(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成ではリード端子と導体箔の接合面積が小さいため、20A〜60A程度の大電流を通電するリアクトルに適用する上では、リード端子の電気抵抗に起因する発熱や抵抗損失が大きいという課題がある。
【0006】
従って本発明の目的は、発熱や抵抗損失が小さく、大電流を通電することが可能なリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軟磁性コアと、前記軟磁性コアに巻導体箔と絶縁セパレータを重ねて巻き回すことにより形成するコイルと、前記巻導体箔の巻き回し方向端部に設ける矩形板状の導体よりなる引出端子と、外部接続端子を備え、前記巻導体箔より引出された前記引出端子の先端部に、前記外部接続端子の一端と導電接続する導電接続部を備え、前記先端部における前記導電接続部は前記外部接続端子の方向に向かって第1の凹部を形成し、前記第1の凹部の中央に前記外部接続端子の方向に頂点を有する円錐状若しくは角錐状の第2の凹部を少なくとも一つ配し、前記第1の凹部の周縁は曲面により構成されるリアクトルにより上記課題を解決する。
【0008】
さらに、前記引出端子は巻き回しまたは積層した導体箔を備え、前記引出端子の先端部は、前記導体箔の少なくとも一層を除いて構成することが好ましい。
【0009】
また、前記引出端子の先端部の厚さは、1.5mmよりも薄く、0.1mmより厚いことが好ましい。
【0010】
また、さらに導電性の固定部材を備え、前記引出端子の先端部の近傍および前記外部接続端子に貫通穴を有し、前記引出端子と前記外部接続端子の前記貫通穴には前記固定部材が挿通され、前記固定部材における両端部の外径が前記貫通穴の内径よりも大きく、前記固定部材における両端部により前記引出端子と前記外部接続端子が挟持されることで、前記固定部材、前記引出端子、及び前記外部接続端子が互いに導電接続され、前記固定部材の一端に前記引出端子の先端部を溶接して構成することが好ましい。
【0011】
また、前記固定部材の一端の側部を支持し、前記引出端子の先端部とともに超音波溶接することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、発熱や抵抗損失が小さく、大電流を通電することが可能なリアクトルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明における実施形態1のリアクトルを示す斜視図である。
【0015】
本発明におけるリアクトルは、図示されない軟磁性コアに装着された、図示されない巻導体箔と絶縁セパレータが重ねて巻き回される構造となるコイル1と、コイル1における巻導体箔の最内周端部と最外周端部より引出された複数の引出端子2が、端子板3に取り付けられた複数の外部接続端子4と各々電気的に接続し、外部接続端子4を介して外部の電子回路と接続される。ここで端子板は絶縁体であり、材質としては、樹脂を成型したものや、ガラスエポキシ基板が例示される。
【0016】
ここで、巻導体箔と絶縁セパレータが重ねて巻き回される構造としては、巻導体箔と絶縁セパレータを重ねつつ巻き回した構造や、巻導体箔上に接着剤層を形成しつつ巻き回して接着剤層を硬化させた構造や、表面に絶縁体を塗布することなどにより絶縁被覆を形成した巻導体箔を巻き回した構造などが例示される。
【0017】
図2は、本発明における実施形態1のリアクトルの一部である外部接続端子部の断面図である。すなわち
図2は、
図1のA面における断面図を示している。
【0018】
本実施形態におけるリアクトルは、予め引出端子2、端子板3、及び外部接続端子4を貫通する貫通穴を設けておき、固定部材としてのリベット51を貫通穴に挿入し、リベットの底部に当たるフランジ52を固定しつつリベット頭部を潰すことでスリーブ53を形成することにより、端子板3に引出端子2と外部接続端子4を固定しつつ導電接続を行う構成を例示する。ここで、引出端子2とスリーブ53の間にワッシャ71を、引出端子2と端子板3の間にワッシャ72を予め入れておくことにより、スリーブ53から端子板3へ加わる圧力を分散して端子板3の変形を防ぐことができるため望ましい。なお、ワッシャ72とスリーブ53が一体成型品であってもよい。
【0019】
なお、図示されない外部回路からのリード線は、外部接続端子4へ溶接もしくは半田付けされることにより本実施形態におけるリアクトルと導電接続することができる。
【0020】
ここで、リアクトルには大電流が通電されるため、リベット51と引出端子2の間の接続部における電気抵抗も低いことが望ましい。
【0021】
そこで、引出端子2の先端部21をスリーブ53上に被さるように折り曲げ、スリーブ53に溶接することにより、接続部の電気抵抗を低くすることができる。
【0022】
ここで軽量性と耐腐食性の面から巻導体箔、引出端子2、リベット51の材質はアルミが望ましく、この場合の溶接する手段としては、超音波溶接や、抵抗溶接等が例示されるが、接続部の電気抵抗を引き下げる上では超音波溶接が望ましい。
【0023】
特に超音波溶接の際は、スリーブ53の側部を固定しつつ行うことで溶接部22の接合強度が高く、接続による電気抵抗が低くなるため望ましい。なお、この場合はスリーブ53の側部には超音波溶接の際に固定されたことに起因する痕跡の残る場合が多い。
【0024】
なお、リベット51のかしめのみによる引出端子2との間の電気抵抗は0.1〜0.4mΩ程度であるのに対し、超音波溶接を併用することにより、0.01mΩ程度にまで引出端子2との間の電気抵抗を低減することが可能となる。
【0025】
また、リベット51と引出端子2をかしめにより接続することで、コイル1などからの引っ張り応力が引出端子2の溶接部22へ伝わることがなく、接続の信頼性の高い構造を取ることができる。
【0026】
図3は、本発明における実施形態1の構成を実施したリアクトルの一部である外部接続端子における溶接部の拡大写真を示す図である。
【0027】
溶接中央部221は複数の四角錐を並べたような窪みであり、溶接周縁部222は曲面により構成される。
【0028】
ここで引出端子2は、後述の溶接を行う際の変形に適していることから、厚さ20μm〜200μm程度の導体箔を円筒状に巻き回して潰した積層構造とするか、複数枚の導体箔をそのまま積層したものを用いるのが望ましい。
【0029】
また引出端子2の厚さは、20A〜60A程度の通電を行う場合は、0.1mmより厚いことが望ましく、0.5mmより厚いことがより望ましく、後述の溶接が可能な厚さである1.5mmより薄いことが望ましく、1.3mmより薄ければより望ましい。このような厚い引出端子2を溶接する際は、充分な溶接を行うために、溶接の際、溶接ヘッドを引出端子2の中へ深く沈み込ませる必要がある。
【0030】
従って、溶接ヘッドとして先端の尖った複数の四角錐を並べたものを用いることで溶接ヘッドの先端部を引出端子2の中へ深く沈み込ませることができるため望ましい。
【0031】
しかし、このような複数の四角錐を並べた溶接ヘッドを用いて溶接すると、引出端子2における溶接周縁部222の角部に溶接ヘッドの圧力が集中し、引出端子2が破れてしまう可能性があるため、溶接ヘッド先端における周縁部の角部を曲面化する加工を施すことで溶接ヘッドの圧力を分散させ、溶接による引出端子2の破れを未然に防止することが望ましい。
【0032】
なお、溶接ヘッドとしては、任意の角錐や円錐を並べたものを用いてもよい。特に円錐を並べた溶接ヘッドであれば角部の曲面化が既になされていることとなる。
【0033】
図4は、本発明におけるリアクトルの外部接続端子部へ接続するリベットのスリーブへ引出端子を超音波溶接する状態の断面図であり、
図1におけるC面の断面に対応している。
【0034】
リベットのフランジ52をアンビル61で支持し、スリーブ53をホルダー621、622で挟み込むことで固定し、ホーン63で引出端子2をスリーブ53に押し付けた状態でホーン63を引出端子2面内の方向へ超音波振動させることにより、引出端子2とスリーブ53の界面が固溶し溶接することができる。
【0035】
ここで、ホーン63が引出端子2と接触する部分にはナール加工を施し、超音波溶接の際のホーン63と引出端子2の間の滑りを防ぐよう構成することが望ましい。
【0036】
また、スリーブ53をホルダー621、622で挟み込むことによりスリーブ53が特に超音波振動の加わる方向に対して確実に固定されるため、特に0.5mmより厚くなる引出端子2とスリーブ53の超音波溶接を確実に行うことができる。
【0037】
なお、超音波溶接の際にスリーブ53をホルダー621、622で挟み込むことに起因する痕跡がスリーブ53の側面に残る場合が多い。
【0038】
また、
図3の溶接中央部及び溶接周縁部の形状は、主に
図4におけるホーン63のナール加工形状に由来するものである。
【0039】
すなわち本発明は、軟磁性コアと、巻導体箔と絶縁セパレータが重ねて巻き回される構造となるコイル1と、導体箔を積層した細長い板状の引出端子2と、外部接続端子4を備え、コイル1は軟磁性コアに巻導体箔とセパレータを巻き回したものであり、引出端子2は巻導体箔の巻き回し方向端部に設けられ、巻導体箔より引出された引出端子2の先端部が溶接されることで外部接続端子4と導電接続し、先端部における溶接部22は外部端子4の方向に向かって第1の凹部を形成し、第1の凹部の中央にある溶接中央部221は、頂点を有する円錐状若しくは角錐状の第2の凹部を少なくとも1つ有し、第1の凹部の周縁である溶接周縁部222は曲面により構成されているリアクトルの実施形態を取り得る。
【0040】
(実施形態2)
図5は、本発明における実施形態2のリアクトルの分解模式図である。
【0041】
コイルは巻導体箔11と絶縁セパレータ12を重ねつつ巻き回した構造であり、巻導体箔11と引出端子2は溶接部23で溶接し、導電接続する構成を例示する。ここで、引出端子2は、複数枚の端子導体箔をそのまま積層して構成することもできる。
【0042】
溶接部23についても
図3と同様に凹部を形成し、凹部の中央である溶接中央部は、頂点を有する円錐状若しくは角錐状の窪みを少なくとも1つ有し、前記凹部の周縁である溶接周縁部は曲面により構成されていることが望ましい。
【0043】
なお、溶接部23を複数設けることにより、巻導体箔11と引出端子2の間の導電接続の信頼性をより高めることができる。この場合、複数の溶接部23周辺の引出端子2の強度を確保するため、溶接部23の周囲には引出端子2の余白のあることが望ましい。引出端子2は端子導体箔を積層したものでもよく、各層の端子導体箔を複数の外部端子に各々接続することにより、巻導体箔11から複数の外部端子への導電接続を行ってもよい。
【0044】
図6は、本発明における実施形態2のリアクトルの一部である外部接続端子部の断面図である。すなわち
図6は、
図5のBB面における断面図を示している。
【0045】
引出端子はリベット51のスリーブ53によってかしめられる部分では端子導体箔201、202、203、204を積み重ねた4層構造となっているが、溶接部22へ引き回す間に端子導体箔202、203が除かれ、端子導体箔201、204を積み重ねた2層構造に減らした場合を例示する。
【0046】
このような層構造を取ることにより引出端子を引き回す際の柔軟性が向上し、さらに、スリーブ53でのかしめによる導電接続部までは引出端子の断面積を大きくすることで引出端子の電気抵抗を削減し、溶接部22で溶接可能な厚さに引出端子の厚さを減らすことで溶接部22における接続不良を防止することができるため、大電流通電に適したリアクトルとすることができる。
【0047】
すなわち、溶接部22付近の引出端子の厚さは溶接可能な厚さで制約されるが、上記構成によりスリーブ53でのかしめ部はこのような厚みの制約を受けず、引出端子の厚さを大きく取ることで巻導体箔からリベット51までの電気抵抗を削減することができる。
【0048】
(実施形態3)
図7は、本発明における実施形態3のリアクトルの一部である外部接続端子部の断面図である。すなわち
図7は、
図6の変形例を示している。
【0049】
実施形態2における
図6とは、リベット51のスリーブ53によってかしめられる部分では引出端子が端子導体箔201乃至207を積み重ねた7層構造であり、溶接部22へ引き回す間に端子導体箔202、203、205、206が除かれ、端子導体箔201、204、207を積み重ねた3層構造に減らしている点が異なる。
【0050】
このような実施形態2よりも多くの層を積み重ねた構成を取る場合には、例えば本実施形態のように2層を間引き、次の層を溶接部22に引き回す構成を周期的に繰り返すことで引出端子の積層構造の形態保持性が高まるため、望ましい。
【0051】
なお、1層、もしくは3層以上間引き、次の層を溶接部22に引き回す構成を周期的に繰り返してもよい。
【0052】
(実施形態4)
図8は、本発明における実施形態4のリアクトルの外部接続端子部の断面図である。すなわち
図8は、
図2の変形例を示している。
【0053】
実施形態1における
図2とは、端子板3をリベット51と一体成型することで突出部54が端子板3に埋め込まれ、フランジ52に雄ねじ521と雌ねじ522を設けることにより外部接続端子4を不要とした構成としている点で相違している。
【0054】
また、図示されない外部回路からのリード41を雄ねじ521と雌ねじ522に挟み込むことで外部回路と本発明におけるリアクトルを導電接続している点でも相違している。ここで、リード41と雄ねじ521の間にスプリングワッシャ73とワッシャ74を入れておくことで、雄ねじ521の巻き緩みを防ぐことができるため、望ましい。
【0055】
なお、リード41を雄ねじ521と雌ねじ522に挟み込む際、溶接や半田付けを併用しても良い。また、引出端子2、リベット51、ワッシャ71の材質をアルミとした場合、雄ねじ521を黄銅ニッケルメッキ、スプリングワッシャ73及びワッシャ74をリン青銅ニッケルメッキ、リード41を錫メッキをした銅または、錫メッキをした圧着端子とすることにより、接合部からの腐食を防ぐことができるため、望ましい。ここで、スプリングワッシャ73がメッキ皮膜を傷つけることを防ぐため、雄ねじ521とスプリングワッシャ73の間にワッシャ74を挟み込むよう構成するのが望ましい。また、リード41がメッキ皮膜を有している場合には、スプリングワッシャ73との間にワッシャを追加するのが望ましい。
図8では、リード41がアルミを材質とするターミナルを有する圧着端子であるため、メッキ皮膜があったとしても保護する必要はないため、スプリングワッシャ73との間のワッシャを省略している。
【0056】
(実施形態5)
図9は、本発明における実施形態4のリアクトルの巻導体箔の端部から引出端子を作成する手順を示す模式図である。
【0057】
巻導体箔の端部から引出端子を作成する手順を図と共に説明する。
【0058】
図9(a)は、巻導体箔11の巻き回し端部を示している。巻導体箔11の端部より長さLの部分を折り線2001に沿って折り返す。ここで、長さLは巻導体箔11の幅Wよりも大きくする。
【0059】
次に、
図9(b)に示すように余白Xを残して巻き回し方向に対して45度の傾きを持つ折り線2002に沿って折り返す。折り返しによって
図9(c)に示すように巻導体箔よりはみ出した部分が引出端子2となり、その長さをYとすると、L−W=X+Yの関係式が成立する。
【0060】
なお、余白は必ずしも設けなくともよいが、余白Xを設けると、引出端子2に引張り力が働いた場合に図示されない絶縁セパレータとの間の摩擦力が余白Xの部分からも生じるため、巻導体箔11端部の巻きずれを防ぐことができるため望ましい。
【0061】
次に、引出端子2の端部に切り欠き2003を設け、さらに
図9(d)に示すように折り返した部分を巻き回し方向端部に向かって巻導体箔11の幅方向に平行な折り線2004に沿って折り畳んでゆくと、
図9(e)のように引出端子が完成する。
【0062】
ここで、引出端子の引き回し部24は4層構造となり、先端部21は2層構造となる。
【0063】
さらに、実施形態2の
図6のようにリベットへかしめ、溶接することができる。この際、
図6の端子導体箔201、202、203、204は
図9(d)と対応することになる。
【0064】
(実施形態6)
図10は、本発明における実施形態6のリアクトルの巻導体箔の端部から引出端子を作成する手順を示す模式図であり、
図9と相違する手順を示している。
【0065】
本実施形態の
図10(a)は、実施形態5における
図9(c)に対応し、本実施形態の
図10(b)は、実施形態5における
図9(d)に対応する。
【0066】
すなわち本実施形態では、実施形態5における
図9(a)、
図9(b)までは同じ手順であるが、次の手順では
図10(a)、
図10(b)のように折り曲げされた部分まで切り欠き2005を設ける点が異なる。