(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288951
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】走査電子顕微鏡を利用した検査システム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/18 20060101AFI20180226BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20180226BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20180226BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20180226BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
H01J37/18
H01J37/28 B
H01J37/244
H01J37/20 D
H01J37/09 Z
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-112191(P2013-112191)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-251262(P2013-251262A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2016年5月19日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0057468
(32)【優先日】2012年5月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】朴 英 吉
(72)【発明者】
【氏名】白 原 奉
(72)【発明者】
【氏名】呉 基 元
【審査官】
橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−509709(JP,A)
【文献】
特表2012−503856(JP,A)
【文献】
特開2008−210715(JP,A)
【文献】
特開2012−015029(JP,A)
【文献】
特開昭59−093249(JP,A)
【文献】
特開平08−195179(JP,A)
【文献】
特開2008−034231(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0140470(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0210247(US,A1)
【文献】
特開2009−016073(JP,A)
【文献】
特開2008−218015(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0203301(US,A1)
【文献】
特開平05−248987(JP,A)
【文献】
特開2000−202384(JP,A)
【文献】
特開平02−168547(JP,A)
【文献】
特開2009−217049(JP,A)
【文献】
特開2007−093673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/18
H01J 37/09
H01J 37/20
H01J 37/244
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを利用して検査対象物である平板表示装置を検査し、真空状態を維持する走査電子顕微鏡チャンバと、
前記走査電子顕微鏡チャンバに取り付けられており、前記検査対象物に光を照射して前記検査対象物を検査する光学顕微鏡と、
前記走査電子顕微鏡チャンバ及び前記光学顕微鏡と離隔して下方に位置し、前記検査対象物を載せるステージと、
前記走査電子顕微鏡チャンバ及び前記光学顕微鏡を、前記ステージ上でX軸、Y軸、およびZ軸方向に一体的に移送させる移送装置と、
メンブレンのパーティクル検査およびパーティクル除去を実行するメンブレンパーティクル検査および除去装置と、
を含み、
前記走査電子顕微鏡チャンバは、前記検査対象物に対向して配置されているメンブレンを含み、
前記走査電子顕微鏡チャンバと前記検査対象物の間は大気状態の雰囲気を維持し、
前記走査電子顕微鏡チャンバは、
真空チャンバ部と、
前記真空チャンバ部の内部に位置し、前記検査対象物に電子ビームを走査する走査電子顕微鏡と、
前記真空チャンバ部の内部に位置し、前記検査対象物から発生する検出信号を検出する信号検出器と、
を含み、
前記信号検出器は、
前記検査対象物から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、
前記検査対象物から発生する後方散乱電子を検出する後方散乱電子検出器と、
前記検査対象物から発生する特性X線を検出する特性X線検出器と、
を含む、走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項2】
前記光学顕微鏡を通じて前記検査対象物の1次光学検査を実施し、前記走査電子顕微鏡チャンバを通じて前記検査対象物の2次詳細検査を実施する、請求項1に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項3】
前記メンブレンは、前記走査電子顕微鏡から走査する電子ビームが通過し、前記検査対象物から発生した二次電子、後方散乱電子、および特性X線が通過して前記走査電子顕微鏡チャンバ内部に到達するようにする、請求項1に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項4】
前記ステージに連結しており、前記ステージの水平面に対する傾きを調節する平坦度調節装置をさらに含む、請求項1に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項5】
前記走査電子顕微鏡チャンバに取り付けられており、前記走査電子顕微鏡チャンバと前記検査対象物の間の距離を調節する間隔調節装置をさらに含む、請求項4に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項6】
前記メンブレンパーティクル検査および除去装置は、前記走査電子顕微鏡チャンバを利用した前記検査対象物の検査前に、前記メンブレンのパーティクル検査およびパーティクル除去を実行する、請求項1に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項7】
前記ステージおよび前記移送装置を支持する支持台をさらに含み、前記メンブレンパーティクル検査および除去装置は支持台上に設置される、請求項6に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項8】
前記支持台下に設置されており、外部振動を測定および除去し、前記走査電子顕微鏡チャンバが前記外部振動によって影響を受けることを遮断する制振装置をさらに含む、請求項7に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項9】
前記走査電子顕微鏡チャンバ、前記ステージ、および前記移送装置を囲んでおり、磁場および騒音を除去し、前記走査電子顕微鏡チャンバが磁場および騒音によって影響を受けることを遮断するカバーフレームをさらに含む、請求項8に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【請求項10】
前記メンブレンは非導電性物質である、請求項3に記載の走査電子顕微鏡を利用した検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡を利用した検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶表示装置や有機発光表示装置などの平板表示装置は、複数の薄膜と配線を積層して形成する。このような平板表示装置の薄膜上の不純物やパーティクルなどの存在の有無や配線の短絡の有無を検査するために、走査電子顕微鏡を利用した検査システムが使用される。
【0003】
検査システムに使用される真空用の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、真空チャンバのサイズ制限により、観察することができる試料の大きさに制限がある。30インチの半導体ウエハまで観察することができる真空用の走査電子顕微鏡が開発されているが、730×920mm〜2200×2500mmの大きさの平板表示装置には、真空チャンバのサイズ制限によって真空用の走査電子顕微鏡の使用が困難である。
【0004】
平板表示装置に適用できるように真空チャンバのサイズを大きくする場合にも、真空チェンバから発生する帯電効果(charging effect)により、真空中に位置した検査対象物から発生する二次電子(Secondary electron:SE)または後方散乱電子(Back scattering electron:BSE)が妨害を受けて検査対象物のイメージ観察が困難となり、真空チャンバに使用されるポンプ(pump)に起因した炭化水素化合物(HxCx)によるカーボン(Carbon)汚染の問題が発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような背景技術の問題点を解決するために案出されたものであって、検査対象物の大きさに制限を受けず、大気状態の検査対象物に対する検査を実施することができる走査電子顕微鏡を利用した検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムは、電子ビームを利用して検査対象物を検査し、真空状態を維持する走査電子顕微鏡チャンバ、前記走査電子顕微鏡チャンバと離隔して下方に位置し、前記検査対象物を載せるステージ、前記走査電子顕微鏡チャンバを前記ステージ上で移送させる移送装置を含み、前記走査電子顕微鏡チャンバと前記検査対象物の間は大気状態の雰囲気を維持してもよい。
【0007】
前記走査電子顕微鏡チャンバに取り付けられ、前記検査対象物に光を照射して前記検査対象物を検査する光学顕微鏡をさらに含んでもよい。
【0008】
前記光学顕微鏡を通じて前記検査対象物の1次光学検査を実施し、前記走査電子顕微鏡チャンバを通じて前記検査対象物の2次詳細検査を実施してもよい。
【0009】
前記走査電子顕微鏡チャンバは、真空チャンバ、前記真空チャンバ内部に位置し、前記検査対象物に電子ビームを走査する走査電子顕微鏡、前記真空チャンバ内部に位置し、前記検査対象物から発生する検出信号を検出する信号検出器を含んでもよい。
【0010】
前記信号検出器は、前記検査対象物から発生する二次電子を検出する二次電子検出器、前記検査対象物から発生する後方散乱電子を検出する後方散乱電子検出器、前記検査対象物から発生する特性X線を検出する特性X線検出器を含んでもよい。
【0011】
前記走査電子顕微鏡チャンバの下端部に設置されているメンブレンをさらに含み、前記メンブレンは、前記走査電子顕微鏡から走査する電子ビームが通過し、前記検査対象物から発生した二次電子、後方散乱電子、および特性X線が通過して前記走査電子顕微鏡チャンバ内部に到達するようにしてもよい。
【0012】
前記ステージに連結しており、前記ステージの平坦度を調節する平坦度調節装置をさらに含んでもよい。
【0013】
前記走査電子顕微鏡チャンバに取り付けられ、前記走査電子顕微鏡チャンバと前記検査対象物の間の距離を調節する間隔調節装置をさらに含んでもよい。
【0014】
前記メンブレンのパーティクル検査およびパーティクル除去を実行するメンブレンパーティクル検査および除去装置をさらに含んでもよい。
【0015】
前記メンブレンパーティクル検査および除去装置は、前記走査電子顕微鏡チャンバを利用した検査対象物の検査前に、前記メンブレンのパーティクル検査およびパーティクル除去を実行してもよい。
【0016】
前記ステージおよび前記移送装置を支持する支持台をさらに含み、前記メンブレンパーティクル検査および除去装置は前記支持台上に設置されてもよい。
【0017】
前記支持台下に設置されており、外部振動を測定および除去し、前記走査電子顕微鏡チャンバが前記外部振動によって影響を受けることを遮断する制御装置をさらに含んでもよい。
【0018】
前記走査電子顕微鏡チャンバ、前記ステージ、および前記移送装置を囲んでおり、磁場および騒音を除去し、前記走査電子顕微鏡チャンバが磁場および騒音によって影響を受けることを遮断するカバーフレームをさらに含んでもよい。
【0019】
前記検査対象物は平板表示装置であってもよい。
【0020】
前記メンブレンの厚さは10nm〜3μmであってもよく、前記メンブレンは非導電性物質であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、走査電子顕微鏡チャンバおよびこれに取り付けられた光学顕微鏡を含む検査システムを利用することにより、検査対象物のパーティクルの光学イメージと3次元情報および成分分析を同時に実施することができる。
【0022】
また、走査電子顕微鏡チャンバおよびこれに取り付けられ光学顕微鏡が移送装置にすべて装着され、検査対象物上の特定位置に移動可能であるため、検査対象物の大きさに制限を受けない。
【0023】
また、従来の真空用走査電子顕微鏡には真空チャンバの大きさに制限があるため、平板表示装置のような大型の検査対象物の検査が困難であったが、本発明によれば、走査電子顕微鏡チャンバと検査対象物の間は大気状態の雰囲気を維持するため、大気状態でも大型の検査対象物の検査が可能であるため、大型の検査対象物の形状、成分、構造などを観測および分析することができる。
【0024】
したがって、分析のために大型の検査対象物を破壊することなく、大型の検査対象物を検査することができるため、原価節減および収率向上が期待される。
【0025】
また、検査対象物が大気状態に位置するため、真空チェンバから発生する帯電効果による検査対象物のイメージ歪曲を防ぎ、検査対象物がカーボンによって汚染されないため正確な検査が可能である。
【0026】
また、外部振動、磁場、および騒音などの外部ノイズに敏感であった走査電子顕微鏡の特性上、大気状態で検査対象物の検査が可能なように平坦度調節装置および制振装置を検査システムに設置することにより、検査システムに対する外部ノイズの影響を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの走査電子顕微鏡チャンバとステージの拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの走査電子顕微鏡チャンバの詳細図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の多様な実施形態について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は多様に相違した形態に実現されることができ、ここで説明する実施形態に限定されることはない。
【0029】
本発明を明確に説明するために説明上で不必要な部分は省略し、明細書全体に渡って同一または類似する構成要素については同一する参照符号を付与する。
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムについて、
図1〜
図5を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの概略図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの走査電子顕微鏡チャンバとステージの拡大図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの走査電子顕微鏡チャンバの詳細図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの正面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムの背面図である。
【0032】
図1〜
図5に示すように、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムは、検査対象物10に電子ビーム1を走査して検査対象物10を検査する走査電子顕微鏡チャンバ100、走査電子顕微鏡チャンバ100と離隔して下方に位置し、検査対象物10を載せるステージ(stage)200、走査電子顕微鏡チャンバ100をステージ200上で移送させる移送装置300を含む。検査対象物10は、液晶表示装置や有機発光表示装置などの平板表示装置であってもよい。
【0033】
図2に示すように、走査電子顕微鏡チャンバ100は、真空状態を維持する真空チャンバ110、真空チャンバ110内部に位置し、検査対象物10に電子ビーム1を走査する走査電子顕微鏡120、真空チャンバ110内部に位置し、検査対象物10から発生する信号を検出する信号検出器(detector)130を含む。このように、走査電子顕微鏡チャンバ100内部の走査電子顕微鏡120および信号検出器130は、真空状態を維持している。
【0034】
走査電子顕微鏡120は、電子ビーム1を放出する電子放出源(Electron gun)121、電子ビーム1の進行方向を調節する集束レンズ(Condenser Lens)および対物レンズ(Objective Lens)などの電磁気レンズ122、進行する電子ビーム1の量を調節する絞り(Aperture)123を含む。
【0035】
信号検出器130は、検査対象物10に走査された電子ビーム1によって検査対象物10から発生する二次電子(Secondary electron:SE)を検出する二次電子検出器131、検査対象物10から発生する後方散乱電子(Back scattering electron:BSE)を検出する後方散乱電子検出器132、検査対象物10から発生する特性X線(Characteristic X−ray)を検出する特性X線検出器133を含む。このような信号検出器130を利用することにより、検査対象物10のイメージを観測して成分を分析するようになる。
【0036】
二次電子検出器131と後方散乱電子検出器132は走査電子顕微鏡120の下端部に取り付けられており、特性X線検出器133は走査電子顕微鏡120の側面に傾斜して設置されている。特性X線検出器133は、大気状態の雰囲気に位置する検査対象物10と電子ビーム1が反応して生成された特性X線を検出して検査対象物10の成分を分析してもよい。このような特性X線検出器133によって走査電子顕微鏡120が影響を受けることを最小化するために、特性X線検出器133の角度を調節したり、特性X線検出器133を走査電子顕微鏡チャンバ100から搬出したりしてもよい。このため、特性X線検出器133に角度調節器134が設置されたり、走査電子顕微鏡チャンバ100に特性X線検出器搬出ドア111が設置されたりしてもよい。
【0037】
走査電子顕微鏡チャンバ100の下端部には、メンブレン(Membrane)140が設置されている。メンブレン140は、電子ビーム1と二次電子、後方散乱電子、および特性X線が吸収せずにすべて透過できるように、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)などの元素からなる非導電性物質で形成され、透過率が高くて吸収率が低い物質で形成される。透過率が優れた炭素(C)からなるメンブレン140の場合、厚さが10nm〜3μmであってもよいが、この場合、メンブレン140の透過率は100%〜90%となる。メンブレン140の厚さが10nmよりも小さい場合には、メンブレン140が薄くて物理的な衝撃によって損傷し易くなり、メンブレン140の厚さが3μmよりも大きい場合には透過率が90%以下となるため、電子ビームなどがメンブレン140に一部吸収されて正確な検査が不可能になる。
【0038】
このようなメンブレン140は、走査電子顕微鏡チャンバ100の真空状態を維持させると同時に、走査電子顕微鏡120から走査する電子ビーム1が通過して検査対象物10に照射されるようにする。また、検査対象物10から発生した二次電子、後方散乱電子、および特性X線の検出信号が走査電子顕微鏡チャンバ100内部に到達し、二次電子検出器131、後方散乱電子検出器132、および特性X線検出器133に検出信号が伝達されるようにする。したがって、メンブレン140は、走査電子顕微鏡チャンバ100と検査対象物10の間(d)を大気状態の雰囲気に維持するようにする。したがって、従来の真空用の走査電子顕微鏡120には真空チャンバ110の大きさに制限があるため、平板表示装置のような大型の検査対象物10の検査が困難であったが、本発明によれば、走査電子顕微鏡チャンバ100と検査対象物10の間は大気状態を維持するため、大気状態でも大型の検査対象物10の検査が可能であるため、大型の検査対象物10の形状、成分、構造などを観測および分析することができる。
【0039】
したがって、分析のために大型の検査対象物10を破壊することなく大型の検査対象物10を検査することができるため、原価節減および収率向上が期待される。
【0040】
また、検査対象物10が大気状態の雰囲気に位置するため、真空チャンバ110から発生する帯電効果による検査対象物10のイメージ歪曲を防ぎ、検査対象物10がカーボンによって汚染されないため正確な検査が可能となる。
【0041】
走査電子顕微鏡チャンバ100には付随して光学顕微鏡400が取り付けられているが、光学顕微鏡は、検査対象物10に光を照射して検査対象物10の表面に付着したパーティクル(particle)2の有無を検査する。このように、光学顕微鏡400は、走査電子顕微鏡チャンバ100に取り付けられているため、移送装置300によって走査電子顕微鏡チャンバ100と同時に移動する。
【0042】
このような光学顕微鏡400の検査可能倍率は最大で100倍まで可能であり、走査電子顕微鏡チャンバ100の検査可能倍率は数百万倍まで可能であり、走査電子顕微鏡チャンバ100の分解能は最大数nmまで可能であるため、光学顕微鏡400を通じて検査対象物10の1次光学検査を実施し、走査電子顕微鏡チャンバ100を通じて検査対象物10の2次詳細検査を実施することにより、パーティクルの形状、大きさ、および成分に対する情報を得ることができる。
【0043】
このように、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムは、走査電子顕微鏡チャンバ100およびこれに付随する光学顕微鏡400を含むことにより、検査対象物10に発生したパーティクルの光学イメージと検査対象物10の3次元情報および成分分析を同時に実施することができる。
【0044】
ステージ200は、検査対象物10の全領域を検査することができるようにX軸、Y軸、およびZ軸方向に移動が可能であり、移送装置300も検査対象物10の全領域を検査することができるようにX軸、Y軸、およびZ軸方向に移動が可能である。ステージ200には、搬送ロボットから検査対象物10を受け取るためのリフトピン210が設置されている。
【0045】
このとき、走査電子顕微鏡チャンバ100およびこれに付随した光学顕微鏡400が移送装置300にすべて装着され、走査電子顕微鏡120と光学顕微鏡400が同時に検査対象物10上の特定位置に移動可能であるため、検査対象物10の大きさに制限を受けない。
【0046】
ステージ200には、ステージ200の平坦度を調節する平坦度調節装置500が設置されている。平坦度調節装置500は、ステージ200に複数が設置されてもよいが、このような平坦度調節装置500は、ステージ200の平坦度を測定して平坦度を調節することにより、走査電子顕微鏡チャンバ100と検査対象物10の間の物理的衝突を防ぐ。
【0047】
走査電子顕微鏡チャンバ100には間隔調節装置600が取り付けられており、間隔調節装置600は、レーザセンサ(Laser Sensor)などを利用して走査電子顕微鏡チャンバ100と検査対象物10の間の距離(d)をリアルタイムで測定し、これを移送装置300にフィードバックして走査電子顕微鏡チャンバ100の位置を調節することにより、走査電子顕微鏡チャンバ100と検査対象物10の間の物理的衝突を防ぐ。
【0048】
従来は、走査電子顕微鏡チャンバ100の下端部と検査対象物10の間の距離(d)をmm水準まで近接させることができたが、本発明の一実施形態に係る走査電子顕微鏡を利用した検査システムは、平坦度調節装置500と間隔調節装置600を利用して走査電子顕微鏡チャンバ100のメンブレン140と検査対象物10の間の距離(d)をμm水準まで近接させることができるため、検査対象物10に対する分析力を向上させることができる。
【0049】
このように、移送装置300に走査電子顕微鏡チャンバ100、光学顕微鏡400、および間隔調節装置600が共に設置されているため、移送装置300によって走査電子顕微鏡チャンバ100、光学顕微鏡400、および間隔調節装置600は一体に移動するようになる。したがって、検査対象物10の大きさに制限を受けず、移送装置300を利用して検査対象物10のすべての検査位置に走査電子顕微鏡チャンバ100、光学顕微鏡400、および間隔調節装置600が同時に移動して検査工程を実行することができる。
【0050】
走査電子顕微鏡チャンバ100内部の電子装置を制御するための電子制御装置700が、移送装置300に設置されている。
【0051】
ステージ200および移送装置300を支持する支持台800が設置されており、支持台800上にはメンブレンパーティクル検査および除去装置900が設置されている。メンブレン140表面に付着したパーティクル(particle)の検査およびパーティクル除去を実行するメンブレンパーティクル検査および除去装置900は、走査電子顕微鏡チャンバ100を利用した検査対象物10の検査前に、メンブレン140表面に付着したパーティクルの検査およびパーティクル除去を実行する。したがって、メンブレン140の表面に付着したパーティクルにより、検査対象物10に対する検査が不完全になることを防ぐことができる。
【0052】
支持台800下には制振装置1000が設置されている。制振装置1000は、外部振動を測定および除去し、走査電子顕微鏡チャンバ100が外部振動によって影響を受けることを遮断することができる。大気状態の雰囲気では外部振動によって走査電子顕微鏡チャンバ100が影響を受けることがあるが、本発明の一実施形態では制振装置1000を設置することにより、大気状態でも走査電子顕微鏡チャンバ100が外部振動によって影響を受けることを最小化することができる。
【0053】
走査電子顕微鏡チャンバ100、ステージ200、および移送装置300を全体的に囲むカバーフレーム(cover frame)1100が設置されている。カバーフレーム1100は、アルミニウム(Al)またはパーマロイ(Permalloy)などの電磁場を遮断する物質で形成するため、周辺設備または周辺配線から発生する外部磁場および騒音が走査電子顕微鏡チャンバ100に伝達することを遮断し、走査電子顕微鏡チャンバ100が磁場および騒音によって影響を受けないようにする。このようなカバーフレーム1100には、検査対象物10がステージ200にローディング(loading)およびアンロ−ディング(unloading)されるように検査対象物10が通過するカバードア(cover door)1110が設置されてもよい。このようにカバードア1110を設置することにより、検査対象物10に対する検査工程を実施する場合にはカバードア1110を閉じ、外部磁場および騒音から走査電子顕微鏡チャンバ100が完全に遮蔽されるようにする。
【0054】
また、カバーフレーム1100の内部に磁場センサ1120を設置し、走査電子顕微鏡120に対する磁場の影響を最小化してもよい。したがって、走査電子顕微鏡チャンバ100の検査対象物10に対する分析の精度を向上させることができる。
【0055】
このように、外部振動、磁場、および騒音などの外部ノイズに敏感であった走査電子顕微鏡120の特性上、大気状態で検査対象物10の検査が可能なように、平坦度調節装置500および制振装置1000を検査システムに設置することにより、検査システムに対する外部ノイズの影響を最小化することができる。
【0056】
本発明は、上述したような好ましい実施形態を参照しながら説明されたが、本発明はこれに限定されることはなく、添付する特許請求の範囲の概念と範囲を逸脱しない限り多様な修正および変形が可能であるということは、発明が属する技術分野に従事する者は容易に理解できるであろう。
【符号の説明】
【0057】
1 電子ビーム
10 検査対象物
100 走査電子顕微鏡チャンバ
200 ステージ
300 移送装置
400 光学顕微鏡
500 平坦度調節装置
600 間隔調節装置
700 電子制御装置
800 支持台