(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記挟持ミス判定部は、前記トランスファ基部が回動を開始する以前の回転角にあって前記フィンガ対が前記上流側にあるとき、および前記トランスファ基部が回動を開始した以後の回転角にあって前記フィンガ対が前記上流側から前記下流側に移動する途中にあるときに前記挟持ミスを判定する請求項1または2に記載の圧造機のトランスファ装置。
【背景技術】
【0002】
ワークを圧造成形加工して、所定形状の部品を製造する圧造機が知られている。圧造機では、ダイス及びパンチを軸線上に対向配置して圧造成形加工を行い、トランスファ装置でワークを上流側から下流側に搬送する構造が普及している。複数組のダイス及びパンチによりそれぞれ圧造工程を構成して、ワークを段階的に加工する多工程圧造機も一般的になっている。さらに、ワークの前後両側を加工する用途には、ワークの前後方向を反転して下流側工程に搬送する反転式トランスファ装置が用いられる。この種の反転式トランスファ装置の技術例が特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1のワーク反転設置機構は、フィンガをワークに向けて接離駆動しさらに把持するためのフィンガ伸縮・把持用アクチュエータと、フィンガを上下方向に駆動するためのピックアップ用アクチュエータと、フィンガを次段の加工ステーション(下流側工程)に搬送して復帰させるための搬送用ステージとを用いる。これにより、ミリメートルオーダーの微小な製品製造において、少ないアクチュエータで多段の反転・横置き可能な高付加価値トランスファプレス加工を実現する、とされている。
【0004】
本願出願人が特許文献2に開示した圧造機のトランスファ装置は、チャック(フィンガ対)の180°の公転によりワークを下流側工程に移送するものである。このトランスファ装置は、チャックの自転の有無を設定変更して、ワークの反転および非反転を切り替えられるようになっている。また、このトランスファ装置は、パンチを駆動する主駆動源を共通に用いて駆動する方式を採用しており、カム機構により駆動特性を設定している。
【0005】
ここで、ワークを反転するか否かを問わず一般的に圧造機では、フィンガ対でワークを挟持し損ねた挟持ミスが発生すると、ダイスやパンチを破損するおそれにつながる。つまり、或る工程で挟持ミスが生じてダイスにワークが残った状態になると、次の加工サイクルで2個目のワークが搬入され、パンチは2個のワークを重ねて打圧する2個打ちを行ってしまう。これにより、正常時と比較して過大な応力がダイスやパンチに発生して破損に至り、破損部分の復旧費用やワークの製造遅れなどの大きな損失が生じる。
【0006】
ダイスやパンチの破損を回避するために、フィンガ対の挟持ミスを検出する技術例が特許文献3に開示されている。特許文献3のトランスファーチャックの掴み検出装置は、チャックユニットを駆動するカムアームの中間部を支持する支持部周りに歪みゲージを設け、開閉チャック(フィンガ対)が素材を掴んでいるときに検出される歪みの有無によって、掴み異常を判定する。これによれば、歪みゲージを固定構造物に取り付けるようにしたので、配線などの信頼性が高く、開閉チャック交換時に再取付けが不要で、誤動作の可能性が低い、とされている。さらに、従来技術として、開閉チャック上に接触センサーを設ける技術や、トランスファーの駆動部にマイクロスイッチを取り付けて挟持ミスを感知する技術が説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献3では、カムアームの中間部に設けられた歪みゲージが歪みを検出しなければ正常状態と判定し、歪みを検出したときに掴み異常と判定している。しかしながら、正常状態であってもカムアームが動き始めるときなどには一時的に歪みが発生し得るため、フィンガ対の挟持ミスを誤りなく確実に検出できるとは限らない。
【0009】
さらに、特許文献3に例示された挟持ミスの検出技術を特許文献1および2に例示された反転式トランスファ装置に適用する場合、反転式に固有の問題点が生じる。詳述すると、ワークを反転しない一般的なトランスファ装置では、上流側と下流側との間をフィンガ対が単純に平行移動するのに対して、反転式トランスファ装置ではフィンガ対の公転や自転などを行うことになるため、搬送動作が複雑化する。そして、フィンガ対を開閉駆動するフィンガ駆動部でも、一部の部材が回転するようになる。このため、フィンガ対の挟持ミスを確実に検出できるセンサの配設位置が制約される。さらには、センサによる検出のタイミングや挟持ミスを判定する判定基準値の設定が難しい。
【0010】
また、特許文献3の技術は、挟持ミスを検出する手段は開示していても、ワークの2個打ちを回避する具体的な手段を開示していない。一般的な圧造機で、パンチは、モータなどの主駆動源から主駆動軸を介して駆動され、トランスファ装置は、主駆動軸に連結されたカム機構によって共通に駆動される構成が多い。このため、トランスファ装置で挟持ミスが検出されたときに主駆動軸のブレーキやクラッチを停止制御しても、慣性動作や制御の時間遅れなどにより2個打ちを回避できないおそれがある。
【0011】
本発明は上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、トランスファ基部の
180°の回動によってワークを搬送する装置構成において、ワークの挟持ミスを確実に判定
できる圧造機のトランスファ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧造機のトランスファ装置は、ダイスおよびパンチによりワークを打圧して圧造成形加工を行う圧造機の前記ワークを搬送する搬送経路に配置され
て回動するトランスファ基部と、前記トランスファ基部に設けられ、開閉動作して前記ワークを挟持及び開放するフィンガ対と、
昇降可能でありその下端が前記フィンガ対に係合するフィンガ開閉ロッド、および前記パンチを駆動する主駆動源から揺動駆動されて前記フィンガ開閉ロッドを昇降駆動するグリップレバーを前記トランスファ基部に有し、前記フィンガ対の開閉動作を駆動するフィンガ駆動部と、前記トランスファ基部を
180°回転駆動して、前記ワークを挟持した
前記フィンガ対を前記搬送経路の上流側から下流側に移動させ、
前記トランスファ基部を逆方向に180°回転駆動して、前記ワークを開放した
前記フィンガ対を前記下流側から前記上流側に戻すトランスファ駆動部と、を備えた圧造機のトランスファ装置であって、
検出部およびセンサ対向部を支承部の両側に有して揺動可能であり前記検出部が前記グリップレバーに接する検出プレート、および前記検出プレートの前記センサ対向部との距離を検出する近接センサを基台に有し、前記グリップレバーの揺動状態を検出するフィンガ駆動検出部と、前記トランスファ基部が特定の
回転角にあるときに、
前記近接センサにより検出された前記距離と、前記フィンガ対が正常に前記ワークを挟持しているときの前記距離とを比較して、前記フィンガ対が前記ワークを挟持し損ねた挟持ミスを判定する挟持ミス判定部と、をさらに備えた。
【0013】
さらに、
前記検出プレートの前記検出部は、前記グリップレバーに設けられかつ半円の軌跡を描いて移動するアタックピースに接するようにしてもよい。
【0014】
さらに、前記挟持ミス判定部は、前記トランスファ基部が回動を開始する以前の回転角にあって前記フィンガ対が前記上流側にあるとき、および前記トランスファ基部が回動を開始した以後の回転角にあって前記フィンガ対が前記上流側から前記下流側に移動する途中にあるときに前記挟持ミスを判定することが好ましい。
【0015】
また、前記パンチおよび前記フィンガ駆動部を駆動する主駆動源以外に
、圧縮空気駆動機構によって駆動され前記フィンガ対を高速で開放駆動する高速補助駆動源をさらに備え、前記挟持ミス判定部は、前記挟持ミスの判定が生じたときに、前記高速補助駆動源を制御し前記フィンガ対を開放して前記ワークを強制的に落下させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の圧造機のトランスファ装置は、フィンガ駆動部の
グリップレバーの揺動状態を検出するフィンガ駆動検出部と、トランスファ基部が特定の
回転角にあるときに、近接センサにより検出された距離と、正常時の距離とを比較して挟持ミスを判定する挟持ミス判定部と、を備えている。ここで、トランスファ基部が特定の
回転角にあるときに限って挟持ミスを判定するので、
グリップレバーの揺動状態が時間的に変化しても、判定のタイミングを毎回揃えることができ、ワークの挟持ミスを確実に判定できる。
【0018】
さらに、
検出プレートの検出部は、グリップレバーに設けられかつ半円の軌跡を描いて移動するアタックピースに接するように構成できる。これによれば、本発明は、トランスファ基部が回動してワークを反転搬送する構成
に適用でき、トランスファ基部の特定の回転角で毎回の検出を行って判定することになる。したがって、フィンガ駆動検出部の検出タイミングや挟持ミスを判定する判定基準値の設定が容易となり、ワークの挟持ミスを確実に判定できる。
【0019】
さらに、挟持ミス判定部は、1加工サイクル内のトランスファ基部が回動を開始する以前と回動を開始した以後の2回挟持ミスを判定することができる。つまり、フィンガ対が上流側でワークを挟持したときに1回目の判定を行い、ワークを搬送する途中に2回目の判定を行うことができる。1回目の判定は、上流側でワークが落下した場合に効果的である。2回目の判定は、上流側で固着などによってワークがダイスに留まり、フィンガ対が一旦ワークを挟んでも搬送できない場合に効果的である。1加工サイクル内に2回の判定を行うことで、ワークの挟持ミスの判定精度が向上する。
【0020】
また、主駆動源以外に
圧縮空気駆動機構によって駆動されフィンガ対を高速で開放駆動する高速補助駆動源をさらに備え、挟持ミス判定部は、挟持ミスの判定が生じたときにフィンガ対を開放してワークを強制的に落下させるようにできる。これによれば、ワークの固着などにより挟持ミスが生じて仮に打圧済みのワークがダイスに残っていても、次のワークが落下して搬入されないので、ワークの2個打ちを回避してダイスやパンチの破損のおそれを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための実施形態について、
図1〜
図6を参考にして説明する。
図1は、本発明の実施形態のトランスファ装置1を装備した圧造機9の平面図である。圧造機9は、複数組の対向するダイス93及びパンチ96を備えて、ワークに複数工程の圧造成形加工を順次行う多工程圧造機である。圧造機9は、他に基台91、ダイスブロック92、ラム94、パンチブロック95、主駆動源97などを備えている。
【0024】
基台91は、各部を配設するための筐体であり、堅牢に形成されている。ダイスブロック92は、基台91に交換可能に取り付けられる。複数個のダイス93は、ダイスブロック92の前方(図中の左側)に交換可能に取り付けられ、図中の左方向を向いた前側に所定の加工型が形成されている。ラム94は、基台91に対して長手方向(図中の左右方向)に往復動可能に保持されている。パンチブロック95は、ラム94の前方(図中の右側)に交換可能に取り付けられる。複数個のパンチ96は、パンチブロック95の前方(図中の右側)に交換可能に取り付けられ、図中の右方向を向いた前側に所定の加工型が形成されている。
図1の紙面上側が上流の第1工程であり、紙面下側が下流の第5工程になっている。本実施形態で5組のダイス93及びパンチ96により第1〜第5工程が構成されているが、本発明は、工程数に依存せずに実施できる。
【0025】
圧造機9は、
図1に省略された線材切断供給装置を備えている。線材切断供給装置は、長尺線材から所定長さのワークを切り出して供給する。実施形態のトランスファ装置1は、ダイスブロック92の上方からダイス93の前方にかけて配設される。トランスファ装置1は、ワークを上流側工程から下流側工程に反転または非反転して搬送する反転式トランスファ装置である。トランスファ装置1は、各工程間に配置された複数組のトランスファカセット11からなる。最上流のトランスファカセット11は、線材切断供給装置から第1工程にワークを反転せずに搬送する。また、2番目以降のトランスファカセット11は、第1工程から第5工程へと順番にワークを反転または非反転して搬送する。圧造機9は、他に、図略のキックアウト装置やトリミング装置を備えている。
【0026】
ラム94を往復駆動するために主駆動源97が設けられている。主駆動源97は、例えば、三相交流電源で動作する誘導モータまたは同期モータとすることができる。主駆動源97は、トランスファ装置1や線材切断供給装置、キックアウト装置、トリミング装置を駆動する用途にも共通に用いられている。主駆動源97の駆動力は、フライホイール98および減速機構99を介して、ラム94を駆動するクランク軸9Aに入力されている。さらに、クランク軸9Aから分岐歯車対9Bを介して、サイド軸9Cに駆動力が分岐伝達されている。
【0027】
サイド軸9Cには、トランスファカム9Dが一体的に回転するように設けられている。トランスファカム9Dは、後で詳述するように、ラックギヤ52を往復駆動してトランスファ装置1のトランスファ基部2を回転駆動する。また、サイド軸9Cからトランスファドライブ9Eを経由した先に、トランスファカセット11と同数個のオープンクローズカム9Fが回転駆動されるように連結されている。オープンクローズカム9Fは、幅方向に等間隔で配置されており、各工程間の位置に対応している。各オープンクローズカム9Fは、各トランスファカセット11のフィンガ駆動部4をそれぞれ駆動する。
【0028】
さらに、サイド軸9Cには、カッタカム9Gが設けられるとともに、プッシャカム9H、フィードカム9J、フィードローラ9K、ダイス93と同数個のキックアウトカム9L、およびトリミングカム9Mが連結されている。これらのカム類については、トランスファ装置1との関連性が低いため、説明を省略する。
【0029】
図2は、実施形態のトランスファ装置1を示す平面図である。
図2には、3工程分のトランスファカセット11が示されている。
図2の左側が上流側工程、右側が下流側工程であり、便宜的に左側から順番に第1、第2、および第3トランスファカセット111、112、113と呼称する。また、
図3は、実施形態のトランスファ装置1の側面一部断面図であり、
図2の右方から見た図である。トランスファ装置1は、トランスファ基部2、フィンガ対3、フィンガ駆動部4、トランスファ駆動部5、フィンガ駆動検出部6、およびオープンシリンダ7をトランスファカセット11ごとに備え、挟持ミス判定部8を複数組のトランスファカセット11に共通に備えている。なお
図3で、フィンガ対3は、
図2の状態から90°回転した姿勢で示されている。
【0030】
図3に示されるように、トランスファ基部2は、複数の部材が結合されて概ね縦型円筒状に形成されている。トランスファ基部2は、上下2組の軸受部21、22により基台91に支承されている。トランスファ基部2の軸受部21、22の間の側面の半周強にセクタギヤ51が刻設されている。セクタギヤ51と噛合するように、基台91にラックギヤ52が設けられている。ラックギヤ52は、前述したトランスファカム9Dによって
図3の紙面表裏方向に往復駆動される。これにより、トランスファ基部2は、鉛直方向に延びる回転軸線ARを中心にして180°回転駆動され、上流側工程と下流側工程との間でフィンガ対3を公転させて往復駆動する。例えば、
図2において、第1トランスファカセット111は、上流側工程に相当する位置P1と下流側工程に相当する位置P2との間でフィンガ対3を往復駆動する。
【0031】
トランスファ基部2の側面のセクタギヤ51の反対方向に、フィンガ支持部23が突設されている。フィンガ支持部23の先端には、上下に延びる筒体24が固設されている。筒体24の内部に、フィンガ支持筒25が相対回転可能に嵌合されている。フィンガ支持筒25の筒体24よりも下方に延出した下部に、フィンガ支持部材26が設けられている。フィンガ支持部材26は、フィンガ対3を構成する2つのフィンガ31を揺動可能に支承している。
【0032】
図2に示されるように、各トランスファカセット11には、反転設定部53が設けられている。連結板54を用いて隣接するトランスファカセット11の反転設定部53を連結すると、フィンガ支持筒25およびフィンガ対3は公転移動に伴い平行移動する。第1トランスファカセット111および第2トランスファカセット112は、連結板54により反転設定部53が連結されており、ワークWを非反転で搬送する。また、反転設定部53を連結しなければ、フィンガ支持筒25およびフィンガ対3は公転移動に伴い自転する。これにより、第3トランスファカセット113は、ワークWを反転して搬送する。
【0033】
反転設定部53および連結板54を用いてワークの反転および非反転を切り替え設定する構成の詳細については、特許文献2に開示済みである。ここまでの説明で解るように、セクタギヤ51、ラックギヤ52、反転設定部53、および連結板54などにより、ワークWを反転または非反転して搬送するトランスファ駆動部5が構成されている。
【0034】
2つのフィンガ31は、正面視で概ね互いに対称形状であり、2箇所で折れ曲がった形状を有している。各フィンガ31は、上側端に被駆動点32を有し、下側端に挟持点33を有し、上側の折れ曲がり位置に揺動支点34を有している。揺動支点34は、フィンガ支持部材26に支承されている。2つのフィンガ31は、被駆動点32が下降駆動されると揺動支点34を中心にして揺動し、挟持点33が閉じてワークWを挟持する。2つのフィンガ31は、被駆動点32が上昇駆動されると揺動支点34を中心にして逆向きに揺動し、挟持点33が開いてワークWを開放する。
【0035】
フィンガ駆動部4は、フィンガ開閉ロッド41、グリップレバー42、および駆動レバー43などで構成されている。フィンガ開閉ロッド41は、フィンガ支持筒25の内部に昇降可能に配設されている。フィンガ開閉ロッド41の下端に設けられた係合突部411は、2つのフィンガ31の被駆動点32に係合して昇降駆動できるように形成されている。フィンガ開閉ロッド41の上部寄りには、上下に離隔して水平にフランジ状に拡がる2つのフランジ部412、413が設けられている。
【0036】
グリップレバー42は、トランスファ基部2の上部に配設されている。グリップレバー42は、フィンガ駆動部4を構成するとともにトランスファ基部2に連動して回動する本発明の特定駆動部材に相当する。
図4は、特定駆動部材に相当するグリップレバー42の形状を説明する平面図である。グリップレバー42は、被支承部421、被駆動アーム422、および2本の駆動アーム424、425などからなる。
【0037】
被支承部421は、トランスファ基部2の回転軸線ARから離れた位置に貫設された支承ピン27により揺動可能に支承されている。被支承部421から回転軸線ARへ向かう方向に、広幅の被駆動アーム422が延在している。被駆動アーム422の回転軸線ARの位置は、へこんだ被押下げ部423となっている。被支承部421から被駆動アーム422と反対方向に、2本の狭幅の駆動アーム424、425が離隔平行して延在している。2本の駆動アーム424、425はそれぞれ、向かい合う内側に横向き円筒状の昇降駆動部材426、427を有している。昇降駆動部材426、427は、フィンガ開閉ロッド41のフランジ部412、413の間に配置される。
【0038】
駆動レバー43は、長さ方向の途中に形成された被支承部が基台91に揺動可能に支承されている。駆動レバー43の先端の下部は押下げ部431になっており、先端の上部は
強制押下げ部432になっている。押下げ部431は、グリップレバー42の被押下げ部423に係入してこれを押し下げられるように形成および配置されている。強制押下げ部432は、後述するオープンシリンダ7のピストン部材72により、強制的に高速で押し下げられるように形成されている。駆動レバー43の
図3の右方の基端は、前述したオープンクローズカム9Fにより上昇および下降駆動される。これに伴い、押下げ部431は、逆に下降および上昇駆動される。付勢ばね44は、フィンガ開閉ロッド41の上方に配設されている。付勢ばね44は、フランジ部412を下方に付勢している。
【0039】
駆動レバー43の押下げ部431が上昇しているとき、グリップレバー42は、
図3の反時計回りに揺動して、昇降駆動部材426、427は下降する。これにより、フィンガ開閉ロッド41は下降位置となり、フィンガ対3はワークWを挟持する。駆動レバー43の押下げ部431が下降駆動されると、グリップレバー42の被押下げ部423を押し下げる。グリップレバー42は、
図3の時計回りに揺動して、昇降駆動部材426、427は上昇する。これにより、フィンガ開閉ロッド41は上昇駆動され、フィンガ対3はワークWを開放する。
【0040】
フィンガ駆動検出部6は、アタックピース61、検出プレート62、および近接センサ63などで構成されている。
図5は、フィンガ駆動検出部6の構成を説明する平面図である。
図5には、第2トランスファカセット112および第3トランスファカセット113のフィンガ駆動検出部6が例示されている。第1トランスファカセット111のフィンガ駆動検出部6は、
図5の左右を逆にした鏡面対称形状に構成されている。アタックピース61は、
図4に示されるように、グリップレバー42の被駆動アーム422の先端付近の幅方向の中央に設けられている。アタックピース61は、上向きに半球状に突出している。
【0041】
検出プレート62は、回動するアタックピース61の高さ位置を検出して、
基台91に配置された
近接センサ63へ伝達する。検出プレート62は、検出板621、伝達軸624、および伝達板625が一体的に結合されて形成されている。
図5に示されるように、検出板621は、馬蹄形部622と矩形部623とが繋がった形状となっている。馬蹄形部622は、アタックピース61の上側に配置されている。トランスファ基部2が180°回動する間に、アタックピース61は、検出プレート62の馬蹄形部622の下面に接しながら半円の軌跡61T(
図5示)を描いて回動する。矩形部623の馬蹄形部622から離れた側の一辺は、伝達軸624に固定されている。
【0042】
伝達軸624は、基台91に設けられた2つの支承部9N、9Pによって揺動可能に支承されている。伝達軸624の2つの支承部9N、9Pの間の位置に、前述した検出板621が固定されている。伝達軸624の支承部9Nの外側(
図5の左側)の位置に、伝達板625が固定されている。伝達板625は、帯板状の部材であり、検出板621の逆方向に延在している。伝達板625の伝達軸624から離れた先端の上部に、センサ対向板626が設けられている。
【0043】
図3に示されるように、近接センサ63は、センサ対向板626の上方に配置されている。近接センサ63は、基台91に立設されたセンサ台座9Qに固定されており、下方を向いている。近接センサ63は、センサ対向板626との距離Dを検出して、検出信号Sdを挟持ミス判定部8に送出する。
【0044】
グリップレバー42の被駆動アーム422が上昇しているとき、アタックピース61は、検出プレート62の馬蹄形部622を押し上げる。これにより、検出プレート62は、伝達軸624を中心にして
図3の時計回りに揺動し、センサ対向板626が下降して距離Dが増加する。したがって、近接センサ63は、グリップレバー42が揺動する駆動状態を検出できる。
【0045】
オープンシリンダ7は、本発明の高速補助駆動源に相当しており、駆動レバー43の強制押下げ部432の上方に配設されている。オープンシリンダ7は、シリンダ部材71と、シリンダ部材71に収容されて下方に突出可能なピストン部材72とを有している。オープンシリンダ7は、図略の圧縮空気駆動機構によって駆動される。圧縮空気駆動機構は、全部のトランスファカセット11で共通とされている。圧縮空気駆動機構は、挟持ミス判定部8からの指令信号Scで動作してシリンダ部材71の内部に圧縮空気を送り込み、ピストン部材72を下方に駆動する。これにより、ピストン部材72は、
オープンクローズカム9Fの動作に関係なく、駆動レバー43の強制押下げ部432を強制的に高速で押し下げる。
【0046】
挟持ミス判定部8は、CPUを内蔵してソフトウェアで動作する電子制御装置を用いて構成されている。挟持ミス判定部8は、近接センサ63から検出信号Sdを受け取り、距離Dに換算する。また、挟持ミス判定部8は、図略の回転角センサからクランク軸9Aの回転角θの情報を受け取る。挟持ミス判定部8は、距離Dに基づいて、フィンガ対3の挟持ミスを判定する(詳細は後述)。挟持ミス判定部は8、挟持ミスの判定が生じたときに、圧縮空気駆動機構に指令信号Scを送信する。
【0047】
次に、圧造機9の動作について説明する。
図6は、実施形態のトランスファ装置1を装備した圧造機9の加工サイクルにおける動作タイミングを示した図である。
図6で、横軸はクランク軸9Aの回転角θを表し、回転角θ=0°〜360°の範囲が1加工サイクルに相当する。
図6に示される4本の特性曲線は、上から順番にクランク軸9Aのストローク特性St、キックアウト装置のキックアウト特性Ko、トランスファ駆動部5の動作特性Mv、およびフィンガ対3の開閉特性Fmを表している。
【0048】
図6に示されるストローク特性Stによれば、回転角θ=0°および回転角θ=360°の後死点で、パンチ96はダイス93から最も離れている。また、回転角θ=180°の前死点で、パンチ96はダイス93に最も近づいてワークを打圧する。キックアウト装置のキックアウト特性Koは、前述したキックアウトカム9Lにより設定されている。キックアウト特性Koによれば、キックアウト装置は、回転角θ=255°付近で戻り位置から動き始めてダイス93から打圧済みのワークを押し出し始め、回転角θ=355°付近で押し出し位置に達してワークの押し出しを終了する。また、回転角θ=5°付近で押し出し位置から動き始め、回転角θ=120°付近で戻り位置に戻る。
【0049】
トランスファ駆動部5の動作特性Mvは、前述したトランスファカム9Dにより設定されている。動作特性Mvによれば、トランスファ駆動部5は、回転角θ=5°付近でトランスファ基部2の回動を開始して、上流側工程でワークを挟持したフィンガ対3を公転移動し始める。トランスファ駆動部5は、回転角θ=80°付近でワークおよびフィンガ対3を下流側工程まで移動し終える。さらに、トランスファ駆動部5は、回転角θ=230°付近でトランスファ基部2の回動を開始して、下流側工程に位置するフィンガ対3を公転移動し始める。トランスファ駆動部5は、回転角θ=305°付近でフィンガ対3を上流側工程に戻し終える。
【0050】
フィンガ対3の開閉特性Fmは、前述したオープンクローズカム9Fにより設定されている。開閉特性Fmによれば、フィンガ対3は、回転角θ=150°付近で、下流側工程において開き始め、回転角θ=180°の前死点でワークを開放し終える。さらに、フィンガ対3は、回転角θ=270°付近で、上流側工程において閉じ始め、回転角θ=300°付近で押し出されたワークを挟持し終える。なお、フィンガ対3の開閉特性Fmは、ワークの形状などに応じて
図6に破線で示される範囲まで変更可能となっている。
【0051】
次に、実施形態のトランスファ装置1の動作、および作用について説明する。前述したように、トランスファ駆動部5がトランスファ基部2を回転駆動してフィンガ対3を公転移動させるとき、アタックピース61が検出プレート62に接する接点は、半円の軌跡61T(
図5示)を描いて移動する。このとき、接点と伝達軸624との距離が変化する。このため、アタックピース61の高さ位置が一定であってもトランスファ基部2に連動して回転すると、検出プレート62は、わずかに揺動して傾斜角度が微妙に変化する。これにより、近接センサ63とセンサ対向板626との距離Dが変化し得る。このことは、挟持ミス判定部8が距離Dに基づいてフィンガ対3の挟持ミスを判定する際の誤差要因になる。
【0052】
そこで、この誤差要因を排除するために、挟持ミス判定部8は、トランスファ基部2が特定の回転角にあるときに近接センサ63で検出された距離Dに基づいて挟持ミスを判定する。具体的には、トランスファ基部2の特定の回転角として、
図6に示されるクランク軸9Aの回転角θ1=355°と、回転角θ2=17.5°の2つを検出タイミングに設定する。
【0053】
回転角θ1=355°において、トランスファ基部2は回動を開始する以前の回転角にあり、フィンガ対3は上流側工程にある。このタイミングでは、フィンガ対3は、上流側工程で押し出されたワークを既に挟持している。この場合、仮にワークが落下してしまうと、挟持ミスが発生する。また、回転角θ2=17.5°において、トランスファ基部2は回動を開始した以後の回転角にあり、フィンガ対3は上流側工程から下流側工程に公転移動して挟持したワークを搬送する途中にある。この場合、仮に固着などによってワークがダイス93に留まると、フィンガ対3は一旦ワークを挟んでも搬送できず、挟持ミスが発生する。
【0054】
挟持ミス判定部8は、回転角θ1=355°および回転角θ2=17.5°のそれぞれについて、距離Dに関する判定基準値D1および判定基準値D2を保持している。各判定基準値D1、D2は、フィンガ対3が正常にワークWを挟持しているときの距離Dに基づいて予め設定される。仮に、フィンガ対3がワークWを挟持していない場合、フィンガ31の挟持点33同士が当接して、フィンガ開閉ロッド41が正常時よりも下降する。すると、グリップレバー42は、正常時よりも
図3の反時計回りに揺動し、検出プレート62は、正常時よりも
図3の時計回りに揺動する。これにより、検出される距離Dは、過大になって判定基準値D1、D2を超過する。したがって、挟持ミス判定部8は、フィンガ対3がワークWを挟持し損ねた挟持ミスを判定できる。
【0055】
挟持ミス判定部8は、複数組のトランスファカセット11のうちのいずれかのフィンガ対3で挟持ミスの判定が生じたときに、圧縮空気駆動機構に指令信号Scを送信する。すると、圧縮空気駆動機構は、全部のトランスファカセット11のオープンシリンダ7のピストン部材72を下方に駆動する。駆動レバー43の強制押下げ部43は、強制的に高速で押し下げられる。これにより、各フィンガ開閉ロッド41は上昇駆動され、各フィンガ対3は現在の公転位置を問わずワークを開放する。したがって、或る工程で挟持ミスが生じて仮に打圧済みのワークがダイス93に残っていても、次のワークは落下して搬入されない。
【0056】
実施形態の圧造機9のトランスファ装置1は、フィンガ駆動部4のうちトランスファ基部2とともに回動するグリップレバー42の駆動状態を検出するフィンガ駆動検出部6と、トランスファ基部2が特定の状態であるときに検出されたグリップレバー42の駆動状態に基づいて挟持ミスを判定する挟持ミス判定部8と、を備えている。ここで、挟持ミス判定部8は、トランスファ基部2が特定の回転角のときに限って挟持ミスを判定する。したがって、グリップレバー42に設けられたアタックピース61の駆動状態の検出値である
距離Dが回転角に依存して変化しても、判定のタイミングを毎回揃えることができ、ワークの挟持ミスを確実に判定できる。
【0057】
さらに、実施形態は、トランスファ基部2が回動してワークを反転搬送する構成に適用されており、トランスファ基部2の特定の回転角で毎回の検出を行って判定することになる。したがって、フィンガ駆動検出部6の検出タイミング(回転角θ1、θ2)や挟持ミスを判定する判定基準値D1、D2の設定が容易となり、ワークの挟持ミスを確実に判定できる。
【0058】
さらに、挟持ミス判定部8は、1加工サイクル内のトランスファ基部2が回動を開始する以前(回転角θ1)と回動を開始した以後(回転角θ2)の2回挟持ミスを判定する。つまり、フィンガ対3が上流側工程でワークを挟持したときに1回目の判定を行い、ワークを搬送する途中に2回目の判定を行う。1回目の判定は、上流側工程でワークが落下した場合に効果的である。2回目の判定は、上流側工程で固着などによってワークがダイス93に留まり、フィンガ対3が一旦ワークを挟んでも搬送できない場合に効果的である。1加工サイクル内に2回の判定を行うことで、ワークの挟持ミスの判定精度が向上する。
【0059】
また、主駆動源97以外にフィンガ対3を高速で開放駆動するオープンシリンダ7をさらに備え、挟持ミス判定部8は、挟持ミスの判定が生じたときに全てのフィンガ対3を開放してワークを強制的に落下させる。これによれば、ワークの固着などにより挟持ミスが生じて仮に打圧済みのワークがダイス93に残っていても、次のワークが落下して搬入されないので、ワークの2個打ちを回避してダイス93やパンチ96の破損のおそれを低減できる。
【0060】
さらに、主駆動源97はモータであり、オープンシリンダ7は圧縮空気駆動機構で駆動される。これによれば、主駆動源97がパンチ96を駆動する加工速度に対応してオープンシリンダ7の駆動速度性能を適正に設定できるので、前述した次のワークの落下がパンチ96の打圧以前に確実に行われる。したがって、ワークの2個打ちを確実に回避できる。
【0061】
なお、実施形態のトランスファ装置1は、多工程圧造機に配設されてワークの反転搬送を可能としているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、ダイス及びパンチを1組有する単工程圧造機でワークを搬入または搬出する用途にも実施でき、また、トランスファ基部が平行移動してワークを非反転で搬送する用途にも実施できる。
【0062】
さらに、実施形態において、フィンガ駆動検出部6の構造は適宜変形でき、これに合わせて近接センサ63の検出タイミング(回転角θ1、θ2)や挟持ミス判定部8の判定基準値D1、D2も適宜変更して設定できる。また、高速補助駆動源にオープンシリンダ7および圧縮空気駆動機構を例示したが、これに限定されない。例えば、油圧駆動機構または電動アクチュエータで駆動される装置を用いてもよい。本発明は、その他にも様々な変形や応用が可能である。