付けでき、より確実に複模型用印象材(5)が取り付け部分から漏れないようにできる点から、底材(2)に段部(22)、側材(3)に段部(35)を設け、段部(22)と段部(35)を嵌合させる取り付け構造が最も望ましい。
【0027】
側材(3)は、成型や加工が容易で、耐熱性を有し、手や工具等により割ることが可能であり、且つ比較的安価な熱可塑性樹脂製であることが望ましい。
より好ましくは、成型や加工が容易で、手や工具等により割ることが可能であり、且つ比較的安価であるという観点から、ポリスチレン(PS)、アクリル(具体的にはアクリル樹脂)、ポリカーボネート(PC)、あるいはこれらの組み合わせを側材(3)の材料として用いることが望ましい。
加えて、高い耐熱性を有するポリスチレン(PS)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、あるいはこれらの組み合わせを側材(3)の材料として用いることで、フラスコ(1)内に注入した複模型用印象材(5)をより早く硬化させるために、フラスコ(1)自体を加熱することも可能になる。これにより、従来よりも、より早くモールド(6)を作製することができる。
尚、万が一本発明に係る側材(3)が上記加熱によって劣化したとしても、側材(3)は使い捨て(ディスポーザブル)のため、一度の加熱に耐えることができれば良い。
しかしながら、これに限定されず、手や工具等により割ることが可能である側材(3)を製造することができる素材であればポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、あるいはこれらの組み合わせに限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂、木材、あるいはこれらの組み合わせ等、いかなるものでも用いることができる。
【0028】
側材(3)の厚みは、本発明に係るフラスコ(1)に流動シリコーン等の複模型用印象材(5)を注入して固化し、モールド(6)を作製した後に、手や工具等により、割ることが可能である厚みであることが望ましい。
この望ましい厚みは側材(3)として用いる材質によるが、例えば、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、あるいはこれらの組み合わせを側材(3)の材料として用いる場合、その厚みは0.5mm〜1.5mmであることが望ましく、0.8mm〜1.1mmであることが最も望ましい。
0.5mm未満であると本発明に係るフラスコ(1)に流動シリコーン等の複模型用印象材(5)を注入した際に、複模型用印象材(5)が取り付け部分から漏れたり、側材(3)が破損したりする虞があり好ましくない。
1.5mmより厚いと本発明に係るフラスコ(1)に流動シリコーン等の複模型用印象材(5)を注入して固化し、モールド(6)を作製した後に、手や工具等により側材(3)を割ることが困難になるため、好ましくない。
それゆえに、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、あるいはこれらの組み合わせを側材(3)の材料として用いる場合の側材(3)の厚みは、複模型用印象材(5)の漏れや側材(3)の破損を防止することができ、且つ手や工具等により側材(3)を容易に割ることが可能な範囲である0.8mm〜1.1mmが最も望ましい。
【0029】
側材(3)は、上面(31)から下面(32)にかけて延びる法線(L)に対して2度〜4度傾斜する抜き勾配(A)を有していることが望ましい。
図3に示す如く、側材(3)が抜き勾配(A)を備えることにより、一方の側材(3A)の上面(31)と他方の側材(3B)の下面(32)とを重ね合わせることができる。
尚、図3では一方の側材(3A)の上面(31)と他方の側材(3B)の2つの側材を重ね合わせた様子を示しているが、重ねる側材の数は特に限定されず、例えば3つ、4つ、あるいは5つ以上等、重ね合わせた側材の高さが所望の高さとなるまで側材を重ねることができる。
また、重ね合わせる側材の夫々の抜き勾配(A)の上面(31)から下面(32)にかけて延びる法線(L)に対する傾斜角度は異なっていても良い。
これにより、本発明に係るフラスコ(1)に本模型(4)を載置した際に、本模型(4)のサイズが大きいために、フラスコ(1)の側材(3)の高さが足りない場合に、フラスコ(1)の側材(3)を上方向(縦方向)に重ね合わせることで、フラスコ(1)の側材(3)の高さを増加させることができ(即ち、フラスコ(1)の内部空間の高さを調節できる)、従来の重ね合わせることの出来ないフラスコでは対応出来なかった大きさを有する本模型を側材(3)により覆うことが可能となり、複模型をより容易且つ精密に作製することができる。
【0030】
尚、抜き勾配(A)の上面(31)から下面(32)にかけて延びる法線(L)に対する傾斜角度は、2度〜4度であることが望ましい。
抜き勾配(A)の傾斜が2度未満であると、一方の側材(3A)の上面(31)と他方の側材(3B)の下面(32)とを重ね合わせた際に、一方の側材(3A)と他方の側材(3B)の重なりの程度が小さくなりすぎ、一方の側材(3A)と他方の側材(3B)を安定して重ねることが困難となる。
抜き勾配(A)の傾斜が4度より大きいと、一方の側材(3A)の上面(31)と他方の側材(3B)の下面(32)とを重ね合わせた際に、一方の側材(3A)と他方の側材(3B)の重なりの程度が大きくなりすぎ、側材(3)を重ねても側材(3)の高さをあまり増加させることができず(即ち、フラスコ(1)の内部空間の高さをあまり増加させることができず)、好ましくない。
それゆえに、抜き勾配(A)の上面(31)から下面(32)にかけて延びる法線(L)に対する傾斜角度は、一方の側材(3A)と他方の側材(3B)を安定して重ねることが容易であり、且つ側材(3)を重ねることによって側材(3)の高さを大きく増加させることができる、2度〜4度であることが望ましい。
【0031】
以下に、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコを用いた、歯科用の複模型の作製手順の一例について詳述する。
尚、以下に示す歯科用の複模型の作製手順は一例であって、これに限定されない。
【0032】
まず、歯科用の本模型を作製する。
トレーを使い、患者の口腔内(顎)の形状の型を取る。そして、その型に石膏を注ぎ、参考模型を作製する。参考模型に石膏を注ぎ、本模型を作製する。
尚、本模型の作製手順は、従来から用いられており、当業者に自明の作製手順であればいかなるものでも用いることができる。
【0033】
次に、作製した本模型を、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコ(1)の底材(2)に載置する。そしてフラスコ(1)に流動シリコーン等の複模型用印象材(5)を注入する(図3参照)。
複模型用印象材(5)を注入した後、透明又は半透明の側材(3)をとおしてフラスコ(1)内を目で観察し、フラスコ(1)内に配置された本模型(4)が動いていないか、又は複模型用印象材(5)中に気泡が入っていないか等の状態を確認し、必要であれば本模型(4)の位置を修正する又は気泡を取り除く等の操作を行う。
フラスコ(1)内に配置された本模型(4)や複模型用印象材(5)に不具合等がなければ、フラスコ(1)内の複模型用印象材(5)が完全に固まる(硬化する)まで、そのままフラスコ(1)を静置する。
尚、フラスコ(1)内の複模型用印象材(5)の硬化を促進するために、フラスコ(1)を加熱しても良い。
【0034】
続いて、フラスコ(1)内で複模型用印象材(5)が完全に硬化した後、手又は工具によりフラスコ(1)の側材(3)を割り、フラスコ(1)内で複模型用印象材(5)が完全に硬化することにより作製されたモールド(6)から側材(3)を取り外す。
尚、側材(3)には脆弱部(34)が設けられており、この脆弱部(34)に力を加えることで、より容易に側材(3)をモールド(6)から割って取り外すことができる。
【0035】
次に、フラスコ(1)から取り外したモールド(6)から本模型(4)を取り外し、モールド(6)の凹所に、例えばリン酸塩等の成分を調整した膨張鋳型材を充填して固化し、元の本模型に基づく、複模型を作製する(図示せず)。
そして、複模型上で別のモールドを組み合わせて両者の間の空洞に高温溶融状態の金属又は樹脂を流し込んで、金属又は樹脂製の義歯床又は部分義歯床を作製する(図示せず)。
尚、本発明に係るフラスコ(1)を用いて作製したモールドから、金属又は樹脂製の義歯床又は部分義歯床を作製する手順は特に限定されず、従来から用いられており、当業者に自明の作製手順であればいかなるものでも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコは、歯科用補綴物の本模型を載置する面が平坦である底材と、前記底材に着脱自在に取り付けできる筒状の側材とを備え、前記側材は、上面と下面に開口を有し、熱可塑性樹脂製であり、前記側材には、当該側材の他の部分よりも強度が弱い脆弱部が厚み方向に設けられているため、本発明に係るフラスコに流動シリコーン等の複模型用印象材を注入して固化し、モールドを作製した後に、手や工具等により、脆弱部に力を加えることで脆弱部が割れ、より容易に請求項1に係るフラスコの側材をモールドから取り外すことができる。
それゆえに、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコは、例えば、歯科用の金属又は樹脂製の義歯床又は部分義歯床の作製に用いられる。加えて、本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコは、フラスコ内でより容易且つ正確に樹脂等を固まらせることができるので、例えば、樹脂製のフィギュアの製造等にも用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 フラスコ
2 底材
21 磁性体又は磁石
22 底材の段部
3 側材
31 上面
32 下面
33 開口
34 脆弱部
35 側材の段部
3A 一方の側材
3B 他方の側材
4 本模型
5 印象材
6 モールド
A 抜き勾配
L 法線
【要約】      (修正有)
【課題】フラスコに流動シリコーン等の複模型用印象材を注入した後に、固化されたモールドを取り出しやすい歯科用の複模型を作製するためのフラスコを提供する。
【解決手段】本発明に係る歯科用の複模型を作製するためのフラスコ1は、歯科用補綴物の本模型を載置する面が平坦である底材2と、前記底材2に着脱自在に取り付けできる筒状の側材3とを備え、前記側材は、上面31と下面32に開口33を有し、熱可塑性樹脂製であり、前記側材には、当該側材の他の部分よりも強度が弱い脆弱部が厚み方向に設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4