特許第6288989号(P6288989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288989
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 7/06 20060101AFI20180226BHJP
   A01B 49/06 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   A01C7/06 A
   A01B49/06
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-171602(P2013-171602)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-39327(P2015-39327A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 健一
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−125008(JP,U)
【文献】 米国特許第05595130(US,A)
【文献】 米国特許第04408551(US,A)
【文献】 特開平06−209613(JP,A)
【文献】 特開平09−121613(JP,A)
【文献】 特開昭61−092503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 3/00−3/08,7/00−9/08,15/00−23/04
A01B 27/00−31/00,35/00−49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される機体と、
この機体に上下位置調整可能に設けられ、圃場に接地するゲージ輪手段と、
前記機体に上下方向に回動可能に設けられた回動体と、
この回動体に設けられ、圃場に溝を形成する溝形成体と、
前記回動体に設けられ、前記溝形成体にて形成される溝の深さを設定する接地体とを備え、
前記機体に対する前記ゲージ輪手段の上下位置調整によって前記回動体が前記機体に対して回動すると、この回動体の回動に基づいて、前記溝形成体の下端位置と前記接地体の下端位置との距離が変化する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
走行車に連結される機体と、
この機体に上下位置調整可能に設けられ、圃場に接地するゲージ輪手段と、
前記機体に上下方向に回動可能に設けられた回動体と、
この回動体に第1回転中心軸線を中心として回転可能に設けられ、圃場に溝を形成する溝形成体と、
前記回動体に前記第1回転中心軸線とは異なる第2回転中心軸線を中心として回転可能に設けられ、前記溝形成体にて形成される溝の深さを設定する接地体とを備え、
前記機体に対する前記ゲージ輪手段の上下位置調整によって前記回動体が前記機体に対して回動すると、この回動体の回動に基づいて、前記溝形成体の下端位置と前記接地体の下端位置との距離が変化する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項3】
機体に回動可能に設けられた筒状部材と、
この筒状部材内にスライド可能に挿通され、下端部が回動体に回動可能に取り付けられ、複数の孔部が形成されたロッドと、
前記複数の孔部のうちの一の孔部に挿入された第1ピンと、
この第1ピンと前記筒状部材の上端との間に設けられた第1バネと、
前記複数の孔部のうちの他の孔部に挿入された第2ピンと、
この第2ピンと前記筒状部材の下端との間に設けられた第2バネと
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項4】
ゲージ輪手段は、側面視で接地体の前方に位置するゲージ輪を有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝の深さを容易に変更できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、例えばトラクタ等の走行車の後部に連結される機体と、この機体に上下方向に回動可能に設けられた回動体と、この回動体の下部に回転軸を介して回転可能に設けられ圃場に溝を形成する溝形成体と、回動体の下部に回転軸を介して回転可能に設けられ溝形成体にて形成される溝の深さを設定する接地体とを備え、溝形成体の回転中心軸線と接地体の回転中心軸線とが同一線上に位置している。そして、溝形成体にて形成される溝の深さを変更する場合には、外径の異なる接地体を選択し、この選択した接地体に交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−125008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、溝形成体にて形成される溝の深さを変更する際に、接地体の交換が必要であるため、溝の深さを変更するのに手間取るおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、溝の深さを容易に変更できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結される機体と、この機体に上下位置調整可能に設けられ、圃場に接地するゲージ輪手段と、前記機体に上下方向に回動可能に設けられた回動体と、この回動体に設けられ、圃場に溝を形成する溝形成体と、前記回動体に設けられ、前記溝形成体にて形成される溝の深さを設定する接地体とを備え、前記機体に対する前記ゲージ輪手段の上下位置調整によって前記回動体が前記機体に対して回動すると、この回動体の回動に基づいて、前記溝形成体の下端位置と前記接地体の下端位置との距離が変化するものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、走行車に連結される機体と、この機体に上下位置調整可能に設けられ、圃場に接地するゲージ輪手段と、前記機体に上下方向に回動可能に設けられた回動体と、この回動体に第1回転中心軸線を中心として回転可能に設けられ、圃場に溝を形成する溝形成体と、前記回動体に前記第1回転中心軸線とは異なる第2回転中心軸線を中心として回転可能に設けられ、前記溝形成体にて形成される溝の深さを設定する接地体とを備え、前記機体に対する前記ゲージ輪手段の上下位置調整によって前記回動体が前記機体に対して回動すると、この回動体の回動に基づいて、前記溝形成体の下端位置と前記接地体の下端位置との距離が変化するものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、機体に回動可能に設けられた筒状部材と、この筒状部材内にスライド可能に挿通され、下端部が回動体に回動可能に取り付けられ、複数の孔部が形成されたロッドと、前記複数の孔部のうちの一の孔部に挿入された第1ピンと、この第1ピンと前記筒状部材の上端との間に設けられた第1バネと、前記複数の孔部のうちの他の孔部に挿入された第2ピンと、この第2ピンと前記筒状部材の下端との間に設けられた第2バネとを備えるものである。
【0010】
請求項4記載の農作業機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機において、ゲージ輪手段は、側面視で接地体の前方に位置するゲージ輪を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回動体の回動に基づいて溝形成体の下端位置と接地体の下端位置との距離が変化する構成であるから、溝形成体にて形成される溝の深さを容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
図2】同上農作業機の部分平面図である。
図3】同上農作業機の部分斜視図である。
図4】同上農作業機の鎮圧輪部分の側面図である。
図5】同上鎮圧輪部分の平面図である。
図6】同上鎮圧輪部分の背面図である。
図7】同上農作業機の伝動ケースが立った状態での側面図である。
図8】同上農作業機の伝動ケースが寝た状態での側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態について図1ないし図8を参照して説明する。
【0014】
図中の1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、圃場上をトラクタの前進走行により前方(進行方向)に移動しながら播種作業等をする多条式の不耕起播種機である。すなわちこの農作業機1は、耕耘部(ロータリ)を備えていない播種機である。
【0015】
農作業機1は、図1および図2等に示されるように、トラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降部)に脱着可能に連結される機体2を備えている。機体2の左右方向中央の軸支持部3には、前後方向の入力軸4が回転可能に設けられている。なお、入力軸4は、トラクタの後部のPTO軸に伝動用のジョイントを介して接続される。
【0016】
機体2の前部の左右両側には、圃場に接地するゲージ輪手段6が上下位置調整可能に設けられている。各ゲージ輪手段6は、把持部7を上端部に有するゲージ輪取付アーム8と、このゲージ輪取付アーム8の下端部に回転可能に取り付けられ圃場の表面部に接地する接地輪であるゲージ輪9とを有している。
【0017】
ゲージ輪取付アーム8には、上下方向に間隔をおいて並ぶ複数の孔部8aが形成されている。機体2の筒状のホルダ部5には、ピン用孔部5aが形成されている。そして、複数の孔部8aの中から選択された一の孔部8aおよびホルダ部5のピン用孔部5aに対して止めピン20が挿入されることにより、ゲージ輪取付アーム8が機体2のホルダ部5に止めピン20を介して取り付けられている。なお、止めピン20を挿入する孔部8aを変えることによって、機体2に対するゲージ輪手段6の上下位置を調整することが可能となっている(図7および図8参照)。
【0018】
機体2の前部における左右方向に間隔をおいた複数箇所には、圃場の表面部に進行方向に沿った直線状の溝である播き溝mを凹状に形成する溝形成手段11がそれぞれ設けられている。そして、この農作業機1は、溝形成手段11にて圃場の表面部に凹状に形成された播き溝m内に被播き物、すなわち例えば種子aおよび肥料bを播く播き手段21と、この播き手段21にて播かれた種子aおよび肥料bを覆う覆土を所定方向に回転しながら鎮圧する鎮圧輪22と、この鎮圧輪22の外周面に付着した土を掻き取って除去し、この除去した土を被播き物用の覆土(種子aおよび肥料bを覆う土)として用いるために鎮圧輪22の前方の近傍位置に落下させる土除去手段23とをそれぞれ複数備えている。
【0019】
ここで、各播き手段21は、例えば種子ホッパ26内の種子aおよび肥料ホッパ27内の肥料bを播き溝m内に一定間隔で播くものである。なお、播き手段21は、例えば被播き物として種子aのみを播き溝m内に播くものでもよい。
【0020】
各播き手段21は、種子ホッパ26の下部に上端部が接続された可撓性の種子案内ホース28を有している。種子案内ホース28の下端部は曲がり管である種子案内管29の上端部に接続され、この種子案内管29の下端部の種子出口29aが円板状の位置決め体である位置決めディスク30の側方近傍で開口している。
【0021】
そして、種子ホッパ26内の繰出用回転体(図示せず)が回転して種子aが種子ホッパ26内から繰り出されると、この繰り出された種子aは、種子案内ホース28内および種子案内管29内を通って種子出口29aから排出され、その後、位置決めディスク30に当たって向きが鉛直下向きに変わり、播き溝m内に落下する。
【0022】
また、各播き手段21は、肥料ホッパ27の下部に上端部が接続された可撓性の肥料案内ホース31を有している。肥料案内ホース31の下端部は曲がり管である肥料案内管32の上端部に接続され、この肥料案内管32の下端部の肥料出口32aが位置決めディスク30の側方近傍で開口している。
【0023】
そして、肥料ホッパ27内の繰出用回転体(図示せず)が回転して肥料bが肥料ホッパ27内から繰り出されると、この繰り出された肥料bは、肥料案内ホース31内および肥料案内管32内を通って肥料出口32aから排出され、その後、位置決めディスク30に当たって向きが鉛直下向きに変わり、播き溝m内に落下する。
【0024】
一方、位置決めディスク30は、鎮圧輪22を回転可能に支持する鎮圧輪取付アーム33から下方に突出した突出アーム34に上下位置調整可能に取着されたディスク取付板35に、左右方向の軸36を介して回転可能に取り付けられている。そして、位置決めディスク30は、鉛直面に沿って位置し、片側の側面によって種子aおよび肥料bを播き溝m内に案内する。
【0025】
各鎮圧輪22は、播き手段21の位置決めディスク30の後方で、所定方向に回転しながら覆土鎮圧作業をするものである。なお、鎮圧輪22は、圃場に接地した状態で圃場側から受ける力で所定方向(図4に示す回転方向)に回転する。
【0026】
各鎮圧輪22は、図3ないし図6にも示されるように、正面視でV字状(略V字状を含む)となるように位置する円板状の左右1対の鎮圧輪部材41を有し、これら両鎮圧輪部材41は、鎮圧輪22の外周面から除去された細かい土からなる覆土を鎮圧して断面山型状に押し固める。
【0027】
また、各鎮圧輪部材41は、鎮圧輪取付アーム33の下端部における左右両側の取付部42に、左右方向に対して傾斜した軸43を介して回転可能に取り付けられている。各鎮圧輪部材41は、軸43を中心として回転する円板状の円板部46と、この円板部46の外周端部に一体に連設され外側方に向かって徐々に拡径する截頭円錐状の截頭円錐板部47とにて構成されている。
【0028】
円板部46には、4つの扇状の貫通孔48が形成されている。截頭円錐板部47には、周方向に互いに間隔をおいて並ぶ3角状の複数の切欠49が形成されている。そして、截頭円錐板部47の外周面にて、覆土が鎮圧されて断面山型状に押し固められる(図6参照)。
【0029】
なお、鎮圧輪22の前方には、互いに離間対向するV字状の両円板部46間に土が進入するのを防止する板状の土進入防止体(ガード)50が配設されている。この土進入防止体50は、下端ほど幅の狭い略3角形状をなす湾曲板状に形成されている。また、鎮圧輪取付アーム33は、回動支点部45を中心に上下回動可能で、調整手段40によって鎮圧輪22の上下位置を調整することが可能となっている。
【0030】
各土除去手段23は、鎮圧輪22の上部前方で、鎮圧輪22の外周面に付着した圃場の表面部の土を除去してその鎮圧輪22の前方に落下させるものである。つまり、各土除去手段23は、鎮圧輪22から除去した土をその鎮圧輪22の前方近傍に落下させるよう、鎮圧輪22の外周面における上部前側の部分に近接して接触した状態に配設されている。
【0031】
各土除去手段23は、図3ないし図6にも示されるように、互いに離間対向して位置する矩形板状の左右1対の土除去体であるスクレーパ51を有し、これら両スクレーパ51にて鎮圧輪22の截頭円錐板部47の外周面から掻き取られて除去された土は、鎮圧輪22の左右方向中央部の前方に落下する。
【0032】
すなわち、左右のスクレーパ51で掻き取られて細かくなった土は、播き溝mに向かうように互いに接近する方向(平面視で前後方向に対して播き溝側へ傾斜した方向)に向かって飛んで落下し、その結果、播き溝mが埋まるとともに、被播き物(種子aおよび肥料b)を覆う所望量の覆土となって盛り上がる。そして、この盛り上がった覆土(鎮圧輪22に付着していた土)は、鎮圧輪22の両鎮圧輪部材41にて鎮圧されて断面山型状に押し固められる。
【0033】
また、各スクレーパ51は、板状のスクレーパ取付部材であるスクレーパ取付板52の左右方向両端部に、取付具(例えばボルトおよびナット)53にて脱着可能に取り付けられている。なお、スクレーパ取付板52は、鎮圧輪取付アーム33の長手方向中間部の下面に固着されている。
【0034】
各スクレーパ51は、例えば中間の1箇所で折り曲げられた金属製の板からなるもので、スクレーパ取付板52に取り付けられた取付板部56と、この取付板部56の後端部に一体に連設された前下り傾斜状の土除去板部57とにて構成されている。そして、土除去板部57の後端部である自由端部が、鎮圧輪部材41の截頭円錐板部47の外周面における上部前側の部分に線状に接触(摺接)する接触部58となっている。この接触部58の長さ寸法は、截頭円錐板部47の外周面の幅寸法よりも長い。なお、接触部58の長さ寸法と截頭円錐板部47の外周面の幅寸法とが同じでもよい。
【0035】
また、対をなすスクレーパ51は、平面視でハ字状(略ハ字状を含む)となるように位置しており、両接触部58間の離間距離が両前端部間の離間距離よりも長い(図5参照)。
【0036】
また一方、各溝形成手段11は、図1ないし図3等に示されるように、機体2のメインフレーム61の回動支点部10に上下方向に回動可能に設けられた回動体である伝動ケース(例えばチェーンケース)71を有している。そして、伝動ケース71は、上端側に位置する左右方向の回動支点部10を中心として下端側が昇降するように上下方向に回動する。
【0037】
伝動ケース71の下部には、入力軸4側からの動力で所定方向に強制的に回転(第1回転中心軸線Aを中心とする駆動回転)しながら圃場の表面部に播き溝mを形成する円板状の溝形成体であるコールタ72が、その中心部に位置する水平な左右方向の第1回転中心軸線Aを中心として回転可能に設けられている。つまり、伝動ケース71の下部には、この伝動ケース71内のチェーンとともに回転する回転軸73を介して溝形成用のコールタ72が回転可能に設けられている。コールタ72の外周部が、圃場の表面部に入り込む溝形成用の刃部74となっており、この刃部74には周方向に等間隔で並ぶ半円状の複数の凹部分75が形成されている。
【0038】
また、伝動ケース71の下端部には、圃場に接地した状態で圃場側から受ける力で所定方向に回転(第2回転中心軸線Bを中心とする従動回転)しながら圃場上を走行して播き溝mの深さを設定する短筒の円筒状の接地体であるコールタゲージ筒76が、その中心部に位置する水平な左右方向の第2回転中心軸線Bを中心として回転可能に設けられている。
【0039】
つまり、伝動ケース71の下端部には、規制体であるコールタゲージ筒76が左右方向の支軸77を介して回転可能に設けられている。換言すると、コールタゲージ筒76は、伝動ケース71の下端部側面に固定的に突設された固定軸である支軸77にて回転可能に支持されており、圃場側から受ける力でその支軸(第2回転中心軸線B)77を中心として回転する。この丸軸状の支軸77は、例えば伝動ケース71の下端部側面における中央部(略中央部を含む)に溶接等にて固着されている。
【0040】
また、コールタゲージ筒76は、例えば外周面が第2回転中心軸線Bを中心とする円筒面状に形成された円筒状部78と、この円筒状部78の内面に4つの外端部が固着された側面視略十字状の取付部79とにて構成され、この取付部79の中央の筒状部分79aが支軸77の外周側に回転可能に取り付けられている。
【0041】
なお、コールタゲージ筒76の外径寸法は、コールタ72の外径寸法よりも小さい。側面視で、コールタゲージ筒76は、その全体がコールタ72と重なって位置している。また、コールタゲージ筒76は伝動ケース71の一側方の近傍位置に配設され、コールタ72は伝動ケース71の他側方の近傍位置に配設されている。
【0042】
さらに、伝動ケース71の上部後側の取付部81には、上下方向長手状のロッド82の下端部が回動可能に取り付けられている。ロッド82の上端側は、メインフレーム61に回動可能に取り付けられた筒状部材83内にスライド可能に嵌合挿通されている。ロッド82には複数の孔部85が形成され、一の孔部85に挿入した第1ピン86と筒状部材83の上端との間にはコイル状の第1バネ87が配設され、他の孔部85に挿入した第2ピン88と筒状部材83の下端との間にはコイル状の第2バネ89が配設されている。なお、コールタ72の上方には、コールタカバー90が配設されている。
【0043】
ここで、図1等から明らかなように、コールタ72の回転中心である第1回転中心軸線Aは回転軸73の軸芯を通る線であり、コールタゲージ筒76の回転中心である第2回転中心軸線Bは支軸77の軸芯を通る線であり、これら第1回転中心軸線Aと第2回転中心軸線Bとは互いに異なるもので、同一線上に位置せず、第2回転中心軸線Bは第1回転中心軸線Aよりも伝動ケース71の下端側である先端側に位置している。つまり、回転軸73と支軸77とは同軸上に位置せず、コールタゲージ筒76の支軸77がコールタ72の回転軸73から下方側へずれている。
【0044】
このため、伝動ケース71の機体2に対する回動支点部10を中心とする回動に基づいて、コールタ72の下端位置とコールタゲージ筒76の下端位置との距離が変化して播き溝mの深さが変わる。
【0045】
例えば図7には伝動ケース71が立った状態、つまり鉛直方向に対して傾斜角度θ1をもって傾斜した状態が示され、この状態では、コールタ72の下端位置とコールタゲージ筒76の下端位置との距離はk1である。
【0046】
また、例えば図8には伝動ケース71が寝た状態、つまり鉛直方向に対して傾斜角度θ2をもって傾斜した状態が示され、この状態では、コールタ72の下端位置とコールタゲージ筒76の下端位置との距離はk2(>k1)である。そして、この図8に示す播き溝mの深さ「k2」は、図7に示す播き溝mの深さ「k1」よりも深い。
【0047】
このように、図7および図8に示す構成(ゲージ輪有りの構成)の場合、機体2に対するゲージ輪手段6の上下位置調整によって伝動ケース71が機体2に対して回動すると、この伝動ケース71の回動に基づいてコールタ72の下端位置とコールタゲージ筒76の下端位置との距離(播き溝mの深さ)が変化する。つまり、伝動ケース71の上方回動に応じて播き溝mが深くなり、伝動ケース71の下方回動に応じて播き溝mが浅くなる。
【0048】
なお、ゲージ輪手段6を有しない構成(ゲージ輪無しの構成)の場合、トラクタの3点リンク部(油圧装置)による農作業機1全体のトラクタに対する上下位置調整によって伝動ケース71が機体2に対して回動すると、この伝動ケース71の回動に基づいてコールタ72の下端位置とコールタゲージ筒76の下端位置との距離が変化する。
【0049】
また、機体2は、図1および図2等に示されるように、メインフレーム61、左右の側フレーム62、後フレーム63、ステップ64、連結リンク65および伝動ケース後方フレーム66等を有している。この伝動ケース後方フレーム66は伝動ケース71の下部後側の取付部60に回動可能に取り付けられ、この伝動ケース後方フレーム66の長手方向中間部には、鎮圧輪取付アーム33が回動支点部45を介して回動可能に取り付けられている。
【0050】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0051】
例えば粘土質の圃場において、農作業機1をトラクタの後部に連結した状態でトラクタの前進走行により進行方向に移動させると、溝形成手段11のコールタ72が圃場の表面部(未耕土)に所望深さの播き溝mを形成し、その後方で播き手段21が種子出口29aおよび肥料出口32aから種子aおよび肥料bをそれぞれ落下させて播き溝m内に播き、その後方で鎮圧輪22の鎮圧輪部材41が種子aおよび肥料bを覆う覆土を断面山型状に鎮圧する。
【0052】
このとき、鎮圧輪22の鎮圧輪部材41にて鎮圧される覆土は、土除去手段23のスクレーパ51にて鎮圧輪部材41の外周面から掻き取られて細かくなった土であって、鎮圧輪部材41の外周面に付着していた土である。
【0053】
すなわち、例えば粘土質の圃場では、鎮圧輪22の鎮圧輪部材41の外周面には粘土質の土が付着するが、この付着した土は、土除去手段23のスクレーパ51によって鎮圧輪部材41の外周面から掻き取られ、この掻き取りの際に覆土に適した細かい土となる。そして、その細かくなった細土は、播き溝mに向かって落下して播き溝m内に入るとともに被播き物用の覆土となって圃場の表面部上に盛り上がり、この盛り上がった覆土が鎮圧輪22にて鎮圧されて押し固められる。
【0054】
また、例えば異なる種類の種子aを播くために、溝形成手段11のコールタ72にて形成される播き溝mの深さを変更調整する場合には、止めピン20を挿入するゲージ輪取付アーム8の孔部8aを変えることによって、機体2に対するゲージ輪手段6の上下位置を調整すればよい。
【0055】
ゲージ輪手段6を機体2のホルダ部5に対して上下方向に移動調整すると、機体2のメインフレーム61に吊り下げられた状態となっている伝動ケース71の回動に基づいて、コールタ72の下端位置とコールタゲージ筒76の下端位置との距離(播き溝mの深さ)が変化する。
【0056】
そして、このような農作業機1によれば、溝形成用のコールタ72の第1回転中心軸線Aと溝深さ設定用のコールタゲージ筒76の第2回転中心軸線Bとが同一線上に位置せず、伝動ケース71の回動に基づいてコールタ72の下端位置とコールタゲージ筒76の下端位置との距離が変化する構成であるから、コールタ72にて形成される播き溝mの深さを容易に変更できる。
【0057】
また、円板状のコールタ72にて圃場に播き溝mを適切に形成することができるとともに、円筒状のコールタゲージ筒76にて播き溝mの深さを適切に設定することができる。
【0058】
さらに、外周面が円筒面状に形成された円筒状をなすコールタゲージ筒76は、圃場に接地した状態で圃場側から受ける力で所定方向に回転しながら圃場上を走行することで、コールタ72にて形成される播き溝mの深さを適切に設定することができる。
【0059】
また、鎮圧輪22の外周面に付着した土を除去して被播き物用の覆土として用いることができるため、圃場の土の土質に拘わらず、被播き物、すなわち例えば種子aおよび肥料bを所望量の覆土で安定して適切に覆うことができる。
【0060】
さらに、土除去手段23は、鎮圧輪22の外周面における上部前側の部分に近接して配設されているため、鎮圧輪22の外周面に付着した土を適切に除去でき、その除去した土を被播き物用の覆土として用いることができる。
【0061】
なお、播き手段21は、種子および肥料を播くものには限定されず、例えば種子および肥料のいずれか一方のみを播くものや、被播き物として薬剤を播くもの等でもよい。
【0062】
また、コールタゲージ筒76等の接地体は、伝動ケース71等の回動体に固定した支軸77にて回転可能に支持され、圃場側からの力で従動回転するものには限定されず、例えば回動体に回転軸を介して回転可能に設けられ、入力軸4側からの動力でその回転軸とともに駆動回転するもの等でもよい。
【0063】
さらに、接地体は、例えば回動体に固定されて圃場上を滑走する円弧板状の滑走部材にて構成されたもの等でもよい。
【0064】
また、コールタ72等の溝形成体は、伝動ケース71内のチェーン等の動力伝達手段から動力を受けて駆動回転するものが好ましいが、例えば圃場側からの力で従動回転するものや、回転しないもの等でもよい。
【0065】
さらに、例えば各播き溝mの深さが一定となるように、トラクタの後輪(図示せず)およびゲージ輪9の走行跡を走行するコールタゲージ筒76の支軸(回転支点)77を、トラクタの後輪およびゲージ輪9の走行跡を走行しない他のコールタゲージ筒76の支軸(回転支点)77よりも高い位置に配置した構成でもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 農作業機
機体
ゲージ輪手段
ゲージ輪
71 回動体である伝動ケース
72 溝形成体であるコールタ
76 接地体であるコールタゲージ
82 ロッド
83 筒状部材
85 孔部
86 第1ピン
87 第1バネ
88 第2ピン
89 第2バネ
A 第1回転中心軸線
B 第2回転中心軸線
m 溝である播き溝
k1,k2 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8