特許第6288814号(P6288814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288814
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】発光素子駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20180226BHJP
   H05B 33/08 20060101ALI20180226BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   H01L33/00 J
   H05B33/08
   H05B33/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-125408(P2013-125408)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-2233(P2015-2233A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 勇司
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−533813(JP,A)
【文献】 特開2006−135297(JP,A)
【文献】 特開平11−330557(JP,A)
【文献】 特開2010−177131(JP,A)
【文献】 特開2002−016316(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/010343(WO,A1)
【文献】 実開昭54−009676(JP,U)
【文献】 特開2012−010574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/46
H02M 3/00−3/44
H05B 37/00−39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上で且つ前記発光素子の定格電流よりも小さい駆動電流を前記発光素子に流す場合には前記発光素子を直流駆動する直流駆動部を備え、
前記直流駆動部は、直流電源と、
前記直流電源の一端と一定電位の間に、両端にコンデンサが接続された前記発光素子と抵抗と前記発光素子を駆動する駆動素子とを直列に接続した直列回路と、
前記コンデンサの容量をC、前記発光素子の内部等価抵抗をRとした場合に、時間T=2.2×C×Rよりも小さい周期でパルス幅変調されたパルス信号で前記駆動素子をオンオフ駆動させるPWM駆動部と、
一端が前記コンデンサの一端に接続され、他端が前記発光素子の一端に接続されたスイッチとを備え、
前記スイッチは、オフすることにより前記駆動電流が前記基準電流未満の場合には前記発光素子をパルス駆動させ、オンすることにより前記駆動電流が前記基準電流以上の場合には前記発光素子を直流駆動させることを特徴とする発光素子駆動装置。
【請求項2】
発光素子の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上で且つ前記発光素子の定格電流よりも小さい駆動電流を前記発光素子に流す場合には前記発光素子を直流駆動する直流駆動部を備え、
前記直流駆動部は、前記発光素子の一端に一端が接続された直流電源と、
前記発光素子の他端に一端が接続されたコイルと、
前記コイルの他端に一端が接続され前記発光素子の一端に他端が接続された還流ダイオードと、
前記発光素子の両端に接続されたコンデンサと、
前記コイルの他端と前記還流ダイオードの一端とに接続され、前記発光素子を駆動する駆動素子と、
前記コンデンサの容量をC、前記発光素子の内部等価抵抗をRとした場合に、時間T=2.2×C×Rよりも小さい周期でパルス幅変調されたパルス信号で前記駆動素子をオンオフ駆動させるPWM駆動部と、
一端が前記コンデンサの一端に接続され、他端が前記発光素子の一端に接続されたスイッチとを備え、
前記スイッチは、オフすることにより前記駆動電流が前記基準電流未満の場合には前記発光素子をパルス駆動させ、オンすることにより前記駆動電流が前記基準電流以上の場合には前記発光素子を直流駆動させることを特徴とする発光素子駆動装置。
【請求項3】
発光素子の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上で且つ前記発光素子の定格電流よりも小さい駆動電流を前記発光素子に流す場合には前記発光素子を直流駆動する直流駆動部を備え、
前記直流駆動部は、前記発光素子の一端に一端が接続された直流電源と、
前記発光素子の他端に一端が接続された還流ダイオードと、
前記還流ダイオードの他端に一端が接続され前記発光素子の一端に他端が接続されたコイルと、
前記発光素子の両端に接続されたコンデンサと、
前記コイルの一端と前記還流ダイオードの他端とに接続され、前記発光素子を駆動する駆動素子と、
前記コンデンサの容量をC、前記発光素子の内部等価抵抗をRとした場合に、時間T=2.2×C×Rよりも小さい周期でパルス幅変調されたパルス信号で前記駆動素子をオンオフ駆動させるPWM駆動部と、
一端が前記コンデンサの一端に接続され、他端が前記発光素子の一端に接続されたスイッチとを備え、
前記スイッチは、オフすることにより前記駆動電流が前記基準電流未満の場合には前記発光素子をパルス駆動させ、オンすることにより前記駆動電流が前記基準電流以上の場合には前記発光素子を直流駆動させることを特徴とする発光素子駆動装置。
【請求項4】
発光素子の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上で且つ前記発光素子の定格電流よりも小さい駆動電流を前記発光素子に流す場合には前記発光素子を直流駆動する直流駆動部を備え、
前記直流駆動部は、交流電源と、
前記交流電源の交流電圧を整流し且つ前記発光素子の一端に整流出力端子の一端が接続された整流回路と、
前記発光素子の他端に一端が接続された還流ダイオードと、
前記還流ダイオードの他端に一端が接続され前記発光素子の一端に他端が接続されたコイルと、
前記発光素子の両端に接続されたコンデンサと、
前記コイルの一端と前記還流ダイオードの他端とに接続され、前記発光素子を駆動する駆動素子と、
前記コンデンサの容量をC、前記発光素子の内部等価抵抗をRとした場合に、時間T=2.2×C×Rよりも小さい周期でパルス幅変調されたパルス信号で前記駆動素子をオンオフ駆動させるPWM駆動部と、
一端が前記コンデンサの一端に接続され、他端が前記発光素子の一端に接続されたスイッチとを備え、
前記スイッチは、オフすることにより前記駆動電流が前記基準電流未満の場合には前記発光素子をパルス駆動させ、オンすることにより前記駆動電流が前記基準電流以上の場合には前記発光素子を直流駆動させることを特徴とする発光素子駆動装置。
【請求項5】
前記駆動電流の値が前記基準電流未満である場合には前記発光素子をパルス駆動するパルス駆動部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の発光素子駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)やレーザー発光ダイオード,有機EL素子などの発光素子、およびこれらを用いた発光素子駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDやレーザー発光ダイオード,有機EL素子などの半導体発光素子は、半導体中の電荷キャリアである自由電子と正孔の再結合の際に生じる発光現象を利用することによって発熱を抑えた、発光電力効率の高い素子である。従来の発光素子を半導体発光素子に置き換えることにより、照明機器や電子ディスプレイ、電子サインなどの消費電力が低減できる。また、製造の際に地球の希少資源の消費を抑えると共に、環境汚染物質の排出も抑えられるため、地球環境に優しい素子として近年、世界中で爆発的に普及している。
【0003】
半導体発光素子は原理的に駆動電流に概ね比例した光量の光を発光する。しかし、実際には再結合の効率変化や温度依存性があるため、駆動電流値の変化に伴い発光光量に非線形性が現れる。このため、半導体発光素子の制御には一定のピーク電流のパルス電流を流して、電流の流通時間幅を可変するPWM(パルス幅変調)が主に用いられている。半導体故の非線形性を伴う電流値による光量制御に対してパルス幅は電子回路で正確に制御できることから、PWMを用いた正確な相対光量制御がほとんどの半導体素子の発光制御に用いられている。
【0004】
なお、この種の従来の技術として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1は、液晶表示器の表示部を照明する光源の輝度レベルを記憶する記憶手段と、記憶手段が記憶している輝度レベルに応じた幅のパルス信号を連続して発生するパルス発生手段と、発生した連続したパルス信号によりオン・オフを繰り返し光源(LED)に流れる電流を制御することで輝度調整を容易に行え、さらに高い発光効率を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−132115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のパルス電流制御では、制御可変領域を確保するために、パルス電流のピーク値を発光素子の発光効率が低下する発光素子の定格値付近に設定しなければならなかった。このため、最大限の電力効率を確保することができなかった。また、従来の発光素子駆動装置では、発光素子に抵抗を直列に接続しており、この抵抗による電力消費により無駄な電力を消費していた。
【0007】
本発明の課題は、発光素子の電力効率を向上することができる発光素子駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、発光素子の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上で且つ前記発光素子の定格電流よりも小さい駆動電流を前記発光素子に流す場合には前記発光素子を直流駆動する直流駆動部を備え、前記直流駆動部は、直流電源と、前記直流電源の一端と一定電位の間に、両端にコンデンサが接続された前記発光素子と抵抗と前記発光素子を駆動する駆動素子とを直列に接続した直列回路と、前記コンデンサの容量をC、前記発光素子の内部等価抵抗をRとした場合に、時間T=2.2×C×Rよりも小さい周期でパルス幅変調されたパルス信号で前記駆動素子をオンオフ駆動させるPWM駆動部と、一端が前記コンデンサの一端に接続され、他端が前記発光素子の一端に接続されたスイッチとを備え、前記スイッチは、オフすることにより前記駆動電流が前記基準電流未満の場合には前記発光素子をパルス駆動させ、オンすることにより前記駆動電流が前記基準電流以上の場合には前記発光素子を直流駆動させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、発光素子の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上で且つ前記発光素子の定格電流よりも小さい駆動電流を前記発光素子に流す場合には前記発光素子を直流駆動する直流駆動部を備え、前記直流駆動部は、前記発光素子の一端に一端が接続された直流電源と、前記発光素子の他端に一端が接続されたコイルと、前記コイルの他端に一端が接続され前記発光素子の一端に他端が接続された還流ダイオードと、前記発光素子の両端に接続されたコンデンサと、前記コイルの他端と前記還流ダイオードの一端とに接続され、前記発光素子を駆動する駆動素子と、前記コンデンサの容量をC、前記発光素子の内部等価抵抗をRとした場合に、時間T=2.2×C×Rよりも小さい周期でパルス幅変調されたパルス信号で前記駆動素子をオンオフ駆動させるPWM駆動部と、一端が前記コンデンサの一端に接続され、他端が前記発光素子の一端に接続されたスイッチとを備え、前記スイッチは、オフすることにより前記駆動電流が前記基準電流未満の場合には前記発光素子をパルス駆動させ、オンすることにより前記駆動電流が前記基準電流以上の場合には前記発光素子を直流駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発光素子の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上で且つ前記発光素子の定格電流よりも小さい駆動電流を前記発光素子に流す場合には、直流駆動部が発光素子を直流駆動するので、発光素子の電力効率を向上することができる。また、コンデンサの容量をC、発光素子の内部等価抵抗をRとした場合に、時間T=2.2×C×Rよりも小さい周期でパルス幅変調されたパルス信号で駆動素子をオンオフ駆動させることができる。また、スイッチが、オフすることにより駆動電流が基準電流未満の場合には発光素子をパルス駆動させ、オンすることにより駆動電流が基準電流以上の場合には発光素子を直流駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発光素子の発光効率の直流電流特性を示す図である。
図2】直流駆動とPWM駆動による発光素子の平均輝度の比較を示す図である。
図3】本発明の実施例1に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。
図4】本発明の実施例1に係る発光素子駆動装置の各部の動作を示すタイミングチャートである。
図5】本発明の実施例1に係る発光素子駆動装置の変形例の回路構成図である。
図6】本発明の実施例2に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。
図7】本発明の実施例3に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。
図8】本発明の実施例4に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。
図9】本発明の実施例5に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。
図10】駆動電流の電流検出部と判定部を省略した実施例6に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の発光素子駆動装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、本出願人の発明者は、発光ダイオード(LED)やレーザー発光ダイオード,有機EL素子などの発光素子を、PWM駆動した場合と直流駆動した場合の発光素子の明るさに相当する、平均輝度を測定した。その測定結果を図2に示す。
【0014】
図2からもわかるように、発光素子を直流駆動した方が、PWM駆動よりも平均輝度が高く、発光素子(LED)の発光効率が向上することがわかった。
【0015】
また、本出願人の発明者は、発光素子の駆動条件を最適化するために、発光素子を直流駆動した場合の発光効率の測定を行った。その測定結果を図1に示す。この測定では、赤色LED、緑色LED、青色LED、白色LEDの4つのLEDの駆動電流に対する発光効率を測定した。図1から、発光素子の発光効率のピーク値は、低電流域にあることがわかる。なお、本願明細書では、発光素子の発光効率がピーク値になる駆動電流を基準電流として説明する。
【0016】
図1に示す直流駆動に対して、従来のPWM駆動では、パルス電流のピーク値を発光素子の発光効率が低下する定格値付近に設定していたため、最大限の電力効率を確保することができなかった。
【0017】
そこで、本発明の実施の形態の発光素子駆動装置は、発光素子の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上の駆動電流であって且つ発光素子の定格電流よりも小さい電流を発光素子に流す場合に、発光素子を直流駆動させることにより、発光素子の電力効率を最大限に向上させることを特徴とする。
【0018】
また、駆動電流値が基準電流未満である場合には、図1に示す直流駆動では発光効率が急激に低下するため、この場合には、発光素子をPWM駆動させて、パルス電流のピーク値を発光素子の発光効率がピークを示す電流値に設定することにより電力効率を向上させることを特徴とする。
【0019】
以下、以上のことを実現するためのいくつかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図3は、本発明の実施例1に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。図3において、直流電源Vccの正極には抵抗Rの一端が接続され、抵抗Rの他端には直列に接続されたn個の発光ダイオードLED1〜LEDnが接続され、発光ダイオードLEDnの一端にはスイッチSWの一端が接続され、スイッチSWの他端及び直流電源Vccの負極は接地点などの一定電位に接続されている。発光ダイオードの直列数nが1でも構わないことは言うまでもない。直列に接続されたn個の発光ダイオードLED1〜LEDnの両端にはコンデンサCが接続されている。
【0021】
スイッチSWは、n個の発光ダイオードLED1〜LEDnを駆動するMOSFET或いはIGBT、バイポーラトランジスタなどの電子スイッチ素子から成る駆動素子を構成し、PWM信号などのパルス制御信号により所定の周期でオン/オフすることによりn個の発光ダイオードLED1〜LEDnを駆動する。直流電源Vccと抵抗RとコンデンサCとで本発明の直流駆動部を構成している。
【0022】
このように構成された実施例1に係る発光素子駆動装置の動作を図4に示す各部のタイミングチャートを参照しながら説明する。図4において、IswはスイッチSWに流れる電流、IDは発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流、IcはコンデンサCに流れる電流を示している。
【0023】
まず、時刻t0において、PWM信号によりスイッチSWをオンすると、直流電源Vccから抵抗Rを介して発光ダイオードLED1〜LEDnに電流IDが流れるとともに、コンデンサCにも電流Icが流れて、発光ダイオードLED1〜LEDnが発光する。このとき、スイッチSWには電流Icと電流IDとを合計した電流Iswが流れる。そして、時刻t0〜t1において、コンデンサCは電流Icにより充電されていく。
【0024】
次に、時刻t1において、PWM信号によりスイッチSWをオフすると、コンデンサCに蓄積された電荷が放電し、発光ダイオードLED1〜LEDnに電流IDが流れて、発光ダイオードLED1〜LEDnが発光する。このため、発光ダイオードLED1〜LEDnには一定の直流電流IDが流れる。即ち、発光ダイオードLED1〜LEDnを直流駆動することができ、しかもスイッチSWに流れる電流Iswが電流IDと電流Icとに分散されるので、直流電流IDのピーク値(波高値)が、コンデンサCがないときに発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流のピーク値よりも小さくなる。
【0025】
即ち、発光ダイオードLED1〜LEDnに大きな容量のコンデンサCを並列に接続することによって、従来はPWM駆動時に0V付近まで大きく変化していた発光ダイオードLED1〜LEDnへのパルス状印加電圧を、コンデンサCの充電電圧による直流状印加電圧に換えることにより、直流電流IDによる駆動を可能とする。
【0026】
このとき、直流電流IDを、発光ダイオードLED1の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上の駆動電流であって且つ発光ダイオードLED1の定格電流よりも小さい電流に設定することにより、発光ダイオードLED1の電力効率を最大限に向上させることができる。直流電流IDはPWM信号などの入力パルス信号の平均値に比例した値となる。入力パルス信号にはPWM信号に限らず、パルス周波数変調(PFM)或いはパルス密度変調(PDM)などの平均値が制御された任意のパルス信号が適用できる。
【0027】
直流電流IDは、発光ダイオードLED1の発光効率がピーク値になるときの基準電流、発光ダイオードLED1の定格電流、抵抗Rの抵抗値、コンデンサCの容量値に応じて設定される。
【0028】
また、PWM信号の周期T(例えば時刻t0〜t2)は、以下の式(1)によって決定される。
【0029】
2.2×n×rD×C≫T ‥(1)
ここで、nは直列に接続された発光ダイオードの個数、rDは発光ダイオードの内部等価抵抗、CはコンデンサCの容量値である。rDは以下の式(2)によって求められる。
【0030】
rD=kTo/(qID) ‥(2)
ここで、kはボルツマン定数、Toは温度、qは電子の電荷量、IDは発光ダイオードに流れる電流である。
【0031】
また、図5に示すように、直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnをm列並列に接続して構成した場合には、PWM信号の周期T(例えば時刻t0〜t2)は、以下の式(3)によって決定される。
【0032】
(2.2×n×rD×C)/m≫T ‥(3)
このように実施例1の発光素子駆動装置によれば、スイッチSWを正確にパルス制御しながらも発光ダイオードLED1〜LEDnには大きな容量のコンデンサCを並列に接続することで、スイッチSWの平均電流に相当する直流電流を発光ダイオードLED1〜LEDnに流す。スイッチSWをパルス制御することでスイッチSWの平均電流を正確に制御することができ、図2に示した平均輝度を簡単な回路を用いて正確に制御することができる。
【0033】
また、上記の抵抗Rと、コンデンサCの並列接続された発光ダイオードLED1〜LEDn、およびスイッチSWの3者は、直流電源Vccと接地点などの一定電位点の間に直列に接続されていればよく、その接続の順は任意の順番で構わない。
【実施例2】
【0034】
図6は、本発明の実施例2に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。図6において、発光ダイオードLED1のアノードは、直流電源Vccの正極に接続され、発光ダイオードLEDnのカソードには、コイルLの一端に接続され、コイルLの他端にはショットキーバリアダイオードSBD(還流ダイオード)のアノードが接続されている。ショットキーバリアダイオードSBDのカソードには発光ダイオードLED1のアノードが接続されている。直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnの両端にはコンデンサCが接続されている。コイルLの他端とショットキーバリアダイオードSBDのアノードにはスイッチSWの一端が接続され、スイッチSWの他端は接地されている。
【0035】
このように構成された実施例2の発光素子駆動装置によれば、PWM信号によりスイッチSWがオンすると、直流電源Vccから直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnを介してコイルLに電流が流れるとともに、コンデンサCにも電流が流れる。
【0036】
次に、PWM信号によりスイッチSWがオフすると、大きな容量のコンデンサCが並列接続されて印加電圧波形がパルス形状から直流に換えられて、直列接続された発光ダイオードLED1〜LEDnに電流が流れる。また、これと同時に、コイルLからショットキーバリアダイオードSBDを介して直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnに電流が流れる。電磁エネルギーを時間的に連続な電流波形の形で保持することのできるコイルLを併用することで、発光ダイオードLED1〜LEDnの駆動電流の変動抑制効果は格段に向上する。さらに、コンデンサCの直流状充電電圧によって駆動電流に変化をもたらすコイルLへの印加電圧も抑制できるため、コイルLに常時に電流を流すことでリップル電流を最小に抑えることもできるので、発光ダイオードLED1〜LEDnの発光効率を最大限に高められる。
【0037】
このため、発光ダイオードLED1〜LEDnには直流電流が流れるので、発光ダイオードLED1〜LEDnを直流駆動できる。
【0038】
このとき、直流電流IDを、発光ダイオードLED1の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上の駆動電流であって且つ発光ダイオードLED1の定格電流よりも小さい電流に設定することにより、発光ダイオードLED1の電力効率を最大限に向上させることができる。
【0039】
また、コイルLとコンデンサCとを用い、抵抗Rを用いていないので、抵抗Rでの電力消費が低減され、低電力化が図れ、電力効率を大幅に向上できる。
【0040】
なお、ショットキーバリアダイオードSBDには、逆方向回復時間における電力損失が無視できる素子であれば、一般のダイオードなどが適用できることは言うまでもない。
【実施例3】
【0041】
図7は、本発明の実施例3に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。図7において、発光ダイオードLED1のカソードは、直流電源Vccの正極に接続され、発光ダイオードLED1のアノードは、ショットキーバリアダイオードSBDのカソードに接続されている。ショットキーバリアダイオードSBDのアノードは、スイッチSWの一端とコイルLの一端に接続されている。コイルLの他端は発光ダイオードLED1のカソードと直流電源Vccの正極に接続されている。直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnの両端にはコンデンサCが接続されている。
【0042】
このように構成された実施例3の発光素子駆動装置によれば、PWM信号によりスイッチSWがオンすると、直流電源VccからコイルLに電流が流れて励磁エネルギーが蓄えられる。この時、コイルLには直流電源Vccが直接に印加されるので、コンデンサCの充電電圧は直流電源Vccとは独立に自由に設定できる。スイッチSWがオンしている間、直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnは、直流電源Vccから電流供給はないが、充電されて直流電圧を印加し続けているコンデンサCによって直流駆動される。
【0043】
次に、PWM信号によりスイッチSWがオフすると、コイルLからショットキーバリアダイオードSBDを介して直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnとコンデンサCに電流が流れる。このため、発光ダイオードLED1〜LEDnには直流電流が流れるので、発光ダイオードLED1〜LEDnを直流駆動できる。
【0044】
このとき、直流電流IDを、発光ダイオードLED1の発光効率がピーク値になるときの基準電流以上の駆動電流であって且つ発光ダイオードLED1の定格電流よりも小さい電流に設定することにより、発光ダイオードLED1の電力効率を最大限に向上させることができる。
【0045】
また、コイルLとコンデンサCとを用いることによって、抵抗Rを用いて電流制御する必要がなくなるので、抵抗Rでの電力消費が排除され、低電力化が図れ、電力効率を大幅に向上できる。
【実施例4】
【0046】
図8は、本発明の実施例4に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。図8に示す実施例4に係る発光素子駆動装置は、図7に示す発光素子駆動装置の直流電源Vccに代えて、交流電源ACとダイオードD1〜D4からなる全波整流回路とを用いたことを特徴とする。全波整流回路は整流回路であれば半波整流回路等に置き換え可能であることは言うまでもない。
【0047】
ダイオードD1のアノードは交流電源ACの一端とダイオードD4のカソードに接続され、ダイオードD1のカソードはダイオードD3のカソードとコイルLの一端に接続されている。ダイオードD2のアノードはスイッチSWの一端とダイオードD4のアノードに接続されている。ダイオードD2のカソードは交流電源ACの他端とダイオードD3のアノードに接続されている。
【0048】
このように構成された実施例4に係る発光素子駆動装置によれば、交流電源ACの交流電圧をダイオードD1〜D4により全波整流して整流電圧をコイルLとスイッチSWとの直列回路に供給する。コイルL、発光ダイオードLED1〜LEDn、コンデンサC、ショットキーバリアダイオードSBDの動作は、図7に示すそれらの動作と同様である。
【0049】
本実施例においては、交流電源ACの交流電圧が0V付近まで下がったタイミングにおいても、コンデンサCの充電電圧からの影響を受けることなくコイルLに交流電源ACの交流電圧を加えて交流電圧に追従した入力電流とLED駆動電流を発生させることができ、回路の力率を向上することができる。また、直流安定化電源回路においては一般に平滑コンデンサの充電時のみに流れていた交流電源電流を、本実施例においては常時流すことができるので、入力電流の高調波成分を大きく低減して発光駆動装置の力率を著しく向上させることができる。さらに直流安定化電源回路を介さずに交流電源から直接に発光素子を駆動することができるので、高効率で安価な発光素子駆動装置が得られる。
【実施例5】
【0050】
図9は、本発明の実施例5に係る発光素子駆動装置の回路構成図である。図9おいて、直流電源Vccの正極には電流検出部11を介して発光ダイオードLED1のアノードが接続され、発光ダイオードLEDnのカソードにはコイルLの一端が接続されている。
【0051】
コイルLの他端にはスイッチSW1の一端が接続され、スイッチSW1の他端は接地されている。コイルLの他端と発光ダイオードLED1のアノードの間にはショットキーバリアダイオードSBDが接続されている。発光ダイオードLEDnのカソードとコイルLの一端との接続点には抵抗R1の一端も接続され、抵抗R1の他端にはスイッチSW2の一端が接続され、スイッチSW2の他端は接地されている。
【0052】
電流検出部11は、直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる平均駆動電流を検出する。電流値判定部12は、電流検出部11で検出された電流値が基準電流未満であるかどうかを判定し、電流値が基準電流未満であると判定された場合にはPWM駆動部13から駆動制御信号を出力してスイッチSW2をオン/オフさせる。検出された電流値が基準電流以上であると判定された場合にはPWM駆動部2から駆動制御信号を出力してスイッチSW1をオン/オフさせる。
【0053】
なお、基準電流は、上述したように、発光素子の発光効率がピーク値になるときの電流のことである。
【0054】
PWM駆動部13は、電流値判定部12により電流値が基準電流未満であると判定された場合にスイッチSW2をオン/オフさせることにより直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnをPWM駆動する。即ち、PWM駆動部13は、パルス信号に対してパルス幅変調(PWM)を行い、PWM変調されたパルス信号をスイッチSW2に印加することで、発光ダイオードLED1〜LEDnにパルス制御電流を流している。このとき、直流電源Vccから直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnと抵抗R1とスイッチSW2を介してパルス電流が流れるが、パルス電流のピーク値を発光ダイオードLED1〜LEDnの基準電流値付近に設定する。即ち、駆動電流値が基準電流未満である場合には、図1に示したような直流駆動では発光効率が急激に低下するため、発光素子をPWMなどのパルス電流で駆動して、パルス電流のピーク値を発光素子の発光効率が最大となる基準電流値付近に維持することにより電力効率を最大限に向上させることができる。
【0055】
このように構成された実施例5に係る発光素子駆動装置によれば、電流検出部11で電流を検出し、検出された電流値が基準電流以上の場合には、スイッチSW1をオン/オフさせる。すると、直列に接続されたコイルLを介して発光ダイオードLED1〜LEDnに直流電流が流れる。スイッチSW1がオフ時には、ショットキーバリアダイオードSBDを介して発光ダイオードLED1〜LEDnにコイルLの電流が流れ続ける。即ち、コイルLに流れる変動の小さい一定値と見なせる直流電流により、直列に接続された発光ダイオードLED1〜LEDnが直流駆動される。従って、電力効率を向上できる。
【0056】
電流検出部11を介して直流電源Vccに接続されている発光ダイオードLED1のアノードの端子の電圧を安定な直流電圧に保つために、コンデンサCVCCを接地電位点との間に並列接続することができる。また、直流電源Vccは、図8に示した交流電源ACとダイオードD〜D4からなる全波整流回路などのような直流電源にも置き換え可能であることは言うまでもない。
【0057】
LEDの平均駆動電流に応じて駆動電流波形を切り替える際には、必ずしもLEDの駆動電流を検出する必要がないことは言うまでもない。即ち、図9に示した電流検出部11は省略して、発光ダイオードLEDの明るさ制御に用いられる電流制御値そのものを用いて電流値を判定することもできる。発光素子駆動装置の設計段階で駆動電流の大小は設定できるので、駆動電流の電流検出部と判定部を省略した実施例を図10に示す。図10においては、駆動電流値が上記の基準電流未満と以上のそれぞれの時に、電子制御スイッチSWDCをオフ、オンさせる。電子制御スイッチSWDcをオフさせることにより、平均駆動電流が基準電流未満の際にはPWM駆動とし、電子制御スイッチSWDCをオンさせることにより、平均駆動電流が基準電流以上の際の直流駆動への切り替えを可能としている。
【0058】
直流電源Vccは図8に示したように、交流電源ACとダイオードD1〜D4からなる全波整流回路などに置き換え可能であることは言うまでもない。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施例1乃至6に係る発光素子駆動装置に限定されるものではない。パルス信号に対してパルス幅変調を行う例を示したが、パルス幅変調を行う代わりに、パルス周波数変調(PFM)又はパルス密度変調(PDM)を行い、変調されたパルス信号をスイッチ素子に印加することで、発光ダイオードの発光を制御しても良い。
【0060】
また、発光素子としては、LEDやレーザダイオード、有機EL素子などの半導体素子に限らず蛍光灯や水銀灯やメタルハライドランプなどのHIDランプなどの放電素子や電球などの発熱素子でも、駆動電流や駆動電圧に対する発光効率の最大点や極大点があるので、直流駆動とパルス駆動による駆動方式の最適化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、LED点灯装置、有機EL点灯装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
Vcc 直流電源
LED1〜LEDn 発光ダイオード
C コンデンサ
L コイル
R,R1 抵抗
SW,SW1,SW2 スイッチ
SBD ショットキーバリアダイオード
D1〜D4 ダイオード
AC 交流電源
11 電流検出部
12 電流値判定部
13 PWM駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10