(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288966
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】指圧力強化器具
(51)【国際特許分類】
A63B 23/16 20060101AFI20180226BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
A63B23/16
A63B69/00 505Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-144593(P2013-144593)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-16078(P2015-16078A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】512051608
【氏名又は名称】カワイチ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508047277
【氏名又は名称】比屋根 吉信
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】河野 剛
(72)【発明者】
【氏名】比屋根 吉信
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−098265(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3136489(JP,U)
【文献】
特表2004−511316(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0103026(US,A1)
【文献】
特開昭62−005348(JP,A)
【文献】
特開2007−000564(JP,A)
【文献】
特開平06−339546(JP,A)
【文献】
実開昭62−012374(JP,U)
【文献】
特開平06−105876(JP,A)
【文献】
特開2008−142495(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0003687(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/16
A63B 21/02−21/055
A63B 69/00
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指、人差し指及び中指が野球ボールを挟持する際に加える指圧力を強化するための指圧力強化器具であって、一端側において枢軸の周りに夫々回動し、開閉自在に備えられた指押え上板及び指押え下板と、該指押え上板と該指押え下板との間に、指押え上板及び指押え下板が開く方向に付勢するように取り付けられたバネ手段とを備え、それにより、親指と人差し指及び中指で上下につまむように該指押え上板と該指押え下板を挟みこんで、指圧力を強化することができ、該バネ手段の取付端部を前記指押え上板及び前記指押え下板に固定するとともに、該取付端部の位置を上記枢軸に近い部位とそれより遠い部位との間で変更可能にする位置変え手段とを備え、それにより必要な該指圧力の強弱を調整できる指圧力強化器具。
【請求項2】
前記指押え上板の上面には、人差し指及び中指が指圧力を加え易くするための2つの指受け凹部が設けられ、前記指押え下板の下面には、親指が指圧力を加え易くするための指受け凹部が設けられている、請求項1に記載の指圧力強化器具。
【請求項3】
前記枢軸よりバネ手段とは反対側に延設された部分において、指先の感覚を高める指感度向上部材が設けられている、請求項1に記載の指圧力強化器具。
【請求項4】
前記指感度向上部材は、指先で回すことができる、回転自在なローラー部材からなる、請求項3に記載の指圧力強化器具。
【請求項5】
前記指感度向上部材は、指先で弾くことができる、凸形状部材からなる、請求項3に記載の指圧力強化器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指の圧力を強化するための器具に関し、特に野球又はソフトボールの投球又は送球の際に、投球(送球)スピードや投球(送球)コントロールの向上につながる指先の圧力の強化や指先の感覚の向上を習得するための指圧力強化器具に関する。
【背景技術】
【0002】
野球又はソフトボールにおいて、投球又は送球の際のボールリリース時の指先の力の強弱や指先の動きは、ボールの速度や回転数に影響を与える。例えば、投球(送球)時に手首のスナップを利かせることで、よりボールに力を伝えることができ、ボールスピードの向上に繋がる。また、ボールの表面に親指、人差し指及び中指の指先(爪)をしっかりと掛けて投げることにより、コントロールに優れ、また様々な変化球を生み出すことができる。しかし投球(送球)の際、リリース直前まで親指、人差し指及び中指でボールを強く挟持し続けることができなければ、所謂“すっぽ抜け”という状態になり、球威が落ちる、狙った所にボールが投げられない、変化球のキレが無いなど、失投やさらには暴投につながることとなる。このように、投球(送球)スピードや投球(送球)コントロールの向上には、正しい投送球フォームを習得するだけでなく、指先の圧力(以下、指圧力とも称する)、特に親指、人差し指及び中指の圧力の強化やこれらの指先の感覚の向上も必要になる。
【0003】
一方、従来より握力を鍛える器具として、巻きバネを利用したグリッパータイプの器具(例えば特許文献1)やボールタイプの器具(例えば特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−91571号公報
【特許文献2】実開平1−126232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで提案されている器具は、片手で握ることによって握力を強化することはできるものの、これらの器具は通常、片手全体で把持して使用する器具であるため、指先の圧力のみを効率よく強化することは難しい。
特に、投球又は送球の際、ボールのスピードやコントロールの向上にあたっては、指先の圧力の強化や、指先の繊細な感覚の制御が重要であり、こうした指先の圧力を効率的に向上できる器具についての提案はなされていない。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、投球(送球)スピードや投球(送球)コントロールの向上につながる指圧力の強化や指先の感覚の向上を、効率的に習得することができる指圧力強化器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、枢着自在に備えられた2枚の板の内側に、それら2枚を開く方向に付勢擦るようにバネを取り付け、この2枚の板を親指と、人差し指及び中指とで、上下につまむように挟み込むことで、指先の圧力を効果的に強化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、親指、人差し指及び中指が野球ボールを挟持する際に加える指圧力
を強化するための指圧力強化器具であって、
一端側において枢軸の周りに夫々回動し、開閉自在に備えられた指押え上板及び指押え下板と、
該指押え上板と該指押え下板との間に、指押え上板及び指押え下板が開く方向に付勢するように取り付けられたバネ手段と、
該バネ手段の取付端部を前記指押え上板及び前記指押え下板に固定するとともに、該取付端部の位置を上記枢軸に近い部位とそれより遠い部位との間で変更可能にする位置変え手段とを備えてなる、指圧力強化器具に関する。
【0009】
前記指圧力強化器具において、指押え上板の上面には、人差し指及び中指が指圧力を加え易くするための2つの指受け凹部が設けられ、また指押え下板の下面には、親指が指圧力を加え易くするための指受け凹部が設けられていることが好ましい。
【0010】
また前記指圧力強化器具には、前記枢軸よりバネ手段とは反対側に延設された部分において、指先の感覚を高める指感度向上部材が設けられていることが好ましい。
前記指感度向上部材は、指先で回すことができる、回転自在なローラー部材からなるものであるか、或いは、指先で弾くことができる、凸形状部材からなるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の指圧力強化器具は、指先の圧力を効果的に強化することができる。また、バネ手段の取付位置を変化させることにより、指先にかかる圧力の強弱を調整することができる。
さらに本発明の指圧力強化器具は、指感度向上部材として、指先で回すことができるローラー部材や、指先で弾くことができる凸形状部材を設けることにより、ローラー部材や凸形状部材に指先を引っ掛け、指先を前後に滑らせたり、凸形状部材に指を掛けて該部材を引っ張ったりすることで、指先の微妙な感覚を向上させることができる。
そして指圧力強化器具によって親指、人差し指及び中指でボールを挟持する力を高めるとともに、親指、人差し指及び中指の指先(爪)をボールの表面にしっかりと掛ける感覚を向上させることができるようになることで、投球(送球)スピードや投球(送球)コントロールを向上させ、さらにはボールの回転数の強弱をコントロールして変化球のキレを向上させることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の指圧力強化器具の一態様を図示する斜視図である。
【
図2】
図2は本発明の指圧力強化器具に設けられた位置変え手段の一例を示す図であり、
図2(a)は指押え上板の上方から位置変え手段を俯瞰した図、
図2(b)は指押え上板の断面図を示すものである。
【
図3】
図3は本発明の指圧力強化器具の使用の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の指圧力強化器具は、一端側において枢軸の周りに夫々回動し、開閉自在に備えられた指押え上板及び指押え下板と、該指押え上板と該指押え下板との間に、指押え上板及び指押え下板が開く方向に付勢するように取り付けられたバネ手段より構成される。
前記指押え上板の上面には、人差し指及び中指が指圧力を加え易くするための2つの指受け凹部が設けられ、前記指押え下板の下面には、親指が指圧力を加え易くするための指受け凹部が設けられていてもよい。これら指受け凹部は、本発明の指圧力強化器具を使用する際、それぞれ親指と人差し指及び中指で、上下に挟みこむように指をあてる部分である。
該指押え上板と該指押え下板との間に取り付けられたバネ手段は、1つのみであっても
2つ以上の複数個が設けられていてもよいが、好ましくは2つ設けられてなる。
本発明の指圧力強化器具は、前記バネ手段の取付端部を前記指押え上板及び前記指押え下板に固定するとともに、該取付端部の位置を上記枢軸に近い部位とそれより遠い部位との間で変更可能にする位置変え手段とを備えてなる。例えば、前記指押え下板(或いは上板)に板を貫通するようにスリットを設け、該スリットを位置変え手段として介することにより、バネ手段の取付端部の位置を変更可能とし、また前記指押え下板(或いは上板)にバネ手段の取付端部を固定可能とすることができる。さらにバネ手段の位置変えを容易とすべく、スリット近傍にバネ溝を設けることもできる。
【0014】
また本発明の指圧力強化器具には、枢軸よりバネ手段とは反対側に延設された部分において、指先の感覚を高める指感度向上部材が設けられていてもよい。
この指感度向上部材には、指先で回すことができる、回転自在なローラー部材や、指先で弾くことができる、凸形状部材を配置させることができる。これらを親指や人差し指、中指の指先で回転或いは弾く(引っ張る)ことにより、指先の感覚の向上につながり、ボールの表面に親指、人差し指及び中指の指先(爪)をしっかりと掛ける感覚を養うことができる。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明を、実施例の指圧力強化器具を示す図を用いて説明するが、本発明は下記に示す態様に限定されるものではない。
【0016】
実施例1:
図1は本発明の指圧力強化器具1の一態様を図示する斜視図である。
図1に示すように、本発明の指圧力強化器具1は、枢軸2の周りに夫々回動し、開閉自在に備えられた指押え上板3及び指押え下板4と、バネ手段5から構成される。バネ手段5は、該指押え上板3と該指押え下板4との間に、指押え上板3及び指押え下板4が開く方向に付勢するように取り付けられてなる。
また前記指押え上板3及び前記指押え下板4には、それぞれ、位置変え手段6としてスリット6aが設けられている。該位置変え手段6は、バネ手段5の取付端部を前記指押え上板3及び前記指押え下板4に固定するとともに、該取付端部の位置を上記枢軸2に近い部位とそれより遠い部位との間で変更可能に設けられてなる。
さらに前記指押え上板3の上面及び前記指押え下板4の下面には、それぞれ、人差し指及び中指が指圧力を加え易くするための2つの指受け凹部3aと、親指が指圧力を加え易くするための指受け凹部4aとが設けられている、
また、前記枢軸2よりバネ手段5とは反対側に延設された部分7には、指先の感覚を高める指感度向上部材として、ローラー部材8及び凸形状部材9が設けられている。ローラー部材8は、ローラー軸の両端が延設された部分7に固定され、回転が可能となるように設置されている。また凸形状部材9は、その略中央部を指先で弾いたり、掴んで引っ張ったりすることができるように設けられてなり、丸で囲われた拡大図に示すように、例えば延説された部分7の一方の面に2つ、他方の面に1つ、それぞれ凸形状部材9が設けられ得る。
【0017】
図2は、前記位置変え手段6の一例を示す図であり、
図2(a)は指押え上板3の上方から位置変え手段6を俯瞰した図であり、
図2(b)は指押え上板3のX−Yにおける断面図を示すものである。
図2(a)に示すように、指押え上板3の上方からみると、スリット6aを介してバネ手段5を覗き見ることができる。
そして
図2(b)の断面図に示すように、本例において位置変え手段6はスリット6aとバネ溝6bから構成される。バネ手段5は、該スリット6aを介してバネ溝6の設けられた方向に従って移動可能となる。
【0018】
図3は、
図1に示す実施例1の指圧力強化器具1の使用の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、本発明の指圧力強化器具1は、前記指押え上板3の上面に設けられた指受け凹部3aと、前記指押え下板4の下面に設けられた指受け凹部4aとを、それぞれ人差し指及び中指と親指に当て、これらの指で指圧力強化器具1を挟み込むようにして指押え上板3及び指押え下板4とを開閉させるように動かすことにより、親指、人差し指及び中指の指圧力を効率的に強化することができる。
またバネ手段5を、位置変え手段6により枢軸2に近い部位とそれより遠い部位に動かすことにより、使用者が保有する指圧力の強弱に応じて、親指、人差し指及び中指にかかる指圧力の強弱を調整できる。
さらに
図3(b)に示すように、前記枢軸2よりバネ手段5とは反対側に延設された部分7において設置されたローラー部材8並びに凸形状部材9は、人差し指や中指、そして親指の指先を用いて、回転させたり、弾くようにして用いる。これにより、指先を前後に引っ張ったり、滑らせたりする微妙な感覚を向上させることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 指圧力強化器具
2 枢軸
3 指押え上板
3a 指受け凹部
4 指押え下板
4a 指受け凹部
5 バネ手段
6 位置変え手段
6a スリット
6b バネ溝
7 延設された部分
8 ローラー部材
9 凸形状部材