【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、イノシトールリン酸又はその塩が表面に吸着したカルシウム塩からなる微粒子と、生体吸収性高分子からなる微粒子と、水系媒体とを含む骨再生材料キットである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、生体吸収性高分子からなる微粒子に対してイノシトールリン酸又はその塩が表面に吸着したカルシウム塩からなる微粒子を組み合わせた場合には、充填後に血液や体液等の水分に接触しても崩壊しない非崩壊性を発揮できることを見出し、本発明を完成した。この理由については明らかではないが、カルシウム塩からなる微粒子の表面に吸着したイノシトールリン酸又はその塩が生体吸収性高分子からなる微粒子と相互作用するためではないかと考えられる。
【0011】
本発明の骨再生材料キットは、イノシトールリン酸又はその塩が表面に吸着したカルシウム塩からなる微粒子(以下、「イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子」ともいう。)と、生体吸収性高分子からなる微粒子と、水系媒体とからなる。
上記イノシトールリン酸又はその塩が表面に吸着したカルシウム塩からなる微粒子は、水系媒体と混合するとペースト状となり、体内で硬化して、骨の力学強度を補う役割を有するとともに、表面に吸着したイノシトールリン酸又はその塩が上記生体吸収性高分子からなる微粒子と相互作用することにより、得られるペースト状骨再生材料に比較的短時間の硬化で充分な非崩壊性を発揮することができる性能を付与することができる。
【0012】
上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子は、例えば、上記イノシトールリン酸又はその塩を溶解した水溶液中に、上記カルシウム塩からなる微粒子を浸漬及び粉砕処理することにより調製することができる。上記イノシトールリン酸又はその塩は、カルシウム塩からなる微粒子の表面に化学的に吸着すると考えられる。
【0013】
上記カルシウム塩としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらのカルシウム塩は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、リン酸カルシウムが好適である。
上記リン酸カルシウムとしては、例えば、ヒドロキシアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、非晶質リン酸カルシウム等が挙げられる。これらのリン酸カルシウムは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ヒドロキシアパタイト、α−リン酸三カルシウム又はβ−リン酸三カルシウムが好ましく、ヒドロキシアパタイトがより好ましい。
【0014】
上記カルシウム塩からなる微粒子の比表面積の好ましい下限は0.1m
2/g、好ましい上限は120m
2/gである。比表面積がこの範囲内にあると、上記カルシウム塩からなる微粒子の表面に充分な量の上記イノシトールリン酸又はその塩を吸着させることができる。上記比表面積のより好ましい下限は20m
2/g、更に好ましい下限は40m
2/gである。
なお、上記カルシウム塩からなる微粒子の比表面積は、例えば、マイクロメリティックス自動比表面積測定装置フローソーブIII2305(島津製作所社製)を用いてBET法により測定することができる。
【0015】
上記イノシトールリン酸としては、イノシトール一リン酸、イノシトールニリン酸、イノシトール三リン酸、イノシトール四リン酸、イノシトール五リン酸、フィチン酸(イノシトール六リン酸)等が挙げられる。
また、イノシトールリン酸の塩としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられ、より具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。これらのイノシトールリン酸又はその塩は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、フィチン酸、フィチン酸ナトリウム塩又はフィチン酸カリウム塩が好ましい。
なお、フィチン酸ナトリウム塩には、例えば、フィチン酸ナトリウム塩38水和物、フィチン酸ナトリウム塩47水和物、フィチン酸ナトリウム塩12水和物等のように、結晶水含量の異なる数種が知られているが、いずれも好ましく用いることができる。
【0016】
上記イノシトールリン酸又はその塩を溶解した水溶液の濃度としては特に限定されないが、1000〜11000ppmであることが好ましく、5000〜11000ppmであることがより好ましく、7000〜10000ppmであることが更に好ましい。
なお、上記イノシトールリン酸又はその塩を溶解した水溶液を調製する際には、水溶液に予めアルカリ水溶液を添加し、好ましくはpH6〜11、より好ましくはpH6〜8に調整しておくことが好ましい。pHの調整に用いるアルカリ水溶液は、特に限定されず、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられる。
【0017】
上記イノシトールリン酸又はその塩を溶解した水溶液中に、上記カルシウム塩からなる微粒子を浸漬及び粉砕する方法としては特に限定されないが、例えば、好ましくは20〜60℃、より好ましくは20〜40℃に保温した上記イノシトールリン酸又はその塩を溶解した水溶液中に上記カルシウム塩からなる微粒子を加え、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは0.5〜10時間、粉砕機を用いて撹拌又は振とうする方法等が挙げられる。
また、この際の上記イノシトールリン酸又はその塩とカルシウム塩とのモル比としては、0.001〜0.1が好ましく、0.01〜0.08がより好ましい。
【0018】
このように上記カルシウム塩からなる微粒子を上記イノシトールリン酸又はその塩を溶解した水溶液と混合して微粒子の表面にイノシトールリン酸又はその塩を吸着させた後に、得られた微粒子を分離し、乾燥することにより、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子を得ることができる。
【0019】
上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は100μmである。上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、上記水系媒体と混合してペースト状にしたときに粘度が上昇してインジェクトが難しくなることがある。平均粒子径が100μmを超えると、硬化物の強度が低く充分に骨の力学強度を補えないことがある。上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子の平均粒子径のより好ましい上限は50μmである。
【0020】
本発明の骨再生材料キットは、更に、イノシトールリン酸又はその塩が表面に吸着していないリン酸カルシウム系化合物からなる微粒子(以下、単に「リン酸カルシウム系化合物からなる微粒子」ともいう。)を含むことが好ましい。上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子にリン酸カルシウム系化合物からなる微粒子を併用することにより、硬化物の力学的強度をより向上させることができる。
なお、リン酸カルシウム系化合物からなる微粒子は、粉砕して調製する際の時間を調整することによって、硬化物の力学的強度を変化させることもできる。
【0021】
上記リン酸カルシウム系化合物は特に限定されず、例えば、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、水酸アパタイト、炭素含有アパタイト、フッ素アパタイト、骨ミネラル含有アパタイト、ケイ素含有アパタイト等が挙げられる。これらのリン酸カルシウム系化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでもα−リン酸三カルシウム又はβ−リン酸三カルシウムが好ましく、α−リン酸三カルシウムがより好ましい。
【0022】
上記リン酸カルシウム系化合物からなる微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は100μmである。上記リン酸カルシウム系化合物からなる微粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、上記水系媒体と混合してペースト状にしたときに粘度が上昇してインジェクトが難しくなることがある。平均粒子径が100μmを超えると、硬化物の強度が低く充分に骨の力学強度を補えないことがある。上記リン酸カルシウム系化合物からなる微粒子の平均粒子径のより好ましい上限は50μmである。
【0023】
上記生体吸収性高分子からなる微粒子は、施術後に徐々に生体内で吸収されて、充填部に骨芽細胞が侵入可能な連続孔を生じさせる役割を有する。
上記生体吸収性高分子としては、例えば、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、フィブリン等のタンパク質や、デンプン、アルギン酸、キチン、ペクチン酸及びその誘導体等の多糖類等の天然高分子;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、グリコール酸−ε−カプロラクトン共重合体、乳酸−ε−カプロラクトン共重合体、ポリリンゴ酸、ポリ−α−シアノアクリレート、ポリ−β−ヒドロキシ酸、ポリトリメチレンオキサレート、ポリテトラメチレンオキサレート、ポリオルソエステル、ポリオルソカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタメート、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−γ−メチル−L−グルタメート、ポリ−L−リジン、ポリ−L−アラニン等の合成高分子等が挙げられる。これらの生体吸収性高分子は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記生体吸収性高分子からなる微粒子が、ゼラチン、コラーゲン又はヒアルロン酸からなる場合、ゼラチン、コラーゲン又はヒアルロン酸は架橋されていることが好ましい。
なかでも架橋ゼラチンが好適である。上記生体吸収性高分子からなる微粒子として架橋ゼラチンからなる微粒子を用いた場合には、特に短時間の硬化で充分な非崩壊性を発揮できる。また、架橋ゼラチンは親水性の高い高分子であることから、水分を含むことで膨潤する。このため、骨孔内に移植した後、周囲の水分を吸い、体積を増し、充填部分への密着性が向上するという効果も得られる。また、従来の無機材料のみを含むペースト状骨補填材料の場合、適用部に体液や血液が多く存在したときに、硬化が遅延したり、硬化せずに流出してしまったりすることがあった。更に、硬化した場合にでも強度が低下したり、崩壊して流出してしまったりするという問題があった。親水性の高い架橋ゼラチンからなる微粒子を用いた場合には、止血効果が発揮されることから、多少の出血のある部位にも用いることができる。
【0024】
上記架橋ゼラチンからなる微粒子の架橋状態は、熱脱水架橋、紫外線架橋、化学架橋、イオン架橋等の従来公知の架橋方法を用いてゼラチンを架橋する際の条件を調整することにより制御することができる。例えば、未架橋ゼラチン微粒子を熱架橋する場合、真空下で110〜170℃、5分〜48時間程度の熱処理を行うが、架橋温度や熱処理時間を調整することにより得られる架橋ゼラチンからなる微粒子の架橋状態を制御することができる。
【0025】
上記生体吸収性高分子からなる微粒子は、γ線、電子線等の放射線処理されたものを用いてもよい。放射線処理された生体吸収性高分子からなる微粒子を用いることにより、骨再生材料キットとしての優れた性能を維持して、硬化物の力学的強度をより向上させることができる。また、放射線処理により生体吸収性高分子からなる微粒子が滅菌されることから、エチレンオキサイドガス滅菌等の他の滅菌処理をあらためて行う必要がなくなるのも利点である。
【0026】
上記生体吸収性高分子からなる微粒子の平均粒子径の好ましい下限は10μm、好ましい上限は400μmである。上記生体吸収性高分子からなる微粒子の平均粒子径が10μm未満であると、骨芽細胞が侵入可能な連続孔を形成できないことがあり、400μmを超えると、硬化物の強度が低く充分に骨の力学強度を補えないことがある。上記生体吸収性高分子からなる微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は200μmである。
【0027】
上記水系媒体は、ペースト状骨再生材料の媒体となるものである。
上記水系媒体は、注射用水等が挙げられる。上記水系媒体は、pHを調整する目的で、バッファー成分を含有してもよい。また、上記水系媒体として、骨髄液や細胞懸濁液も使用することができる。
更に、上記水系媒体は、粘度を調整する目的で少量の水溶性高分子を含有したり、感染を予防する目的で抗菌剤を含有したり、骨再生を促進する目的で各種の成長因子等を含有してもよい。
上記水溶性高分子は、例えば、乳酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸等の重合体、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ヘパラン硫酸、アルギン酸、キトサン等が挙げられる。
【0028】
本発明の骨再生材料キットは、更に各種細胞増殖因子、抗菌剤、抗生物質等の薬剤を有してもよい。これらを有する骨再生材料キットを用いれば、骨の欠損部又は損傷部に充填して硬化させた後、該硬化物が分解するとともに該薬剤が徐々に放出されることから、長期にわたって薬理効果を発揮することができる。例えば、細胞増殖因子の徐放により早期の骨再生が期待される。また、抗菌剤、抗生物質等の徐放により、骨欠損部近傍に細菌等が多く存在する環境下(例えば、骨感染例や口腔内)での使用も可能となる。更に、細胞増殖因子と骨髄間葉系細胞を含む骨髄細胞とを併用した場合には、骨粗鬆症に伴う難治性骨折や脊椎圧迫骨折等の、骨修復部周囲に骨形成に必要な細胞が乏しいと考えられる場合や、骨修復部中心部まで骨形成に有効な細胞侵入が期待できない場合等にも、高い治癒効果の発揮を期待できる。なお、上記薬剤は、骨再生関連の薬剤のみに限定されない。
【0029】
本発明の骨再生材料キットを用いて、ペースト状骨再生材料を調製することができる。
ここでペースト状骨再生材料とは、使用時にはペースト状であって、用手的又はインジェクターにより骨の欠損部又は損傷部に容易に充填することができ、充填後に体内で硬化させることができる骨再生材料を意味する。
本発明の骨再生材料キットを構成するイノシトールリン酸又はその塩が表面に吸着したカルシウム塩からなる微粒子と、生体吸収性高分子からなる微粒子と、水系媒体とを混合してペースト状としたペースト状骨再生材料もまた、本発明の1つである。
【0030】
本発明のペースト状骨再生材料を調製するにあたって、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と、生体吸収性高分子からなる微粒子と、水系媒体とを配合する比率は特に限定されず、混練操作のしやすさ、インジェクターを用いたインジェクトのしやすさ、硬化までの時間、硬化物の強度等を考慮して決定する。
【0031】
上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と生体吸収性高分子からなる微粒子との配合比率を調整することによって、硬化物の空隙率を調整することができ、これにより硬化物の強度と骨の再生速度とを制御することができる。
上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子(上記リン酸カルシウム系化合物を含む場合には、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子とリン酸カルシウム系化合物との合計)と生体吸収性高分子からなる微粒子との配合比率は、重量比で97:3〜76:24の範囲であることが好ましい。この範囲内であると、短期的な骨の力学的強度の確保と、長期的な骨の再生とを両立することができる。この範囲よりも上記生体吸収性高分子からなる微粒子が少ない場合には、充分な連続孔が形成されずに骨の再生が進まないことがあり、この範囲よりも上記生体吸収性高分子からなる微粒子が多い場合には、硬化物の強度が低いことがある。より好ましくは重量比で95:5〜80:20の範囲であり、更に好ましくは重量比で90:10〜85:15の範囲である。
【0032】
骨再生材料に必要とされる強度は適用する部位によって異なる。従って、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と生体吸収性高分子からなる微粒子との好ましい配合比率の範囲内において、その適用部位を考慮して配合比率を決定すればよい。
例えば、踵骨、大腿骨、脛骨、椎体等は、大きな荷重がかかる部位であることから、これらの部位に適用する場合には、骨の再生速度よりも強度を優先させるべきである。即ち、生体吸収性高分子からなる微粒子の配合比率を低めに設定する。
例えば、頭蓋骨、上腕骨、前腕(橈尺)骨、指骨等は、大きな荷重はかからない部位であることから、これらの部位に適用する場合には、強度よりも骨の再生速度を優先させるべきである。即ち、生体吸収性高分子からなる微粒子の配合比率を高めに設定する。
【0033】
本発明の骨再生材料キットが上記リン酸カルシウム系化合物を含む場合において、ペースト状骨再生材料を調製する際の上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と上記リン酸カルシウム系化合物との配合比は、重量比で90:10〜10:90であることが好ましい。この範囲内であると、硬化物の力学的強度を向上させることができる。より好ましくは、10:90〜50:50である。
【0034】
上記水系媒体の含有量は、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と生体吸収性高分子からなる微粒子との合計100重量部に対する好ましい下限が50重量部、好ましい上限が150重量部である。上記水系媒体の含有量が50重量部未満であると、ペースト状骨再生材料の粘度が高くインジェクトが困難となることがあり、150重量部を超えると、硬化させたときに、収縮することがある。上記水系媒体の含有量のより好ましい下限は60重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0035】
上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と生体吸収性高分子からなる微粒子と水系媒体とを混合する方法は特に限定されないが、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と生体吸収性高分子からなる微粒子と水系媒体とシリンジ中に入れ練和混合する方法や、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と生体吸収性高分子からなる微粒子と水系媒体を練和混合する方法が好適である。
【0036】
本発明のペースト状骨再生材料を調製するにあたって、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と、生体吸収性高分子からなる微粒子と、水系媒体とを配合する手順については特に限定されず、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と、生体吸収性高分子からなる微粒子と、水系媒体との全量を同時に混合してもかまわない。
しかしながら、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子と生体吸収性高分子からなる微粒子とを混合した後、この混合物に上記水系媒体を加えていく方法や、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子に上記水系媒体の一部量を加え練和混合した後、上記生体吸収性高分子からなる微粒子、上記水系媒体の残部量を加えて混合する方法が好ましい。このような方法でペースト状骨再生材料を調製することにより、強度の高い骨再生材料が得られる。
【0037】
本発明のペースト状骨再生材料は、用手的又は注射器等のインジェクターを用いて、容易に骨の欠損部又は損傷部に充填することができる。充填したペースト状骨再生材料は室温下でも硬化して骨再生材料となり、骨の力学的強度を補完する。本発明のペースト状骨再生材料は、生体吸収性高分子からなる微粒子を用いるものであるが、上記イノシトールリン酸吸着カルシウム塩微粒子を併用することにより、充填後に血液や体液等の水分に接触しても崩壊しない非崩壊性を発揮することができる。施術後には、時間の経過に従って上記生体吸収性高分子からなる微粒子が吸収されることにより連続孔が形成され、該連続孔に骨芽細胞が侵入することにより患者自身の骨が再生される。
なお、本発明のペースト状骨再生材料をいったん外部で硬化させて骨再生材料を形成した後、該骨再生材料を骨の欠損部又は損傷部に充填したり、骨接合材として使用したりしてもよい。本発明のペースト状骨再生材料を硬化してなる骨再生材料、骨接合材もまた、本発明の1つである。