【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の透過層及び反射層を備える太陽電池用裏面保護シートを用いる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記の太陽電池用裏面保護シートに関する。
1. 太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、
少なくとも、封止材に接する透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)の順に積層されて構成され、
前記透過層(1)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で70%以上透過し、
前記反射層(2)が、白色フィラーを含み、400nm〜1400nmの波長の光を反射する、
ことを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。
2. 前記透過層(1)が、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含む層である、上記項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
3. 前記透過層(1)が、10N/cm以上の破断強度を有するものである、上記項1又は2に記載の太陽電池用裏面保護シート。
4. 前記反射層(2)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で80%以上反射するものである、上記項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
5. 前記反射層(2)が、気泡を含む、上記項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
6. 前記白色フィラーが、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及び酸化バリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項1〜5のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
7. 前記白色フィラーが、前記反射層(2)中に、5重量%以上含まれる、上記項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
8. 前記反射層(2)が、の樹脂成分として、ポリエチレンテレフタレートを含む、上記項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
9. 上記項1〜8のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュール。
【0011】
以下、本発明の太陽電池用裏面保護シートについて詳細に説明する。
【0012】
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、少なくとも、封止材に接する透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)の順に積層されて構成され、前記透過層(1)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で70%以上透過し、前記反射層(2)が、白色フィラーを含み、400nm〜1400nmの波長の光を反射する、ことを特徴とする。
【0013】
この様に、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、封止材に接着する透過層(1)はフィラー等を含まず、太陽光を十分に透過させることができ、且つ、透過層(1)の下層である反射層(2)は太陽光を十分に反射又は乱反射させる機能を有する。更に、封止材に接着する透過層(1)はフィラー等を含まいことから十分な接着力を有し、且つ透過層(1)の封止材に接触する部分は十分な強度を有している。そうして、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、接着性と太陽光線の反射性を良好に両立できるものである。
【0014】
封止材と太陽電池用裏面保護シートの間は、剥離する要因があると剥がす事が可能である。太陽電池モジュールの場合は、ジャンクションボックスに電気を通すための、太陽電池用裏面保護シートに開けてある穴またはスリットが、その要因に相当する。しかしながら、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、上記のように透過層(1)の下層に反射層(2)を設けた構造を有するので、太陽電池用裏面保護シートは、封止材に十分に接着させる事が可能である。
【0015】
太陽電池用裏面保護シートでは、透過層と反射層の層間を剥離しようとした時に、反射層の破壊により層間強度が保持できないという恐れがある。しかしながら、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、上記のように透過層(1)の下層に反射層(2)を設けた構造を有するので、各層を剥がすきっかけが無く、剥離しないので、各層間の接着強度が低くなる心配がない。この様に、上述の穴またはスリット部分の下層には封止材が全面に存在しており、剥がすきっかけは封止材と太陽電池用裏面保護シート全体の間で発生する。従って、太陽電池用裏面保護シートに、第二層として反射層(2)を設ける事の効果は大きい。
【0016】
図1は、本発明の太陽電池用裏面保護シートの一つの実施の形態を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、太陽電池用裏面保護シートは、太陽電池セルから相対的に近い側から、順に、1.透過層(1)、2.反射層(2)及び3.保護層(3)の順に積層された積層体から構成されている。太陽電池セルと太陽電池用裏面保護シートは、封止材を介して、透過層(1)で接着される。太陽電池用裏面保護シートが、太陽電池が太陽電池セルと接着された状態において、保護層(3)が最外層となる。
【0018】
以下、本発明の太陽電池用裏面保護シートを構成する透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)について詳細に説明する。
【0019】
封止材
封止材は、太陽電池用裏面保護シートと太陽電池セルの裏面とを熱融着により接着させる層である。封止材は、熱融着により太陽電池セルの裏面と接着できる材料であれば限定されないが、封止剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有することが好ましい。封止材の厚さは限定的ではないが、セルや配線の厚みによる段差を埋めるという理由から、200〜1000μmが好ましく、400〜600μmがより好ましい。
【0020】
透過層(1)
封止材と接着する透過層は十分な接着力を有し、且つ、透過層の封止材に接触する部分はその基材自身の強度が必要である。このため、封止材に接する層にはフィラー等を含まない方が好ましく、太陽光を十分に透過させることが重要である。
【0021】
透過層(1)は、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で70%以上透過するものである。
【0022】
透過層(1)は、封止材と引き剥がす時の力で透過層(1)のみが切れてしまえば、剥離の界面が第二層すなわち強度の弱い反射層(2)(後述)に移行する。そうなると、封止材との十分な接着が出来なくなる。そのため、透過層(1)の破断強度は、透過層(1)の封止材との接着力よりも
弱い強度が必要である。従って、透過層(1)はコートではなく、フィルムである事が望ましい。また、透過層(1)の厚みは、透過層(1)の破断強度が十分な厚みである事が望ましい。
【0023】
透過層(1)は、封止材と加熱ラミネートされた後に十分な接着性を有する事が必要である。この様な透過層(1)としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含む層であることが好ましい。透過層(1)は、価格及び取り扱いを考慮すると、ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体から構成されるフィルム層が更に望ましい。
【0024】
ここで、前記「平均で70%以上透過する」とは、分光光度計により400〜1400nmの範囲の波長1nmごとの値を平均することで求める事ができる。この様に、透過層(1)の透過性が、平均で70%以上あることで、その透過層(1)に隣接する反射層(2)に光を有効に透過すると共に、反射層(2)より反射された光を太陽電池セルに有効に戻す事ができる。
【0025】
透過層(1)は、光の透過性から考えると、厚みは薄いほうが良いが、強度の観点からは厚いほうが良い。従って、透過層(1)の厚さは、10〜100μmが好ましく、20〜60μmがより好ましい。
【0026】
封止材と太陽電池用裏面保護シートとの接着強度は、封止材と接着する太陽電池用裏面保護シートの透過層(1)が関係する。封止材と太陽電池用裏面保護シートの接着強度に規定は無いが、10N/cm(15N/15mm)以上であれば十分に接着しているとことになり、20N/cm(30N/15mm)以上であることかがより好ましい。従って、上記透過層(1)の破断強度も10N/cmであれば反射層に界面移行することが抑制される。接着強度は、ガラス、封止材(ブリジストン社製S−11)、太陽電池用裏面保護シートの順に積層し、150℃で10分間真空ラミネートを行う。この時、封止材と透過層(1)が施食するようにする。その後、太陽電池用裏面保護シート側からカッターで切れ目を2本入れ、その間隔が10mmになるようにする。その状態で、2本の切れ目の間の太陽電池用裏面保護シートを引き剥がす事で封止材と太陽電池用裏面保護シート間の接着強度をプッシュプルゲージにて測定できる。また、破断強度は、積層前の透過層(1)を幅15mmの短冊状に切り出し、ストログラフにて破断するときの強度を測定できる。
【0027】
透過層(1)の厚さや材質は、透過層(1)の透過性、封止材との接着強度及び破断強度の基に、決定することができる。
【0028】
反射層(2)
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、封止材に接する透過層(1)は太陽光を透過させ、その直ぐ下層に太陽光を十分に反射又は乱反射させる機能を有する反射層(2)を備える。この様に、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、接着性と太陽光線の十分な反射を両立できる。
【0029】
封止材と太陽電池用裏面保護シートの間は剥離するきっかけがあると剥がす事が可能であり、太陽電池モジュールの場合は、ジャンクションボックスに電気を通すための太陽電池用裏面保護シートに開けてある穴又はスリットがそのきっかけに相当する。そこで、本発明の太陽電池用裏面保護シートには透過層(1)の下層に反射層(2)が設けられており、この様な太陽電池用裏面保護シートは、封止材を介して、太陽電池セルと十分に接着させる事が可能である。
【0030】
太陽電池用裏面保護シートでは、透過層と反射層の層間を剥離しようとした時に、反射層の破壊により層間強度が保持できないという恐れがある。本発明の太陽電池用裏面保護シートでは、上述の穴又はスリット部分の下層には封止材が全面に存在するので、剥がすきっかけは封止材と太陽電池用裏面保護シート全体の間で発生する。従って、太陽電池用裏面保護シートの第二層として反射層(2)を設ける事の効果は大きい。
【0031】
反射層(2)は、白色フィラーを含み、400nm〜1400nmの波長の光を反射するものである。
【0032】
反射層(2)は、白色フィラーを含むことで、高い反射率を有し、乱反射することで、セル(太陽電池)の隙間からの太陽光をセルに戻すことができる。白色フィラーとしては、反射層(2)を構成する樹脂への練混が容易であることから、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及び酸化バリウム等が更に好ましい。
【0033】
前記白色フィラーは、反射率を向上させると同時にフィルムの強度を維持するという理由から、反射層(2)中に、5重量%以上含まれることが好ましく、7〜15重量%含まれることがより好ましい。
【0034】
反射層(2)は、太陽光を反射又は乱反射することができるという理由から、更に、気泡を含むことが好ましい。反射層(2)に含まれる気泡の大きさは、0.2〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。反射層(2)には、体積比率として好ましくは5〜30体積%、更に好ましくは10〜20体積%の気泡が含まれること良い。加熱発泡性のフィラーをフィルムに混入させた状態で加熱することで、反射層(2)に気泡を含ませることができる。
【0035】
反射層(2)としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含む層であることが好ましい。反射層(2)は、価格、製造の容易性及び熱収縮を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0036】
反射層(2)は、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で80%以上反射するものが好ましい。上記「平均で80%以上反射する」とは、分光光度計により400〜1400nmの範囲の波長1nmごとの値を平均することで求める事ができる。この様に、反射層(2)の反射が、平均で80%以上あることで、太陽電池セルに有効に光を戻す事ができる。
【0037】
反射層(2)の厚さは、反射率を高めるという理由から、30〜350μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。
【0038】
保護層(3)
保護層(3)は、太陽電池用裏面保護シートの最外層(太陽電池セル側とは反対の側)に設けられる層である。保護層(3)は、耐候性及び電気絶縁性を有するものが好ましい。
【0039】
保護層(3)の構成成分としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などのフッ素系フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム;その他、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。上記PETとしては、屋外での耐久性も考慮して耐加水分解性PETを好適に使用できる。その他、エンジニアリングプラスチック及びフッ素系樹脂も挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。保護層(3)は、耐候性と経済的理由から、ポリフッ化ビニルやポリエチレンテレフタレートから構成されるフィルム層が更に望ましい。
【0040】
保護層(3)は単層でも複層(積層フィルム)でもよい。保護層(3)が単層の場合には、厚さは20〜2000μmであることが好ましい。複層の場合には、耐候性に優れるフィルムと電気絶縁性に優れるフィルムとの積層体であることが好ましい。この場合には、電気絶縁性に優れるフィルムを樹脂フィルム基材側に配置し、耐候性に優れるフィルムを最外層とすることが好ましい。耐候性に優れるフィルムとしては、厚みが20〜150μmのフッ素系フィルムが好ましく、電気絶縁性に優れるフィルムとしては、厚みが100〜250μmのPETフィルムが好ましい。