特許第6288700号(P6288700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288700
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】電極スラリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20180226BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20180226BHJP
   H01M 4/36 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
   H01M4/139
   H01M4/04 Z
   !H01M4/36 E
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-12093(P2014-12093)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-141737(P2015-141737A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】NECエナジーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】坂内 裕
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−027403(JP,A)
【文献】 特開2000−123876(JP,A)
【文献】 特開2006−134716(JP,A)
【文献】 特開2012−238474(JP,A)
【文献】 特開2012−009276(JP,A)
【文献】 特開平11−144714(JP,A)
【文献】 特開2010−109354(JP,A)
【文献】 特開2010−160982(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0004426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質粉末と、結着材粉末とを、混合装置に投入して混合する混合工程と、前記混合工程後に溶剤を前記混合装置に投入して、前記電極活物質粉末と前記結着材粉末とを含む粉末材料を混練する混練工程と、を有する電極スラリーの製造方法において、
前記混合工程では、前記結着材粉末を前記混合装置に投入した後に、前記電極活物質粉末を前記混合装置に投入することを特徴とする、電極スラリーの製造方法。
【請求項2】
前記混合工程では、前記電極活物質粉末を前記混合装置に投入する前に、導電材粉末を前記混合装置に投入する、請求項1に記載の電極スラリーの製造方法。
【請求項3】
前記混合工程では、前記導電材粉末を前記混合装置に投入した後、前記結着材粉末を前記混合装置に投入する、請求項2に記載の電極スラリーの製造方法。
【請求項4】
前記混合工程は、複数種類の前記電極活物質粉末と、前記結着材粉末とを混合することを含み、前記複数種類の電極活物質粉末と前記結着材粉末とを混合する際に、前記複数種類の電極活物質粉末の少なくともいずれかは、前記結着材粉末を前記混合装置に投入した後に前記混合装置に投入して混合する、請求項1に記載の電極スラリーの製造方法。
【請求項5】
前記混合工程では、前記複数種類の電極活物質粉末のいずれかを前記混合装置に投入した後に前記結着材粉末を前記混合装置に投入すると共に、前記結着材粉末を前記混合装置に投入した後に前記複数種類の電極活物質粉末のいずれかを前記混合装置に投入する、請求項4に記載の電極スラリーの製造方法。
【請求項6】
前記混合工程は、複数種類の導電材粉末と、前記複数種類の電極活物質粉末と、前記結着材粉末とを混合することを含み、前記複数種類の導電材粉末と前記複数種類の電極活物質粉末と前記結着材粉末とを混合する際に、前記複数種類の電極活物質粉末の少なくともいずれかは、前記複数種類の導電材粉末及び前記結着材粉末を前記混合装置に投入した後に前記混合装置に投入して混合する、請求項4に記載の電極スラリーの製造方法。
【請求項7】
前記混練工程では、前記溶剤及び導電材粉末を前記混合装置に投入する、請求項1に記載の電極スラリーの製造方法。
【請求項8】
前記混練工程では、前記溶剤と前記導電材粉末とを混合した状態で前記混合装置に投入する、請求項7に記載の電極スラリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウムイオン電池の電極に用いられる電極スラリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池が備える正極及び負極は、金属箔の表面に電極スラリーが塗布されて構成されている。この種の電極スラリーは、粉末材料と溶剤とを混練して形成されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
本発明に関連する電極スラリーの製造方法は、電極活物質粉末、導電材粉末及び結着材粉末を含む粉末材料を混合する混合工程と、混合された粉末材料に溶剤を投入して粉末材料を混練する混練工程と、を有している。
【0004】
混合工程では、ホッパーによって搬送された粉末材料を構成する各粉末が、混合装置の投入口から供給され、投入口から供給された粉末材料が投入経路を通って、混合装置の混合容器内に投入される。混合装置は、混合容器内に投入された粉末材料を、回転ブレードによって撹拌することによって、粉末材料が混合される。
【0005】
そして、一般に、混合工程では、電極活物質粉末、導電材粉末、結着材粉末の順に混合装置内に投入された後、粉末材料が混合されている。混練工程では、混合装置によって混合された粉末材料に溶剤を投入し、回転ブレードを用いて混練することによって、電極スラリーが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−265976号公報
【特許文献2】特開2001−351616号公報
【特許文献3】特開2013−196804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したように、本発明に関連する電極スラリーの製造方法における混合工程では、図4に示すような問題がある。図4に、本発明に関連する電極スラリーの製造方法において、結着材粉末によって生じる問題を説明するための模式図を示す。
【0008】
混合工程では、図4(a)に示すように、最後に投入された結着材粉末9が混合容器4内の最上部に位置している。混合工程では、混合装置1に結着材粉末が投入されたときに、比重が軽い粒子状の結着材粉末9が投入経路内や混合容器4内で飛散すると共に回転ブレード5によって粉末材料を混合したときに、混合容器4内の最上方に配置された結着材粉末9が舞い上がる。このため、結着材粉末9が投入経路の内壁及び混合容器4の内壁や、回転ブレード5の表面に付着してしまう問題がある。
【0009】
また、混合装置1では、結着材粉末9が投入された後に粉末材料の混合が行われ、その後、溶剤が投入されたときに、図4(b)に示すように、混合容器4の内壁や回転ブレード5の表面に付着した結着材粉末9が、溶剤によって溶解された結着材の膜によって包まれてこびりついたり、図4(c)に示すように、混合容器4の最上方に配置された結着材粉末9などが、溶剤によって溶解した結着材の膜によって包まれた塊状になる、いわゆるダマが生じてしまったりする問題がある。
【0010】
このような結着材粉末9のダマが生じることによって、混練工程後においてもダマが解消されずに残る場合があり、結着材粉末9、電極活物質粉末7及び導電材粉末8を均一に分散させることが困難になる問題がある。このため、結着材によって電極活物質と導電材とが適正に結合されず、製造された電極スラリーの品質の低下を招く問題がある。その結果、製造された電極スラリーを金属箔に塗布する塗布工程において、電極スラリーが塗布された電極の表面に筋などの製造不良が生じ、歩留まりの低下を招いていた。
【0011】
また、本発明に関連する電極スラリーの製造方法では、結着材粉末が付着した投入経路や混合容器の内部、回転ブレードの洗浄作業が煩雑であり、電極スラリーの品質を保つために洗浄作業を頻繁に行う必要があると共に、各製造ロットにおける電極スラリーの品質にバラツキが生じる問題がある。
【0012】
また、上述のようなダマが生じる問題があるため、粉末材料に含まれる各粉末の適正な分散状態を得るために、混練工程における混練時間が長くなる問題ある。
【0013】
そこで、本発明は、上記関連する技術の課題を解決することができる電極スラリーの製造方法を提供することを目的とする。本発明の目的の一例は、混合装置内に付着した結着材粉末と、溶剤とが接することを防ぎ、電極活物質粉末、導電材粉末、結着材粉末を均一に分散させることを可能にし、電極スラリーの品質を高めることができる、電極スラリーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明に係る電極スラリーの製造方法は、電極活物質粉末と、結着材粉末とを、混合装置に投入して混合する混合工程と、混合工程後に溶剤を混合装置に投入して、電極活物質粉末と結着材粉末とを含む粉末材料を混練する混練工程と、を有する電極スラリーの製造方法において、混合工程では、結着材粉末を混合装置に投入した後に、電極活物質粉末を混合装置に投入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、混合装置内に付着した結着材粉末と、溶剤とが接することを防ぎ、電極活物質粉末、導電材粉末、結着材粉末を均一に分散させることを可能にする。その結果、本発明は、電極スラリーの品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態の電極スラリーの製造方法で用いる混合装置を示す模式図である。
図2】第1の実施形態における混合工程を説明するためのフローチャートである。
図3】第2の実施形態の電極スラリーの製造方法が有する混合工程を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明に関連する電極スラリーの製造方法において、結着材粉末によって生じる問題を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の電極スラリーの製造方法は、リチウムイオン二次電池が備える電極である正極及び負極に用いられる電極スラリーを製造するために適用される。
【0019】
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態の電極スラリーの製造方法で用いる混合装置の模式図を示す。図2に、第1の実施形態の電極スラリーの製造方法が有する混合工程を説明するためのフローチャートを示す。
【0020】
第1の実施形態の電極スラリーの製造方法は、電極活物質粉末と、結着材粉末とを、混合装置に投入して混合する混合工程と、混合工程後に溶剤を混合装置に投入して、電極活物質粉末と結着材粉末とを含む粉末材料を混練する混練工程と、を有している。
【0021】
また、図1に示すように、本実施形態の電極スラリーの製造方法で用いられる混合装置1は、各粉末を供給するためのホッパー2と、ホッパー2から各粉末が投入される投入経路3と、投入経路3を通って各粉末が投入される混合容器4と、を備えている。混合容器4内には、粉末材料6を撹拌するための複数の回転ブレード5と、回転ブレード5を駆動する回転機構(不図示)と、が設けられている。
【0022】
第1の実施形態では、粉末材料として、電極活物質粉末7と、導電材粉末8と、結着材粉末9と、を含む粉末材料6を用いる。
【0023】
混合工程は、図1及び図2に示すように、導電材粉末8及び結着材粉末9を混合装置1に投入した後に、電極活物質粉末7を混合装置1に投入して、粉末材料6を混合する。
【0024】
混練工程は、混合工程で混合された粉末材料6に溶剤を投入して混練することによって、電極スラリーを製造する。混練工程では、例えば、溶剤の投入と、粉末材料6の混練とを繰り返しながら、複数回、溶剤を投入する。
【0025】
上述した電極スラリーの製造方法における混合工程について、各粉末を混合装置1に投入する順序を説明する。
【0026】
図2に示すように、混合工程は、ステップS1から開始して、導電材粉末8を混合装置1に投入し(ステップS2)、続いて結着材粉末9を混合装置1に投入する(ステップS3)。結着材粉末9を混合装置1に投入したときに、比重が軽い結着材粉末9が舞い上がり、結着材粉末9が投入経路3の内壁や混合容器4の内壁に付着する。
【0027】
次に、ステップS4に示すように、結着材粉末9を投入した後、電極活物質粉末7を混合装置1に投入することによって、投入経路3や混合容器4の内壁に付着した結着材粉末9が、比重が重く、かつ投入量が多い電極活物質粉末7によって押し流される。このように結着材粉末9の投入後に、電極活物質粉末7の投入が行われることによって、混合装置1の内壁に付着した結着材粉末9が残留することが抑えられる。
【0028】
最後に、ステップS5に示すように、混合容器4内において結着材粉末9が、導電材粉末8からなる層と電極活物質粉末7からなる層とで挟まれた状態で各粉末が混合されて、混合工程が終了する(ステップS6)。このように混合されることで、粉末材料6の混合時に結着材粉末9が舞い上がり、混合容器4の内壁に結着材粉末9が付着することを防ぎ、導電材粉末8、結着材粉末9、電極活物質粉末7が均一に混合された粉末材料が得られる。
【0029】
これによって、混練工程において溶剤を混合装置1に投入したときに、投入経路3や混合容器4の内壁に結着材粉末9が残留することが抑えられるので、混合容器4に投入された結着材粉末9が直接、溶剤に接することが抑えられ、結着材粉末9のダマが生じることが防げる。
【0030】
上述したように、第1の実施形態の電極スラリーの製造方法によれば、混合工程において、結着材粉末9が投入された後に電極活物質粉末7が投入されることによって、結着材粉末9よりも比重が重く、かつ結着材粉末9に比べて投入量が十倍以上である電極活物質粉末7によって、混合装置1の内壁に付着した結着材粉末9が押し流される。これによって、混合工程で投入された結着材粉末9に、混練工程で投入された溶剤が直接、接することが抑えられる。このため、結着材粉末9のダマが生じることを防ぎ、電極活物質粉末7、導電材粉末8、結着材粉末9を均一に分散させることが可能になり、製造された電極スラリーの品質を高めることができる。その結果、本実施形態によれば、製造された電極スラリーを金属箔に塗布する塗布工程において、電極スラリーが塗布された電極の表面に筋などの製造不良が生じることを防ぎ、歩留まりを向上することができる。
【0031】
また、第1の実施形態によれば、混合装置1の内壁に結着材粉末9が残留することが防げるので、電極スラリーの製造後、混合装置1の洗浄を行わずに複数の製造ロットを連続して行うことができる。また、混合装置1内に結着材粉末9が付着することが抑えられるので、混合装置1の洗浄作業が簡易になり、混練工程における混練時間を短縮することも可能になる。
【0032】
また、第1の実施形態によれば、混合装置1の内壁に結着材粉末9が付着することが防げるので、複数の製造ロットを通して電極スラリーの品質を安定して製造することができる。
【0033】
なお、第1の実施形態における混合工程では、最初に導電材粉末8を混合装置1に投入した後に結着材粉末9を混合装置1に投入したが、この投入の順序に限定するものではない。第1の実施形態の変形例として、混合工程では、最初に結着材粉末9を混合装置1に投入した後、導電材粉末8、電極活物質粉末7の順、または電極活物質粉末7、導電材粉末8の順に投入されてもよい。しかしながら、最初に結着材粉末9を混合装置1に投入した場合には、結着材粉末9が混合容器4内の底に付着してダマが生じるおそれがある。このため、混合工程では、導電材粉末8、結着材粉末9、電極活物質粉末7の順に混合装置1に投入することが好ましい。このように、結着材粉末9及び導電材粉末8を投入した後に電極活物質粉末7を投入することによって、電極活物質粉末7が結着材粉末9及び導電材料粉末8を押し流すので、結着材粉末9だけでなく導電材粉末8も、混合装置1の内壁に残留することを防ぐことができる。
【0034】
また、混合工程において、最初に結着材粉末9を混合装置1に投入する場合には、必要に応じて、電極スラリーの製造後に混合容器4を洗浄することによって、混合容器4内の底に付着した結着材粉末9を取り除くことが可能であるので、最初に結着材粉末9を混合装置1に投入してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、導電材粉末8を混合工程で投入したが、導電材粉末8を混合工程で投入せずに、導電材粉末8を混練工程で投入してもよい。この場合には、必要に応じて、導電材粉末8と溶剤とが混合した状態で投入されてもよい。
【0036】
次に、複数種類の電極活物質粉末と、複数種類の導電材粉末とを用いる他の実施形態について説明する。
【0037】
(第2の実施形態)
図3に、第2の実施形態の電極スラリーの製造方法における混合工程を説明するためのフローチャートを示す。
【0038】
第2の実施形態の電極スラリーの製造方法は、粉末材料として、電極活物質粉末7及び導電材粉末8をそれぞれ複数種類用いる点が、第1の実施形態と異なっている。
【0039】
第2の実施形態における材料粉末は、第1の電極活物質粉末7a及び第2の電極活物質粉末7b、第1の導電材粉末8a及び第2の導電材粉末8b、結着材粉末9を含んでいる。
【0040】
第2の実施形態の電極スラリーの製造方法における混合工程について、各粉末を混合容器4に投入する順序を説明する。
【0041】
図3に示すように、混合工程は、ステップS11から開始して、第1の電極活物質粉末7aを混合装置1に投入し(ステップS12)、続いて第1及び第2の導電材粉末8a、8bを混合装置1に投入する(ステップS13)。次に、結着材粉末9を混合装置1に投入する(ステップS14)。結着材粉末9を混合装置1に投入したときに、比重が軽い結着材粉末9が舞い上がり、結着材粉末9が投入経路3の内壁や混合容器4の内壁に付着する。
【0042】
結着材粉末9を投入した後、ステップS15に示すように、第2の電極活物質粉末7bを混合装置1に投入することによって、投入経路3や混合容器4の内壁に付着した結着材粉末9や、第1及び第2の導電材粉末8a、8bが、比重が重く、かつ投入量が多い第2の電極活物質粉末7bによって押し流される。このように結着材粉末9の投入後に、第2の電極活物質粉末7bの投入が行われることによって、混合装置1の内壁に付着した結着材粉末9が残留することが抑えられる。
【0043】
最後に、ステップS16に示すように、混合容器4内において結着材粉末9が第1及び第2の導電材粉末8a、8bからなる層と、第2の電極活物質粉末7bからなる層とで挟まれた状態で各粉末が混合されて、混合工程が終了する(ステップS17)。このように混合されることで、粉末材料6の混合時に結着材粉末9が舞い上がり、混合容器4の内壁に結着材粉末9が付着することを防ぎ、第1及び第2の導電材粉末8a、8b、結着材粉末9、第1及び第2の電極活物質粉末7a、7bが均一に混合された粉末材料6が得られる。
【0044】
これによって、混練工程において溶剤を混合装置1に投入したときに、投入経路3や混合容器4の内壁に結着材粉末9が残留することが抑えられるので、混合容器4に投入された結着材粉末9が直接、溶剤に接することが抑えられ、結着材粉末9のダマが生じることが防げる。
【0045】
第2の実施形態の変形例としては、混合工程において、第1及び第2の電極活物質粉末7a、7bのいずれかを混合装置1に投入した後に結着材粉末9を混合装置1に投入すると共に、結着材粉末9を混合装置1に投入した後に第1及び第2の電極活物質粉末7a、7bのいずれかを混合装置1に投入してもよい。
【0046】
また、混合工程では、第1及び第2の導電材粉末8a、8b及び結着材粉末9を混合装置1に投入した後に、第1及び第2の電極活物質粉末7a、7bの少なくともいずれかを混合装置1に投入してもよい。
【0047】
具体的には、第1及び第2の導電材粉末8a、8b、結着材粉末9を投入した後に、第1及び第2の電極活物質粉末7a、7bを混合装置1に投入してもよい。
【0048】
また、第1及び第2の導電材粉末8a、8bのいずれか、または両方を最初に混合装置1に投入した後に結着材粉末9を投入し、結着材粉末9を混合装置1に投入した後に第1及び第2の電極活物質粉末7a、7bのいずれかまたは両方を混合装置1に投入してもよい。結着材粉末9を混合装置1に投入した後に第1及び第2の電極活物質粉末7a、7bのいずれか一方を投入する場合には、第1及び第2の電極活物質粉末7a、7bの他方を、結着材粉末9を投入する前のいずれのタイミングで混合装置1に投入してもよい。
【0049】
また、複数種類の電極活物質粉末として、3種類以上の電極活物質粉末が用いられてもよい。同様に複数種類の導電材粉末として、3種類以上の導電材粉末が用いられてもよいことは勿論である。
【0050】
要するに、混合装置1に結着材粉末9が投入された後に電極活物質材粉末7が投入されることによって、電極活物質粉末7によって混合装置1内に付着した結着材粉末9が押し流されるので、結着材粉末9が混合装置1の内壁に残留することが抑えることができる。したがって、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、均一な分散性が高められた電極スラリーを製造することができる。
【0051】
加えて、第2の実施形態では、最初に第1の電極活物質粉末7aを混合容器4に投入することによって、結着材粉末9が混合容器4内の底に付着してダマが生じることを防ぐことができる。これは、最初に第1及び第2の導電材粉末8a、8b、次に結着材粉末9の順序で投入した場合、第1及び第2の導電材粉末8a、8bの投入量が混合容器4の大きさ(容積)と比較して少ないときに、投入された第1及び第2の導電材粉末8a、8bから混合容器4内の底の一部が露出した状態で結着材粉末9が投入されることがあるためである。このような場合、結着材粉末9が混合容器4内の底に付着してダマが生じるおそれがある。
【0052】
しかしながら、第2の実施形態では、結着材粉末9の投入前に、第1の電極活物質粉末7aと第1及び第2の導電材粉末8a、8bを投入することによって、混合容器4が大きい場合であっても混合容器4内の底の露出を減らすことができるので、上述したような結着材粉末9の混合容器4内の底への付着、結着材粉末9のダマの発生を低減できる効果が得られる。
【0053】
(実施例)
粉末材料の構成について更に詳細に説明する。
【0054】
第1の実施例の粉末材料6は、正極に用いられる電極スラリーを形成するための粉末材料であって、第1の電極活物質粉末7a及び第2の電極活物質粉末7b、第1の導電材粉末8a及び第2の導電材粉末8b、結着材粉末9、を含んでいる。
【0055】
第1の電極活物質粉末7aとしてはマンガン酸リチウムが用いられ、第2の電極活物質粉末7bとしてはリチウムニッケル層状酸化物が用いられる。第1の導電材粉末8aとしては、カーボンブラック等の炭素の微粒子であって、数十nm〜数百nm程度のものが用いられる。第2の導電材粉末8bとしては、黒鉛粒子等の平均粒径が3μm程度の微粒子であって、第1の導電材粉末8aよりも粒径が大きな炭素の微粒子が用いられる。結着材粉末9としてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)が用いられている。
【0056】
粉末材料の混合比の一例としては、第1の電極活物質粉末7a:第2の電極活物質粉末7b:第1の導電材粉末8aと第2の導電材粉末8bとの和=7:2:1(重量比)であり、第1及び第2の電極活物質粉末7a、7b、第1及び第2の導電材粉末8a、8bの総重量に対して5重量%程度の結着材粉末9を添加する。
【0057】
第2の実施例の粉末材料6は、負極に用いられる電極スラリーを形成するための粉末材料6であって、電極活物質粉末7、第1の導電材粉末8a及び第2の導電材粉末8b、結着材粉末9を含んでいる。
【0058】
電極活物質粉末7としては、黒鉛または非晶質炭素が用いられる。第1の導電材粉末8aとしては、カーボンブラック等の炭素の微粒子が用いられる。第2の導電材粉末8bとしては、第1の導電材粉末8aよりも粒径が大きい黒鉛粒子等が用いられる。結着材粉末9としては、PVdFが用いられる。
【0059】
粉末材料6の混合比の一例としては、電極活物質粉末7:第1の導電材粉末8aと第2の導電材粉末8bとの和=99:1(重量比)であり、電極活物質粉末7、第1及び第2の導電材粉末8a、8bの総重量に対して5重量%程度の結着材粉末9を添加する。
【0060】
なお、本発明に係る電極スラリーの製造方法は、比重が軽い第1の粉末と、比重が重くかつ投入量が多い第2の粉末とを含む粉末材料を液体を用いて混練することで、スラリーを製造する用途に適しており、他のスラリーの製造方法に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 混合装置
6 粉末材料
7 電極活物質粉末
7a 第1の電極活物質粉末
7b 第2の電極活物質粉末
8 導電材粉末
8a 第1の導電材粉末
8b 第2の導電材粉末
9 結着材粉末
図1
図2
図3
図4