(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の柱や梁を有する建物ユニットを複数組み合わせて構築される建物本体と、当該建物本体に設けられる複数の室内空間を空調する空調装置と、を備えたユニット式建物において、
前記建物本体の下階を構成する建物ユニットと、上階を構成する建物ユニットとの間に介在することによって当該上階の建物ユニットを嵩上げする嵩上げ部材を備えており、
前記嵩上げ部材は、前記下階の建物ユニットを構成する前記柱の上面部と、前記上階の建物ユニットを構成する前記柱の下面部とに各々接合されることによって当該上下階の建物ユニット同士を連結しており、
前記上下階の建物ユニット間の領域には、前記嵩上げ部材によって拡張される所定の空間が形成され、当該所定の空間に、前記空調装置の各種設備が配設されており、
前記建物本体の下階には、当該建物本体の下階の部屋よりも天井高が低く構成された収納スペースが設けられており、
前記収納スペースの上方は、前記空調装置の装置本体が配設されたスペースとされており、
前記所定の空間は、前記空調装置の装置本体が配設されたスペースの上方に位置していることを特徴とするユニット式建物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されるようなセントラル空調装置は、装置本体や当該装置本体と各室内空間とを接続する給排気用ダクト、この給気ダクトを建物内の各室内空間に連通する複数の配管へ分岐するための分岐チャンバーなどを備えており、これらは建物における小屋裏空間や天井懐に設置されることが一般的である。このため、建物においては、小屋裏空間や天井懐に、その分、設置スペースの確保が必要となる。
【0006】
しかしながら、上述のようなセントラル空調装置を特許文献2に記載されるようなユニット式建物に備える場合、装置本体や給気ダクト、分岐チャンバーなどを上下階間の天井懐に設置しようとしても、上下に隣り合う建物ユニット間の間隔が狭いため、設置できないという問題があった。
【0007】
そのため、上下に隣り合う建物ユニット間に給気ダクトや分岐チャンバーの配設スペースを確保すべく、上下階間の天井懐の下方に位置する下階の部屋において、通常の天井面よりも低い高さに下がり天井部を形成し、下がり天井部の上方に形成されるスペースに給気ダクトや分岐チャンバーを配設することが考えられている。ところが、このような手法では、天井材を吊り下げるための吊天井部材が必要になることから、部品点数の増加や作業量の増加を伴う。また、下がり天井部を形成すると共に十分な天井高を確保するためには、建物ユニットの高さを通常よりも高くしなければならない。しかしながら、建物ユニットの高さを通常よりも高くしてしまうと、当該建物ユニットにおける耐力の低下を招く虞もあるため、解決策として不十分である。
【0008】
従って、建物ユニットの耐力を低下させることなく、簡易な構造で給気ダクトや分岐チャンバー等の各種設備を配置可能な設置スペースを確保する技術開発が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、ユニット式建物を構築する建物ユニットの耐力を低下させることなく、上下階に配置される建物ユニット間の領域に、各種設備を配置する設置スペースを、簡易な構造で確保可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1〜
図5に示すように、複数の柱11…や梁(例えば、天井梁12…(12a,12b)および床梁13…(13a,13b))を有する建物ユニット10を複数組み合わせて構築される建物本体2と、当該建物本体2に設けられる複数の室内空間4(下階の部屋4a,上階の部屋4bなど)を空調する空調装置5と、を備えたユニット式建物1において、
前記建物本体2の下階F1を構成する建物ユニット10,10と、上階F2を構成する建物ユニット10,10との間に介在することによって当該上階F2の建物ユニット10,10を嵩上げする嵩上げ部材6を備えており、
前記嵩上げ部材6は、前記下階F1の建物ユニット10を構成する前記柱11,11の上面部と、前記上階F2の建物ユニット10を構成する前記柱11,11の下面部とに各々接合されることによって当該上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…同士を連結しており、
前記上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…間の領域には、前記嵩上げ部材6によって拡張される所定の空間SPが形成され、当該所定の空間SPに、前記空調装置5の各種設備(例えば、給気ダクト52,分岐チャンバー53,環気ダクト56など)が配設され
ており、
前記建物本体2の下階F1には、当該建物本体2の下階F1の部屋(下階の部屋4a、廊下41)よりも天井高が低く構成された収納スペースKSが設けられており、
前記収納スペースKSの上方は、前記空調装置5の装置本体51が配設されたスペースとされており、
前記所定の空間SPは、前記空調装置5の装置本体51が配設されたスペースの上方に位置していることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…間の領域に、嵩上げ部材6によって拡張される所定の空間SPが形成され、当該所定の空間SPに、空調装置5の各種設備(例えば、給気ダクト52,分岐チャンバー53,環気ダクト56など)が配設されるので、当該空調装置5の各種設備を、上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…間に形成された所定の空間SPを利用して配置できる。すなわち、各種設備を配置するスペースを確保できる。しかも、上階F2の建物ユニット10…を嵩上げ部材6によって単に嵩上げするだけでスペースを確保できるので、簡易な構造でスペースの確保が可能となる。
また、下がり天井部を形成する必要が無いので、建物ユニット10を通常の高さよりも高くする必要が無い。よって、建物ユニット10の耐力低下を防げる。
【0012】
このとき、上下に配置される建物ユニット10…,10…間に形成される所定の空間SPを、下階F1の天井収納や上階F2の床下収納などの収納スペースとして利用すれば、建物内部に設けられる収納空間を増やすこともできる。
【0013】
さらに、上下の建物ユニット10…,10…は、それぞれ平面寸法をモジュール化して共通とされており、上下に対向配置される柱11…,11…間に嵩上げ部材6を介在させて連結するという簡単な作業で、これら上下の建物ユニット10…,10…間に所定の空間SPを形成できるので、建築現場における作業が煩雑になることを未然に回避できる。また、空調装置5のメンテナンス時においても、上階F2の建物ユニット10側から床下へアクセスするか、下階F1の建物ユニット10側から天井懐21にアクセスすればメンテナンス作業が行えるので、当該空調装置5に対するメンテナンス作業の簡易化を図ることもできる。
【0014】
かくして、ユニット式建物1を構築する建物ユニット10…の耐力を低下させることなく、上下階F1,F2に配置される建物ユニット10…,10…間の領域に、各種設備(給気ダクト52や分岐チャンバー53、環気ダクト56など)を配置する設置スペース(所定の空間SP)を、簡易な構造で確保することができる。
また、従来、小屋裏空間31などの建物ユニット10による室内空間4(下階の部屋4a,上階の部屋4bなど)以外に配設されていた前記空調装置5の装置本体51を建物ユニット10内に配設することで、建物ユニット10内において装置本体51の設置作業やメンテナンス作業を行うことができるので、作業効率を格段に向上させることができる。しかも、小屋裏空間31などの室内空間4(下階の部屋4a,上階の部屋4bなど)以外における装置本体51の占領スペースを開放でき、その分、当該装置本体51が占領していた設置スペースを有効活用できる。このとき、小屋裏空間31に装置本体51の設置スペースが不要となるため、屋根面が略平坦な陸屋根を採用するのに適している。
また、建物ユニット10内に配設された装置本体51の下方が収納スペースKSになっているので、建物ユニット10内の水平方向において装置本体51と収納スペースKSを同一の領域に配置でき、建物ユニット10内における装置本体51の設置スペースに無駄がなく、その床面積を有効活用できる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、例えば
図3〜
図5に示すように、請求項1に記載のユニット式建物1において、
前記嵩上げ部材6は、
前記下階F1の建物ユニット10,10を構成する前記柱11,11の上面部(柱頭接合部材18,18)に当接して接合される下側接合部61と、
前記上階F2の建物ユニット10,10を構成する前記柱11,11の下面部(柱脚接合部材19,19)に当接して接合される上側接合部62と、
これら下側接合部61および上側接合部62間に立設され、前記下方の柱11,11の直上および前記上方の柱11,11の直下に位置するスチフナ63,63と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、嵩上げ部材6の下側接合部61を柱11,11の上面部(柱頭接合部材18,18)に当接して接合すると共に、上側接合部62を柱11,11の下面部(柱脚接合部材19,19)に当接して接合するという簡単な構成で、上下に位置する建物ユニット10…,10…同士を連結することができる。このとき、嵩上げ部材6は、下側接合部61および上側接合部62を、これらに対応する下方の柱11,11の上面部(柱頭接合部材18,18)および上方の柱11,11の下面部(柱脚接合部材19,19)に当接して、例えば締結ボルト65のような接合部材等によって接合すれば良いため、建物ユニット10…の柱11…に接合のための特別な加工を施す必要はない。
そして、このように下方の柱11,11の上面部(柱頭接合部材18,18)および上方の柱11,11の下面部(柱脚接合部材19,19)と接合された下側接合部61および上側接合部62の間に、下方の柱11,11の直上および上方の柱11,11の直下に位置するスチフナ63,63が立設されているので、上下階F1,F2に配置された建物ユニット10…,10…間の連結部分において十分な剛性を発揮できる。従って、建物本体2における上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…間の剛性を高い状態で維持できる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のユニット式建物1において、
前記所定の空間SPに、遮音部材が配設されていることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、
下階F1に配置される建物ユニット10…と、上階F2に配置される建物ユニット10…との間の天井懐21に形成された所定の空間SPが、従来の天井懐よりも広い空間になっており、この広い所定の空間SPに遮音部材が配設されているので、当該上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…間における空調装置5や各室内空間4から発せられる音(騒音)が、他の室内空間4へと伝わるのを抑制する抑制力をより一層強化できる。よって、上階F2側の床を遮音床として利用できる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット式建物1において、
前記所定の空間SPに、前記空調装置5の上階F2側に用いられる各種配管(給気ダクト52や分岐チャンバー53)が配設されており、
前記上階F2の建物ユニット10…には、前記所定の空間SPに配設された前記上階F2側に用いられる各種配管(給気ダクト52など)と連通する床吹出し部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明
によれば、建物本体2の下階F1側と上階F2側とで、それぞれ小屋裏空間31や天井懐21に配設していた空調装置5の各種配管(給気ダクト52や分岐チャンバー53)を、これら上下階F1,F2に配置された建物ユニット10…,10…間における所定の空間SPにまとめて(集中させて)配設するようにしたので、上階F2側の小屋裏空間31などに配設していた給気ダクト52や分岐チャンバー53などの各種配管の設置スペースが不要となる。よって、その分、当該上階F2側の小屋裏空間31などのスペースを、他の目的で使用するなどして有効活用できる。このとき、小屋裏空間31に空調装置5の各種配管(給気ダクト52や分岐チャンバー53)の設置スペースが不要となるため、屋根面が略平坦な陸屋根を採用するのに適している。また、空調装置5の各種配管(給気ダクト52や分岐チャンバー53)が1箇所に纏まった状態で集中配置されるので、メンテナンス作業が容易になる。
【0021】
しかも、上階F2の建物ユニット10…には、所定の空間SPに配設された空調装置5の上階F2側に用いられる給気ダクト52と連通する床吹出し部が設けられているので、天井側に吹出し部54を設ける必要がなく、空調装置5のメンテナンス時において、上階F2の建物ユニット10側から床下の所定の空間SPへアクセスするだけでメンテナンス作業が行えるので、当該空調装置5に対するメンテナンス作業をより一層簡易化することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のユニット式建物1において、
前記建物ユニット10は、複数の柱11…の上端部同士を結合する4本の天井梁12…を備えており、
前記4本の天井梁12…は、長辺側に配置される2本の長辺天井梁12a,12aと、短辺側に配置される長辺天井梁12aより短い2本の短辺天井梁12b,12bと、によって構成されており、
前記建物ユニット10における前記天井梁12…(12a,12b)のうち長辺側の
前記長辺天井梁12a,12a間に、短辺側の
前記短辺天井梁12bと平行且つ、その長辺方向に沿って所定の間隔で複数の天井小梁14…が架設されており、これら天井小梁14…の間に井桁状の枠部8が設けられており、
前記枠部8の、前記天井小梁14の長さ方向に沿う方向の寸法は、前記天井小梁14の長さ方向の寸法よりも短く設定されており、
前記枠部8には、当該枠部8の幅寸法を前記複数の天井小梁14…間の間隔に応じて寸法調整するための調整材83a,83bが、前記枠部8と前記天井小梁14…との間に介在するようにして取り付け可能となっていることを特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、
平行に配置された複数の天井小梁14…間に井桁状の枠部8が設けられているので、この枠部8を用いて空調装置5のダクト吹出し部54を配設することができる。このとき、ダクト吹出し部54を枠部8に取り付けることで、天井小梁14…間に確実に固定することができる。しかも、枠部8は井桁状に形成されているので、天井小梁14…間の剛性を高めることもできる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項
5に記載のユニット式建物1において、
前記枠部8は、前記複数の天井小梁14…に沿う一対の縦枠81,81と、これら一対の縦枠81,81間に架設される一対の横枠82,82とを有しており、
前記枠部8には、下方に位置する室内側にダクト吹出し部54が取り付けられ、
前記一対の横枠82,82間には、前記装置本体51と前記ダクト吹出し部54とを連通する給気ダクト52を取り付けるためのダクトケースDKが取り付けられており、
前記ダクトケースDKの、前記横枠82の長さ方向に沿う方向の寸法は、前記横枠82の長さ方向の寸法よりも短く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ユニット式建物を構築する建物ユニットの耐力を低下させることなく、上下階に配置される建物ユニット間の領域に、各種設備を配置する設置スペースを、簡易な構造で確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るユニット式建物1を側方から見て概略的に示す断面図であり、
図2は、
図1のユニット式建物1を構築する基本的な建物ユニット10を示す斜視図である。なお、以下の説明において、上下方向とは建物ユニットを積層する垂直方向を意味し、左右方向とは当該垂直方向に直交する水平方向を意味し、これら方向については適宜使い分けて表現するが、各々前者の示す方向と後者の示す方向は同一である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態のユニット式建物1は、複数の建物ユニット10を組み合わせることによって構成される建物本体2を備えた住宅であり、当該建物本体2の上部には、切妻形状の屋根3が設けられている。この場合、屋根3は、例えば不図示の屋根パネルである傾斜面材によって構成されている。また、ユニット式建物1は、建物本体2の内部に設けられる複数の室内空間4(例えば、下階の部屋4a,上階の部屋4b)を空調するための空調装置5を備えている。本実施形態において、空調装置5は、給排気機能を有するエアコンを適用するものとするが、一例であってこれに限ることはない。
また、この場合、建物本体2は、複数の建物ユニット10を水平方向に組み合わせて構成された下階F1と上階F2とを、上下方向に積層した二階建てで構成されている。
【0031】
具体的に、建物ユニット10は、
図2に示すように、4本の柱11と、これらの柱11…の上端部同士を結合する4本の天井梁12…と、柱11…の下端部同士を結合する4本の床梁13…とを備えている。
4本の天井梁12…は、長辺側に配置される2本の長辺天井梁12a,12aと、短辺側に配置される長辺天井梁12aより短い2本の短辺天井梁12b,12bと、によって構成されている。4本の床梁13…は、長辺側に配置される2本の長辺床梁13a,13aと、短辺側に配置される長辺床梁13aより短い2本の短辺床梁13b,13bと、によって構成されている。なお、各柱11は正方形筒状に形成されており、天井梁12と床梁13は、それぞれ断面コ字型に形成されている。
2本の長辺天井梁12a,12a間には、複数の天井小梁14…が短辺天井梁12bと平行に架設されており、これら天井小梁14…は長辺天井梁12aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら天井小梁14…の下面には天井板15が固定されている。
2本の長辺床梁13a,13a間には、複数の根太16…が短辺床梁13bと平行に架設されており、これら根太16…は長辺床梁13aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら根太16…の上面には床板17が固定されている。
なお、柱11の上端部と天井梁12の端部とは柱頭接合部材18によって接合され、柱11の下端部と床梁13の端部とは柱脚接合部材19によって接合されている。
また、このような建物ユニット10は、水平方向の前後左右に隣接して配置される際、図示しない位置決めピンや連結プレート、ボルト等によって適宜連結される。
【0032】
本実施形態の場合、建物ユニット10は、上下方向(垂直方向)に積層されており、当該上下方向に隣接する建物ユニット10,10同士を、
図3に示すような嵩上げ部材6によって嵩上げしながら連結されている。ここで、嵩上げとは、従来、建物ユニット10…を上下階F1,F2に積層した場合に比べて、その高さ方向の寸法を高くすることを意味し、この場合、上下階F1,F2の各建物ユニット10…,10…自体の室内天井高は変更されていないものの、下階F1の各建物ユニット10…と、上階F2の建物ユニット10…との間に後述する所定の空間SPを設けることにより、建物本体2としての高さ寸法を高く設定している。
【0033】
なお、この嵩上げ部材6は、後述するように、建物本体2の下階F1側および上階F2側のそれぞれにおいて、水平方向に隣り合う二つの建物ユニット10,10、10,10同士も同時に連結し得るようになっているが、一例であってこれに限らず、建物本体2のコーナー部などにおいて前記上下方向に隣接する建物ユニット10,10同士のみを連結するものであっても良いし、建物本体2の中央側のような下階F1および上階F2のそれぞれにおいて水平方向に四つずつ隣接配置された建物ユニット10…,10…同士を同時に連結するものであっても良い。
例えば、建物本体2のコーナー部に配置される上下二つの建物ユニット10,10間における水平方向に隣接する他の柱11が存在しない部位においては、上下に積層される柱11,11同士のみを、かかる嵩上げ部材6の略半分(すなわち、後述のスチフナ63が一つ)の構成からなる嵩上げ部材(不図示)によって、上下方向にのみ連結する。但し、この場合の嵩上げ部材の構成としては、以下に説明する嵩上げ部材6を半分で構成したものと略同一な構成となるため、ここでは、図示および説明を割愛するものとする。
また、同様に、ここでは詳細な説明は割愛するが、建物本体2の中央側などの水平方向に隣接する建物ユニット10が、下階F1および上階F2のそれぞれに、四つずつ存在する部位の中心部分においては、上下それぞれ異なる建物ユニット10…の計八つの柱11…が上下左右に隣接配置されており、これら八つの柱11…を一つの嵩上げ部材によって同時に連結する。この場合の嵩上げ部材の構成としては、以下に説明する嵩上げ部材6を水平方向に2つ分、略正方形状に連結して構成したものと略同一な構成とすることが好ましい。
【0034】
具体的に、嵩上げ部材6は、
図4(a)および(b)にも示すように、下方に位置する建物ユニット10,10の柱11,11の上面部(すなわち、柱11の上端部と天井梁12の端部とを接合する柱頭接合部材18)に接合される下側接合部61と、上方に位置する建物ユニット10,10の柱11,11の下面部(すなわち、柱11の下端部と床梁13の端部とを接合する柱脚接合部材19)に接合される上側接合部62と、これら下側接合部61および上側接合部62間に水平方向に2本並列した状態で立設され、下方の柱11,11の直上および上方の柱11,11の直下に位置するスチフナ63,63と、を備えている。また、上側接合部62には、柱11,11の下面部との接合の際に位置決めするためのガイドピン64が、上方に位置する柱11,11の下面部に向けて立設されている。なお、このガイドピン64を、下方に位置する建物ユニット10の柱11の上面部にも同様に、下側接合部61に向けて立設しておくことが好ましい。これにより、下方の柱11の上面部と、下側接合部61との接合の際に、位置決めする手間を省くことが可能となる。
【0035】
かかる嵩上げ部材6の下側接合部61および上側接合部62は、平板状のシアプレートからなり、これら下側接合部61および上側接合部62間に配設されるスチフナ63,63は、上方および下方に位置する柱11…と略同様の正方形筒状に形成されている。また、下側接合部61および上側接合部62は、下階F1側および上階F2側において、それぞれ水平方向に隣り合う二つの建物ユニット10,10の隣接する柱11,11における下面部(柱頭接合部材18,18)間および上面部(柱脚接合部材19,19)間を覆うように、これら柱頭接合部材18,18および柱脚接合部材19,19に対応した横長形状で形成されている。
【0036】
そして、下側接合部61は、下階F1側において水平方向に隣接して配置される建物ユニット10,10の柱11,11の上端部に設けられる柱頭接合部材18,18に対し、当該柱頭接合部材18,18にそれぞれ設けられるガイドピン64,64によって案内されることにより、所定の部位としてのスチフナ63,63がこれら柱11,11の直上となる位置に位置決めされた状態で締結ボルト65等によって接合される。また、上側接合部62は、上階F2側において水平方向に隣接して配置される建物ユニット10,10の柱11,11の下端部に設けられる柱脚接合部材19,19に対し、当該上側接合部62に設けられるガイドピン64,64によって案内されることにより、所定の部位としてのスチフナ63,63がこれら柱11,11の直下となる位置に位置決めされた状態で締結ボルト65等によって接合される。
【0037】
従って、嵩上げ部材6は、下階F1側において水平方向に隣接する隣接する建物ユニット10,10同士および、上階F2側において水平方向に隣接する建物ユニット10,10同士を、それぞれ当該水平方向に連結すると共に、これら下階F1側の建物ユニット10,10および、上階F2側の建物ユニット10,10を上下方向に連接するようになっている。換言すれば、一つの嵩上げ部材6によって、下階F1側および上階F2側のそれぞれで水平方向に二つずつ隣接する建物ユニット10,10、10,10の計四つの建物ユニット10…の上下左右に隣接する柱11…同士を水平方向および垂直方向の双方で同時に連結することが可能となっている。
しかも、このように下方の柱11,11の上面部(柱頭接合部材18,18)および上方の柱11,11の下面部(柱脚接合部材19,19)と接合された下側接合部61および上側接合部62の間に、下方の柱11,11の直上および上方の柱11,11の直下に位置するスチフナ63,63が立設されているので、上下に配置された建物ユニット10,10、10,10間の連結部分において十分な剛性を発揮し得るようになっている。従って、建物本体2における下階F1側の建物ユニット10…と、上階F2側の建物ユニット10…との間の剛性を高い状態で維持することが可能となる。
【0038】
ここで、
図1および
図5に示すように、これら下階F1側に配置された建物ユニット10…と、上階F2側に配置された建物ユニット10…との間には、嵩上げ部材6が介在されることによって、当該上下に位置する建物ユニット10…,10…間の天井懐21が、この嵩上げ部材6を介在する分嵩上げされている。その結果、当該天井懐21に、従来のような比較的狭い天井懐よりも広い所定の空間SPが形成されている。そして、本実施形態のユニット式建物1では、この広く形成された所定の空間SPに、上述した建物本体2に備えられる空調装置5の各種設備が配設されるようになっている。
【0039】
具体的に、空調装置5は冷暖房機能や除湿機能、空気清浄機能等を有し、少なくとも装置本体51と、装置本体51と屋内の各室内空間4同士を連通する複数の給気ダクト52と、これら給気ダクト52に接続され、一つの給気ダクト52を複数の配管(給気ダクト52…)へと分岐するための分岐チャンバー53と、給気ダクト52を介して装置本体51と連通され、各室内空間4(下階F1の部屋4aや上階F2の部屋4bなど)に向けて開口して配設されるダクト吹出し部54とを備えている。この分岐チャンバー53は、断面台形状をなしており、給気ダクト52内を通る流体(空気)が速度低下しないように流体抵抗が少ない内部形状で形成されている。この場合、空調装置5は、屋内における各室内空間4…の空気を循環させながら、適宜、温度調節や空気清浄を行う環気機能を有していることが好ましい。
このように、空調装置5を備えることにより、本実施形態のユニット式建物1は、図示省略する窓等以外の環気手段を備えることとなるので好ましい。換言すれば、構造上、窓等が設けることができない場合に、当該空調装置5を環気手段として機能させることができるようになっている。
【0040】
ここで、本実施形態のユニット式建物1において、下階F1の部屋4aは壁Wによって区画された廊下41を備えている。廊下41は、部屋ではなく、かつ下階F1の部屋4aへと至る通路を構成する部分となる。つまり、下階の部屋4aは当該廊下41に臨んで配置されることになり、当該廊下41を介して下階F1の他の部屋(不図示)や上階F2へ至る階段(不図示)などと接続されることになる。また、廊下41には、当該廊下41の空気を装置本体51へ取り込むための環気手段55が設けられている。すなわち、例えば換気扇や換気ガラリ等が挙げられる。この環気手段55は、環気ダクト56を介して装置本体51と連通しており、室内空間4の空気を装置本体51へ取り込み循環させることが可能となっている。加えて、本実施形態の場合、壁Wの上方に当該上方から天井にかけて開口する開口部W1が形成されている。すなわち、欄間に相当する部位に開口部W1が形成されている。
【0041】
さらに、下階F1には、廊下41に隣接して収納スペースKSが設けられている。この収納スペースKSは、下階F1の部屋4aよりも天井高が低く構成されており、例えば、0.8m〜1.4m程度の天井高で形成されている。そして、この収納スペースKSの上方には、空調装置5の装置本体51が配設されている。換言すれば、下階F1の建物ユニット10内に配設された装置本体51の下方が、収納スペースKSとなっている。これにより、建物ユニット10内の水平方向において装置本体51と収納スペースKSを同一の領域に配置可能となるため、当該下階F1に配設された建物ユニット10内における装置本体51の設置スペースに無駄がなく、その床面積を有効活用できるようになっている。
しかも、装置本体51を下階F1の建物ユニット10内に配設するため、従来のように、小屋裏空間31に配設する場合と比較して、当該小屋裏空間31に装置本体51の占領スペースが必要ない分、小屋裏空間31の領域を広く確保することが可能となっている。このとき、小屋裏空間31に装置本体51の設置スペースが不要となるため、屋根面が略平坦な陸屋根を採用するのに適している。また、装置本体51を建物ユニット10内に配設するため、当該建物ユニット10に予め外装材(不図示)を取り付けておく艤装も可能である。
【0042】
なお、かかる装置本体51が小屋裏空間31に配設される場合は、切妻形状の屋根3のような勾配屋根を採用することが好ましい。このとき、当該装置本体51の上方のスペースを収納スペース等に利用することで、当該装置本体51の上方のスペースを有効活用することが可能となる。
【0043】
本実施形態のユニット式建物1の場合、かかる各種設備の一つである給気ダクト52などの各種配管を配置するためのダクトスペースDSは、上述した所定の空間SPに沿って水平方向に延在するように配置されると共に、当該所定の空間SPを介して建物本体2の下階F1と上階F2とに配置される建物ユニット10,10間の上下方向に延在するように配置されている。これは、装置本体51が下階F1の室内空間4(下階F1の部屋4a)側に配置され、上階F2の室内空間4(上階F2の部屋4b)において、ダクト吹出し54が天井側に設けられている場合の配置態様である。
【0044】
すなわち、上階F2の部屋4bにおいて、ダクト吹出し54が天井側に設けられている場合、装置本体51とダクト吹出し54とを連通する給気ダクト52を、下階F1から上階F2へと取り回す必要がある。そのため、かかる給気ダクト52は、所定の空間SPを介して上下に配置される建物ユニット10,10間に、上下方向に延在するように配置されている。より詳細には、
図5に示すように、このダクトスペースDSのうち上下に延在するダクトスペースDSは、本実施形態の場合、建物本体2における外方側に配置されている。つまり、下階F1に配置された建物ユニット10において、ダクトスペースDSは、外方側に位置する一方の短辺天井梁12bと、当該短辺天井梁12bに隣接する天井小梁14との間に配置されている。また、上階F2に配置された建物ユニット10において、ダクトスペースDSは、外方側に位置する一方の短辺床梁13bと、当該短辺床梁13bに隣接する床根太16との間に配置されている。
【0045】
なお、ユニット式建物1における複数の室内空間4(下階F1の部屋4a,上階の部屋4bなど)は、リビングルームやダイニングルーム、寝室、子供部屋等のような居室であってもよいし、その他の浴室や洗面所、納戸等の居室ではない部屋であってもよい。
また、ここでは図示省略するが、これら複数の室内空間4(下階F1の部屋4a,上階の部屋4bなど)のそれぞれには、屋外に面する壁に窓が設けられており、必要に応じて屋外から採風・採光できるようになっている。
【0046】
ところで、上述したように、本実施形態のユニット式建物1では、下階F1側に配置された建物ユニット10…と、上階F2側に配置された建物ユニット10…との間に嵩上げ部材6が介在されることによって、上下に位置する建物ユニット10…,10…間の天井懐21に、従来のような比較的狭い天井懐よりも広い所定の空間SPが形成されている。そして、この所定の空間SPには、空調装置5に用いられる給気ダクト52や分岐チャンバー53、環気ダクト56などの水平方向に延在して配置される各種設備のうち、下階F1側に配置される各種設備が配設されるようになっている。このとき、上階F2側に配置される給気ダクト52や分岐チャンバー53、環気ダクト56などの水平方向に延在して配置される各種設備は、小屋裏空間31に配設されている。
【0047】
加えて、本実施形態のユニット式建物1の場合、
図6および
図7(a),(b)に示すように、下階F1および上階F2の各室内空間4(下階F1の部屋4a,上階F2の部屋4bなど)を形成する建物ユニット10の天井部には、ダクト吹出し部54を形成するための枠部8が取り付けられている。この枠部8は、建物ユニット10の短辺天井梁12bと、当該短辺天井梁12bの長辺方向に隣接する天井小梁14との間や、天井小梁14,14間などの短辺方向の各梁間や梁に取り付けられる野縁との間に配置される。
【0048】
具体的に、枠部8は
図8および
図9に示すように、一対の縦枠81,81と、これら一対の縦枠81,81間に架設される一対の横枠82,82とを有し、井桁状に形成されている。また、一対の縦枠81,81の少なくともいずれか一方には、枠部8が配設される位置に応じて、当該位置における短辺天井梁12bと天井小梁14との間の寸法(または、天井小梁14,14間の寸法)に対し、自身の縦枠81,81間の寸法を合わせるように寸法調整するための調整材83a,83bが適宜取り付け可能になっている。
なお、この枠部8は、予め工場にて、調整材83a,83bを取り付けた状態で出荷しても良いし、枠部8と調整材83a,83bとをセットにして出荷し、現場にて適宜調整するようにしても良い。
【0049】
図6および
図7(a),(b)に戻って、本実施形態の場合、枠部8はダクトスペースDSとは反対側に位置する他方の短辺天井梁12bに取り付けられた際野縁7と、それに対して長辺方向に所定間隔で隣接する天井小梁14との間に配置され、それぞれに対して縦枠81,81が取り付けられる。この短辺小梁12bには、本実施形態のように、当該短辺小梁12bより上下方向の寸法が短く、その短辺方向の長さが略等しい角材などからなる際野縁7が取り付けられている場合がある。そのため、枠部8は、この際野縁7と天井小梁14との間に、必要に応じて調整材83bを介在して寸法を調整した状態で配設される。
【0050】
この場合、天井小梁14と縦枠81との間には、配置された短辺天井梁12b,天井小梁14間の寸法に応じた調整材83bが介在されており、これにより、取付位置における寸法調整が行われている。このようにして取り付けられた枠部8には、下方に位置する室内側にダクト吹出し部54が取り付けられ、上方に位置する室外側の横枠82,82間に給気ダクト52を取り付けるための箱形等の形状をなすダクトケースDKが取り付けられる。
【0051】
ところで、枠部8は取り付け前の状態において、短辺天井梁12b,天井小梁14間(または、天井小梁14,14間)を、これら梁に沿ってスライド移動させることが可能となっている。また、枠部8自体が井桁状をなしていることから、横枠82,82間に配置されるダクトケースDKも、これら横枠82,82間をスライド移動させることが可能となっている。これにより、室内空間4におけるダクト吹出し部54の取付位置は、任意に変更できるようになっている。従って、例えば室内空間4において、天井部に配置する室内照明の取付位置に変更が生じることに伴って、ダクト吹出し部54の取付位置に変更が生じた場合などにも対応可能となっている。
【0052】
このようにして、短辺小梁12bと天井小梁14との間に、際野縁7や調整材83bを介して枠部8を取り付けることにより、建物ユニット10による各室内空間4(下階F1の部屋4a,上階F2の部屋4bなど)の天井部に当該枠部8を用いて空調装置5のダクト吹出し部54を容易に配設することが可能となっている。
このとき、ダクト吹出し部54において給気ダクト52が枠部8に取り付けられるので、当該給気ダクト52を短辺小梁12bと天井小梁14との間(その他の天井小梁14…間を含む)に確実に固定することができるようになっている。しかも、枠部8は井桁状に形成されているので、短辺小梁12bと天井小梁14との間(天井小梁14…間を含む)の剛性を高めることも可能である。
【0053】
このようにして、ユニット式建物1では、空調装置5の給気ダクト52や分岐チャンバー53、環気ダクト56などの水平方向に延設される各種設備を、上下の建物ユニット10…,10…間に形成された所定の空間SPを利用して配設可能となっている。これにより、従来のように、当該各種設備を設置するために、天井梁12(より具体的には、天井小梁14…を含む)や床梁13(より具体的には、床根太16…を含む)を貫通する挿通孔を設ける必要がない。よって、建物ユニット10の耐力を低下させることなく、簡易な構造で給気ダクト52や分岐チャンバー53、環気ダクト56などの各種設備を配置する設置スペースを確保可能としている。
【0054】
しかも、このユニット式建物1では、上下に配置される建物ユニット10…,10…間に形成される所定の空間SPを、下階F1の天井収納や上階F2の床下収納などの収納スペースとして利用すれば、建物内部に設けられる収納空間を増やすことも可能である。
【0055】
さらに、上下の建物ユニット10…,10…は、それぞれ平面寸法をモジュール化して共通とされており、上下に対向配置される柱11…,11…間に嵩上げ部材6を介在させて連結するという簡単な作業で、これら上下の建物ユニット10…,10…間に所定の空間SPを形成可能となっている。このため、建築現場における作業が煩雑になることを未然に回避することも可能となっている。また、空調装置5のメンテナンス時においても、上階F2の建物ユニット10側から床下へアクセスするか、下階F1の建物ユニット10側から天井懐21にアクセスすればメンテナンス作業を行うことが可能なため、当該空調装置5に対するメンテナンス作業の簡易化を図ることも可能である。
【0056】
なお、本実施形態のユニット式建物1の場合、上述のような天井懐21に形成された所定の空間SPに、遮音部材が配設されていることが好ましい。この場合、下階F1に配置される建物ユニット10…と、上階F2に配置される建物ユニット10…との間の天井懐21に形成された所定の空間SPが、従来の天井懐よりも広い空間になっており、この広い所定の空間SPに遮音部材が配設されているので、当該上下の建物ユニット10…,10…間における空調装置5や各室内空間4から発せられる音(騒音)が、他の室内空間4へと伝わるのを抑制する抑制力をより一層強化することも可能となる。よって、上階F2側の床を遮音床として利用することも可能となる。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態のユニット式建物1では、上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…間の領域に、嵩上げ部材6によって拡張される所定の空間SPが形成され、当該所定の空間SPに、空調装置5の各種設備(例えば、給気ダクト52,分岐チャンバー53,環気ダクト56など)が配設されるので、当該空調装置5の各種設備を、上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…間に形成された所定の空間SPを利用して配置できる。すなわち、各種設備を配置するスペースを確保できる。しかも、上階F2の建物ユニット10…を嵩上げ部材6によって単に嵩上げするだけでスペースを確保できるので、簡易な構造でスペースの確保が可能となる。
また、下がり天井部を形成する必要が無いので、建物ユニット10を通常の高さよりも高くする必要が無い。よって、建物ユニット10の耐力低下を防げる。
【0058】
このとき、上下に配置される建物ユニット10…,10…間に形成される所定の空間SPを、下階F1の天井収納や上階F2の床下収納などの収納スペースとして利用すれば、建物内部に設けられる収納空間を増やすこともできる。
【0059】
さらに、上下の建物ユニット10…,10…は、それぞれ平面寸法をモジュール化して共通とされており、上下に対向配置される柱11…,11…間に嵩上げ部材6を介在させて連結するという簡単な作業で、これら上下の建物ユニット10…,10…間に所定の空間SPを形成できるので、建築現場における作業が煩雑になることを未然に回避できる。また、空調装置5のメンテナンス時においても、上階F2の建物ユニット10側から床下へアクセスするか、下階F1の建物ユニット10側から天井懐21にアクセスすればメンテナンス作業が行えるので、当該空調装置5に対するメンテナンス作業の簡易化を図ることもできる。
【0060】
かくして、ユニット式建物1を構築する建物ユニット10…の耐力を低下させることなく、上下階F1,F2に配置される建物ユニット10…,10…間の領域に、各種設備(給気ダクト52や分岐チャンバー53、環気ダクト56など)を配置する設置スペース(所定の空間SP)を、簡易な構造で確保することができる。
【0061】
また、嵩上げ部材6の下側接合部61を柱11,11の上面部(柱頭接合部材18,18)に当接して接合すると共に、上側接合部62を柱11,11の下面部(柱脚接合部材19,19)に当接して接合するという簡単な構成で、上下に位置する建物ユニット10…,10…同士を連結することができる。このとき、嵩上げ部材6は、下側接合部61および上側接合部62を、これらに対応する下方の柱11,11の上面部(柱頭接合部材18,18)および上方の柱11,11の下面部(柱脚接合部材19,19)に当接して、例えば締結ボルト65のような接合部材等によって接合すれば良いため、建物ユニット10…の柱11…に接合のための特別な加工を施す必要はない。
そして、このように下方の柱11,11の上面部(柱頭接合部材18,18)および上方の柱11,11の下面部(柱脚接合部材19,19)と接合された下側接合部61および上側接合部62の間に、下方の柱11,11の直上および上方の柱11,11の直下に位置するスチフナ63,63が立設されているので、上下階F1,F2に配置された建物ユニット10…,10…間の連結部分において十分な剛性を発揮できる。従って、建物本体2における上下階F1,F2の建物ユニット10…,10…間の剛性を高い状態で維持できる。
【0062】
また、従来、小屋裏空間31などの建物ユニット10による室内空間4以外に配設されていた空調装置5の装置本体51を建物ユニット10内に配設することで、小屋裏空間31などの室内空間4(下階F1の部屋4a,上階F2の部屋4bなど)以外における装置本体51の占領スペースを開放でき、その分、当該装置本体51が占領していた設置スペースを有効活用できる。このとき、小屋裏空間31に装置本体51の設置スペースが不要となるため、屋根面が略平坦な陸屋根を採用するのに適している。しかも、建物ユニット10内において装置本体51の設置作業やメンテナンス作業を行うことができるので、作業効率を格段に向上させることもできる。
【0063】
さらに、建物ユニット10内に配設された装置本体51の下方が収納スペースKSになっているので、建物ユニット10内の水平方向において装置本体51と収納スペースKSを同一の領域に配置でき、建物ユニット10内における装置本体51の設置スペースに無駄がなく、その床面積を有効活用できる。
【0064】
その上、下階F1に配置される建物ユニット10…と、上階F2に配置される建物ユニット10…との間の天井懐21に形成された所定の空間SPが、従来の天井懐よりも広い空間になっており、この広い所定の空間SPに遮音部材が配設されているので、当該上下の建物ユニット10…,10…間における空調装置5や各室内空間4から発せられる音(騒音)が、他の室内空間4へと伝わるのを抑制する抑制力をより一層強化できる。よって、上階F2側の床を遮音床として利用できる。
【0065】
しかも、平行に配置された複数の天井小梁14…間に井桁状の枠部8が設けられているので、この枠部8を用いて空調装置5のダクト吹出し部54を配設することができる。このとき、ダクト吹出し部54を枠部8に取り付けることで、天井小梁14…間に確実に固定することができる。しかも、枠部8は井桁状に形成されているので、天井小梁14…間の剛性を高めることもできる。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0067】
例えば、上述した実施形態では、空調装置5の給気ダクト52や分岐チャンバー53、環気ダクト56などの水平方向に延在して配置される各種設備のうち、下階F1側に用いられる各種設備を所定の空間SPに配設するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限ることはない。すなわち、例えば、
図1との対応部分に同一符号を付した
図10に示すように、上述した実施形態において、小屋裏空間31に配設された、空調装置5の上階F2側に用いられる給気ダクト52や分岐チャンバー53、環気ダクト56などの水平方向に延在して配置される各種設備を、下階F1側に用いられる各種設備とまとめて前記所定の空間SPに集中配置するようにしても良い。
【0068】
この場合、ユニット式建物1Aは、上述したユニット式建物1(
図1参照)において建物本体2の下階F1側と上階F2側とで、それぞれ小屋裏空間31や天井懐21に配設していた空調装置5の各種配管(給気ダクト52や分岐チャンバー53)を、これら上下階F1,F2に配置された建物ユニット10…,10…間における所定の空間SPにまとめて(集中させて)配設するようにした。このため、上階F2側の小屋裏空間31などに配設していた給気ダクト52や分岐チャンバー53などの各種配管の設置スペースが不要となる。よって、その分、当該上階F2側の小屋裏空間31などのスペースを、他の目的で使用するなどして有効活用できる。このとき、小屋裏空間31に空調装置5の各種配管(給気ダクト52や分岐チャンバー53)の設置スペースが不要となるため、屋根面が略平坦な陸屋根3Aを採用するのに適している。また、空調装置5の各種配管(給気ダクト52や分岐チャンバー53)が1箇所に纏まった状態で集中配置されるので、メンテナンス作業が容易になる利点も備えることができる。
【0069】
しかも、上階F2の建物ユニット10…に、所定の空間SPに配設された空調装置5の上階F2側に用いられる給気ダクト52と連通する床吹出し部57を設けるようにすれば、天井部にダクト吹出し部54を設ける必要がなく、空調装置5のメンテナンス時において、上階F2の建物ユニット10側から床下の所定の空間SPへアクセスするだけでメンテナンス作業が行えるので、当該空調装置5に対するメンテナンス作業をより一層簡易化することができる。