(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288924
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】筆記具用の部品及び該部品を有する筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20180226BHJP
B43K 24/08 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
B43K3/00 H
!B43K24/08 150
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-37358(P2013-37358)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-162190(P2014-162190A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友義
(72)【発明者】
【氏名】森谷 直彦
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−030374(JP,A)
【文献】
実開平10−000184(JP,U)
【文献】
特開2013−052633(JP,A)
【文献】
実開昭62−128210(JP,U)
【文献】
特開2006−123336(JP,A)
【文献】
特公平07−061758(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 3/00
B43K 21/00
B43K 24/00−24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじが形成された雄ねじ部を有する第1の円筒部品と、前記雄ねじと螺合する雌ねじが形成された雌ねじ部を有する第2の円筒部品とを具備し、前記第1の円筒部品の前記雄ねじ部は、先端から離間して配置され且つ軸方向に亘って細長孔が設けられており、
前記雄ねじ部は、前記先端とは反対側においてねじ山が連続している部分を有していることを特徴とする筆記具用の部品。
【請求項2】
請求項1に記載の筆記具用の部品を備えたことを特徴とする筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用の部品及び該部品を有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
一端の外周面に雄ねじが形成された円筒部品、例えば軸筒の先軸と、一端の内周面に雄ねじと螺合する雌ねじが形成された円筒部品、例えば軸筒の後軸と、を有する筆記具が公知である。
【0003】
特許文献1には、シャープペンシルの芯タンクの後端部に取り付けられ、外周面に雄ねじが形成されたホルダーと、雄ねじと螺合する雌ねじが形成された回転スリーブとを有する筆記具が開示されている。ホルダーの雄ねじが形成された円筒部は、その先端から軸方向に雄ねじ部全体に亘って延びるスリットによって半円筒状の半体に分割され、各半体は互いに内方向へ撓ませることが可能となっている。従って、ホルダーを回転スリーブに組み付ける際に、ホルダーを回転させて螺合させることもできるが、半円筒状の半体を撓ませながら回転スリーブに挿入することによって、組み立てを完成させることも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−61758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の筆記具では、雄ねじの形成されたホルダー、すなわち円筒部品の端面から雄ねじ部全体に亘ってスリットが形成されているため、半円筒状の半体が内方向へ撓みやすく、組み立てが容易になる一方で、二部品間の締結力が弱いという問題がある。また、半円筒状の半体は、その基部でのみ支持されており先端側では支持されていないことから、内方向へ撓んだまま塑性変形してしまう虞があり、さらには折れてしまう虞もある。
【0006】
本発明は、螺合可能な部品間の組み立てにおいて、一方の部品を回転させることなく挿入によって他方の部品に対して組み立てを行いつつ、両部品間に強い締結力を有する筆記具用の部品及び該部品を有する筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、雄ねじが形成された雄ねじ部を有する第1の円筒部品と、前記雄ねじと螺合する雌ねじが形成された雌ねじ部を有する第2の円筒部品とを具備し、前記第1の円筒部品の前記雄ねじ部は、先端から離間して配置され且つ軸方向に亘って細長孔が設けられて
おり、前記雄ねじ部は、前記先端とは反対側においてねじ山が連続している部分を有していることを特徴とする筆記具用の部品が提供される。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明では、螺合可能な部品間の組み立てにおいて、第1の円筒部品を回転させることなく挿入によって第2の円筒部品に対して組み立てを行いつつ、両円筒部品間に強い締結力を有する筆記具用の部品及び該部品を有する筆記具を提供することができる。
【0009】
すなわち、第1の円筒部品を回転させることなく第2の円筒部品内に挿入しようとすると、雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との当接によって、雄ねじ部に対して中心軸線方向の力が加わる。このとき、細長孔の開口面積が小さくなるように第1の円筒部品が弾性的に収縮変形し、組み立てを完成させることが可能となる。そして、先端からスリットが形成された特許文献1に記載の雄ねじに比べ、先端から離間した位置に細長孔が設けられた本発明は、雄ねじ部が大きく弾性変形又は塑性変形もすることもないことから抜けにくく、強い締結力を発揮し、耐久性にも優れ、外観を損なうこともないという利点もある。さらに、組み立ての際には、第1の円筒部品に対して軸方向の力を加えて第2の円筒部品内に挿入するだけなので、第1の円筒部品を回転させて螺合させる場合に比べて、より短時間で組み立てを完成することが可能となる。
【0010】
前記細長孔が、前記第1の円筒部品の中心軸線に対して対向した対で設けられて
いてもよい。
【0011】
すなわち
、細長孔が対称位置に対で設けられていることから、雄ねじ部が均一に弾性変形し、よりスムーズな組み立てを行うことが可能となる。
【0012】
前記雄ねじ及び前記雌ねじのねじ山の縦断面形状において、先端側のねじ山の斜面がその反対側のねじ山の斜面よりも緩やかで
あってもよい。
【0013】
すなわち
、先端側のねじ山の斜面がその反対側のねじ山の斜面よりも緩やかであることから、第1の円筒部品を第2の円筒部品内に挿入する方向の力に対しては抵抗が少なく、第1の円筒部品を第2の円筒部品内から取り出す方向の力に対してはより抵抗が大きくなる。従って、組み立てが容易になると共に、抜けにくくなることからより強い締結力を得ることが可能となる。
【0014】
前記円筒部品の一方が軸筒の先軸であり、その他方が軸筒の後軸で
あってもよい。
【0015】
また、
本発明の別の態様によれば、
上記筆記具用の部品を備えたことを特徴とする筆記具が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、螺合可能な部品間の組み立てにおいて、第1の円筒部品を回転させることなく挿入によって第2の円筒部品に対して組み立てを行いつつ、両円筒部品間に強い締結力を有する筆記具用の部品及び該部品を有する筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る筆記具の分解斜視図である。
【
図2】
図1に示された筆記具の軸筒の縦断面図である。
【
図3】
図2に示された筆記具の軸筒の先軸の平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態における雄ねじ及び雌ねじのねじ山の縦断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態における雄ねじ及び雌ねじのねじ山の縦断面図である。
【
図7】本発明のさらに別の実施形態における雄ねじ及び雌ねじのねじ山の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の一実施形態に係る筆記具1の分解斜視図であり、
図2は、
図1に示された筆記具1の軸筒2の縦断面図であり、
図3は、
図1に示された筆記具1の軸筒2の先軸3の平面図であり、
図4は、
図3に示された先軸3の縦断面図である。ここで、本明細書中では、筆記部が突出する側を「前」側と規定し、筆記部とは反対側を「後」側と規定する。
【0019】
筆記具1は樹脂材料から形成された軸筒2を有し、軸筒2は先軸3及び後軸4を有する。軸筒2内には、リフィルやボールペン等の筆記体5が収容され、軸筒2の後部に設けられたノック部材6をノック動作することによって、筆記体5先端の筆記部が軸筒2から突出し又は軸筒2内へ後退する。ノック部材6には、クリップ7が一体的に設けられており、ノック部材6のノック動作に伴って前進又は後退する。先軸3の露出する外面は、ユーザが把持し易いように、エラストマー等の弾性材料からなるグリップ部材8によって覆われている。
【0020】
先軸3は、その後端の外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部3aを有する。後軸4は、その前端の内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部4aを有する。ここで、雄ねじ部3a及び雌ねじ部4aとは、主として完全ねじ部に対応する円筒状の周面を言うこととする。先軸3の雄ねじ部3aは、先軸3の後端、すなわち後端部分を雄ねじとした場合の先端(ねじ先)から離間して配置されている。すなわち、この雄ねじの先端(すなわち先軸3の後端)と雄ねじ部3aとの間には、雄ねじ部3aの雄ねじの谷径、すなわち軸外径と略同一の円筒領域3bが存在する。
【0021】
先軸3の雄ねじ部3aは、その円筒状の周面の部分を軸方向に亘って貫通する2つの細長孔3cが設けられている。すなわち、細長孔3cは、雄ねじ部3aのすべてのねじ山が軸周りに1周分連続して形成されないように、ねじ山を周方向において分断している。しかしながら、雄ねじ部3aの先端とは反対側(すなわち先軸3の前端側)のねじ山が数周分連続して残るように、細長孔3cを形成してもよい。
【0022】
2つの細長孔3cは、先軸3の中心軸線に対して対向して配置されている。細長孔3cは、1つ又は3つ以上でもよく、3つ以上の場合には、先軸3の中心軸線周りに等間隔に配置されることが好ましい。また、細長孔3cの周方向の幅は、雄ねじ部3aの軸外径の25%前後が好ましい。
【0023】
先軸3と後軸4とを組み立てて軸筒2を得るために、先軸3を後軸4に対して回転させることで、雄ねじ部3aの雄ねじと雌ねじ部4aの雌ねじとを螺合させてもよいが、先軸3に対して軸方向の力を加え、後軸4内に挿入することによって組み立てを完了することができる。
【0024】
すなわち、先軸3を回転させることなく後軸4内に挿入しようすると、雄ねじ部3aの雄ねじのねじ山と雌ねじ部4aの雌ねじのねじ山との当接によって、雄ねじ部3aに対して中心軸線方向の力が加わる。このとき、細長孔3cの開口面積が小さくなるように先軸3が弾性的に収縮変形し、組み立てを完成させることが可能となる。そして、先端からスリットが形成された特許文献1に記載の雄ねじに比べ、先端から離間した位置に細長孔3cが設けられた本発明は、雄ねじ部3aが大きく弾性変形又は塑性変形もすることもないことから、強い締結力を発揮し、耐久性にも優れ、外観を損なうこともないという利点もある。さらに、雄ねじ部3aに細長孔3cが形成されていることから、細長孔を有さない通常の雄ねじ部と比べて、螺合の際に雌ねじとの間の接触面積が少なくなり、耐摩耗性にも優れている。さらに、組み立ての際には、先軸3に対して軸方向の力を加えて後軸4内に挿入するだけなので、先軸3を回転させて螺合させる場合に比べて、より短時間で組み立てを完成することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態では、細長孔3cが対称位置に対で設けられていることから、雄ねじ部3aが均一に弾性変形し、よりスムーズな組み立てを行うことが可能となる。
【0026】
図5は、本発明の上述した雄ねじ及び雌ねじのねじ山10の縦断面図である。このねじ山10は、ねじの先端側のねじ山の斜面10aとその反対側のねじ山の斜面10bとが同じ角度で傾斜している。
【0027】
図6は、本発明の別の実施形態における雄ねじ及び雌ねじのねじ山11の縦断面図である。このねじ山11は、ねじの先端側のねじ山の斜面11aがその反対側のねじ山の斜面11bよりも緩やかである。すなわち、先軸3を後軸4内に挿入する方向の力に対しては抵抗が少なく、先軸3を後軸4内から取り出す方向の力に対してはより抵抗が大きくなる。従って、組み立てが容易になると共に、組み立てた後には抜けにくくなることからより強い締結力を得ることが可能となる。
【0028】
図7は、本発明のさらに別の実施形態における雄ねじ及び雌ねじのねじ山12の縦断面図である。このねじ山12は、ねじの先端側のねじ山の斜面12aがその反対側のねじ山の斜面12bよりも緩やかである。また、ねじ山の斜面12aは、段階的な傾斜となっている。さらに、ねじ山の頂部は、上述の実施形態では平坦であったのに対し、本実施形態では鋭角に形成されている。すなわち、先軸3を後軸4内に挿入する方向の力に対しては抵抗が少なく、先軸3を後軸4内から取り出す方向の力に対してはより抵抗が大きくなる。また、この取り出す方向の力に対する抵抗は、ねじ山12の鋭角の頂部同士の係合によって、より大きくなる。従って、組み立てが容易になると共に、組み立てた後には抜けにくくなることからより強い締結力を得ることが可能となる。
【0029】
上述した実施形態では、本発明を筆記具用の部品である先軸及び後軸に対して適用したが、その他の筆記具用の部品、例えば、口プラ及び先軸や、消しゴム等のホルダー及び回転スリーブ等に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 筆記具
2 軸筒
3 先軸
3a 雄ねじ部
3b 円筒領域
3c 細長孔
4 後軸
4a 雌ねじ部
5 筆記体
6 ノック部材
7 クリップ
8 グリップ部材