(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動機から前記第二圧縮機へ伝達されるヘッドが、前記第一圧縮機へ伝達されるヘッドと前記第二圧縮機へ伝達されるヘッドとを合わせた前記駆動機から伝達される全ヘッドの60%以上を占める請求項1から4のいずれか一項に記載の圧縮機システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、この発明の実施形態における圧縮機システムの概略構成を示す図である。
図2は、この発明の実施形態に高圧側圧縮機に配置された複数のインペラを説明する図である。
図3は、この発明の実施形態における低圧側圧縮機及び高圧側圧縮機に用いられるインペラを説明する図である。
図4Aは、この発明の実施形態における圧縮機システムの低圧側圧縮機における流量とヘッドとの関係を示す図である。
図4Bは、この発明の実施形態における圧縮機システムの高圧側圧縮機における流量とヘッドとの関係を示す図である。
図4Cは、この発明の実施形態における圧縮機システムにおける流量と出口圧力との関係を示す図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の圧縮機システム10は、駆動機11と、低圧側圧縮機(第一圧縮機)12と、高圧側圧縮機(第二圧縮機)13と、可変速増速機14と、一定速増速機15と、を備えている。
【0019】
駆動機11は、増速機または減速機を介して二台の圧縮機を直列に連結して同時に駆動させる。駆動機11は、回転駆動される第一出力軸11aと、第一出力軸11aと同じ回転数となるように回転駆動される第二出力軸11bとを有する。本実施形態の駆動機11は、電動モータであり、常に一定速で第一出力軸11a及び第二出力軸11bを駆動する。駆動機11は、第一出力軸11aと、第二出力軸11bとを同軸上に配置している。第一出力軸11aは、駆動機11の本体を挟んで第二出力軸11bと反対側に配置されている。
【0020】
低圧側圧縮機12は、駆動機11の一方の出力軸である第一出力軸11aの回転が伝達されて駆動される。本実施形態の低圧側圧縮機12は、外部から取り込んだ作動流体を圧縮し、高圧側圧縮機13の入口側に送給する。
【0021】
高圧側圧縮機13は、駆動機11の他方の出力軸である第二出力軸11bの回転が伝達されて駆動される。高圧側圧縮機13は、低圧側圧縮機12よりも高い圧力で作動流体を圧縮する。本実施形態の高圧側圧縮機13は、低圧側圧縮機12で圧縮された作動流体をさらに圧縮する。高圧側圧縮機13は、低圧側圧縮機12を介することで、二段階にわたって圧縮された作動流体を使用するプロセス側へと供給される。
【0022】
可変速増速機14は、第一出力軸11aの回転数を増加させて低圧側圧縮機12に伝達させる。可変速増速機14は、増加させた回転数を変化可能とされている。本実施形態の可変速増速機14は、低圧側圧縮機12の回転軸12aに接続されている。本実施形態の可変速増速機14は、増速比が可変である。例えば、可変速増速機14は、駆動機11が一定速で運転されると、第一出力軸11aの回転数を増速させた後の回転数である定格出力時の回転数を100%とした場合に、例えば、105%から70%程度の範囲内で変化させ、低圧側圧縮機12に伝達することが可能とされている。
【0023】
一定速増速機15は、第二出力軸11bの回転数を増加させて高圧側圧縮機13に伝達させる。本実施形態の一定速増速機15は、高圧側圧縮機13の回転軸13aに接続されている。一定速増速機15は、増加させた回転数を一定に維持する。つまり、本実施形態の一定速増速機15は、増速比が固定である。例えば一定速増速機15は、第一出力軸11aの回転数を定格出力時の回転数である100%まで増加させ、高圧側圧縮機13に伝達する。
【0024】
本実施形態の低圧側圧縮機12及び高圧側圧縮機13は、可変速増速機14や一定速増速機15に接続された回転軸12a、13aに、複数のインペラ20が並んで取り付けられている。
【0025】
具体的には、低圧側圧縮機12及び高圧側圧縮機13では、複数のインペラ20が回転軸12a、13aの延びる軸方向に間隔を空けて複数並んで配置されて不図示のケーシングの内部に収容されている。例えば、本実施形態の高圧側圧縮機13では、
図2に示すように、作動流体が流入する軸方向の最も一方側(
図2における紙面左側)の最前段に配置される第一段インペラ21から、作動流体が流出する軸方向の最も他方側(
図2における紙面右側)の最後段に配置される第6段インペラ26までの六枚のインペラ21、22、23、24、25、26を有している。
【0026】
図3に示すように、各々のインペラ21、22、23、24、25、26は、略円盤状のディスク30と、ディスク30の表面に立ち上がるように放射状に取り付けられて周方向に並んだ複数のブレード40と、複数のブレード40を周方向に覆うように取り付けられたカバー50とを有する。
なお、各々のインペラ21、22、23、24、25、26のいずれか、またはすべては、カバー50を有していないオープンインペラであってもよい。
【0027】
また、一定速の一定速増速機15を介して運転される高圧側圧縮機13は、流量の変動に対し、ヘッド性能が広い運転範囲で変動の少ないフラットな特性を得ることようにすることが好ましい。例えば、本実施形態の高圧側圧縮機13では、インペラ20の周速を可能な限り抑えることが好ましい。具体的には、本実施形態の高圧側圧縮機13では、インペラ20の周速をマッハ数0.8以下として運転されるように、一定速増速機15で増速させる定格出力時の回転数を調整することが好ましい。
【0028】
流量の変動に対し、ヘッド性能が広い運転範囲で変動の少ないフラットな特性を得る他の構成としては、例えば、本実施形態の高圧側圧縮機13では、インペラ20の枚数を極力増やすことが好ましい。具体的には、本実施形態の高圧側圧縮機13では、インペラ20の枚数を一つの回転軸13aに対して少なくとも六枚以上とすることが好ましい。
【0029】
また、本実施形態の圧縮機システム10では、低圧側圧縮機12と高圧側圧縮機13とに対して、駆動機11から伝達されるヘッドを均等に配分するのではなく、一定速で回転される高圧側圧縮機13へ伝達されるヘッドが低圧側圧縮機12へ伝達されるヘッドに対して大きくなるように駆動機11から供給することが好ましい。本実施形態では、高圧側圧縮機13へ伝達されるヘッドは、低圧側圧縮機12へ伝達されるヘッドと高圧側圧縮機13へ伝達されるヘッドとを合わせた駆動機11から伝達される圧縮機システム10としての全ヘッドに対して60%以上を占めることが好ましい。
【0030】
このような圧縮機システム10では、
図4Aに示すように、低圧側圧縮機12は、可変速増速機14における増速比を変動させることで、回転数を可変として運転することができる。本実施形態では、低圧側圧縮機12は、可変速増速機14における増速比を変動させることによって、定格出力に対して例えば70%〜100%とした回転数で運転されている。
【0031】
図4Aは、低圧側圧縮機12を、定格出力に対して例えば70%〜100%とした回転数で運転した場合の、作動流体の流量と、低圧側圧縮機12におけるヘッドとの関係である。この
図4Aに示すように、低圧側圧縮機12は、サージラインLs以下の範囲で、70%のラインL1と、100%のラインL2との間で運転した場合、流量と入口側と出口側との圧力差であるヘッドとの関係は、所定の領域を有する範囲D1のようになる。
【0032】
また、
図4Bに示すように、高圧側圧縮機13は、一定速増速機15の増速比が固定であるので、一定の回転数で運転される。高圧側圧縮機13は、圧縮機システム10における出力(出口圧力)を高く保つために、なるべく定格出力に近い回転数で運転するのが好ましい。本実施形態では、高圧側圧縮機13は、例えば定格出力に対して100%の回転数で運転されている。
【0033】
図4Bは、高圧側圧縮機13を、定格出力に対して例えば100%とした回転数で運転した場合の、作動流体の流量と、高圧側圧縮機13におけるヘッドとの関係である。この
図4Bに示すように、高圧側圧縮機13は、サージラインLs以下の範囲で、100%のラインL3上で運転した場合、流量と入口側と出口側との圧力差であるヘッドとの関係は、ライン状に示される範囲D2のようになる。
【0034】
圧縮機システム10においては、上記のような低圧側圧縮機12および高圧側圧縮機13で圧縮した作動流体を、プロセス側に出力する。このとき、低圧側圧縮機12を
図4Aに示した範囲D1で運転し、高圧側圧縮機13を
図4Bに示した範囲D2で運転すると、圧縮機システム10から出力される作動流体の流量と出口圧力との関係は、
図4Cに示す範囲D3となる。そのため、圧縮機システム10において、出口圧力を一定の圧力P1に維持しようとすると、範囲D3と圧力P1とが重なり合うラインが運転範囲D3aとなる。
【0035】
ここで、仮に、低圧側圧縮機12側の増速機を一定速とした場合や駆動機11を可変とした場合との比較を行う。
【0036】
(比較検討例1)
図5は、この発明の実施形態における圧縮機システムの比較検討例1の概略構成を示す図である。
図6Aは、この発明の実施形態における圧縮機システムの比較検討例1の低圧側圧縮機12における流量とヘッドとの関係を示す図である。
図6Bは、この発明の実施形態における圧縮機システムの比較検討例1の高圧側圧縮機13における流量とヘッドとの関係を示す図である。
図6Cは、この発明の実施形態における圧縮機システムの比較検討例1における流量と出口圧力との関係を示す図である。
【0037】
図5に示すように、比較検討例1としての圧縮機システム1Aは、
図1に示した本実施形態の構成と同様に、駆動機11と、低圧側圧縮機12と、高圧側圧縮機13と、一定速増速機15と、を備える。圧縮機システム1Aは、可変速増速機14に代えて、駆動機11と低圧側圧縮機12との間に、増速比が固定の一定速増速機4を備える。
【0038】
このような構成の圧縮機システム1Aでは、
図6Aに示すように、一定速増速機4の増速比が固定であるので、一定の回転数で運転される。例えば、低圧側圧縮機12は、サージラインLs以下の範囲で、定格出力に対して例えば100%の回転数で運転すると、流量と入口側と出口側との圧力差であるヘッドとの関係は、100%のラインL11上でライン状に示される範囲D11のようになる。
【0039】
また、
図6Bに示すように、高圧側圧縮機13は、一定速増速機15の増速比が固定であるので、一定の回転数で運転される。例えば、高圧側圧縮機13は、サージラインLs以下の範囲で、例えば100%の定格出力の回転数で運転すると、100%のラインL12上で、流量と入口側と出口側との圧力差であるヘッドとの関係は、ライン状に示される範囲D12に示すようになる。
【0040】
このとき、低圧側圧縮機12を
図6Aに示した範囲D11で運転し、高圧側圧縮機13を
図6Bに示した範囲D12で運転すると、圧縮機システム1Aから出力される作動流体の流量と出口圧力との関係は、
図6Cに示す範囲D13となる。
【0041】
そのため、
図6Cに示すように、圧縮機システム1Aとしては、出口圧力を一定の圧力P1に維持しようとすると、範囲D13と圧力P1とが重なり合う運転点D13aのみで運転することとなってしまう。このように、駆動機11、低圧側圧縮機12、高圧側圧縮機13を一定の回転数のみで運転する圧縮機システム1Aでは、出口圧力を一定の圧力P1に維持しようとすると、運転範囲が運転点D13aの一点のみとなる。
【0042】
(比較検討例2)
図7は、この発明の実施形態における圧縮機システムの比較検討例2の概略構成を示す図である。
図8Aは、この発明の実施形態における圧縮機システムの比較検討例2の低圧側圧縮機における流量とヘッドとの関係を示す図である。
図8Bは、この発明の実施形態における圧縮機システムの比較検討例2の高圧側圧縮機における流量とヘッドとの関係を示す図である。
図8Cは、この発明の実施形態における圧縮機システムの比較検討例2における流量と出口圧力との関係を示す図である。
【0043】
図7に示すように、比較検討例2としての圧縮機システム1Bは、可変速モータからなる可変速駆動機2と、低圧側圧縮機12と、高圧側圧縮機13と、増速比が固定の一定速増速機4,15と、を備える。
【0044】
このような圧縮機システム1Bでは、可変速モータからなる可変速駆動機2の回転数を変動させることで、低圧側圧縮機12と高圧側圧縮機13の回転数を同期して変化させる。
【0045】
このような構成の圧縮機システム1Bでは、
図8Aに示すように、低圧側圧縮機12は、可変速駆動機2の回転数の変動により、定格出力に対して例えば70%〜100%とした回転数で運転することができる。
図8Aは、低圧側圧縮機12を、サージラインLs以下の範囲で、定格出力に対して例えば70%〜100%とした回転数で運転した場合の、作動流体の流量と、低圧側圧縮機12におけるヘッドとの関係である。低圧側圧縮機12における流量と入口側と出口側との圧力差であるヘッドとの関係は、70%のラインL21と、100%のラインL22との間で、所定の領域を有する範囲D21のようになる。
【0046】
一方、圧縮機システム1Bでは、
図8Bに示すように、高圧側圧縮機13は、可変速駆動機2の回転数の変動によりサージラインLs以下の範囲で、定格出力に対して例えば70%〜100%とした回転数で運転することができる。
図8Bは、高圧側圧縮機13は、定格出力に対して例えば70%〜100%とした回転数で運転した場合の、作動流体の流量と、低圧側圧縮機12におけるヘッドとの関係である。高圧圧縮機13における流量と入口側と出口側との圧力差であるヘッドとの関係は、70%のラインL31と、100%のラインL32との間で、所定の領域を有する範囲D22のようになる。
【0047】
圧縮機システム1Bにおいては、低圧側圧縮機12を
図8Aに示した範囲D21で運転し、高圧側圧縮機13を
図8Bに示した範囲D22で運転すると、圧縮機システム1Bから出力される作動流体の流量と出口圧力との関係は、
図8Cに示すような範囲D23となる。
このような圧縮機システム1Bにおいて、出口圧力を一定の圧力P1に維持しようとすると、範囲D23と圧力P1とが重なり合うラインが運転範囲D23aとなる。
【0048】
(実施形態の圧縮機システム10と比較検討例1,2との比較)
図6Cに示すように、駆動機11、一定速増速機4,15を一定速とした比較検討例1の圧縮機システム1Aでは、出口圧力を一定の圧力P1に維持しようとすると、1点の運転点D13aのみでしか運転を行うことができない。しかしながら、高圧側圧縮機13および低圧側圧縮機12から供給される作動流体を使用するプロセス側の状況によっては負荷が生じて、流量などの運転条件が変動することがある。この変動が生じると、出口圧力を一定に維持することができずに、運転点D13aから外れてしまう。したがって、圧縮機システム1Aでは、そもそもプロセス側の要求に応じて一定の出口圧力に保ったまま安定して運転することが難しい。
【0049】
一方、
図8Cに示すように、可変速駆動機2を可変速とした比較検討例2の圧縮機システム1Bでは、出口圧力を一定の圧力P1に維持しようとすると、運転範囲D23aの範囲内で運転することが可能である。しかし、流量を調整するために可変速駆動機2の回転数を変化させると、低圧側圧縮機12と高圧側圧縮機13の双方の回転数が変化して出口圧力が大きく変化してしまう。特に、定格出力に対して例えば70%程度まで回転数を落とした場合には、低圧側圧縮機12及び高圧側圧縮機13のヘッドが共に低下する。その結果、圧縮機システム1Bの出口圧力は大きく低下してしまう。したがって、出口圧力をプロセス側の要求に応じて一定の値に保ったまま運転できる上記の運転範囲D23aは、後述する圧縮機システム10の運転範囲D3aと比較して狭くなってしまう。
【0050】
これらの比較検討例1、2に対し、
図4Cに示すように、駆動機11を一定速とし、低圧側圧縮機12の増速機を可変速増速機14とした本実施形態の圧縮機システム10では、範囲D3内で運転することができる。この構成では、流量を調整するために可変速増速機14の増速比を変化させても、高圧側圧縮機13の回転数は変わらない。そのため、高圧側圧縮機13は、回転数を保ったまま、少ない流量の作動流体を圧縮することができ、ヘッドを増加させることができる。したがって、出口圧力をプロセス側の要求に応じて一定の値に保ったまま運転できる運転範囲を、より広い運転範囲D3aとすることができる。
【0051】
具体的には、上記比較検討例2の圧縮機システム1Bと、本実施形態の圧縮機システム10とで、上記範囲D23,D3で運転を行っている状態で、単純に回転数を変動させた場合を例に挙げて説明する。
【0052】
図8A,
図8B、
図8Cに示すように、比較検討例2の圧縮機システム1Bでは、100%の回転数で運転を行っている状態から70%の回転数に移行させると、運転点AL11、AH11から、プロセス抵抗線Rに沿って運転点AL12,AH12に低圧側圧縮機12,高圧側圧縮機13の運転状態がともに推移する。このように、比較検討例2の圧縮機システム1Bでは、低圧側圧縮機12とともに、高圧側圧縮機13でもヘッドが低下するため、圧縮機システム1Bの出口圧力が大きく低下してしまう。
【0053】
これに対し、本実施形態の圧縮機システム10では、
図4A,
図4Bに示すように、100%の回転数で運転を行っている状態から70%の回転数に移行させると、低圧側圧縮機12では、運転状態が運転点AL1からプロセス抵抗線Rに沿って運転点AL2に推移する。一方、高圧側圧縮機13では、回転数は100%の回転数を維持しているため、100%のラインL3上で推移する。具体的には、低圧側圧縮機12で回転数が変化して流量が低下することで、ラインL3上で運転点AH1から運転点AH2に移行し、ヘッドは増加する。これにより、圧縮機システム10としての出口圧力が大きく低下するのを防ぐことができる。
【0054】
したがって、このような構成によれば、高圧側圧縮機13を一定回転数で駆動しながら、低圧側圧縮機12の回転数を可変速増速機14で変動させることにより、出口圧力を一定に維持するように運転させる際に、広い運転範囲D3aで圧縮機システム10を運転することができる。したがって、出口圧力を一定とする運転を行う場合であっても、より広い運転範囲D3aを確保し、安定した運転を行うことが可能となる。
【0055】
また、低圧側圧縮機12の回転数を変動させた上で、高圧側圧縮機13の回転数を一定に保つことによって、圧縮機システム10の出口圧力の低下を抑えることができ、運転範囲を広げながら出力を安定して保つことができる。
【0056】
さらに、一定速増速機15を介して運転される高圧側圧縮機13によるヘッドが、全ヘッドの60%以上を占めるようにすることで、低圧側圧縮機12で流量を調整した場合に、変動を極力抑えて安定した運転が行うことができる。
【0057】
また、一定速増速機15を介して運転される高圧側圧縮機13は、インペラ20の周速をマッハ数0.8以下としたり、インペラ20の枚数を六枚(六段)以上としたりすることで、低圧側圧縮機12に比べてフラットで広い運転範囲を有することができる。
【0058】
(実施例)
以下、実施例によって本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明の実施形態は以下の記載によって限定されない。
【0059】
図9Aは、この発明の実施例における圧縮機システムの低圧側圧縮機における質量流量とヘッドとの関係を示す図である。
図9Bは、この発明の実施例における圧縮機システムの高圧側圧縮機における質量流量とヘッドとの関係を示す図である。
図9Cは、この発明の実施例における圧縮機システムの質量流量と、低圧側圧縮機及び高圧側圧縮機のそれぞれのヘッドとの関係をまとめた状態を示す図である。
【0060】
実施例の圧縮機システムでは、
図9Aに示すように、低圧側圧縮機は、駆動機の回転数の変動により、定格出力に対して75%〜105%とした回転数で運転することができる。
図9Aは、低圧側圧縮機を、サージラインLs以下の範囲で、定格出力に対して例えば75%〜105%とした回転数で運転した場合の、作動流体の質量流量と、低圧側圧縮機におけるヘッドとの関係である。
【0061】
また、
図9Bに示すように、高圧側圧縮機は、一定速増速機の増速比が固定であるので、一定の回転数で運転される。本実施例では、高圧側圧縮機は、定格出力に対して100%の回転数で運転されている。
図9Bは、高圧側圧縮機を、定格出力に対して100%とした回転数で運転した場合の、作動流体の質量流量と、高圧側圧縮機におけるヘッドとの関係である。
【0062】
ここで、
図9Cは、質量流量に対する低圧側圧縮機のヘッドと高圧側圧縮機のヘッドとのそれぞれの関係をまとめた状態を示している。具体的には、
図9Cは、低圧側圧縮機の作動流体の質量流量とヘッドとの関係を示す
図9Aに、横軸である質量流量の値を合わせるように、高圧側圧縮機の作動流体の質量流量とヘッドとの関係を占めす
図9Bを反転させて重ねた図である。
【0063】
図9Cに示すように、実施例の圧縮機システムにおいては、例えば、圧縮機システムの出口圧力がある一定値のままであるとして、圧縮機システム全体のヘッドを各質量流量に対し、一律の41000[kg−m/kg]と仮定すると、圧縮機システム全体のヘッドを41000[kg−m/kg]で一定に保つ運転ラインLeが得られる。
【0064】
このような圧縮機システムでは、例えば、低圧側圧縮機の回転数を100%から90%に落とすと、ヘッドが約15000[kg−m/kg]から約13000[kg−m/kg]まで低下する。この際、圧縮機システムの質量流量は、約27000[kg/h]から約20000[kg/h]まで低下してしまう。ところが、質量流量が約20000[kg/h]まで低下することで、高圧側圧縮機のヘッドは、約26000[kg−m/kg]から約28000[kg−m/kg]まで増加する。
【0065】
つまり、実施例の圧縮機システムは、この運転ラインLe上で運転することで、低圧側圧縮機で回転数が変化して質量流量が低下することでヘッドが低下しても、高圧側圧縮機によって低下した分のヘッドを増加させることができる。これにより、圧縮機システム全体としては、低圧側圧縮機の回転数を変化させることで運転範囲を広げながら、出口圧力の低下が抑制することができ、出口圧力を41000[kg−m/kg]のままで一定に保って運転できる。
【0066】
したがって、実施例の圧縮機システムでは、
図9Cに示すように運転範囲を約15000[kg/h]から約28000[kg/h]までの広い領域とすることができる。
【0067】
また、実施例の圧縮システムが示すように、回転数が一定のまま運転される高圧側圧縮機のヘッドは、圧縮機システム全体のヘッドの60%となっている。具体的には、本実施例の圧縮機システムで出口圧力を41000[kg−m/kg]に保ったまま運転する際の最大質量流量は、運転範囲より約28000[kg/h]である。この際の高圧側圧縮機のヘッドは、
図9Cより、約24600[kg−m/kg]となる。したがって、回転数が一定のまま運転される高圧側圧縮機のヘッドは、圧縮機システム全体のヘッドの60%を占めていることが分かる。
【0068】
(その他の実施形態)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、設計変更可能である。
例えば、上記実施形態では、低圧側圧縮機12の回転数を、可変速増速機14で可変とする構成としたが、低圧側圧縮機12に代えて、高圧側圧縮機13に可変速増速機14を備え、高圧側圧縮機13の回転数を可変としても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、低圧側圧縮機12側に可変速増速機14を備え、高圧側圧縮機13に一定速増速機15を備えるようにしたが、少なくとも一方を、増速機ではなく減速機としてもよい。
【0070】
また、1台の駆動機11で低圧側圧縮機12および高圧側圧縮機13を駆動する構成において、低圧側圧縮機12および高圧側圧縮機13の一方のみの回転数を可変とするには、圧縮機の入り口にIGV(Inlet Guide Vane)を用いることも可能である。しかし、本実施形態の構成によれば、IGVのみを設けた場合に比べて、計画運転点ばかりでなく、計画運転点以外の運転域で運転効率を向上させながら、より広い運転範囲を得ることができる。