特許第6288713号(P6288713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6288713衛生用紙柔軟剤、紙及び衛生用紙の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288713
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】衛生用紙柔軟剤、紙及び衛生用紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/22 20060101AFI20180226BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20180226BHJP
   D21H 21/24 20060101ALI20180226BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   D21H21/22
   A47K10/16 D
   D21H21/24
   D21H27/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-526758(P2014-526758)
(86)(22)【出願日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2013004458
(87)【国際公開番号】WO2014017073
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2015年5月11日
【審判番号】不服2016-10152(P2016-10152/J1)
【審判請求日】2016年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-164764(P2012-164764)
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 孝治
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 門前 浩一
【審判官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−144271(JP,A)
【文献】 特開2002−155494(JP,A)
【文献】 特開2004−324024(JP,A)
【文献】 特開2005−060891(JP,A)
【文献】 特開2005−344229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H11/00-27/42
A47K10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類とを反応させて得られるアミド化合物とエピハロヒドリン類とを反応して得られるエピハロヒドリン変性物(A)を含有し、固形分濃度15〜70質量%の水性エマルションであり、乾燥物の融点が50℃未満であり、界面活性剤(B)を含有し、粘度(25℃)が300mPa・s以下、かつ、平均粒子径0.1〜10μmであることを特徴とする衛生用紙用柔軟剤。
【請求項2】
下記の抄紙条件で作成した紙の剛度と乾燥比破裂強度から式(1)によって算出された値が0.9以上であることを特徴とする請求項1に記載の衛生用紙用柔軟剤。
(B2/B1)/(S2/S1)・・・(1)
B1・・・紙用柔軟剤無添加の紙の乾燥比破裂強度
B2・・・紙用柔軟剤0.15質量%添加した紙の乾燥比破裂強度
S1・・・紙用柔軟剤無添加の紙のヤング率
S2・・・紙用柔軟剤0.15質量%添加した紙のヤング率
<抄紙条件>
使用パルプ:晒クラフトパルプ(広葉樹/針葉樹=9/1)、濃度2.4質量%、叩解度(CSF)400
乾燥条件:100℃−100秒(ドラムドライヤー)、プレス条件:4.2kgf/cm
坪量:80g/m
【請求項3】
エピハロヒドリン変性物が、ポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類と尿素類とを反応させて得られるアミド化合物とエピハロヒドリン類とを反応して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の衛生用紙用柔軟剤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の衛生用紙用柔軟剤を0.01〜5質量%含有すること特徴とする紙。
【請求項5】
クレープ加工された衛生用紙の製造方法であって、前記衛生用紙は、請求項1〜のいずれか1項に記載の衛生用紙用柔軟剤を0.01〜5質量%含有し、かつ、クレープ加工工程で、pH10における樹脂1gに対するカチオン化度が0.5meq以下であるポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂及び/又はポリアミドポリアミンポリ尿素エピハロヒドリン樹脂をヤンキードライヤーに噴霧することを特徴とするクレープ加工を施した衛生用紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用紙用柔軟剤、紙及び衛生用紙の製造方法に関し、更に詳しくは紙力低下が小さく、優れた風合を付与する衛生用紙用柔軟剤、この衛生用紙用柔軟剤を含有した紙、及びクレープ加工を施した衛生用紙用柔軟剤を含有する衛生用紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ティシュペーパー、トイレットペーパー及びキッチンペーパーなどの衛生用紙には、破れ難く、肌触りが良好であると言った特性が求められている。そのため、紙力低下を小さくさせることができ、しかも優れた風合を付与できる性能に優れた柔軟剤が求められている。
【0003】
紙に柔軟性を付与する薬品としては、ジ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩(特許文献1参照)に代表されるカチオン性柔軟剤や、ポリアルキレンアルキルエーテルなどの非イオン性活性剤(特許文献2,3参照)などが公知である。しかしながら、カチオン性柔軟剤は紙の強度低下が大きく、その使用量に制限があった。また非イオン性界面活性剤は、パルプスラリーに添加した場合に、紙への定着が悪く、その柔軟効果は充分に満足されるものではなかった。またカチオン性のアミド系成分と非イオン性成分とを組み合わせた柔軟剤(特許文献4参照)や、4級アンモニウム塩とアミド化合物とを組み合わせた柔軟剤(特許文献5参照)、脂肪酸アミドエピハロヒドリン樹脂と乳化剤と水とを混合した非エマルション状の柔軟剤(特許文献6参照)も公知であるが、強度の低下は依然として大きく、またその柔軟性も必ずしも充分ではなかった。
【0004】
一方で紙の嵩高剤として、嵩高効果とサイズ性能とを高めるため、50℃以上の融点を有する脂肪酸アミドエピハロヒドリン樹脂のエマルション(特許文献7参照)や、融点が60℃以上の脂肪族カルボン酸を好適な原料として使用することにより得られる脂肪酸アミド尿素エピハロヒドリン樹脂のエマルション(特許文献8参照)が有用であることは公知である。しかしながらこれらの嵩高剤に関して、風合向上に関する記載は認められないばかりか、本願発明者の検討によると風合向上効果に関して満足できるレベルではなかった。このように、紙の風合と紙力との関係につき、紙の柔軟性が高まること、換言すると風合が良好になるとその紙の紙力が低下し、紙力を向上させると紙の柔軟性が低下するという一般的傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63 −165597号公報
【特許文献2】特公昭41−9801号公報
【特許文献3】特開昭56−107072号公報
【特許文献4】特開2004−44058号公報
【特許文献5】特開2006−28670号公報
【特許文献6】特開2010−144271号公報
【特許文献7】特許第4912903号公報
【特許文献8】特許第4231365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紙力の低下を少なくさせることができ、優れた風合を紙に付与する衛生用紙用柔軟剤、衛生用紙用柔軟剤を含有した紙、及びクレープ加工を施した衛生用紙用柔軟剤を含有する衛生用紙の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のアミド化合物にエピハロヒドリン類を反応して得られるエピハロヒドリン変性物及び界面活性剤を含有する、特定の濃度の水性エマルションであり、乾固物の融点が特定値であることを特徴とする衛生用紙用柔軟剤が、紙力低下が小さく、優れた風合を示すことを見出し本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、前記課題を解決するための手段である本発明は、
(I)少なくともポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類とを反応させて得られるアミド化合物とエピハロヒドリン類とを反応して得られるエピハロヒドリン変性物(A)を含有し、固形分濃度15〜70質量%の水性エマルションであり、乾燥物の融点が50℃未満であることを特徴とする衛生用紙用柔軟剤(以下において「衛生用紙用柔軟剤」を「紙用柔軟剤」と称することがある。)
(II)下記の抄紙条件で作成した紙の剛度と乾燥比破裂強度から式(1)によって算出された値が0.9以上である上記(I)の紙用柔軟剤、
(B2/B1)/(S2/S1)・・・(1)
B1・・・紙用柔軟剤無添加の紙の乾燥比破裂強度
B2・・・紙用柔軟剤0.15質量%添加した紙の乾燥比破裂強度
S1・・・紙用柔軟剤無添加の紙のヤング率
S2・・・紙用柔軟剤0.15質量%添加した紙のヤング率
<抄紙条件>
使用パルプ:晒クラフトパルプ(広葉樹/針葉樹=9/1)、濃度2.4質量%、叩解度(CSF)400
乾燥条件:100℃−100秒(ドラムドライヤー)、プレス条件:4.2kgf/cm
坪量:80g/m
(III)界面活性剤(B)を含有し、粘度(25℃)が300mPa・s以下、かつ、平均粒子径0.1〜10μmである上記(I)又は(II)の紙用柔軟剤、
(IV)エピハロヒドリン変性物が、ポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類と尿素類とを反応させて得られるアミド化合物とエピハロヒドリン類とを反応して得られる上記(I)〜(III)の紙用柔軟剤、
(V)上記(I)〜(IV)の紙用柔軟剤を0.01〜5質量%含有する紙、
(VI)クレープ加工された衛生用紙の製造方法であって、前記衛生用紙は、上記(I)〜(IV)のいずれか1項に記載の衛生用紙用柔軟剤を0.01〜5質量%含有し、かつ、クレープ加工工程で、pH10における樹脂1gに対するカチオン化度が0.5meq以下であるポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂及び/又はポリアミドポリアミンポリ尿素エピハロヒドリン樹脂をヤンキードライヤーに噴霧することを特徴とするクレープ加工を施した衛生用紙の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、紙力の低下が少なく、優れた風合を付与する紙用柔軟剤、紙用柔軟剤を含有した紙、及びクレープ加工を施した紙用柔軟剤を含有する衛生用紙の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、少なくともポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類とを反応させて得られるアミド化合物とエピハロヒドリン類とを反応させて得られるエピハロヒドリン変性物(A)及び必要に応じて界面活性剤(B)を含有し、固形分濃度15〜70質量%、好ましくは20〜55質量%の水性エマルションであり、乾固物の融点が50℃未満、好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜45℃であることを特徴とする紙用柔軟剤である。
【0011】
本発明で使用されるエピハロヒドリン変性物(A)は、少なくともポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類との反応によって得られたアミド化合物に、エピハロヒドリン類を反応させることによって得ることができる。また、本発明で使用されるエピハロヒドリン変性物(A)は、少なくともポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類と尿素類との反応によって得られたアミド化合物に、エピハロヒドリン類を反応させることによって得ることもできる。
【0012】
前記ポリアルキレンポリアミン類としては、分子中に少なくとも2個以上のアルキレン基と2個以上のアミノ基を有する化合物であればよく、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、イミノビスプロピルアミン等が挙げられ、これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの中で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが、風合向上効果を好適に奏することができるので好ましい。さらにはテトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。またポリアルキレンポリアミン類と共にエチレンジアミン、プロピレンジアミン又はヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン類、ε−アミノカプロン酸等の炭素数1〜6のアミノカルボン酸類、ε−カプロラクタムのような炭素原子数1〜6のアミノカルボン酸のラクタム類を使用することもできる。
【0013】
本発明に使用される炭素数6〜24のモノカルボン酸類としては、ポリアルキレンポリアミン類と反応することによりアミド化合物を形成できる化合物であればよい。前記炭素数6〜24のモノカルボン酸類のうち好ましくは融点が60℃未満、より好ましくは50℃未満であるモノカルボン酸類が好ましい。融点の低いモノカルボン酸類を選択すると、選択されたモノカルボン酸類と組み合わせるポリアルキレンポリアミン類の選択の幅が広がり、紙の風合を向上させる効果に優れる紙用柔軟剤を製造する自由度が広がる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上併用する場合は、モノカルボン酸類の混合物として融点が60℃未満、より好ましくは10〜50℃未満であると、風合向上効果に優れる紙用柔軟剤が得られる。
【0014】
本発明に使用される炭素数6〜24のモノカルボン酸類としては、炭素数6〜24の脂肪酸またはその誘導体を挙げることができる。炭素数6〜24の脂肪酸としては、直鎖を有する脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。これらの中でラウリン酸、オレイン酸、及びリノール酸が、風合いを向上させる風合向上効果に優れる紙用柔軟剤の形成に寄与して好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0015】
炭素数6〜24の脂肪酸誘導体としては、上記脂肪酸のエステル、酸無水物、酸ハロゲン化物などが挙げられる。脂肪酸のエステルとしては上記各脂肪酸の低級アルコールエステルなどが良く、脂肪酸のメチルエステル、脂肪酸のエチルエステル、及び脂肪酸のプロピルエステルなどが挙げられる。本発明における脂肪酸エステルは、従来から公知の、脂肪酸とアルコールとのエステル化反応により得ることができる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0016】
本発明においては、炭素数6〜24のモノカルボン酸類と共に、脂肪族二塩基性カルボン酸を併用することができる。脂肪族二塩基性カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。また、アルケニル無水コハク酸、及びアルケニルケテンダイマーを併用することもできる。これらの中で工業的に特に好ましいものとしては、アジピン酸、グルタル酸ジメチルエステル、アジピン酸ジメチルエステルが挙げられる。上記の二塩基性カルボン酸類は1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0017】
本発明に使用される尿素類としては、例えば、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、フェニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素等を挙げることができる。これらの中でも尿素が好ましい。
【0018】
エピハロヒドリン類は、エピハロヒドリンのほか、エピハロヒドリンから誘導される1,3−ジハロゲノ−2−プロパノール等のエピハロヒドリン誘導体を含む。エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン等が挙げられ、前記1,3−ジハロゲノー2−プロパノールとしては、例えば、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等が挙げられるが、中でもエピクロロヒドリンが好ましい。
【0019】
本発明に使用されるエピハロヒドリン変性物(A)を得る際に用いるアミド化合物は、ポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類との反応比を、ポリアルキレンポリアミン類の1つのアミノ基に対してモノカルボン酸類0.3〜0.9当量、好ましくは0.4〜0.7当量の範囲となるようにすると、風合向上効果に一層優れた紙用柔軟剤を好適に製造することができる。
【0020】
ポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類とを反応させると、原料仕込み時に発生する反応熱により、又は外部より加えられる熱により脱水反応及び/又は脱アルコール反応が進行する。反応温度は、好ましくは110〜250℃、より好ましくは120〜180℃であり、温度条件等の反応条件はモノカルボン酸類が遊離酸であるか、無水物、エステル等の誘導体であるかに依存する。この際、重縮合反応の触媒として、硫酸、ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等のスルホン酸類、リン酸、ホスホン酸、及び次亜リン酸等のリン酸類、並びにその他公知の触媒を単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。その触媒の使用量は、ポリアルキレンポリアミン1モルに対し、好ましくは0.005〜0.1モル、より好ましくは0.01〜0.05モルである。またポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類との反応を継続する反応時間は、使用原料の種類や比率、反応温度に依存するが、通常30分から10時間である。
【0021】
本発明に使用されるエピハロヒドリン変性物(A)を得る際に用いるアミド化合物は、ポリアルキレンポリアミン類と炭素数6〜24のモノカルボン酸類と尿素類との反応比を、ポリアルキレンポリアミン類の1つのアミノ基に対して、モノカルボン酸類が0.3〜0.9当量、尿素類が0.01〜0.3当量の範囲となるようにすると、風合向上効果に優れた紙用柔軟剤を好適に製造することができる。
【0022】
ポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類と尿素類とを任意の順序で、又は同時に反応させることができる。例えば、ポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類とを反応させてポリアミドポリアミン類を得た後に、得られたポリアミドポリアミン類と尿素類とを反応させる方法、ポリアルキレンポリアミン類と尿素類とを反応させた後にモノカルボン酸類と反応させる方法、ポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類と尿素類とを同時に反応させる方法のいずれでもよい。
【0023】
ポリアルキレンポリアミン類が有するアミノ基、又はポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミドポリアミン類と、尿素類とを反応させるときは、発生するアンモニアを系外に除去しながらアミド交換反応を行う。このときの反応温度は、適度に反応が進行しやすくなる点で、80〜180℃が好ましく、100℃〜160℃がより好ましい。また、ポリアルキレンポリアミン類が有するアミノ基、又は前記ポリアミドポリアミン類が有するアミノ基と、尿素類との反応は、使用原料の種類や比率、反応温度に依存するものの、通常30分から10時間である。
【0024】
ポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類と尿素とを同時に反応させるときは、ポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類とを反応させる前記方法と同様に実施することができる。
【0025】
本発明に使用されるエピハロヒドリン変性物(A)を得る際に用いるエピハロヒドリン類のモル量は、アミド化合物の残存アミノ基の活性水素に対して、0.005〜1.0当量であり、好ましくは、0.01〜0.8当量である。エピハロヒドリン類のモル量がこの範囲にあると、風合向上効果に優れ、経時安定性が良好な紙用柔軟剤を得ることができる。
【0026】
ここで、アミド化合物の残存アミノ基はアミン価を測定して算出することができる。
残存アミノ基=アミン価=(V ×F ×0.5 ×56.1 )/S
但し、V :1 /2 規定塩酸メタノール液の滴定量(cc)
F :1 /2 規定塩酸メタノール液の力価
S :採取した試料の固形分量(g)
【0027】
本発明の紙用柔軟剤を得るために、上記のようにして得られたアミド化合物とエピハロヒドリン類とを20〜100℃で反応させる。反応溶媒として水又は水と有機溶剤との混合溶媒を用いることができる。本発明で得られる紙用柔軟剤のエマルションを安定化するために、アミド化合物及び反応溶媒のいずれか一方又は両方に界面活性剤を添加し、混合しておくことが好ましく、さらにDCP(1,3−ジクロロ−2−プロパノール)等の低分子有機塩素化合物の低減のため、次のような1次反応及び2次反応を行うことが好ましい。
【0028】
1次反応においては、反応溶媒として水又は水と有機溶剤との混合溶媒を用い、アミド化合物と反応溶媒との混合物を20〜59℃に保ち、そこへエピハロヒドリンを添加して反応を進行させる。エピハロヒドリンを添加した後、さらに反応温度を20℃〜59℃に保ち、反応を進める。これら一連の反応を便宜上1次反応と称する。1次反応の時間は5分〜3時間が好ましい。5分未満の反応時間では、紙用柔軟剤中のDCPの含有量を低くする効果が十分得られず、一方、1次反応時間が3時間を超えても得られる紙用柔軟剤中のDCPの含有量はあまり低下せず、単に反応時間が延びるだけであって経済的でない。
【0029】
2次反応においては、1次反応で反応させた後、60℃〜100℃に昇温し、その温度に保ちつつ反応を進める。1次反応後におけるこの反応を便宜上2次反応と称する。2次反応の反応時間は反応が完結するのに十分な時間行えば良く、通常、15分〜5時間である。
【0030】
本発明に使用される反応溶媒としては水、又は水及び有機溶剤の混合溶媒が使用される。有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数1〜5、又は炭素数1〜3の低級アルコールが挙げられ、この中でもイソプロピルアルコールが好ましい。これらは一種単独で水と混合しても良いし、二種以上を併用して水と混合しても良い。水と有機溶剤との使用量、及び混合比率は、反応温度でアミド化合物を均一に溶解、分散させるのに必要な量、又は混合比をもって決定すれば良く、通常アミド化合物とエピハロヒドリン類との反応は、アミド化合物の濃度が5〜90質量%、反応溶媒が水単独又は水/有機溶剤=100/0.1〜100gの混合溶媒を用いて行われる。
【0031】
本発明で使用する界面活性剤(B)としては、炭素数4〜20のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する界面活性剤が、乳化力に優れるために、好ましい。界面活性剤のイオン性は、例えば、非イオン界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。この中でも非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を用いることが好ましく、特にカチオン性界面活性剤は、パルプ繊維への定着向上に優れ、かつ抄紙系内での発泡軽減に寄与するために、好ましい。界面活性剤は、エピハロヒドリン類との反応前のアミド化合物に加えるか、アミド化合物とエピハロヒドリン類との反応途中、又はアミド化合物とエピハロヒドリン類との反応終了後に加えることができ、紙用柔軟剤中において0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%の範囲で使用することが好ましい。界面活性剤の含有量が10質量%よりも多くなると抄紙時の発泡軽減が難しくなる。
【0032】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、炭素数4〜20のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミド、各種ポリアルキレンオキサイド型ノニオン性界面活性剤(脂肪酸アルキレンオキサイドソルビタンエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、ポリオキシアルキレン脂肪族メルカプタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル等)が挙げられる。これらの中でも、乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物が好ましく、さらにアルキレンオキサイドがアルキレンオキサイド付加物1分子中に1〜20モル付加しているアルキレンオキサイド付加物が好ましい。アルキレンオキサイド付加物中に結合するアルキレンオキサイドのアルキレン基の炭素数は、2〜4が特に好ましい。好適なノニオン性界面活性剤は、下記一般式(1)で表される。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0033】
一般式(1)
【化1】

(但し、式中、−A11−は−O−又は−COO−を示し、R11は炭素数6〜24のアルキル基又は炭素数6〜24のアルケニル基を示し、R12は炭素数6〜24のアルキル基若しくは炭素数6〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアルキル基若しくは炭素数6〜24のアルケニル基を有するアシル基、又は水素基を示し、B11Oはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を示し、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とのいずれか、又は両方が付加していても良く、kは1〜100、好ましくは10〜80である。なお、kは平均付加モル数である。)
【0034】
上記一般式(1)で表される化合物は、例えば炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のアルコール又は炭素数が6〜24、好ましくは10〜22の脂肪酸1モルにエチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドを付加して得ることができ、さらに前記アルキレンオキサイド付加物を炭素数が6〜24、好ましくは10〜22の脂肪酸1モルでエステル化するか、炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のアルコールを炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のハロゲン化アルキル1モルでエーテル化して得ることができる。エチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドの付加形態はランダムでもブロックでも良く、炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のアルコール又は炭素数6〜24、好ましくは10〜22の脂肪酸1モルに対して1〜100モル、好ましくは10〜80モルの割合で付加される。
【0035】
炭素数が6〜24のアルコールとしては、直鎖アルコール、分岐鎖を有するアルコール、飽和アルコール、及び不飽和アルコールの何れでも良い。これら各種のアルコールの中でも炭素数が10〜22のアルコールが好ましく、特に、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールが好ましい。炭素数が6〜24の脂肪酸としては、ベヘン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸が好ましい。炭素数が6〜24のアルコール及び炭素数が6〜24の脂肪酸はその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0036】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレングリセリルイソステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのラウリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのミリスチン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのセチル酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのステアリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのオレイン酸ジエステル、及びポリオキシエチレンオレイルアミド等が挙げられる。
【0037】
上記一般式(1)で表される化合物としては、具体的にはポリオキシエチレンベヘニルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルのオレイン酸エステル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテルのオレイン酸エステル等が挙げられ、また上記オレイン酸エステルの部分が、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、セチル酸エステル、ステアリン酸エステル、及びベヘン酸エステル等の他の脂肪酸エステルであっても良い。
【0038】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル基の炭素数が4〜20である長鎖アルキルアミン塩、アルケニル基の炭素数が4〜20である長鎖アルケニルアミン塩、ポリオキシアルキレンアミン、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリウム塩、アルキルホスホニウム塩、及びアルキルスルホニウム塩等が挙げられ、これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、さらにアルキレンオキサイドとして乳化剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましい。アルキレンオキサイドのアルキレン基の炭素数が2〜4であることが特に好ましい。長鎖アルキルアミン塩及び長鎖アルケニルアミン塩はとして、ポリオキシアルケニレンアミン、テトラアルケニル4級アンモニウム塩、トリアルケニルベンジル4級アンモニウム塩、アルケニルイミダゾリウム塩、アルケニルピリジニウム塩、アルケニルキノリウム塩、アルケニルホスホニウム塩、アルケニルスルホニウム塩を挙げることができる。また、カチオン性界面活性剤として、下記一般式(2)〜(5)で表わされる化合物を好適例として挙げることができる。
【0039】
一般式(2)
【化2】
一般式(2)中、R21は炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基を示し、B21O及びB22Oそれぞれはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を示し、(B21O)はオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのいずれかのみ、またはそれらの両方が付加していても良く、また(B22O)はオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのいずれかのみ、またはそれらの両方が付加していても良い。l及びmは平均付加モル数でありlとmの合計は1〜100、好ましくは10〜80、さらに好ましくは10〜60であることを示す。
上記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、ポリオキシエチレンベヘニルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンセチルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルアミン、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルアミンなどが挙げられる。
【0040】
一般式(3)
【化3】
一般式(3)中、R31及びR32は炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基を示し、B31Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を示し、(B31O)はオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのいずれかのみ、またはそれらの両方が付加していても良く、nは平均付加モル数であり、1〜100、好ましくは10〜80、さらに好ましくは10〜60であることを示す。
【0041】
上記一般式(3)で表される化合物としては、具体的にはポリオキシエチレンジベヘニルアミン、ポリオキシエチレンジステアリルアミン、ポリオキシエチレンジオレイルアミン、ポリオキシエチレンジセチルアミン、ポリオキシエチレンジラウリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジベヘニルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジステアリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジセチルアミン、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジラウリルアミンなどが挙げられる。
【0042】
一般式(4)
【化4】

一般式(4)中、R41は炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基を示し、Yは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、B41O、B42O及びB43Oそれぞれはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を示し、(B41O)、(B42O)及び(B43O)それぞれは、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とのいずれかのみ、またはそれらの両方が付加していても良く、o〜qは平均付加モル数でありo〜qの合計が1〜100、好ましくは10〜80、さらに好ましくは10〜60であることを示す。
【0043】
上記一般式(4)で表される化合物としては、具体的にはポリオキシエチレンベヘニルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンステアリルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンオレイルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンセチルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンラウリルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルプロピレンジアミン、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルプロピレンジアミンが挙げられる。
【0044】
一般式(5)
【化5】
(但し、式中、Rは炭素数6〜22のアルキル基又は炭素数6〜22のアルケニル基を、RとRとは(EO)(PO)H、炭素数1〜22のアルキル基、及び炭素数1〜22のアルケニル基から選ばれる1種を示し、かつRとRとは同一又は相異していてもよく、前記Eはエチレン基を示し、前記Pはプロピレン基を示し、mとnとの合計は1〜60であり、Xは陰イオンである。エチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドの付加形態はランダムでもブロックでも良い。なお、m及びnは平均付加モル数である。)
【0045】
上記一般式(5)で表される第4級アンモニウム塩としては、具体的にはトリメチルモノラウリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノセチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノオレイルアンモニウムクロライド、トリメチルモノベヘニルアンモニウムクロライド、ジメチルジラウリルアンモニウムクロライド、ジメチルジセチルアンモニウムクロライド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ジメチルジベヘニルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジオレイルアンモニウムクロライド、及びビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノオレイルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0046】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアラルキルアリール硫酸エステル塩、アルキル─アリールスルホン酸塩及び各種スルホコハク酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、さらにアルキレンオキサイドとして乳化剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましい。アルキレンオキサイドのアルキル基の炭素数が2〜4であることが特に好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルリン酸塩、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
【0047】
両性乳化剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミノカルボン酸塩系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物が好ましく、さらにアルキレンオキサイドがアルキレンオキサイド付加物1分子中に1〜20モル付加しているアルキレンオキサイド付加物が好ましい。アルキレンオキサイド付加物中のアルキレンオキサイドにおけるアルキル基の好適な炭素数は2〜4である。好適な両性乳化剤として具体的には、2−オレイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、及びラウリルアミノプロピオン酸塩などが挙げられる。
【0048】
エピハロヒドリン変性物は従来公知の方法で反応溶媒中に分散させることができる。従来公知の分散方法としては、転相乳化法、界面活性剤(B)を添加することによる方法、あるいは界面活性剤(B)を添加した後の転相乳化法、また機械的な分散方法を挙げることができる。これらは単独でも二種以上の方法を併用しても差し支えない。機械的な分散方法としては、ホモミキサー、高圧吐出型ホモジナイザー、高剪断型回転式乳化分散機、超音波乳化機等の各種公知の乳化機により均一に分散させる方法が挙げられる。
【0049】
本発明の好適な紙用柔軟剤は、水性エマルションに固形分となって分散しているエピハロヒドリン変性物の濃度は、15〜70質量%であり、この範囲外であると製造や輸送コストの悪化や水への希釈分散性の悪化を招く恐れがある。
【0050】
本発明の紙用柔軟剤の乾燥物の融点は50℃未満、好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜45℃であり、融点が50℃よりも高いと優れた風合向上効果が得られない。乾燥物は、水性エマルションを凍結乾燥することにより水分を取り除くことによって得ることができる。融点は、示差走査熱量計(DSC)で融解熱の熱収支を測定することで求めることができる。
【0051】
本発明の好適な紙用柔軟剤の粘度(B型粘度計を用いて25℃にて測定)は、300mPa・s以下、好ましくは10〜300mPa.sである。この範囲外であると、貯蔵時に多層分離を引き起し、又は水への希釈分散性の悪化を招く恐れがある。
【0052】
本発明の好適な紙用柔軟剤においては、水性エマルション中に分散されている固形分の平均粒子径が0.1〜10μm、好ましくは0.3〜5μmである。この範囲外であると、貯蔵時に多層分離を引き起こす場合や十分な風合向上効果が得られない恐れがある。
【0053】
本発明の紙用柔軟剤は、紙料(パルプスラリー)に添加(内添)して使用してもよく、原紙の表面に塗工(外添)して使用しても良い。更に、本発明の紙用柔軟剤を紙料に添加し、次いで抄紙し、乾燥して得られた原紙の表面に本発明の紙用柔軟剤を塗工するようにして、本発明の紙用柔軟剤を使用しても良い。何れの使用によっても、この紙用柔軟剤は、紙の柔軟性を向上させることができる。
【0054】
本発明の紙用柔軟剤を紙料に添加して使用する場合、その使用方法は特に制限はなく、工業水などにより希釈して添加することもでき、そのまま添加することもできる。いずれの場合も、本発明の紙用柔軟剤を用いること以外は、一般的な紙の製造方法と同様の方法を採用できる。
【0055】
本発明の紙用柔軟剤は内添及び/又は外添によって、通常、パルプ固形分に対し固形分で0.01〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%の割合で紙に添加されればよい。この範囲外であると、十分な風合向上効果が得られない場合や、紙の著しい強度低下を招く恐れがある。紙の風合向上効果が得られ易い内添が好ましい。
【0056】
特に本発明の紙用柔軟剤内添紙として、下記の抄紙条件で作成した紙のヤング率と乾燥比破裂強度から式(1)によって算出された値は0.9以上が好ましく、さらには0.9以上1.1未満が好ましく、上記範囲外であると柔軟性向上効果が得られない場合や著しい紙の強度低下を招く恐れがある。また式(1)の(B2/B1)の値が0.7以上、好ましくは0.75〜0.95であり、式(1)の(S2/S1)の値が0.95未満、好ましくは0.8〜0.95である。
(B2/B1)/(S2/S1)・・・(1)
B1・・・紙用柔軟剤無添加の紙の乾燥比破裂強度
B2・・・紙用柔軟剤0.15質量%添加した紙の乾燥比破裂強度
S1・・・紙用柔軟剤無添加の紙のヤング率
S2・・・紙用柔軟剤0.15質量%添加した紙のヤング率
<抄紙条件>
使用パルプ:晒クラフトパルプ(広葉樹/針葉樹=9/1)、濃度2.4質量%、叩解度(CSF)400
乾燥条件:100℃−100秒(ドラムドライヤー)、プレス条件:4.2kgf/cm
坪量:80g/m
【0057】
本発明の紙用柔軟剤を含有する紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、及び感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、及び上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、及び純白ロール紙等の包装用紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、及びキッチンペーパーなどの衛生用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、及び新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、及びチップボール等の紙器用板紙、並びにライナー、及び石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。この中でも特に衛生用紙が好ましく、衛生用紙の中でも、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、及びキッチンペーパーなどのクレープ加工を施した紙が特に好ましい。
【0058】
本発明の紙用柔軟剤を用いてティッシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、及びキッチンペーパーなどの衛生用紙を製造する場合は、クレープ加工の段階で、ヤンキードライヤー表面への繊維ウェブの接着力を制御するために、クレープ用接着剤及び/又はクレープ用剥離剤をヤンキードライヤーの表面に直接スプレーすることが好ましい。中でもクレープ用接着剤としては、pH10における樹脂1gに対するカチオン化度が0.5meq以下、特に0.4meq以下のポリアミドエピクロロヒドリン樹脂及び/又はポリアミドポリ尿素エピクロロヒドリン樹脂が好ましい。この範囲外のクレープ用接着剤を使用すると、ドライヤーへの繊維ウェブの接着力が十分得られない場合がある。クレープ用剥離剤としては、例えば、シリコーンオイル、炭化水素油、酸化ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、ピロリドン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ポリエチレングリコール、及びジプロピレングリコール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
クレープ用接着剤をヤンキードライヤーの表面に直接スプレーする場合、クレープ用接着剤を10〜1000倍に希釈して使用することが好ましく、スプレー量は樹脂の固形分基準で0.01〜500mg/m、特に0.1〜300mg/mが好ましい。
【0060】
紙用柔軟剤を含有する衛生用紙としては、紙用柔軟剤をクレープ剤と混合してヤンキードライヤー表面に直接スプレーし、ヤンキードライヤーを通じて紙用柔軟剤を衛生用紙に含有することも可能である。
【0061】
紙用柔軟剤を含有する衛生用紙は、紙用柔軟剤を含有する塗布液を紙に塗布することによっても得ることができ、抄紙工程のウェブ形成後や予め抄紙機で抄造したウェブに二次工程で塗布することができる。紙用柔軟剤を含有する塗布液を薄葉紙に塗布する方法としては、従来公知の方法、例えば、ロール転写法、スプレー塗布法等の任意の方法を採用できる。
【0062】
紙用柔軟剤を含有する塗布液は、紙用柔軟剤単独、又は紙用柔軟剤やその他の薬剤と混合して調製することができる。その他の薬剤としては、多価アルコール、及び炭化水素などが挙げられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、及び糖などが挙げられる。炭化水素としては、鉱物油、流動パラフィン、動物ワックス、植物ワックス、鉱物ワックス、石油ワックス等の天然ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、カスターワックス、ポリエチレンワックス、及びポリプロピレンワックス等の合成ワックスなどが挙げられる。
【0063】
本発明の紙用柔軟剤を含有する衛生用紙としては、風合いを良好にするため、紙の坪量を10〜45g/m、紙の密度を0.1〜0.4g/cmにするのが好ましい。風合の良好なトイレットペーパー、及びティシュペーパーを得るには、密度を0.2〜0.3g/cmとするのが良い。本発明の紙用柔軟剤を含有させることにより風合の良好な衛生紙とするには、通常、その衛生紙の縦方向の乾燥裂断長(JIS P 8113)をが0.3〜2.5kmにするのが好ましく、衛生紙がトイレットペーパー、及びティシュペーパーであれば縦方向の乾燥裂断長(JIS P 8113)を0.2〜0.8kmにするのが好ましい。衛生用紙は水分を吸い取る紙として使用される。本発明の紙用柔軟剤を含有させることにより良好な吸水性を有する衛生紙を得るには、吸水度(日本工業規格JIS S 3104)を用紙2枚重ねで1〜10秒にするのが好ましく、また、JIS P 8111で規定する条件で調湿し、JIS P 8127で測定した水分率を5〜15%にするのが好ましい。さらにJIS P 8111で規定する条件で調湿し、ソフトネスが0.7〜6.5cN/100mm、摩擦係数の平均偏差であるMMDが表裏いずれも0.05〜0.1の範囲であると衛生用紙の風合いが良好になるため好ましい。ここでソフトネスは、JAPAN TAPPI No.34に準じ、クリアランスを20mmとして測定した値である。MMDは、カトーテック株式会社製「摩擦感テスター KES SE」を用いて測定することができる。具体的には直径0.5mmのピアノ線端子の束からなる10mm角の端子を、20g/cmの張力で固定された測定紙料に、接触圧25g/cmで接触させながら、張力が付与された方向と同じ方向に速度0.1cm/sで前記端子を2cm移動させたときの摩擦係数の平均偏差の値をMMDとする。
【0064】
本発明の紙用柔軟剤を含有する紙はパルプ原料としてクラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプを含有することができる。また、上記パルプ原料とポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有してもよい。
【0065】
本発明の紙を製造するにあたって、填料、サイズ剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、嵩高剤、紙厚向上剤、不透明化剤、及び濾水性向上剤などの添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、これらを本発明の紙用柔軟剤と予め混合して紙料に添加して使用することもでき、混合の方法は特に制限はない。
【0066】
填料としては、クレー、タルク、及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0067】
サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのような脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン、及びロジンエステル系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション、2−オキセタノンの水性エマルション、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0068】
乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。
【0069】
湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。また、湿潤紙力向上剤は本発明の紙用柔軟剤を添加する前、添加した後、あるいは同時に添加して使用しても良い。
【0070】
歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0071】
濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、又はカチオン性、両性若しくはアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0072】
また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、又はカレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール、及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、防滑剤、並びに多価アルコール系の保湿剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0073】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて質量%である。
【0074】
<粒子径測定>
乳化により得られたエマルションについて、レーザー光散乱式粒度分布計マイクロトラックMT3300(株式会社堀場製作所製)を用いて重量平均粒子径を測定した。
【0075】
<分散性の評価試験>
以下の操作により分散性の評価を行った。
30ミリリットルのビーカーに水20ミリリットルを入れる。軸長30cm及び直径7mmの回転子を300rpmの回転数で回転させることにより、ビーカ内の水の温度を25℃に維持しつつ、ビーカ内の水を撹拌しながら、実施例1記載の紙用柔軟剤100マイクロリットルを前記水に添加する。添加後からビーカ内の内容物が目視にて均一になるまでの時間を測定した。時間が短いほど分散性に優れることを示す。
分散性が120秒以上であると抄紙系内に未分散の紙用柔軟剤が紙に付着し、紙の品質を損なう恐れがある。分散性が60秒以上120秒未満、さらに好ましくは10秒以上30秒未満であれば、上記のような紙の品質を損なう可能性が低くなる。特に分散性が10秒未満であれば上記のような現象はほとんど生じなくなる。
評価:◎・・・10秒未満で分散したもの、
○・・・10秒以上30秒未満で分散したもの、
△・・・60秒以上120秒未満、
×・・・120秒以上
【0076】
実施例1
温度計、還流冷却器、攪拌機、及び滴下ロートを備えた3L四つ口丸底フラスコに、ポリアルキレンポリアミン類としてジエチレントリアミン103g(1.0mol)、炭素数6〜24のモノカルボン酸類としてヤシ油オレイン酸{オレイン酸/リノール酸/パルミチン酸(混合重量比70/20/10)}559g(2mol)を徐々に加えた。180℃まで昇温し、生成する水を系外に除去しながら3時間反応させてアミド化合物を得た。得られたアミド化合物の残存アミノ基量は1.6mmol/gであった。
次いで上記アミド化合物100g(アミノ基として0.16mol)とポリオキシエチレン(45)ステアリルアミン(カチオン性界面活性剤、上記一般式(2)に該当。カッコ内の数値はポリオキシエチレンの平均付加モル数を示す。)5gと水100gとエピハロヒドリン類としてエピクロロヒドリン5.9g(0.064mol)とを50℃で加えて30分間撹拌した。続いて反応液を70℃にして1時間反応させた後、反応液を冷却しながら、固形分濃度が30質量%になるように水を加えて、紙用柔軟剤を得た。紙用柔軟剤の固形分濃度、粘度、融点、粒子径、分散性の評価結果を表1に示す。
【0077】
実施例2〜6
実施例1のポリアルキレンポリアミン類及び炭素数6〜24のモノカルボン酸類の種類と反応比率並びにアミド化合物とエピハロヒドリン類との反応比率を表1に示したものに変更し、固形分が表1の濃度となるように水を加えた以外は実施例1と同様にして紙用柔軟剤を得た。なお、表1中の界面活性剤の名称のカッコ内の数値はポリオキシエチレンの平均付加モル数を示す。なお、表1における「紙用柔軟剤の性状」に関する「濃度 質量%」は固形分の濃度及び質量%を意味し、表2以下においても同様である。
【0078】
【表1】
ポリオキシエチレン(50)ステアリルプロピレンジアミン・・・カチオン性界面活性剤上記一般式(4)に該当
【0079】
実施例7
温度計、還流冷却器、攪拌機、及び滴下ロートを備えた3L四つ口丸底フラスコに、ポリアルキレンポリアミン類としてテトラエチレンペンタミン189g(1.0mol)、炭素数6〜24のモノカルボン酸類としてヤシ油オレイン酸{オレイン酸/リノール酸/パルミチン酸(混合重量比70/20/10)}838g(3mol)を徐々に加えた。180℃まで昇温し、生成する水を系外に除去しながら3時間反応させた。続いて反応液を150℃にし、尿素類として尿素9.0g(0.15mol)加え、30分間反応させてアミド化合物を得た。得られたアミド化合物の残存アミノ基量は1.7mmol/gであった。
次いで上記アミド化合物100g(アミノ基として0.24mol)とポリオキシエチレン(45)ステアリルアミン(カチオン性界面活性剤、上記一般式(2)に該当)5gと水1000gとエピハロヒドリン類としてエピクロロヒドリン3.8g(0.041mol)とを50℃で加えて30分間撹拌した。続いて反応液を70℃にして1時間反応させた後、反応液を冷却しながら、固形分濃度が30質量%になるように水を加えて調整し、紙用柔軟剤を得た。紙用柔軟剤の固形分濃度、粘度、融点、粒子径、分散性の評価結果を表2に示す。
【0080】
実施例8〜18
前記実施例7のポリアルキレンポリアミン類、炭素数6〜24のモノカルボン酸類及び尿素類の種類と反応比率並びにアミド化合物とエピハロヒドリン類との反応比率を表2〜表4に示したものに変更し、固形分濃度が表2の濃度となるように水を加えて調製した以外は実施例7と同様にして紙用柔軟剤を得た。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
表4中の界面活性剤は以下のようになっており、カッコ内の数値はポリオキシエチレンの平均付加モル数をしめしている。
ポリオキシエチレン(20)ラウリルアミン・・・カチオン性界面活性剤上記一般式(2)に該当
POE(60)OE(ポリオキシエチレン(60)オレイルエーテルの略)・・・ノニオン性界面活性剤に該当
POEPOPMSEO(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンミリスチルエーテルのオレイン酸エステルの略)・・・ノニオン性界面活性剤に該当
ポリオキシエチレン(50)ステアリルプロピレンジアミン・・・カチオン性界面活性剤上記一般式(4)に該当
DSDMAC(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドの略)・・・カチオン性界面活性剤上記一般式(5)に該当
【0084】
比較例1〜3
前記実施例1のポリアルキレンポリアミン類及び炭素数6〜24のモノカルボン酸類の種類と反応比率並びにアミド化合物とエピハロヒドリン類との反応比率を表5に示したものに変更し、固形分濃度が表5の濃度となるように水を加えて調製した以外は実施例1と同様にして紙用柔軟剤を得た。
比較例1はエピハロヒドリン変性物を含有しない例であり、比較例2は固形分濃度が70質量%を超える例であり、比較例3は乾燥物の融点が50℃以上である例である。
【0085】
比較例4〜6
前記実施例のポリアルキレンポリアミン類、炭素数6〜24のモノカルボン酸類及び尿素類の種類と反応比率並びにアミド化合物とエピハロヒドリン類との反応比率を表6に示したものに変更し、固形分濃度が表6の濃度となるように水を加えて調製した以外は実施例7と同様にして紙用柔軟剤を得た。
比較例4はエピハロヒドリン変性物を含有しない例であり、比較例5は固形分濃度が70質量%を超える例であり、比較例6は乾燥物の融点が50℃以上である例である。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
表6中の略号
※1 製造後撹拌を止めると、紙用柔軟剤の成分が多層分離した。水に均一に希釈分散しなかったため、融点、粘度、粒子径、分散性を測定することができなかった。
※2 ペースト状の紙用柔軟剤が得られたため、粘度を測定することができなかった。また上記紙用柔軟剤が水に均一に希釈分散しなかったため、粘度、粒子径、分散性を測定することができなかった。
【0088】
比較例7(特許第4231365号の実施例5に相当)
反応器にベヘン酸476.8g(1.4mol)とテトラエチレンペンタミン189g(1.0mol)とを仕込み、窒素気流下、160〜200℃にて5時間脱水反応を行ない中間アミド化合物を得た。次に、反応器に尿素48.0g(0.8mol)を仕込み、170℃にて3時間反応させ、尿素による架橋反応を行なった。続いて90℃まで冷却し、エピクロルヒドリン92.5g(1.0mol)を95℃に保ちながら滴下した。滴下終了後、温度を95℃に保ちながら3時間反応させ、その後、水7032.6gを添加し、10質量%の固形分濃度を有する紙用柔軟剤を得た。
【0089】
比較例8(特許第4948891号のNo.2-5に相当)
2L4つ口フラスコにステアリン酸213g(0.75mol)を入れ、窒素雰囲気下で70℃に加熱し、次にテトラエチレンペンタミン(試薬)を189g(1.0mol)加えて150℃まで昇温して、4時間脱水反応を行った。続いて130℃に冷却してエピクロロヒドリン(試薬)7.4g(0.08mol)を滴下して加えて3時間攪拌した後、尿素(試薬)30g(0.5mol)を滴下して加え、155℃に昇温し、10時間反応を行った。得られた反応混合物を120℃に保持し、酢酸(試薬)7.3gを滴下混合して固形分濃度が30質量%であり、乾燥物の融点が62℃である紙用柔軟剤を得た。
【0090】
比較例9(特開2010-144271の実施例8に相当)
温度計、冷却器、撹拌機、及び窒素導入管を備えた500ml四つ口丸底フラスコに、テトラエチレンペンタミン85.5g (アミン価1320 0.4mol)、オレイン酸335g(1.20mol)を仕込み170℃まで昇温し、生成する水を除去しながら7時間反応させた。このアミド化合物200.0gを温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた500mlの四つ口フラスコに仕込み、80℃まで昇温した後、エピクロロヒドリン14.9g(0.16mol 残存アミノ基に対して0.4当量)を加え、80℃にて4時間反応させて、エピクロロヒドリン変性物を得た。
上記にて得られたエピクロロヒドリン変性物 25gに対して、オレイン酸ポリオキシエチレン(4)ポリオキシプロピレン(12)オレイルエーテル27.5g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル(平均分子量500、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン=70/30)27.5g、次いで水20gを加えて、50℃で30分攪拌機にて混合して固形分濃度が80質量%である紙用柔軟剤を得た。
【0091】
比較例10
前記実施例7の炭素数6〜24のモノカルボン酸類の代わりにペンタン酸を使用した以外は反応比率を表7に示したものに変更し、固形分濃度が表7の濃度となるように水を加えて調製した以外は実施例7と同様にして紙用柔軟剤を得た。
【0092】
【表7】
表7中の略号
※3は エマルションではなく、溶液として紙用柔軟剤が得られたことを示す。
【0093】
<手抄き紙の調製及び紙質評価結果>
実施例1−1〜18−1、比較例3−1、6−1〜10−1
晒クラフトパルプ(広葉樹/針葉樹=9/1)を叩解度(CSF)400に調整した濃度2.4質量%の紙料に、実施例1〜18、比較例3、6〜10で調製した紙用柔軟剤を、対パルプ固形分当たり0.15質量%になるように添加した。撹拌の後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量80g/mの手抄き紙を得た。実施例1の紙用柔軟剤を用いて得られた手抄き紙を実施例1−1とし、実施例2以後の実施例に係る紙用柔軟剤を用いて得られた手抄き紙について同様の付番にした。得られた手抄き紙のヤング率と乾燥比破裂強度とを測定し、式(1)によって算出した値が0.85以上であるかを確認した。測定結果を表8に示す。比較例1、2、4、5の紙用柔軟剤は固化又は分離しているため、均一にサンプルを採取し、パルプスラリーに添加することができなかったため、手抄き紙を調製できなかった。
(B1/B2)/(S1/S2)・・・(1)
B1・・・紙用柔軟剤無添加の紙の乾燥比破裂強度
B2・・・紙用柔軟剤0.15質量%添加した紙の乾燥比破裂強度
S1・・・紙用柔軟剤無添加の紙のヤング率
S2・・・紙用柔軟剤0.15質量%添加した紙のヤング率
密度: JIS P8118に準拠
乾燥比破裂強度: JIS P8112に準拠
ヤング率:野村商事製 配向性測定器SST−2500により超音波伝播速度 Vを測定し、下記式よりヤング率を求めた。数値が低いほど紙が柔軟になったことを示す。
ヤング率∝ρV (ρ:密度)
【0094】
<抄紙条件>
使用パルプ:晒クラフトパルプ(広葉樹/針葉樹=9/1)、叩解度(CSF)400
乾燥条件:100℃−100秒(ドラムドライヤー)、プレス条件:4.2kgf/cm−5分
坪量:80g/m
【0095】
【表8】
【0096】
<紙用柔軟剤塗布紙の調製及び風合の評価結果>
実施例1−2〜18−2、比較例4−2、7−2〜11−2
ティシュペーパー(パルプ:晒化学パルプ、坪量11g/m、湿潤紙力剤としてポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ固形0.08%内添)2枚一組に、紙用柔軟剤の濃度が1質量%となる様に水で希釈して成る希釈水溶液を、紙に対する固形分が0.3質量%となるように、エアスプレーで均一に塗布し、オーブンにて100℃10分間乾燥後、温度23℃、湿度50%RHの条件下で24時間調湿させることで、柔軟処理をしたティッシュペーパーを得た。
【0097】
実施例1−3〜18−3、比較例3−3、6−3〜10−3
トイレットペーパー(パルプ:晒化学パルプ 坪量22g/m) 1枚に、紙用柔軟剤の濃度が1質量%となる様に水で希釈して成る希釈水溶液を、紙に対する固形分が0.3質量%となるように、エアスプレーで均一に塗布し、オーブンにて100℃10分間乾燥後、温度23℃、湿度50%RHの条件下で24時間調湿させることで、柔軟処理をしたトイレットペーパーを得た。
比較例1、2、4、5の紙用柔軟剤は固化又は分離しており、紙に均一に塗布ができなかったため、塗布紙を調製できなかった。
【0098】
<風合いの評価>
上記で得られた、柔軟処理をしたティッシュペーパー及び柔軟処理をしたトイレットペーパーを握り、10人中8人以上が触り心地を良いと感じた紙を◎、10人中5人以上8人未満が触り心地を良いと感じた紙を○、10人中5人以上が触り心地を悪いと感じた紙を×、上記以外を△とし、風合いを3段階評価した。結果を表9に示す。表9における「ティッシュ」は「柔軟処理をしたティッシュペーパー」を意味し、「トイレット」は「柔軟処理をしたトイレットペーパー」を意味する。
評価:風合優れる ◎←○←△←× 風合劣る
【0099】
【表9】
【0100】
紙用柔軟剤を内添又はヤンキードライヤー前に外添する場合、ヤンキードライヤーにおけるクレープ加工のし易さを比較するために、上記実施例1〜18の紙用柔軟剤が各種クレープ用接着剤の接着力に及ぼす影響について評価した。結果を表10に示した。接着力が優れるほど、紙用柔軟剤とクレープ用接着剤の組み合わせとしては好ましいと評価することができる。
【0101】
<クレープ用接着剤の製造>
製造例1
温度計、冷却器、撹拌機及び窒素導入管を備えた500mL四つ口丸底フラスコにジエチレントリアミン108.4g(1.05モル)を仕込み、攪拌しながらアジピン酸146.1g(1モル)を加え、生成する水を系外に除去しながら昇温し、170℃で3時間反応を行った。次いで水を徐々に加えて固形分濃度50質量%のポリアミドポリアミン樹脂水溶液(A1)を得た。
【0102】
製造例2
温度計、還流冷却器、撹拌機、及び滴下ロートを備えた別の1L四つ口フラスコに、ポリアミドポリアミン樹脂水溶液(A1)200g(第2級アミノ基として0.53モル)を仕込み、20℃でエピクロロヒドリン7.3g(0.079モル)を加えた後、30℃に加熱して30分間30℃に保持した。次いで、水304gを加えて、50℃まで加熱して粘度が50mPa・s(25℃)に到達するまで50℃で保持した後、水を加えて固形分濃度20質量%のクレープ用接着剤(1)を得た。pH10のカチオン化度は0.08meq/固形分1gであった。
【0103】
製造例3
温度計、冷却器、撹拌機、及び窒素導入管を備えた500mL四つ口丸底フラスコにジエチレントリアミン108.4g(1.05モル)を仕込み、攪拌しながらアジピン酸146.1g(1モル)を加え、生成する水を系外に除去しながら昇温し、170℃で3時間反応を行った。次いで、反応液を130℃まで冷却し、尿素18g(0.3モル)を加えて130℃で2時間脱アンモニア反応を行った後、水を徐々に加えて固形分濃度50質量%のポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂水溶液(C1)を得た。
【0104】
製造例4
温度計、還流冷却器、撹拌機、及び滴下ロートを備えた別の1L四つ口フラスコに、ポリアミドポリアミンポリ尿素樹脂水溶液(C1)200g(第2級アミノ基として0.37モル)を仕込み、20℃でエピクロロヒドリン6.8g(0.074モル)を加えた後、30℃に加熱して30分間30℃で保持した。次いで、水302gを加えて、50℃まで加熱して粘度が50mPa・s(25℃)に到達するまで50℃で保持した後、水を加えて固形分濃度20質量%のクレープ用接着剤(2)を得た。pH10のカチオン化度は0.4meq/固形分1gであった。
【0105】
製造例5
温度計、還流冷却器、撹拌機、及び滴下ロートを備えた別の1L四つ口フラスコに、ポリアミドポリアミン樹脂水溶液(A1)200g(第2級アミノ基として0.53モル)及び水100gを仕込み、20℃でエピクロロヒドリン46g(0.5モル)を1時間かけて滴下して加えた後、35℃に加熱して3時間35℃で保持した。次いで、水377gを加えて、50℃まで加熱して粘度が50mPa・s(25℃)に到達するまで50℃で保持した後、硫酸と水を加えてpHを2.5に調整し、固形分濃度20質量%のクレープ用接着剤(3)を得た。pH10のカチオン化度は0.8meq/固形分1gであった。
【0106】
<接着強度の評価試験>
クレープ用接着剤(1)〜(3)を固形分として0.3g/m、クレープ用剥離剤CR6154(星光PMC株式会社製・クレープ用剥離剤)を有効分0.25g/mとなるように100℃に加熱したプレート(面積0.2cm)に塗布し、300gf/cmとなるように湿紙部分に押し付けた。プレートと紙を引き剥がす際に必要な荷重を接着力として評価した。
湿紙部分は、試験紙に対して水を2μL塗布することで湿らした部分のことである。試験紙は、半紙(坪量30g/m、厚さ0.07mm、5μLドロップサイズ12秒)に、実施例1〜18の紙用柔軟剤の濃度が1質量%になるように水で希釈して得られた希釈液を、対パルプ固形0.3質量%となるように塗布し、乾燥(オーブン100℃10分間乾燥)させて得られた処理済半紙を使用した。
なお、接着強度は数値が高いほど好ましい。また、本試験は、クレープ用接着剤をドライヤーに塗布した場合と同様の傾向を得ることが簡易にできるため採用している。
【0107】
【表10】
【0108】
本発明の実施例1〜18の紙用柔軟剤を含む内添紙或いは外添紙は、表8、9より明らかなように、紙力に優れかつ柔らかく手触り感に優れた紙が得られる。
【0109】
また、表10より明らかなように紙用柔軟剤を含む紙をクレープ加工する場合は、pH10におけるカチオン化度が固形分1gあたり多くとも0.5meqであるポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂、及びpH10におけるカチオン化度が固形分1gあたり多くとも0.5meqであるポリアミドポリアミンポリ尿素エピハロヒドリン樹脂をクレープ用接着剤に用いると、pH10におけるカチオン化度が固形分1gあたり0.5meqを超えるポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂をクレープ用接着剤に用いた場合に比べ、接着性が優れるので好適なクレープ加工を行うことができる。