(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パルスシーケンスの実行により撮像領域から核磁気共鳴信号を収集する信号収集部を有し、前記核磁気共鳴信号に基づいて画像データを再構成する磁気共鳴イメージング装置であって、
アンテナを含むと共に、ラーモア周波数とは異なる周波数の電磁波を前記アンテナによって検出し、前記ラーモア周波数よりも所定値以上低い周波数が検出された場合に、異常を示す判定信号を出力する異常検出部と、
前記異常を示す前記判定信号が出力された場合に、前記信号収集部の動作を停止させるか、又は、異常の通知を実行するシステム制御部と
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、MRI装置及びMRI方法の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
<本実施形態の構成>
図1は、本実施形態におけるMRI装置10の全体構成の一例を示すブロック図である。ここでは一例として、MRI装置10の構成要素を寝台ユニット20、ガントリ30、制御装置40の3つに分けて説明する。
【0013】
第1に、寝台ユニット20は、寝台21と、天板22と、寝台21内に配置される天板移動機構23とを有する。天板22の上面には、被検体Pが載置される。また、天板22内には、被検体PからのMR信号を検出する受信RFコイル24が配置される。さらに、天板22の上面には、MR信号を受信する装着型のRFコイル装置100が接続される接続ポート25が配置される。RFコイル装置100は、MRI装置10の一部として捉えてもよいし、MRI装置10とは別個として捉えてもよい。
【0014】
寝台21は、天板22を水平方向(装置座標系のZ軸方向)に移動可能に支持する。天板移動機構23は、天板22がガントリ30外に位置する場合に、寝台21の高さを調整することで、天板22の鉛直方向の位置を調整する。また、天板移動機構23は、天板22を水平方向に移動させることで天板22をガントリ30内に入れ、撮像後には天板22をガントリ30外に出す。
【0015】
第2に、ガントリ30は、例えば円筒状に構成され、撮像室に設置される。ガントリ30は、静磁場磁石31と、シムコイルユニット32と、傾斜磁場コイルユニット33と、RFコイルユニット34とを有する。
【0016】
静磁場磁石31は、例えば超伝導コイルであり、円筒状に構成される。静磁場磁石31は、後述の制御装置40の静磁場電源42から供給される電流により、撮像空間に静磁場を形成する。撮像空間とは例えば、被検体Pが置かれて、静磁場が印加されるガントリ30内の空間を意味する。なお、静磁場電源42を設けずに、静磁場磁石31を永久磁石で構成してもよい。
【0017】
シムコイルユニット32は、例えば円筒状に構成され、静磁場磁石31の内側において、静磁場磁石31と軸を同じにして配置される。シムコイルユニット32は、後述の制御装置40のシムコイル電源44から供給される電流により、静磁場を均一化するオフセット磁場を形成する。
【0018】
傾斜磁場コイルユニット33は、例えば円筒状に構成され、シムコイルユニット32の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット33は、X軸傾斜磁場コイル33xと、Y軸傾斜磁場コイル33yと、Z軸傾斜磁場コイル33zとを有する。
【0019】
本明細書では、特に断りのない限り、X軸、Y軸、Z軸は装置座標系であるものとする。ここでは一例として、装置座標系のX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、鉛直方向をY軸方向とし、天板22は、その上面の法線方向がY軸方向となるように配置される。天板22の水平移動方向をZ軸方向とし、ガントリ30は、その軸方向がZ軸方向となるように配置される。X軸方向は、これらY軸方向、Z軸方向に直交する方向であり、
図1の例では天板22の幅方向である。
【0020】
X軸傾斜磁場コイル33xは、後述のX軸傾斜磁場電源46xから供給される電流に応じたX軸方向の傾斜磁場Gxを撮像領域に形成する。同様に、Y軸傾斜磁場コイル33yは、後述のY軸傾斜磁場電源46yから供給される電流に応じたY軸方向の傾斜磁場Gyを撮像領域に形成する。同様に、Z軸傾斜磁場コイル33zは、後述のZ軸傾斜磁場電源46zから供給される電流に応じたZ軸方向の傾斜磁場Gzを撮像領域に形成する。
【0021】
そして、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groは、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzの合成により、任意の方向に設定可能である。
【0022】
上記撮像領域は、例えば、1画像又は1セットの画像の生成に用いられるMR信号の収集範囲の少なくとも一部であって、画像となる領域である。撮像領域は例えば、撮像空間の一部として装置座標系で3次元的に規定される。例えば折り返しアーチファクトを防止するために、画像化される領域よりも広範囲でMR信号が収集される場合、撮像領域はMR信号の収集範囲の一部である。一方、MR信号の収集範囲の全てが画像となり、MR信号の収集範囲と撮像領域とが合致する場合もある。
【0023】
RFコイルユニット34は、例えば円筒状に構成され、傾斜磁場コイルユニット33の内側に配置される。RFコイルユニット34は、例えば、RFパルスの送信及びMR信号の受信を兼用する全身用コイルや、RFパルスの送信のみを行う送信RFコイルを含む。
【0024】
第3に、制御装置40は、異常検出部41と、静磁場電源42と、シムコイル電源44と、傾斜磁場電源46と、RF送信器48と、RF受信器50と、シーケンスコントローラ58と、演算装置60と、入力装置72と、表示装置74と、記憶装置76とを有する。
【0025】
異常検出部41は、ボルトの締結不良や配線の接続不良などのハードウェア的な故障から生じる放電を電磁波として検出する。検出の原理については後述する。
【0026】
傾斜磁場電源46は、X軸傾斜磁場電源46xと、Y軸傾斜磁場電源46yと、Z軸傾斜磁場電源46zとを有する。X軸傾斜磁場電源46x、Y軸傾斜磁場電源46y、Z軸傾斜磁場電源46zは、傾斜磁場Gx、Gy、Gzを形成するための各電流を、X軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zにそれぞれ供給する。
【0027】
RF送信器48は、シーケンスコントローラ58から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすラーモア周波数のRF電流パルスを生成し、これをRFコイルユニット34に送信する。このRF電流パルスに応じたRFパルスが、RFコイルユニット34から被検体Pに送信される。
【0028】
RFコイルユニット34の全身用コイル、受信RFコイル24は、被検体P内の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を検出し、検出されたMR信号は、RF受信器50に入力される。
【0029】
RF受信器50は、全身用コイル、受信RFコイル24やRFコイル装置100により受信されたMR信号に所定の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化されたMR信号の複素データである生データを生成する。RF受信器50は、MR信号の生データを演算装置60(の画像再構成部62)に入力する。
【0030】
シーケンスコントローラ58は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50の駆動に必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源46に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。シーケンスコントローラ58は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、傾斜磁場Gx、Gy、Gz及びRFパルスを発生させる。
【0031】
演算装置60は、システム制御部61と、システムバスSBと、画像再構成部62と、画像データベース63と、画像処理部64とを有する。
【0032】
システム制御部61は、本スキャンの撮像条件の設定、撮像動作及び撮像後の画像表示において、システムバスSB等の配線を介してMRI装置10全体のシステム制御を行う。上記撮像条件とは例えば、どの種類のパルスシーケンスにより、どのような条件でRFパルス等を送信し、どのような条件で被検体PからMR信号を収集するかを意味する。撮像条件の例としては、撮像空間内の位置的情報としての撮像領域、フリップ角、スライス数、撮像部位、パルスシーケンスの種類などが挙げられる。
【0033】
上記撮像部位とは、例えば、頭部、胸部、腹部などの被検体Pのどの部分を撮像領域として画像化するかを意味する。
【0034】
上記「本スキャン」は、T1強調画像などの、目的とする診断画像の撮像のためのスキャンであって、位置決め画像用のMR信号収集のスキャンや、較正スキャンを含まないものとする。スキャンとは、MR信号の収集動作を指し、画像再構成を含まないものとする。較正スキャンとは例えば、本スキャンの撮像条件の内の未確定のものや、画像再構成処理や画像再構成後の補正処理に用いられる条件やデータを決定するために、本スキャンとは別に行われるスキャンを指す。較正スキャンの例としては、本スキャンでのRFパルスの中心周波数を算出するシーケンスなどがある。プレスキャンは、較正スキャンの内、本スキャン前に行われるものを指す。
【0035】
また、システム制御部61は、撮像条件の設定画面情報を表示装置74に表示させ、入力装置72からの指示情報に基づいて撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。また、システム制御部61は、撮像後には、生成された表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
入力装置72は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
【0036】
画像再構成部62は、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数に応じて、RF受信器50から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。k空間とは、周波数空間の意味である。
画像再構成部62は、k空間データに2次元又は3次元のフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで、被検体Pの画像データを生成する。画像再構成部62は、生成した画像データを画像データベース63に保存する。
【0037】
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置76に保存する。
【0038】
記憶装置76は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像条件や被検体Pの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
【0039】
なお、演算装置60、入力装置72、表示装置74、記憶装置76の4つを1つのコンピュータとして構成し、例えば制御室に設置してもよい。
また、上記説明では、MRI装置10の構成要素をガントリ30、寝台ユニット20、制御装置40の3つに分類したが、これは一解釈例にすぎない。例えば、天板移動機構23は、制御装置40の一部として捉えてもよい。
【0040】
或いは、RF受信器50は、ガントリ30外ではなく、ガントリ30内に配置されてもよい。この場合、例えばRF受信器50に相当する電子回路基盤がガントリ30内に配設される。そして、受信RFコイル24等によって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号は、当該電子回路基盤内のプリアンプで増幅され、デジタル信号としてガントリ30外に出力され、画像再構成部62に入力される。ガントリ30外への出力に際しては、例えば光通信ケーブルを用いて光デジタル信号として送信すれば、外部ノイズの影響が軽減されるので望ましい。
【0041】
<本実施形態の原理>
ボルトの締結不良や、コネクタ同士の嵌め合わせが緩まったりすることで、配線の接続不良が発生すると、電流の経路において、遮断部分或いは極めて電流が流れにくい部分が発生する。このような接続不良の箇所に電流が流れている場合、或いは、接続不良の箇所に電圧が印加されている場合、放電が発生する。1回の放電現象は、一般には瞬間的に(短時間で)終了する。そして、接続不良の箇所に電流が流れ続ける場合、或いは、接続不良の箇所に電圧が印加され続ける場合、放電現象は断続的に続く。
【0042】
図2は、放電モデルの一例を示すタイミング図である。
図2の縦軸は放電電圧[kV]を示し、横軸は経過時間t[秒]を示す。ここでは一例として、放電により1nsの期間に1kVの電圧変動が発生する場合を示す。
【0043】
図3は、
図2の放電モデルの電圧波形を高速フーリエ変換したシミュレーション結果を示す図である。
図3の縦軸は電圧[mV]を示し、横軸は周波数[Hz]を示す。放電波形は例えば1kHz〜100MHzを含む広い周波数に亘って電圧成分を持つことが
図3から分かる。
【0044】
上記シミュレーション結果によれば、短時間に放電現象が発生する場合、放電電圧は周囲に電磁波として放射されると考えられる。従って、電磁波を観測することで、接続不良による放電の発生を検知できることを本発明者は解明した。
そこで、MRI装置において、この原理に従って接続不良による放電の発生を検知するのに適した周波数について、検討する。
【0045】
ここで、MRIにおいて撮像領域に送信されるRFパルスの中心周波数は、静磁場強度で決まる磁場中心の水素原子のラーモア周波数f0に合致するように、プレスキャンで調整される。しかし、中心周波数が磁場中心の水素原子のラーモア周波数に合致するように調整されても、RFパルスは、ある範囲の周波数成分を有する。これは、あるスライス厚を励起するために、ある範囲の周波数成分を持つRF波(RFパルス)を送信するためである。また、この周波数範囲は、数百kHzに制限される。通常、ラーモア周波数f0のRFパルスを出力するRF送信器48内の高周波増幅器(図示せず)には帯域幅があり、その帯域幅は、数百kHzが通常だからである。
【0046】
MRI画像上のスライス励起範囲は、上記RFパルスとスライス選択方向傾斜磁場Gss等の傾斜磁場パルスを組み合わせて、ラーモア周波数付近のRFパルスが含有する周波数成分の領域を励起することにより実現される。
【0047】
従って、f0±500kHz程度など、f0に近い周波数を観測しても、これがMRI装置から放射される正常な電磁波であるか、放電による異常な電磁波であるかを区別することは困難である。即ち、放電を検出する目的でラーモア周波数f0近辺の周波数を観測することは、適切ではない。そうすると、異常な放電による電磁波の観測周波数としては、上記高周波増幅器の帯域幅にさらにマージンを持たせると、ラーモア周波数f0±1MHzの周波数を避けることが望ましい。
【0048】
次に、放電を検出するためには、ラーモア周波数f0より高い周波数と、ラーモア周波数f0低い周波数のどちらが適切であるかを考える。
【0049】
図4は、5つの放電モデルとして、1ns,10ns,100ns,1μs,10μsの間継続する矩形パルスを示すタイミング図である。
図4において、横軸は共通に経過時間t[μs]を示し、縦軸は放電電圧[kV]を示す。
図4の上段から順に、継続期間が1ns,10ns,100ns,1μs,10μsの矩形パルスをそれぞれ示す。5つの放電モデル共に、放電電圧の振幅は1kVである。
【0050】
図5は、
図4の5つの放電モデルを高速フーリエ変換したシミュレーション結果を示す図である。
図5において、縦軸は相対的な電圧の大きさ[decibel]を示し、横軸は周波数[Hz]を示す。また、
図5において、実線は放電期間10μsの放電モデル、点線は放電期間1μsの放電モデル、二点鎖線は放電期間100nsの放電モデル、太線は放電期間10nsの放電モデル、一点鎖線は放電期間1nsの放電モデルにそれぞれ対応する。
【0051】
図5から分かるように、瞬間的な放電モデルの場合、周波数が高いほど電磁波強度が小さくなる。従って、放電の電磁波の検出周波数としては、ラーモア周波数f0よりも低い周波数を選択する方が望ましいことを、本発明者は上記シミュレーション結果から解明した。
【0052】
次に、異常検出部41の設置箇所、即ち、どこで放電を検出すべきかについて説明する。MRI装置10のガントリ30は、画像にノイズが混入することを防ぐため、シールドルームとして構成された撮像室に設置される。撮像室は、金属で遮蔽されているので外部からのノイズ電磁波が無いが、静磁場磁石31が存在するので静磁場が存在する。
【0053】
磁場の中でX軸、Y軸、Z軸傾斜磁場コイル33x、33y、33zにそれぞれ電流が流れたり、RFコイルユニット34に励起RFパルス用のRFパルス電流が流れたりすると、ローレンツ力が発生する。この力により、ボルト締結部の緩みや、コネクタ接続の緩みなどが生じることで、接続不良による放電が発生する可能性が高い。従って、放電検出は、上記の理由で接続不良の発生確率が高く、且つ、外部からのノイズ電磁波が存在しない撮像室内において実行することが望ましいと考えられる。
【0054】
図6は、
図1の異常検出部41内の放電検出回路の一例を示す回路図である。
図6に示すように、放電検出回路41aは、互いに電磁的に結合された1次巻線WW1及び2次巻線WW2で構成されるトランスTRを有する。トランスTRの1次巻線WW1と、2次巻線WW2との極性は、
図6に示す同極性でも、逆極性でもよい。
【0055】
トランスTRの1次側は、コイルL1と、可変容量コンデンサC1とを有するLC共振回路であり、アンテナとして機能する。1次側の共振周波数がラーモア周波数f0±1MHzの範囲の周波数よりも低い所定の第1周波数となるように、可変容量コンデンサC1の容量値及びコイルL1のインダクタンス値は選択される。
【0056】
トランスTRの2次側では、増幅器AMP1、AMP2と、検波回路DETと、比較器CMPと、基準電圧源BAと、出力端子Toutとが
図6のように配線される。
【0057】
検波回路DETは、増幅器AMP1と、増幅器AMP2との間に挿入され、ダイオードDdと、抵抗Rdと、コンデンサCdとを有する。基準電圧源BAは、所定電圧Vrefを正極側端子から出力する。
増幅器AMP1では、コイルL1及び可変容量コンデンサC1により決定される受信周波数の信号の増幅及びバッファを目的とし、増幅器AMP2は、検波後の直流の増幅及びバッファを目的とする。
【0058】
2次巻線WW2、抵抗Rd、コンデンサCdの各一端側、及び、基準電圧源BAの負極側端子は、共通線に接続される。
【0059】
比較器CMPの+側入力端子には増幅器AMP2の出力電圧が入力され、比較器CMPの−側入力端子には基準電圧源BAからの基準電圧Vrefが入力される。比較器CMPの出力電圧は、判定信号であり、出力端子Toutから出力され、
図1のシステム制御部61に入力される。
【0060】
増幅器AMP2は、入力インピーダンスが大きいので、出力のバッファとして機能する。即ち、入力インピーダンスが低い増幅器の入力側に対してコンデンサCdの他端側が接続されていると、コンデンサCdが放電して、すぐに信号レベルが下がる。しかし、
図6の放電検出回路41aでは、コンデンサCdの他端側が増幅器AMP2の入力端子に接続されている。このため、抵抗Rd及びコンデンサCdによる放電回路によりコンデンサCdの電圧が放電されるので、コンデンサCdの電圧が過剰に放電することはなく、複数回の放電を積分して出力することにより増幅器AMP2の出力電圧レベルが下がりすぎることが防止される。これにより、ノイズによる影響を排除し、放電を検出することができる。
【0061】
接続不良により、放電の電磁波が撮像室で瞬間的且つ断続的に放射され続ける場合を考える。
図5で説明したように、放電で放射される電磁波の周波数範囲は広いので、この電磁波には、1次側の共振周波数(第1周波数)が含まれる。従って、1次側において、電磁波のエネルギーを吸収してLC共振を起こすことで、1次巻線WW1に励磁電流としての交流の1次側電流が瞬間的に流れる。
【0062】
そうすると、2次巻線に交流の誘導電流が流れ、これが増幅器AMP1により増幅され、ダイオードDd及びコンデンサCdにより、ある時間電圧が保持された状態で、増幅器AMP2に入力される。
増幅器AMP2は、ダイオードDdから入力される直流電流を増幅して、これを比較器CMPの+側入力端子に入力する。
【0063】
比較器CMPは、増幅器AMP2の出力電圧が基準電圧Vrefよりも高い期間において正の飽和電圧を出力し、増幅器AMP2の出力電圧が基準電圧Vrefよりも低い期間において負の飽和電圧を出力する。
【0064】
即ち、増幅器AMP2の出力電圧が基準電圧Vrefよりも低い場合、負の飽和電圧が出力される。負の飽和電圧が出力され続けている限り、正常を示す判定信号となる。
一方、増幅器AMP2の出力電圧が基準電圧Vrefよりも高い場合、正の飽和電圧が出力される。正の飽和電圧の出力が断続的に続く場合、異常を示す判定信号(インターロック信号)に該当する。但し、システム制御部61は、正の飽和電圧の出力が瞬間的に1度でもあった場合をインターロック信号として処理してもよい。
【0065】
ここで、放電の電磁波における上記1次側の共振周波数の成分が所定強度α以上である場合に、異常の可能性を示す正の飽和電圧が出力端子Toutから出力されることが望ましい。この所定強度が電磁波としてどの程度であるかは、例えば実験により測定すればよい。
【0066】
具体的には、傾斜磁場電源46と傾斜磁場コイルユニット33とを接続する各ケーブルの接続箇所を緩める、RF送信器48とRFコイルユニット34との接続箇所を緩める等により、意図的に接続不良を発生させ、その状態でMRI装置10を稼働させつつ、電磁波の各周波数成分の強度を計測すればよい。
【0067】
そして、算出された所定強度αの場合に、比較器CMPの+側入力端子への入力電圧が基準電圧Vrefよりも若干大きくなるように、増幅器AMP1、AMP2の各増幅率や、基準電圧Vrefを予め調整すればよい。ここでの「予め」とは、例えば、MRI装置10の据え付け調整時や、MRI装置10の定期点検時など、MRI装置10の稼働前に、という意味である。
【0068】
MRI装置10のスキャンを実行中に、出力端子Toutからインターロック信号が入力された場合、システム制御部61は例えば、MRI装置10のスキャン動作を安全に停止させると共に後述の第1の通知処理を実行する。
MRI装置10がスキャンを実行していないときに出力端子Toutからインターロック信号が入力された場合、システム制御部61は例えば、「放電検出回路に異常の可能性がある」旨の第2の通知処理を行う。スキャンを実行していない場合、高電圧が発生しているとは考えられず、検出回路の誤動作の可能性が高いからである。
【0069】
MRI装置10のスキャン動作に伴って1次側の共振周波数(第1周波数)でのノイズが発生する場合、
図6の放電検出回路41aは、放電を誤検出するおそれがある。誤検出の可能性を低減するためには、複数の周波数において放電を常時検出し、それぞれの周波数において所定強度α以上の電磁波が検出された場合にのみ、インターロック信号を出力する構成が望ましい。
【0070】
図7は、
図1の異常検出部41内の放電検出回路の別の一例を示す回路図である。
図7に示すように、放電検出回路41bは、第1周波数検出部TU1と、第2周波数検出部TU2と、アンドゲートANと、出力端子Toutとを有する。アンドゲートANの出力電圧は、出力端子Toutを介して、判定信号としてシステム制御部61に入力される。
【0071】
第1周波数検出部TU1は、
図6の放電検出回路41aと同様の構成である。即ち、第1周波数検出部TU1は、放電の電磁波における上記第1周波数の成分が所定強度α以上の場合に、比較器CMPから正の飽和電圧を出力し、これをアンドゲートANの一方の入力端子に入力する。
【0072】
第2周波数検出部TU2は、トランスTRの1次側の共振周波数の違いを除いて、第1周波数検出部TU1と同様の構成である。第2周波数検出部TU2のトランスTRの1次側の共振周波数を第2周波数とする。第2周波数は、トランスTRの1次側であるLC回路の可変容量コンデンサC2の容量値と、コイルL2のインダクタンス値により、第1周波数から離れるように、且つ、ラーモア周波数f0よりも低くなるように選択される。
第2周波数検出部TU2は、放電の電磁波における第2周波数の成分が所定強度α以上の場合に、比較器CMPから正の飽和電圧を出力し、これをアンドゲートANの他方の入力端子に入力する。
【0073】
アンドゲートANの双方の入力端子への入力電圧が所定レベル以上の正電圧の場合、アンドゲートANは高レベルの電圧をインターロック信号として出力し、それ以外の場合、アンドゲートANは低レベルの電圧を出力する。低レベルの電圧が出力され続ける限り、正常を示す。
【0074】
ここで、誤検知を防止するためには、第1検波周波数、第2検波周波数をどれくらい離すことが望ましいかを考える。近年のMRI装置において多く使われている静磁場強度が例えば1.5テスラであり、その場合の水素原子のラーモア周波数f0が約64MHzである。ラーモア周波数f0自体が大きな周波数値であるので、ラーモア周波数f0、第1検波周波数、第2検波周波数の三者を大きく離すことができる。そして、これら3つの周波数を大きく離す方が、誤検知を防止し易い。
【0075】
従って、誤検知を確実に防止する一例として、第1検波周波数が第2検波周波数の5倍以上となり、且つ、ラーモア周波数が第1検波周波数の5倍以上となることが望ましい。より好ましくは、第1検波周波数が第2検波周波数の10倍以上となり、且つ、ラーモア周波数が第1検波周波数の10倍以上となることが好ましい。さらに好ましくは、第1検波周波数が第2検波周波数の50倍以上となり、且つ、ラーモア周波数が第1検波周波数の50倍以上となることが好ましく、本実施形態ではそのように選択される。
【0076】
また、本実施形態では
図7の放電検出回路41bによって2つの周波数での観測により放電を検出するが、これは一例に過ぎない。第1周波数検出部TU1と同様の回路構成により第3周波数で共振する第3周波数検出部と、第1周波数検出部TU1と、第2周波数検出部TU2との3つの各出力電圧が共に所定レベル以上の正電圧の場合に、インターロック信号が出力されるように構成してもよい。同様にして、4つ以上の周波数での観測により放電を検出してもよい。
【0077】
図8は、
図1の異常検出部41内のアンテナの設置の一例を示す模式図である。撮像室300内のガントリ30近辺やケーブル近辺において、例えば、
図7の放電検出回路41bにおける各1次側のコイルL1、L2がそれぞれアンテナANT1、ANT2として設置される。
【0078】
各アンテナANT1、ANT2、ANT3は、放電による電磁波の発生源の近くに設置することが望ましい。放電による電磁波の発生源に近い程、電磁波強度が強く、検出し易いからである。
【0079】
アンテナANT1は、ガントリ30の入口側又は奥側における静磁場磁石31の端面において、ループ状のコイルアンテナを設置した例である。ガントリ30の入口側又は奥側の内、傾斜磁場電源46へのケーブルが出ている側の端面にアンテナANT1を設置することが望ましい。その方が、傾斜磁場電源46、傾斜磁場コイルユニット33を接続する配線に放電があった場合に、放電による電磁波の発生源にアンテナANTが近くなるからである。
【0080】
なお、X軸傾斜磁場電源46xへのケーブル、Y軸傾斜磁場電源へのケーブル、Z軸傾斜磁場電源へのケーブルがそれぞれガントリ30の入口側、奥側から出ていれば、いずれかのケーブルの近くでもよい。
【0081】
また、アンテナANT1の設置に関しては、静磁場磁石31とアンテナANT1との間に絶縁体を挟みつつ、静磁場磁石31から適切な距離をおいて設置することが望ましい。これは、静磁場磁石31が金属であるため、アンテナANT1による電磁波検出機能に対する金属の影響を低減することが望ましいからである。
【0082】
アンテナANT2は、RF送信器48からRFコイルユニット34への配線ケーブルの外周の被覆絶縁体に、
図7の放電検出回路41bにおける1次側のコイルL2が巻かれたものである。アンテナANT2については、
図9を用いてさらに詳しく説明する。
【0083】
ここで、
図6、
図7ではコイルL1(L2)と、可変容量コンデンサC1(C2)とが接続された簡単なLC共振回路をアンテナとする放電検出回路41a、41bを述べたが、本実施形態のアンテナは、LC共振回路に限定されるものではない。アンテナとしては例えば、通常のダイポールや、八木−宇田アンテナ(Yagi-Uda Antenna)なども使用可能である。この場合でも、特定の周波数を受信するため、アンテナと増幅器の間に共振回路を持たせるのがよい。
【0084】
図8のアンテナANT3は、八木−宇田アンテナとして撮像室300内に設置されたアンテナである。アンテナANT3を用いる場合、放電検出回路41bにおける1次側部分を、「八木−宇田アンテナ」及び「放電ノイズを受信周波数に共振させる回路」に置き換えればよい。
【0085】
八木−宇田アンテナは、最も後段に反射器、反射器の前段に輻射器(給電部品)、輻射器の前段に導波器の各素子を並べた構造である(図示せず)。導波器は棒状で輻射器よりも短く、反射器は同形状で輻射器よりも長い。八木−宇田アンテナは指向性アンテナであり、その方向は反射器から導波器の方向になる。
【0086】
図9は、
図8のアンテナANT2の詳細を示す模式的斜視図である。
図9に示すように、RF送信器48からRFコイルユニット34への配線ケーブル(distributing cable)CAB1は、導体部CONと、導体部CONを覆う被覆部TRCとを有する。被覆部TRCは、絶縁体で形成される。
【0087】
アンテナANT2は、被覆部TRCの外周に
図7の1次側のコイルL2を巻くことで構成される。従って、アンテナANT2は、配線ケーブルCAB1内の導体部CONを伝導して、導体部CONから放射される放電ノイズを電磁波として検出する。
【0088】
なお、アンテナANT2の設置箇所は、RF送信器48からRFコイルユニット34への配線ケーブルCAB1の外周に限定されるものではない。アンテナANT2は、例えば、
図1の傾斜磁場電源46から傾斜磁場コイルユニット33への配線ケーブルの外周に巻かれてもよい。或いは、アンテナANT2は、シムコイル電源44からシムコイルユニット32への配線ケーブルの外周に巻かれてもよい。
【0089】
前述のように第1周波数検出部TU1と同様の回路構成を4つ以上設けることで、RF送信器48からRFコイルユニット34への配線ケーブルCAB1の外周、傾斜磁場電源46から傾斜磁場コイルユニット33への配線ケーブルの外周、シムコイル電源44からシムコイルユニット32への配線ケーブルの外周、静磁場磁石31の端面にそれぞれ、共振周波数が互いに異なるアンテナを設けてもよい。
【0090】
図10は、
図1の異常検出部41内のアンテナの設置の別の例を示す模式図である。この例では、ガントリ30側の端子台500に対し、X軸傾斜磁場電源46x、Y軸傾斜磁場電源46y、Z軸傾斜磁場電源46zのそれぞれと、X軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zのそれぞれとの間を接続する各配線ケーブルCAB1、CAB2、CAB3が接続される例を示す。
【0091】
図10において、各配線ケーブルCAB1、CAB2、CAB3の先端は、
図9の導体部CONの一端となる圧着端子TERとして形成されている。
【0092】
各圧着端子TERは、端子台500の挿通口504上において、各ネジ502によりネジ止めされる。これにより、挿通口504周囲の導体を介して、各圧着端子TERは端子台500内の配線にそれぞれ接続される。
【0093】
例えば、
図7の放電検出回路41bにおける1次側のコイルL1又はコイルL2が、アンテナANT4として端子台500の周囲に設置される。端子台500は、ネジ502の緩みにより、圧着端子TERと、端子台500内の配線との接触不良が発生する可能性があり、その場合、放電による電磁波が発生する。そのような箇所にコイル状のアンテナANT4が設置されていれば、放電を確実に検出できる。
【0094】
<本実施形態の動作>
図11は、本実施形態におけるMRI装置10の動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、前述した各図を適宜参照しながら、
図11に示すステップ番号に従って、MRI装置10の動作を説明する。
【0095】
[ステップS1]MRI装置10の起動に同期して、システム制御部61(
図1参照)は、MRI装置10の各部に電源オン処理を実行させる。これに同期して、異常検出部41は、放電の検出を開始する。異常検出部41による放電検出は、MRI装置10の電源がオフされるまで、継続的且つ自動的に実行される。放電検出の動作については、
図6、
図7で説明した通りである。
【0096】
ステップS1のようにMRI装置10がスキャンを実行していない期間において、異常検出部41から「異常を示す判定信号」が入力された場合、システム制御部61は、第2の通知処理を実行する。第2の通知処理は、例えば、「放電検出回路41bに異常の可能性がある」旨を表示装置74に文字情報的に表示させることで、放電検出回路41bの異常の可能性を操作者に通知する処理である。MRI装置10がスキャンを実行していない場合、高電圧が発生しているとは考え難く、放電検出回路41bの誤動作の可能性が高いからである。
【0097】
なお、第2の通知処理には、ネットワークケーブルを介してMRI装置10に接続されたサービスセンタ(図示せず)に、放電検出回路41bの異常の可能性を知らせる処理を含めることが望ましい。
ここでは一例として、上記「異常を示す判定信号」とは、瞬間的に1度でも異常検出部41の放電検出回路41bから所定レベル以上の正電圧が入力される場合を含むものとする(ステップS2以降も同様)。
【0098】
但し、接続不良が発生している場合、前述のように瞬間的な放電が断続的に続くと考えられるので、瞬間的な電磁波が断続的に続くと考えられる。従って、本実施形態の変形例として、システム制御部61は、放電検出回路41bから所定レベル以上の正電圧が断続的に複数回入力された場合を「異常を示す判定信号」として処理してもよい。ここでの「複数回」とは、2回でもよいし、3回以上でもよい。
【0099】
第2の通知処理が実行された場合、MRI装置10の動作は終了する(以降も同様)。但し、天板22がガントリ30内にある期間に第2の通知処理が実行された場合、MRI装置10の動作終了前に、以下の処理が実行される。即ち、ガントリ30の各部の動作が安全に停止後、天板移動機構23は、システム制御部61の制御に従って天板22をガントリ30内から出して、寝台21上の所定位置に戻す。
第2の通知処理が実行された場合、操作者は、表示装置74上の通知画面に従って、サービスマンを呼ぶ等の処置を実行できる。
【0100】
「異常を示す判定信号」が入力されない場合、システム制御部61は、入力装置72を介してMRI装置10に対して入力された撮像条件に基づいて本スキャンの撮像条件の一部を設定後、ステップS2に処理を移行する。
【0101】
[ステップS2]システム制御部61は、MRI装置10の各部を制御することで、プレスキャンを実行させる。プレスキャンにより、RFパルスの中心周波数等が設定される。
ステップS2のようにMRI装置10がスキャンを実行している期間において、異常検出部41から「異常を示す判定信号」が入力された場合、システム制御部61は、ステップS6に処理を移行させ、第1の通知処理と共に安全停止処理をMRI装置10に実行させるることで、MRI装置10の動作を終了させる(ステップS4も同様)。
【0102】
上記第1の通知処理は、接続不良の発生を例えば文字情報的に表示装置74に表示させたり、警告音を出力したりすることで、操作者に接続不良を通知する処理である。
ここで、第1の通知処理には、ネットワークケーブルを介してMRI装置10に接続されたサービスセンタ(図示せず)に接続不良の可能性を知らせる処理を含めることが望ましい。
「異常を示す判定信号」が入力されない場合、ステップS3に進む。
【0103】
[ステップS3]システム制御部61は、プレスキャンの実行結果に基づいて、本スキャンの残りの撮像条件を設定する。
「異常を示す判定信号」が入力された場合、前述同様に第2の通知処理が実行されてMRI装置10の動作は終了し、「異常を示す判定信号」が入力されない場合、ステップS4に進む。
【0104】
[ステップS4]ステップS3で確定された本スキャンの撮像条件に基づいて、データ収集が行われる。
具体的には、静磁場電源42により励磁された静磁場磁石31によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源44からシムコイルユニット32に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
【0105】
そして、入力装置72からシステム制御部61に撮像開始指示が入力されると、システム制御部61は、パルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。シーケンスコントローラ58は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、被検体Pの撮像部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイルユニット34からRFパルスを発生させる。
【0106】
このため、被検体P内の核磁気共鳴により生じたMR信号がRFコイル装置100やRFコイルユニット34及び受信RFコイル24により検出されて、RF受信器50に入力される。RF受信器50は、MR信号に前述の処理を施すことでMR信号の生データを生成し、これら生データを画像再構成部62に入力する。画像再構成部62は、MR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。
【0107】
このステップS4のようにMRI装置10がスキャンを実行している期間において、「異常を示す判定信号」が入力された場合、システム制御部61は、ステップS6に処理を移行させ、第1の通知処理及び安全停止処理をMRI装置10に実行させる。
「異常を示す判定信号」が入力されない場合、ステップS5に進む。
【0108】
[ステップS5]画像再構成部62は、k空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース63に保存する。
【0109】
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置76に保存する。この後、システム制御部61は、表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
【0110】
このステップS5の処理の実行期間において「異常を示す判定信号」が入力された場合、前述同様に第2の通知処理が実行されてMRI装置10の動作は終了し、「異常を示す判定信号」が入力されない場合、MRI装置10の一の撮像動作が安全且つ問題なく終了する。
【0111】
[ステップS6]システム制御部61は、MRI装置10の各部を制御することで、第1の通知処理と共に、以下の安全停止処理をMRI装置10に実行させる。
【0112】
具体的には、システム制御部61は、傾斜磁場電源46及びRF送信器48の動作を停止させることで、RFパルスの送信及び傾斜磁場の印加の動作を停止させる。また、システム制御部61は、シムコイル電源44の動作を停止させることで、静磁場を均一に補正するオフセット磁場の印加を停止させる。また、静磁場磁石31が永久磁石ではない場合、システム制御部61は、静磁場電源42の動作を停止させる。
【0113】
このようにガントリ30の各部の動作が安全に停止した後、天板移動機構23は、システム制御部61の制御に従って、天板22をガントリ30内から出して、寝台21上の所定位置に戻す。また、システム制御部61は、「異常を示す判定信号」の入力前にRF受信器50に入力されたMR信号については、所定の処理によりk空間データとして画像再構成部62に保存させる。
【0114】
以上の安全停止処理が実行された場合、操作者は、表示装置74上の接続不良の通知画面に従って、サービスマンを呼ぶ等の処置を実行できる。
以上が本実施形態のMRI装置10の動作説明である。
【0115】
<本実施形態の効果>
このように本実施形態のMRI装置10は、電源のオン期間中(使用中)において、接続不良による放電の発生を自動的且つリアルタイムで検出し、接続不良の通知(第1の通知処理)を自動実行する。また、放電による電磁波がスキャンの実行中に検出される場合、MRI装置10は、スキャンを安全に停止し、天板22を寝台21上の所定位置に戻す。従って、MRI装置10を従来よりもさらに安全に運用することができる。
【0116】
また、本実施形態では、ラーモア周波数よりも低い複数の周波数の電磁波が所定強度α以上で観測された場合に、異常を示す判定信号が出力される。複数の周波数の観測により、放電に依らないノイズの影響を低減できるので、放電の誤検出を防止できる。
【0117】
以上説明した実施形態によれば、ボルトの締結不良や配線の接続不良などのMRI装置のハードウェア的な故障を早期に発見することができる。
【0118】
<本実施形態の補足事項>
[1]上記実施形態では、異常検出部41を1つのユニットとして設ける例を述べた(
図1参照)。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。複数のユニットとして、即ち、複数の異常検出部41を設けてもよい。この場合、少なくともいずれかの異常検出部41から「異常を示す判定信号」が入力された場合、上記通知処理や安全停止処理を実行すればよい。
【0119】
異常検出部41は、前述の理由で少なくとも撮像室に設置することが望ましいが、複数の異常検出部41を設ける場合、撮像室、制御室にそれぞれ設けてもよい。但し、制御室は、シールドルームではなく、ノイズ電磁波が存在するので、制御室に異常検出部41を設ける場合、誤検出を確実に防止することが望ましい。具体的には例えば、5つ以上の離れた周波数において瞬間的な電磁波が何度も検出されたときに異常を示す判定信号が出力されるように、異常検出部41を構成することができる。
【0120】
[2]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
【0121】
ガントリ30内の各構成要素、及び、制御装置40の全体(
図1参照)が、傾斜磁場及びRFパルスの印加を伴って撮像領域からMR信号を収集する機能は、請求項記載の信号収集部の一例である。
傾斜磁場電源46、傾斜磁場コイルユニット33、及び、傾斜磁場電源46と傾斜磁場コイルユニット33とを電気的に接続する配線は、請求項記載の傾斜磁場発生システムの一例である。
【0122】
[3]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。