【実施例】
【0032】
以下に、本発明の効果について実施例及び比較例により実施するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において「部」は重量部を表わす。
【0033】
[アミン変性エポキシ樹脂(A1)の製造]
攪拌装置、温度計、冷却管を有する反応装置を準備し、それにグリシエールPP−300P(三洋化成工業(株)製ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)35部とDER−331(ダウ・ケミカル日本株式会社製ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)409部とビスフェノールA175部とジメチルベンジルアミン1部を仕込み、攪拌、加熱を行って150℃まで昇温した。150℃で6時間保持した後、メチルイソブチルケトン287部を徐々に投入し、80℃まで冷却した。次いでジエタノールアミン73部とジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンのジケチミン物21部を投入し、100℃まで昇温した。100℃で2時間保持した後、80℃まで冷却してから取り出した。得られたアミン変性エポキシ樹脂(A1)の塩基価は74mgKOH/g−solid、固形分は70重量%であった。
【0034】
[アミン変性エポキシ樹脂(A2)の製造]
攪拌装置、温度計、冷却管を有する反応装置を準備し、それにグリシエールPP−300P(三洋化成工業株式会社製ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)64部とDER−331(ダウ・ケミカル日本株式会社製ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)385部とビスフェノールA193部とジメチルベンジルアミン1部を仕込み、攪拌、加熱を行って150℃まで昇温した。150℃で6時間保持した後、メチルイソブチルケトン299部を徐々に投入し、80℃まで冷却した。次いでジエタノールアミン58部を投入し100℃まで昇温した。100℃で2時間保持した後、80℃まで冷却してから取り出した。得られたアミン変性エポキシ樹脂(A2)の塩基価は44mgKOH/g−solid、固形分70重量%であった。
【0035】
[アミノ基含有アクリル樹脂(A3)の製造]
撹拌器、温度計、冷却管を有する反応装置を準備し、それにメチルイソブチルケトン286部を仕込み、撹拌、加熱を行って105℃まで昇温した。昇温後還流下にブチルアクリレート245部、メチルメタクリレート70部、スチレン140部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート140部、ジメチアミノプロピルアクリルアミド105部、アゾビスイソブチロニトリル14部の混合液を2時間かけて滴下した。105℃で4時間保温した後、80℃まで冷却してから取り出した。得られたアミノ基含有アクリル樹脂(A3)の塩基価は53.6mgKOH/g−solid、固形分70重量%であった。
【0036】
[ブロック化ポリイソシアネート(B1)の製造]
攪拌装置、温度計、冷却管を有する反応装置を準備し、それにミリオネートMR−400(日本ポリウレタン工業株式会社製ポリメチレンポリフェニルイソシアネート)400部とメチルイソブチルケトン200部を仕込み、攪拌、加熱を行って100℃まで昇温した。その後、反応装置温度を100℃に保ちながら予め混合していたエチレングリコールモノブチルエーテル169部とジエチレングリコールモノブチルエーテル231部を1時間かけて滴下し、100℃で2時間反応させた。その後、80℃まで冷却して取り出した。得られたブロック化ポリイソシアネート(B1)は固形分80重量%であった。
【0037】
[顔料分散樹脂の製造]
撹拌器、温度計、冷却管を有する反応装置を準備し、それにDER−331(ダウ・ケミカル日本株式会社製ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)243部、DER−560(ダウ・ケミカル日本株式会社製ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂)305部、プロピレングリコールモノメチルエーテル300部を仕込み、撹拌、加熱を行って100℃まで昇温した。次いでジエチルアミノプロピルアミン84部、ジエタノールアミン68部を仕込み、100℃で2時間保温し80℃まで冷却して取り出した。得られた顔料分散樹脂の塩基価は156.0mgKOH/g−solid、固形分70重量%であった。
【0038】
[樹脂水分散液1〜8の製造]
表1の配合組成に従って、(1)〜(10)の成分の混合物を作製し、それをよく攪拌しながら徐々に脱イオン水(11)を仕込み、それぞれの樹脂水分散液1〜8を得た。
【0039】
【表1】
【0040】
表1中の(6)、(7)の詳細は以下の通りである。
(6)サーフィノール#104:エアプロダクツジャパン株式会社製、界面活性剤
(7)ダイノール604:エアプロダクツジャパン株式会社製、界面活性剤
【0041】
[顔料ペーストの製造]
表2の配合組成に従って、(1)〜(7)の成分をディゾルバーで十分攪拌した後、横型サンドミルを用いて粒ゲージ粒度が分布図法で判定して10μm以下になるまで分散し、顔料ペースト1を得た。
【0042】
【表2】
【0043】
表2中の(4)〜(7)の詳細は以下の通りである。
(4)ASP#200:ENGELHARD社製、カオリン
(5)タイピュア R−900:デュポン株式会社製、酸化チタン
(6)MA−100:三菱化学株式会社製、カーボンブラック
(7)KC−100:協同薬品株式会社製、ジブチル錫オキサイド
【0044】
[電着塗料の調製]
表3の配合組成に従って、樹脂水分散液1〜8、顔料ペースト1を配合して、実施例1〜5および比較例1〜3の電着塗料を得た。なお、表3では、各電着塗料の動的表面張力と酸化鉄に対する液滴の界面接触角も記載した。それらの測定方法を以下に示す。
【0045】
[動的表面張力]
動的表面張力とは、後述する界面接触角の評価において、接触角が時間の経過とともに変化して、ぬれ広がって行くような挙動を追跡する尺度である。時間の経過を追うことによって、より詳細な「ぬれ性」の評価が可能となる。動的表面張力の測定は、各社から市販されている自動測定装置を用いて行えばよく、例えばKRUSS社製のバブルプレッシャー法測定器を用いて行うことができる。
本実施例において適用した測定条件は、下記の通りである。
測定機器:KRUSS社製、BP2 バブルプレッシャー法(最大泡圧法)
気泡数:6気泡/秒
液温、雰囲気温度:24℃
【0046】
[酸化鉄に対する液滴の界面接触角]
界面接触角とは、固体表面に接触した液滴の「ぬれ性」を評価する尺度であり、固体表面に落とした液滴と固体表面とで形成される角度を表す定量値である。界面接触角の測定原理は、
図1に示されるようなものであり、Youngの式として知られる公式に従って求められる。界面接触角の測定は、測定機器メーカーから各種市販されている自動測定装置を用いて行えばよく、例えば協和界面科学株式会社製の各種自動測定装置を用いて行うことができる。
本実施例において適用した測定条件は、下記の通りである。
協和界面科学株式会社製 DM−501 Tangent法(接線法)
液温、雰囲気温度:24℃
雰囲気湿度:55%
酸化鉄パネル:パルテック株式会社製のSS−400未処理板(2.3×70×150mm)を溶剤脱脂後に使用
【0047】
【表3】
【0048】
[塗装試験板の作製方法および評価結果]
上記で得られた実施例1〜5及び比較例1〜3の電着塗料を用いてカーボン電極を陽極とし、リン酸亜鉛処理板(パルテック株式会社製のPB−L3080、0.8×70×150mm)を陰極とし、焼き付け後の膜厚が20μmとなる条件で電着塗装を行い、170℃で25分間焼き付けを行い、塗装試験板を作製した。実施例1〜5及び比較例1〜3の電着塗料及びそれを用いて得られた塗膜の性能試験結果を表4に記載した。それらの評価方法は以下の通りである。
【0049】
[耐鉄ブツ性]
5°の傾斜をつけたリン酸亜鉛処理板上に水と混合させた鉄粉を5mg置き、その直上、5cmの高さから4号Fordカップ経由で塗料を200cc落下させ、鉄粉を試験板上を押し流し、試験板上に残存する鉄粉の凝集個数を記録した。
液温、雰囲気温度:24℃
雰囲気湿度:55%
リン酸亜鉛処理板:パルテック株式会社製のSPC材(0.8×70×250mm)
○:残存する凝集鉄粉個数が2個以下。
△:残存する凝集鉄粉個数が3〜5個。
×:残存する凝集鉄粉個数が6個以上。
【0050】
[平滑性(Ra)]
株式会社ミツトヨ製の表面粗度計SJ−301を用いて、塗膜の平滑性(Ra)を測定した。
測定条件 カットオフ:2.5mm
送り速さ:0.5mm/秒
○:Raが2.5以下。
△:Raが2.6〜3.0。
×:Raが3.1以上。
【0051】
[耐食性(塩水噴霧試験)]
JIS−Z−2371に準じて行った。電着塗膜に素地に達する傷をカッターナイフで入れ、900時間後の錆幅を評価した。
○:カッターナイフの傷より、腐食された錆幅が3.0mm以下。
×:カッターナイフの傷より、腐食された錆幅が3.0mmを超える。
【0052】
[つきまわり性(4枚ボックス法)]
つきまわり性は、4枚ボックス法により評価した。即ち、
図2に示すように、パネル底部から50mm、両側から35mmの位置に8mm径の貫通穴が設けてあるパネル(a)と、穴のないパネル(b)に、リン酸亜鉛処理および非リン酸塩系処理皮膜としてジルコニウム系金属酸化膜処理をそれぞれ施して得られたパネル(SPCC−SD)を用いて、
図3、
図4に示すように組み合わせ(対極面側から順に、A面、B面、C面・・・非対極面側をH面と称する)、4枚を立てた状態で間隔2mmの平行に配置し、両側面及び底部を粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックスを作成した。このボックスを、
図5に示すように各実施例または比較例の希釈液を入れた電着塗装容器に90mmの深さで浸漬し、各貫通穴からのみ希釈液がボックス内に侵入するようにする。次に各パネルを電気的に接続し、最も対極に近いパネル(A面)と対極との距離が150mmになるように配置する。このボックスを陰極とし、対極を陽極として電圧を印加し、電着塗装を行った。印加電圧は、A面に180秒間で15μmの塗膜を形成させることができるような大きさとする。通電方法は、5〜30秒で所定の電圧まで昇圧する方法(ソフトスタート)でも、通常の通電でも良いが、今回はドカン通電を採用した。このとき、希釈液の温度は、その希釈液の標準の温度に調整する。塗装後、ボックスを分解して各パネルを水洗し、170℃で20分間焼付けし、A面からH面までの膜厚を測定する。A面膜厚(単位μm)に対するG面膜厚(単位μm)の割合(G/A)によりつきまわり性を評価する。この値が大きいほどつきまわり性が良いと評価できる。
【0053】
[下地敏感性]
1/2の面積を#400ペーパーで研磨し化成皮膜を除去したリン酸亜鉛処理板に、20μm条件で塗装し、焼付け後の塗膜外観を観察した。
○:境界部が識別できない。
△:境界部に膜厚差はないが目視で識別できる。
×:境界部に1μm以上の膜厚差があり、目視の外観差も著しい。
【0054】
【表4】
【0055】
表3及び4から明らかなように、動的表面張力の範囲が本発明の範囲(15〜43mN/m)内である実施例1〜5は、耐鉄ブツ性、平滑性、耐食性、つきまわり性、及び下地敏感性のいずれの性能にも優れるのに対して、動的表面張力の範囲が本発明の範囲(15〜43mN/m)外である比較例1〜3は、耐鉄ブツ性に劣り、特に、塩基価の低いアミン変性エポキシ樹脂(A2)を使用した比較例3は、耐鉄ブツ性に加えて、つきまわり性及び下地敏感性にも劣る。