(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288766
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】バーナ装置
(51)【国際特許分類】
F23L 15/00 20060101AFI20180226BHJP
F23D 11/44 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
F23L15/00 Z
F23D11/44 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-22014(P2014-22014)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-148393(P2015-148393A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真人
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−061107(JP,A)
【文献】
実公昭38−007292(JP,Y1)
【文献】
特開平07−077305(JP,A)
【文献】
実開昭57−019721(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 15/00
F23D 14/66
F23D 14/78
F23D 11/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ先端部に火炎形成用のスロートを備え、該スロート内にて燃料噴射ノズルより噴射される燃料油と、燃焼用空気供給ファンを介して供給される燃焼用空気とを混合しながら安定した火炎を形成するバーナ装置において、熱風発生用のバーナの燃焼用空気供給ファンに燃焼用空気である外気を供給する外気供給ダクトを備えると共に、該外気供給ダクトの途中をバーナ先端部のスロートの外周に沿わせるように周設して略環状の流路を形成し、該略環状の流路の一部を遮る仕切板を設け、該仕切板によって外気導入口より吸引した外気を前記スロートの外周に沿って周回させる構成とし、外気供給ダクトより吸引される外気とバーナのスロート表面との間で熱交換させてスロート表面を冷却しつつ、燃焼用空気である外気を予熱するように構成したことを特徴とするバーナ装置。
【請求項2】
前記スロートの外周に複数の突起片を突設し、スロート外周に沿って流下する外気に前記突起片によって乱流を生じさせて熱交換の効率を高めるように構成したことを特徴とする請求項1記載のバーナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アスファルト混合物の素材である骨材を加熱乾燥処理するドライヤ等に配設される熱風発生用のバーナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、アスファルト混合物の素材である新規骨材または廃材を加熱乾燥処理するドライヤ等に配設される熱風発生用のバーナ装置として、バーナ先端部に火炎形成用のスロートを備えたものがある。前記スロートでは、燃料噴射ノズルより噴射される燃料油と、燃焼用空気供給ファンを介して供給される燃焼用空気(外気)とが効率よく混合しながら燃焼し、安定した火炎を形成可能としている。このとき、スロート内面は高温の火炎に晒されることになるが、燃焼用空気としてスロート内に吸引される外気により適当に冷却されて保護される。
【0003】
ところで、アスファルト混合物を製造するにあたっては、資源の有効活用という観点から、新規骨材に対して道路工事等に伴って発生するアスファルト舗装廃材(以下「廃材」という)を所定割合で混入して製造する場合も多く、その混入率も最近では略70〜80%程度もの高い割合のものが採用されることもある。このように廃材の混入率が高い場合には相対的に新規骨材の加熱処理量を減らす必要があり、それに応じて新規骨材加熱処理用のバーナ装置の燃焼量も通常時より大幅に絞る必要があるため、前記バーナ装置としては、例えば特許文献1(特開2009−41816号公報)にも開示されているように、ターンダウン比(最大燃焼量に対する最低燃焼量の比)の大きいものが採用されることも少なくない。
【0004】
ところが、このような高ターンダウン比のバーナ装置にて燃焼量を最低燃焼量付近まで絞ると、スロート内に吸引される燃焼用空気量(外気量)も極端に少なくなるためスロートを火炎から十分に冷却・保護することができず、場合によってはスロート表面が赤熱を帯びるほど高温に過熱され、歪みや割れ等の熱変形を生じてしまう可能性があった。なお、特許文献1に記載されているバーナ装置では、スロートの内面に遮熱板を取り付けていると共に、スロートの内面及び外面に冷却空気(外気)が流れる通路を形成し、該通路内に冷却空気(外気)を流すことでスロートを冷却して赤熱の発生を防止するように図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−41816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、熱風発生用のバーナ装置、特に高ターンダウン比のバーナ装置などにおいて燃焼量を絞った際に燃焼用空気量が少なくなることにより発生し得るスロートの赤熱を防止するにあたり、上記従来例のような手段を採用するのもよいが、本発明者らはスロート表面を効果的に冷却して赤熱等の不具合を抑制可能なその他の有効な手段がないか検討した。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、バーナ燃焼量を絞った場合でもスロート表面を効果的に冷却して赤熱の発生を抑制可能としたバーナ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のバーナ装置では、
バーナ先端部に火炎形成用のスロートを備え、該スロート内にて燃料噴射ノズルより噴射される燃料油と、燃焼用空気供給ファンを介して供給される燃焼用空気とを混合しながら安定した火炎を形成するバーナ装置において、熱風発生用のバーナの燃焼用空気供給ファンに燃焼用空気である外気を供給する外気供給ダクトを備えると共に、該外気供給ダクトの途中をバーナ先端部のスロートの外周に沿わせるように周設し
て略環状の流路を形成し、
該略環状の流路の一部を遮る仕切板を設け、該仕切板によって外気導入口より吸引した外気を前記スロートの外周に沿って周回させる構成とし、外気供給ダクトより吸引される外気とバーナのスロート表面との間で熱交換させてスロート表面を冷却しつつ、燃焼用空気である外気を予熱するように構成したことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載のバーナ装置では、前記スロートの外周に複数の突起片を突設し、スロート外周に沿って流下する外気に前記突起片によって乱流を生じさせて熱交換の効率を高めるように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1記載のバーナ装置によれば、バーナに燃焼用空気である外気を供給する外気供給ダクトの途中をバーナ先端部のスロート外周に沿わせるように周設し
て略環状の流路を形成し、
該略環状の流路の一部を遮る仕切板を設け、該仕切板によって外気導入口より吸引した外気を前記スロートの外周に沿って周回させる構成とし、外気供給ダクトより吸引される外気にてスロート表面を冷却しつつ、燃焼用空気である外気を予熱するように構成したので、バーナ燃焼量を絞った場合でもスロートを効果的に冷却でき、赤熱や熱変形等の不具合の発生を抑制することができる。また、燃焼用空気である外気を予熱した上でバーナに供給することができて省エネルギー効果も期待できる。
【0011】
また、請求項2記載のバーナ装置によれば、スロートの外周に複数の突起片を突設し、スロート外周に沿って流下する外気に前記突起片によって乱流を生じさせて熱交換の効率を高めるように構成したので、スロート表面をより効果的に冷却できて赤熱の抑制効果を向上させることができる。また、外気の予熱効率も高められ、省エネルギー効果の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るバーナ装置を採用した骨材を加熱乾燥処理するドライヤの概略説明図である。
【
図2】バーナ装置のスロート外周に周設した外気供給ダクトの一部省略断面図である。
【
図3】バーナ装置のスロート外周に周設した外気供給ダクトを一部切り欠いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るバーナ装置にあっては、バーナの燃焼用空気供給ファンに燃焼用空気として外気を供給する外気供給ダクトを備えていると共に、該外気供給ダクトをバーナ先端部のスロートの外周に沿わせるように周設しており、外気供給ダクトより吸引される外気をスロート外周に沿って周回させ、その間に高温のスロート表面との間で熱交換させることでスロート表面を冷却しつつ、燃焼用空気である外気をある程度予熱してからバーナへ供給可能なように構成している。また、外周を外気供給ダクトにて包囲されたスロートの外周面には周回する外気の流れを妨げて乱流を発生させる突起片を複数突設しており、吸引した外気に前記突起片にて乱流を生じさせて適当に攪拌させることによってスロート表面との熱交換の効率を高めるように図っている。
【0014】
そして、上記構成のバーナ装置を燃焼運転させるとスロート内面は火炎に晒されることとなるが、燃焼用空気として供給される外気によってスロート表面が効果的に冷却され、例えば、高ターンダウン比のバーナ装置において燃焼量を最低燃焼量付近に絞った場合でも、スロートの赤熱や熱変形等の不具合の発生を抑制できると共に、燃焼用空気である外気を予熱することもできて省エネルギー効果も期待できる。また、赤熱を生じるほどに高温となり得るスロートの外周部が外気供給ダクトにて覆われるため、作業安全上好ましいものとなる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図中の1は本発明に係るバーナ装置であって、アスファルト混合物の素材である新規骨材を加熱乾燥処理するドライヤ2の一端部に配設しており、燃焼量を大幅に絞れるように高ターンダウン比のものを採用している。前記ドライヤ2は、内周部に多数の掻き上げ羽根(図示せず)を周設した円筒状のドラム3を機台(図示せず)上に回転自在に傾斜支持し、駆動用モータ(図示せず)にて所定速度で回転させるようにしており、ドラム3一端側のホットホッパ4に配設した前記バーナ装置1よりドラム3内に熱風を供給する一方、ドラム3他端側のコールドホッパ5に連結した排気ダクト6の下流に介在させた排風機7にて吸引することによりドラム3内を通過する高温ガス流を維持している。
【0017】
前記ドライヤ2の近傍には各種粒径の新規骨材を貯蔵する骨材ホッパ(図示せず)を設置しており、該骨材ホッパから払い出される骨材をベルトコンベヤ8を介してドラム3内に供給し、骨材がドラム3内を転動流下する間に高温ガス流と接触させて所望温度まで加熱乾燥させ、ホットホッパ4下部の排出口より順次排出させるようにしている。また、前記排気ダクト6の下流には、排ガス中のダストを捕集するバグフィルタ等の集塵機9を備えていると共に、その下流端は風量調整ダンパー10と排風機7とを介して煙突11に連結しており、前記集塵機9にて清浄化した排ガスを煙突11から大気中に放出させるようにしている。
【0018】
図中の12は前記バーナ装置1の燃焼用空気供給ファン13に燃焼用空気である外気を供給する外気供給ダクトであって、該外気供給ダクト12の途中をバーナ装置1先端部のスロート14の外周に沿わせるように周設して略環状に形成していると共に、流路の一部を仕切板15にて遮り、
図2、
図3中の一点鎖線にて示すように、外気導入口16より吸引した外気Aをスロート14の外周に沿って周回させた上で下流のバーナ装置1へ供給させるようにしている。このとき、吸引された外気Aが高温のスロート14表面と一定時間接する間に熱交換が行われ、スロート14表面は冷却される一方、燃焼用空気である外気は予熱される。
【0019】
図3中の17は乱流発生用の突起片であって、外気導入口16より吸引した外気Aがスロート14の外周に形成した環状の外気供給ダクト12を周回して通過する際に、略千鳥状に配置した複数の突起片17によって流れが妨げられて乱流を生じ、それによって攪拌される外気Aと高温のスロート14表面との間でより一層効率よく熱交換が行われるように図っている。なお、前記突起片17の形状、大きさ、設置数、及びその配置等は、図に示されるものに限定されるものではなく、実際の熱交換の効率等に応じて適宜選定・調整するとよい。また、スロート14の外周面上でなく、環状の外気供給ダクト12内周面上にスロート14側へ向けて突設させるようにしてもよい。更に、外気供給ダクト12をスロート14の外周面に沿って複数周回させるように略螺旋状に周設させてもよく、その場合には外気Aとスロート14表面との接触時間を延ばせて熱交換の効率をより高めることが可能となる。
【0020】
そして、上記構成のバーナ装置1を燃焼運転させて下流のドラム3内に熱風を供給し、アスファルト混合物の素材である新規骨材を加熱乾燥処理するときには、ドラム3内に供給される新規骨材の供給量やその性状等に応じてバーナ燃焼量を調整し、その燃焼量に基づいて燃焼用空気である外気を外気供給ダクト12よりバーナ装置1へ供給させる。そして、バーナ装置1へ供給された外気はスロート14へと送り出され、燃料油と共に混合しながら燃焼して火炎を形成する。
【0021】
このとき、スロート14の内面は前記火炎に晒されることとなるが、スロート14外周に周設した外気供給ダクト12を通過する燃焼用空気である外気によってスロート14表面が効果的に冷却され、例えば、本実施例にて採用されているような高ターンダウン比のバーナ装置1において、新規骨材の処理量に合わせて燃焼量を最低燃焼量付近に絞った場合でも、スロート14の赤熱や熱変形等の不具合の発生を抑制することができる。また、バーナ装置1に燃焼用空気として供給される外気を予熱でき、燃焼効率を高められて省エネルギー効果も期待できるものとなる。
【0022】
なお、本発明者らが行った試験データによれば、バーナ燃焼量によっては赤熱を生じるほど高温(略500℃程度)となるスロート14の表面温度を、前記外気供給ダクト12を通過する外気Aとの熱交換によって略100℃程度低減でき、また突起片17の追加による熱交換効率の向上に伴い更に略50℃程度低減させることができ、赤熱の発生を防ぐことが可能となってスロート14への熱負荷の軽減効果が確認された。
【符号の説明】
【0023】
1…バーナ装置 2…ドライヤ
3…ドラム 12…外気供給ダクト
13…燃焼用空気供給ファン(バーナ) 14…スロート(バーナ)
17…突起片