(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法において、前記ディレイラ(14,15)の前記所望位置は、少なくとも二つの同軸上の歯車(11,12)の第1の歯車に係合するように伝動チェーン(13)を位置決めする位置であり、前記ディレイラの変数(Qi)の所定値は、前記ディレイラに結合した歯車(11,12)ごとに与えられており、前記ディレイラ(14,15)が前記所望位置にあるかどうかは、前記ディレイラ(14,15)の変数(Qi)の現在値に基づいて判断される、方法。
【背景技術】
【0002】
自転車の伝動システムは、ペダルクランク軸に結合した歯車と後輪ハブに結合した歯車との間に延びるチェーンを含む。ペダルクランク軸および後輪ハブの少なくとも一方が複数の歯車を有し、伝動システムには、ギアシフト装置が設けられる場合、前側のディレイラおよび/または後側のディレイラが設けられる。電子サーボ支援型のギアシフト装置の場合、各ディレイラは、チェーンを歯車間で移動させることによってギア比を変える可動のチェーン案内要素(ケージともいう)と、チェーン案内要素を移動させる電気機械式のアクチュエータとを有する。典型的に、このアクチュエータは、関節型の平行四辺形リンク機構、ラック機構、ウォームねじ機構などのリンク機構を介してチェーン案内要素に接続されたモータ(典型的には、電気モータ)と、ロータまたはロータからチェーン案内要素に至るまでの下流領域に位置する可動部品について位置および/または速度および/または加速度を検出するセンサとを有する。なお、一般に使用されている用語は、本明細書で使用する用語と少し異なる場合がある。
【0003】
ギア比は、電子制御部によって例えば一つ以上の検出された変数、例えば、走行速度、ペダルクランクの回転の調子(cadence)、ペダルクランクに作用するトルク、走行地形の傾斜、サイクリストの心拍数などに基づいて自動的に変更され、および/またはサイクリストによって例えばレバーやボタンなどの適切な指令部材を用いて手動で入力された命令に基づいて変更される。
【0004】
電子制御部は、アクチュエータを駆動するにあたって、歯車間の軸方向の離間距離が互いに等しくてチェーン案内要素の移動量が常に同じになるのではなく、ある歯車に係合する位置にチェーンを移動させるのにディレイラの変数が取らなければならない歯車ごとの数値を含むテーブルを使用する。そのような数値は、隣接する歯車との運動量との差である差動値であってもよく、または、基準対象に関連する、絶対値、例えば基準歯車の位置またはストローク終了位置、モータが励磁されていない状態に関連するものであってもよい。
【0005】
アクチュエータに対する指令値としては、その大きさの観点から、例えばディレイラにおけるある位置を基準点として当該ディレイラの可動点が移動する距離、モータが実行すべきステップ数または回転数、モータの励磁時間の長さ、変位が電圧に比例するモータへの供給電圧の数値などであってもよく、さらには、モータに接続されたセンサが生成する数値であっても、レジスタに記憶された数値などであってもよく、これらの数量のうちの一つを示す。
【0006】
具体的には、アクチュエータのモータは、アップシフトまたはダウンシフトごとに適切な、いくつかのステップ数または励磁時間長さにわたって、または供給電圧により、駆動され、その後、自動的に停止する。所望位置に到達しなかった場合、すなわち、ディレイラの前述の変数がテーブルの値を取らなかった場合、センサが、アクチュエータのモータを再作動できるように電子制御部へフィードバック信号を供給するために使用される。これは、例えば、ディレイラによって提供された抵抗トルク(サイクリストのペダリング状況にある程度依存する)が高すぎ、リンク機構を介してモータによって生じ得る最大トルクより大きいことに起因する。
【0007】
テーブルの数値は、(前側または後側の)ディレイラに含まれる歯車の数、各歯車の厚さ、および歯車のピッチを考慮に入れて工場で設定される公称値である。典型的に、このような公称値は、アクチュエータの駆動信号がない場合、つまり、指令値がゼロ(0)の場合に、チェーンが最小径の歯車と係合するときと定められている。しかし、前述の例から分かるように、そのような条件は必要ではない。
【0008】
例えば、特許文献1および本出願の優先日において未公開である特許文献2において、様々な要因による、基準値として取られたギアシフトの公称の指令値に関する、歯車の位置のばらつきを考慮に入れて、使用時のアクチュエータの公称の指令値が、アクチュエータの実際の指令値に置換される、公知のギアシフトがいくつか開示されている。
【0009】
本明細書では、「アクチュエータの指令値」は広く参照され、実際に存在している場合は実際の指令値、または実際の指令値がない場合、基準となるギアシフトを指す公称の指令値を意味する。
【0010】
より具体的に述べると、特許文献1には、設定動作モード、調節動作モード、および通常走行モードを実行する、電子サーボ支援型のギアシフト装置が開示されている。設定動作モードでは、チェーンを一つの予め選択された歯車(好ましくは、最小径を有する歯車)に位置合わせし、このときのアクチュエータの物理的位置と、予め選択された歯車に関するギア比の論理値との間に一対一の対応関係を設定する。好ましくは、テーブル内の公称値が参照された内容についてカウンタをゼロ(0)にする。調節動作モードでは、チェーンを予め選択された歯車に係合・位置合わせし、この予め選択された歯車に関するギア比に関する論理値の調節変数(「オフセット」)を設定する。通常走行モードでは、歯車に係る論理値を調節変数で調節することによって決定される物理的位置にアクチュエータを移動させる。このようにして、例えば、衝撃、衝突、または交換前の歯車と交換後の歯車との寸法および/または位置のわずかなずれなどによって生じる、チェーンと一つ以上の歯車との間の位置ずれが補償される。
【0011】
さらに、特許文献2は、特に、自転車用ギアシフトを電子制御する方法およびそれを実施するためのギアシフト装置を開示している。その方法は、
a)同軸上の少なくとも三つの歯車のうちの第1の歯車に係合する位置に伝動チェーンを位置付けるための、アクチュエータに対する第1の実際の指令値、および前記歯車のうちの第2の歯車に係合する位置にチェーンを位置付けるための、アクチュエータに対する第2の実際の指令値、を検出するステップと、
b)歯車ごとに、前記歯車に係合する位置にチェーンを位置付けるための、アクチュエータに対する理論的な公称の指令値を決めるステップと、
c)歯車のうち、少なくとも、第1および第2の歯車以外の歯車について、それぞれ、前記公称の指令値ならびに前記第1および第2の実際の指令値に基づき、アクチュエータに対する実際の指令値を算出するステップとを含む。
【0012】
このような文献によれば、このように、フレームの構成品の寸法の違いやギアシフト装置の取付公差だけでなく、前述の公称の指令値の基礎となる理論的な基準ギアシフト装置を基準とした歯車組立体内の寸法の違いも考慮することができる。
【0013】
本発明の出願人は、ディレイラがギアシフト装置を作動させるその動きの終了時に所望位置に達した後、さらに、ディレイラのフィードバック作動を利用することによって上記の動きが抵抗トルクの影響を補正する動きを含む場合、アクチュエータのモータとチェーン案内要素との間に配置されたリンク機構の弾性に起因するのみならず、路面の凹凸による振動に起因して、ディレイラの意図しない動きが続くことに気付いた。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、上述のディレイラの変数が現在係合している歯車に関する指令値を取ると、ディレイラが所望位置に整合することになる。
【0015】
このようなディレイラの意図しない動きは、たとえそれらの動きが微小変位にすぎないとみなされる場合でも、次のギアシフトの作動が不正確になる原因となり、特に指令値が互いに隣り合う歯車の間で差動値として表される場合、後に続いて起こる望ましくない動きが互いに対して加わる。さらに、所望位置からのこのような動きは、チェーンの歯車からの外れおよび/または機械部品の大きな摩耗には至らないまでも、不正確な係合を生じる原因となる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明からより明確になる。
【0036】
図1を参照して、自転車1(特に、競走用の自転車)は、既知の方法で筒体から形成されたフレーム2を備える。フレーム2は、後輪4の軸支持構造3および前輪6のフォーク5を形成する。筒状構造のハンドルバー41は、フォーク5およびフレーム2に動作可能に連結している。
【0037】
フレーム2は、その下方部分において、一般的な種類のペダルクランク(ペダルユニット)7の軸を支承する。このペダルクランク(ペダルユニット)7は、概して符号8で示される本発明の電子サーボ支援型のギアシフト装置を介して後輪4を駆動する。
【0038】
ギアシフト装置8は、後側のギアシフト群9および前側のギアシフト群10を含む。後側のギアシフト群9は、後輪4と同軸上に位置した、径の異なる複数の歯車(スプロケット)11を有する。前側のギアシフト群10は、ペダルクランク7の軸と同軸に位置した、径の異なる複数の歯車、クラウンまたはギアホイール12を有する。
【0039】
後側のギアシフト群9の歯車11および前側のギアシフト群10の歯車12には、閉ループ状の伝動チェーン13が、電子サーボ支援型のギアシフト装置8を介して選択的に係合可能であり、これにより、様々なギア比を実現することができる。
【0040】
このような様々なギア比は、後側のギアシフト群9の後側のディレイラ14のチェーン案内要素(ケージ)、および/または前側のギアシフト群10の前側のディレイラ15のチェーン案内要素(ケージ)を移動させることによって得られる。
【0041】
各ディレイラ14,15において、後側および前側のチェーン案内要素は、それぞれ、後側の電気モータ16、前側の電気モータ17(
図2)によって移動させられる。典型的に、電気モータ16,17には減速機が設けられており、かつ、関節型の平行四辺形リンク機構を介してチェーン案内要素に接続されている。あるいは、当該技術分野において周知である他の種類のモータまたは他の種類のアクチュエータまたはリンク機構、例えば、ラック機構、ウォームねじ機構などを使用してもよい。例えば、米国特許第6679797号明細書に記載されたものを使用してもよい。なお、この米国特許の教示内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。
【0042】
典型的に、ディレイラ14,15は、それぞれの位置および/または速度および/または加速度の後側のセンサ18,前側のセンサ19(
図2)をそれぞれ有する。センサ18,19は、モータ16,17のロータ、または当該ロータからチェーン案内要素に至るまでの下流領域に位置する任意の可動部品に接続されてもよい。
【0043】
ディレイラの詳細な構造は本発明の範囲外であるので、本明細書ではディレイラ14,15の構造の詳細を図示しない。ディレイラの構造の詳細については、例えば前記特許文献1、2および米国特許第6679797号明細書などを参照されたい。
【0044】
図2は、本発明の実施形態にかかる電子サーボ支援型のギアシフト装置の電気的・電子的構成を示すブロック図である。
【0045】
電源ユニットつまり電源基板30にはバッテリが設けられており、これによりモータ16,17、ディレイラ14,15のセンサ18,19、および後述するインタフェースユニットつまりインタフェース基板32である電子基板に電力を供給し、任意で、後述するセンサ基板つまりセンサユニット34である電子基板にも給電する。好ましくは、このバッテリは充電可能なタイプである。また、後側のディレイラ14は、前述のバッテリを充電するために発電ユニット(ダイナモユニット)を周知の形態で有していてもよい。
図2において、給電線は簡略化のため図示していない。
【0046】
電源基板30、インタフェースユニット32およびセンサユニット34が全体として、電子サーボ支援型のギアシフト装置8の電子コントローラつまり電子制御部40を構成する。代わりに、1枚の電子基板または異なる枚数の電子基板があってもよい。
【0047】
したがって、本明細書および添付の特許請求の範囲において電子コントローラつまり電子制御部40とは、論理的なユニットのことを指す。この論理的なユニットは、複数の物理的なユニットないしモジュール、特には、一つ以上の分散したマイクロプロセッサで構成されてもよい。このような一つ以上の分散したマイクロプロセッサは、例えば、電源基板30および/またはインタフェースユニット32および/またはセンサユニット34に含まれることができる。
【0048】
電源基板30は、例えば、ハンドルバー41を構成するチューブのうちの一つの内部、またはフレーム2を構成するチューブのうちの一つ(例えば、ドリンクボトル(図示せず)の支持部分)の内部に収容される。インタフェースユニット32は、例えば、ハンドルバー41を構成するチューブのうちの一つの内部、またはハンドルバー41に装着された把持可能な装置または手動制御装置42に収容される。センサ基板34は、例えば、フレーム2を構成するチューブのうちの一つの内部において、当該センサ基板34に接続されるセンサの近傍に収容される。
【0049】
各種構成品に対する電力、データおよび情報の伝達は、電気ケーブルを介して実行される。好ましくは、前述の電気ケーブルは、フレーム2を構成するチューブの内部に収容される。データおよび情報信号の伝達は、例えばBluetooth(登録商標)プロトコルなどのワイヤレスモードで実行されてもよい。
【0050】
走行時、後側および前側のディレイラ14,15は、手動制御装置42で入力されるアップシフト要求信号またはダウンシフト要求信号に基づいて電子制御部40によって制御されるか、または電子制御部40によって半自動制御もしくは自動制御される。手動制御装置42は、例えば、インタフェースユニット32に接続または配置されたスイッチ36の状態を切り替えるのに適したレバーまたはボタンを有してもよい。スイッチ36は、直接作動可能であってもよく、スイッチごとのレバーによって作動可能なものであってもよく、あるいは、スイングレバーによって二つのボタンが作動可能なものであってもよい。
【0051】
典型的には、ハンドルバー41の一方のハンドグリップ自体またはその近傍にレバーまたはボタン(
図2)が、後側のギアシフト群9のアップシフト信号およびダウンシフト信号のために配置され、ハンドルバー41の他方のハンドグリップ自体またはその近傍にレバーまたはボタンが、前側のギアシフト群10のアップシフト信号およびダウンシフト信号のために配置される。典型的には、例えば動作モードの選択などといった、補助的な機能を制御するための一つ以上のスイッチ36を作動するレバーまたはボタンがさらに設けられている。
【0052】
好ましくは、ギアシフト装置8の電子制御部40(より詳細には、センサユニット34)には、走行速度、ペダルクランクの回転速度、走行地形の傾斜、サイクリストの心拍数などといった走行パラメータの一つ以上のセンサ38が接続されている。
【0053】
実施形態において、電子制御部40は、ギアシフトを作動するにあたって、モータ16,17を作動し、所望のギア比に達した際、すなわち、チェーン13が所望の歯車11,12と正確に係合する位置にディレイラ14,15のチェーン案内要素が達した際に、センサ18,19の信号に基づいて、モータ16,17を停止させる。前述の所望の歯車11,12は、例えば、ギアシフト指令(アップシフト指令またはダウンシフト指令)が手動制御装置42およびスイッチ36によって生成された際、および/またはギアシフト指令(アップシフト指令またはダウンシフト指令)が走行パラメータについてのセンサ38の出力に基づいて電子制御部40によって生成された際にチェーン13が位置していた歯車に隣接する歯車(大径の歯車または小径の歯車)である。多段ギアシフトの場合、前述の所望の歯車は、必ずしもギアシフト開始位置の歯車に隣接する歯車ではない。
【0054】
実施形態の変形例では、モータ16,17は、一定時間またはいくつかのステップにわたって、駆動されるものであり、または各種アップシフトまたは各種ダウンシフトに応じた適切な電圧値で駆動され、その後、自動的に停止する。センサ18,19は任意の構成要素とされ、電子制御部40に対してフィードバック信号を供給するのに使用される。これにより、電子制御部40は、チェーン13を所望の歯車11,12に係合させる物理的位置にモータ16,17が達していない場合に当該モータ16,17を再び作動させることができる。これは、例えば、ディレイラ14,15の抵抗トルク(サイクリストのペダル動作にある程度依存する)が、モータがリンク機構を介して生成可能な最大トルクを超えるほど過度に大きくなることによって生じる。
【0055】
モータ16,17は、例えば、ステッピングモータである。好ましくは、モータ16,17は、適切な数の「ステップ」によって駆動される直流ブラシモータであり、当該適切な数の「ステップ」の各ステップは、何分の一回転に相当し、好ましくは32分の一回転に相当する。このように32分の一回転をステップとして選択すると、ステップは2の整数倍であるため、有利に処理を実行することができる。
【0056】
電子制御部40は、さらに、メモリ手段44を含み、電子制御部40は、このメモリ手段44に基づいて、所望の歯車11,12に係合する位置にチェーン13を移動させるためのアクチュエータに対する指令値を、その時々に応じて決定する。
【0057】
電子制御部40は、後側のカウンタ46および前側のカウンタ48を備えることができる。カウンタ46,48は各々、例えば、レジスタで構成されてもよく、メモリセルに記憶された変数で構成されてもよい。ギアシフト装置8の通常走行動作モード時における電子制御部40は、ディレイラ14,15を駆動し、例えば、モータ16,17に1ステップ印加されるごとに測定単位の1単位、カウンタ46,48を増減することによって、および/またはセンサ18,19の読み値に基づいて、ディレイラ14,15の現在の位置を追跡する。カウンタ46,48が設けられる場合、カウンタ46,48は、メモリ手段44に記憶された指令値と同じ測定単位でディレイラ14,15の現在の位置を表す。この場合、カウンタ46,48はセンサ18,19としても働く。
【0058】
指令値のメモリ手段44、およびカウンタ46,48は、電子制御部40内の自立した(別個の)構成部として図示されているが、電子基板30,32,34に含まれる一つ以上のメモリ装置に物理的に設けられてもよい。
【0059】
より単純な自転車では、電子制御部40は後側のギアシフト群9および前側のギアシフト群10のうちの一方のみを設けてもよく、前述した自転車からの簡略化は当業者にとって明白である。
【0060】
説明を簡単にするために、以下では、特に、後側のギアシフト群のみを扱う。後述の内容は、代替的に、あるいは、追加的に、適宜変更を加えたうえで、前側のギアシフト群にも適用可能である。
【0061】
図3に、電子制御部40のメモリ領域(例えば、前述のメモリ手段44など)または電子制御部40がアクセス可能な任意のメモリに記憶されるデータ構造を示す。このメモリ領域または任意のメモリには、ギアシフト群の歯車(スプロケット)ごとに、アクチュエータに対する指令値Q
i(
iは1〜Nの整数である)がテーブル60の形態で記憶される。一実施例としての、11個のスプロケットを有する後側のギアシフト群9の場合、前述のテーブル60は、指令値Q
1〜Q
11を有する。
【0062】
詳細に述べると、指令値Q
1は、後側のギアシフト群9の最小径を有するスプロケット11に係合する物理的位置にチェーン13が位置した、ギアシフトにおける理論上の状態を、適切な測定単位で表したものである。指令値Q
2は、後側のギアシフト群9の前述の最小径を有するスプロケット11に隣接するスプロケット11に係合する物理的位置にチェーン13が位置した状態を、前述の測定単位と同じ測定単位で表したものである。例えば、指令値Q
N(図示の例ではQ
11)は、後側のギアシフト群9の最大径を有するスプロケット11に係合する物理的位置にチェーン13が位置した状態を、前述の測定単位と同じ測定単位で表したものである。
【0063】
好ましくは、指令値Q
iは、標準または基準となるギアシフトを指す「公称値」と呼ばれる値として工場で記憶され、後で、「実際の値」と呼ばれる値として調整され、例えば、衝撃または衝突、または、交換前の歯車および交換後の歯車の寸法および/または位置のわずかなずれのみならず、フレームの構成品の寸法の違いやギアシフト装置の取付公差、および公称値の基礎となる理論的な基準ギアシフト装置を基準とした歯車組立体内の寸法の違いに起因するチェーン13と一つ以上の歯車11との間の位置ずれも考慮に入れられる。
【0064】
例えば、各指令値Q
iは、センサ18の出力が取るべき値であって、任意でカウンタ46に記憶される値であってもよい。指令値Q
iは、また、モータ16の駆動量の値として表されてもよい。
【0065】
例えば、既述したようにアクチュエータがステッピングモータを有する場合、すなわち、何分の一回転で駆動されるモータを有する場合、指令値Q
iは、それぞれ、i番目の歯車との係合状態に達するために必要なステップ数として表されてもよく、基準位置から開始する。基準位置として、例えば、ストロークの終了位置、モータ16が励磁されていない状態、最小径を有する歯車との係合状態などに相当する。
【0066】
また、指令値Q
iは、それぞれ、アクチュエータの特定の移動点の位置、チェーン案内要素の特定の移動点の位置として、または基準平面(例えば、自転車に沿った基準平面)からそのような移動点までの距離(例えば、mm単位の距離)として、基準歯車との係合状態において表されてもよい。また、指令値Q
iは、それぞれ、その電圧に比例する、チェーン13の運動を引き起こす、モータ16への給電電圧の値として表されてもよく、あるいは、アクチュエータの種類に応じて当業者にとって既知の他の形態で表されてもよい。
【0067】
また、指令値Q
iは、それぞれ、当業者によって理解されるように、アクチュエータの種類に応じて、隣接する歯車に対する異なる方法で表されてもよく、例えば、移動距離、実行すべきステップ数、アクチュエータの作動時間で表されてもよい。詳細には、この場合、各歯車に係る指令値は、直ぐ隣の小径の歯車から開始する指令値、および直ぐ隣の大径の歯車から開始する指令値となる。この場合に必要な変更は、当業者の能力の範疇である。より精巧な実施形態では、歯車ごとに、また、当該歯車にチェーンが達する際の方向ごとに、係合動作を行うにあたって一時的にチェーンを位置決めするための指令値とともに、チェーンの係合が成功する位置に当該チェーンを移動させるための指令値を用意してもよい。
【0068】
理解し易いように、以下では、指令値Q
iを、比例的に増減する測定単位で表すものとする。
【0069】
図3のテーブル60は、1〜Nの数値(図示の例では1〜11)のフィールドiも示す。しかし、実際の用途では、指令値Q
iが対応する歯車の径順に並んで記憶される場合、このフィールドを省略してもよいことが理解されよう。事実、後述するように、特定の指令値Q
iを得るたび、現在のインデックスi=1…Nの数値に基づいてテーブル60が参照される。したがって、指令値Q
iが順番に並べられている場合、テーブル60のi番目の数値を参照するだけでよい。
【0070】
図2にはメモリ手段44を一つだけ概略的に示したが、実際には、種々の記憶装置が設けられてもよいことが理解されよう。好ましくは、公称の指令値Q
iは、EEPROMメモリまたは読出し専用メモリ(例えば、ROMなど)に記憶され、実際の指令値は、同じEEPROMメモリ、それとは別のEEPROMメモリ、または読出し/書込みメモリに記憶される。
【0071】
より明瞭にするために指令値Q
iの単一のテーブルが示されているが、公称の指令値と実際の指令値の両方が共通のデータ構造または区分したテーブルに記憶されてもよい。
【0072】
本明細書では、実際に使用する場合、公称の指令値と実際の指令値との指令値が参照される。公称の指令値および実際の指令値の二つの分類したテーブルが存在しているが、単一のテーブル60が参照される。
【0073】
通常走行動作モード時に、i番目の歯車にチェーン13が係合するようにギア比の変更を実行する必要がある場合、電子制御部40は、i番目の歯車に係る指令値Q
iをテーブル60から読み出し、それに応じてアクチュエータ、具体的には、モータ16を駆動する。
【0074】
具体的に、モータ16がステッピングタイプ、すなわち、既述したように各ステップが何分の一回転に相当する複数の「ステップ」によって作動されるタイプの場合、モータ16は、一回に1ステップずつ運動するように駆動されるか、あるいは、一回に複数ステップずつ運動するように駆動される。
【0075】
好ましくは、指令値Q
iに対する基準システムの起点はA番目の第1の歯車、Q
1=0において、選択される。
【0076】
大きい直径を有する歯車側にシフトする場合、指令値は増加し、または小さい直径を有する歯車側にシフトする場合、指令値は減少することが分かる。
【0077】
以下に詳細に説明される本発明による制御方法は、歯車、チェーン、およびギアシフト装置の他の構成品とは別個に、ディレイラと共に販売される電子制御部において、実施することができる。
【0078】
本発明によるギアシフト装置8の電子制御について、本発明の実施形態による例示的なフロー図を示す
図4と、
図4のフロー図に基づいて制御される電子サーボ支援型のギアシフト装置8の動作を概略的に示したタイムチャートである
図5〜
図10と、を参照して説明する。
【0079】
ブロック101において、チェックカウンタNCは、ディレイラの位置が所望位置、すなわち、ギアシフトのデフォルト位置、または、最後に実行されたギアシフトに基づく位置である、制御の最大値、すなわち、チェック回数の最大値MAXCに、初期化される。チェック回数の最大値MAXCは、ブロック118に関連して後述する。チェック回数の最大値MAXCは、二つの連続チェックの間の時間周期MAX2の値と共に、実験的には、ギアシフトモデルにおいて観察された、速度と予期しない運動時間全体との関数として、選択される。時間周期MAX2についてはブロック118に関連して後述する。このような時間と速度は、アクチュエータとチェーン案内要素との間に配置されたリンク機構の弾性の関数である。チェック回数の最大値MAXCは、例えば、数十回から選択される。
【0080】
より具体的には、所望位置は、上記したように、ディレイラの予め選択された変数がテーブル60の所定の指令値Q
iを取る位置であり、これによって、伝動チェーン13が目標のi番目の歯車11、12と係合するように位置決めすることができる。このi番目の歯車は、例えば、スイッチオンされる状態では最小径を有する歯車(テーブル60によれば、i=1)であり、単一のギアシフトアップした後では前に係合していた歯車11(テーブル60によれば、インデックスi′)のシフトアップ方向のとなりの歯車(テーブル60によれば、インデックスi=i′+1)であり、単一のギアシフトダウンした後では、前に係合していた歯車11のシフトダウン方向のとなりの歯車(テーブル60によれば、インデックスi=i′−1)である。また、複数のギアのシフトアップまたはシフトダウンの場合はそれぞれのとなりではない歯車である。
【0081】
次のブロック102において、再位置決め動作カウンタNRは、ディレイラが所望位置に整合していないときに実行されるディレイラの再位置動作回数の最大値MAXRに初期化される。再位置決め動作回数の最大値MAXRは、一方では、ディレイラの位置をできるだけ正確に維持するが、他方では、機械部品に過度の負荷を掛けずに電気エネルギを保存することで電子制御部40をオーバーロードさせないという、相反する要件に基づいて、選択される。再位置決め動作回数の最大値MAXRは、例えば、数回から選択される。再位置決め動作回数の最大値MAXRが高すぎると、ディレイラの機械部品へ過度な負荷を掛けるだけでなく、バッテリの過剰消費につながる。数回の再位置決め動作を行った後は、再位置決め動作を行わず、サイクリストが伝動システムが適正に実行されてないことに気づいて、ギア比を変更するのを待つのが好ましい。
【0082】
好ましくは、再位置決め動作回数の最大値MAXRはチェック回数の最大値MAXCを下回る。
【0083】
次のブロック103において、カウンタまたは第1タイマT1は、第1の時間周期を表す値MAX1に初期化され、その後、一つのギアシフトと他のギアシフトとの間において、ディレイラの位置が所望位置であるか否かのチェックを行うことが望まれる。
【0084】
本発明の導入部分で説明したように、ディレイラの位置が所望位置に留まらない場合がる。この位置は、ディレイラに伝えられた動きの間に、たとえ、微量であっても所望されない動きが伝達されて到達した位置である。
【0085】
第1の時間周期MAX1は、ブロック118に関して以下に記載する第2の時間周期MAX2に対して比較的長い。そのため、本発明の開示の他の部分および添付クレームにおいて、比較的長いタイマT1、比較的長い時間周期MAX1、比較的短いタイマT2、および比較的短い周期MAX2という表現が使用されることがある。
【0086】
第1の時間周期MAX1は、例えば、数十秒から選択することができる。第1の時間周期MAX1は適切な尺度で表すことができる。
【0087】
次のブロック104において、ギアシフト要求信号があるか否かがチェックされる。既述したように、この信号は、走行パラメータのセンサ38の出力に基づいて、サイクリストまたは電子制御部40によって自動生成される。
【0088】
ブロック104においてチェックが否定判定の場合、ブロック105において、第1の時間周期MAX1を経過したか否か、すなわち、図示した実施形態において、第1タイマT1がカウントダウンを終了し、よって、T1=0であるか否かがチェックされる。
【0089】
第1の時間周期MAX1が経過しなかった場合、すなわち、ブロック105において否定判定の場合、ブロック106において、タイマT1の値は、典型的に、第1の時間周期MAX1と同じ時間量だけ減少され、ブロック104に戻り、ギアシフト要求信号があるか否かがチェックされる。
【0090】
第1の時間周期MAX1の経時中にギアシフト要求信号がない場合、このような時間周期MAX1の終了時に、第1のタイマT1はカウントダウンを終了してT1=0が真になり、ブロック105からYES(肯定判定)が出力される。
【0091】
この場合、ブロック107において、チェックカウンタNCの値はゼロ(0)に設定される。ゼロ(0)値は、ブロック
図4において便宜上チェックカウンタNC上で設定されるが、すぐにお分かりのように、このようなチェックカウンタNCの値であっても実際には位置のチェックが実行される。あるいは、比較的低速な時間周期MAX1がギアシフト要求および作動せずに経時されたことを示すために別のフラグを使用することが可能である。ブロック107の後、ブロック108において、各々のセンサ18、19の出力を読み出すことによってディレイラの実際の位置が得られる。
【0092】
次のブロック109において、後述するブロック113において減少される再位置決め動作カウンタNRが現在ゼロ(0)か否かをチェックする。
【0093】
否定判定の場合、ブロック109の初期実行におけるように、次のブロック110において、適切な所定の許容範囲から外れて、ディレイラの実際の位置が所望位置に対応するか否かをチェックするが、これもゼロ(0)であり得る。
【0094】
肯定判定の場合、補正処理は必要がなく、再位置合わせ動作カウンタNRの値は、ブロック111において再位置合わせ動作回数の最大値MAXRに戻されるか、または、減少されない場合、再確認される。
【0095】
ディレイラの実際の位置が所望位置に対応せず、このような所望位置の周囲で可能な所定の許容範囲から外れている場合(ブロック110の否定判定)、ディレイラが所望位置に整合するまで、ブロック112において、上述したようにフィードバック信号としてセンサ18、19の出力をできる限り活用して、アクチュエータのモータ16、17を作動させる。
【0096】
ディレイラが所望位置に整合するとすぐに、ブロック113において再位置決め動作カウンタNRの値が測定単位の1単位減少される。
【0097】
なお、センサ18、19からのフィードバック信号が存在ない場合、ブロック112の終了時に、ディレイラが所望位置に整合しているとされることに留意されたい。
【0098】
ブロック110におけるディレイラの実際の位置が所定の許容範囲から外れた所望位置にあるか否かのチェックの結果とは無関係に、ブロック111、112、113それぞれの後、ブロック114においてチェックカウンタNCが、現在、ゼロ(0)であるか否かをチェックされる(後述するブロック122において減少され得る)。
【0099】
なお、ディレイラの実際の位置が所定の許容範囲から外れた所望位置にあるか否かがチェックされるブロック110でのチェックが、再位置合わせ動作カウンタNRの不足(ブロック109の肯定判定)が原因で、実行されない場合に、同じブロック114に進むことに留意されたい。
【0100】
例えば、現在検討されている、時間周期MAX1中にギアシフト要求指令を受信しなかった場合に発生するように、チェックカウンタNCがゼロ(0)の場合、ブロック114においてチェックカウンタNCがゼロ(0)に設定されているので、比較的長いタイマT1が最大値MAX1にリセットされるブロック103、その後、ギアシフト要求信号があるか否かがチェックされるブロック104へ戻る。
【0101】
他の仮定に基づいてブロック
図4の記述に進行する前に、比較的長い時間周期MAX1の間の任意の指令を受信しなかった場合の動作について
図5〜
図7の概略的なタイムチャートにまとめ、これを参照する。このようなタイムチャートにおいて、チェック回数の最大値MAXCは3回であり、再位置合わせ動作回数の最大値MAXRは2回であるとする。
【0102】
図5は、比較的長い時間周期MAX1を経過した後、位置の読み出し(ブロック108)が許容範囲内である(ブロック110が肯定判定)場合を示している。その後、他の比較的長い時間周期MAX1を待機し、その後、位置の他の読み出しが行われる(ここでも許容範囲内であるとする)。チェックカウンタNCが常時ゼロ(0)ダミー値に戻されるので、以上の状況が無限に繰り返される。
【0103】
図6は、比較的長い時間周期MAX1を経過した後、位置の読み出し(ブロック108)は許容範囲外である(ブロック110の否定判定)の場合を示している。したがって第1の再位置決めが実行され(ブロック112)、再位置決め動作カウンタNRの値を測定単位の1単位減少し(ブロック113)、その後、他の比較的長い時間周期MAX1を待機し、その後、位置の他の読み出し(今回は許容範囲内であるとする)を行う。その後、この再位置決め動作カウンタNRを再位置決め動作回数の最大値MAXRに戻す(ブロック111)。上述したように、チェックカウンタNCもゼロ(0)のダミーの値(ブロック107)に戻されるので、以上に述べた状況が無限に繰り返される。
【0104】
最後に、
図7は、第1の比較的長い時間周期MAX1の後、位置の読み出し(ブロック108)が許容範囲外である(ブロック110の否定判定)場合を示している。よって、第1の再位置決めが実行され(ブロック112)、再位置決め動作カウンタNRの値を測定単位の1単位減少し(ブロック113)、その後、第2の比較的長い時間周期MAX1を待機し、その後、位置の他の読み出しを行う(ここでも再び否定判定される)。その後、第2の再位置決めが実行され、再位置決め動作カウンタNRの値を測定単位の1単位減少する。再位置決め動作回数の最大値MAXRが2回とすると、すなわち、記述したように再位置決め動作回数の最大値MAXRの後、再位置決め動作カウンタNRはゼロ(0)に達する。第3の比較的長い時間周期MAX1を待機した後、位置の他の読み出しが実行される(ブロック108)が、その位置が許容範囲内にあるか否かはチェックしない(ブロック109において肯定判定)、そして、いずれにせよ、再位置決め動作は実行されない。チェックカウンタNCがあらゆる比較的長い時間周期MAX1を経た後で、ゼロ(0)のダミー値に戻るので、この最終的な状況が無限に繰り返される。すなわち、その位置が時間周期MAX1をもってチェックされた場合でも、次のギアシフトまで、ディレイラは非所望位置にとどまる。
【0105】
実際、上述したように、再位置決め動作回数の最大値MAXRに達した後、機械部品に負荷をかけないためおよび電力を過剰に消費しないためにディレイラ15をさらに移動させずに、むしろ、サイクリストによる介入を待機する方が好ましい。したがって、実際の位置が許容範囲内にあるか否かのチェック(ブロック110)も省略される。逆に、いずれにせよ、ブロック108において、ディレイラの実際の位置を読み出し、この位置を追跡し、したがって正確な起点を得て、必要に応じて、テーブル60で読み出された指令値を補正することができる。特に、異なる方法で駆動されたディレイラの場合に有効である。
【0106】
ディレイラ15の非差動指令値の場合、ディレイラ15の実際の位置の追跡を省くことができる。この場合、ブロック108および109はその位置を反転させることができ、(そして、関連する出力が結果的に調整される)、よって、再位置決めの動作回数NRを使い切った場合、実際の位置の読み出しを省くことができる。
【0107】
逆に、実際の位置を読み出した後、実際の位置が許容範囲内にあるかがチェックされる。すなわち、再位置決めの動作回数NRを使い切ったか否かのチェック(ブロック109)を、再位置決めブロック112の直前に、位置が許容範囲内にあるか否かのチェックを行うブロック110の否定判定へ移動させることによって、実行することができる。
【0108】
例えば、いったん再位置決めの動作回数の最大値を超えると、否定判定カウンタおよびサイクリストへ適切なアラーム信号を実装することも可能である。実際、このような状況は、特に深刻でないが(許容範囲から少し外れる位置)、ギアシフトの機械部品またはテーブル60の指令値の見直しをしてもよい。
【0109】
図4のブロック図に戻って参照するに、比較的長い時間周期MAX1の経時中、ギアシフト要求信号がある場合(ブロック104が肯定判定された場合)、ブロック115および116において、最初に、チェックカウンタNCおよび再位置決め動作カウンタNRは、許容されたそれぞれの最大値MAXCおよびMAXRへ戻される、またはこれらが減少しない場合は再確認される。
【0110】
その後、ブロック117において、アクチュエータのモータ16,17は、ディレイラが所望位置(別の歯車における新しい所望位置)に整合するまで作動する、このとき、上記したように、センサ18,19の出力をフィードバック信号としてできる限り利用する。
【0111】
ディレイラが所望位置に整合されるとすぐに、ブロック118において、カウンタまたは第2のタイマT2は比較的短い時間周期MAX2に初期化される。この比較的短い時間周期MAX2は、第2の時間周期を表し、この時間周期の経過後、ディレイラの位置が所望位置であるか否かのチェックの実行が望ましい。さらに、この場合、ディレイラの位置は、上述したように、ディレイラ15のリンク機構の弾性および/または路面の凸凹に起因する振動によって生じる、微量であるが所望されない動きに影響されて、所望位置にとどまらないことがある(この位置はギアシフトを実行する(ブロック117)ときにディレイラに所望されない動きが伝達されて到達した位置である)。
【0112】
なお、センサ18,19からフィードバック信号がない場合、ブロック117の終了時にディレイラが所望位置に整合されることに留意されたい。
【0113】
既述したように、本出願人は、ギアシフト直後、ディレイラの望ましくない微小変位が発生しやすいことに気づいたので、第2の時間周期MAX2は比較的短い。
【0114】
第2の時間周期MAX2は、例えば、数十分の1秒単位で選択することができる。好ましくは、第2の時間周期MAX2は、第1の時間周期MAX1と同じ測定単位の適切な測定単位で表すことができる。
【0115】
次のブロック119において、(第2の)ギアシフト要求信号があるか否かがチェックされる。
【0116】
ブロック119のチェックが否定判定された場合、ブロック120において、第2の時間周期MAX2が経過したか否か、すなわち、
図4に示した実施形態では、第2のタイマT2がカウントダウンを終了して、T2=0であるか否かがチェックされる。
【0117】
第2の時間周期MAX2を経過しなかった場合、ブロック120は否定判定され、ブロック121において、タイマT2の値は、典型的に第2の時間周期MAX2と同じ尺度で測定単位の1単位減少され、その後、ブロック119に戻り、(第2の)ギアシフト要求信号があるか否かをチェックする。
【0118】
第2の時間周期MAX2の経時中に(第2の)ギアシフト要求信号がない場合、このような時間周期MAX2の終了時に、第2のタイマT2がカウントダウンを終了して、T2=0が真となり、ブロック120が肯定判定される。
【0119】
この場合、ブロック122において、チェックカウンタNCの値が測定単位の1単位減少され、その後、ブロック123において、チェックカウンタNCの値が現在ゼロ(0)であるかをチェックする。
【0120】
否定判定された場合、ブロック123の第1の実行におけるように、上記したブロック108の実行に進み、ディレイラの位置を読み出し、この位置が許容範囲内にあるかをチェックし(再位置合わせの可能性)、その後、ブロック114へ戻り、チェックカウンタNCの値が現在ゼロ(0)であるかをチェックする(これは必ず否定判定される)。
【0121】
したがって、周期的に、ブロック118の実行へ、およびチェックカウンタNCがゼロ(0)値に到達するまで、時間周期MAX2の期間の再待機、チェックカウンタNCの減分(ブロック122)、および位置の可能性のあるチェックおよび可能性のある再位置決めの実行に戻る。この周期的な繰り返しにおいて、位置の可能性のあるチェックおよびステップ112の可能性のある位置決めは、再位置決め動作カウンタNRがゼロ(0)値に達するまで実行される。
【0122】
チェックカウンタNCがゼロ(0)値に達すると(ブロック123が肯定判定され)、ブロック103の実行へ戻る。
【0123】
以上記載したブロック118〜123の実行によれば、位置のチェック回数NCはしたがって、厳密な周期MAX2において厳密に実行される(再位置決め動作の最大値MAXRをできる限り実行する)。
【0124】
ブロック119のチェックが肯定判定され、よって、(第2の)ギアシフト要求信号が、周期MAX2において位置チェック回数NCの位置チェックのうちの一つの実行中に入る場合、ブロック124において、第1のカウンタT1が最大値MAX1へ戻り、その後、ブロック115〜118の実行へ戻る。したがって、詳細には、新しいギアシフトが、ディレイラを(新しい)所望位置へ整合することによって作動し、全てのカウンタとタイマがスタート時と同様、最大値に戻る。
【0125】
ギアシフトを実行する位置決め(ブロック117)の後、または位置が許容範囲外であることによる再位置決め(ブロック112)の後のチェック判定とは無関係に、位置読み出しが少なくとも比較的長い時間周期MAX1ごとに常に実行されることに注目されたい。
【0126】
さらに、所定の数のチェック回数の最大値MAXCは、チェック自体の判定結果とは無関係に、ギアシフトを実行するための位置決め(ブロック117)の後の比較的短い時間周期MAX2ごとに常に実行される。
【0127】
ここで、以下に示したギアシフト要求信号を受信するときの動作を
図8〜
図10においてタイムチャートにまとめて概略的に示す。上記した
図5〜
図7と同様に、このタイムチャートにおいて、チェック回数の最大値はMAXC=3であり、再位置決め動作回数の最大値はMAXR=2とする。
【0128】
図8は、ギアシフトを作動した後(ブロック117)で比較的短い周期MAX2を経過した後で、位置読み出し(ブロック108)が許容範囲内にある場合(ブロック110から肯定判定)を示している。次いで、第2の比較的短い周期MAX2を待機し、その後、位置の他の読み出しが行われ、これも許容範囲内であると、もう一度、第3の比較的短い時間周期MAX2を待機し、その都度、チェックカウンタNCの値が測定単位の1単位減少され(ブロック122)、かつ、この実施形態では、チェック回数の最大値MAXCは、3回であるので、チェックカウンタNCはゼロ(0)に到達する。次いで、比較的長い時間周期MAX1を待機するステップへ進み、その後、位置の他の読み出しを実行し(ブロック108)、その位置が許容範囲内であるか否かをチェックし、許容範囲内であるとされる(ブロック110の肯定判定)。
【0129】
上述したように、比較的長い時間周期MAX1においてギアシフト要求がなかった場合、チェックカウンタNCがゼロ(0)のダミー値(ブロック107)に戻されるので、位置が許容範囲内にあるか否かのチェックを伴うこのような位置決め読み出し(ブロック108)は無限に繰り返すことができる。
【0130】
図4に示したように、時間周期のある一定の時点において、位置が許容範囲外である場合(ブロック110の否定判定)、再位置決めが実行され(ブロック112)、再位置決め動作カウンタNRが減分される(ブロック113)。このような再位置決め動作カウンタNRは、許容範囲内の位置読み出し(ブロック111)後、または、ギアシフト要求信号(ブロック116)後にのみ、最大値に戻されるので、多くは、再位置決め動作回数の最大値MAXRが時間周期MAX1で実行することができる。
【0131】
図9は、ギアシフト作動(ブロック117)後の比較的短い周期MAX2が経過した後、位置の読出し(ブロック108)が許容範囲内にある場合を示している(ブロック110の肯定判定)。次いで、別の比較的短い周期MAX2を待機し、その後、位置の他の読み出しが実行され、今回は許容範囲外であるとされる(ブロック110の否定判定)。
【0132】
その後、第1の再位置決めが実行され(ブロック112)、再位置決め動作カウンタNRの値を測定単位の1単位減少し(ブロック113)、その後、別の比較的短い時間周期MAX2を待機する。
【0133】
チェック数NCの値が現在ゼロ(0)に達しているので、比較的長い周期MAX1を待機する、位置についての他の読み出し(ブロック108)、および、位置が許容範囲内にあるかのチェック(ブロック110)が周期的に繰り返し実行される。図示したように、位置が許容範囲外の場合(ブロック110の否定判定)、再位置決めが実行され(ブロック112)、再位置決め動作カウンタNRをさらに減少する(ブロック113)。再位置決め動作回数の最大値、MAXR=2の場合、このような再位置決め動作カウンタNRは、その時点でゼロ(0)であることから、次の位置の読み出しにおいて、位置が許容範囲内にあるか否かはチェックされず、よって、ディレイラの再位置決めされない。
【0134】
最後に、
図10は、ギアシフトを作動した(ブロック117)後の比較的短い周期MAX2を経過してから、位置の読出し(ブロック108)が許容範囲内にない(ブロック110が否定判定)場合を示す。その後、第1の再位置決めが実行され(ブロック112)、再位置決め動作カウンタNRの値を測定単位の1単位減少し(ブロック113)、その後、他の比較的短い時間周期MAX2を待機し、その後、第2の位置読み出しが実行され、ここでも許容範囲ではないとされる(ブロック110の否定判定)。一方、その後、第2の再位置決めが実行され(ブロック112)、再位置決め動作カウンタNRの値を測定単位の1単位減少する(ブロック113)。その後、他の比較的短い時間周期MAX2を待機し、チェック回数NCの値が現在ゼロ(0)に達しているので、比較的長い時間周期MAX1を待機する、および、位置の他の読み出しの周期的繰り返しが行われる。再位置決め動作カウンタNRがゼロ(0)であるので(ブロック109が否定判定)、位置が許容範囲にあるか否かのチェック(ブロック110)、可能な再位置決めが実行されない。いずれにせよ、ステップ109および110を行うことができる順序については先に述べた通りであるのでそれを参照されたい。
【0135】
実施形態の変形例において、自由度は少ないが、チェックカウンタNCと再位置決め動作カウンタNRのいずれか一つを使用することができ、および/または、その位置が許容範囲内か否かの単一のチェックまたは単一の再位置決めを行うことができる。
【0136】
また、カウントダウンカウンタを使用する代わりにカウントアップカウンタを使用することが可能であり、および/または、対応する最大値の値を好適に変更することで、値0(ゼロ)で様々なカウンタのチェックを使用する代わりに、値1でチェックを使用することが可能であることが分かる。
【0137】
また、ブロック106および121に設定された減少量の代わりにクロック信号により動作するタイマを使用することが可能であることが明らかであり、ブロック図への変更は当業者の能力の範疇である。
【0138】
ディレイラのモータ16,17は、ステッピングタイプ、すなわち、各々が上述した何分の一回転に相当する「ステップ」によって作動される場合、モータ16,17は、位置決めしてギアシフトを実行(ブロック117)するために一回に比較的多数のステップ移動し、および、位置が許容範囲外であると分かった時に再位置決め(ブロック112)するために一回に一つのステップまたは比較的少数のステップ移動するように駆動可能である。その間、全体の移動距離は一般に二つの歯車の間の距離より短い。
【0139】
上記に概述した方法は、自転車用ギアシフト装置の自動または半自動運転の場合にも使用することができ、電子制御部40は、走行速度、ペダルクランクの回転速度、地形の傾き、サイクリストの心拍数などの走行パラメータのセンサ38の出力に基づいて、いつギア比を変更するのが適切なのか確立し、ディレイラの動作を要求する信号を自動的に生成し(自動運転)、またはサイクリストの要求の監視/統合を実行し、これらの要求を受け入れず、これらの要求をバイパス(迂回)させ、遅らせ、および/またはこれらを自動生成要求に統合するか、あるいは、その逆に、いずれにせよ、サイクリストにこれらをバイパスするためのオプションをもつ要求を提案する(半自動運転)。
【0140】
上記に概述した方法は、サイクリストがギア比を変えるために指令信号を送信する場合にも使用することができ、電子制御部40は、指令信号を後側のディレイラのギアシフト要求信号、および/または、前側のディレイラのギアシフト要求信号へ変換する。
【0141】
上記に概述した方法は、電子制御部40の任意の構成品、電源基板30,インターフェース基板32,センサ基板34において実施することができ、これら構成品30,32,34のうち二つまたは三つに分配されるやり方でも、実施可能である。
【0142】
上記に概述した方法は、歯車、チェーン、およびギアシフト装置の他の構成品とは別個に、ディレイラと一緒に市販される電子制御部において実施可能である。