(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の焼き嵌め工程における前記第1のディスク部材の加熱温度は、前記第1の焼き嵌め工程における前記第1のディスク部材の加熱温度よりも低いことを特徴とする請求項8記載の回転機械の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クローズドインペラには、複数のパーツ(ディスク、複数のブレード、及びカバー)を接合して組み立てるものがある。このような接合構造を有する場合、複数のパーツの接続位置が所望の接続位置となるように組み立てることが困難である。このため、ディスクとカバーとの間に配置される流路の形状を、所望の形状にすることが困難となり、インペラの性能が低下する可能性があった。
【0006】
このような問題を解決するために、ディスク、複数のブレード、及びカバーを一体とする(インペラを1ピース化する)ことが考えられる。この場合、組み立て作業が不要となるが、インペラの母材となる材料に対して工具を用いて高精度な削り出し加工を行う必要がある。
【0007】
インペラを1ピース化する場合、ドーナッツ形状とされたカバーの中央部にディスクの一部が配置されることになるため、インペラの母材を工具で加工する際に、上記ディスクの一部が工具の挿入時の障害となり、流路を精度良く加工することが困難になる可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、第1のディスク部材とは別体とされた第2のディスク部材、ブレード、及びカバーを一体に構成した上で、第2のディスク部材とカバーとの間に形成される流路の形状の精度を高めることの可能なインペラ、回転機械、インペラの製造方法、及び回転機械の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係るインペラは、筒状とされた第1及び第2のディスク部材を有するディスクと、前記第2のディスク部材に対して一体に設けられたブレードと、前記ブレードに対して一体に設けられており、前記第2のディスク部材との間に流路を区画するカバーと、を備え、前記第1のディスク部材は、前記流路の一部を区画するとともに、前記ディスクの中心軸方向を深さ方向とするリング状の凹部を有し、前記第2のディスク部材は、前記凹部内に挿入されることで、前記第1のディスク部材と係合するリング状の係合部を有しており、前記係合部の外周面と、該係合部の外周面と接触する前記凹部の内周面と、の境界部分に第1の焼き嵌め部が設けられて
おり、前記第2のディスク部材は、前記ディスクの中心軸方向において、前記第1のディスク部材に当接される部分と、前記第1のディスク部材との間に隙間を形成する部分と、を有することを特徴とする。
【0010】
このように、ディスクを構成する第1のディスク部材と第2のディスク部材とを別体とすることで、カバーと第2のディスク部材との間に配置される流路を形成する際に使用する工具を、カバーと第2のディスク部材とに挿入させ易くなるため、流路の形状の精度を高めることができる。
【0011】
また、第2のディスク部材、ブレード、及びカバーを一体とすることで、第2のディスク部材、ブレード、及びカバーの組み立て作業が不要となるので、組合作業に起因する流路の形状の精度の低下を抑制できる。
【0012】
さらに、係合部の外周面と凹部の内周面との境界部分に、焼き嵌めにより形成される第1の焼き嵌め部を有することで、凹部を区画する部分の第1のディスク部材の外周面を加熱することで、第1の焼き嵌め部を形成することが可能となる。これにより、第1の焼き嵌め部を形成する際に、ブレードと一体とされた第2のディスク部材を直接加熱することがなくなるため、該加熱によるブレードの変形を抑制することができる。
また、ディスクの中心軸方向において、第1のディスク部材に当接される部分と、第1のディスク部材との間に隙間を形成する部分と、を第2のディスク部材が有することで、上記隙間により、フレッティング(この場合、接触する第1のディスク部材と第2のディスク部材との間に微小な往復滑りが繰返し作用したときに生じる表面損傷)の発生を抑制することができる。
【0013】
本発明の第2の態様に係るインペラにおいて、前記係合部は、前記ディスクの中心軸方向に対して、前記ディスクの中心軸から前記係合部の外周面までの距離が異なる複数の段差部を有しており、前記凹部の形状は、前記複数の段差部と係合可能な形状であってもよい。
【0014】
このような構成とすることで、係合部の外周面が複数設けられるとともに、複数の外周面のうち、ある外周面のディスク部材の中心軸方向における幅と、ある外周面よりも外側に配置された別の外周面のディスクの中心軸方向における幅と、を同じにした場合、外側に配置された別の外周面の面積の方が大きくなる。
【0015】
したがって、1つの外周面のみを有する係合部を用いて所望の面積を得る場合と、複数の外周面を有する係合部(複数の段差部を含む係合部)を用いて該所望の面積を得る場合と、を比較すると、複数の外周面を有する係合部の方が、1つの外周面のみを有する係合部よりもディスクの中心軸方向の長さを短くすることができる。
【0018】
本発明の第
3の態様に係るインペラにおいて、前記凹部の内周面は、該凹部の底面から前記第2のディスク部材側に向かうにつれて、前記凹部の内径を狭める方向に傾斜した傾斜面であり、前記係合部の外周面は、前記第1のディスク部材側に配置される前記係合部の先端面から前記ディスクの中心軸方向に離間するにつれて、前記係合部の厚さを薄くする傾斜面であってもよい。
【0019】
このような構成とすることにより、第1の焼き嵌め部においてアンカー効果(ディスク部材の中心軸方向において、凹部から係合部が抜けにくくなる効果)を発生させることが可能となるので、第1のディスク部材と第2のディスク部材との間の接続強度を向上させることができる。
【0020】
本発明の第
4の態様に係るインペラにおいて、前記ディスクの中心軸方向において、前記第1のディスク部材と前記第2のディスク部材とが当接された部分に、位置決めキーを内設させてもよい。
【0021】
このように、ディスクの中心軸方向において、第1のディスク部材と第2のディスク部材とが当接された部分に位置決めキーを内設させることで、第1のディスク部材と第2のディスク部材との間の位置決め(ディスクの中心軸を回転軸とする回転方向の位置決め)を容易に行うことができる。
【0022】
本発明の第
5の態様に係る回転機械において、上記インペラと、前記ディスクの中心軸と一致する軸線を回転軸として回転し、前記インペラが固定される回転体と、を備え、前記第1のディスク部材のうち、前記凹部が形成されていない部分の内周面と前記回転体の外周面との境界部分には、第2の焼き嵌め部が設けられていてもよい。
【0023】
このような構成とすることで、第1の焼き嵌め部から離間した位置に第2の焼き嵌め部を設けることが可能となるので、第1の焼き嵌め部と第2の焼き嵌め部との干渉を抑制した上で、回転体の外周面にインペラを固定することができる。
【0024】
本発明の第
6の態様に係る回転機械において、前記第2の焼き嵌め部の焼き嵌め率は、前記第1の焼き嵌め部の焼き嵌め率よりも小さくしてもよい。
【0025】
このように、第1の焼き嵌め部の後に形成される第2の焼き嵌め部の焼き嵌め率を第1の焼き嵌め部の焼き嵌め率よりも小さくすることで、第2の焼き嵌め部を形成時に行う加熱に起因する熱が、第1の焼き嵌め部に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0026】
本発明の第
7の態様に係るインペラの製造方法は、筒状とされ、内側にリング状とされた凹部を有する第1のディスク部材を形成する工程と、
前記凹部内に挿入されることで、前記第1のディスク部材と係合するリング状の係合部を有
し、前記第1のディスクとともにディスクを構成する第2のディスク部材と、前記第2のディスク部材に設けられたブレードと、前記ブレードに設けられ、前記ブレードを覆うとともに、前記第2のディスク部材とともに流路を区画するカバーと、が一体とされた構造体を形成する工程と、前記凹部内に、前記構造体を構成する前記係合部を挿入し、前記第1のディスク部材の外周面側から、前記第1のディスク部材を加熱することで、前記係合部の外周面と前記凹部の内周面との境界部分を焼き嵌めする第1の焼き嵌め工程と、を含
み、前記構造体を形成する工程では、前記ディスクの中心軸方向において、前記係合部の長さを前記凹部の深さよりも大きくすることで、前記第1のディスク部材と前記第2のディスク部材とが当接する部分を形成するとともに、前記第1のディスク部材と前記第2のディスク部材との間に隙間を形成することを特徴とする。
【0027】
このように、第1のディスク部材を形成する工程と、第2のディスク部材、第2のディスク部材に設けられたブレード、及びブレードに設けられ、ブレードを覆うカバーを一体形成する工程と、を別の工程で行うことで、第2のディスク部材とカバーとの間に形成される流路を、工具を用いて容易に加工することが可能となるので、流路の形状の精度を高めることができる。
【0028】
さらに、第1のディスク部材の外周面側から、第1のディスク部材を加熱して、係合部の外周面と凹部の内周面との間を焼き嵌めすることで、第1の焼き嵌め部を形成する際に、ブレードと一体とされた第2のディスク部材を直接加熱することがなくなるため、第1の焼き嵌め部を形成する際の加熱によるブレードの変形を抑制できる。
また、構造体を形成する工程では、ディスクの中心軸方向において、係合部の長さを凹部の深さよりも大きくして、第1のディスク部材と第2のディスク部材との間に隙間を形成することで、上記隙間により、フレッティング(この場合、接触する第1のディスク部材と第2のディスク部材との間に微小な往復滑りが繰返し作用したときに生じる表面損傷)の発生を抑制することができる。
【0029】
本発明の第
8の態様に係る回転機械の製造方法において、請求項8に記載のインペラ製造方法により製造されたインペラを準備する工程と、前記インペラ内に回転体を挿入させた状態で、前記第1のディスク部材のうち、前記凹部が形成されていない部分の外周面側から前記第1のディスク部材を加熱することで、前記凹部が形成されていない部分の内周面と前記回転体の外周面との境界部分を焼き嵌めする第2の焼き嵌め工程と、を含んでもよい。
【0030】
このように、インペラ内に回転体を挿入させた状態で、第1のディスク部材のうち、凹部が形成されていない部分の外周面側から第1のディスク部材を加熱することで、ブレードと一体とされた第2のディスク部材を直接加熱することがなくなるため、該加熱によるブレードの変形を抑制することができる。
【0031】
本発明の第
9の態様に係る回転機械の製造方法において、前記第2の焼き嵌め工程における前記第1のディスク部材の加熱温度は、前記第1の焼き嵌め工程における前記第1のディスク部材の加熱温度よりも低くてもよい。
【0032】
このように、第1の焼き嵌め部の後に形成する第2の焼き嵌め部を形成する際の加熱温度を、第1の焼き嵌め部を形成する際の加熱温度よりも小さくすることで、第2の焼き嵌め部を形成時の加熱が、第1の焼き嵌め部に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、第1のディスク部材とは別体とされた第2のディスク部材、ブレード、及びカバーを一体に構成した上で、インペラの流路の形状の精度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転機械の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1において、Aは領域(以下、「領域A」という)、Fは作動流体(以下、「作動流体F」という)、O
1はディスク21の中心軸(以下、「中心軸O
1」という)、O
2は回転体11の軸線(以下、「軸線O
2」という)、X方向はディスク21の中心軸O
1方向をそれぞれ示している。中心軸O
1及び軸線O
2は、同一の方向(X方向)に延在するとともに、一致している。
【0036】
図1では、回転機械10の一例として、遠心圧縮機を例に挙げて図示する。なお、
図1では、後述する
図2に示すインペラ16の詳細を図示することが困難なため、簡略化させた状態のインペラ16を図示する。
【0037】
図1を参照するに、第1の実施形態の回転機械10は、回転体11と、ジャーナル軸受13と、スラスト軸受14と、複数のインペラ16と、第2の焼き嵌め部18と、ケーシング19と、を有する。
【0038】
回転体11は、円柱状とされており、X方向に延在している。回転体11は、電動機等の動力源(図示せず)によって軸線O
2回りに回転させられる。回転体11は、ケーシング19に収容されたインペラ16が外嵌されている。これにより、回転体11は、インペラ16と共に軸線O
2を中心に回転する。
回転体11は、ジャーナル軸受13及びスラスト軸受14によってケーシング19に対して回転自在に支持されている。
【0039】
ジャーナル軸受13は、X方向における回転体11の両端部に設けられている。ジャーナル軸受13は、回転体11の外周面と対向して配置されている。
【0040】
スラスト軸受14は、後述する吸入口48側に位置する回転体11の端に設けられている。
【0041】
複数のインペラ16は、X方向に対して所定の間隔を空けて複数配置されている。複数のインペラ16は、回転体11に一体に固定されており、回転体11の回転とともに回転体11と一体に回転する。複数のインペラ16は、回転体11に固定された状態でケーシング19の内部に収容されている。
【0042】
図2は、
図1に示す構造体のうち、領域Aで囲まれた部分を拡大した断面図である。
図2において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図2に示すBは、凹部33と係合部35とが挿入された領域(以下、「領域B」という)を示している。
【0043】
図3は、
図2に示す構造体のうち、領域Bで囲まれた部分を拡大した断面図である。
図3において、
図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0044】
図4は、焼き嵌めする前の分離された第1及び第2のディスク部材を示す断面図である。
図4において、
図1〜
図3に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0045】
ここで、
図1〜
図4を参照して、インペラ16の構成について詳述する。インペラ16は、クローズドインペラであり、ディスク21と、ブレード23と、カバー24と、作動流体Fが流れる流路25と、を有する。
【0046】
ディスク21は、第1のディスク部材26と、第2のディスク部材27と、第1の焼き嵌め部28と、を有する。
【0047】
第1のディスク部材26は、筒状とされている。第1のディスク部材26は、第1のディスク本体31と、凹部33と、を有する。第1のディスク本体31は、筒状とされた部材である。第1のディスク本体31は、回転体11が挿入される貫通穴31Aと、貫通穴31Aを区画する内周面31aと、外周面31bと、を有する。
第1のディスク本体31の外周面31bは、カバー24との間に流路25の一部を区画している。
【0048】
第1のディスク本体31は、第1のディスク本体31の一端31B(吸入口48側に位置する端)から他端31C(第2のディスク部材27と対向する側であって、排出口53側に位置する端)に向かうにつれて、外径が拡径された形状とされている。外周面31bは、湾曲した傾斜面とされている。
【0049】
凹部33は、第1のディスク本体31の第1のディスク本体31の後述する他端31CをX方向に、リング状に切削することで形成されている。これにより、凹部33の形状は、リング状とされている。また、凹部33の深さ方向は、X方向を深さ方向とされている。
【0050】
凹部33は、回転体11の外周面11aに対して平行な内周面33aと、X方向に対して直交する底面33bと、を有する。内周面33aは、X方向に対して傾斜していない面(水平な面)である。底面33b及び内周面33aは、第1のディスク本体31内に配置されている。
【0051】
第1のディスク本体31のうち、凹部33が形成されていない部分の内周面31aは、回転体11の外周面11aに対して焼き嵌めされている。これにより、第1のディスク本体31は、回転体11に対して固定されている。
【0052】
第2のディスク部材27は、筒状とされている。第2のディスク部材27は、第1のディスク部材26とは別体とされ、かつ複数のインペラ16及びケーシング19と一体とされている。
【0053】
このように、回転体11に固定される第1のディスク部材26と、第2のディスク部材27と、を別体とすることにより、カバー24と第2のディスク部材27との間に配置される流路25を形成する際に使用する工具(図示せず)を、カバー24と第2のディスク部材27とに挿入させ易くなるため、流路25の形状の精度を高めることができる。
【0054】
また、第2のディスク部材27、ブレード23、及びカバー24を一体とすることで、第2のディスク部材27、ブレード23、及びカバー24の組み立て作業が不要となるので、組合作業に起因する流路の形状の精度の低下を抑制できる。
【0055】
第2のディスク部材27は、係合部35と、第2のディスク本体36と、貫通穴38と、を有する。
【0056】
係合部35は、第2のディスク本体36と一体とされたリング状の部材であり、X方向に延在している。係合部35は、凹部33に挿入されたときに、凹部33の内周面33aと接触する外周面35aを有する。外周面35aは、X方向に対して傾斜していない面(X方向に対して平行な面)である。
【0057】
ディスク21の径方向(X方向に対して直交する方向)における係合部35の厚さM
1は、X方向において均一な厚さとされており、かつディスク21の径方向における凹部33の幅W
1と略等しくなるように構成されている。
【0058】
X方向における係合部35の長さL
1は、X方向における凹部の深さD
1の値よりも大きくなるように構成されている。このような構成とすることで、係合部35の先端面35bが凹部33の底面33bに当接された状態で、第1のディスク本体31の他端31C(第1のディスク部材26)と第2のディスク本体36との間に隙間41を形成することが可能となる。
【0059】
このように、X方向において、第1のディスク部材26と第2のディスク本体36との間に隙間41を設けることで、フレッティング(この場合、接触する第1のディスク部材26と第2のディスク部材27との間に微小な往復滑りが繰返し作用したときに生じる表面損傷)の発生を抑制することができる。
【0060】
係合部35は、第2のディスク部材27と第1のディスク部材26とが焼き嵌めされた状態で、回転体11が挿入されている。
【0061】
第2のディスク本体36は、先端面35bの反対側に位置する係合部35の後端に設けられている。第2のディスク本体36は、係合部35と一体に構成されている。第2のディスク本体36は、回転体11の外周面11aから回転体11の径方向に立設している。第2のディスク本体36は、ドーナッツ形状とされた板状の部材である。
【0062】
第2のディスク本体36は、回転体11の外周面11aから離間するにつれて、X方向の厚さが薄くなるように構成されている。第2のディスク本体36は、隙間41を区画する面36aを有する。面36aは、隙間41を介して、第1のディスク本体31の他端31Cと対向している。
【0063】
貫通穴38は、係合部35及び第2のディスク本体36に設けられている。貫通穴38には、回転体11が挿入される。
【0064】
第1の焼き嵌め部28は、凹部33の内周面33aと係合部35の外周面35aとの境界部分に設けられている。第1の焼き嵌め部28は、係合部35の外径よりも小さい内径を有する凹部33を区画する第1のディスク本体31の外周面31bを加熱することで、熱膨張により凹部33の内径を拡径させ、拡径された凹部33内に係合部35を嵌め合わせることで形成される部分である。
【0065】
つまり、第1の焼き嵌め部28とは、焼き嵌めにより、第1のディスク本体31のうち、凹部33の内周面33aを区画する部分と、係合部35のうち、外周面35aを区画する部分と、が接合された部分のことをいう。
【0066】
このように、係合部35の外周面35aと凹部33の内周面33aとの境界部分に配置された第1の焼き嵌め部28を有することで、第1のディスク本体31の外周面31b(凹部33を区画する部分の第1のディスク部材26の外周面)を加熱して、第1の焼き嵌め部28を形成することが可能となる。これにより、第1の焼き嵌め部28を形成する際に、ブレード23と一体とされた第2のディスク部材27を直接加熱することがなくなるため、該加熱によるブレード23の変形を抑制することができる。
【0067】
ブレード23は、第2のディスク本体36の面36aのうち、隙間41から離間した面に複数設けられている。複数のブレード23は、第2のディスク部材27と一体に構成されている。複数のブレード23は、第2のディスク本体36の周方向において、第1のディスク部材26を中心として放射状に配置されている。
【0068】
複数のブレード23は、第2のディスク本体36の面36aに対して直交する方向に突出するとともに、第2のディスク本体36の先端に向かう方向に延在している。複数のブレード23は、第1のディスク部材26から第2のディスク本体36の先端に向かうにつれて突出量(言い換えれば、厚さ)が薄くなるように構成されている。
複数のブレード23は、第2のディスク本体36の面36aと接触する面の反対側に配置された面23aを有する。
【0069】
カバー24は、ドーナッツ形状とされた部材であり、中央部に貫通穴24Aを有する。カバー24は、複数のブレード23の面23aに設けられている。この状態において、貫通穴24Aは、第1のディスク部材26を露出している。カバー24は、複数のブレード23を覆っている。
貫通穴24Aの一部は、第1のディスク部材26が配置されることで、流路25の一部を構成している。
【0070】
流路25は、カバー24と第2のディスク部材27との間に設けられている。流路25は、ブレード23、カバー24、及び第2のディスク部材27により区画されている。
【0071】
第2の焼き嵌め部18は、第1のディスク本体31の内周面31a(凹部33が形成されていない部分の第1のディスク本体31の内周面)と回転体11の外周面11aとの境界部分に配置されている。第2の焼き嵌め部18は、第1のディスク部材26を回転体11に固定している。
【0072】
第2の焼き嵌め部18は、第1のディスク本体31の外周面31b(凹部33が形成されていない部分の第1のディスク本体31の外周面)を加熱する(言い換えれば、焼き嵌めする)ことで形成される。第2の焼き嵌め部18とは、焼き嵌めにより、第1のディスク本体31のうち、凹部33が形成されていない部分の第1のディスク本体31の外周面31bを区画する部分と、回転体11の一部の外周面11aと、が接合された部分のことをいう。
【0073】
第2の焼き嵌め部18の焼き嵌め率は、例えば、第1の焼き嵌め部28の焼き嵌め率よりも小さくするとよい。
【0074】
このように、第1の焼き嵌め部28の後に形成する第2の焼き嵌め部18の焼き嵌め率を第1の焼き嵌め部28の焼き嵌め率よりも小さくすることで、第2の焼き嵌め部18を形成時に行う加熱に起因する熱が、第1の焼き嵌め部28に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0075】
図1を参照するに、ケーシング19は、ケーシング本体46と、貫通部47と、吸入口48と、流路51と、排出口53と、を有する。ケーシング本体46は、回転体11、ジャーナル軸受13、及び複数のインペラ16を収容している。
【0076】
貫通部47は、X方向に延在する穴であり、回転体11が挿入されている。吸入口48は、ケーシング本体46の一方の端部側に設けられている。吸入口48は、外部からケーシング19内にガスである作動流体Fを吸い込むための吸入口として機能する。
【0077】
流路51は、ケーシング本体46に内設されている。流路51は、一端が吸入口48と接続されており、他端が排出口53と接続されている。また、流路51は、各インペラ16の流路25とも接続されている。これにより、流路51は、各インペラ16の流路内に作動流体Fを供給可能な構成とされている。
【0078】
排出口53は、ケーシング本体46の他方の端部側に設けられている。吸入口48は、ケーシング19内を流れる作動流体Fを外部に排出するための排出口として機能する。
【0079】
第1の実施形態に係るインペラ16によれば、回転体11に固定される第1のディスク部材26と、第2のディスク部材27と、を別体とすることにより、カバー24と第2のディスク部材27との間に配置される流路25を形成する際に使用する工具(図示せず)を、カバー24と第2のディスク部材27とに挿入させ易くなるため、流路25の形状の精度を高めることができる。
【0080】
また、第2のディスク部材27、ブレード23、及びカバー24を一体とすることで、第2のディスク部材27、ブレード23、及びカバー24の組み立て作業が不要となるので、組合作業に起因する流路の形状の精度の低下を抑制できる。
【0081】
さらに、係合部35の外周面35aと凹部33の内周面33aとの境界部分に配置された第1の焼き嵌め部28を有することで、第1のディスク本体31の外周面31b(凹部33を区画する部分の第1のディスク部材26の外周面)を加熱して、第1の焼き嵌め部28を形成することが可能となる。これにより、第1の焼き嵌め部28を形成する際に、ブレード23と一体とされた第2のディスク部材27を直接加熱することがなくなるため、該加熱によるブレード23の変形を抑制することができる。
【0082】
なお、ディスク21を2つに分割させる位置(言い換えれば、第1のディスク部材26と第2のディスク部材27との分割位置)は、ブレード23の形成領域よりも貫通穴31A側であればよく、第1のディスク部材26と第2のディスク部材27との分割位置は、
図2及び
図3に示す分割位置に限定されない。
【0083】
また、
図2及び
図3では、一例として、凹部33の底面33bと係合部35の先端面35bとを当接させ、第1のディスク本体31の他端31Cと第2のディスク本体36の面36aとの間に隙間41を設けた場合を例に挙げて図示したが、第1のディスク本体31の他端31Cと第2のディスク本体36の面36aとを接触させ、凹部33の底面33bと係合部35の先端面35bとの間に隙間41を設けてもよい。この場合もフレッティングを抑制することができる。
【0084】
第1の実施形態の回転機械10によれば、第1の焼き嵌め部28から離間した位置に第2の焼き嵌め部18を設けることが可能となるので、第1の焼き嵌め部28と第2の焼き嵌め部18との干渉を抑制した上で、回転体11の外周面11aにインペラ16を固定することができる。また、第1の実施形態の回転機械10は、先に説明したインペラ16を備えることで、インペラ16と同様な効果を得ることができる。
【0085】
図5は、本発明の第1の実施形態の変形例に係るインペラの主要部を拡大した断面図である。
図5において、
図3に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0086】
図5を参照するに、第1の実施形態の変形例のインペラ55は、凹部33の内周面33a、及び係合部35の外周面35aがX方向に対して傾斜した傾斜面であること以外は、先に説明した第1の実施形態のインペラ16と同様に構成されている。
【0087】
凹部33の内周面33aは、底面33bから第2のディスク本体36(第2のディスク部材27側)に向かうにつれて、凹部33の内径を狭める(縮径する)方向に傾斜した傾斜面(X方向に対して傾斜した面)である。
【0088】
係合部35の外周面35aは、凹部33の内周面33aと接触しており、第1のディスク部材26側に配置される係合部35の先端面35bから第2のディスク本体36側に向かうにつれて(X方向に離間するにつれて)、係合部35の厚さを薄くする傾斜面(ディスク21の中心軸O
1方向に対して傾斜下面)である。
【0089】
第1の実施形態の変形例に係るインペラ55によれば、凹部33の内周面33aを、底面33bから第2のディスク本体36に向かうにつれて、凹部33の内径を狭める方向に傾斜した傾斜面にするとともに、係合部35の外周面35aを、第1のディスク部材26側に配置される係合部35の先端面35bから第2のディスク本体36側に向かうにつれて、係合部35の厚さを薄くする傾斜面とすることにより、第1の焼き嵌め部28においてアンカー効果(X方向において、凹部33から係合部35が抜けにくくなる効果)を発生させることが可能となるので、第1のディスク部材26と第2のディスク部材27との間の接続強度を向上させることができる。
【0090】
なお、上述したインペラ16,55では、第1のディスク本体31の他端31Cと第2のディスク本体36の面36aとの間に隙間41を設けた場合を例に挙げて説明したが、第1のディスク本体31の他端31Cと第2のディスク本体36の面36aとを当接させて、凹部33の底面33bと係合部35の先端面35bとをX方向に離間させることで、底面33bと先端面35bとの間に隙間41を設けてもよい。このような構成とされた場合もフレッティングを抑制することができる。
【0091】
図6〜
図8は、本発明の第1の実施形態に係るインペラの製造方法を説明するための断面図である。
図6〜
図8において、
図2〜
図4に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図8において、Eは第1のディスク本体31の外周面31bのうち、第1の焼き嵌め工程時に加熱する領域(以下、「領域E」という)を示している。また、
図8に示すFは第1のディスク本体31の外周面31bのうち、第2の焼き嵌め工程時に加熱する領域(以下、「領域F」という)を示している。
【0092】
図1〜
図4、及び
図6〜
図8を参照して、第1の実施形態の回転機械10の製造方法について説明する。第1の実施形態の回転機械10の製造方法を説明する中で、第1の実施形態のインペラ16の製造方法について説明する。
【0093】
初めに、
図6に示す工程では、周知の手法により、筒状とされ、内側にリング状とされた凹部33を有する第1のディスク部材26を形成する。
【0094】
次いで、
図7に示す工程では、凹部33内に挿入されることで、第1のディスク部材26と係合するリング状の係合部35を有する第2のディスク部材27と、第2のディスク部材27に設けられたブレード23と、ブレードに設けられ、ブレード23を覆うカバー24と、が一体とされた構造体67を形成する。
【0095】
具体的には、回転する加工部66を有した工具65を用いて、構造体67の母材を加工することで、第2のディスク部材27、ブレード23、及びカバー24が一体とされた構造体67を形成する。
【0096】
上記構造体67を形成時において、
図6に示す第1のディスク部材26と、
図7に示す第2のディスク部材27と、が別体とされているため、カバー24と第2のディスク部材27との間に工具65の加工部66を挿入しやすくなる。これにより、カバー24と第2のディスク部材27との間に形成される流路25を容易に加工することが可能となる。これにより、流路25の形状の精度を高めることができる。
【0097】
上記構造体67を形成する工程では、例えば、係合部35の長さL
1を凹部33の深さD
1よりも大きく形成するとよい。これにより、
図7に示す凹部33に
図8に示す係合部35を挿入した際に、
図2及び
図3に示す隙間41を形成することができ、フレッティングの発生を抑制することができる。
【0098】
次いで、
図8に示す工程では、凹部33内に構造体67を構成する係合部35を挿入し、第1のディスク本体31の外周面31b側から、領域Eに対応する第1のディスク本体31を所定の加熱温度(以下、「加熱温度T
1」という)で加熱することで、係合部35の外周面35aと凹部33の内周面33aとの間を焼き嵌めする(第1の焼き嵌め工程)。
【0099】
このとき、係合部35の外周面35aと凹部33の内周面33aとの境界部分に、第1の焼き嵌め部28が形成される。これにより、第1の実施形態のインペラ16が製造される(インペラを準備する工程)。
【0100】
次いで、
図2及び
図3に示すように、インペラ16の貫通穴31A,38に回転体11を挿入させ、回転体11の所定の位置に複数のインペラ16を配置させる。次いで、第1のディスク本体31の外周面31b側から、
図8に示す領域F(凹部が形成されていない部分)に対応する第1のディスク本体31を加熱することで、第1のディスク本体31のうち、凹部33が形成されていない部分の内周面31aと回転体11の外周面11aとの間を焼き嵌めする(第2の焼き嵌め工程)。
【0101】
このとき、第1のディスク本体31の内周面31aと回転体11の外周面11aとの境界部分に、第2の焼き嵌め部18が形成される。このように、インペラ16の貫通穴31A,38に回転体11を挿入させた状態で、領域Fに対応する第1のディスク本体31の外周面31bを加熱することで、ブレード23と一体とされた第2のディスク部材27を直接的に加熱することがなくなるため、該加熱によるブレード23の変形を抑制することができる。
【0102】
上記第2の焼き嵌め工程において、第1のディスク本体31を加熱するときの加熱温度T
2は、例えば、第1の焼き嵌め工程において、第1のディスク本体31を加熱するときの加熱温度T
1よりも低くするとよい。
【0103】
このように、第1の焼き嵌め部28の後に形成する第2の焼き嵌め部18を形成する際の加熱温度T
2を、第1の焼き嵌め部28を形成する際の加熱温度T
1よりも小さくすることで、第2の焼き嵌め部18の形成時の加熱温度T
2が、第1の焼き嵌め部28に悪影響を及ぼして、第1のディスク部材26と第2のディスク部材27との間の接合強度が低下することを抑制できる。
【0104】
次いで、
図1に示すように、ケーシング19内に
図2に示す構造体を収容させて、貫通部47内に回転体11を配置させて、ジャーナル軸受13及びスラスト軸受14により、回転体11を支持する。このとき、複数のインペラ16に設けられた流路(図示せず)と、ケーシング19内に形成された流路51と、を接続する。これにより、第1の実施形態の回転機械10が製造される。
【0105】
第1の実施形態のインペラ16の製造方法によれば、第1のディスク部材26と第2のディスク部材27とを別体として形成することで、カバー24と第2のディスク部材27との間に配置される流路25を形成する際に使用する工具65の加工部66を、カバー24と第2のディスク部材27とに挿入させ易くなるため、流路25の形状の精度を高めることができる。
【0106】
また、第2のディスク部材27、ブレード23、及びカバー24を一体形成することで、第2のディスク部材27、ブレード23、及びカバー24の組み立て作業が不要となるので、組合作業に起因する流路の形状の精度の低下を抑制できる。
【0107】
なお、先に説明した第1の実施形態の変形例に係るインペラ55は、内周面33a及び外周面35aが傾斜面となるように加工すること以外は、第1の実施形態のインペラ16の製造方法と同様な手法により製造することができる。
【0108】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態の変形例に係るインペラの断面図である。
図9では、インペラ60以外の構成要素である回転体11も図示する。
図9において、
図2〜
図4に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0109】
図10は、
図9に示すインペラのうち、領域Cで囲まれた部分を拡大した断面図である。
図10において、
図2〜4及び
図9に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0110】
図9及び
図10を参照するに、第2の実施形態のインペラ60は、第1の実施形態のインペラ16の構成に、さらに、位置決めキー61及びキー挿入穴63を設けたこと以外は、インペラ16と同様に構成される。
【0111】
位置決めキー61は、金属製のピンである。位置決めキー61は、先端面35bからX方向に突出するように、係合部35に設けられている。
【0112】
キー挿入穴63は、位置決めキー61と対向する第1のディスク本体31に設けられている。キー挿入穴63は、X方向に延在する穴である。キー挿入穴63には、位置決めキー61のうち、先端面35bから突出した部分が挿入されている。
【0113】
第2の実施形態のインペラ60によれば、係合部35に設けられ、先端面35bからX方向に突出する位置決めキー61と、第1のディスク本体31に設けられ、位置決めキー61の一部が挿入されるキー挿入穴63と、を有することで、第1のディスク部材26と第2のディスク部材27との間の位置決め(中心軸O
1を回転軸とする回転方向の位置決め)を容易に行うことができる。
【0114】
なお、上述した位置決めキー61及びキー挿入穴63は、ディスク21の周方向に1つ以上設けられていればよい。
【0115】
なお、第2の実施形態のインペラ60において、
図5に示す傾斜した内周面33a及び外周面35aを用いてもよい。この場合、先に説明した第1の実施形態の変形例に係るインペラ55と同様な効果を得ることができる。
【0116】
また、第2の実施形態のインペラ60は、第1及び第2のディスク部材26,27を形成後、キー挿入穴63内に位置決めキー61を挿入した後に、第1の焼き嵌め工程を行うこと以外は、先に説明した第1の実施形態のインペラ16の製造方法と同様な手法により製造することができる。
【0117】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態に係るインペラを示す断面図である。
図11において、
図2〜
図4に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。また、
図11では、回転体11にインペラ70が焼き嵌めされた状態を模式的に示す。
図11において、O
1はディスク71の中心軸(以下、「中心軸O
1」という)を示している。
【0118】
図12は、
図11に示す構造体のうち、領域Gで囲まれた部分を拡大した断面図である。
図12において、
図2〜
図4及び
図11に示す構成と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0119】
図11及び
図12を参照するに、第3の実施形態のインペラ70は、第1の実施形態のインペラ16を構成するディスク21に替えて、ディスク71を有すること以外は、インペラ16と同様に構成されている。
【0120】
ディスク71は、第1のディスク部材73と、第2のディスク部材75と、を有する。第1のディスク部材73は、第1の実施形態で説明した第1のディスク部材26を構成する凹部33に替えて、複数の段差(
図11及び
図12の場合、一例として2つの段差)を有する凹部81を有すること以外は、第1のディスク部材26と同様に構成されている。
【0121】
凹部81は、第1の凹部81Aと、第2の凹部81Bと、を含む。第1の凹部81Aは、凹部81の底面81c側に配置されている。底面81cは、第1の凹部81Aの底面として機能する。底面81cは、X方向に対して直交する面である。
【0122】
第1の凹部81Aは、底面81cに対して直交する内周面81aを有する。第1の凹部81Aは、底面81c及び内周面81aにより区画されている。
【0123】
第2の凹部81Bは、第1の凹部81Aと一体に構成されており、第1のディスク本体31の他端31Cから露出されている。第2の凹部81Bは、第1の凹部81Aよりも直径の大きい凹部である。
【0124】
第2の凹部81Bは、内周面81aの内径よりも大きい内周面81bと、底面81Baと、を有する。底面81Baは、X方向に対して直交する面である。底面81Baは、内周面81bと接続されており、かつ内周面81bに対して直交している。
【0125】
第2のディスク部材75は、第1の実施形態で説明した第2のディスク部材27を構成する係合部35に替えて、凹部81内に挿入可能な複数の段差部(
図11及び
図12の場合、一例として2つの段差部)を有する係合部83を有すること以外は、第2のディスク部材27と同様に構成されている。
【0126】
係合部83は、X方向に延在する筒形の部材であり、凹部81内に挿入されている。係合部83の内周面は、回転体11の外周面11aと接触している。係合部83は、第1の段差部88と、第2の段差部89と、を有する。
【0127】
第1の段差部88は、第1の凹部81Aに挿入されている。第1の段差部88は、底面81cに当接される先端面88aと、第1の凹部81Aの内周面81aと接触する外周面88bと、を有する。第1の段差部88の厚さM
2は、例えば、第1の実施形態で説明した係合部35の厚さM
1と同じ厚さにすることが可能である。
【0128】
第2の段差部89は、第1の段差部88よりも外周部が拡径された筒状の部材である。第2の段差部89は、第2の凹部81Bに挿入されている。第2の段差部89の厚さM
3は、第1の段差部88の厚さM
1よりも薄い。
【0129】
第2の段差部89は、第2の凹部81Bの底面81Baとの間に隙間85を介在する先端面89aと、第2の凹部81Bの内周面81bと接触する外周面89bと、を有する。第1のディスク本体31の他端31Cと第2のディスク本体36の面36aとの間には、隙間41が形成されている。
【0130】
つまり、係合部83は、X方向に対して、ディスク71の中心軸O
1から係合部83の外周面88b,89bまでの距離が異なる第1及び第2の段差部88,89(複数の段差部)を有する。
【0131】
このように、第1の段差部88の先端面88aを第1の凹部81Aの底面81cに当接させ、第2の段差部89の先端面89aと第2の凹部81Bの底面81Baとの間に隙間85を設けるとともに、第1のディスク本体31の他端31Cと第2のディスク本体36の面36aとの間に隙間41を設けることで、フレッティング(この場合、第1のディスク部材73と第2のディスク部材75との間に微小な往復滑りが繰返し作用したときに生じる表面損傷)の発生を抑制することができる。
【0132】
第3の実施形態のインペラ70によれば、第1の段差部88の外周面88bのX方向における幅と、外周面88bよりも外側に配置された第2の段差部89の外周面89bのX方向における幅と、が同じ場合、外側に配置された外周面89bの面積の方が大きくなる。
【0133】
これにより、例えば、
図2に示す外周面35aを有する係合部35の厚さM
1と、第1の段差部88の厚さM
2と、が等しく、かつ2つの係合部35,83の外周面の合計で同じ面積(所望の面積)を得る場合、2つの外周面88b,89bを有する係合部83の長さL
2を、1つの外周面35aのみを有する係合部35の長さL
1よりも短くすることが可能となるので、X方向における係合部83の長さL
2を短くすることができる。
【0134】
第3の実施形態のインペラ70は、第1の実施形態で説明したインペラ16の製造方法と同様な手法により、製造することが可能であり、第1の実施形態のインペラ16の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0135】
なお、第3の実施形態のインペラ70において、
図5に示す傾斜した内周面33a及び外周面35aを用いてもよい。この場合、先に説明した第1の実施形態の変形例に係るインペラ55と同様な効果を得ることができる。
【0136】
図13は、本発明の第3の実施形態の変形例に係るインペラの主要部を拡大した断面図である。
図13において、
図12に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0137】
図13を参照するに、第3の実施形態の変形例に係るインペラ90は、第1のディスク本体31の他端31Cと第2のディスク本体36の面36aとを当接させ、凹部81の底面81cと第1の段差部88の先端面88aとをX方向に離間させて、底面81cと先端面88aとの間に隙間41を配置させたこと以外は、第3の実施形態のインペラ70と同様に構成されている。
【0138】
このような構成とされた第3の実施形態の変形例に係るインペラ90は、先に説明した第3の実施形態のインペラ70と同様な効果を得ることができる。
【0139】
上述したように、複数(
図13の場合、一例として2つ)の段差部を係合部83が有する場合、複数の段差部及び第2のディスク本体36のうちの1つが、X方向において第1のディスク本体31に当接され、残りがX方向において第1のディスク本体31との間に隙間を介在する構成であれば、フレッティングの発生を抑制することができる。
【0140】
なお、第3の実施形態の変形例に係るインペラ90において、
図5に示す傾斜した内周面33a及び外周面35aを用いてもよい。この場合、先に説明した第1の実施形態の変形例に係るインペラ55と同様な効果を得ることができる。
【0141】
また、第1ないし第3の実施形態において、第1の第1のディスク部材26,73と回転体11とを一体に構成してもよい。
【0142】
第3の実施形態の変形例に係るインペラ90は、第1の実施形態で説明したインペラ16の製造方法と同様な手法により、製造することが可能であり、第1の実施形態のインペラ16の製造方法と同様な効果を得ることができる。
筒状とされた第1及び第2のディスク部材(26,27)を有するディスク(21)と、第2のディスク部材(27)に対して一体に設けられたブレード(23)と、ブレード(23)に対して一体に設けられており、ブレード(23)を覆うカバー(24)と、を備え、第1のディスク部材(26)は、内側にリング状とされた凹部(33)を有し、第2のディスク部材(27)は、凹部(33)内に挿入されることで、第1のディスク部材(26)と係合するリング状の係合部(35)を有しており、係合部(35)の外周面(35a)と、外周面(35a)と接触する凹部(33)の内周面(33a)と、の境界部分に第1の焼き嵌め部(28)が設けられている。