特許第6288851号(P6288851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6288851通気性シートおよびシートの空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288851
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】通気性シートおよびシートの空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20180226BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B60N2/56
   A47C7/74 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-159972(P2014-159972)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-36413(P2016-36413A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100179855
【弁理士】
【氏名又は名称】藁科 えりか
(74)【代理人】
【識別番号】100086195
【弁理士】
【氏名又は名称】藁科 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】野口 和男
(72)【発明者】
【氏名】高野 潤
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−504236(JP,A)
【文献】 特開2012−228333(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/058429(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/56
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格となるフレームにウレタンパッドを載せ、通気性のトリムカバーでウレタンパッドを覆ってそれぞれ形成されたシートクッション、シートバックを備え、ウレタンパッドに空気が流される通気性シートにおいて、
シートクッション、シートバックの少なくともいずれか一方において、ウレタンパッドの一部でウレタンパッドの表面から裏面まで貫通して設けられた繊維パッドと、
繊維パッドを覆って繊維パッドの裏側に規定され、繊維パッドから流入した空気の流れを整流可能な形状のチャンバと、
繊維パッドと反対でチャンバに面して設けられ、トリムカバーを介して繊維パッド表面から空気を吸引して繊維パッドに流し、繊維パッドを流れた空気をチャンバに流入させる吸気手段とを持ち、
吸気手段の駆動のもとで、トリムカバーを介して繊維パッド表面から吸引された空気が繊維パッドに流入して繊維パッドを流れ、繊維パッドからチャンバに流入した空気がチャンバで整流されて流れてチャンバから流出することによって、空気が繊維パッド内を整流化して流れる通気性シート。
【請求項2】
骨格となるフレームにウレタンパッドを載せ、通気性のトリムカバーでウレタンパッドを覆ってそれぞれ形成されたシートクッション、シートバックを備え、ウレタンパッドに空気が流される通気性シートにおいて、
シートクッション、シートバックの少なくともいずれか一方において、ウレタンパッドの一部でウレタンパッドの表面から裏面まで貫通して設けられた繊維パッドと、
繊維パッドを覆って繊維パッドの裏側に規定され、繊維パッドから流入した空気の流れを整流可能に、空気の流入側から流出側に向かうにつれて断面が狭まる形状に形成されたチャンバと、
繊維パッドと反対でチャンバに面して設けられ、トリムカバーを介して繊維パッド表面から空気を吸引して繊維パッドに流し、繊維パッドを流れた空気をチャンバに流入させる吸気手段とを持ち
吸気手段の駆動のもとで、トリムカバーを介して繊維パッド表面から吸引された空気が繊維パッドに流入して繊維パッドを流れ、繊維パッドからチャンバに流入した空気がチャンバで整流されて流れてチャンバから流出することによって、空気が繊維パッド内を整流化して流れる通気性シート。
【請求項3】
前記チャンバは、略じょうご形状に形成された請求項記載の通気性シート。
【請求項4】
前記繊維パッドは、シートクッションのウレタンパッドの一部でウレタンパッドの上面から下面まで貫通して設けられ、
底パネルが繊維パッドの下に前記チャンバを規定する空間を残してウレタンパッドの下面を覆って設けられ、切欠きがチャンバの下面に面して底パネルに形成され、
前記吸気手段は、切欠きを介してチャンバに面して底パネルの下面に取付けられ、
チャンバで整流されてチャンバを流れる空気が底パネルの切欠きから流出する請求項1〜3のいずれか記載の通気性シート。
【請求項5】
前記繊維パッドは、シートクッションのウレタンパッドの一部でウレタンパッドの上面から下面まで貫通して設けられ、
上面が繊維パッドに面し、吸気手段に面した開口を下面に有してその内部の空間を前記チャンバとする中空の箱状部材が、ウレタンパッドの下面に取付けられ、
前記吸気手段は箱状部材の下面の開口を介してチャンバに面して箱状部材の下面に取付けられ、
チャンバで整流されてチャンバを流れる空気が箱状部材の下面の開口から流出する請求項1〜3のいずれか記載の通気性シート。
【請求項6】
前記繊維パッドは、シートバックのウレタンパッドの一部でウレタンパッドの前面から後面まで貫通して設けられ、
背面パネルが繊維パッドの後に前記チャンバを規定する空間を残してウレタンパッドの後面を覆って設けられ、切欠きがチャンバの後面に面して背面パネルに形成され、
前記吸気手段は、切欠きを介してチャンバに面して背面パネルの後面に取付けられ、
チャンバで整流されてチャンバを流れる空気が背面パネルの切欠きから流出する請求項1〜3のいずれか記載の通気性シート。
【請求項7】
前記繊維パッドは、シートバックのウレタンパッドの一部でウレタンパッドの前面から後面まで貫通して設けられ、
前面が繊維パッドに面し、吸気手段に面した開口を後面に有してその内部の空間を前記チャンバとする中空の箱状部材が、ウレタンパッドの後面に取付けられ、
前記吸気手段は箱状部材の後面の開口を介してチャンバに面して箱状部材の後面に取付けられ、
チャンバで整流されてチャンバを流れる空気が箱状部材の後面の開口から流出する請求項1〜3のいずれか記載の通気性シート。
【請求項8】
骨格となるフレームにウレタンパッドを載せ、通気性のトリムカバーでウレタンパッドを覆ってそれぞれ形成されたシートクッション、シートバックを備えたシートのウレタンパッドに空気が流されるシートの空調システムにおいて、
繊維パッドが、ウレタンパッドの一部でウレタンパッドの表面から裏面まで貫通して設けられ、
空気の流れを整流可能な形状のチャンバが繊維パッドを覆って繊維パッドの裏面側に規定され、
トリムカバーを介して繊維パッド表面から空気を吸引して繊維パッドに流し、繊維パッドからチャンバに流入した空気をチャンバで整流して流すことによって、空気が繊維パット内を整流化して流れるシートの空調システム。
【請求項9】
前記繊維パッドは、シートクッションのウレタンパッドの一部でウレタンパッドの上面から下面まで貫通して設けられ、
前記チャンバは、繊維パッドを覆って繊維パッドの下側に規定され、
チャンバで整流されて流れる空気が、シートクッションにおいてチャンバの下方に流出する請求項8記載のシートの空調システム。
【請求項10】
前記繊維パッドは、シートバックのウレタンパッドの一部でウレタンパッドの前面から後面まで貫通して設けられ、
前記チャンバは、繊維パッドを覆って繊維パッドの後側に規定され、
チャンバで整流されて流れる空気が、シートバックにおいてチャンバの後方に流出する請求項8記載のシートの空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドに空気を流して熱気、蒸れを除去する通気性シートおよびシートの空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シートは、シートクッション、シートバックを備えて構成され、通常、シートクッション、シートバックは、骨格となるフレームにウレタンフォームなどの発泡成形材からなるシートパッドを載せ、通気性のあるトリムカバーでシートパッドを覆ってそれぞれ形成されている。そして、シートクッション、シートバックのシートパッドに、通気路を形成し、通気路に空気を強制的に流して着座者からの熱気や蒸れなどを除去する空調システムを持つ通気性シートが知られている。
特に、車両用シートのように、長時間着座するシートにおいては、着座者の体温からくる熱や汗からくる湿気が着座者の臀部、シートクッションの間や着座者の背中、シートバックの間に籠って熱気や蒸れのもととなり、着座者に不快感を与えている。
【0003】
たとえば、特開2003−237444号公報記載のシートでは、ウレタンパッドの上面に凹所を形成し、この凹所に繊維を網状に絡めた補助パッド部材(繊維パッド)が配置されている。つまり、ウレタンパッドが底パネルの上に載せられ、繊維パッドがウレタンパッド上面の凹所に配置され、送風装置(送風手段)がウレタンパッドの下方に取付けられている。そして、通気路がウレタンパッドに形成されて、繊維パッド、送風装置を連通している。
送風装置はペルチェ素子を使用した熱交換機能を持つ送風ファンからなり、空気は送風装置で熱交換されて加熱、冷却される。そして、空気は、加熱、冷却されて、または、加熱、冷却されることなく送風装置から通気路を送り込まれ、繊維パッド下面から繊維パッドに流入し、繊維パッドを流れて、繊維パッド上面から流出している。
【0004】
また、特開2004−073429号公報記載のシートでは、網状クッション体(繊維パッド)に連通する通気孔の下に熱風発生装置(送風手段)が配置されている。空気が熱風発生装置によって吸引され、ヒータで加熱された温風が通気孔を経由して網状クッション体(繊維パッド)に流入している。
【0005】
特開2012−115515号公報記載のシートでは、ウレタンパッドの一部に上下方向に連通する通気孔を設け、通気孔の全体、または、通気孔の上半部に繊維パッドが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−237444号公報
【特許文献2】特開2004−073429号公報
【特許文献3】特開2012−115515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2003−237444号公報、特開2004−073429号公報のシートの空調システムでは、空気は、加熱、冷却されて、または、加熱、冷却されることなく、送風手段からウレタンパッドの通気路を送り込まれ、通気路を経て繊維パッドにその下面から流入されている。
繊維パッドは通気性に優れ、空気は繊維パッド内を拡散して流れることができる。しかし、通気路の断面積は小さく、空気は噴射されるように通気路から繊維パッドに流入する。そのため、空気は拡散されることなく繊維パッドに流入し、通気路の真上およびその近隣という狭い範囲で繊維パッドを流れて繊維パッド上面から流出する。つまり、通気路の真上から離反した部分の繊維パッドを空気はほとんど流れない。そのため、着座者の臀部、シートクッションの間や背中、シートバックの間に籠った熱気や蒸れは、通気路の真上およびその近隣という狭い範囲からしか除去されず、十分に除去されない。
【0008】
特開2012−115515号公報のシートでは、送風手段がなく、繊維パッドでの空気の流れは自然の流れに任せているにすぎない。そのため、シートの通気性は低く、着座者の臀部、シートクッションの間や背中、シートバックの間に籠った熱気や蒸れを除去できない。
【0009】
なお、特開2003−237444号公報、特開2004−073429号公報のシートの空調システムは、空気を繊維パッドに送り込むものであり、トリムカバーを介して繊維パッドに空気を吸引するものでない。
【0010】
また、着座者の体温からくる熱や汗からくる湿気は、着座者の臀部、シートクッションの間や背中、シートバックの間に籠って熱気や蒸れとなるだけでなく、繊維パッドにも籠って熱気や蒸れとなる。しかし、空気が通気路の真上およびその近隣で繊維パッドを流れるため、通気路の真上およびその近隣という狭い範囲の繊維パッドからしか、繊維パッドに籠った熱気や蒸れを除去できない。
【0011】
本発明は、着座者の臀部、シートクッションの間や着座者の背中、シートバックの間に籠った熱気や蒸れを十分に除去できる通気性シートの提供を目的としている。
また、本発明は、着座者の臀部、シートクッションの間や着座者の背中、シートバックの間に籠った熱気や蒸れを十分に除去できるシートの空調システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、空気がトリムカバーを介して繊維パッドに吸引され、繊維パッド内を整流化されて流れている。
すなわち、請求項1に係る本発明によれば、骨格となるフレームにウレタンパッドを載せ、通気性のトリムカバーでウレタンパッドを覆ってそれぞれ形成されたシートクッション、シートバックを備え、ウレタンパッドに空気が流される通気性シートにおいて、シートクッション、シートバックの少なくともいずれか一方において、ウレタンパッドの一部でウレタンパッドの表面から裏面まで貫通して設けられた繊維パッドと、繊維パッドを覆って繊維パッドの裏側に規定され、繊維パッドから流入した空気の流れを整流可能な形状のチャンバと、繊維パッドと反対でチャンバに面して設けられ、トリムカバーを介して繊維パッド表面から空気を吸引して繊維パッドに流し、繊維パッドを流れた空気をチャンバに流入させる吸気手段とを持ち、吸気手段の駆動のもとで、トリムカバーを介して繊維パッド表面から吸引された空気が繊維パッドに流入して繊維パッドを流れ、繊維パッドからチャンバに流入した空気がチャンバで整流されて流れてチャンバから流出することによって、空気が繊維パッド内を整流化して流れている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明では、繊維パッドからチャンバに流入した空気をチャンバ内で整流して流すことよって、空気が繊維パッド内を整流化して流れ、繊維パッド内を万遍なく流れる。そのため、繊維パッドの真上だけでなくその周囲からも空気が吸引され、着座者の臀部、シートクッションの間や背中、シートバックの間に籠った熱気や蒸れを伴って繊維パッドに流入し、着座者の臀部や背中の熱気や蒸れが十分に除去される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は本発明の一実施例に係るシートの一部破断の概略側面図、(B)は(A)の破断部Xの平面図をそれぞれ示す。
図2】(A)は図1(A)の破断部Xの拡大図、(B)は繊維パッド、底パネルの間に敷設される間隙板の斜視図をそれぞれ示す。
図3】(A)(B)は別変形例における図1(A) (B)に対応する一部破断の概略側面図、平面図をそれぞれ示す。
図4】ダクトの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
骨格となるフレームにウレタンパッドを載せ、通気性のトリムカバーでウレタンパッドを覆ってそれぞれ形成されたシートクッション、シートバックを備え、ウレタンパッドに空気が流される通気性シートにおいて、シートクッション、シートバックの少なくともいずれか一方において、繊維パッドが、ウレタンパッドの一部でウレタンパッドの表面から裏面まで(シートクッションでは上面から下面まで、シートバックでは前面から後面まで)貫通して設けられている。そして、繊維パッドから流入した空気の流れを整流可能な形状のチャンバが、繊維パッドを覆って繊維パッドの裏側に規定されている。さらに、吸気手段が、繊維パッドと反対でチャンバに面して設けられて(シートクッションでは繊維パッドの下面に、シートバックでは後面に取付けられて)、トリムカバーを介して繊維パッド表面から空気を吸引して繊維パッドに流し、繊維パッドを流れた空気をチャンバに流入させている。
吸気手段が駆動すると、トリムカバーを介して繊維パッド表面から吸引された空気が繊維パッドに流入して繊維パッドを流れ、繊維パッドからチャンバに流入した空気がチャンバで整流されて流れてチャンバから流出することによって、空気が繊維パッド内を整流化して流れている。
【実施例】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1(A)は本発明の一実施例に係るシートの一部破断の概略側面図、(B)は(A)の破断部Xの平面図をそれぞれ示す。また、図2(A)は図1(A)の破断部Xの拡大図、(B)は繊維パッド、底パネルの間に敷設される間隙板の斜視図をそれぞれ示す。
【0017】
図1(A)に示すように、シート10は、シートクッション12と、シートクッションの後端に設けられたシートバック14とを有して構成され、ヘッドレスト14hがシートバック上端部に設けられている。なお、参照符号13はシートクッション側部の土手部(盛上り部)を示す。
シートクッション12、シートバック14の基本的な構造は周知であり、骨格となるシートフレーム(図示しない)にシートパッド(クッション部材)12aを載せ、通気性のあるトリムカバー(表皮)12b、14bでシートパッドを被覆してシートクッション、シートバックが形成されている。なお、シートバック14のシートパッドは図示されていない。
実施例では、シート10は車両用シートとして具体化され、シートスライド装置16によって前後方向にスライド可能となっている。
【0018】
シートパッド12aは、発泡ウレタン等の発泡材から成形されたウレタンパッド12a−Uと、繊維から成形した繊維パッド12a−Fとから形成されている。
以下、シートクッション12におけるシートの空調システムについて述べるが、シートバック14におけるシートの空調システムも略同じ構成とされる。
【0019】
繊維パッド12a−Fは、たとえば、熱可塑性樹脂などからなる連続線状体(繊維)をループ状に絡ませて三次元の網状体に成形され、ウレタンパッド12a−Uの一部に上面から下面まで貫通して配置されている。たとえば、図1(B)に示すように、シートクッション12に着座者が座ったときに、そのふたつの臀部が位置する部分の下にくる位置に、略矩形断面の繊維パッド12a−Fが配置される。
【0020】
シートパッド12aの成形について述べると、まず、繊維パッド12a−Fが成形金型の所定の位置に配置される。それから、成形金型を閉じ、成形金型にウレタンを流し込んで発泡させる。このとき、繊維パッド12a−Fの側面にウレタンを含浸させて繊維パッド、ウレタンパッド12a−Uを一体発泡化してシートパッド12aが成形される
【0021】
たとえば、繊維パッド12a−Fは、シートクッションの前後方向で前から1/5の位置から1/2の位置にかけて配置されるが、繊維パッドの配置位置はこれに限定されない。
また、図1(B)に示すように左右に分離して繊維パッド12a−Fを左右対称に2つ配置したが、これに限定されず、たとえば、左右方向でその中央に1つ配置してもよい。
【0022】
シートパッド12aはシートクッションフレームに取付けられた底パネル24に保持されている。ここで、図2(A)に示すように、底パネル24は、ウレタンパッド12a−Uの下面を覆うとともに繊維パッド12a−Fの下に空間を残して設けられている。つまり、接触しない部分(空間)が、シートパッド12a、底パネル24の間の一部で繊維パッド12a−Fの下に存在し、その空間からチャンバ22が規定されている。チャンバ22となる空間は、その上面を繊維パッド12a−Fで、下面および後面22aを底パネル24で、左右の側面および前面をウレタンパッド12a−Uで囲まれて形成されている。
そして、チャンバ22に連通する切欠き24aが底パネル24に形成されている。たとえば、底パネル24は鋼板またはプラスチック板から成形される。
【0023】
たとえば、チャンバ22の上面は繊維パッド下面の4つの隅部のうちの中央寄りで前の隅部で繊維パッド下面と重複した位置となるように形成され、切欠き24aがチャンバの下面と重複して底パネル24に形成されている。なお、チャンバ22の配置位置は、これに限定されず、繊維パッド下面の略中央としてもよい。
【0024】
チャンバ22は、空気整流用のものであり、空気の流入口であるその上面から流出口であるその下面に向かうにつれて断面が狭まる形状、たとえば、略じょうご形状とされる。ここで、図2(A)からわかるように、チャンバ22の上面は、繊維パッド下面の一部を覆って重複しているにすぎず、繊維パッド下面の全面で覆っていない。そして、チャンバの後面22aは、前方から後方の繊維パッド下面を覆わない部分に向かうにつれて大きな断面となるように傾斜した斜面形状とされ、たとえば、チャンバの後面22aは後方にほぼ30°傾斜した斜面となっている。
【0025】
チャンバ22は、その上面から下面にかけていずれも矩形断面に形成されているが、断面形状は矩形断面に限定されず、たとえば円形断面、楕円形状としてもよい。また、上から下まで同じ断面形状でなく、上面が矩形断面で下面が円形断面、または、その逆で、上面が円形断面で下面が円形断面となる断面形状にしてもよい。
【0026】
吸気手段26が、切欠き24aの下で底パネル24の下方に配置され、実施例では、底パネルの下面に取付けられている。吸気手段26はファン、ブロアのような送風手段を転用して構成される。
チャンバ22は、その上面が繊維パッド12a−Fに面し、その下面は底パネル24で囲まれて底パネルの切欠き24aを介して吸気手段26の吸気口(図示しない)に面している。
【0027】
シートクッションの空調システムにおける空気の流れについて以下に詳述する。
吸気手段26が駆動されると、空気がトリムカバー12bを介して繊維パッド上面から吸引されて繊維パッド12a−Fに流入する。そして、空気は繊維パッド内を拡散して流れ、繊維パッド下面からチャンバ22に流れ込む。それから、空気はチャンバを流れ、底パネルの切欠き24から流出し、吸気手段26から放出される。
【0028】
ここで、チャンバ22は、上面から下面に向かうにつれて断面が狭まる略じょうご形状に形成されているため、繊維パッド12a−Fからチャンバ22に流れ込んだ空気は図2(A)に示すように、チャンバ内を整流して流れる。そして、空気がチャンバ内を整流して流れるため、繊維パッド12a−Fからチャンバに流入する空気の整流化が促進され、空気は繊維パッドにおいても整流化されて流れる。
【0029】
そのため、空気はチャンバ22の真上の繊維パッド12a−Fだけでなく、真上の周囲の繊維パッドからもチャンバに向かって流れ、チャンバの真上から離れた繊維パッド部分にもチャンバに向かう空気の流れが生じ、空気は繊維パッド内を拡散して万遍なく流れる。そして、空気が繊維パッド内を拡散して万遍なく流れるため、繊維パッドの真上だけでなくその周囲からも空気が吸引され、着座者の臀部、シートクッションの間に籠った熱気や蒸れを伴って繊維パッドに流入し、着座者の臀部、シートクッションの間から熱気や蒸れが十分に除去される。
【0030】
さらに、繊維パッドに籠った熱気や蒸れも、空気が繊維パッド内を拡散して万遍なく流れることによって十分に除去される。
つまり、着座者の臀部、シートクッションの間に籠った熱気や蒸れだけでなく、繊維パッドに籠った熱気や蒸れも、繊維パッド上面から吸引された空気の流れによって十分に除去される。そのため、着座者は熱気や蒸れから解放され、着座者に不快感を与えない。
【0031】
実施例では、チャンバ22の上面は繊維パッド下面の全面を覆っておらず、繊維パッドと部分的に重複しているにすぎない。しかし、覆わない繊維パッド部分に向かって大きな断面となるようにチャンバ22はその後面22aが傾斜した斜面形状とされ、整流化を促す形状となっている。そのため、チャンバ22で覆われない繊維パッド部分からも空気がチャンバに流れ込み、大きな出力の吸気手段26を採用することなく、チャンバで覆われない繊維パッド表面からも熱気や蒸れなどが十分に除去される。そして、小さな出力の吸気手段26で足りるため、空調システムを軽量小型化、低価格化できる。また、吸気手段26の出力が小さいため、電力、騒音、振動が小さくなり、燃費、環境負担も低減される。
もちろん、必要であれば、チャンバ22の上面が繊維パッド下面を全面的に覆う形状としてもよい。
【0032】
チャンバ22の上面で覆わない繊維パッド下面、つまり、底パネル24と接する繊維パッド下面に、チャンバ22に連通する前後方向の溝を設定すれば、チャンバ22の上面で覆わない繊維パッド部分からチャンバへの空気の流れが促進される。
図2(B)は繊維パッド、底パネルの間に敷設される間隙板の斜視図を示す。たとえば、間隙板28は、複数の突起28aを有してプラスチック板などから成形され、突起は等間隔に形成される。突起28aが長手方向に位置するように、間隙板28を繊維パッド12a−F、底パネル24間に敷設すれば、チャンバ22に連通する前後方向の溝が底パネル上で繊維パッド下面に並列に設定される。そして、この前後方向の溝を介して空気が繊維パッド下面からチャンバ22に流れ、大きな出力の吸気手段26を採用することなく、チャンバで覆われない繊維パッド部分からも熱気や蒸れが除去される。
【0033】
間隙板28は一例であり、チャンバ22に連通する前後方向の溝を繊維パッド下面に設定する構成はこれに限定されない。たとえば、部分球形状のプラスチックの突起を底パネルに前後方向に貼着して前後方向の溝を設定してもよい。
【0034】
図1(B)に示すように、繊維パッド12a−Fは左右対称に2つ配置され、左右の繊維パッド12a−F1、12a−F2の下方にチャンバ22−1、22−2がそれぞれ規定される。そして、吸気手段26−1、26−2が、チャンバ22−1、22−2から空気を吸引して放出するように、チャンバの下方にそれぞれ配置され、2つの吸気手段が個別に配置されている。
【0035】
しかし、1つの吸気手段を共用する構成としてもよい。図3(A)(B)は別変形例における図1(A) (B)に対応する一部破断の概略側面図、平面図、図4はダクトの斜視図を示す。
別変形例では、切欠き24a−1、24a−2がチャンバ22−1、22−2の下面に面して底パネル24に形成され、ダクト(連通部材)29が2つの切欠きを下方から覆って底パネルの下面に取付けられて、2つのチャンバを連通している。
【0036】
図4に示すように、たとえば、ダクト29は、チャンバ22−1、22−2にそれぞれ連通した2つの流入口29−1、29−2をその上面の左右に有し、下面中央に流出口29−3を持つ略箱形状に形成されている。そして、1つの吸気手段26が流出口29−3の下で流出口を覆ってダクト下面に取付けられている。
【0037】
ダクト29によってチャンバ22−1、22−2が互いに連通され、ダクトの流出口29−3を覆って吸気手段26がダクト下面に設けられているため、ダクトを介して2つのチャンバに吸気手段が連通される。そのため、吸気手段26が駆動すると、チャンバ22−1、22−2から空気が流入口29−1、29−2を経てダクト29に流入し、流出口29−3を経て吸気手段26に一体的に吸引されて放出され、1つの吸気手段が共用されている。
【0038】
実施例では、繊維パッド12a−Fの下にチャンバ22となる空間を残してウレタンパッド12a−Uの下面を底パネル24で覆っている。しかし、チャンバ22を規定する構成はこれに限定されない。たとえば、底パネル24を用いてチャンバ22を設ける代わりに、チャンバを別部材で設けてもよい。
たとえば、その内部の空間をチャンバとする中空の箱状部材(別部材)が、その下面に吸気手段に面した開口を有して形成され、その上面が繊維パッドに面してウレタンパッド12a−Uの下面に取付けられる。たとえば、箱状部材は、上面が上端に(外)フランジを有して開放された形状に金属板またはプラスチック板から成形され、フランジを利用してウレタンパッド12a−Uの下面に取付けられる。
【0039】
箱状部材の内部をチャンバとした構成では、箱状部材がダクト29を兼ねた構成となる。すなわち、2つの繊維パッドに面する開口を箱状部材の上面に2つ、吸気手段に面する開口を下面に1つ設けることにより、箱状部材が(2つの繊維パッドを連通する)上記のダクト29として機能する。そのため、2つのチャンバ22を連通するダクトが省略でき、部品点数が削減される。
【0040】
実施例ではシートクッション12におけるシートの空調システムについて述べたが、シートクッションの上下位置を前後位置に置き換えれば、対応する構成のシートバック14におけるシートの空調システムが容易に得られる。
すなわち、シートバック14におけるシートの空調システムにおいては、繊維パッドがウレタンパッドの一部を前後方向に貫いて設けられる。そして、その前面から後面に向かうにつれて断面が狭まる略じょうご形状のチャンバを繊維パッドの後方に残して、(底パネルに対応する)背面パネルがウレタンパッドの後面(背面)に設けられる。切欠きがチャンバの後面に面して背面パネルに形成される。また、吸気手段が切欠きの後で背面パネルの後方、たとえば、背面パネルの後面に取付けられる。なお、吸気手段を配置するためのスペースが後面側でシートバック14に設定される。
【0041】
シートバックの空調システムにおいてもシートクッションの空調システムと同様に、空気が繊維パッドに吸引されて流れ、同様の効果が得られる。
すなわち、吸気手段の駆動のもとで、空気がトリムカバーを介して繊維パッド前面から吸引されて繊維パッドに流入して繊維パッド内を拡散して流れる。それから、空気は繊維パッドの後面からチャンバに流れ込み、チャンバを流れて背面パネルの切欠きから流出する。そして、繊維パッドからチャンバに流れ込んだ空気はチャンバ内を整流して流れることにより、繊維パッドにおいても整流化されて流れる。そのため、着座者の背中、シートバックの間に籠った熱気や蒸れだけでなく、シートバックの繊維パッドに籠った熱気や蒸れも、繊維パッド前面から吸引された空気の流れによって十分に除去される。
【0042】
また、吸気手段によってトリムカバーを介して繊維パッド上面(シートバックにおいては、繊維パッド前面)から空気を吸引しているが、送風手段によって空気をチャンバに送り込んで繊維パッドから流出させる構成としてもよい。
つまり、シートクッションの空調システムについて述べると、ファン、ブロアのような送風手段が繊維パッドと反対でチャンバに(チャンバの後面に)面して設けられる。そして、送風手段からチャンバに送られた空気はチャンバで整流されて流れ、整流化された空気が繊維パッドに流れ込んで繊維パッド内を拡散して万遍なく流れる。そのため、繊維パッドの真上だけでなくその周囲からも空気が繊維パッドの上面からトリムカバーを介して流出し、着座者の臀部、シートクッションの間に籠った熱気や蒸れが十分に除去される。
また、繊維パッドに籠った熱気や蒸れも、空気が繊維パッド内を拡散して万遍なく流れることによって繊維パッドから十分に除去される。
【0043】
上記のように本発明によれば、空気が繊維パッド内を整流化して流れることによって、繊維パッド内を万遍なく流れる。そのため、繊維パッドの真上だけでなくその周囲からも空気が吸引され、着座者の臀部、シートクッション間や背中、シートバックの間に籠った熱気や蒸れを伴って繊維パッドに流入し、熱気や蒸れが十分に除去される。
【0044】
上述した実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何等限定するものでなく、本発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全て本発明に包含されることはいうまでもない。
たとえば、シートの空調システムは、通常、シートクッション、シートバックの双方に設けられるが、シートクッション、シートバックのいずれか一方にのみ設けたものも本発明に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、通常、バス、乗用車、航空機などの車両用シートに応用されるが、車両用シートに限定されず、シートパッドの一部を繊維パッドとし、長時間着座されるシート全般、たとえば、事務で使用されるシート(事務椅子)、公民館、劇場、映画館、スポーツ施設などに設置されるシートなどにも応用できる。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用シート
12 シートクッション
12a シートパッド
12a−U ウレタンパッド
12a−F 繊維パッド
12b トリムカバー
22 チャンバ
24 底パネル
24a 切欠き
26 吸気手段
28 間隙板
28a 突起
29 ダクト(連通部材)
図1
図2
図3
図4