(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転、疾患、症状又は状態の悪化の防止又は遅延、あるいは疾患、症状又は状態の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
また、本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
また、本明細書において、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、あるいは個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
さらに、本明細書において、「肌荒れ」とは、皮膚の保湿力が低下して皮膚の水分が奪われ、皮膚表面に落屑や皮膚のひび割れが認められる状態又は皮膚表面粗さが大きくなるような状態をいう。このような状態の皮膚を「あれ肌」又は「ドライスキン」ともいう。
【0013】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、及びインボルクリン発現促進剤は、ハグロソウの抽出物を有効成分とする。後述の実施例で実証するように、ハグロソウの抽出物は、トランスグルタミナーゼ活性化効果、セラミドの産生促進効果、及びインボルクリン発現促進効果を有する。
また、本発明の表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤も、ハグロソウの抽出物を有効成分とする。前述のように、トランスグルタミナーゼの活性化、セラミドの産生促進、及びインボルクリンの発現促進は、表皮の角化改善や皮膚の保湿機能の改善、皮膚のバリア機能維持、及び肌荒れの予防又は改善に非常に重要である。したがって、トランスグルタミナーゼ活性化効果、セラミドの産生促進効果、及びインボルクリン発現促進効果を有するハグロソウの抽出物を、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤の有効成分とすることができる。
また、前述のように、セラミドは細胞の増殖、分化、アポトーシス等の制御に関係する。そのため、セラミドの産生を促進するハグロソウの抽出物は、動物細胞の増殖抑制、分化誘導、アポトーシスの誘導等により、炎症性疾患、悪性腫瘍など、細胞の増殖あるいは分化の異常に起因する疾患を予防又は治療するための医薬品、医薬部外品等に有用である。また、ハグロソウの抽出物は、骨粗鬆症、骨折、腰痛、リウマチなどの骨関節疾患の予防又は改善、歯周病の予防又は改善のための医薬品、医薬部外品等にも使用しうる。さらに、ハグロソウの抽出物は、毛髪にハリ・コシを付与したり毛髪の感触を改善するための医薬部外品、化粧品等の用途にも有用である。
さらに、前述のように、インボルクリン遺伝子の発現量を増加させる物質がくせ毛や縮毛の促進剤又はウェーブ化促進剤となりうる。したがって、インボルクリン発現促進効果を有するハグロソウの抽出物を、くせ毛化剤の有効成分とすることができる。なお、本明細書において「くせ毛化」とは、毛髪のくせ毛や縮毛の促進、ウェーブ化の促進を包含するものである。
【0014】
本明細書における「ハグロソウ」は、キツネノマゴ科ハグロソウ属の植物である。
ハグロソウ抽出物の製造には、ハグロソウの任意の部分が使用可能であり、全草、根、塊根、根茎、幹、枝、茎、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、樹液、樹脂、花(花弁、子房等)、果実(成熟果実、未熟果実等)、種子等を用いることができる。また、これらの部位を複数組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明に用いるハグロソウの抽出物は、ハグロソウの全草の抽出物であることが好ましい。
【0015】
本発明に用いるハグロソウの抽出物は、植物抽出等に用いられる通常の抽出方法により得ることができる。抽出方法は適宜設定することができ、上記植物を常温又は加温下にて抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることが好ましい。
ハグロソウの抽出物の調製には、ハグロソウをそのまま又は乾燥粉砕して用いることができる。また、ハグロソウの水蒸気蒸留物又は圧搾物を用いることもでき、これらは精油等より精製したものを用いることもでき、また市販品を利用することもできる。ハグロソウ、又はその水蒸気蒸留物若しくは圧搾物は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
ハグロソウの抽出物の調製に用いる抽出溶媒は適宜選択することができ、植物成分の抽出に通常用いられるもの、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他オイル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、水、エタノール、及びエタノール水溶液が好ましく、エタノール水溶液がより好ましく、アルコール含有率が30体積%以上のエタノール水溶液がさらに好ましく、アルコール含有率が40体積%以上のエタノール水溶液が特に好ましい。また、抽出に際して酸やアルカリなどを添加し、抽出溶媒のpHを調整してもよい。
【0017】
抽出条件も通常の条件を適用でき、例えばハグロソウを0℃以上100℃以下で0.5時間以上30日間以下浸漬又は加熱還流すればよい。抽出効率を上げる為、併せて攪拌を行ったり、溶媒中でホモジナイズ処理を行ってもよい。用いる抽出溶媒の量は、ハグロソウの重量に対して1倍量以上(好ましくは5倍量以上)100倍量以下(好ましくは50倍量、より好ましくは40倍量以下)である。
【0018】
本発明において、ハグロソウの抽出物をそのまま用いてもよいし、さらに適当な分離手段、例えばゲル濾過、クロマトグラフィー、精密蒸留等により活性の高い画分を分画して用いることもできる。また、得られたハグロソウの抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、前記方法により得られた抽出物を、前記抽出溶媒とは異なる溶媒で転溶して用いることもできる。
本発明において抽出物とは、前記のような抽出方法で得られた各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液、その精製画分、その乾燥末又はその転溶液を含むものである。
【0019】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ抑制又は改善剤、及びくせ毛化剤の形態は適宜選択することができ、例えば、医薬組成物、化粧料組成物若しくは食品組成物とするか、又はこれらに含有させることができる。
【0020】
医薬組成物を調製する場合は、通常、前記有効成分と好ましくは薬学的に許容される担体を含む製剤として調製する。薬学的に許容される担体とは、一般的に、前記有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体又は液体の、増量剤、希釈剤又はカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール類(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコール等)、適切なそれらの混合物、植物性油などの溶媒又は分散媒体などが挙げられる。
【0021】
医薬組成物は、経口により、非経口により、例えば、口腔内に、皮膚に、皮下に、粘膜に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、腹腔内に、膣内に、肺に、脳内に、眼に、及び鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤及び吸入剤などが挙げられる。非経口投与製剤としては、坐剤、保持型浣腸剤、点滴剤、点眼剤、点鼻剤、ペッサリー剤、注射剤、口腔洗浄剤並びに軟膏、クリーム剤、ゲル剤、制御放出パッチ剤及び貼付剤などの皮膚外用剤などが挙げられる。医薬組成物は、徐放性皮下インプラントの形態で、又は標的送達系(例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン注入、ポリマーマトリックス、リポソーム及びミクロスフェア)の形態で、非経口で投与してもよい。
【0022】
医薬組成物はさらに医薬分野において慣用の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用できる。長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等が使用できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙げられる。抗酸化剤としては、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸等が挙げられる。必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)を加えてもよい。
【0023】
化粧料組成物を調製する場合、その形態は適宜選択することができ、溶液、乳液、粉末、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ゲル、タブレット等の固形、エアゾール、ミスト、カプセル及びシート等任意の形態とすることができる。また、化粧料組成物の製品形態も任意であり、例えば、洗顔料、メーク落とし、化粧水、美容液、パック、乳液、クリーム及びサンスクリーン等のスキンケア化粧料、ファンデーション、化粧下地、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、アイブロー、頬紅及びネイルエナメル等のメイクアップ化粧料、ヘアシャンプー、ヘアリンス、整髪料、染毛料及び育毛剤等の毛髪化粧料、石鹸、ボディソープ、デオドラント化粧料及び浴用剤等のボディ洗浄料、歯磨剤及び洗口剤等の口腔化粧料、香水等の芳香化粧料等が挙げられる。また、この化粧料は、日本の薬事法上、化粧品もしくは医薬部外品のどちらに属しても良い。
【0024】
化粧料組成物は、化粧品、医薬部外品及び医薬品等に慣用される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて配合し、常法により製造することができる。
その他の化粧料組成物に配合可能な成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等)、美白剤(例えば、アスコルビン酸及びその誘導体、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等)、各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等)、血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等)、抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等)、抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)及び殺菌剤(例えば、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、チモール類、塩化ベンザルコニウム等)等が挙げられる。
【0025】
前記医薬組成物及び化粧料組成物は、口腔用組成物、外用組成物、内服組成物などの形態で適用することができ、皮膚外用組成物の形態で用いることが好ましい。
皮膚外用組成物の形態で使用する場合、ハグロソウ抽出物の他に、通常の皮膚外用組成物に用いられる成分、例えば界面活性剤、油性物質、高分子化合物、防腐剤、各種の薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等を適宜配合できる。薬効成分としては、表皮角化改善剤や皮膚保湿機能改善剤の場合は、例えば、ビタミンD3、スフィンゴシン誘導体、オレアノール酸、クロフィブリン酸、オレイエタノールアミドが挙げられる。
【0026】
食品組成物を調製する場合、その形態は適宜選択することができ、飲料も包含される。一般食品の他に、表皮の角化改善又は皮膚の保湿機能やバリア機能改善・維持等、トランスグルタミナーゼの活性化、セラミドの産生促進、及びインボルクリンの発現促進のいずれかにより治療、予防又は改善しうる疾患又は状態の治療、予防又は改善等をコンセプトとしてその旨を表示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性食品、病者用食品及び特定保健用食品なども包含される。健康食品、機能性食品、病者用食品及び特定保健用食品は、具体的には、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができ、これら製剤のために使用することができる。製剤形態の食品組成物は、医薬製剤と同様に製造することができ、前記有効成分と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤(例えば、でん粉、加工でん粉、乳糖、ブドウ糖、水等)等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。さらに、食品組成物は、スープ類、ジュース類、乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料などの液状食品組成物、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品組成物、パン類、うどんなどの麺類、クッキー、チョコレート、キャンディ、ガム、せんべいなどの菓子類、ふりかけ、バター、ジャムなどのスプレッド類等の形態もとりうる。また、食品には、飼料も含まれる。
【0027】
食品組成物には、種々の食品添加物、例えば、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合してもよい。
【0028】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤の投与対象は、好ましくは温血脊椎動物であり、より好ましくは哺乳動物である。本明細書において哺乳動物は、例えば、ヒト、並びにサル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの非ヒト哺乳動物が挙げられる。本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤は、ヒト、サルなどの霊長類、特にヒトへの投与に好適である。
本発明に用いる前記抽出物、並びに本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤は、表皮の角化不全の予防若しくは治療、皮膚の保湿、皮膚バリア機能の改善、肌荒れの予防若しくは改善、又は毛髪のくせ毛化を所望する対象者に適用することができる。前記抽出物又は剤は、必要な条件下(好ましくは、湿度が低く乾燥した条件下)で適用するのが好ましい。また、前記抽出物又は剤は、皮膚、頭皮又は毛髪に適用するのが好ましい。
【0029】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤における前記有効成分の投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、投与又は摂取経路、投与又は摂取スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。例えば、前記有効成分の質量に基づき、1日あたり、体重1kgあたり、好ましくは0.001mg以上、1g以下、又は好ましくは0.001〜1mgである。また、前記有効成分は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。
【0030】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤における前記有効成分の含有量は、上記投与量を達成するように適宜決定できる。例えば、本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤において、前記有効成分の含有量は、0.00001質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、0.00001〜20質量%が好ましく、0.0001〜10質量%がより好ましく、0.0005〜5質量%がさらに好ましい。
【0031】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防又は改善剤、くせ毛化剤、製造方法、方法及び使用を開示する。
【0032】
<1>ハグロソウの抽出物を有効成分とする、トランスグルタミナーゼ活性化剤。
<2>ハグロソウの抽出物を有効成分とする、セラミド産生促進剤。
<3>ハグロソウの抽出物を有効成分とする、インボルクリン発現促進剤。
<4>ハグロソウの抽出物を有効成分とする、表皮角化改善剤。
<5>ハグロソウの抽出物を有効成分とする、皮膚保湿機能改善剤。
<6>ハグロソウの抽出物を有効成分とする、皮膚バリア機能改善剤。
<7>ハグロソウの抽出物を有効成分とする、肌荒れ予防又は改善剤。
<8>ハグロソウの抽出物を有効成分とする、くせ毛化剤。
【0033】
<9>前記ハグロソウの抽出物がハグロソウの全草の抽出物である、前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤。
<10>前記ハグロソウの抽出物が、エタノール水溶液(好ましくは、アルコール含有率が30体積%以上(より好ましくは40体積%以上)のエタノール水溶液)を抽出溶媒としてハグロソウを抽出して得られた、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤。
<11>前記有効成分の含有量が、0.00001質量%以上(好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上)20質量%以下(好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)である、前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、インボルクリン発現促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤。
【0034】
<12>トランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤又はインボルクリン発現促進剤としての、ハグロソウの抽出物の使用。
<13>トランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤又はインボルクリン発現促進剤の製造のための、ハグロソウの抽出物の使用。
<14>ハグロソウの抽出物を、トランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤又はインボルクリン発現促進剤として使用する方法。
<15>ハグロソウの抽出物を用いる、トランスグルタミナーゼ活性化方法、セラミド産生促進方法又はインボルクリン発現促進方法。
<16>前記抽出物を表皮の角化不全の予防若しくは治療、皮膚の保湿、皮膚バリア機能の改善、肌荒れの予防若しくは改善、又は毛髪のくせ毛化を所望する対象者に適用する、前記<15>項記載の方法。
<17>前記抽出物の適用が必要な条件下(好ましくは、湿度が低く乾燥した条件下)で前記抽出物を適用する、前記<15>又は<16>項記載の方法。
<18>前記抽出物を皮膚、頭皮又は毛髪に適用する、前記<15>〜<17>のいずれか1項記載の方法。
<19>前記ハグロソウの抽出物がハグロソウの全草の抽出物である、前記<12>〜<18>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<20>前記ハグロソウの抽出物が、エタノール水溶液(好ましくは、アルコール含有率が30体積%以上(より好ましくは40体積%以上)のエタノール水溶液)を抽出溶媒としてハグロソウを抽出して得られた、前記<12>〜<19>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<21>トランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤又はインボルクリン発現促進剤におけるハグロソウの抽出物の含有量が、0.00001質量%以上(好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上)20質量%以下(好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)である、前記<12>〜<20>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0035】
<22>表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤としての、ハグロソウの抽出物の使用。
<23>表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤の製造のための、ハグロソウの抽出物の使用。
<24>ハグロソウの抽出物を、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤として使用する方法。
<25>ハグロソウの抽出物を適用する、表皮角化改善方法、皮膚保湿機能改善方法、皮膚バリア機能改善方法、肌荒れ予防若しくは改善方法、又はくせ毛化方法。
<26>前記抽出物を表皮の角化不全の予防若しくは治療、皮膚の保湿、皮膚バリア機能の改善、肌荒れの予防若しくは改善、又は毛髪のくせ毛化を所望する対象者に適用する、前記<24>又は<25>項記載の方法。
<27>前記抽出物の適用が必要な条件下(好ましくは、湿度が低く乾燥した条件下)で前記抽出物を適用する、前記<24>〜<26>のいずれか1項記載の方法。
<28>前記抽出物を皮膚、頭皮又は毛髪に適用する、前記<24>〜<27>のいずれか1項記載の方法。
<29>皮膚の表皮角化不全の予防若しくは治療方法、皮膚保湿機能改善方法、皮膚バリア機能改善方法、肌荒れ予防若しくは改善方法、又はくせ毛化方法のために用いる、ハグロソウの抽出物。
<30>皮膚の表皮角化不全の予防若しくは治療薬、皮膚保湿機能改善薬、皮膚バリア機能改善薬、肌荒れ予防若しくは改善薬、又はくせ毛化薬の製造のための、ハグロソウの抽出物の使用。
<31>皮膚の表皮角化不全、皮膚保湿機能、皮膚バリア機能、肌荒れ、又はくせ毛化の非治療的な処置方法のために用いる、ハグロソウの抽出物の使用。
<32>ハグロソウの抽出物を医薬組成物又は化粧料組成物の形態で適用する、前記<31>項記載の使用。
<33>ハグロソウの抽出物を外用組成物の形態で適用する、前記<32>項記載の使用。
<34>ハグロソウの抽出物を食品又は飲料の形態で適用する、前記<31>項記載の使用。
<35>前記ハグロソウの抽出物がハグロソウの全草の抽出物である、前記<22>〜<34>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<36>前記ハグロソウの抽出物が、エタノール水溶液(好ましくは、アルコール含有率が30体積%以上(より好ましくは40体積%以上)のエタノール水溶液)を抽出溶媒としてハグロソウを抽出して得られた、前記<22>〜<35>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<37>前記表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、肌荒れ予防若しくは改善剤、又はくせ毛化剤における、ハグロソウの抽出物の含有量が、0.00001質量%以上(好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上)20質量%以下(好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)である、前記<22>〜<36>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
調製例1
ハグロソウの全草(新和物産社製)10gを細切し、30体積%エタノール水溶液100mLを加え、室温・静置条件下で7日間抽出を行った。その後、濾過して、ハグロソウ抽出物61mLを得た。得られた抽出物について、蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は1.10%(w/v)であった。これを30体積%エタノール水溶液で希釈し、1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
<蒸発残分の算出>
ハグロソウ抽出物1mLを乾燥機(DRY Thermo Unit DTU-1C(商品名、TAITEC CORPORATION社製))を用いて105℃で6時間乾燥させたところ、乾燥物11.0mgが得られた。この抽出物の蒸発残分を、11.0/1000×100=1.10%(w/v)と算出した。なお、下記の調製例においても、各抽出物の蒸発残分は同様にして算出されたものである。
【0038】
調製例2
調製例1と同様の条件で50体積%エタノール水溶液を使用して抽出を行った。その後、濾過して、ハグロソウ抽出物58mLを得た。得られた抽出物について、蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は0.92%(w/v)であった。これを濃縮した後、50体積%エタノール水溶液で1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
【0039】
調製例3
調製例1と同様の条件で60体積%エタノール水溶液を使用して抽出を行った。その後、濾過して、ハグロソウ抽出物58mLを得た。得られた抽出物について、蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は0.79%(w/v)であった。これを濃縮した後、60体積%エタノール水溶液で1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
【0040】
調製例4
調製例1と同様の条件で70体積%エタノール水溶液を使用して抽出を行った。その後、濾過して、ハグロソウ抽出物60mLを得た。得られた抽出物について、蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は0.70%(w/v)であった。これを濃縮した後、70体積%エタノール水溶液で1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
【0041】
調製例5
調製例1と同様の条件で80体積%エタノール水溶液を使用して抽出を行った。その後、濾過して、ハグロソウ抽出物55mLを得た。得られた抽出物について、蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は0.60%(w/v)であった。これを濃縮した後、80体積%エタノール水溶液で1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
【0042】
調製例6
調製例1と同様の条件で90体積%エタノール水溶液を使用して抽出を行った。その後、濾過して、ハグロソウ抽出物53mLを得た。得られた抽出物について、蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は0.36%(w/v)であった。これを濃縮乾固させた後、90体積%エタノール水溶液で1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
【0043】
調製例7
調製例1と同様の条件で99.5体積%エタノール水溶液を使用して抽出を行った。その後、濾過して、ハグロソウ抽出物52mLを得た。得られた抽出物について、蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は0.17%(w/v)であった。これを濃縮乾固させた後、99.5体積%エタノール水溶液で1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
【0044】
調製例8
ハグロソウの全草(親和物産社製)600gを細切し、99.5体積%エタノール水溶液6000mLを加え、室温・静置条件下で7日間抽出を行った。その後、濾過して、ハグロソウ抽出物4504mLを得た。得られた抽出物4000mLにヘキサン2000mLを加え撹拌した後、さらに水6000mLを加えた。これを液液分配した後、下層8367mLを抜出した。得られた抽出液2500mLに1,3-ブチレングリコール1000mLを加え、エバポレータにて濃縮し、エタノール及び水を除去した。これに水1500mLを加えた後、5℃、4日間の条件で澱出しした。濾過により不溶物を除去した後、得られた濾液2403Lに40体積%1,3-ブチレングリコール水溶液を加え、抽出物3266mLを調製した。得られた抽出物について蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は0.02%(w/v)であった。
【0045】
試験例1 トランスグルタミナーゼ活性の測定
12穴プレートにヒト表皮角化細胞株HEKn(KURABO社製)を4×10
4個/ウェルにて播種し、培養した。培地には、市販のクラボウ社製EpiLife-KG2を用いた。37℃、5%CO
2条件下で一日培養後、増殖因子(BPE、EGF)を含まない培地に交換し、製造例1〜8で調製したハグロソウ抽出物を最終濃度が表1に示す値となるように、それぞれ添加した。また、ハグロソウ抽出物のかわりに、コントロールとして抽出溶媒である50体積%エタノールを最終濃度0.1%(v/v)で、ポジティブ・コントロールとしてCaCl
2を最終濃度1.5mMで、それぞれ添加した。なお、CaCl
2には角化を促す作用が知られており、ポジティブ・コントロールとして用いた。これらはいずれも更に37℃で3日間培養した。
培養終了後、培養液を除去し、PBS(−)で2回洗浄し、150μLの抽出緩衝液(0.5mM EDTA、1%TritonX-100、Protease inhibitorsを含む10mM Tris-HCl buffer、pH7.4)でセルスクレーパーを用い細胞を回収し、超音波処理による細胞破砕液を得た。遠心分離操作(15,000rpm、10分)によって得られた上清をライセートとして評価に用いた。Transglutaminase Colorimetric Microassay Kit(商品名)によりメーカーの使用説明書に従って、酵素活性を測定した。タンパク質濃度はBCA Protein Assay Kit(商品名、Thermo Scientific社製)を用いてメーカーの使用説明書に従って、定量した。
【0046】
評価結果を表1に示す。各抽出物サンプルのトランスグルタミナーゼ活性は、50体積%エタノールを添加したコントロールのトランスグルタミナーゼ活性を1とした場合の相対値で示した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から明らかなように、ハグロソウ抽出物を添加した系ではトランスグルタミナーゼ活性がポジティブ・コントロールと同程度或いはそれ以上に大きく上昇していた。
さらに、トランスグルタミナーゼ活性は皮膚のバリア機能維持、保湿機能の維持又は改善、及び肌荒れの予防又は改善に関係し、トランスグルタミナーゼを活性化することで、表皮の角化不全の防止や皮膚の保湿機能の改善、及び肌荒れの予防又は改善などが可能となる。したがって、トランスグルタミナーゼ活性化効果を有するハグロソウの抽出物を表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤の有効成分とすることができる。
【0049】
試験例2 セラミド産生促進効果の検証
培養プレートを用い、培養液(商品名:EpiLife-KG2、KURABO社製)中にて、正常ヒト表皮角化細胞(商品名:NHEK(F)、KURABO社製)を37℃、5%CO
2で培養した。
その後、培養液を上皮成長因子などの増殖因子を除いたEpiLife-KG2に換え、調製例2で調製したハグロソウ抽出物を、濃度が固形分換算で1w/v%となるように調整したものを、0.1%量添加した。また、ハグロソウ抽出物のかわりに、コントロールとして抽出溶媒である50体積%エタノールを最終濃度0.1%v/vで、ポジティブ・コントロールとして下記に示すように調製したユーカリ(
Eucalyptus globulus)抽出物を表2に示す最終濃度となるように、それぞれ添加した。なお、ユーカリ抽出物にはセラミドの産生を促す作用が知られており、ポジティブ・コントロールとして用いた。
3日間培養した後、各々の細胞を1wellごと回収した。
【0050】
回収した細胞からBligh and Dyer法により脂質を抽出した有機相をガラス管に移し、窒素乾固した後、クロロホルム、メタノールで再溶解し、脂質サンプルとした。
また、脂質を抽出した後の細胞に0.1N NaOH、1%SDS水溶液を加え、60℃で2時間加熱することにより、タンパク質を可溶化し、室温まで冷却した後2N HClを加えて中和し、タンパク量をBCA法により定量した。
【0051】
調製した脂質サンプルを薄膜クロマトグラフィー(TLC)でクロロホルム:メタノール:酢酸=190:9:1で2回水平展開した。硫酸銅液をスプレーで噴霧し、ホットプレートで焼き付けセラミドを検出し、セラミド量とした。なお、セラミド量は、50体積%エタノールを添加したときのセラミド量を1とし、相対値で示した。
結果を表2に示す。
【0052】
(参考例)
ユーカリノキ(
Eucalyptus globules Labillardiere、新和物産社製)の葉40gを細切し、50体積%エタノール400mLを加え、室温・静置条件下で7日間抽出を行った。その後、濾過して、ユーカリ抽出物291mLを得た。得られた抽出物について蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は3.16%(w/v)であった。これを50体積%エタノール水溶液で希釈して、1.0%(w/v)抽出物を調製した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2から明らかなように、ハグロソウ抽出物を添加した系ではコントロールの系に比べてセラミド産出量の上昇が認められた。したがって、ハグロソウ抽出物を有効成分とする本発明のセラミド産生促進剤は、セラミド産生を促進することができることがわかる。
さらに、セラミドは皮膚のバリア機能維持、保湿機能の維持又は改善、及び肌荒れの予防又は改善に関係し、セラミドの産生を促進することで、表皮の角化不全の防止や皮膚の保湿機能の改善、及び肌荒れの予防又は改善などが可能となる。したがって、セラミドの産生促進効果を有するハグロソウの抽出物を表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤の有効成分とすることができる。
【0055】
試験例3 インボルクリン発現量の評価
(1)細胞培養
ヒト表皮角化細胞株HaCaTは、DMEM(ギブコ社製)に、非働化した10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(ギブコ社製)を添加した培地で37℃、5%CO
2条件下で培養した。
【0056】
(2)IVL発現の評価
1次スクリーニングにはInvolucrin ELISA Assay Kit BT-650(商品名、BTI製)を一部プロトコルを改変して使用した。詳細なプロトコルを以下に示す。
24穴プレートにHaCaT細胞を5×10
4個/ウェルにて播種し、培養した。翌日、調製例2で調製した固形分換算で1.0%(w/v)となったハグロソウ抽出物を表3に示す最終濃度含む培地に交換して更に24時間培養した。また、ハグロソウ抽出物のかわりに、コントロールとして抽出溶媒である50体積%エタノールを最終濃度0.5%v/v含む培地に交換してさらに24時間培養したものを用いた。抽出物の添加から24時間後、細胞をPBS(−)で2回洗浄し、20mM Tris-HCl(pH:7.5)・2mM EDTAにComplete Mini Protease Inhibitor Cocktail(商品名、Roche社製)を含む抽出緩衝液400μLを細胞に添加した。Protease Inhibitor Cocktailは抽出緩衝液10mLに対して1粒加えた。この抽出緩衝液存在下でセルスクレーパーにより、細胞を剥離・回収した後、ソニケーターによる超音波処理を行った。この溶液を遠心して回収した上清をライセートとして評価に用いた。
ライセートの総タンパク質濃度はBCA Protein Assay Kit(商品名、Thermo Scientific社製)を用いてメーカーの使用説明書に従って、定量した。96穴プレートの1ウェルに対し、3μgの総タンパク質量となるようにライセートをbuffer B(2mM EDTA、5g/L Tween 20、2.5g/L Gelatin in PBS)で希釈し、96穴プレートに添加した後、抗IVL抗体(キット付属品、希釈率1/300)を加えて4℃で一晩1次抗体反応を行った。また、別の96穴プレート(ナルジェヌンク製、469078)にヒトIVLタンパク質(キット付属品)を1ng/wellずつ添加し、縮合剤であるEDC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide、関東化学株式会社製)10μg/wellと共に、4℃で一晩抗原の吸着を行った。翌日、抗原を吸着させたプレートの溶液を吸引除去し、100μLの0.1M NH
4Clを添加して30分間室温で反応させた。反応後、distilled H
2O(ギブコ社製)で4回、buffer Bで1回洗浄し、前日の1次抗体反応液100μLを添加して30分間室温で反応させた。この反応の後、buffer Bで5回洗浄し、キット付属の抗ウサギ-AP Conjugate抗体(希釈率1/2000)を添加して室温で1時間反応させた。反応後、buffer Bで4回、buffer D(1mM MgCl
2・6H
2O in 0.05M carbonate/bicarbonate(シグマ社製、商品名:C3041-50CAP)で1回洗浄し、p-nitrophenylphosphate(1mg/mL in buffer D、シグマ社製)溶液を100μL添加して発色反応を行った。発色が確認された後、405nmの吸光度を測定し、IVL量を定量した。
評価結果を表3に示す。抽出物サンプルのIVL量は、50%エタノールを添加したコントロールのIVL量を1とした場合の相対値で示した。
【0057】
【表3】
【0058】
表3から明らかなように、ハグロソウ抽出物を添加した系ではインボルクリンの発現量が増加していた。
さらに、インボルクリンの発現は皮膚のバリア機能維持、保湿機能の維持又は改善、及び肌荒れの予防又は改善に関係し、インボルクリンの発現を促進することで、表皮の角化不全の防止や皮膚の保湿機能の改善、及び肌荒れの予防又は改善などが可能となる。また、インボルクリン遺伝子の発現量を増加させる物質がくせ毛や縮毛の促進剤又はウェーブ化促進剤となりうる。したがって、インボルクリン発現促進効果を有するハグロソウの抽出物を表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤及びくせ毛化剤の有効成分とすることができる。