(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288812
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】誤り訂正符号を有する不揮発性メモリシステムの消去
(51)【国際特許分類】
G11C 16/34 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
G11C16/34 130
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-93707(P2013-93707)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-232272(P2013-232272A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】13/459,344
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504199127
【氏名又は名称】エヌエックスピー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NXP USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フーチェン ム
(72)【発明者】
【氏名】フランク ケイ.ベイカー ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】チェン ホー
【審査官】
塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−025891(JP,A)
【文献】
特許第3937214(JP,B2)
【文献】
特開2012−069180(JP,A)
【文献】
特開2006−134476(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01703522(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体メモリ記憶デバイスにおいて、
複数の不揮発性メモリビットセルを含む不揮発性メモリビットセルのアレイであって、1つ以上のブロックに分割されている、不揮発性メモリビットセルのアレイと、
前記アレイに結合されているメモリコントローラと、
前記アレイと前記メモリコントローラとに結合されている誤り訂正符号ユニットとを備え、
前記メモリコントローラは、前記1つ以上のブロックのうちの1つのブロックに対する消去動作の際、
通常消去検証電圧レベルによる第1の検証動作を実行する工程と、
前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第1の検証動作に不合格であったビットの数が1であるか否かを判定する工程と、
前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第1の検証動作に不合格であったビットの数が1である場合、前記通常消去検証電圧レベルよりも高い緩和消去検証電圧レベルによる第2の検証動作を実行する工程と、
前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第2の検証動作に不合格であったビットの数が1であるか否かを判定する工程と、
前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第2の検証動作に不合格であったビットの数が1である場合、前記消去動作に成功したと判断する工程と、を行うように構成されている、半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項2】
前記メモリコントローラは、
前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第2の検証動作に不合格であったビットの数が1である場合、前記1つのブロックに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行しているか否かを判定する工程と、
前記1つのブロックに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと判断する工程と、を行うようにさらに構成されている、請求項1に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項3】
前記消去動作の際、前記第1の検証動作および前記第2の検証動作は各消去パルスの後または複数の消去パルスを含む消去パルスのグループの後に実行される、請求項1に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項4】
前記緩和消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む誤り訂正符号セグメントに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと判断される、請求項1に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項5】
前記メモリコントローラは、前記1つのブロックに対する前記消去動作の際、前記第1の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのうちの1つのメモリビットセルのみが前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出され、前記第2の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのすべてが前記緩和消去検証電圧レベルによる消去に成功したとして検出された場合、消去パルスの最大数に達したときに前記消去動作に成功したと判断するように構成されている、請求項1に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項6】
前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む誤り訂正符号セグメントに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと前記メモリコントローラによって判断される、請求項5に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項7】
前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む前記1つのブロックに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと判断される、請求項5に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項8】
前記第1の検証動作に不合格であった不揮発性メモリビットセルの数をカウントする前に、所定数の消去パルスが前記メモリコントローラによって実行される、請求項1に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項9】
前記所定数の消去パルスは5〜10個の消去パルスである、請求項8に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項10】
不揮発性メモリに記憶される1つ以上の誤り訂正符号インジケータを含む誤り訂正符号記録部をさらに備え、前記誤り訂正符号インジケータの各々は前記複数の不揮発性メモリビットセルの前記複数のブロックのうちの対応するブロックに割り当てられており、誤り訂正符号による訂正が前記対応するブロックに対して実行されたか否かを示す、請求項1に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項11】
不揮発性メモリに記憶される1つ以上の誤り訂正符号インジケータを含む誤り訂正符号記録部をさらに備え、前記誤り訂正符号インジケータの各々は前記複数の不揮発性メモリビットセルの対応する誤り訂正符号セグメントに割り当てられており、誤り訂正符号による訂正が前記対応する誤り訂正符号セグメントに対して実行されたか否かを示す、請求項1に記載の半導体メモリ記憶デバイス。
【請求項12】
半導体メモリ記憶デバイスを消去する方法であって、
メモリコントローラが、複数の不揮発性メモリビットセルを含む不揮発性メモリビットセルのアレイであって、1つ以上のブロックに分割されている、不揮発性メモリビットセルのアレイの1つのブロックに対して消去動作を実行する工程と、
前記メモリコントローラが、通常消去検証電圧レベルによる第1の検証動作を実行する工程と、
前記メモリコントローラが、前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第1の検証動作に不合格であったビットの数が1であるか否かを判定する工程と、
前記メモリコントローラが、前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第1の検証動作に不合格であったビットの数が1である場合、前記通常消去検証電圧レベルよりも高い緩和消去検証電圧レベルによる第2の検証動作を実行する工程と、
前記メモリコントローラが、前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第2の検証動作に不合格であったビットの数が1であるか否かを判定する工程と、
前記メモリコントローラが、前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルのうち前記第2の検証動作に不合格であったビットの数が1である場合、前記消去動作に成功したと判断する工程と、
を備える方法。
【請求項13】
前記メモリコントローラが、前記1つのブロックに対する消去動作の際、前記第1の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのうちの1つの不揮発性メモリビットセルのみが前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出され、前記第2の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのすべてが前記緩和消去検証電圧レベルによる消去に成功したとして検出された場合、消去パルスの最大数に達したときに前記消去動作を成功したと判断する工程をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
消去されている前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルに対して誤り訂正符号による訂正が以前に実行されていない場合、前記消去動作を成功とする工程をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記緩和消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む誤り訂正符号セグメントに対して誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと判断される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記消去動作の際、前記第1の検証動作および前記第2の検証動作は各消去パルスの後または複数の消去パルスを含む消去パルスのグループの後に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記不揮発性メモリビットセルを含む前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルの誤り訂正符号セグメントに対して誤り訂正符号による訂正が以前に実行されていない場合、前記消去動作を成功とする工程をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む前記1つのブロックの不揮発性メモリビットセルに対して誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作を成功とする工程をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に不揮発性メモリ(NVM)に関し、より詳細には、誤り訂正符号(ECC)を有するNVMシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性メモリ(NVM)は、一般にプログラムおよび消去に特別な動作を必要とし、それらの動作が実行されることの可能な回数には限界がある。また、一般的なメモリタイプであるフラッシュメモリでは、消去はブロック単位で行われる。したがって、既に消去に成功したメモリセルは、他のメモリセルが消去されている間、引き続き消去条件に置かれることがある。消去に時間の掛かるビットはスロービットと呼ばれる場合がある。一部のメモリセルは過消去される場合があるので、組込の消去動作の一環として、過剰なリークなど過消去(オーバーイレース)に関連する問題を克服するようにメモリセルの弱いプログラム(ソフトプログラミング)を行う必要がある。特許文献1には、過消去セルを回復させるメモリ装置及び方法について記載されている。ソフトプログラミングは、通常、アドレスごとに低いバイアスで行われるので、比較的長い時間を要する。より多くのセルのソフトプログラミングが必要な場合には、結局、組込の消去動作を指定された最大時間以内に完了させることができない場合がある。時間を通じて、場合によっては数万サイクルを通じて別の問題が生じ、メモリセルが弱くなる、すなわち、消去が遅くなることもある。これらの隠れた弱いメモリセルは、それらのメモリセルが実際に弱く、すなわち消去が遅くなるまでは、検出が非常に困難である。したがって、デバイスが製品内に配置された後、相当時間を経てから、そうしたメモリセルが発生することは珍しくなく、そのため製品に故障が生じ得る。いかなる状況下においても、製品故障は避けられることが非常に望ましいが、特に集積回路の故障にはそれが当てはまる。集積回路は一般に製品のユーザが修理できるものではなく、製品のコストに対する修理の費用を考慮しても修理を行う価値があると仮定すると、製品が返送される必要があり、また特別な訓練を受けた者が高価な機器を用いて修理を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6967873号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、上記において提示した問題のうちの1つ以上を改善するためのNVMシステムの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、消去動作を最適化するべく、誤り訂正符号(ECC)が不揮発性メモリ(NVM)とともに使用される。特に、十分な利用時間の後、消去動作は消去の遅い1つのビットによって妨げられる場合もある。この1つのビットが比較的消去されそうにない場合には、消去に成功しそうにないと予測可能な場合がある。そのような場合、ECCによって、この1つのビットの故障を訂正することができる。他方、この1つのビットの消去が比較的成功しそうな場合、消去に成功するであろうという高い確度とともに、消去処理を継続することができる。このことは、図面および以下の記載を参照することによって、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】
図1のNVMシステムの理解に有用なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下では本発明を例として示すものであり、本発明は添付の図面によって限定されない。図面において同様の参照符号は類似の要素を示す。図中の要素は簡潔明瞭を旨として示されており、必ずしも縮尺に応じて描かれてはいない。
【0008】
図1には不揮発性メモリ(NVM)10を示す。不揮発性メモリ10は、NVMアレイ12、誤り訂正符号(ECC)ユニット14、ECC記録部16、およびメモリコントローラ18を有する。NVMアレイ12は、ブロック0として示されているブロック20、ブロック1として示されているブロック22、ブロック2として示されているブロック24、およびブロック3として示されているブロック26を含む、複数のブロックを含む。メモリコントローラ18は、NVMアレイ12およびECC記録部16に結合されている。ECCユニット14は、NVMアレイ12およびECC記録部16に結合されている。ブロック20,22,24,26は各々複数のメモリセルを有する。ブロック20,22,24,26のうちの所与のブロックについて、そのメモリセルのすべてが同時に消去される。これは、フラッシュメモリ(消去動作がブロックごとに行われる)であるNVMでは、典型的である。
【0009】
メモリコントローラ18は、ブロック消去動作の制御、読出およびプログラミングなど、NVMアレイ12の動作を制御する。ECCユニット14は、NVMアレイ12の出力を受信し、誤りを訂正し、訂正された出力を提供する。また、ECCユニット14は、NVMアレイにおけるいずれのロケーションが訂正を必要としているかに関する情報や、それらの訂正に関する情報をECC記録部16に提供する。ECC記録部16は、好ましくは不揮発性メモリであり、NVMアレイ12の予約済みの部分に存在してよい。メモリコントローラ18は、ECC記録部16に記憶されている情報にアクセスすることができる。
【0010】
図2には、ブロック20,22,24,26のうちの1つのブロックの消去動作の前におけるビットのゲート電圧分布30と、消去動作の一部の後におけるビットの分布32とが示されている。分布30は、消去処理全体のうちの第1の部分に由来し、最初に1つのブロックの全ビットがプログラム状態にされる。この分布は密であることが好ましい。消去動作は、消去されているブロックの全ビットの閾値電圧を充分に低い閾値電圧まで低下させ、指定の電流が伝達される電圧であるゲート電圧Vgが通常消去検証レベル(通常消去検証Vgnとして参照される)未満となる複数の消去パルスとして実行される。そのため、第1のステップは、連続する消去パルスを含む第1のグループの消去パルスを印加することである。第1のステップの後、ビットセルは、指定の電流を伝達するためのゲート電圧Vgが通常消去検証Vgn未満となることによって、それらのビットセルが適切に消去されているかを検証するべく、検査される。このビットセルの検査を、「検証(verify)」と呼ぶ場合がある。より多くの消去が必要な場合、パルスを印加する後続のステップが実行される。この後続のステップは、同じ持続時間、同じ電圧の、同数のパルスを有してもよい。他方、後続の消去ステップは、パルスの数、持続時間、および電圧に関して、同じであっても異なってもよい。指定の電流が伝達されるとともに消去検証電圧Vgn未満であるゲート電圧Vgを生じる閾値電圧を、その全ビットが有するので、分布32は消去されていると判断される。したがって、分布32のビットは、消去検証電圧Vgn未満として参照される。伝達される指定の電流がプログラム検証電圧Vgpを超えるゲート電圧を生じる閾値電圧をその全ビットが有するので、分布30はプログラムされていると判断される。したがって、分布30のビットは、プログラム検証電圧Vgpを超えているものとして参照される。NVMシステム10の通常動作中に実行される読出の際にビットセルに印加されるゲート電圧Vgは、消去検証電圧Vgnとプログラム検証電圧Vgpとの間にあり、ビットのプログラム状態と消去状態との間で区別するとともに、データ保持の充分なマージンを保証する読出を実行するべく最適化されるように選択される。すなわち、消去されるビットは、通常動作中にゲート電圧Vgが読出電圧として印加されるとき、電流がいくらかのマージンの分、所定の電流を上回る状態にある。また、プログラムされるビットは、通常動作においてゲート電圧Vgが読出電圧として印加されるときにいくらかのマージンの分、所定の電流を下回る電流を提供する。
【0011】
図2に示されているように、消去動作において第1のステップから生じる電圧Vgnを下回っておらず、したがって、消去検証電圧Vgnをゲート電圧Vgとして印加することによる検査において充分に消去されないビット34も存在する。消去検証電圧Vgnよりも、所定の差(例えば、300ミリボルト)の分高いVgrの上昇した電圧であるゲート電圧が印加され、別の検証が実行される。この検査は、上昇した電圧Vgrがゲート電圧Vgとして印加されるので、より高い閾値電圧を有するビットが指定の電流を伝達可能である点において、より容易である。上昇した電圧Vgrをゲート電圧Vgとして用いることは、緩和消去検証と称される場合がある。
図2に示されているように、ビット34は、この緩和検証に合格する。
【0012】
図3に示すケースでは、分布30は、
図2の分布32に類似の分布36を生じるべく実行される消去動作の第1のステップを有するが、電圧Vgnに基づく消去検査に合格しないビット38を有する。違いは、検査に合格しない1つのビットが、電圧Vgrを印加する緩和検査にも合格しないことである。したがって、このケースでは、第1の消去ステップの後の緩和検証に合格しない唯一のビットであるビット38は、
図2においてビット34を消去するのに必要とされるよりもさらに多くの消去を必要とすると予測される。
【0013】
図4に示すのは、
図2および
図3の状況に如何にして対処するかを示すフローチャート50である。フローチャート50は、ステップ51,52,54,56,58,62,64,66,68,70,72,74,76を含む。ステップ51では、消去動作が開始し、消去パルスのカウントが0に初期化される。ステップ52では、ブロック20,22,24,26のうちの1つのブロックに対する消去動作の1つのステップにおいて1つ以上の消去パルスを印加するとともに、消去パルスのカウントをインクリメントする。ステップ54では、検証が実行され、通常検証レベルのVgnによる不合格ビットの数が求められる。不合格ビットの数を、
図4には「A」と示している。ステップ56では、不合格ビットの数が0であるか否かが判定される。答え(判定結果)が肯定(YES)である場合、この処理はステップ76にて終了し、消去は合格である。この処理は、必要に応じてソフトプログラミングに継続することが可能である。ソフトプログラミングは、消去ビット分布を密にするために行われ、過消去されたビットにおけるリーク電流を低減するにあたって非常に重要なことがある。ステップ56において判定結果が否定(NO)である場合、ステップ58において、電圧Vgnにより検査され不合格であったビットの数が1であるか否かが判定される。判定結果が否定である場合、これは2つ以上の不合格ビットがあることを意味する。2つ以上の不合格ビットがある場合、ステップ62において、消去パルスが最大数に達しているか否かが判定される。通常、最大数であると判断される消去パルスの数には限界がある。その数に達していない場合、次のステップでは、1つ以上の消去パルスを印加することによって別の消去ステップが実行され、次いで、先のようにステップ54に継続する。電圧Vgnにより不合格であったビットの数が1である場合、消去検証レベルが緩和され、又はVgrまで増加され、ステップ70において、不合格ビットの数を決定するべく再び検証が実行される。Vgrによる不合格ビットの数を、
図4では「B」として示している。ステップ72におけるチェックにて、Vgrによる不合格ビットの数が1である場合、ステップ74に示すように、このブロックについてECC訂正が以前に行われたか否かを判定するべくECC記録部16がチェックされる。このブロックについてECCによる訂正が実行されていなかった場合、ステップ76に示すように消去は合格となる。この結論は、比較的消去されそうにないこの1つの不合格ビットによって生じる任意の誤りを訂正するためにECCを使用可能であるという知識に基づく。これによって、ブロックに、追加の消去パルスを与えて耐久性に影響を及ぼし、より多くのビットに過消去を生じさせる消去ステップの数を抑えることができる。
【0014】
ステップ74では、消去されているブロックにおいてECC訂正が行われたと判定された場合、次のステップでは、ステップ62に示されるように、最大数の消去パルスが発生したか否かが判定される。最大数の消去パルスが発生していない場合、次のステップとして、1つ以上の消去パルスを印加する別の消去ステップに継続する。ステップ62において、最大数の消去パルスに達したと判定される場合、ステップ68に示されるように、消去は不合格となる。このケースでは、Vgrを用いて不合格であったことが既に判定されており、Bはゼロに等しくないので、ステップ64に示されている問いに対する判定結果は否定となる。ステップ72において、緩和検査に不合格であったビットの数が0であると判定されるケースでは、ステップ62では、最大数のパルスに達したか否かが判定される。ステップ62において、最大数のパルスに達していないと判定された場合、この処理はステップ52におけるさらなる消去パルスに継続する。このケースでは、VgnとVgrとの間で不合格であったビットは、さらなる消去パルスでは合格すると予測される。ステップ62において、最大数の消去パルスに達したと判定される場合、ステップ64において、Vgnによる不合格ビットの数が1であるか否かと、1つの不合格ビットがVgrによる緩和検査に合格するかとが判定される(ステップ64に示されている、A=1かつB=0)。判定結果が肯定である場合、消去されているブロックがECCユニット14によって訂正されているか否かを判定するべく、ECC記録部16がメモリコントローラ18によってチェックされる。消去されているブロックがECCユニット14によって訂正されていない場合、ステップ76に示されるように、消去は合格となる。ステップ66において、消去されているこのブロックに対しECC訂正が必要であったと判定される場合、次のステップにおいて、消去は不合格となる(ステップ68)。
【0015】
利用可能なECC訂正機能の利点は、ブロックレベルにおいてECC訂正が必要であることが既に分かっているか否かのみならず、欠陥のあるビットが所与のアーキテクチャ内に位置していることにも基づき得る。たとえば、ECCがセグメント毎(セグメントベース)の訂正を行い、1つのセグメントは64ビットの倍長語(ダブルワード)であり、ECC資源が各セグメント専用である場合がある。このようなケースでは、ECC訂正を以前に必要としていないセグメントに不合格ビットがある場合、この不合格ビットが位置するセグメントにおいてECC訂正が依然として利用可能であるので、その不合格ビットは依然として消去に合格したと判断されることができる。そのような場合、2つの不合格ビットが異なるセグメントに位置するのであれば、その2つの不合格ビットが消去に合格であるとすることさえ可能である。したがって、たとえば、
図4のステップ74は、不合格ビットが位置するセグメントについてECC訂正が必要とされたか否かを調べるためのチェックであってもよい。不合格ビットが位置するセグメントについてECC訂正が必要でなかった場合、その不合格ビットに対し依然としてECC訂正が完全に利用可能である。したがって、2つの不合格ビットが同じセグメントにない限り、消去されているブロックにおけるセグメントの数と同じ数までの不合格ビットについてECC訂正を行える可能性が存在する。そのようなケースでは、ECC記録部は、いずれのセグメントがECC訂正を必要としたかに関する情報を含む。したがって、1つ以上の不合格ビットの判定は、ブロック毎(ブロックベース)ではなくセグメント毎の判定である。
【0016】
したがって、メモリブロックでは、1つの不合格ビットについての最も起こり得る状況を知ることと、利用可能なECCを利用することとを利用して消去動作が行われる。あるいはECCが必要とされず、消去の際に1つのスロービットしかない場合、この状況にECCによって対処することが可能である。1つのスロービットが合格となりそうな場合、消去はそのビットが最終的に合格となるとの予測をもって継続される。1つのスロービットが合格となりそうにない場合、消去処理を継続して成功する可能性は高くないので、ECCによって極めて高い確度で誤りが訂正されるというのでない限り、後続の消去ステップの実行は不要となる。
【0017】
別の手法では、消去検証中にECCチェックは実行されず、通常消去検証レベルにより1つのビットしか不合格とならず、かつ、緩和消去検証レベルにより1つのビットしか不合格とならない場合、または通常消去検証レベルにより1つのビットしか不合格とならないが消去パルス数のカウントが最大消去パルスのカウントの限界に達する場合、消去動作は成功であると判断される。ECCは、通常動作中、不合格ビットを訂正するために依然として実行される。
【0018】
以上、複数の不揮発性メモリビットセルを含む不揮発性メモリビットセルのアレイであって、1つ以上のブロックによるパーティションに分割されている不揮発性メモリビットセルのアレイを備える半導体メモリ記憶デバイスが提供されたことが認められる。この半導体メモリ記憶デバイスは、前記アレイに結合されているメモリコントローラと、前記アレイと前記メモリコントローラとに結合されている誤り訂正符号ユニットとをさらに備える。前記メモリコントローラは、前記1つ以上のブロックのうちの1つのブロックに対する消去動作の際、第1の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのうちの1つの不揮発性メモリビットセルのみが通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出され、かつ、第2の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのうちの1つの不揮発性メモリビットセルが前記通常消去検証電圧レベルよりも高い緩和消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出された場合、前記消去動作に成功したと判断するように構成されている。この半導体メモリ記憶デバイスは、消去されているブロックに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと判断されるという特徴をさらに有してもよい。この半導体メモリ記憶デバイスは、前記消去動作の際、前記第1の検証動作および前記第2の検証動作は各消去パルスの後または複数の消去パルスを含む消去パルスのグループの後に実行されるという特徴をさらに有してもよい。この半導体メモリ記憶デバイスは、前記緩和消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む誤り訂正符号セグメントに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと判断されるという特徴をさらに有してもよい。この半導体メモリ記憶デバイスは、前記メモリコントローラは、前記1つのブロックに対する前記消去動作の際、前記第1の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのうちの1つのメモリビットセルのみが前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出され、前記第2の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのすべてが前記緩和消去検証電圧レベルによる消去に成功したとして検出された場合、消去パルスの最大数に達したときに前記消去動作に成功したと判断するように構成されているという特徴をさらに有してもよい。この半導体メモリ記憶デバイスは、前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む誤り訂正符号セグメントに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと前記メモリコントローラによって判断されるという特徴をさらに有してもよい。この半導体メモリ記憶デバイスは、前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む前記1つのブロックに対して前記誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと判断されるという特徴をさらに有してもよい。この半導体メモリ記憶デバイスは、前記第1の検証動作に不合格であった不揮発性メモリビットセルの数をカウントする前に、所定数の消去パルスが前記メモリコントローラによって実行されるという特徴をさらに有してもよい。この半導体メモリ記憶デバイスは、前記所定数の消去パルスは5〜10個の消去パルスであるという特徴をさらに有してもよい。この半導体メモリ記憶デバイスは、不揮発性メモリに記憶される1つ以上の誤り訂正符号インジケータを含む誤り訂正符号記録部をさらに備えてよく、その場合、前記誤り訂正符号インジケータの各々は前記複数の不揮発性メモリビットセルの前記複数のブロックのうちの対応するブロックに割り当てられており、誤り訂正符号による訂正が前記対応するブロックに対して実行されたか否かを示す。この半導体メモリ記憶デバイスは、不揮発性メモリに記憶される1つ以上の誤り訂正符号インジケータを含む誤り訂正符号記録部をさらに備えてもよく、その場合、前記誤り訂正符号インジケータの各々は前記複数の不揮発性メモリビットセル
の対応する誤り訂正符号セグメントに割り当てられており、誤り訂正符号による訂正が前記対応する誤り訂正符号セグメントに対して実行されたか否かを示す。
【0019】
半導体メモリ記憶デバイスを消去する方法も開示されている。この方法は、複数の不揮発性メモリビットセルを含む不揮発性メモリビットセルのアレイの一部の不揮発性メモリビットセルに対して消去動作を実行する工程を備える。この方法は、前記消去動作の際、第1の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのうちの1つの不揮発性メモリビットセルのみが通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出され、第2の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのすべてが前記通常消去検証電圧レベルよりも高い緩和消去検証電圧レベルによる消去に成功したとして検出された場合、消去パルスの最大数に達したときに前記消去動作を成功とする工程をさらに備える。この方法は、前記消去動作の際、第1の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのうちの1つの不揮発性メモリビットセルのみが通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出され、かつ、第2の検証動作によって、前記複数の不揮発性メモリビットセルのうちの1つの不揮発性メモリビットセルが前記通常消去検証電圧レベルよりも高い緩和消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出された場合、前記消去動作を成功とする工程をさらに備えるという特徴をさらに有してもよい。この方法は、消去されている前記一部の不揮発性メモリビットセルに対して誤り訂正符号による訂正が以前に実行されていない場合、前記消去動作を成功とする工程をさらに備えてもよい。この方法は、前記緩和消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む誤り訂正符号セグメントに対して誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作は成功したと判断されるという特徴をさらに有してもよい。この方法は、前記消去動作の際、前記第1の検証動作および前記第2の検証動作は各消去パルスの後または複数の消去パルスを含む消去パルスのグループの後に実行されるという特徴をさらに有してもよい。この方法は、前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記不揮発性メモリビットセルを含む前記一部の不揮発性メモリビットセルの誤り訂正符号セグメントに対して誤り訂正符号による訂正が以前に実行されていない場合、前記消去動作を成功とする工程をさらに備えてもよい。この方法は、前記通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であった前記1つの不揮発性メモリビットセルを含む前記一部の不揮発性メモリビットセルに対して誤り訂正符号ユニットが以前に訂正を実行していない場合、前記消去動作を成功とする工程をさらに備えてもよい。
【0020】
不揮発性半導体メモリデバイスを消去する方法も開示されている。この方法は、複数のビットセルを含むビットセルのアレイにおける一部のビットセルについて、消去動作中に消去検証に不合格であったビットセルの数を決定する工程を備える。この方法は、前記一部のビットセルに対して誤り訂正符号による訂正が以前に実行されたか否かを判定する工程をさらに備える。この方法は、所定数の消去パルスの後に消去検証に不合格であったビットセルの数が閾値未満であり、かつ、前記誤り訂正符号による訂正が前記一部のビットセルに対して実行されていない場合、前記消去動作に成功したとする工程をさらに備える。この方法は、前記一部のビットセルに対する前記消去動作の際、第1の検証動作によって、前記所定数のビットセルが通常消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出され、第2の検証動作によって、前記所定数のビットセルが緩和消去検証電圧レベルによる消去検証に不合格であるとして検出される場合、前記消去動作を成功とする工程をさらに備えてもよい。
【0021】
本明細書において、具体的な実施形態を参照して本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲に明記されているような本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな改変および変更を為すことができる。たとえば、アレイあたりのブロックの数は変化することができる。したがって、本明細書および図面は限定的な意味ではなく例示とみなされるべきであり、すべてのこのような改変が本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本明細書において具体的な実施形態に関して記載されているいかなる利益、利点、または問題に対する解決策も、任意のまたはすべての請求項の重要な、必要とされる、または基本的な特徴または要素として解釈されるようには意図されていない。
【0022】
本明細書において使用される場合、「結合されている」という用語は、直接結合または機械的結合に限定されるようには意図されていない。
さらに、本明細書において使用される場合、「1つ(“a” or “an”)」という用語は、1つまたは2つ以上として定義される。さらに、特許請求の範囲における「少なくとも1つの」および「1つ以上」のような前置きの語句の使用は、不定冠詞「1つの (“a” or “an”)」による別の請求項要素の導入が、このように導入された請求項要素を含む任意の特定の請求項を、たとえ同じ請求項が前置きの語句「1つ以上」または「少なくとも1つの」および「1つの (“a” or “an”)」のような不定冠詞を含む場合であっても、1つだけのこのような要素を含む発明に限定することを暗示するように解釈されるべきではない。同じことが、定冠詞の使用についても当てはまる。
【0023】
別途記載されない限り、「第1の」および「第2の」のような用語は、そのような用語が説明する要素間で適宜区別するように使用される。したがって、これらの用語は必ずしも、このような要素の時間的なまたは他の優先順位付けを示すようには意図されていない。